●本当に早すぎだ ブリーフィングルームに現れた『ディディウスモルフォ』シビル・ジンデル(nBNE000265)は少し困ったような顔をしていた。 「こんなことをお願いするのは本意ではないんだけど……」 そして口ごもる。真面目に日々、世界を崩壊から守るために戦うリベリスタ達。勿論これだって立派に崩壊から世界を守るために必要な事なのだが、なのだが。けれど、ブリーフィングルームに足を踏み入れたからには覚悟は決まっているのだ。 「みんな、魔法少女になってくれないかな?」 魔法少女。 ――魔法少女。 ……――(魔法少女) 暫し思考停止になってしまっても仕方がない。 「あ、ごめん。イミフだよね。ちょっと待って、ちゃんと説明するから」 シビルは必死に視たものを伝えようとする。 つまり、小さなディメンションホールが開き、そこから高位の存在、アザーバイトが出現してしまったのだ。 「本当だったら、今月の終わりぐらいにこっちに来るはずだったみたい。早過ぎちゃったんだよね」 だからこのアザーバイト、サーウィンも戻って自分の行動を修正したいらしいのだが、出現したからには『ある儀式』をしないと自分だけでは戻れないらしい。 「それがね、魔法少女と戦う事なんだって。勿論、今回は向こうの間違いだから模擬戦みたいなぬるいのでいいんだって」 それでも高位の存在と戦いのまねごとが出来るのはこの世界の愛し子にしか出来ない事だ。 「場所は三高平湖の東岸。サーウィンの領域に入る事が出来るのはみんなだけ。入るとすぐに変身コマンドを叫んで変身しちゃうから覚悟してね。もちろん、魔法少女にだよ」 誰でも、どんな年齢でも性別でも種族でも、全てが魔法少女に変身しサーウィンが差し向けてくる小さな敵と戦うのだ。 「魔法少女ってわからない? えっとね。めっちゃ可愛い服を着て、可愛い魔法の杖を持って、空を飛んで、呪文や武器で可愛く戦う女の子の事だよ」 シビルはざっくり説明する。そして魔法少女の敵は服を着た金色のコウモリですごく弱い。ただ、数は沢山いて、わらわら、わらわら出現してくる。 「戦うけどこれはあくまで儀式。だからこの領域には癒しのフィールド魔法がかかっていて、敵も味方も怪我しても大丈夫。循環するみたいに吹き渡る微風がすぐに治してくれちゃうんだ」 日付が変わってから約10分間。それだけ戦えば儀式は完了してサーウィンはディメンションホールから帰還出来る。コウモリ達も残らないしホールは閉ざされる。 「だから安心して魔法少女を満喫してね!」 と、シビルは言った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:深紅蒼 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月18日(金)00:51 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●早すぎた降魔の夜 もうすぐ時刻は0時になる。今日の終わりと明日の始まりを告げる狭間の瞬間だ。その時、送還の儀式が始まる事をこの場にいるリベリスタ達は知っていた。真夜中の三高平湖は満ちてゆくまだいびつな白い月の光に淡く照らされ……その水面すれすれの一カ所だけやけにキラキラと光っている。ごく僅かな空間の歪み、そこから一気に光が洪水の様に溢れ空高く吹き出し広がってゆく。きっかり0時、約束の刻だ。濃い光と闇の空間が三高平湖の一部を切り取り異なる次元と親和するある種の領域、結界と化す。 「さーうぃんトアソボウ」 リベリスタ達とは反対の湖岸近くで小さなカボチャランタンが聞き取り難い声を発する。それがきっとアザーバイト、サーウィンだろう。 