●地獄の業火 湖岸に立つ金閣が炎上していた。 美しく黄金の羽根を広げた鳳凰が空を舞って火を口から吐く。寺は一瞬にして火の手に包まれた。燃え盛る炎が禍々しく湖面に写し出される。 「この浮世はすでに生き地獄だ。私が仏に代わってすべてを浄化させる。もがき苦しみながら六道輪廻を彷徨い、永遠の地獄の業火を味わうがいい」 屈強な肉体を誇る僧侶が大槍を振りかざしながら叫んだ。後ろには部下の僧兵たちが刀と猟銃を構えて付き従っていた。黒い袈裟を纏い白い頭巾で頭を覆っている。 龍造寺実光は高らかに吠えた。血塗られた経典を開き、呪文を唱えると十メートルを超す巨大な金剛力士が森の奥から姿を現す。 実篤は神仏への信仰が現代において廃れてきていることを嘆いた。どれほど文明が発達して人々の暮らしが豊かになっても争い事や悩みは堪えることはない。 人々が神仏への信仰を止めたからだと実篤たちは考えた。それならば自らの手で神仏に代わって愚民共を成敗しなければならならないと現代に現れた。 とくに自分たちを祀っていた供養塔を破壊されたことに怒り狂っていた。 炎上している寺は偽物だった。町おこしの為にそれまで立っていた古刹の寺を潰して新しく黄金の書院造の寺を改築したのである。そこにはかなりの賄賂が流れていた。 それまであった古い金剛力士像や鳳凰像も撤去させられた。実篤によって襲われた参拝客たちはすべて今回の事件の関係者だった。 「だれか、うちの子がまだ中にいるんです! 助けてください」 そのとき新しい寺の住職である島田創玄が実篤の前に現れて懇願した。金閣の中には逃げ遅れた創玄の一人息子の玄太が二階に取り残されていた。すでに火の手が前面に回ってとても一般人は助けに行くことができない。 「だまれ! お前も今回の事件で金を貰って住職になり私腹を肥やしたのだろう。僧侶としてあるまじき行為。息子とともに地獄の業火に捲かれて浄化されるとよい!」 実篤は大槍を振りかぶって創玄に突きつけた。 ●救世楽土 「琵琶湖のある小さな町の寺にE・フォースの僧兵集団が現れたの。奴らは寺を炎上させて参拝客を襲っているわ。このままでは更なる犠牲が出る。そうならないうちに早く現場に急行して悪事を止めてきて欲しい」 『Bell Liberty』伊藤蘭子(nBNE000271)がブリーフィングルームのモニターに写し出された情報を指しながらリベリスタ達に説明を加えていく。 龍造寺実篤はこの土地を支配していた戦国時代の僧兵集団の頭領だった。このたび根城としていた古刹の寺の供養塔が破壊されて恨んで出てきた。古刹の寺を破壊した関係者が集まったこの日の法要行事に合わせて出現したのである。 僧兵集団の他にもE・ゴーレム化した鳳凰像や金剛力士像が彼らとともに一般人を襲い始めていた。さらにこの寺の新しい住職である島田親子が特に危険な状態にある。 「玄太くんは、炎上する金閣の二階に一人で取り残されている。すでに火の手が回っていて危険な状態だわ。島田住職の方も龍造寺実篤に殺されようとしている。状況は厳しいけれど、なんとかして彼らを救ってきてほしい。神仏じゃないけど、今回は貴方たちが無事に解決して帰って来れるように信じて待ってるわ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月11日(金)23:04 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●浮世の地獄 湖面に炎に包まれる金閣が写し出される。鳳凰や金剛力士が岸辺で逃げ惑う人々を襲っている。突然現れた僧兵たちも槍と銃で威嚇して憤怒の形相で迫った。 