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試練の迷宮

●試練を与えるもの
「今回皆さんには、アーティファクトの調査への協力をお願いしたいんです」
 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう言って、テーブルに金属塊のような何かをそっと置いた。
 大きさは掌に収まるくらいの、特に飾り気のない立方体。
「こちら、試練の迷宮と名付けられているアーティファクトです」
 そう前置きしてフォーチュナの少女は、立方体の説明をし始める。
 単純に説明すれば、試練を望む者をモンスターとトラップの配置された迷宮へと転移させる修練型のアーティファクト。
「タワーオブバベルに似た能力で所持者と周囲へと呼びかけ、応じた者達を創り出した迷宮へと転移させるみたいです」
 迷宮そのものも何らかの力によって創りあげられる特殊な存在のようで、異世界に造り上げられた物とか世界の狭間に構築されているとか色々と推測はされているものの、能力そのものの解明はまだ完全には出来ていないというのが現状らしい。
「今までの文献の調査やカレイドも用いた精査の限り、直接死亡するような危険は無いようですので……効果を体験しても構わないという方がいましたら、調査への協力をお願いしたいんです」
 そう言って集まったリベリスタたちを見回すと、マルガレーテは更に詳しく説明し始めた。

●アーティファクトの迷宮
 アーティファクトの呼びかけに応じれば、応じた者たちは迷宮へと転移させられる。
「私が見た感じですと、皆さんは迷宮の入口のような場所に転移されるみたいです」
マルガレーテは説明しながら端末を操作し、スクリーンに作成された画像を表示させた。
 開いた門の前から伸びる、幅と天井の高さが同じくらい……5m程度の通路、そしてその先に存在する扉と、大きめの部屋。
「皆さんは門の前に転移されると思います。門はその先は見えない感じで、入った場合は此方側、アーティファクトの近くに転移される事になります」
 転移された後で試練を拒否する者への退避路ということだろう。
「通路を進んでいけば扉付きの部屋があり、その中に『試練となる敵』が存在しています」
「それを倒せれば試練を突破する事になる……で良いのかな?」
 リベリスタの1人がそう尋ねると、フォーチュナの少女は申し訳なさそうな顔で、もう1つと付け加えた。
「実は通路の部分に罠らしき物があるみたいなんです。視る力を拒むような力が働いているみたいで、何があるのかまでは分からないのですが……」
 神秘系のものでは無く物理的な装置のようなもので、引っ掛かっても死ぬような危険は無いらしい。
 とはいえ負傷すれば、その後の戦闘に影響は出てしまう事だろう。
「落とし穴とか、吊り天井とか、何かが落ちてくるとか飛んでくるとか……そういう感じかなとは思うのですが……すみません」

 そう謝罪してから、少女はもうひとつ1つの試練、迷宮のモンスターについて話し始めた。
 怪物は部屋の中にいて、部屋に入ってきたり自分たちに攻撃を仕掛けてきた者に対して攻撃を行ってくるようだ。
 粘性のある液体というか、ゼリーや寒天をもっと柔らかくしたようなと言うべきか……
「ゲーム等で言うスライム……みたいな感じでしょうか? 今回は便宜上、スライムと呼ばせて頂きます」
 全部で3体おり、最初は部屋の中央付近にいるらしい。
「色はそれぞれ青、黄色、赤の個体が1体ずつ。形状は似ていますが色がハッキリ違いますから、間違える事は無いと思います」
 3体とも能力はかなり似通っている。
「耐久力はかなり高いようですが、防御力は殆どありません」
 体が柔らかく伸び縮みするのを利用して動いたりするようでかなり機敏らしいが、回避行動は行わないようで攻撃を当てるのは難しくないようだ。
「ですが行動不能系や精神、呪い系の異常の効果をほぼ無効化するみたいです。御注意下さい」
 攻撃手段は近くの物に毒素のある体で纏わりつく範囲攻撃と、酸のようなものを飛ばす遠距離攻撃となる。
「攻撃の範囲や威力はほぼ同じですが、付随する効果が異なるようです」
 青いスライムの攻撃は武器の力を弱め、攻撃力を低下させる効果。
 黄色のスライムの攻撃は防具の力を弱め、防御力を下げる効果。
 赤のスライムは強い毒素によって、更に対象を傷付ける効果。
「近距離、遠距離、どちらの攻撃にも効果は加わりますので御注意ください」
 この3体を倒せば、試練を乗り越えたという事になるようだ。
 ちなみに傷付き戦闘不能となった者は、迷宮の外、アーティファクトの近くへと退去させられるらしい。
「3体を倒した時点で1人でも迷宮内に残っていれば試練を乗り越えたとされるみたいです」
 残った個人がではなくチームとして乗り越えたという事になるのだそうだ。
「調査に協力しても良い、迷宮に挑戦してみたいという方がいらっしゃいましたら……宜しければご協力お願いします」
 マルガレーテはそう言って、集まったリベリスタたちに頭を下げた。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 6人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年10月24日(木)23:44
オープニングを読んで頂きありがとうございます。
メロスと申します。
今回はアーティファクトによって造られた迷宮に挑むというシナリオになります。
特に何かする事が無ければリプレイは試練を望んだ後、迷宮の入口から始まりとなります。



