● ―――剣林支部。 「ぁ……ぁぁあっ、アアッ、ぁぁっ!!」 剣林所属の女『戸部馨』は頭を押さえて唸っていた。 まるで世界の終わりの様な表情だ、青ざめ、瞳には光が無く、唇も紫色へと変色している。体勢はやや前方に曲がっており、かつ、座り込んでいる其の光景には力というものが無い。 少し前の事ではあるが、黄泉ヶ辻に在る事無い事吹き込まれて脳内狂いそうに成った時も、同じように頭を押さえてこうなっていた。 恐らく、彼女の中で只ならぬ何かが起こっているのだろう……。 不穏だ。 不穏の影が見える。 空には暗雲がかかり、少し前まで見えていた太陽が臆病にも隠れてしまった。 鳥のさえずりも、虫たちの声も聞こえない。そんな、真昼の午後。 「足りない、足りない……ッ、剣が、斬れと、言うのよ……!!」 そう言い残して、過呼吸になりながら地面を這っていく馨。 彼女の腰にある、鋼心丸――精神力にて刃を成す妖刀――が、馨の精神に反応して震えている。 斬れ、斬れ、斬れ―――と。 「どうしたの、かおりんは。何か悪いものでも食べたのかな?」 「何時もの発作だ、放っておけ」 支部に居た同じ剣林のフィクサードたちであるが、何故だか馨の半径5m範囲には近寄らない。 斬られる―――……からなのだろう、恐ろしい、此の戸部馨。例え身内であろうとも、発作を起こせば関係無く切刻むというのか。容赦が無い、無情だ、其処には斬る欲望しか無いのだから。 「ぁぁあ! 服斬ってぷるぷるおっぱいが見たぁぁあい!!!」 そう、斬られるのは服のみである。もう馨が出て来た時点で此の話はギャグにしかならない。 最悪な事に、馨の剣(鋼心丸)は馨が切りたいものだけが切れる都合の良いアーティファクトである。正に鬼に金棒。 以下、周辺の剣林フィクサードさんたち。 「発作なの!? この場合、救急車!? それともリベリスタ!!?」 「馨ちゃん……良かった、お友達を失くして寂しがっていたけれども。あんなに元気に暴れ回れるようになったのね……」 「天国の九朗ちゃん(おともだち)、戸部ちゃんは元気です(ちーん)」 「いいから早くリベリスタ呼んで来い。ごめんなさいで済めばリベリスタは要らないんだよ!?」 「手遅れになる前にリベリスタを早く!! はやァくッ!! できればアークがいい!! アークじゃないと!!」 「嗚呼ッ、戸部ちゃんが窓硝子を粉砕しながら外に出ていっちゃった!!」 「普通に扉を使ってくれよ、修理代はあいつに請求するからな」 「百虎様には内緒だぞ……」 ● 『未来日記』牧野杏理(nBNE000211)は集まったリベリスタ達を見回して、話を切り出す。 「皆様にやって頂きたい事は、今夜、革醒者による銀行強盗が発生するので其れを止めて頂きたいのです」 今回敵になるのは、其の銀行強盗をする名も無きフィクサードグループだ。 彼等は革醒して間もないが、路地裏やら人目につかない場所でドンパチ繰り返していた事から、戦闘能力は無くはないのだが、悲しいかな、知識が無い。 「アークが来た。と言ったとしても、多分、恐らく……いえ、確実に彼等は『何それ』と返してくるであろう方々ですので、そんな感じ」 真正面からぶつかれば、まずアークが負ける事は無いであろう。 が。 彼等は人質を取っている。 典型的な例の強盗か、一般人を一纏めにして両手を上げさせ、銃を突きつけている。その為、一般人への被害は最低限抑えなくてはならないだろう。 が!! 「其処に、不運にも剣林のフィクサードが居ます」 厄介になってきた。 「1名だけですね。『切り裂き魔』戸部馨(とべ かおり)」 馨はクセがある。 どうにもこうにも、馨は銀行強盗や一般人ごと『斬りたい』と見た。 