下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






10月14日(祝)

●10月13日、夜
「ハッピバースデー プーラムー。
 ハッピバースデー プーラムー。
 ハッピバー(↑)スデー ディーア プラムちゃーん。
 ハッピバースデー プーラムー。
 わーわー。きゃー、おめでとうー、プラムちゃん素敵ー」
 クラッカーがぱん、と乾いた音を鳴らす。ふぅっ、と慎重かつ大胆な吐息で蝋燭の火を吹き消す『深謀浅慮』梅子・エインズワース(nBNE000013)。彼女の息でケーキに丸く並んだ二十本の蝋燭は端から次々に消えていき、最後の一本が消えると室内が暗闇に落ちた。

「…………むなしいのだわ」

 ぽつり、とした呟きとほぼ同時に、消えきらなかった蝋燭の火が復活する。
 小さな灯りに照らされた室内には、梅子ひとりしかいなかった。

●10月14日、昼
 なんとなく、今年は誕生日を主張するのが気恥ずかしかったのだ。
 梅子も今年でついに二十歳。成人なのである。
 お酒が飲める。
 タバコが吸える。
 車の運転、結婚なら、とっくにできる年齢になっている。
 もっとも、酒は「はたちなのだわー!」と缶ビールを買って見るような真似をする気にはならなかったし、タバコはもともと吸うつもりがない。車の運転はなんだか今更感が強いし、結婚に関してはそもそも高望みが過ぎたりその他諸々で相手がいない。
 妹に対抗できる(ほぼ唯一の)ポイントとして姉ぶっている彼女としては、あたしはいつまでも子供じゃないのだわ! という思いもあったりなかったりするのである。
 とはいえ、後悔とはまさに後になってから悔やむもの。
 どうしてあたしは誕生日をもっと強気で主張しなかったのか、と彼女が色々なものに打ちひしがれてみたりしている今は2013年10月14日(祝日)の昼前なのである。
 一人バースデーなんて寂しいことをしてみたからこそ、ホールケーキは独り占めできた。自分の好きな部分を思うように食べることができた。好きな曲をかけて好きなように、思うままに時間を過ごした。
 その結果がどうだ、この心に広がる虚無感は。
 梅子は目を伏せたまま唇の端を上げ、ふふ、と小さく笑った。
「これが、大人になるってことなのね……」
 多分違う。
 襲い来る虚しさに、梅子は自分のクッションに顔を埋めて唸る。
 やがて、それにも飽きた梅子は気分転換に外の空気を吸うことにした。
 ――さあ、散歩に繰りだそう。大人の日の第一歩だ。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ももんが  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年10月24日(木)23:39
梅子だってアンニュイな日もあるかもしれないじゃないか。ももんがです。
今回、できることはわざと広めにしてあります。

●成功条件
 一般人に怪我人を出さないこと

●舞台
 昼の三高平市内に限定します。
 そのため幻視は特に必要ありません。

●プレイングの書式について
【A】梅子
 前日なぜか部屋から出てこなかった梅子と遊んでやろうじゃないか、という方はこちら。
 なお、梅子の誕生日及び冒頭の一人誕生日会は10月13日(今年は日曜)です。
 舞台となる日は翌日、14日(祝)となります。

【B】休日
 三高平の一日(休日編)をやりたいんだ! という方はこちら。
 祝日ですが、そう言う日こそかきいれどき! な方はばりばり働いていてもいいでしょう。
 梅子は基本的に出てきません。菫はどこかで占いをやっている可能性があります。

【その他】
 この状況で可能そうな、上記に当てはまらないものはこちら。
 (描写されない可能性が最も高い選択肢です)

以上3点からプレイング内容に近しいものを選択し、プレイングの一行目に【】部分をコピー&ペーストするようにして下さい。
また、どの場合でも公序良俗に反する内容は描写しません。
プレイングは下記の書式に従って記述をお願いします。

(書式)
一行目:行動選択
二行目:絡みたいキャラクターの指定、グループタグ(プレイング内に【】でくくってグループを作成した場合、同様のタグのついたキャラクター同士は個別の記述を行わなくてOKです――が、愛称等は相手が誰かわかるレベルにおさえていただけるとありがたいです)等
三行目以降:自由記入