■試練の迷宮(アーティファクト)
金属のような物質で出来た掌に収まる立方体型のアーティファクト。
試練を望む者たちを謎の迷宮へと送り込みます。
古い昔に作られた物品のようで、構造等については完全には判明していません。


■迷宮内部
石のような謎の物質で天井、床、壁が形成されています。
その外側には空間そのものが無いようで、物質透過等を用いても数十㎝程度身体を潜らせることしかできません。
千里眼等を使用した場合も、天井や床、壁の厚み程度までしか見えません。
通路は幅、高さ共に5m程度。
1辺5mほどで厚みも数十㎝ある大きな板状の物体が合わされるような造りです。

通路を進んでゆくと大きな扉があり、その先が部屋となっています。
部屋は20m四方で、高さは通路と同じ。
室内にはモンスターが存在し、攻撃を仕掛けてきます。


■トラップ
通路に仕掛けられているようです。
種類は1種類。
詳細は不明ですが、引っ掛かると物理ダメージを受ける模様。


■迷宮のモンスター(スライム)
全部で3体。
赤色、黄色、青色の個体が1体ずつ。
体内に酸のような成分があるようで、それを飛ばしたり周囲に撒き散らしたりして攻撃を行います。
動きは機敏ですが防御力は低く、回避もあまり考えません。
ですが耐久力は極めて高いうえに、麻痺や呪い、精神系の異常等は全く受け付けません。
(知性らしい知性は殆どありません)

攻撃は3体共に近接範囲と遠距離単体の神秘攻撃で、ダメージに加えて個体ごとにバッドステータス効果があるようです。
赤のスライムは『毒』の効果。
黄は『隙』の効果。
青は『弱体』の効果。
撃破された場合、空気中に溶けるかのように消滅します。



モンスターを全て倒す事ができれば、迷宮突破成功となります。
それでは、興味を持って頂けましたら。
宜しくお願いします。

参加NPC
 


■メイン参加者 6人■
インヤンマスター
四条・理央(BNE000319)
デュランダル
富永・喜平(BNE000939)
クロスイージス
内薙・智夫(BNE001581)
プロアデプト
柚木 キリエ(BNE002649)
ソードミラージュ
エルル・ウィル・クート(BNE004691)
ホーリーメイガス
真柄 いちる(BNE004753)


●試練の迷宮へ
 望んだ者に試練を与える破界器。
「昔はどんな用途で使われたんだろうね?」
 四条・理央(BNE000319)のそんな呟きを耳にしながら、『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)は考え込んだ。
 迷宮を作る目的は二つしか思いつかない。
(一つは何かを守るため)
 このアーティファクトがどんな経緯で発生したのかはわからないし、調べてみなければ宝等の有無も断定出来ない
「死ぬ事はないものの罠もあって気は抜けないし、仕事なのもわかっているけど……」
(……楽しむための迷宮ならいいのにな)
 そんな想いがキリエの胸中に湧き上がった。
 今回は……なんとなく、そんな気分なのだ。
「試練の迷宮か……丁度いい、あたしにとってもこれは試練だぜ」
 対照的に、と言うべきだろうか?
『アーク水泳部』エルル・ウィル・クート(BNE004691)の表情にはどこか真剣なものが滲んでいる。
(自分がどこまでやれるか、それを知るいい機会だ)
 そう考えた後で、すこし表情を崩しつつ彼女は付け加えた。
「……でもご褒美も欲しいよなあやっぱり。財宝秘宝があってほしいもんだぜ」
「迷宮、強敵、お宝、其れがセオリー……冒険者とて必ずや華麗に攻略して、金銀財宝ゲットだよ!!」
 同意するように断言してから……あぁ違う、と。『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)は言葉を補完する。
「別に金銭目的とかじゃないんだが……こうノリ的にな」
 迷宮という部分にやはり何かが刺激される、という事なのだろう。