誰よりも先にアザーバイトが待つ領域へと駆け込んだのはアークが技術の粋を懲らして作り上げた新式装甲のままの『チャージ』篠塚 華乃(BNE004643)だった。 「ドレスアップ、チェーンジ!」 言葉の持つ力に装備が変わる。純白と桃色の上品に流れるプリンセスドレスの裾は少し短かったけれど、そこから淡いレースのベール越しに足もとが見える。角と耳、尾も今は露わとし魔力障壁装置は周囲を星の様にとりまいている。 「マジカルフィジカル、篠塚華乃!さんじょー!」 2色のリボンがひるがえる槍をバトンの様に巧みに回して切っ先を敵へと向けて決めポーズを取る。 「早く、早く! 今度はみんなの番だよ!」 空中を緩やかに渡る華乃が手招きをする。 「魔法少女ねぇ……」 嘆息まじりにつぶやいたのは衣通姫・霧音(BNE004298)だが、決して不満そうではない。派手な衣装を身に着ける事にも抵抗はない。魔法なんて柄ではないと『魔法少女』という語感に若干の違和感を感じているだけで……楽しんでしまえいいという境地に達するのに時間はそうは掛からない。 「ほら、恥ずかしがったりしないで、一夜の舞台を楽しみましょう」 及び腰のシュスタイナへそっと声を掛けて一歩踏み出す。 「今宵は解き放つ夜よ」 心を縛る全ての鎖を解き放てばいい。サーウィンの領域に入った途端、霧音の身体は紅に染まる桜花の吹雪に囲まれる。艶やかに、華やかに、淑やかに舞い上がり、舞い散る中で霧音は変わる。大きく胸元と脚を露出した和柄の裾や袖にレースがなびき、艶やかな髪は桜のかんざしで留めている。 「私は紅き桜の魔法少女、名を『衣通姫』の霧音」 微笑む唇もほのかな桜色だ。 「うっ、あれを……やれっていうの?」 全ての勇気を振り絞っても羞恥が勝つような気がして『揺蕩う想い』シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)動けない。たとえ、ギャラリーが当事者以外にいないとしても、だ。 「……謀られたわね」 色々考えあぐねた末に『黒猫』篠崎 エレン(BNE003269)が出した結論は謀略説だった。あの夜、適度なアルコールが最高に良い気分を演出したまま本部に出掛け……酔いが醒めたらもう引き返せないところに足を踏み入れていた。退けないのなら腹をくくって往くしかない。 「行くわよ」 真っ先にサーウィンの待つ不思議空間へと銀の髪をなびかせて走るエレンが境界を越える。その途端、プロテクターが弾け飛び、エレンの身体から眩い閃光が放たれる。既に領域内を飛んでいた黄金のコウモリ達が光に気圧され、弾かれる。何もない空間から黒と薄紫の布がしゅるしゅるとエレンへと幾重にも巻き付き、ミニドレスへと変化する。足もとは夜目に鮮やかに羽のついたスカーレットレッドの靴が彩る。 「黒猫ウィッチ、マジカル☆エレン、参上にゃん!」 空中で器用にくるんと回って両手首を曲げ、猫パンチめいた決めポーズに小首を傾げてウィンクをすれば、どこからどう見ても魔法少女だ。 「私が魔法と希望だよっ」 美しい指輪の魔法石に口づけると『初めてのダークナイト』シャルロッテ・ニーチェ・アルバート(BNE003405)の変身が始まる。 「私が魔法と希望だよっ」 リンリンっと涼やかなる鈴の音が鳴り響き、眩い光の中シャルロッテのシルエットにリボンが巻き付いてゆき、装備に変わる。手から腕、脚、上半身、ヒラヒラのスカートへと変わるたび、リボンや羽が要所を飾り腰に大きな赤いリボンがふんわり結ぶ。キラリと金のラインが光り、漆黒のミニスカートに赤と金のライン、絶対領域のニーハイソックスが映える魔法少女の装備になる。いつの間にか髪の色も瞳の色もずっと明るく変わっていて、手にはキラキラと輝く弦と矢を備えたマジカルアローが神々しくも美しい。 「運命を変える希望の光、シャイニーロッテ!」 