(記入例)
【A】
Aさん(BNEXXXXXX) ※NPCの場合はIDは不要です。
梅子に誕生日おめでとう、と言ってあげる

●参加NPC
・梅子・エインズワース
・揚羽 菫

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。
・獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。
参加NPC
梅子・エインズワース (nBNE000013)
 
参加NPC
揚羽 菫 (nBNE000243)


■メイン参加者 22人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
覇界闘士
テテロ ミーノ(BNE000011)
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
ソードミラージュ
須賀 義衛郎(BNE000465)
ソードミラージュ
リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)
クロスイージス
白石 明奈(BNE000717)
ナイトクリーク
ジェイド・I・キタムラ(BNE000838)
デュランダル
斜堂・影継(BNE000955)

ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
プロアデプト
銀咲 嶺(BNE002104)
ダークナイト
小崎・岬(BNE002119)
マグメイガス
セッツァー・D・ハリーハウゼン(BNE002276)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
ナイトクリーク
七院 凍(BNE003030)
スターサジタリー
ユウ・バスタード(BNE003137)
レイザータクト
ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)
レイザータクト
テテロ ミミルノ(BNE003881)
覇界闘士
喜多川・旭(BNE004015)
ナイトクリーク
浅葱 琥珀(BNE004276)


「休日とはなんとも優雅なものだ。早起きなんかしなくていいし、昼まで寝ても良いのだ。
 だが僕は毎日昼まで寝ているし、早起きどころか朝まで起きていることだってある」
 大きなあくびをひとつして、七院 凍はひとりごちる。
「そこから導き出される結論は……僕はニートだ! やった! 働かなくてもいいんだ!
 ざまーみろ社畜ども! 仕事を苦に自殺するくらいならお前らもニートになっちゃえよ!
 そんなんで人生楽しんでるって言えるの? ねえどんな気持ち?」
 三高平の空に、凍の哄笑が響く。

 そんな今日、10月14日祝日である。

 散歩がてらに公園でぽかぽかひなたぼっこ中の喜多川・旭。
 その視界に見覚えのある姿がうつり、彼女は表情を輝かせてその場に急いだ。
「りゅみえーるさんはっけん! りゅみえーるさんりゅみえーるさん、しっぽください!」
「尻尾は非売品ダ」
「むむむ、非売品……じゃあ触るだけー」
 ベンチに腰掛けて本を広げていたリュミエール・ノルティア・ユーティライネンが顔を上げ、唐突なお願いに一言で返す。旭はまふもふとその黒い尻尾にじゃれついた。
「なによんでるのー?」
「多分読めないダロ旭」
 アルファベットやその親戚たちが謎言語を形成している。フィンランド語だと教えられて、旭が首を傾げた。
「ふぃんらんど?
 地図の位置はしってるよう。あとあと、谷に住むカバ型妖精さんがいるのもしってる! なんのご本?」
「まァヨクアル本ダヨ」
 リュミエールは旭に尻尾を自由にさせながら、あまった尻尾で旭の頬をぺしっとしてみたり、もふる手を包んでみたりする。
「ふふー。ぽかぽか日差しを吸い込んだときのおしっぽがいちばんすき。あったかもふーなのー」
 旭もその尻尾にぎゅうと抱きつくと、いーにおい、と笑う。
「匂いをかぐとか若干変態ダナ」
「ってへんたいさんじゃないよう……! うー……あれ? どこいくの?」
 季節の変わり目の風は心地よさと共に、少しの冷えを運ぶ。
 立ち上がり本を仕舞いこんだリュミエールは、近くのカフェにでも行くつもりダと答えた。
「あのね、わたしいーとこしってる。案内するー。おしっぽのお礼に奢っちゃう」
 次いで立ち上がった旭は、確かあっちのお店は今日は貸切で、そっちのお店は、と頭の中で並べ始めた。