(6人でパーティーを組んで迷宮に挑む、かぁ)
「なんだかコンピューターのゲームみたいだね?」
 そんな事を呟きつつ、『ニケー(勝利の翼齎す者)』内薙・智夫(BNE001581)も、頭の中でとある映像を思い浮かべていた。
 魔物を驚かした! とか、スライムは首を刎ねられた! とか。
「確かラスボスは……」
 口にはしたものの思い浮かんだのは本当のボスではなく、寧ろ経験値稼ぎでお世話になる別の敵である。
 懐かしさを感じつつも我に返り、智夫は表情を引きしめた。
 死の危険は無いとはいえ、これから進むのは現実の迷宮である。
「こんな大きい迷路入るのって初めて!」
 周囲を囲む石のような天井や床、壁を眺めながら……真柄 いちる(BNE004753)はどこかはしゃいだ様子で口にした。
(お仕事なのにちょっと不謹慎かなあ?)
 緊張とわくわくが入り混じったような気持ちを胸に、彼女は通路の先へと視線を向ける。
 願うように、祈るように、少女は小さく呟いた。
「みんなで脱出できればいいな」

 それがボクの、いちるの望みだから。

●迷路を往く
 迷宮内は薄暗かったが、一行のいる周囲は何か照明のようなもので照らされているらしく、視界に不自由はしなかった。
 もっとも、先がどうなっているかは分からない。
 エルルは暗視の能力を使用し、喜平は用意したランタン型の照明をいつでも使えるように準備する。
 隊列を整えると、一行はさっそく探索を開始した。
「通路探索の前衛は盗賊か戦士が鉄板だろ」
(そして俺は戦士、レベルを上げて物理で殴るタイプ、故に前衛)
 そんな感じの喜平と。
「一応、壁役なクロスイージスだし」
 そう言って最前列を希望した智夫の2人が、前衛として最前列を務める。
 最後尾に付いた理央が後方を警戒し、皆の位置取りを見たキリエは、いちるとエルルの2人と一緒に中衛に位置を取った。
 不思議な灯かりが周囲を照らす迷宮の中を、6人は隊列を組んで周囲を警戒しながら進んでゆく。
 列の真ん中に位置するエルルは、隠し通路などがないだろうかと床や壁、天井に注意して進んでいった。
(やたらと対神秘能力が高いみたいだし……ありそうだ。絶対に見つけてやるぜ)
 ただ進むだけじゃつまらないと、彼女は壁や床、天井にスイッチ等が無いかと触って確認しながら進んでゆく。
 智夫が皆に施した翼の加護により全員飛行が可能だったのもあって、天井などの調査も容易だった。
 罠に関しては……
(……回復あるから平気だろ……多分)
 ヤバかったら自重しようと考えたエルルは、とりあえずそのまま捜索を優先する。
 真っ直ぐに伸びる通路をしばらく進んだ一行は、左右に分かれるT字路へとたどり着いた。
 いちるは用意したスプレーを使って道に矢印を描き、キリエも周囲に目を配りながら壁に番号をスプレーで印す。
 一方を選んで進むと、少しして道は再び似たようなT字路へと一行を導いた。
 いちるが再び印をつけ、キリエは通し番号を振りながら周囲の壁や床などを確認する。
 いちるは同じ作業を繰り返しながらも隊列の真ん中にいるように注意し、キリエは特に耐久力の低い者の位置に気を配った。
 仲間たちの状態によっては交代なども考えはしたものの、今のところは何かが変化するような事態は起こらない。
 選んだ道はすぐに行き止まりとなり、一行は分岐路まで引き返すともう一方の道へと歩を進めた。
 もしかしたらこの迷宮は、自己生成型ではないか?
 キリエはそんな事も考え周囲を観察しつつ、見通せぬ迷宮の中を仲間たちと共に進んでゆく。

