● 『全ての世界の悪を砕く! それがこの! 正義の使者ジャスティーン!』 シャキーンと決めポーズ。 ばっちりと決まったソレは、特撮ヒーローのそれに近いもの。 「……なんだこのコスプレ君は」 しかしそんな存在を一般的な場所でリアルに見れば、大半の人がこんな言葉を口にするかもしれない。 もちろんと言うのは憚られるが、この言葉を口にした男は仲間を引き連れ悪事を働こうとしていた存在だ。 適当な獲物を見つけて、路地裏で――とやることはセコイが、フィクサードだ。 『さぁ、そこのキミ! 正義の使者ジャスティーンが来たからにはもう大丈夫だ! 逃げたまえ!』 「え、えっと……ありがとう!」 そしてジャスティーンが来た事により、その獲物となったリベリスタの少女には逃げられようとしている。 「あぁ、お前等はアイツを追え。俺はこいつの相手するわ」 ならば獲物を逃がさず、そして邪魔をしたジャスティーンを倒す。 「邪魔してくれた礼に俺等と遊んでいけよ」 そうしなければ、彼等の気は済まない。 『良かろう、この私の力を存分に見せてやろう! エルとエスがいなくとも、私は正義を貫くのだ!』 当然のことながら、ジャスティーンの側もそうなれば逃げる気はない。だって正義の味方だから。 ただしその正義に力が伴っているかどうか。それはまた、別の話だが。 『いくぞ、正義の剣! ジャスティーンブレイド!』 パキィン! 『折れたァッ!?』 「……」 勢いよく振り下ろしたジャスティーンブレイドは、フィクサードの1人の脳天に直撃したところでパキンと折れた! 『な、ならば正義の銃! ジャスティーンキャノン!』 「……いや、遊んでんのか?」 ジャスティーンキャノンに至ってはエアガンが当たるよりも痛くない! これでは、フィクサードがそう言ってしまうのもしょうがない話である。 当のジャスティーンは決して遊んでいるわけではないが……フィクサード達とアザーバイドのジャスティーンの間には、途方も無い実力差があるらしい。 「ま……しゃしゃり出た分はお礼をさせてもらおうか」 『ま、待て! 話せば分かる! お前と俺は会話が通じるじゃないか! 戦いよりも会話による平和的解決をだな! 敵同士が会話して手を取り合ってとか、すごい夢のようだが実現はきっと可能だと思うんだ! だからちょっと落ち着け! な! な!』 「……殴る気も失せるが……悪いな、ケジメってヤツだ」 あまりにも弱すぎる正義の味方に流石のフィクサードも溜息しか出てこないものの、振り上げた拳を降ろすためには殴っておく必要があった。 正義の使者ジャスティーン。 彼は弱すぎるながら、てんびん座のアザーバイドである――。 ● 「……」 「……まぁ、襲われてる人とこのジャスティーンを救出すれば良いわよ」 無言のまま溜息をついた『白銀の魔術師』ルーナ・アスライト (nBNE000259)の隣で、桜花 美咲 (nBNE000239)は今回のミッションの目的を告げた。 戦場となるのは街中でも人気が極めて少ない路地裏。 逃げたリベリスタの少女を追うフィクサードは6人。少女は彼等に追われながら、必死に人通りの多い道へと進む。 しかし真っ直ぐ進めばすぐに追いつかれてしまうかもしれないと考えたのだろう、右へ左へと迂回しながら逃げているためか、人目につく場所に出るまでには少し時間がかかる。 問題があるとするなら、フィクサード達が人目につく場所でも戦闘を仕掛けないかの部分ではあるが、 「今から向かえば路地裏を逃げる少女を保護も出来るし、その場で決着をつけることも可能ね」 そこは集まったリベリスタが上手く動けば避けられる話ではあるようだ。 「じゃあ、そのジャスティーンを助けるためには二手に分かれる必要がある、かな?」 「そうね……彼はものすごく弱いから、こっちの方が危ないかもしれないわ」 そんな会話を交わしたルーナと美咲の言を取れば、相対するフィクサードが1人であっても正面からぶつかったジャスティーンの方が実は危ないらしい。 互いに近接戦闘を仕掛けられる位置にあるせいもあり、ジャスティーンが『ごめんなさい!』しながら時間を稼いでも、そう長く時間は稼げないだろう。 「今回は展開速度が命よ。ジャスティーンが通ってきた穴は近くで開きっぱなしだから、それも閉じてきてね」 「うん、わかった。……ボクが特訓してあげたくなるね」 少女を救い、弱きヒーローを救う。 