「あ、見つけた。やっほー梅子ちゃ「何しけた顔してんの梅子ーどうしたの梅子ーうめうめ梅子ー」」
 適当にほっつき歩いていた梅子に、設楽 悠里が声をかけようとしたのとほぼ同時に白石 明奈が陽気なちょっかいを掛けた。
「なっ、だからあたしはプラムよ、プーラーーーム!!」
 条件反射で明奈に食って掛かった梅子に、悠里は少し苦笑いを浮かべる。
「見つかったのか?」
 明奈に追いついた焔 優希が、梅子たちより先に悠里に気がついた。
「ああ、そっちも探してくれていたのか」
「え?」
 話が見えてこず困惑を浮かべた悠里に、優希はこれからの概要を説明する。
「なるほどね。本当は昨日祝えれば良かったんだけど」
 昨日の梅子は三高平で留守番である。
 悠里は京都にいたから、顔を合わせなかったのだ。
「でも、それって……」
「うむ……」
 ふたりがひとつの問題点を共有して、答えが出るまでほぼ10秒。
「梅子ちゃん。遅くなったけど誕生日おめでとう」
「ああっ!? 先に言われてしまった!」
「嘘を吐くわけにもいかんしな。……本題を隠したまま誘うというのは難しい」
 悠里の抜け駆け(?)に愕然としてみせた明奈に、優希が仕方ないといった風情で頷く。
「たんっ……そ、そんなの昨日のうちに済ませたのだわ!」
 ぷーいっ、とそっぽを向いた梅子の耳が赤い。
「任務では世話になっている。日頃の感謝の気持ちだ。誕生日おめでとうだな」
「お祝いのケーキを用意したって言えれば良いんだけど……。あいにく僕はお菓子作りはからっきしでね。
 その代わりって言っちゃあ何だけど……。良かったらあそこでお茶していかない?」
 拗ね気味の梅子に花束を渡してなだめすかす優希と、そう言って近場のカフェを指し示す悠里。
「梅子ハピバ! 祝うぞ! ヒャッホウ!!」
「待って、あたし財布がっ!?」
「梅子ちゃんの分は僕が奢るよ」
「よし行くのだわ明奈ー!!」
 嬉々として梅子を引きずり始める明奈に抵抗した梅子の背中を悠里が押す(比喩表現)。とたんにテンションも高く飛び出した(文字通り)梅子に、悠里は思わず笑ってしまった。
「20歳になっても梅子ちゃんは梅子ちゃんだなぁ。急に大人になってもビックリするけどね。
 まぁ、しばらくはこのままで良いんじゃないかな。今のままの方が可愛いしね」
「ショートケーキがいいのだわ! 苺のやつ!!」
 自分の言葉でうんうんと頷く悠里。暴れカラスは自分がカワイイとか言われたことをまるで聞いちゃいなかった。


