● 風の音さえ聞こえない――――月明かりさえ乏しい闇の中。 何やら土が盛り上がっては其処から白骨化した手が生えた。伸びたそれは、更に空へ空へと腕を伸ばして、腕から肩、そして顔、胴体、最後に足先が現れた。その一体を最初に、次から次へと骸骨が地面から現れていく。 「ぼっく、は、墓堀る、死神、た、ろ、う~♪」 広がる群に、異様な光景。この場で唯一の生者は、自作の黒歴史入りしそうな歌を歌うのだが……。 「埋めて埋めて友達集めて、それを今使う時がきた~♪ ……ぐっ、がはっ」 突如、胸を抑えて血を吐いた。斜めになった十字架にべっとり着いた彼の赤、それは雫となって土に落ちては吸われていく。咳き込めば、咳き込む程その赤は雫を落とす回数を増やしていった。 しばらくしてからだった、その発作が治まったのは。起き上り、ふらつく足でしかりと立ちながらツナギの服のジッパーを下ろしていく。 「あと何日……あと、何日生きられるかなぁー。力の代償にしては、随分大きな買い物しちゃったなぁ。ま、最期まで利用させてもらうけどさ」 彼の露出した胸は真っ黒に腐りかけていた。等価交換、契約の仇。その一端であろう指輪を外し、赤色の十字の上に乗せる。 「さ、僕の後ろを着いて来られないように。精々、良い囮になっておくれよ」 ● 「皆さんこんにちは。今日も依頼をお願いします」 『未来日記』牧野 杏理(nBNE000211)は集まったリベリスタ達へそう切り出した。今回の相手は――― 「エリューションアンデット、ざっと150体ですかね」 はい? 「エリューションアンデット、ざっと150体ですかね」 はい? 「エリュー……」 もういい! つまりそういう事。どういう事!? 「あっ、でも数は凄いですが、本当に脆いフェーズ1ばかりなので! 皆さんのワンパンチで崩れます! はい!! 本当です!!!」 ともあれ、目当てはエリューションをどうにかする事もそうなのだが、それらのアンデットはとあるアーティファクトによって動いているという。 「ヴァンパニッシュ。 架枢深鴇という黄泉ヶ辻所属の青年が持ち主であったアーティファクトなのです。これはフェーズの低いエリューションを使役できるというものなのですが、これが外人墓地に放置されていまして……命令も無いエリューションは、ただその場で跋扈するだけなのです。 が、いつ一般人に被害があるかわかりません。全て掃討した上でアーティファクトを壊してしまってください」 内容は至極シンプルだが、そんな多くのエリューションを墓地の下に置いておけるのだろうか。それは否。 「彼は増殖革醒を促すエリューションを持っています。それで外人墓地の死体を一気に革醒させたものと思います。深鴇の狙いは別にあるのでしょうね、万華鏡の夢でも囮だと発言しておりました。其方は杏理が探しておきますので、今は此方の対処をお願いします。早くいけば、もしかしたら本人に会えるかもしれませんし―――ね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月13日(日)23:14 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 月夜を見上げて、空の彼方。満点の星々が地上を照らせど、其処は異常な程に暗かった。 佇む十字架は斜めに地面に突き刺さり、まるで捻くれている。言わば、荒らされた跡というものはそんなものなのだろう。其処を蔓延るのは骨の大群で、時折肉の着いた骨も混じる程度の―――外人墓地。 「死体臭いかと思いましたが、案外そうでもありませんね」 「嗅ぎ慣れたとはいえ、ウェルカムなものじゃないな……」 『宵歌い』ロマネ・エレギナ(BNE002717)と『黄泉比良坂』逢坂 黄泉路(BNE003449)は大して『あの臭い』がしない戦場であれど、鼻を抑えた。