●迷宮の罠
「こ、これは!! ……なんだろうか」
「……また分岐だね」
 特に何もなくとも時折そんなリアクションを取る喜平に智夫が応える。
 ちょっと疲れた様子なのは返事のせいではなく、移動の際に翼の加護を皆に施すためだ。
 消耗した力を回復させるスキルを用意している者が複数いるので実際に消耗している訳では無いが、何というか……気疲れのようなものである。
 喜平の方も壁や床、天井などに不審な点が無いかとチェックをしながら慎重に通路を進んでいた。
 少なくともこれまでの所、罠や隠し通路などは見つかっていない。
 ちなみに扉も、これまでに1つも見つからなかった。
 通路が続き、似たようなT字の分岐があり、また通路が続く。
 いちるとキリエがその度にスプレーで矢印や通し番号を記していく。
 通し番号が無ければ同じ場所に着いたのかと勘違いするくらいに分岐路は似通っていた。
 通路の方も特徴が無いという点では同じかもしれない。
 そんな迷宮の中を一行は根気よく、周囲や天井、床に注意しながら進んでいく。
 外れの道は行き止まりになっており、引き返す時間はかかるものの迷うことは無かった。

 どれくらい進んだのか……前列の智夫が突起やボタンなどが無いかチェックしている少し後ろで、エルルが床を調べていた時である。
 彼女が押した床板の1つ(1つと言っても一辺5mほどもある大きな床板であるが)が、僅かに沈み込んだのだ。
 超直観を用意していた3人は、それを視界の端に捉える事はできた。
 だが、警告を発する前に何かが動くような音が周囲に響く。
 いちると智夫が警戒の声を発し、嫌な予感を感じていた喜平は列の中央にいた者たちを庇うように駆けだした。
 天井を見ていたいちるは身を固くして防御の姿勢を取り、天井が動いたことを確認した理央も中衛たちを守るように動いていた。
 音を立てながら天井が、6人の上へと落下してくる。
 固い何かがぶつかる音が響いた……ものの、天井は床までは到達しなかった。
 降下を押さえようとした喜平の力で力を弱めた天井は、他の者たちを押し潰そうとしたところで動きを止めたのである。
 理央や智夫らも負傷したものの、その怪我は軽微なものだった。
 発動を避ける事はできなかったものの、警戒していたお陰で被害を軽減することには成功したと言えるかも知れない。
 すぐに別の音が響き、天井が少しずつ……引き上げられるように上昇していく。
 その間に一行は急ぎ進み、天井の落ちてきた地点を脱した。

 安全を確認すると理央はすぐに皆の傷を癒すべく詠唱を開始する。
 治療を終え消耗も回復すると、6人は再び通路を進み始めた。
 いちるは先刻の事を思い返し、天井を警戒しながら歩を進める。
 エルルも警戒を強め、床に注意して進んでいった。
 それ以降、分岐は存在しなかった。
 道なりに進んだ一行はやがて、大きな扉のある行き止まりへと到着する。
「こ、ここがモンスター配備センター……」
 必要以上に緊張した様子で『覚悟は良いか?』と自分に言い聞かせつつ……智夫は皆の状態を確認した。
(………ひとの心配より自分の心配したほうがいい気もするけど)
 いちるも仲間たちが怪我などをしていないかと確認する。
 怪我が無いのを確認すると、理央と喜平は戦闘時の効果時間が短くなるのを覚悟してスキルを使用し戦闘態勢を整えた。
 喜平は破壊の闘気を全身に纏うことで力を高め、理央は周囲の力を取り込んだのちに皆の周囲に守護の結界を展開する。
(弱音ばっかり言ってられないね)
「ぜんぶ倒したらダンジョンよろしくなにかお宝あるかなー」
 自分の背を押すように呟くと、いちるは皆と共に十字架を手に開かれた扉の内へと踏み込んだ。
「さて。一仕事がんばろう」