恐らく斬る為に此の銀行に来ていたのだろう、だがいざ行動開始する前に強盗らに先を越されてしまったらしい。だが彼女の我慢もその内限界がやってくるのは目に見えて解っている。 そして、斬るのだろう。 「服を」 やばいね。強盗を無暗に刺激でもしたら、一般人がどうなるか考えれば分かることではあるものの、かなり刺激しそうな要因が燦然と輝いているよね。 「皆様の斬られないようにお気をつけて」 何時も簡単に開くブリーフィングルームの扉が、今日だけ強固なロックが掛かっている様だ。 ● さて、どうしたものか。 戸部馨は考えていた。 革醒者であろうなどと言われて立たされて拳銃を突きつけられている訳だが、そんなに怖くも無いがあまり多くの相手をするのは骨が折れる。 殺しに飽きた馨にしてみれば、血みどろ混じりの戦闘を上からの命令も無くやるのは嫌である。 それに、死んだ奴の服を斬ったとしても何が楽しいというのか。 あの愛らしい叫び声と、甘い時間が好きだというのに。 あまりにひん曲がった性癖が今回良かれという方向に導いたか。 どうすれば、どうすれば。 此の場の全員を全裸にできるものか……。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年10月06日(月)22:39 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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● 雰囲気はビリビリと鳴りやまない。隠しきれない緊張感が張りつめて、重い。 一般人からしてみれば、一歩間違えれば脳天に穴が開いて天国直葬の状況だ。何故かと言えばフィクサードが拳銃やら武器やらを振り回しているからだ。 人は武器を持てば強くなったと錯覚する。 逆に言えば、武器を持った人を武器を持っていない者が見れば、己に対抗する術が無ければ自動的に弱くもなる。 単純な、心理現象だ。 そう、単純な。 けれどもそんなものが通じないのが剣林の戸部馨だ。彼女は今でも、此の場の全員の服を剥く方法だけを考えている。 他にも居るとすれば、リベリスタ達くらいであろう。だが正義のヒーロー?の到着にはまだ早い。彼等の到着には悲劇が、悲劇に至る要因が、味付けが足りないから。 話は戻る。 別の事に意識を向けている馨だ、其の余裕の表情にイラついた男が彼女の眉間に銃を突きつけながら怒鳴っている。周囲は脅えた叫び声や、不安気な声。時間が経てば経つほど強盗たちの怒りも増していくというもの。 「ひ……1人くらい殺しておいた方が、いい薬になるかなあ! ああ゛!?」 ナイフを持った男が美麗な女性の長い髪の毛を掴んだ。きゃあ!と叫び声を上げた女性の首元、ピタリと触れたのは冷たい冷たいナイフの感触。ガチガチと歯が震えて音が出るのも仕方ない……。 態々ナイフを突きつけたというのに、態々振り上げられた男の腕。 そして振り落される。 死を覚悟した女性の瞳が天国が目の前、閉じられた。 が。 天国なんてまだまだ遠い。案外近くで遠い天国。 「君達も運がなかったな。ボク達はこういう荒事には慣れてるんだ。さっさと倒れてくれるとこっちも楽で済むんだがね」 ナイフは男の拳の中から消えていた。男の拳が女性の喉元にぶつかっただけで終った喜劇への劇場。 彼女の首を血塗れにする予定であった当のナイフは、『双刃飛閃』喜連川 秋火(BNE003597)の利き手の平の上で弄ばれていた。くるくる、と。 一瞬の内に男の拳からナイフを奪って駆け抜けたというのか。自分の手と、秋火を交互に見る男の顔は焦りの色を見せている。