うごうご、ゆっくり蠢く骨達を目の前にして思い出すのは楽団か。 「あの人! あの人はどこでしょう」 『灯探し』殖 ぐるぐ(BNE004311)は小さな頭を最大限に動かして、骨の軍勢の先を見た。されどぐるぐの眼には『あの人』の姿は見る事は叶わず。 代わりに『K2』小雪・綺沙羅(BNE003284)の能力があの人を捕える。此処は見た目、人数が多いように見えるが思考の数は八人+一人。だからこそ、自分たちでは無い誰かの思考とはつまり。 「―――来るの早くない?」 架枢深鴇、一人だけなのである。 「見つけた。この軍勢突っ切って行けば直線上だよ」 「あ、ほんと! 俺様ちゃんの眼にも視えまくりー☆」 綺沙羅の言葉に、陽気な『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)の声が重なった。感情探査に千里眼を敷けば、これ程頼り甲斐のある探索術は無いだろう。葬識に見える深鴇の後姿は、真っ直ぐに此の場所から逃げていた。 「逃がさねえよ! 今日! この場で! 弱っているときに! 無様に! ぶっ殺してやらァ!!」 『一人焼肉マスター』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)は利き手に露草を、反対にJe te protegerai tjrsを持ってして一人走り出した。竜一くん、最近その装備好きだね(あえて中身には触れない)。 「元気ですねぇ……私達もやりましょうか」 「そうだね。皆のためにも、道を開けるよ」 『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)と『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)は同じ覇界闘士だ。違いがあるとすれば、変身するか変身済かである事か。 「いきましょう、罪無き人々が傷つく前に!!」 金色に輝く疾風の片目。その瞬間、七色の光が彼に戦闘スーツと力を与える。 「うん! 皆、気を付けてね――――!」 最後に旭の声が、仲間にそう謳ったのであった。 ● 竜一の速度も十分に速いのだが、それ以上に圧倒的は速さを誇っていた綺沙羅。骨の軍勢へと身を投じては、そのまま一枚の札を解放した。 「弾けちゃいなよ」 綺沙羅の札は彼女の足下に貼られた。そこから蒼い稲妻のような氷柱が、彼女を中心にして一気に巻き上がったのだ。眼前から20m先が扇状に崩れていくのに手応えを感じつつ、微かに骨たちの間から見える深鴇の後姿に話しかけた。 「ねえ、もうすぐ死ぬんでしょ? だったらさ、キサ達に食べられちゃいなよ。あんたのとっておきを見せて」 「……」 綺沙羅にしか見えない深鴇は、彼女と目線を合わせてくれた。段々と骨達が再び綺沙羅と深鴇の間を濃厚に埋めていく中、「いいよ」と深鴇の口が動いたのはハッキリしている。 そうこなくてはと身構えた瞬間、緑色の鮮明な死神が綺沙羅の前で大鎌を振り上げた状態で現れた。その―――死神。 「色が濃くなってないか?!」 「むしろ、実体化が増していると思えますが」 竜一とロマネが短い感想を述べた直後、黄泉路も骨の軍勢へと飛び込んで彼に言う。 「なぁ、深鴇。あれほど怖がってた死に触れてまで、何をそんなに急いでるんだ? アークでは京介を倒せない、殺せないと。そんな早合点で其処まで覚悟を決めたのか?」 骨のプールをクロールするかのように、一体押し退け、一体押し退け、黄泉路は前へと進んだ。時折スキルを発動させても、数は圧倒的に多くて減らず。ただ、深鴇は話をするのが好きだった。それは友達募集という四文字で片づける事ができる程に、軽いもので。 「違う。