 小崎・岬は、おー、と店内を見回した。
「カフェ貸し切りかー。準備準備ー、って何やろー?
 料理、はお店で出すのかー。机やイ・スの配置も同様だろー」
 手持ち無沙汰なのを隠さず、店内の小物を見て回っていた岬がふと、それに目を留めた。
「カフェなのにいっぱいあんなードミノ牌ー。端っこのほうでドミノでも積んでよー」
 そう言って岬はドミノを並べ始める。
「本当は友達の誕生日を祝いたくてそわそわしてるんだろ?
 一人ぼっちは寂しいのだわ、ってさ? 気になったなら行動あるのみだぜ!」
「確かにあの『だわ』はどこから来たんだか気にはなるが」
 母親もそういう喋り方じゃなかったよな、とかぶつくさ言うのは菫だ。街角で地蔵のように占いの卓を広げていた菫を引っ張ってきた浅葱 琥珀が、テーブルにコースターを並べていく。そのテーブル中央に悠木 そあらが持参した手作りイチゴケーキを置いた。
「あたしはてっきり腹黒ピンクに監禁されていたのかとおもったですが、よく考えたら腹黒ピンクはあたしのさおりんのお金を使って京都で大はしゃぎをしていたのでした><。」
 ろうそく20本を数えたそあらも、昨日は京都で庭園デート。
「その突拍子も無い思い付きが間接的にオレの負担を増やす梅子さんが成人かあ。
 感慨深いと言えなくも無い」
 壁面の飾り付けを終えた須賀 義衛郎の脳裏に過ったのはチョコレートゾンビ梅子の姿だろうか。
「あ……来た」
 誰が最初に気がついたものか、その言葉に皆の視線が一斉にドアに向かう。中の様子に気づいていない梅子がカフェのドアを押し開けようとした、その瞬間に。
「ハッピーバースデー プラム!」
「誕生日おめー!」
「ぎゃん!?」
 ぱぱぱぱん!
 クラッカー連発(ヴォレイ)に祝福の言葉、あとついでに何か悲鳴。
「だからっ! 今日は……ただの祝日っ、なのだわ!」
「ううう、自分で腰を抜かしてしまったぞ。いつもフラバン投げまくっているのに……あいててて」
 梅子が腰に手を当て、怒ったような表情――赤い頬と小刻みに動く羽が感情を隠しきれていない――でただの祝日を主張する足元で、ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァが涙目になって尻尾の付け根をさする。
「せいじん? なのかー」
 岬はベルカと梅子を見比べ、それからしげしげと梅子を見た。主にフラットな体全面上半分あたり。
「成人ってことは大人階に到着ー。大人の階段って登り切ったらどうなるのー?」
「最強ランクまで駆け上がれば、塔の魔女になる……の?」
 岬の視線に気が付かなかったのは、そう答えた梅子自身も疑問符が浮かびまくったからである。
「貴樹もなにか違う気が……」
 いつになく真剣に考えこんで首をひねり始めた梅子の背に、後ろで待っていた明奈がこのままでは埒が明かぬと飛び掛る。
「お祝いじゃー! ヒャッホウ! ワタシ歌うよ! ハッピーバースデートゥーユー大合唱だよ!」
「よし、気を取り直して。同志プラム! お誕生日、おめでとうございましたー!!」
 ベルカの過去形の祝福に、梅子の目からちょっとハイライトが消えた。


「Miss梅子にバースデイソングを贈るとしよう。
 ワタシからは心をこめたこの声(うた)のもてなしをするとしよう、Miss梅子が素敵なレディになるよう願いこめて」
 セッツァー・D・ハリーハウゼンは主役がカフェに来たのを知り、若人たちを見回した。
 他にも祝うものは沢山訪れるだろう。彼はそう思っていた。
(ワタシはその訪れた皆にも幸せが来る事を願い、声(うた)を奏で続けよう)
「心をこめて、貴方へ」
 そして朗々と歌い出す。願わくば来年も再来年もその次も……このような楽しいときを迎えられるように。
「あ、あー…そうだよね。桃子の誕生日は祝ったけど、たしかに、うん。梅子も誕生日だよね。双子だし!」
 タイムマシンあったらちゃんと祝いに行ったのに! と喚いた御厨・夏栖斗もやっぱり昨日は京都組。
「っていうわけで誕生日おめでとう、一日遅れでも気持ちはこもってるからね。
 こういう、ちょっと大人っぽいのいいだろ?桃子とお揃いな感じ」
 夏栖斗が用意したのは、赤い薔薇が20本束ねられた花束――花言葉は情熱。
「今年もまたいろいろ遊ぼうぜ! いい思い出いっぱい作ろうな。ハッピーバースディ!」
 彼が『2日連続でイケメンモードを通せるかどうか』は今のところ分からないけれど。
「ハッピーバースデー梅子じゃなくてプラム。――今さらながら、なんで梅子呼びを嫌がってるんだ?」
 斜堂・影継はプレゼントを梅子の家に送りつけた。そのため梅子はまだ見ていなかったが――触手系マッサージチェアは二十歳女性の誕生日プレゼントとして適切なのか、いやある意味超適切か。ともかく。
「少々古風かも知れないが、可愛い名前だと思うがな」
 斜堂選手、直球を投げたっ。
「だって、梅子じゃ可愛すぎるのだわ。コケティッシュなあたしには、もっと艷やかな名前じゃなきゃ」
 どうしてわからないかな、と唇を尖らせてむくれる梅子の主張はどこを目指したいのかよくわからない。
「まあ、そういう拘りも含めて梅子は芸風を変える必要なんて無いし、わざと大人っぽいことをする必要など無いんじゃないか?」
 中二病の未成年が何か言ってるー。
「ちゃんと俺からのプレゼント届いた?
 マメでイケメン俺はちゃーんと祝ってあげるさ。つか、梅子もついに20歳かあ」
 同い年であったことにちょっとビックリした、という結城 "Dragon" 竜一の言葉を遮るように袋が叩きつけられた。彼自身が包装して送りつけた縞々パンツ略して縞パンの袋である。
「どうしてあんたはこうっ……なんであたしの愛用デザイン知ってるのよー!!」
 怒る梅子。愛用パンツの柄情報については『ヒント:ステータス画面』としか言いようがないが。
(誕生日ぐらいは、梅子に優しくしてやろうってのが俺のスタンスだけど。……今日は、ただの祝日だよね)
 はい。
「梅子と出会ってから、えー……何年だ。で、成長した? 菫おねーさんみたいに、セクシーな感じに。精神年齢的には……お察しな感じがするけど。でも、俺は梅子はのびのび育ってくれれば一番いいと思うんだ。ほら、大人の女性、とか梅子っぽくなくね?」
 突如饒舌に並べ立てだした竜一に、梅子は両の拳を握りしめて目を吊り上げ、むきー! と唸って怒ろうとして――どこから怒ったらいいかわからない!
「それはともかく。お誕生日おめでとう」
「……最初から素直に祝えないの!?」
 それでも笑って撫でられては、拳の振り下ろす先がない梅子である。


