● 最初から諦めていた。 もうちょっと可愛ければだとかもうちょっとだけ世渡りが上手ければだとか。 そんな事ばっかり言ってもでも結局何時も通り。自分は何処にでもいる普通の女の子だ。 無いものねだりなんて虚しいだけ。みっともなくてなのに何にも手に入らなくって。 嫌な事を嫌と言って、好きなものを好きだと言って。そんなの簡単だろうと誰かは言うけれど。 そんな単純明快な答えだけで生きていける程今生きている世界は優しくはない。 好きでも無いものを好きだと言って、楽しくも無い話題に笑って。 今日は一体誰を嫌いだと言えば世界は上手く回るのだろうか。やっぱり笑顔で頷いて。 嗚呼でも結局そんなの自分が傷つきたくないだけだろうと言われたら何にも言えないのだ。笑ってしまう。全部全部自分の為だ。 もしも。もしも自分があの子だったら、なんて考えもきっとそんなの甘えていると幸せな人は言うのだろう。 ざり、と上履きが砂埃塗れのコンクリートを踏んだ。 馬鹿みたいにいい天気で。開け放たれているのであろう窓からは笑い声が聞こえて。嗚呼、今日は誰の悪口で笑っているのだろう、と少し笑って。 ふわり、と浮遊感。そして―― ● 「エリューションの反応が確認された。手が空いてる人はちょっと聞いて欲しい」 小さな手がモニターを操作する。色違いの瞳でリベリスタを一瞥して、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は短く息を吐き出した。 「場所はとある中学校。『彼女』は必ず夕方にしか現れなくて、教室に残ってる生徒を殺している。最初は女子のみだったけど、今は無差別になった。 今回の依頼は、『彼女』……エリューション・フォースと、それに付随するアンデッドの討伐だよ」 差し出される資料。其処に添付されたごく普通の少女を示して、フォーチュナは小さくその子、と告げた。 「この中学校に通ってた女の子。彼女が、エリューション・フォース。フェーズ2。大雑把に、デュランダルみたいな能力を持ってる。武器はよくある鋏だけど巨大化してる。 この子は……少し前に、屋上から飛び降りたんだって。遺書とかは無かった。だから、死んだ理由は誰も知らなかったんだって。普通に学校に来てて、普通に友達もいて、何の問題も無さそうな子だったって。 ……でも、彼女は疲れてた。その、普通に過ごしていく、って言う奴に」 年頃の少女ならきっと大なり小なり覚えがあるだろう。周りに合わせて上手くやっていくこと。一人ではあんまりにも生きづらい、学校と言う枠の中で。 小さな溜息。資料が一枚捲られる。 「……だからまぁ、彼女は死んだ。でも、諦め切れなかった。もしかしたらもっと上手く生きていく方法があったんじゃないか、って。例えば友達の中心にいる子みたいになれば、って。 その思いが、今の形を生んじゃったの。彼女は、もしもを求めてる。でももう命を終えた彼女にもしもはないの。だから、もう終わらせて。 彼女に殺された女の子たちも、何人か一緒にいる。その子達も一緒に、……醒めなくなっちゃった悪い夢を、醒ましてあげて」 宜しくね、と告げた少女の表情は何時も通り、人形のように変わらなかった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:麻子 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月18日(金)23:30 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 空間を裂いたのは『黒』だった。音もなくしなやかに。けれどその美しさの奥に息を潜める獰猛な獣の気配が牙を剥く。