そして穴を塞ぐとなれば、成すべき事は意外と多いかもしれない。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月15日(火)23:01 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●逃げ惑う少女と、謝り倒す正義の使者 入り組んだ路地裏を見渡す視線。 遠くを見通す3つの千里眼の眼が、2つの目標を探し飛ぶ。 「人の気配がほとんどないね……ジャスティーンと遥さんはどこかな……?」 「あれ……ですかね、追われていますし」 フィクサードが派手に暴れまわる事が出来る程に人の気配はなく、存分に戦えそうだと感じる『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)の隣で、その内の1つを見つける『生真面目シスター』ルーシア・クリストファ(BNE001540)。 逃げ惑う少女は一般人に危害が及ばないように考えているのだろう、右へ左へと、『相手を撒く』事を念頭において動いているらしく、普通に近づこうとするだけでは時間がかかる事は間違いない。 「ジャスティーンさんはこちらですね、ではいきましょう!」 そんな折、『混沌を愛する戦場の支配者』波多野 のぞみ(BNE003834)によって把握された、もう1人の目標ジャスティーン。 リベリスタ達のいる場所からは何を言っているか聞こえないものの、指を鳴らし迫るフィクサードに『ゴメン、許して!』と謝っているのだとは動作で理解する事が出来た。 およそ正義の味方とはかけ離れた情けない姿だが、彼の行動が一時的にとはいえ、逃げる遥を救った事も事実である。 「正義の味方のアザーバイド、ねえ。上のチャンネルも数多いし、そういうのが紛れ込んでることもあるか」 そう言った『ソリッドガール』アンナ・クロストン(BNE001816)が感じるように珍しい存在ではあるが、広い世界を探せばそんな存在だっているだろう。 ともすれば平和を望むリベリスタからすれば同胞でもあり、救う理由などそれで十分。 ――しかしジャスティーンと遥の両方を助けるなら、片方ずつ回っていては時間が足りない。 「ジャスティーンも助けられたおねーさんもピンチなんだよね? 早く助けなきゃ!」 と『チャージ』篠塚 華乃(BNE004643)が急かすのも無理がないピンチ具合だ。 「加護を施すよ。後は二手に分かれて……だね」 故にリベリスタは、人数を割いて両方を同時に守ろうと決めた。それも地上を走ってではない。 四条・理央(BNE000319)が施した翼の加護によって、空を移動しつつの迅速な救助を目指している。 幸運な事があるとするなら、ジャスティーンがフェイトを得ている点か。 「フェイトを得てるなんて、今までとは少し変わったお客さんね。無事に帰してあげたいところだけど……」 そのおかげで、ジャスティーンを倒さなければならないという事態は起きない。 出来る事なら元の世界に無事に帰してあげたいと『ANZUD』来栖・小夜香(BNE000038)は願うものの、 「そのまま帰すより、鍛えて帰した方が……とボクは思うな」 もしかしたら元の世界でも通用しない強さではと考える『白銀の魔術師』ルーナ・アスライト (nBNE000259)は、ジャスティーンを鍛えて強くしようと考えている。 「賛成だね……。色んな考え方があるだろうけど、力の伴わない正義は迷惑でしかない、とボクは思うし」 アンジェリカが賛同している事もあり、救出の後はジャスティーンを保護する流れとなりそうだ。 さておき、そこまで悠長に構えている暇はないとリベリスタ達は飛ぶ。 「では、二手に分かれる前に防御効率を最適化しておきましょう」 別れ際にのぞみの防御動作を全員で効率的に共有化し、一応の準備も整った。 「そちらは任せましたよ。まったく、異世界に無様晒しに来るとは酔狂なことですね。助ける必要があるのがまた面倒です」 かなり面倒くさそうにしている『落ち零れ』赤禰 諭(BNE004571)だが、これもリベリスタの仕事だ。 ●逃げる遥 「またあちらこちらと移動してますねぇ……追うのは正直、面倒です」 逃げる遥をファミリアーによって使役した鳥に追わせた諭が、やれやれとため息をつく。 それでも地上で障害物を避けながら歩くより、空を飛んで最短距離を狙う作戦であれば追いつく事が出来る。 