真っ赤に燃えあがる金閣と逃げる人々はまるでこの世の地獄絵図のようだ。 「生臭いな。自己満足に浸って暴れてすっきりか?」 『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)は暴れ回る僧兵たちを睨みつけて現場に立ち向かう。傍らで従うのは『狂気的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)だ。虎美はユーヌと久しぶりの実戦であった。 「このモヤモヤは敵にぶつけるよ!」 だが、それは裏を返せば大好きなお兄ちゃんといつもいることの証だ。ユーヌと一緒なら戦いは心強いというのが皮肉でもある。虎美は複雑な気持ちを抱えて敵に挑む。もちろんユーヌに対しても負けるつもりはない。 「ったく、ヒマなユウレイね。なにをいくら考えてたって、死ねばそれまで。それがえらそうに、生きもののジャマをするな」 黒の革手袋を引っ張りながら『ならず』曳馬野・涼子(BNE003471)は速度を生かして真っ直ぐに敵の方へ向かう。鋭い目つきで前方を見据える。 「供養塔破壊は可哀想だけど、そのせいであの親子が狙われるのはちょっと違いじゃないのかしら?」 『混沌を愛する戦場の支配者』波多野 のぞみ(BNE003834)もユーヌや涼子たちの意見に頷く。翅を羽ばたかせてすぐに救出に飛べる準備を整える。 「僅かの民が富を貪り、我ら民草の暮らしは混迷に傾き……これもまた、名を変えた地獄でしょう。だが、いや、だからこそ。この世を浄化するのは、我らこの世に生きる人間であるべきでしょう」 悟りを開いた僧侶が発するように『痛みを分かち合う者』街多米 生佐目(BNE004013)は口を開いた。資本主義のなれの果てが今回の過ちを生みだし世の中に混乱を招く。生佐目の役目はそんな世の中の負の芽を摘み取ることだ。刀の柄を持つ手に力を入れて決意を込める。 「良心的な神様なんて、最初からいないんだって」 『贖いの仔羊』綿谷 光介(BNE003658)は思い出していた。あの日自分だけが生き残って家族は皆この世から消えてしまったことを。 あれから何度も自分の運命を呪った。もしこの世に神がいるならなぜ自分をこんな目に合わせた。そう、普段は言わないが――神仏の崇拝も大嫌いだ。 「価値観はかわりゆくものです。たしかに古き伝統が喪われることは悲しい事です。彼らの無念も理解できない部分もないことはないですが、その為に力でねじ伏せたり、無辜の人々を害することなどあってはいけません」 『不倒の人』ルシュディー サハル アースィム(BNE004550)はただその紅い瞳を真っ直ぐに敵に向けた。たとえ異教徒であってもその信義の根本はわかる。だからこそ人々を苦しめることはあってはならないはずだ。 「ボクが何があっても皆さんのEPは回復しますっ! 後の事は心配せずに全力でいってくださいっ!!」 現場が近づいてきて離宮院 三郎太(BNE003381)は叫んだ。目に見える範囲の敵は数多い。今回は後ろからのサポートが重要になる。 三郎太はいつも以上に気合いを込めて超頭脳演算でさらに身を引き締めた。 ●仏敵退散の役 「敵はかなり多いですからね、連携していきましょう!」 のぞみは後ろからディフェンサードクトリンで味方に支援を送る。すでにリベリスタの姿を見つけた僧兵の頭領である龍造寺実篤が迫ってきた。 涼子は先陣を切って真っ直ぐに突っ込んだ。敵中に囲まれたその瞬間を狙って、涼子は跳躍する。周りの敵に八又の首が次々に襲いかかって暴れる。 僧兵たちは襲われて悲鳴をあげる。大将の実篤も涼子の威力ある攻撃に巻き添えを食らって後退した。