●戦い、試練
 通路と比べるとかなり広く感じられる部屋の中央付近に、スライムたちの姿はあった。
 3体、青、赤、黄と全ての個体がそろっている。
 警戒はしていたものの、不意打ちなどは行ってこないようだ。
 智夫は赤のスライムの抑えとして前衛に位置し、エルルも前衛で優先目標である青いスライムに視線を向けた。
 喜平も青色のスライムを抑えるように移動する。
 理央は後衛を担当し、いちるも後衛に位置を取った。
 ブロックは足りていると判断したキリエも、後衛へと位置を取る。
「あ! やせいのスライムがとびだしてきた!  ……なんちゃって」
 冗談ぽく言いながら、いちるは皆の後ろから部屋の中にいたモンスターを観察した。
「あたしの実力じゃ、抑え込めるかわからないが……仲間のサポートがあるからな。安心して前に立てる」
 視線はスライムに向けたまま、エルルは呟きながら武器を構える。
 侵入者を確認したスライムたちは、すぐに動きだそうとゼリーのような液体のような体を震わせた。
 だが、スライムたちが攻撃を開始する前に先手を取ってキリエが動く。
 室内に枝葉を伸ばすように伸ばされた気の糸が一斉にスライムたちに襲い掛かり、その動きを鈍らせた。
 続いた智夫が聖なる光を掌に宿し、その輝きを怪物たちへと向ける。
(前衛は火力だけじゃないんだぜ! 速度でカバーする方法だってある!)
 スライムへと距離を詰めながら、エルルは身体のギアを切り替え、高速戦闘モードへと移行させた。
「ソードミラージュなら……いくら素早い相手だってな!」
 そのエルルに向かって青いスライムが毒素を含んだ体を収縮させながら襲い掛かる。
 赤いスライムは智夫へと、そして黄色のスライムは後衛のいちるに向けて、毒素を含んだ液体を発射した。
 毒素が智夫の身を蝕み、酸がエルルといちるの攻防の力を弱めようとする。
 喜平が力を収束させ強大なエネルギー弾を放った直後、理央はいちるを狙い難いようにと射線上に身体を割り込ませながら、浄化の光を掌に宿した。
 神々しい光が室内を満たし、3人の身を蝕んでいた毒素が浄化されてゆく。
 回復は充分と判断し、いちるは詠唱によって魔力の矢を生み出すとその狙いを青のスライムへと定めた。
 放たれたマジックアローは狙いを外すことなくスライムへと命中する。
 動きが素早いという事で当たらない事も考えていたが、直撃はしていないものの命中させる事はそれほど難しくはないようだ。
 もっとも、それだけ耐久力は高いという事かも知れない。
 長期戦となる事は間違いないだろう。
 智夫は理央やキリエらに声を掛け、いつでも回復が行えるようにと意識しながら、掌に再び光を生み出した。

●6人の協力
 喜平が抑えに回った事で、青スライムの攻撃は主に喜平に向けられるようになっていた。
 黄色の攻撃も、いちるを庇うように位置を取った理央に向けられる形となっている。
 そして赤色の攻撃は変わらず智夫が耐え続ける。
 スライムたちの攻撃は決して弱いものでは無かったが、修練を積み重ねた3人を打ち倒すには不足していた。
 青色の攻撃はエルルにも向けられたが、負傷が蓄積する前に智夫や理央からの癒しが彼女に向けられ、危険な状態とみればキリエも詠唱によって力をもたらす大天使の息吹を召喚する。
 キリエはそれ以外にも智夫と共に、スキルの使用によって消耗した仲間たちの力を回復させる役割も担っていた。
 結果としてキリエ、智夫、理央の3人は攻撃よりも回復を担当する場面が多くなったものの、それによって他の3人は消耗や負傷、状態異常等を気にせず攻撃に専念する事ができたのである。
 前衛として直接敵と向かい合う智夫はともすれば状況の判断が即座にできない場面などもあったものの、回復を担う後衛たちと声を掛け合うことで回復のタイミングを逃さずに行動できていた。
 仲間が倒されない事を最優先に、彼は癒しと浄化の力を使いこなしながらスライムの攻撃を凌ぎ続ける。
 理央も味方が倒れないようにと考え、こちらは異常の解除を最優先に行動していた。
 彼女が負傷と状態異常の治療を主に行い、キリエは消耗した仲間への力の供給と非常時の回復。
 そして智夫はその両方、不足している方をその場その場で確認し援護する。
 そしてその間にエルルや喜平、いちるはスライムに攻撃を集中させる。
 エルルは止まらぬ連続攻撃をスライムに繰り出し、そこへ喜平は追い打ちとばかりに纏った闘気を収束させたエネルギー弾を叩き込んだ。
「物理で殴るタイプといったがアレは嘘だ」
 鉄砲も撃つし、神秘的な事もする。
「そう! 大人は嘘をつくものなんですよ!!」
 そんなセリフを言いつつも喜平は油断なくスライムたちの動きを観察する。
 妙な動きで不意打ちをしてくる可能性は無いとは言い切れないのだ。
 幸いキリエと智夫のお陰で、接近戦を挑む必要は無いくらいにエネルギーは充実していた。
「いくら攻撃があたるとは言え、耐久力があるってなかなか厄介なのだよ。むう」
 呟きつつ、いちるはスライムに向かってマジックアローを放ち続ける。
 回復は3人で補えているため、彼女も攻撃に専念する形となっていた。
 戦いは長期化するものの、6人は堅実に戦い続ける。
 智夫は再び仲間たちへと翼の加護を施し、理央は効果が失われる前にと守護結界を再度展開した。
 喜平も失われかけた破壊の闘気を纏い直し、その力をエネルギーの砲弾と変えて放ち続ける。
 この状態で青のスライムが倒された事で、回復を重視していた3人に余裕が生まれ、チームの攻撃力は結果として上昇する事になった。
 本来ならば長引けば力を失い攻撃や回復が不足するものだが、その点は智夫とキリエの手で補われている。
 無限機関や永久炉、そしてバイデンの力を身に宿した者もおり、元々消耗し難い者がいるというのもあった。
 リベリスタたちに隙は無い。
「力押しだってやれるんだよ、あたしは!」
 エルルが消耗を厭わず生み出した雷を拡散させ、スライムたちへと叩き付ける。
 回復の合間に理央も援護射撃で攻撃に加わり、やがてダメージを蓄積させた黄色のスライムも空気に溶けるかのように消滅した。
 キリエは攻撃を単体に絞って気糸を放ち、智夫も回復が不要と判断した時は再び聖光で赤のスライムの動きを鈍らせる。
 最後は喜平の放ったエネルギー弾の直撃を受け……赤色のスライムは、蒸発するかのように消滅した。