その指先が捉えられる敵を全て等しく正確無比に貫いた刃と気糸の行く末を確認する事も無く、『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)は無表情に敵を眺めた。 「……逃しません。その厄介な回復能力、阻止させていただきましょう」 その瞳にあるのは任務達成への、『化け物』を殺す事への揺るぎない冷静さ。同情はない。興味も無い。酷く淡々と手に戻った刃を握る黒猫はその鮮やかな瞳を細める。よくある悩みであり、彼女はそれに耐えられなかった。それだけの事。彼女は死んだのだ。彼女の人生は終わってしまった。終わったものは戻らない。これは『彼女』ではないのだ。告げるべき言葉などありはしない。傾ける感情に名前が必要なのだとすればそれは間違いなく――敵への『嫌悪』だ。そしてそれを覚えたのならば。後は速やかに排除する事だけを考えればいい。思考はシンプルだ。人に害をなす化け物を、殺すだけなのだから。 「痛い。痛いの。生きても死んでも痛いの。どうしてなの。如何したら痛くないの?」 ぶつぶつ。呟く声がする。酷く無感動でけれど重い悲しみを孕むような。リベリスタと対峙する少女だったものは虚ろな瞳で呟き続けるのだ。痛い、痛いと。そんな姿を見遣りながら。暗闇に仄かに灯る銀。煌めきを帯びる銃を握って、『アウィスラパクス』天城・櫻霞(BNE000469)が漏らす溜息は一つ。 「――実に、実に愚かだよ」 若さ故の過ちとでも言えば聞こえはいいけれど。死んでしまえばその過ちは正しようがないと言うのに。色違いの瞳が鏡のようになった窓硝子を見遣る。普通の世界に疲れるだなんて。漏れた笑いは少女への嘲りのようで自嘲のようでもあった。随分と、贅沢な悩みだった。普通でなくなった自分からすればその普通さ以上に焦がれるものなんて存在しない。まるで世界ごと隔てられたようだった。もう戻らない。戻れない。戻っては来ない、なんて。そんな事は彼らからしても同じなのかもしれなかった。何も知らない彼らは言うのだろう。特別な人間になれただけいいだろう、と。首を振った。 少女の手に握られたパイプ椅子が振り下ろされる。その見た目からは想像も出来ない膂力を持ったそれを、しっかりと受け止めて。直後に翻るのは艶やかな紅。そして、灼熱の紅。茎中の水分を奪い尽くし焼き尽す地獄の業火が燃え盛る。煽られ舞い上がる髪を押さえて、『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)は困った様にその唇に笑みを乗せた。 「隣の芝生は青いとか、薔薇は紅いとか。見えちゃうものだよね……分かるよ」 羨ましい、と思う気持ちは誰にだってあって。けれど、その羨んだ相手が本当に悩みも何も無く幸福なのかと言われたら旭は頷く事が出来なかった。誰だって同じなのだ。悩みがあって、疲れたりして。それでもがんばろうと思えるのはきっと大切なものがあるからだ。好きだと言う感情は背を押してくれる。それがどんなものであっても。 「何より大好きなものがあるだけで、どこまでも頑張れるの」 それは自分の事であったり、人であったりと人によって異なるけれど。きっとその羨むほどに幸福な人たちは確固たるそれを持っていたのだろう。呟いて、けれどそれがもう少女を救えない事を旭は誰より知っていた。どれだけの言葉も彼女を救えない。けれど、それでも。消えるしかないその心に届くようにと。旭は目を逸らさない。 握った拳が、その手を覆う美しい象牙色が視界を焼く程の白を帯びる。敵の狭間を擦り抜けて、少女に肉薄。其の儘叩き付けた拳が描いた十字は魔の者となった少女を決して逃しはしない。痛みに呻いた少女を一瞥して、『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)は縁が無い、と小さく呟いた。 