「追いつきましたね。行きましょう」 ルーシアがそう言う頃には、リベリスタ達は遥の上。 追いかけるフィクサード達はある者は地上を走り、ある者は道を作り上げるビルの壁に張り付き、またある者は建物の中を通って彼女を追っているようだ。 「ほらほら、追いついちゃうよ!」 標的である遥を追うという目的の中で、彼等は空を見上げようとはしない。する必要がない。 「鬼ごっこもそろそろ終わりにしようか」 地の利があるフィクサード達が遥に追いつくのも、時間の問題か。 追われる遥もまた、前だけを見据えて進んでいるせいか、上にいるリベリスタ達の存在には気付きもしていなかった。 「ほら、捕まえ……」 捕まえようとする手が遥に伸びるのと、 「こらぁぁぁ!」 地上めがけて一息に飛んだ華乃が割って入ったのは、ほぼ同時。 「嫌がってるおねーさんをたくさんで追いかけて、そんなことしちゃだめでしょ! 僕でも分かるのに、おにーさん達はそんなことも分かんないの?」 そして華乃が槍を構え牽制する間に、次々と降り立つリベリスタ達。 背中に生えた小さな羽根を利用し、空から降り立った姿に「天使……?」と遥が呟く。 実際にルーシアはシスター服に身を包んだ聖職者であり、フライエンジェでもあるため、あながち間違いでもない話ではある。 「どうする?」 「邪魔するならって言いたいところだけどな。こっちは準備不足だぜ?」 一方でリベリスタ達に割り込まれたフィクサード側は、余計な戦闘は避けたいという気持ちもあるようだ。 今は統率するべきリーダーが、この場にいない。 故にその場の判断で動いても構わないものの、邪魔をされた上に準備不足だから逃げました……では、後で大目玉を食らうかもしれない。 「逃げないでくださいね、追うのは正直面倒です。ああ、イノシシ並みに突っ込んで倒れてくれるなら楽ですが」 逃げる以外の選択肢の後押しをしたのは、先ほどと同じように『面倒だ』と構えた諭の一言だった。 「どっちにしろ簡単に逃がしちゃくれねぇ、か」 であるが故の『仕方がない』が彼等の出した答。 「援護する、突っ込め!」 壁面にくっついた2人の射手と、ビルの窓越しから顔を出した魔術師の援護は開戦の狼煙。 「大勢で女の子をいじめようなんて、感心しないね」 対するリベリスタ側も、アンジェリカの作り上げた不吉を届ける月の輝きを皮切りに、徹底抗戦の構えを見せる。 「悪いな、俺達ゃそういう事が好きなのさ!」 リベリスタVS不良フィクサード。 神秘界隈の住人から見れば、単なる小競り合いに過ぎない戦い。 しかし同胞を守るため、別の世界からの来訪者を守るため、リベリスタ達はこの戦いに負けるわけにはいかない。 「さぁ、コイツならどうだ!」 壁際から放たれた一撃は、相手を殺すよりも動けなくする攻撃に近かった。 所詮は彼等もカテゴリ的には不良。喧嘩に勝利する事は、相手を殺す事とは違うのだとわきまえてはいる。 「狙いはそれなりに正確だね……」 場数を踏んでいるアンジェリカやリベリスタ達からすれば、そう厳しい攻撃ではないが、やはり遥だけは狙われれば万が一もあるのが厄介か。 「まったく、おとなしく捕まれば面倒もなかったのですが……やはり面倒なことになりますね」 しかし保護した遥は諭の作り上げた影人が庇っているおかげで、多少は放っておいてもなんとかなるかもしれない。 「じゃあ、ボクは好きに動くことにするよ」 「久々にルーナさんとも共に立つ戦場、気合もひとしおです。成長ぶり、間近で見させて頂きますねっ!」 加えて近くには自らの判断で動こうと雷を迸らせるルーナや、彼女を応援しつつ援護を担当するルーシアもいる。 遥を助けに来たメンバーは、後衛向きの者が多い事がリベリスタ達の抱えるネックではあるものの、だからといって戦い方は相対するフィクサードよりもバラエティには富んでいる。 「後衛……と言いたいところだけど、私も頑丈な方に入るか。しょうがない」 素早く迫りくるソードミラージュや、気糸を放つナイトクリークから後ろを守る壁がどうしても薄いのなら。 本来、成すべき事が仲間の傷を癒す事であるアンナが前に出るのは、仕方のない部分だろう。 「まずはお前が相手かぁ!? よっし、やったるぜ!」 「そりゃ確かに私は回復手だけどね。アンタ達程度の相手なら、地力でなんとかなるわよ!」 そう、仕方のない部分ではあるのだ。 ――が、振り下ろされたナイフをミスティコアで軽く捌いてしまう程の実力をアンナは持っている。 「敵がバラバラに来るようなら好都合、各個撃破にしちゃいましょう」 続けて彼女は指示を飛ばし、1人ずつ倒そうと仲間達に告げた。 確かにフィクサード達は地上から、壁面から、屋内からと、遥を追うための布陣を敷いたまま。 逆に言えば、それは個々がバラバラに動いている事を意味し、大半が孤立した状態なのだ。 「喧嘩らしく派手にいきましょうか」 そこを突けば相手の瓦解は目前だろう。 頷いた諭はルーナの炎を受けて傷を負ったスターサジタリー目掛け式符を放ち、 「回復は……間に合ってるようね」 息吹によって仲間の傷を癒すルーシアに軽く視線を移したアンナの神聖なる裁きの光が、フィクサード達を裁く。 「ちっ。火力の差は歴然か?」 初撃からのわずかな攻防を見れば、実力に大きな開きがある事は誰だって理解可能だろう。 「降参するなら……戦いはすぐに終わるよ……」 「それだけは一番避けたいところだな!」 降参を促すアンジェリカではあるが、捕まる事だけは避けたいフィクサードの銃弾が彼女目掛けて飛ぶ。 「じゃあ、しょうがないね……」 面接着の能力を駆使して壁に張り付き、慣性を利用して弾丸を回避した彼女の運動能力はすばらしいの一言に尽きた。 避けられたフィクサードが「すげぇ……」とその動きに感嘆する中、叩き込まれるのはブラックジャックの黒きオーラだ。 「後、3人か」 「気を抜かないでいきましょう。私は援護に徹底しますね」 「わかった。じゃあボクは攻撃に徹底するよ」 軽く会話を交わしたルーナとルーシアに、油断の二文字はない。周囲で戦う仲間たちも――である。 「遥さんは下がっていてくださいますか? もしも戦うというのなら、全力で援護しますけど……」 「お手伝いくらいなら、できます!」 敵から逃げ、友軍から守られる存在であった遥も戦う姿勢を見せた事は、フィクサード達をたじろがせるには十分な要因となっただろう。 「このまま押し切るわよ。ジャスティーンの方に向かった皆とも、合流したいしね」 その様子をちらりと見た後、ビルの谷間から僅かに差し込む太陽の光に眼鏡を輝かせ、では行こうと味方を鼓舞するアンナ。 歳はそう放れていない彼女から、攻撃姿勢を崩さないリベリスタ達から、その強さをフィクサード達は肌で感じ取ったのかもしれない。 「逃げんぞ!」 「そうだな、リーダーとあいつ等にゃ悪いがな」 司令塔のいない中で、彼等はそれなりにはがんばった方だが、実力差だけは如何ともしがたいモノ。 一目散に逃げる彼等を追うかどうか。 「追うのは面倒なんですけどねぇ……」 「それより、ジャスティーンの方に行こうよ」 全員の捕縛を考えていたらしい諭を制し、提案したルーナに他のリベリスタが賛同した事によって、まずは合流する事と相成った。 ●最弱の正義の味方 『落ち着け! 俺を殴ってキミはスッキリ! だけど俺は超痛い! 穏便に済ませよう!』 「あー……先に仕掛けたのはそっちだろ?」 相変わらず、拳を鳴らして凄むリーダーにジャスティーンは謝り倒していた。 とりあえずは言いたい事を言わせてしまおうとでもいうのか、リーダーはため息混じりに彼の話に耳を傾けている。 最早それは、ヒーローのあるべき姿ではない。 「追われてる女の子を悪漢の魔の手から救い出す。見事なまでに正義の味方してるね」 ただの小者に近い風体になってしまっているが、一時的であれ『遥を救った』のは事実だ。その事実を持って、理央はジャスティーンを正義の味方だと言った。 「彼我の実力差を分析出来てないのが残念すぎるけど、だからこの状況か」 自身の力が心の在り方に比例しているかはともかくとして、敵に全力で謝る残念さ具合も個性といえるかもしれない。 『お、お前達は??』 半ば地面に頭をこすり付けるほどの土下座を披露していたジャスティーンは、リベリスタやフィクサードといった単語を知らないアザーバイドだ。 この問いは、知らぬからこそ出たもの。 「正義の使者【パラサイト・レッド】、正義の心に導かれて助太刀します♪」 だからこそ『ふざけているかも』と思いつつの、のぞみのこの台詞も素直に受け止められるのだろう。 声を出すと同時に投げた閃光弾はリーダーの動きを止めるには至らなかったが、ジャスティーンから気を逸らすだけでも好結果は出している。 (私達は敵ではないわ。