ただ、時間が無いんだ。俺は死のうとしてないよ黄泉比良坂くん。むしろ生きたいからこそ足掻くんだ。君達が首領を倒してくれるまで、せめて無様に生き残れるように」 「もし仮に、今のあんたが京介を攻撃したとして、勝つ目はあるのか?」 「こらこら僕は黄泉ヶ辻。誤解だよそれは。首領に攻撃なんて恐れ多いしねぇ、ま、死ねばいいのにとは思ってるよ?」 黄泉路が次の言葉を言おうとした瞬間、骨によって先の光景が完全に見えなくなった。腕を伸ばしかけた黄泉路だが、その前に彼の眼前が紅い炎に彩られたのだった。 「平気? 黄泉路さん!」 「ああ、大丈夫だ」 薙ぎ払った腕には未だ炎が纏わりついていた。旭が彼の前に位置取った瞬間、再び逆の手が振り払われる―――その瞬間、劫火と共に火葬されていく骨。あまりのオーバーキルな火力に一瞬だけ口笛を吹いた深鴇。 「眠っている人は、起こしたら迷惑なんだよっ」 「……囀ることりか。ことりちゃん、可愛いね」 「そうだよ。報告書は見たけど……貴方、色々まずいと思うの」 「うん。基本黄泉ヶ辻は皆まずいさ。君みたいな可愛い子に覚えて貰えて光栄だよ」 どうやら非常に旭に興味がある深鴇。さておき、骨はまだまだあるのだ。前方を片づけたからといっても後方がある。旭と黄泉路に手を伸ばしていく骨だが、刹那、塵となって消えた。 「なんだか、あっけないくらいに脆いですね」 ぐるぐの葉が舞っていた。その中心にもちろんいるぐるぐは、大きな耳のある頭をこてんと傾けながらつまらなそうにしていた。 ぐるぐの相手は骨ではない。ぐるぐが相手したいのは骨ではない。その先の―――死神に会いたいのだ。 「あとどれくらい壊せば、顔が見えますかね」 「一分はいらないでしょう」 ぐるぐの背には、疾風の足があたった。頼れる温もりに、そうですねと呟いたぐるぐ。刹那、疾風へと骨の群が襲い掛かる―――。 「力の代償か? そこまでして何が目的なんだ」 「あはは、なんだろうねぇ」 深鴇の声が一瞬、そう響いたのを聞きながら疾風は利き手の拳を地面に突き刺した。何があろうとも、止めて見せると思いを込め。その拳を中心に電撃が周囲を制圧したのであった。 「……死にたくはないでしょうに」 ロマネの声――ピクリと動いたのは深鴇の指先か。それを知らない、ロマネは指先を前へと向けた。 「さあ、安らかに。これ以上眠りを妨げる真似はありませんから」 疾風の雷に混じるのは、金色に輝く気糸の群。ひとつひとつ丁寧に射抜かれていったのは、墓堀たる彼女の心がけと言えるだろう。 「道は開きました!」 「此処は、任せてね!」 疾風と旭が同時に後方へ向いた。其処に居たのは竜一。この時を待っていたのだ、足の裏に力を込めて走り出す。 「死体が友達な深鴇だし、死体にしてやるのが友情だろ?!」 「その前にその恰好どうにかならなかったのかな!?」 一歩一歩踏みしめて、彼へと向かう竜一の足。ついに耐え切れなくなったから、深鴇の口を借りて盛大につっこんでしまった。いやまじで。 今日この場で殺せるならば殺したいと、力の入る両腕に殺意を込めた。それを竜一が友情と言うなら、そうなのであろう。 「僕、結構君の事好きだよ」 「なら死ね、今すぐ死ね!!」 「えー」 竜一の進軍は、召喚された死神が阻む。やはりそう、上手くはいかないのだろうか? ● 数も大分減ってきた、からこそ声はよく聞こえるか。黄泉路は腕を掴んで来た一体を弾き壊しながら前を向く。 「こうして見送りに来てやったんだ。あんたがどうやってその契約に漕ぎ着けたか、その話くらい聞かせてくれても良いんじゃないか?」 「……物好きだねぇ、いいよ! 君達が壊した邪心教。ぶっちゃけあれ俺も信者だったときがあってね。そん時はちゃんと裏世界の意味で危ないとこだったんだよ」 黄泉路の、何気ない一言から始まった。