両手がハートの形を描く。 「迷子のアザーバイトさん、私が送り返してあげる」 ニコッと笑うその笑顔にさえ魔法の光が眩く光る。 次は『プリンツ・フロイライン』ターシャ・メルジーネ・ヴィルデフラウ(BNE003860)が領域との境界を越えてゆく。 「ゴシック・バロック・ゴールデンドーン! 偉大なるエメラルドタブレットよ、ボクに力を!」 天上の、そして煉獄の怪しいかぎろいを映す深緑の石が連なる魔法のネックレスを天にかざす。普段、女性らしい服装を身に着ける事の少ないターシャが久しぶりに女の子らしい格好になる。ふわりと広がった袖を取り巻くウロボロスの蛇、柔らかく広がったスカートに描かれた逆十字の紋様もキュートで思わず嬉しくなる。 「カラミティ★サーペント、マジカル☆カソグサ! キミの狂気と正気の端境に大胆な戦いを!!」 双頭の蛇が絡むマジカルバトンを手に漆黒のオーラとまとい愛らしく『きゃぴるん♪』とポーズを取る。 「魔法少女っ! こちらの世界には不思議で変わった文化があるんですね」 境界を越えたリベリスタ達の華麗にして可愛らしく眩い変身にシーヴ・ビルト(BNE004713)は感嘆の声をあげた。魔法に魔砲に関節技っ、ここは色々なモノが沢山在りすぎて混沌としていて雑多で難しいけれど、徹底的に楽しい 「皆さん可愛らしいっ華やかっ! 見てるだけでも楽しい気分っ。では、私も変身してみましょうか!」 サーウィンの領域に入ったシーヴの淡いピンク色の唇が知らずに開く。 「遠からんものは音に聞け、近くば寄って目にも見よっ」 月明かりにシーヴの身体の中心から白いオーラが広がり、純白に輝く布に変わり弧を描いてシーヴへと戻り織り上げるように身体を覆う。その身体のラインを際ただせる真っ白な衣の周囲を飛ぶフィアキィの軌跡をなぞるように新緑の淡い色が生まれ、からみあうツルと大小様々なまぁるく可愛い葉がびっしりと茂り、ポンポンポンと真珠色の花が咲く。髪にも、手首にも、膝まで足を覆うブーツにも真珠色の花が咲き、夜露に濡れたその一滴 が虚空の足もとに魔方陣を幾重にも浮かべては消えてゆく。 「我こそマジカル☆フュリエ、見事この首取って手柄にせよっ」 その瞬間、周囲の音が消える。 「あれ? 間違っちゃった?」 ペロッと舌をだし自分の拳で頭を小突く。 「さぁ、気を取り直して頑張りましょ~」 「もうみんなの変身、終わったかな?」 次々と領域に突入しては変身してゆくリベリスタ達の姿に圧倒されつつ未だ踏ん切りのつかないシュスタイナに『エゴ・パワー』毒島・桃次郎(BNE004394)が尋ねた。 「えぇ、終わったわよ」 それを聞くとようやく桃次郎は領域側へと身体を向ける。 「わぁ、みんな魔法少女してるんだね。可愛いし綺麗だし、やっぱりエキサイトするよねっ!」 同意を求められシュスタイナは思わず返答に詰まる。 「ショーゼットさんはまだ? なら、ボクが先に変身するね」 「……どうぞ」 「では!」 桃次郎が領域との境界を走り抜ける。向こう側へと入った途端、大地を蹴った身体は宙へと浮き、なんの変哲もない布の防具は月の光が透ける程淡く儚い紗へと変わる。風にあおられ幾重にもドレープを引く薄いピンク色の布が桃次郎を優しく包み、そのくすぐったいような感触に思わず微笑むと、黄色い星型がはねるように宙を跳びスパンコールの様に淡い布をたぐり寄せて留めてゆく。茶の髪は長くなびき、降るような流星が桃次郎の周囲を行き過ぎてゆく。気が付けば、やや濃い色の編み上げたサンダルにも薄い布と星の飾りが付き、耳や髪にも同じ意匠の飾りが付く。2つの指輪が彩る2本の指をVの形にして目の前に横にかざす。 「あいとゆうきとむぼうをむねに、プアゾン・ピーチさんじょうだよっ」 声さえもどこか甘い少女めいた柔らかボイスですっかり魔法少女の出来上がりだ。