だが直ぐに怒りの、威嚇のそれに変わった。 「なんなんだ、てめぇ……」 「言っても分からないだろ。言う必要は無いって事だ」 「怒らせてェのか!!」 「既にキレてるだろーが」 秋火の瞳が半目に変わり、奪ったナイフを天井へと投げて、刺さって落ちてこない。 其の間にも、『ファントムアップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)が体勢低く駆け抜けた。地面と平行になりそうな上半身を前へ前へと押し出して、詠唱を開始していたマグメイガスらしき男へと斬りかかる。 「強盗諸君、投降した方が身の為、とは言っておくよ。一応」 安易に人を殺す呪文を止める為、其の口を塞ぐ為の多角からの混乱を与える一撃。 「ゲッ」 と思わず声が漏れる声を出した馨。嫌っていうかそりゃもうイヤイヤ嫌々厭々言いだしそうな嫌な顔でアークの存在を眼に入れた。 何処でも現れる彼等である、呆れ混じりに溜息を吐いた馨。其の頃には『灯蝙蝠』アナスタシア・カシミィル(BNE000102)が敷いた強結界が一般人の思考を侵していく。神秘なんてない、隠し通せるのは全てでは無いけれど、此れは悪い夢だと。 こめかみの拳銃を叩き斬り、男を蹴り飛ばした馨。 「さァて、特別ゲストが来た所で私も遊んじゃおうかしら! んふふ、誰からにしよっかなあ??」 「ヒトの服を脱がして喜ぶとか、そんな情けないコトばかりしてるって百虎殿に言いつけちゃうよぅ!」 「意地悪ねぇ……、其処。退いてくれないと最初の犠牲はウフフ、貴女になっちゃうわよ」 間さえ置かずに馨の目の前に立ったアナスタシア。両手を構え、来るなら来いという意気込みを混ぜた構えだ。 横眼で馨とアナスタシアの行動を見ていた『悪漢無頼』城山 銀次(BNE004850)が、チッと、1つだけ怒気を吐いた。それもそうか、剣林の精鋭が目の前にいるが……彼女に手を出すには、段階が壁と成って阻んでいるのだ。 散々だって言いたい気分だ、今は其の気分を吐き出す相手は別に。正義盾にストレス解消。 「纏めて潰してやるからよォ……さっさと来いや」 音程低め、銀次の言葉には魔術が籠る。敵の瞳を此方に向ける呪いの様なそれ。 「調子ノってんじゃねェぞオラァ!!!」 一斉に銀次へと攻撃を開始した敵勢、デュランダルだってナイトクリークだって皆皆銀次に釘づけ。 だが漏れるフィクサードは居るものだ。特に絶対者であったクロスイージスとかね。 獲物はそっちじゃねえだろという顔で釣られた仲間達に悪態を吐きながら、彼は1人勇敢にも、いや、無謀にも?一般人を殺しにかかるのだが甘い甘い。 「フィクサードにもなってすることが銀行強盗とは……器の小さい連中ですわね……」 クロスイージスの前に立った椎橋 瑠璃(BNE005050)。彼女は一般人と敵との境界線、此れより先は通行止めである。 急ブレーキかまそうとしたクロスイージス、だが瑠璃の愛らしい姿を見ればイケるだなんて思ってしまった所。 特に女という点が高いポイントだ。此処で捕えて後での楽しいお楽しみに夢見ちゃえる程―――瑠璃を攻略するのは、簡単では無いけれど。 やれやれと首を振った。 瑠璃から見れば普通の身長からでも大男に見えたクロスイージス。だが彼のちんけなナイフは瑠璃の身体にも服にも傷をつける事無く避けられて空ぶって終わるだけ。 変わりのカウンター、お土産1つ。鮮やかに彩られた双鉄扇が男の後頭部を突いて地面にキスを強制執行。 「とはいえ、庶民にとって雑魚であろうとフィクサードは脅威……そんな庶民を守ってる事こそわたくしのような貴族のつとめですわね! よろしくってよ」 起き上り、怒りに瞳を染めたクロスイージスへ瑠璃は手の平を上に向けてクイっと引いて「おいで、遊んであげます」と合図した。 