その間も一歩一歩、闇の奥へと消えていく深鴇であったが。 「昔話してあげるよ」 はじまった深鴇の喋り。その間に、リベリスタ達は一斉に攻撃を開始した。彼を逃がさないために、彼に追いつくために。 「ある所に、いじめられっ子の少年と友人がいました」 時間にして未だ三十秒といったところだった。誰よりも早く動く綺沙羅。 彼女が作り出す氷柱は何といっても脅威だ。生半可なフィクサードが当たっても、砲撃並みの威力はあるのだろう。それが脆い骨に当たればどういう事が起きるか予想する程でもない。 綺沙羅は深鴇に興味があった、尚且つお腹はぺこぺこで、つまり――欲しいのは死神。食べてしまいたい、嗚呼、だけどなんのためにリベリスタをしているかの疑問に頭を捻る。 「友人はいつもいじめられている少年を助けてくれる、ただ一人のヒーローでした」 続いたのは旭と黄泉路。背中合わせになった二人は、一度だけ顔を見合わせて頷いた。刹那、互いに前方を向いて――旭は炎を、黄泉路は暗黒を放つ。赤と黒はよく目立つ色ではあるが、交わり合わさればより鮮明に。闇と炎が交わって最強に見える。 そうして前後を一掃した二人。お互いの拳をこつんと合わせて、チームワークの良さを証明していた。 「しかし友人は少年の目の前で車に跳ねられて即死してしまいます」 赤と黒の間を駆ける、黄色の暴力。疾風は再度拳を地面に突き刺せば、其処から雷の陣を敷く。砕けて散る、骨を見ながら呆気ないと思いつつも、心の中で手を合わせるのだ。 ヒーローショーのヒーローをやっている疾風だからこそか、体格が比較的小さい、つまり子供であろう骨を見つけて胸の奥がずきんと痛む。しかしそれさえ押さえて、彼は放つのだ。おやすみの意味を込めて、さよならの雷を。 「少年は、ひとつの噂を思い出しました。神様に祈れば力を与えてくれると」 ロマネの気糸は駆ける。それで最後の一体が弾けて消えた。彼女の眼についたのは赤色の十字架で、それはつまり―――ヴァンパニッシュの在処。 再び構成していく力は、アーティファクトを穿つためのもの。もう、彼等を止める骨はいないもので、詠唱はゆっくりでも十分に追いつくのだった。 「その少年は餌として生きる事を強いられましたとさ」 「おい深鴇! いきなり話が見えねえよ!」 「見えない方が良い事もあるんだよ」 しかしそこで、竜一が深鴇に追いついた。死神を打消し、壁を壊して前へと。 「よ、久しぶり死ね!!」 「ええっガチィ!?」 一直線に走った竜一はその勢いを乗せたままに、振り上げた最大威力の力を深鴇へと。回避の低い彼の事だ、竜一の攻撃さえ避ける事はできずに、打撃を食らって弾き飛んだ。 竜一が二発目を構える中、地面でよろりと動いた深鴇が切羽詰まった表情をしていた。 「ちょ……ちょぉ……それ痛い……」 「攻撃だから痛いに決まってんだろうが!」 再び召喚された死神。それを竜一と深鴇の間に隔て―――そして深鴇は翼を広げた。 「おい!! それはずるいぞ深鴇!」 「壁を作るのが趣味なもので、許してね、焼き肉マスター」 いまいちシリアスが決まらないこの惨状。その空気を裂いたのはロマネであった。 「深鴇、念の為伺いますが……何をするつもりですか?」 「うん。ただの神殺しかなぁ」 「それをして何になるのですか?」 「うん。人間やめるだけだよ宵歌い」 ● 「あのねぇ……」 リベリスタ達から上手く逃げたつもりだった。しかし今現在、地面にうつ伏せで倒れている深鴇。どうしてこうなった。 咄嗟に仰向けへとひっくり返っては反撃の閃光を出そうとした。しかし既に、時は遅し。深鴇の腹部に腰を落とした葬識が、深鴇の胸倉を掴んだのであった。 「ちょっと殺人鬼くん!? 追いかけて来すぎ!! 何処まで来るつもり!?」 マジ千里眼勘弁してください。 「まあまあ。今日は調子悪いの?」 