体勢を立て直すために実篤は味方に指示をすぐに出す。 「我々の救世を邪魔する奴は誰であっても許さん。容赦なく撃ち殺せ」 実篤の号令と共に僧兵たちは一斉に銃を構えた。ユーヌは救出する仲間が撃たれないようにまずアッパーユアハートを放って敵を引きつけた。 「さて遊ぼうか? 鬼さんこちら手の鳴る方へ。おや、無意味な仏門に捧げて遊びは苦手か?」 「いいだろう、まず貴様から叩き潰してやる」 怒りを食らった僧兵たちが一斉にユーヌの元へ銃をぶっ放しながら近づいてきた。そこへ三郎太がピンポイントで狙って着実に敵を仕留めにかかる。虎美も負けじと銃を突きつけて即座に連射した。 「骨董品みたいな銃で私の銃とやり合おうなんて百年早いよっ」 ユーヌのアッパーになんか負けてられないと敵を挑発する。 実篤たちもすぐに応戦してきて激しい戦いが起きた。雨霰に飛び交う銃弾からユーヌは三郎太たち後衛陣を庇って立ちはだかる。ユーヌが全力で敵を引きつけている隙に虎美と生佐目が人々の避難を呼びかけた。 「ここから離れて! 早く!」 光介も叫びながら人々の避難を促す。隙を見て金閣の方を千里眼で見通して二階にいるはずの玄太の様子を把握する。さらに超直観で玄太の周りを囲む位置を掴んだ。すぐにのぞみに向かって大声を張り上げる。 「のぞみさん、南の窓側が手薄です。一刻も猶予はありません、はやく!」 光介の言葉にすぐにのぞみは反応した。翼を広げて飛び立つ。だが、救出に向かおうとするのぞみに気づいた金剛力士がやってきた。 生佐目は刀を振り上げて斬りかかる。屈強な背に向かって上から押し切るように刀を鋭く振るった。 金剛力士は振りむいて生佐目と対峙した。背中を突然斬られて目が充血している。すぐに生佐目に大太刀で薙いできた。生佐目の刀が大太刀を受け止める。 「有象無象を散らすのみとは、仏敵退散の役が泣きますね。分からないのですか、討つべきは、徒にさばる悪に非ず、前に立ちはだかる悪なれば」 生佐目が金剛力士を足止めする間に参拝客はなんとかその場を脱出する。援護しようと近づいてきた鳳凰が火炎を放って生佐目を攻撃してくる。 「そっちには絶対に行かせない!」 涼子がアッパーユアハートで鳳凰を引きつけた。鳳凰の攻撃対象を生佐目から離すことに成功してさらにのぞみが救出に突入する道を作った。 「すいませんが、少し失礼させていただきます……!」 敵が惹きつけられている間を縫ってルシュディーは迅速に動いていた。一人取り残されている島田創玄住職の元へ急いで駆けつける。すでに怪我をして身動きの取れない状態だった。ルシュディーは背中に創玄を負う。 「まだ息子が金閣の中にいるんだ、早く自分が助けにいかなければ!」 「ご子息は仲間が助けにいってます。必ず助けます。ですので、今はご自身の安全をお考えください」 喚き散らす創玄を何とかルシュディーは穏やかに宥めた。ルシュディー達の目線の先には燃え盛る炎に包まれた金閣に飛んでいくのぞみの姿が見えた。 「援護は任せて! あとは頼んだよ」 虎美はのぞみの行く手を作る為に後ろから素早く動きながら無数の弾丸の嵐を降らせて金閣の南側の窓をぶち抜いた。のぞみは突入する寸前で、中にいる敵に向かって閃光弾を投げつけた。敵が怯んだ隙をついてのぞみは侵入する。 「玄太く~ん、助けにきましたよ~」 のぞみはすぐに玄太の姿を見つけた。すでに床に倒れて周りは迫る来る火の手に囲まれている。行って助け起こすとすぐにのぞみは玄太を抱えた。 「そうはさせるか!」 中にいた僧兵たちが銃をぶっ放す。のぞみは背中で玄太を守った。激しい攻撃にのぞみは倒れそうになったが必死に歯を食いしばる。 「この子をいただければもう用はないので、サラバです!」 