銀次が瞳を細めて合図した、悪くない状況だ。 一般人達の背中。伸びた影が壁にかかっている場所から『縞パンマイスター竜』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)が上半身→下半身と抜け出してきた。 勿論一般人誰1人竜一の登場には気づいていない。恐らく此の場を取り仕切っているであろうと思えるお偉いさんの肩をトントンと指でつついて、暗示を1つ落とし込む。 に げ ろ。 「背を低くして、物陰を盾にするようにして速やかに避難を!」 其の声を合図に、一般人が一斉に足を立たせた。其の儘逃げろ、逃げろ、裏口から平和な外の世界へ――。 スローモーションの世界。 すれ違う。 逃げ惑う。 綺麗に逃げていく人の影と影の間。 色濃く残る声に振り向いた馨の瞳が。 竜一とぶつかった。 「―――――お前ぇぇえぇえええ!!!!」 ● ワンテンポ。逃げるのが遅れた少女がお約束。 何も無い地面に躓いて転んで、うつ伏せの体勢にかかる大きな影に脅えた。 ダークナイトか、剣なんて大したもの用意できないチンピラだからか代わりにバッドが振りかぶられて、今こそ少女の頭が逆転ホームランしそうな程。 上から下に落されれば、床に大きなヒビを入れながら轟音が響いた。されど血は飛ばない事にダークナイトの男は眉間にピキリと血管が浮き上がる。 義衛郎の両腕の中、少女がお姫様抱っこの状態で抱えられていた。あまりの恐怖に意識を飛ばした少女の腕がだらりと重力に従って。 「舐めたマネしてくれるじゃねえのよ……」 「上から、一般人は1人も殺させるなと命令でな」 「ハァ? 上?」 こんなときにダブルアクション。ダークナイトの男は今後は義衛郎と少女目掛けて暗黒を引き伸ばし、射殺さんとするのだが黒きその物質を短刀で切り崩した秋火が、止まらない止まれない足をフルに動かして男の胸を突いた。 「知らないで良い事だぜ」 其の短刀の剣先。男の胸から入って背中から先っぽがこんにちはしている。もちろん真っ赤に彩られて、綺麗に雫を剣先から落としながら。 抜けば秋火の顔にも鮮血が化粧。 義衛郎は少女を物陰に隠し、そして再び走り出す、秋火と息を合わせて次の獲物へと。 相変わらず銀次のアッパーユアハートが効いている戦場だ。 止まらない敵の攻撃、デュランダルの拳が胴を捕えて銀次が吐き気を抑えながらやり返しの拳が顎を砕く。本場の拳はこうやって振るうんだと教えてやる暇も無く、後ろからナイトクリークのナイフが銀次の首を斬り血が流れたが。 「後ろからねェ……ビビってんのかァテメェ!!」 「ひ!!?」 銀次の怒号の迫力に3歩引いたナイトクリーク。余裕ぶったちょっと前までの彼等の表情は何処かで落として来てしまったらしい。 此の戦場、恐れを抱いた方の敗けであろう。 「あらあらどうしまして? ほら、先程までのキレが無くなっておりますわよ」 鉄扇が、瑠璃の白い髪と一緒に踊る。戦場に舞う花と言ってもいいだろう、華やかな和服を崩す事も無くナイトクリークの首を鉄扇で掻っ切った。 さっきまでのクロスイージスも血だまりに沈んでいる所だ。斬った感触を言ってしまえばナイトクリークよりクロスイージスの方が硬かったものの、瑠璃の前に立つはまだいる。 スターサジタリーの弾幕、炎混じりの雨が上から降り注ぐ、距離こそあった為に逃げ遅れた少女に当たる事は無かったものの、ちょっと前に出てしまえば攻撃範囲圏内。 彼の前まで一気に駆けた義衛郎―――そして、回転する力に物言わせて、左から右へ得物を滑らせれば武器ごと叩き斬られたスターサジタリーの上半身。