少女が抱える悩みは多くの人間が同じ様に抱えるそれであるの『だろう』。仮定しか出来なかった。欲しいのならば手を伸ばし、手が届かないのならば届くまで己を磨けばいい。そうして来たのだ。大御堂彩花と言う人物は正しく多くを持つ者であった。けれど、知る事は出来なくとも。それが出来ない人間がいる事もまた、彼女は知っている。万人にその高潔さを求めるのは余りに酷だ。 「……我ながら嫌味な言い分ですよね」 「素敵ね。満ち足りた人生ね。さぞ、持たない人を憐れむのは楽しいんでしょうね。みんなそう。あのブランド持ってないなんて可哀想。恋人がいないなんて可哀想。頑張ったのに可哀想。持ってるから言えるって分かってるのに、どうしてそんな事言うの?」 虚ろな瞳が呟いた。少女と共に蠢く死者たちも皆そうだったのだろう。互いに互いのものを羨み蔑み。年頃の少女特有のそれを知らない儘大人になれる人間は多くはない。勿論それだけが全てではないけれど。交わった視線はやはり虚ろで。羨ましい、と呟く声だけが耳を擽った。 ● 音も無く翻る衣被。振るわれた刃が齎した死の黒が目前のエリューションを物言わぬ屍へと戻す。どんな罪人であろうとも、死を与えるのならば一瞬で。止めを違わぬその刃と共に舞う黒髪を払って、『一般的な少年』テュルク・プロメース(BNE004356)は僅かにその眉を寄せた。 「まったく。部活に入るなり、友人と下校して遊ぶなりすればよいでしょうに」 まぁ、それが出来なかったからこうなってしまったのだろうけれど。ありふれた日常と言うものが、どれ程得難く安らぐものなのか。それは普通に暮らしていると自称するテュルクでさえ理解出来る事であるのに。彼女にはそれが判らなかったのだ。気付かないだけで、周囲には幾らでも普通なりの幸福が落ちていたと言うのに。嗚呼けれどそんな想いも今はもう届かないものなのだ。刃を構え直して、少年は新たに対峙した少女を見詰める。今はとにかく、動き続ける彼女達を休ませてあげる事に尽力するのだ。己に出来る術を以て。 「――強いだけの武技は、それが好みの方に任せればいいのです」 自分はただ美しく踊るように。流れるような足取りで戦いを進める彼とは対照的に、振り上げられる鉄の塊。断罪の刃が空気を裂く音はまるで獲物を求める唸りのように。その巨躯からは想像も出来ない程早く鮮やかに。晒された敵の弱点へと的確に叩き下ろされた断頭台が死体の首を深々と抉る。さあ鬨の声を上げろ。望むのは勝利だ。この手が掴むのは栄光だ。Вперед! Вперед! 叫び猛りその刃を叩き付けろ。其処に躊躇は存在しない。敵であるのならば、見た目が何であろうとも。『攻勢ジェネラル』アンドレイ・ポポフキン(BNE004296)は兵隊であるのだから。嗚呼、けれど。 「――悲しいぐらいに『平等』デスネ、この世界は」 その面差しに浮かぶのは、僅かな憐憫。弱い者にも強い者にも、そう、誰にでも。世界は平等なのだ。少女を見遣る。平等なそれを受け止めきれなかった少女。けれど、其処に言葉を向ける気はなかった。何も語りはしない、言葉でどうこう出来る事ではないのだろうと、知っているから。説教をしに来たのではない。同情をしに来たのでもない。謝りに来たのでも嗤いに来たのでもない。アンドレイが示す答えはもっと単純で明確だ。 「戦争をしに来ました。故に小生は貴方を倒しマス。貴方に勝利シマス。勝利無くば生命無し。だから――さあ、好きなだけ暴れるが良い」 赦せない気持ちも憎しみも全てぶつければいいのだ。刃を交え、己を殺すであろうこの敵に。そんな、少女を一瞥して。『アヴァルナ』遠野 結唯(BNE003604)は己の身から流れ落ち続ける紅をゆっくりと拭った。矛盾だ、と小さく口内で呟く。その自殺のあり方は酷い矛盾を孕んでいた。