のぞみは窓枠を蹴ってなんとか飛び立つことに成功した。だが、負ってくる敵の突撃を食らってのぞみは徐々に高度を下げて墜落しそうになる。光介がすぐに駆けよって二人を安全な後方へと下がらせた。 ●仲間を信じる 「他人の信仰をとやかく言うつもりはないんです。普段は」 意識を失って動かない玄太の姿に思わず光介は呟いた。もちろん神仏を信じる歩人もいる。自分は信じない。ただそれだけ。だからこそ逆に。 玄太や傷ついたのぞみを狙って鳳凰が上空から襲いかかった。火炎を吐きながら容赦なく光介を地獄の業火に巻き込む。光介は堪えた。 こんなところで倒れるわけにはいかない。二人を必死で庇いながら光介は迫る来る鳳凰達にむかって普段は見せない感情を爆発させた。 絶対に救われてやる義理なんかない。 「神仏の押し売りには……虫唾が走るんです!」 執拗な攻撃を繰り返してくる鳳凰にさすがの光介も披露した。このままでは自分が突っ伏してしまう。だが絶対に二人を守るという気迫で奮闘した。 「あんたの相手はこの私だよ!」 その時だった。虎美が光介を助けにやってくる。虎美は鳳凰に向かって狙いを澄ますと羽を狙って狙撃した。続いて三郎太も頭部を狙って撃ち落とす。 「大丈夫ですか? そうそう思うようにはいかせませんよっ!」 危機一髪の所で光介は仲間に救われていた。このままではダメだと思った時に、虎美と三郎太が間に入って鳳凰を撃ち殺していた。 「みんな、助けに来てくれてありがとう」 神仏は信じない。そうさっき光介は思った。ならば自分は仲間を信じたい。この恵まれた仲間を信じて自分はこれからも戦って行く。 光介は傷ついた仲間に回復の術式を施す。もう迷うことはなかった。あとは頼もしい仲間が残りの敵を倒すことを信じて回復に努めるだけだ。 「もう種切れですか? さすがに回復役がいなくなれば脆いですね。まあ、元々貴方はただの木屑だから無理もありません。もう一度原点に帰ってやり直したらいかがでしょう。禅の空になるのも一興だと思います」 生佐目は余裕で語りかけた。その態度とは違って生佐目も身体に大太刀で斬られた深手をすでに負っていた。さすがの巨体の威力ある攻撃に疲労は隠せない。 だが、金剛力士の方も深いダメージを受けていた。鳳凰を失ってすでに回復は見込めない。光介や三郎太にルシュディー達が盤石に控えるリベリスタ側と違って不利な状況に追い込まれていた。すでに身体中にひび割れが出来ている。 生佐目は漆黒の霧で敵を苦あらゆる苦痛に悩まされる箱に閉じ込めた。もがき苦しむ金剛力士がうめき声を上げながら大太刀を振りまわす。 「私に信仰という難しいことは分かりません。信仰を抱いた皆様方の姿は、私には閃烈すぎる。せめて、何かを学べれば、理解できればよかったんですが」 生佐目が跳躍して頭上から刀を叩き落した。真っ二つに頭を裂かれた金剛力士がその場に大きな音を立てて崩れさる。それを横目で見ていた実篤は舌打ちをした。 「おのれ……仏の罰を食らわしてやる」 実篤は大槍で目の前にいる涼子に襲いかかる。咄嗟に突き出された槍を掴んで串刺しにされることを避けたが今度は逆に式神の攻撃を受けてしまう。 その場に動けなくなった涼子はそのまま大槍で何度も串刺しにされた。何度も突き刺されて血を撒き散らしながらそれでも涼子は堪え続けていた。敵の同士討ちを誘いこむように暴れながら周りの僧兵を同時に片付けて行った。 あとは仲間の援護を待ってひたすら耐え忍ぶ。 「この血を、命をかけられない奴に負けてたまるか!」 涼子は反撃の機会を伺って血の掟を遣って反撃の機会が来るのを待つ。そこへユーヌが涼子を援護するために不吉な影で実篤を覆った。 