「ちわーす、新田酒店でーす!」
 来た来た。と誰からともなく声が上がる。
「酒類ノンアルコール問わず、飲み物ならばお任せあれ!
 なんたって今回は梅子さんの二十歳の誕生日だからね。つまり、お酒デビューの日ってワケだ!」
 二十歳を祝うのに、これはやはり欠かせないだろう。そう考えれば、新田・快の到着が待たれていたのは自然な話でさえあった。飲みのことは押し付けない飲兵衛に教わるのが最良だ。
「最初は呑み易いお酒から入るのが重要、ってことで、持って来たのはコレ。
 あらごし梅酒 梅子様成人記念ボトル!
 自家製梅酒に砕いた梅の果肉をブレンドしてあるんだ。度数は軽め、甘口でフルーティーだから飲みやすいと思うよ。お酒呑める人は、こいつで乾杯しよう」
 何人かがコップやグラスを手に、快の周囲に集まる。
 頃合いと見て、義衛郎は梅子にいくつかの箱を渡した。
「エインズワースさん、改めて二十歳おめでとうございます」
 中に入っていたのは、赤白2本のワインと2脚のグラス等のワインセット。明らかに二人分のそれを見て怪訝そうな顔の梅子に、義衛郎は簡単に説明を添えた。
「これからも姉妹仲良く、という意味も込めて。誕生日おめでとう」
「少し前まで、まだ高校生くらいの女の子だったのに。時が経つのもあっと言う間ですねぇ」
 寄り添うように立つ銀咲 嶺も、小さな紙袋を梅子に手渡す。
 袋の中に入っているのは彼女が昨日桃子に渡したのと同じマカロンのセット。ただし箱は梅桃で色違い。
「ハッピーバースデーです、プラムちゃん! プラムちゃん、桃子さん、お母様のイメージで味を選んできたのですが、お父様もお名前に植物の名前が入っていたりするんでしょうか?」
 残念ながら彼の名は狼を意味する言葉が転じたものだ。
「さあ、ケーキも有るし、新田酒店の取っておきもあるぞ!」
 何故かマイクを取り出したベルカが、それを梅子に突き出した。
「さあ、新成人のプラムさん!
 この記念すべき誕生日にあたって、これからの抱負などお聞かせ下さい!」
「だーかーらっ、あたしの誕生日は今日じゃないのだわ!」
「まあまあ……それでは、梅子さんの誕生日と成人を祝して、ハッピーバースデープラーム!」
 酒をひと通り注ぎ終えた快が、また拗ねそうになった梅子をなだめて仕切りなおす。
「うめこちゃん! たんじょうびおめでとうなの~。おいわいにごはんたべにきたっ!」
 テテロ ミーノが、言葉の通りテテロ ミミルノと共に、梅子に祝辞を述べる。
「はっぴばーすでいでぃあぷらむ~、はっぴばーすでいぷらむ~」
 歌い終えてぱちぱちぱちと拍手したのはミミルノ。
「おめでとうなのだっ!! おいわいするからごはんをだしてほしいのだっ!」
 お な か す い た っ
「たくさんおいしーものよーいしてるってきいて! おなまえかいてるチョコプレートもちょうだいっ」
 \ゴハーン/
 押しに負け(泣く泣く)ミーノにチョコプレートを譲った梅子へ、優希が声をかける。
「2年前の今の時期、梅子は猫を鴉から守ろうと身を挺していた事があったな。
 そして今、こうして元気で居ることが出来何よりだ。今年も来年も、その先の未来も、誕生日を大切にしていければいい。人生を繋ぐ楔でもあるのだからな」
 誕生日が毎年変わらず訪れること――その意味を。優希は静かに口にする。誕生日を数日後に控えて時間を止めた少女を思い出し、梅子は僅かに目を伏せた。
「年を重ねるってことは思い出を重ねるってことだ。楽しい事は多い方がいい。
 辛い時の励みにもなるしな。誕生日はいくつになってもいいものだろ? これからもよろしくな、プラム!」
 割って入った琥珀がそうまとめて、さあ! と梅子をケーキに向き直らせる。
 ちょうど、そあらが20本の蝋燭に火をつけ終わったところだった。
「さぁ、盛大に吹き消してくださいです!」
 梅子は照れくさそうに、それでいて嬉しさを隠しきれない表情で――蝋燭をいっきに吹き消す!
「おめでとう――!」