世への不満や想いを遺書と言う形で残しもせず、己の意見を述べる事もしない儘にこの世界から消えたくせに。その死に様は余りに人の目につきすぎるのだ。それではまるで、その死自体が遺書のようだ。 「……何も言わずに死んだのなら、出てくるんじゃない」 滅ぼそう。身も心も何もかも。指先を覆う黒が弾丸を放つ。そんな彼女を含めてすべてに。吹き抜けたのは癒しの気配を含む烈風。豊かな銀の髪までも揺らしたそれを齎した『慈愛と背徳の女教師』ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)は軽く肩を竦めて溜息をついて見せる。その気持ちは分からなくはないけれど、何もそんな事で死ぬ事も無いだろうに。憐れみが無いとは言わないけれど、同情の気持ちがあるかと言われれば否だった。 「それで被害にあった子達がかわいそうだもの。この子達を解き放つためにも、情けはかけられないわ」 「かわいそう。かわいそうなのね。かわいそう……」 だからもう眠りなさい、と。少女のかんばせでティアリアは微笑む。ただただ想いの丈を呟くしか出来ない彼女に、情けをかけても先は無いのだ。 ● どさり、と鈍い音を立てて漆黒が崩れ落ちる。結唯の沈んだ床には鮮やかすぎる紅の血だまりが広がっていた。しかし、リベリスタは未だ7人が健在だ。敵は少女と、死体が一人。押し切れる、と悟ったのだろう。櫻霞の銃口が敵を向く。何処までも精密に正確に。研ぎ澄まされた弾丸が煌めきを帯びる。 「犠牲者だから、それがどうした? 俺は手を緩めない。姿形がなんであれ、立ち塞がるなら排除する」 何の躊躇いも無く。駆け抜けたそれは針穴さえ通り抜ける程の精度を以て少女の肩口を撃ち抜く。同情も憐憫も何も無い。こうなった理由がどんなものであろうとも。目の前のこれが櫻霞の憎むべきエリューションであると言う事実以外この場所には存在しやしないのだ。 血が流れていた。痛みに呻いて。それでも何かを求める様に此方に攻撃を向け続ける少女を見詰めながら、最後の死体を倒した旭は少しだけ寂しそうにその瞳を細める。 「あなたは自分があんまり好きじゃない、のかなぁ……?」 旭の目に映る少女はそう見える。もしも、自分をしあわせにしたいのなら。自分を見限ってはいけないのだ。まずは自分の好きな所を見つければよかったのだ。もう、過去形にしか出来ないけれど。少しずつ、一つずつでもいいから、自分を愛してあげればよかったのだ。そうしたら、もういいや、なんて自分を棄てたり出来ないから。 「ね。あなたは好きなもの、ひとつもなかった? 自分の好きなところ、見つけられない?」 「好きなものって好きって言っていいの? 自分を好きになんてなれるの?」 呟く瞳を真っ直ぐ見詰めた。好きなところを、旭は見つけられた、と囁き返す。なあに、と問う少女にけれど返すのは唇に添える指先だけ。教えてあげるつもりはなかった。少女に必要だったのは、自分で自分を好きだと思う事だったのだろうから。もう過去にしか出来ない現状を憂うのは旭だけでは無かった。あくまで、何処までも美しく。演ずるようにその足を前へ出したテュルクが少女へと与えるのは二度目の死だ。とろける様に死へと誘うその一撃を与えながら、その表情は何処までも変わらず、しかし僅かな無念さを帯びるようだった。 「今夜の僕は、現状を非常に残念に思っているのです。なので、少々手荒くなります」 ああ、全く以て残念でならない。同年代の学生であったなら友人となっていたかもしれないというのに。可能性は摘まれてしまった。もしかしたらはもう起きないのだ。きっと、大人しく、協調性を重んじ、周囲に気を遣う少女だったのだろう。だからこそ、こうなったのだろうから。嗚呼。本当に。もしも、もしも出会えていたのならば、仲良く過ごすことが出来る自信があるのに。首を振る。 