●試練の終わりと迷宮からの帰還
「キヘイハレベルガアガッタ!!」
 そんな勝鬨を上げた後で。
「何が上がるんでしょうね、夢とか希望とかお給金とか?」
 喜平が誰かに問い掛ける。
「てれれれってれー。すらいむをたおした!」
 いちるも同じように口にした後で。
「いちるはれべるがあがった! ……ら。いいなあ」
 そんな風に小さく呟いた。
「次はもっと強い敵が出たりしないよね?」
 ちょっと不安げな様子でそう言いながら、智夫が警戒するように周囲を見回す。
 幸いというべきかそういう気配はなく、戦いの終わった室内は静寂に包まれたままだ。
「宝箱とか置いてねーかな」
 そう言ってエルルもきょろきょろと部屋の中を見回した。
「宝、お宝! 迷宮はやっぱ宝だろ! リベリスタより仕事よりロマンだぜ!」
 そんな事を言いながら、部屋の中を調べようとしたところで。
『見事だ、汝らは試練を乗り越えた』
 迷宮に挑む時と同じような声が響き、周囲の風景が薄れ始めた。
 どうやらこのまま元の世界に戻される事になりそうだ。
(クリアしたら、この迷宮はどうなるんだろう?)
 キリエはそんな事を考えた。
 もしも何も無いなら、これは誰かが楽しむためにあったのかなと思う。
(その誰かが挑戦者なのか、それをどこかで俯瞰している人なのか、やっぱり私にはわからないけれど……)
「試練を超えられたなら、それはそれで貴重な宝なんじゃないのかな」
 この迷宮が誰かの悪意の投影ではなく、ちょっとした悪戯心の発露であって欲しい。
「少なくとも私は楽しかったと思うから」

(これを作った人が存在するなら、どんな人だったのかな?)
 そんな事を考えながら。
 キリエは仲間たちと共に、迷宮から現実世界へと帰還した。



■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
依頼の方、お疲れさまでした。
無事にスライム3体を撃破し、試練突破に成功という結果となりました。
制限時間が無いという部分を活かし、時間をかけ丁寧に罠等を調べながら探索を行い警戒を怠らなかった事で、トラップの被害は最小限に抑えられたと思います。
回復もしっかりと行った事で万全の状態で戦闘に突入し、戦闘時も回復役が多いというメンバーの特徴を生かし、堅実に戦い勝利へとたどり着きました。
ドキッとする部分はあったかもしれませんが、終始安定した、危な気ない探索行だったと思います。

御参加ありがとうございました。
それではまた、御縁ありましたら。