 パァン!!

「ぎゃんっ!!?」
 そあらの抱えた特大のクラッカーの音が炸裂し、誰かさんがもう一回腰を抜かした。
 そしてその瞬間から聞こえ始めた、ぱたたたた、という小さい連続音。
「今の衝撃でドミノ発信しちゃったから倒れきる前によろー!
 あ、最後ストッパー入れないとカタパルトからパイが飛ぶからそれ制限時間ねー」
 岬が倒れたドミノ牌を指さした。その先に続く、ピタゴラでスイッチな感じのドミノや椅子やその他諸々。
「ちょ、待って、うひゃああ!!?」
 ――解除が間に合わず、パイをかぶったカラスの話は、またいつか。


 別のカフェにて。その店の共同経営者だというジェイド・I・キタムラがだらけながら領収書を眺める。
 梅子に送りつける予定の白ワインのものだ。
『誕生日おめでとう。二十歳になったのなら、酒の味も覚えておくといい
 ヴィンテージにはまだ早いから、飲み口の優しい若い奴を選んでおいた』
 添えたカードに書いた文面を思い出し、皮肉気な表情を浮かべる。
「味も分からねえのに年数と銘柄で美味いの不味いの言う奴がな?
 ま、あれでお嬢様だろうしその辺の心配は無いか」
 あの時は、ユウ・バスタードもまた、梅子にプレゼントを送るからとカードに何か書き込んでいた。
 確か文面は、『梅子さんへ。お誕生日おめでとうございます! 大人の女になるために、第一歩のお祝いを差し上げますね。景気良くぶっ放して下さい。デキル大人は、我が身を守る!』
 ――少し前にユウが破界器化した小型拳銃をプレゼント包装で買っていたことを思い出し、ジェイドはそれ以上考えないことにした。
「ジェイドさん、私にもプレゼントくださいよー。一か月遅れの誕生日ですー!」
 ユウにそう言って揺さぶられ、考えるのが面倒になっていたのもあるかも知れない。
「で、何で俺は責められているんだ?」
「なにって、焼き餅やいてるんですよー?
 もー、せっかく若いのの集まりに出ないでこっちに来てますのにー。ふふふ」
「プラムもユウも、どっちも姪みたいなもんなんだが……」
 ジェイドが頭を掻きながら、今度何かプレゼント探しに行くかね、とか考えていた――その時。
 突然ドアが開いた。
「誕生日おめで――あれっ?」
 飛び込んできたツァイン・ウォーレスが、店を間違えたことに気がつくまであと10秒。

<了>

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
なんでもない日おめでとう、のような。
素直じゃない梅子ですが、今後もどうかよろしくお願いします。