「不運だな? 妄念怨念妄執で滑稽晒して道化者。何も残さず果てろ」 ユーヌの攻撃に実篤は表情を歪めた。大槍を引いて涼子を引き離す。ルシュディーと光介が涼子を援助して回復を施した。 「さあ、後はあなたを殲滅すれば終わりね。供養塔は再建してあげるから成仏しなさいな」 のぞみも上空から一気に実篤に向かって閃光弾を投げて怯ませる。激しい攻撃の連続に実篤は耐えきることができない。 三郎太が突然そこで前に出てきて叫んだ。 「前にでれば己が拳で戦い、後ろでは回復を担うっ! これが万能を目指すボクの戦い方ですっ!」 素早く敵の動きを読んだ三郎太が間合いを詰める。実篤も大槍で薙ぎ払おうとしたが、復活した涼子が間に入って大槍を掴んで離さない。 「地獄へいくのはあんたのほうね」 「馬鹿な――」 涼子の登場に思わず実篤は驚愕した。手に思うように力が入らない。 三郎太は構わずに一気に実篤の身体を貫く。防御の薄い部分に叩きこんだ。実篤は苦悶の表情で絶叫しながらその場に崩れ去った。 ●紅く花のように散りゆく想い 「お怪我は大丈夫ですか?」 ルシュディーが助け出した島田創玄に声をかける。創玄は傍らにのぞみが助け出してきた玄太を横に寝かせていた。幸いなことに玄太は無事だった。 「ありがとうございます。これで息子も助かることができました。皆さまにはなんとお礼を言ってよいのかわかりません」 「お礼なんていらないわ。玄太くんが無事ならそれでいいのよ。あとは立派な大人になって将来はイイ男にでもなってくれたらわたしは嬉しいわ」 「わかりました。後で必ず玄太に伝えておきます」 のぞみと創玄は笑顔で別れ際に挨拶した。二人のやりとりを聞いていた他のリベリスタ達も思わず頬が緩む。 まだ安静にしておく必要があるが直に目を覚ますとのことだ。遅れて到着したアークの応援部隊がすぐに現場を撤収して後処理にかかっている。 「さあて後は供養塔でも立て直しますか――。なあに私腹を肥やした権利者にでも訴えればすぐに作ってくれるでしょう。あの者たちが再び安らかな眠りに付けられるようにしないといけませんからね」 生佐目は崩れて動けない金剛力士に目を向けて言った。今回の事件には少なからず人間側が招いた側面もある。これを機に反省すれば、このような事件は二度と起こらないはずなのにと生佐目は思わずにはいられなかった。 「ユーヌ、やるね。頼もしかったよ」 虎美はぶっきらぼうに話しかけた。普段はお兄ちゃんをめぐって複雑な想いを抱いている相手だったが久しぶりに共闘してその頼もしさを思い出した。 この時だけは虎美は素直になることができた。 「そうか、それはよかった」 ユーヌは表情一つ変えずに虎美に返事した。虎美よりもさらに愛想のない返答に思わず虎美も心の中で苦笑する。 「帰ったら私に竜一がご褒美に何かしてくれるかもしれないな」 ユーヌは余計なひと言を最後に付け加えた。これには虎美も心の中が穏やかではなくなった。ユーヌも虎美も互いに意地を張っていた。もしかしたらお互いに似たところがあるのかもしれない。だから竜一に二人とも好かれるのだ。 だが、虎美は負けるわけにはいかなかった。相手が大好きなお兄ちゃんの恋人であるからこそ女としてもリベリスタとしても絶対に勝って見せる。 ユーヌと虎美は一緒に燃え尽きて崩れさる金閣を見つめた。紅く花のように咲いた金閣は最後に湖の中に花弁を散らしながら綺麗に散っていった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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