「まあまあじゃなくて!! 調子はまあまあだけど!!」 刹那、咳き込んだ深鴇の口から大量の血飛沫。其れは葬識の頬を紅く染めるのに、容易い。 気分が削がれたと、着いた血を拭いながら血よりも紅い瞳に映した深鴇の瞳。死にかけているのだろう、彼の瞳の色は薄く濁っている。それは葬識にとって非常に残念至極の作品であり。 「こんなところで恐怖が終わるのは面白くないよね」 「……何、いってんの?」 今此処で殺せると、今此処で捕えられると、企みを抱えた瀕死のフィクサードを目の前にしたリベリスタの行動では無いと深鴇は目を丸くした。 「俺様ちゃんは君を愛してるよ」 「は?」 彼の愛とは男と女のソレでは無く、もっと殺伐とした命の賭け合いを示しているのだが。 「君の死ぬ舞台はここじゃない。って思わない?」 「本気?」 葬識は掴んだ胸倉を離した。肌蹴た服の間から呪いの結果である鎖(腐り)が見え隠れするのを見ないフリをして。 「ごめんね☆ 俺様ちゃん今日は気分がのんない☆」 再び目を丸くした深鴇。 「あはははははは!! 殺人鬼くんがオカシイのは知っているけど、これじゃあ黄泉ヶ辻である僕のが蹴落とされてる!!」 「ねえ、指折りながら殺される日を待っててよ。君の奈落に終を与えるのは俺様ちゃんだ、深鴇ちゃん☆」 葬識にとって彼の鎖はどうでもいい。彼の企みも、抱えているものもどうでもいい。ただ一つ、望むのは深鴇の命の束縛。 「いいよ、『葬識くん』。僕を殺せるなら殺せばいい。けどね、それが君達の仇になると知れ!!」 本来、称号でしか他人を認識しない深鴇は彼の名前を呼んだ。瞬間、無い力を懇親に込めたグーパンが葬識の左頬を穿てば、そのまま葬識と深鴇の間に死神が一体間に入った。 死神はリベリスタとフィクサードの境界線であり、またリベリスタと深鴇の相容れない原因でもあり、それを証明するかのように死神の鎌が葬識の胴を横に切り裂こうとしていた。軽く地面を四肢で押しただけで葬識の身体は宙に飛び上がり、スレスレの目の前で刃が通過した事に笑いながら、言った。 「竜一くんに疾風くん黄泉路くん。旭ちゃんもロマネちゃんも綺沙羅ちゃんもぐるぐちゃんも知ってるよ。彼等に言っといてよ葬識くん。今日殺せなかった事、後悔するといいよ――――って」 圧倒的シリアス醸し出してみたが此処で限界の様だ。葬識の後ろを追いかけて来たぐるぐが、深鴇の胸へとダイブを決めたのであった。 「深鴇さんだ」 「深鴇さんだよ。あれ? 君さ、ぐるぐシリーズの僕が一番よく知ってる子だよね?」 どうやら深化してあの頃とは違う喋りになっていた様子。見違える姿に、子供って成長早いよねと一言余計な事を。 ぐるぐはそのまま話しかけた。 「あなたの目的が達されるまで、あなたは生きていられますか?」 「むしろ僕が目的を達成させるときは生きているよ」 意味不明な、それでいても意味のある返答に少し首を捻らせたぐるぐ。しかし望んでいるのだ、彼が生きる事を。フィクサードが生きる事を望むというのは、なんとも意味が問われるものではあれど。 「信じていますから。せめて最期の舞台、精一杯盛り上げていきましょう」 深鴇の片手がぐるぐの頭を、愛おしげに撫でた。何故だか、生かしてくれた事に感謝を覚える程に。けれど敵同士、ごめんねと一言言った深鴇はそのまま死神を従えた。 「あとついでに、竜一くんにさ、いい加減服を着てきてって言っといて」 死神が暴風を従えて消えていった瞬間、其処には二人だけ。虚しい空気のその場所で、黒い羽が彼等の手の平の上に舞い堕ちた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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