ちなみに桃次郎の中では『哀と憂気と無謀を胸に、プアゾン・ピーチ惨状だよっ』に漢字変換されている(誤字ではない)。 そしてシュスタイナがぽつんと残された。黄金のコウモリはサーウィンの量産され、華麗なる魔法少女達の戦いが始まろうとしている。 「ええい!」 シュスタイナは目をつぶって領域へと走り出した。すぐに身体がふわりと浮かぶ。身体の軽さに心も少し軽くなったのか、開き直りに似た覚悟が決まってくる。 「らぶりぃ~ちぇ~~んじぃ~」 コマンドワードと共に変化が始まる。深く濃い漆黒が凝りシュスタイナの真っ白な肌を覆い尽くし、そこから黒薔薇の花びらがこぼれるようにハラハラと破片が動きとともに千切れてゆく。残るのは胸から胴を守り彗星の尾の様に長く引くドレスの裾、そして肘からふんわりと広がる袖と黒いブーツだ。髪と同じ青銀のリボンがウェストでキュッと結ばれ、左右の腕を組んだ姿でポーズを取る。 「ヘンカ トボしい」 少し不満そうなサーウィンの声。 「当たり前でしょう? 私は可愛い格好やポーズも面倒くさい事も嫌いなの。さっさと片付けるわよ」 緩やかに落下していたシュスタイナは地面を大きく蹴って飛び上がった。 ●魔法少女の魔法大戦 月明かりがまぶしい。真夜中だというのに照明などいらないほど、サーウィンの領域では巨大な白い月が全ての空間を照らしている。その中を群れ飛ぶ黄金のコウモリ達と驚異的なジャンプで空を駆けるリベリスタ達、いや魔法少女達が戦っていた。 「いくわよ!」 エレンの手にした黒猫の可愛いエンブレムが浮きまくりのマジカル☆グルカナイフ――という名の無骨なサバイバルナイフ的ななにか――は黄金のコウモリの頸動脈をスパスパと流れるような動きで一刀両断し、コロコロと頭部ばかりが地面に転がってゆく。あまりも殺伐とした塗擦風景に思わずカボチャランタンにしか見えないサーウィンが首を横に振り、目から放たれる指向性の高い光(ビームではない)も左右に揺れる。 「モット、カワイイほしい」 「あれ? まさかのダメだし?」 その時、携帯電話の呼び出し音が鳴る。 「ここ、携帯通じるんだ、うわっ、電波状況意外にいいし。はーい、もしもし?」 応答するエレンの横を桜吹雪を斬り払いつつ仄かな血色に輝きながら霧音が進む。舞うが如く振る太刀さばきその一振りごとに光は嵐にまどう花びらの様に乱れ飛び、コウモリ達を薙ぎ払う。 「どんどん行くよ~。私の思い、受け止めて!」 水面を、そして障壁に輝き浮かびあがる魔方陣ごと大きく蹴ってシャルロッテは空へと駆ける。加速度による誤差修正は考えるよりも先に身体が動き、己の命を削って放つ魔法の矢は愛らしいハートが乱れ飛び、コウモリ達を射抜いてゆく。 「きゃ~やったぁ~全部命中だよぉ~」 るん♪ といった様子でシャルロッテは脇をしめ両手を広げて頬の前にかざしてみる。ここまで来たら魔法少女を極めるしかない。 「ボクの瞳はキミにくぎづけ! 狙い撃ち! さぁ、キミもキミもボクだけのモノになってよ 今のターシャはハートの浮かぶ瞳の可愛いいだけの存在ではない。あり得ないほどの視野を誇り、易々と敵の動きを見切っている。 「ほら! えい!」 遮蔽物などない空間なのにターシャの動きは読みとりにくい。あっと言う間にコウモリの進路を塞ぎ、気合いのこもった声とともに繰り出す魔法少女の杖がコウモリの腹を突いき、コウモリは金色の粒子になってサーウィンへと戻ってゆくのだ。 「ビットちゃんたち、ゴー!」 槍を構え治した華乃は手に吸い付くように慣れ親しんだ得物を手に、クルクルと舞い切っ先でも柄でも当たるを幸いとコウモリを薙ぎ払ってゆく。その度に形を保てずエネルギーに戻った金色の粒子が空を彩る。 