あなたが助けた少女の追手も、私の仲間が助けているわよ) 『普通にしゃべった方が早くないか? まぁ……お前達が悪いヤツではないとはわかった!』 わざわざハイテレパスを介しての小夜香の言葉にはそう突っ込んだが、ともかく敵ではないとジャスティーンは判断したらしい。 もしもこの会話をジャスティーンが言うように口にしていれば、リーダーにも『あまり良くない状況だ』と知らしめる事が出来たかもしれないものの、 「俺を放置してもらえないとありがたいんだがな。お前達はアークか」 野良フィクサードのリーダーは、聞いていないが故にその状況を知らない。 もしかしたらとは思っているかもしれないが、それを知る術を彼は持っていないのだ。 そんな彼でも、理央と小夜香の名声は耳に届いている。警戒すべき相手だと知っている。 「良ければ引いてもらえないかしら? 無用な戦闘は避けたいところなのだけど」 「悪いがそういうわけにもいかんな。こちらにも体面というものはある」 知っているからこそ小夜香の勧告は本来ならばありがたいものだが、その勧告を何もしないままで飲めばリーダーとしての立場はない。 要は短時間であれ戦えば、体裁は繕えるのだと彼は言っている。 「支援をお願いします。ジャスティーンキャノンをもつあなたにしかできない事ですから」 『よ、よーしわかった!』 たとえ豆鉄砲であっても、気を引くくらいは出来るはずだとジャスティーンの参戦を促すのぞみ。 「どうやらお前が前衛か。では相手を願おう」 その彼女を『前に出て戦う者』と判断したリーダーは拳を振るい、真っ先に狙いを定め穿つ。 「く……流石に親玉というだけはありますね」 テンタクラー・ウィップをクッション代わりに衝撃を緩和したはずの一撃は、鞭越しであってものぞみに大きな衝撃を与える強烈さ。 『よし、そこだ、頑張れ!』 「癒しよ、あれ」 気を抜けばやられかねない攻撃を耐えた彼女を、豆鉄砲を撃つジャスティーンと、癒しの息吹を送る小夜香が懸命に援護する。 「バリアを展開するよ、皆が来るまで頑張って」 さらには理央の展開したエル・バリアがのぞみの守りを硬くもしてくれた。 ならば。――ならば。 応えなければ正義の使者は務まらない。 「さあ、こっからが本番ですよ。覚悟は宜しいですか悪者さん?」 戦闘を支配する眼力を発揮したのぞみの目が、鋭くリーダーを射抜く。 「俺を退屈させるなよ」 応戦するリーダーとの戦いは、仲間が駆けつけるまでの僅かな時間だけ。 しかしその短時間を凌ぎさえすれば、任務の成功は目前だ――。 ●救われた正義の使者 「仲間は来ませんよ。むやみな戦闘を続けますか?」 合流したルーシアが、リーダーに問うた。 もちろん答は「断る」で確定しているため、不良フィクサードのリーダーは下がりつつ、牽制しつつ撤退していく。 『正義の勝利だ!』 その姿に、勝ち誇るジャスティーン。 「正義感だけは認めてあげましょう。それ以外に褒める点が無いので」 『ハハハ、そう言わないでくれ!』 とはいえ、この戦いにおいて彼は殆ど役に立ってはいない。抉るような諭の言葉には、流石のジャスティーンもたじたじだ。 「えへへ。ねえねえ、ジャスティーン! サイン、お願いしていい?」 そんな彼に、華乃はサインをねだる。 どんなに情けなくても、本物の勇気を持っていたから。それはまさしく、正義の使者のあるべき姿だから。 「それで、これからどうするの?」 『エルとエスと合流したいんだがなぁ』 しばらくの談笑の後、これからを尋ねた理央に対してジャスティーンは明確な答を出せずにいた。 仲間と合流したい。 しかし、どうやらこの世界に来る前に別の穴に落ちたのか、元の世界にいるとも限らないらしい。 「じゃあ……とりあえずは保護かしら?」 ならばアークで保護しようと、小夜香が言う。 「となると……」 「特訓だね……」 顔を見合わせ、頷きあうルーナとアンジェリカは、保護している間にジャスティーンの特訓をしようと思ってもいる。 『ほう、正義の味方がパワーアップするイベントだな!』 ――ジャスティーンは知らない。 おそらく彼のこれまでが何だったのかと思うほど、ハードな特訓が待っている事を。 この世界の脅威にまともに対抗するためには、生半可な特訓では太刀打ち出来ない事を――。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|