それが下半身からずれて地面へと堕ちる。 其の頃、馨であるが。 ヘイトを溜めていた竜一を相手にしたいものの、アナスタシアを先に斬ると決めた以上そうしたい。何より竜一へは距離があるのだから。 腕を掴んだアナスタシア、馨のそれだがあまりの力に気を許せば振りほどかれそうな程。 女性が2人、耳元で吐息を感じれる位置だ。 「そんな近づいちゃってくれちゃって、いやん、貴女のおっぱいあたっちゃってるぅん♪」 「はふふ~、あたし吸血が趣味なんだよぅ。これは馨殿の趣味を笑えないかもしれないねぃ」 「へぇ!」 興味を持った馨が良い顔した刹那、アナスタシアの牙が馨の首に深く深く傷を残した。溢れだした血を吸い込み、お味は鉄の味だけれどアナスタシアからしてみれば別の風味だと言うのだろう。 しかし近づいた所で馨はなんのその。吸血1つ犠牲に楽しめるのであれば! 彼女の胸を押し、オレンジ色の髪が靡いた。其の時見た馨の腕は既に斬った後のポーズか。何時の間に、アナスタシアの服が左肩から右の胸の下の当たり綺麗に斬られて重力に従って服が落ちていった。晒された褐色肌に天井のライトが反射して、滑らかな曲線が。 咄嗟に胸を抑えたアナスタシア、残念、髪で隠す不安定さよりそっちの方がイイ。 一気にテンションが上がった馨が、最早言葉の羅列も無視した笑顔を吐き出しながら――敵フィクサード、の女の方であるデュランダルへとギャロッププレイで寄りによって亀甲縛り。 「キャキャキャキャキャ!! つっかまーえたぁぁおっぱぁぁああいみせてぇねん」 されど敵との間に立った竜一。どさくさに紛れて覇界闘士の男を120%一発で仕留めておきながら。 「久しぶり、かおりん。俺に会いたくてこんな事件を起こすなんて可愛い奴だ。さあ、おいで!」 両腕を解放し、おいでと。因みに彼の服装は『えっちな水着』。 「ヒッ、トラウマの元凶! 私の眼の中に入るんじゃないわよ!」 「恥ずかしがる事も無い」 一度、切られた仲だし(馨の戯れで)。 「恐れる事も無い」 一度、抱きしめあった仲だし(その直後のカウンターで)。 「君の命を抱きしめよう、全裸で」 「全裸だけは止めて、もう止めて、ほんと止めて、さりげなく近づいて来ないで」 「ぷるぷるおっぱいじゃないが、俺の股間もぷるぷるしてるよ!」 「ちょっとアンタ!! そろそろセクハラで訴えんぞコラァ!!」 BNEは全年齢である。 ● という訳で。雑魚はさらっと蹴散らされる訳だ。リベリスタが負ける訳がない。 「んぁひぃん♪ 裸の女の子がいーち、にぃー、んぎひひひキャヒヒヒ♪」 アナスタシアと、強盗であった女(全裸で身動き取れない系)を数えてご機嫌な馨。こいつは未だ元気である。 ――依頼は此処からが本番だ。 ぶっちゃけ、強盗はオマケ要素みたいなもの。 創痍の身体もなんのその、やっと目の前にメインがやってきた銀次。先までの怒りに狂う拳も今は冷静に制御が効いて、純粋に剣林をぶっ殺したい意識が前に出る。 「『切り裂き魔』戸部・馨……聞いた事はあるなァ、なかなかに巫山戯た女だ」 「アハッ! 知られてて嬉しい事だわ。貴方こそ、アークに居るには惜しい性格と人材よねえ」 バチリと目線がぶつかる。されど問答無用。 「言いてェことは色々有るが……まァ、とりあえず死んどけ剣林」 「んひぃ♪ 溜まってるの? アンタ」 弾丸如く突っ込み拳を振りかぶった銀次のそれが馨の腹部を捕えた。一瞬苦しい表情を落したものの馨は銀次を蹴り飛ばし、狙うはそりゃあ――。 強盗の男にトドメを刺して、短刀の赤い汚れを払った所で馨が狙う――秋火。 「ボク!?」 「狐ちゃぁぁあん!! さっきから腰の尻尾ふって誘ってるの? 