「綺麗だな」 キラキラと輝くコウモリの残骸は空中のあちこちでゆっくりと弧を描いて移動している。月の光に反射して金色の霧雨の様に領域のあちこちに降り注いでいて美しい。 「みんなもコウモリも華麗で綺麗! 私だって負けていられないわ」 領域を見渡したシーヴは目を見張る。倒しても倒しても、コウモリの数が減る事はない。アゲハチョウの様に優雅に空を飛んでいる。 「ちょっと派手に行くわよ! ごーごー!」 わざとコウモリが密集する場所へと天翔けると、シーヴの二丁拳銃が高速で旋回しつつ回転し、強烈な空気の渦がコウモリ達を巻き上げてゆく。頂上の領域を突破しそうな程の勢いで衝突し、そこからハラハラとコウモリの残骸である金色の光が降り注いで来るのだ。 「マジカルエターナルファンスティックれ~~~い!」 女の子らしい高く細い声が長く響き、クルリと身を翻した桃次郎のロッドから小さな光が撃ち出され、コウモリを粉砕する。 「あたった!」 ニコッと笑い小首を傾げて嬉しそうにポーズを取る。もはやどこからどう見ても魔法少女そのものだ。 「な、なんとか乗り切って見せるわ。ふ、ふん、たかが10分じゃないの!」 シュスタイナの血は今この場でだけは黒い鎖とはならず、虹色に輝き光の奔流となってコウモリ達を飲み込んでゆき……ハラハラと虹色の帯の下から金粉が降り注いでゆく。 「黒が……こ、こうなるのね」 技と視覚効果が結びつかない不思議空間で、シュスタイナはとんでもない披露を感じていた。本当に10分間保つのだろうか。 「もしもーし! どっから掛けてる?!」 エレンの電話はまだ続いている。 跳び、クルクルと回り、狙い撃ち、切り裂き、突き刺す。10分間力が枯渇しないよう、リベリスタ達は技をセーブし最後のその時まで温存する。ドジっこなアザーバイトを最高に素敵な技で送ってあげたいから……誰もがそう思っていた。そして、その時が来る。 「モウコレデ……還送」 湖の中央に次元の亀裂が生じ始める。カボチャランタンにしかサーウィンがとてとてと動き出した。 「アリガトウ、ボトムノこ」 その頭上で魔法少女達が跳ぶ。 「フィアキィ!みんなに力を分けてあげて」 その最後の一撃の為に桃次郎のフィアキィがエレンの全ての力を回復してゆく。 「いくわよっ!」 エレンのソードが閃き、霧音の桜が嵐を巻き起こす。 「また来年も……楽しみにしているわね」 その花の嵐を吹き飛ばすかのようにシャルロッテの力が空を行く。 「これが私の全力、スターブレイカーなの!」 痛みは呪いではなく大きな花火の様に空を彩り、すぐに不可視の刃によって切り裂かれた空間がエメラルド色で埋め尽くされる。 「さあ、ボクのとっておきの魔法のお時間!」 舞台女優の様に胸を反らすターシャにサーウィンが小さな手を振る。 「アリガトウ」 「僕の全力、受け止めてね!」 華乃の力が爆発し空は刻々と七色に光り輝き移ろってゆく。 「め、目が回るけど~これが最後ぉぉお!」 得物と一緒にジャンプしたシーヴもクルクルと旋回し、より大きな空気の奔流を空へ放った。風とともにコウモリ達が遠く飛ばされ領域の内壁にあたって金色の粒子に戻る。 「バイバイ」 小さな亀裂に身体を押し込むとサーウィンはもう一度手を振り、吸い込まれるかのように姿を消した。コウモリ達もかすむように消え領域が消失してゆく。魔法少女達の可愛いコスチュームもうっすらと霞んでゆき、その身体はゆっくりと地面へ落下してゆく。魔法の時間は終わり、なにもかもが元通りに戻ってゆくのだった。 「終わっちゃったね」 シャルロッテは少し淋しそうに笑って言った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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