「でも、今の貴女では駄目です」 もう眠りなさい、と。囁く少年に抗うように振るわれるパイプ椅子。それをやはり刃でしっかりと受け止めて、アンドレイは少女を見据える。かかってこい、と母国の鬨の声を張り上げて、己の胸を叩いた。此処だ。此処に居るのだ、と訴える様に。 「貴方の敵はココだ、小生だ!」 戦争をしよう。決して忘れぬ為に。刃を叩き付ける。よろめく少女を受け止める事も慰める事もせず。アンドレイがするのは只々、見つめる事だけだ。出来る事はこれしか無かった。嗚呼。悔しいのなら刃を受けよう。寂しいのなら最期まで共に居よう。無駄では無いのだ。この行いは。死は。その想いは。生死に無駄なものなど一つだってありやしない。全て全て、この魂に刻もう。もう少女は限界だ。それを見て取って、レイチェルは静かに己の手の中に収めた黒い刃を其方に向ける。 「もう一度言いましょう。今の貴女はただの化け物だ」 討ち滅ぼされるしかない、それ以外の未来は存在しない。慈悲も憐憫も残してやろうとは思わなかった。気糸を纏う刃が、指先から離れる。音も無く空気を裂いて。始まりと同じ様に吸い込まれるように、少女の胸元へ一直線。 「……これで、終わりです」 さようなら、と囁く声。彩花の目の前で、少女の姿が揺らぐ。精神体の少女の瞳と目が合った。いいなあ、と囁いた声に、彩花は返事をしない。彼女の様に在れたなら、と普通の少女ならば憧れてしまう様な彩花は、けれど何処か思う事があるように、その瞳を伏せた。 「――安心しなさい。Спокойной ночи、お嬢さん」 姿が掻き消えて。残ったのはぽたり、と転がり落ちた水滴だけだった。 ● 「……私にとっては、貴女の境遇が少しだけ羨ましくあります」 戦闘の気配が無くなった夜の学校は静かで、何処か不思議な雰囲気を保っていた。倒れた机を元に戻して、彩花は窓辺で割れた花瓶を見詰めた。求める事に終わりはないのだ。彩花が大御堂彩花である限り。何処までも何処までも、己を高め上を目指していく事は必然だ。普通ではいられない。居てはいけない。それが、持つ者の定めであるのだろうから。それを理解しているからこそ、彩花は僅かに、少女へ羨望を覚えるのだ。普通を抜け出したい、と得難い普通の世界に生きていた少女を。 「無い物強請りをするのは誰しも一緒という事ですね」 「ま、人生は一度きりだもの。やりたいようにやらなくちゃ、悔いが残ってしまうわ」 結唯を、そして仲間達の傷を癒しながら、ティアリアもまた少女が居た場所へと視線を投げる。それは誰にでも言える事だった。悔いのない人生を送りたいのならば、やはり己の望むままを通せる者が一番強いのだろう。だからこそ、自分達もやりたいように。例えば、こんな風に倒すべき者を倒したり、伝えたい事を伝えるように。 吹き抜けた風が、髪を撫でる。顔に落ちかかるそれを雑に払って、櫻霞は気だるげに窓の外へと視線を投げる。もしもは起きなかった。彼女は終わり、続きはない。けれど。次があるのならば。こんな形では無く、もっとまともな、真っ当な人生を送れるように願え、とその唇は囁く。 「普通の世界も神秘の世界も、理不尽で残酷なのは変わらんな」 どんな世界も常に優しいとは限らないのだ。嗚呼けれど次こそは。こんな風に、死してなお歪んだ形で生きる事も、この痛みと残酷さに満ちた世界の事も、知らない儘に生きる事が出来るのが一番だろうから。 沈黙が落ちる。程無くアークの職員が、倒れ伏した死体達の処理を行ってくれるのだろう。その前に。 傷付いた仲間を支えながら、リベリスタは各々の帰路を歩いて行った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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