誘ってたわ絶対!!」 口から涎を垂らして迫ってくる馨相手に、されど秋火は冷静に対処する。 「ボクの服を切ってもキミの期待してるようなものは見られないと思うから止めておいた方がいいぜ」 キリッと音が着きそうな程に凛々しい顔で、小太刀を構えたのだが、馨の剣って切りたいものしか切れない訳で。 「誘い受け最高超滾っちゃう!!」 小太刀をすり抜けて秋火の身体に冷たい感触が走った。 胸の頂点から、下へと一閃。開いた隙間から見えるのは、光に栄える肌色のそれ。序に十字に斬れば腰から下の布的なものが落ちる。 「こらバカ! だから期待してる物は見られないって言っただろう……!」 「いいよぉそれいいよぉいいよぉぉ狐ちゃぁん気に入っちゃったぁぁ!」 秋火は咄嗟に全年齢のゲーム的に危ない部分を尻尾で隠した。 「ンーンーー?? 其の尻尾も斬っちゃったら楽しいモノが見れちゃうのかちらあぁ」 「怖ッ!!」 ぱちーん。 「さぁて、次は? やっぱりぃ? 其処の天使ちゃぁんが?? 餌ですかぁぁ??」 「瑠璃殿ぉ! 逃げるんだよぉ! 今馨殿は戦闘ルールを無視して動いてるよぉ!」 「知らんなぁふあはははん、褐色ヴァンプちゃんおっぱいまた晒されたいのかしらあはははーん♪」 アナスタシア、片方の胸の膨らみを抑えながら馨の目の前に勇敢にも立つ。 口から液体(あえて吸血した血とかかない)を垂れ流し、それがなだらかな身体をなぞっていく。更に瞳はハイライトが薄いと来た、まるで、いやこれ以上は想像にお任せ。 ぱちーん。 「服なら替えは持ってきてますわ、やれるものならやってみなさいな」 ぱちーん。 強気な瑠璃だ。 瑠璃をロックオンした馨、止まらないぞ此の女。地面を蹴り飛ばし、そして馨の刀が瑠璃の肩につきつけられ、貫通。痛みは無い、身体は切っていないから。瑠璃も刀を掴んで止めようとするのだが、精神力で構成された刀に触れる事もできない。少しずつ、虫の足を千切るように麗しい着物から肌色が露出していくのだ そんな馨の腕を義衛郎が掴んだ。 「此れ以上の戦闘は無意味だろう、満足したなら帰ってくれ」 「まだ満足じゃないの足りないのハァ……はぁ、あんたもイイ男よねあとで調理してあげりゅから順番くらい待ちなさい」 義衛郎、頭を抱えた。 ぱちーん。 此のぱちーんという音だが、竜一がえっちな水着をつまんで引いて、身体にぱちーんと当ててる音です。 がくがく震えだした馨、そう此の音を聞くといつも良い事が無い。 「いい加減にしろオラァ! そのパチンパチンやめんかい!!」 「かおりんこっち向いてくれないじゃん!」 「向くから!! そっち行きゃァいいんだろォ!!」 にこ、と笑った竜一。ふと馨が彼を見れば、水着の両側を引き上げ肩にひっかけていた、アルティメット竜一になっていたのだ。 此の状態でアナスタシアが斬られた時も、秋火が斬られた時も待っていたのだ。そして瑠璃が切られていく、此の時も。 だもんで、興奮した。 彼だって男の子だもん。 だから。 ……はみ出しそうだ。あの状態ではみ出さないのは神秘の世界だからだ、これ以上ナニとは言わないがはみ出しそうなんだ。 竜一の身体。 上から下に馨の目線が動く。 赤面。 顔を抑えた。 義衛郎は言った。 「出口はあっちだ」 「帰る!! お前等アークいつでも変態!! あり得ない! 最低! 変態! ド変態!! もっこり!!」 「君がそれを言うのか……」 嵐は去った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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