●カボチャという名前は伝来先のカンボジアがなまったものという説があるがそんなことはどうでもいい 「トリックオアトリィイイイイイイイイイック!」 「日本人のくせにハロウィン気取ってんじゃねーぞコラァア!」 「仮装パーティはコスプレ祭りじゃねえって言ってんだろ!」 「ウホッ!」 「お菓子にカボチャが入れば秋ってどういう理屈だこの野郎!」 「全国のカボチャ収穫量出荷量共に日本一は北海道と言われていますが世界の収穫面積のうち0.5%にすぎず日本全国を合わせても約1%程度でありその多くは国外からの輸入に頼っています。2013年現在輸入先はニュージーランドと韓国でほぼ二分しており――」 「カボチャ喰うなら一年中喰えやオラァ!」 「ヒーハー!」 「ウホホ、ホホッ、ウホウホウホ!」 「どうせランタンにしか使わねえんだろこの野郎!」 「ヒャッハー!」 「ウホォォォォォォォォォ!(ドゴゴゴゴゴゴ)」 ハロウィン仮装パーティーだかなんだかの会場にカボチャのお化けがたくさん現われ人をめっちゃ追い回していた。 右を見てもカボチャ、左を見てもカボチャ。もうカボチャしか見えない状況である。そう、カボチャだけ……カボチャだけしか見えないよね! 「ウオッホオオオオウ! ボホホッホホホッ! ウッホホホホウッ!」 ●これは貸し切りにした遊園地に出現したカボチャおばけことEゴーレム10体プラスアルファを既に逃げ払った一般人を気にせずカボチャの体当たりとかを処理しつつ好きなようにやっつける依頼だよ! アーク内ブリーフィングルーム。 アイワ ナビ子(nBNE000228)はナマハゲの格好をしてぐでーんとしていた。パッと見、怠けたナマハゲだった。怠ハゲだった。 「仮装パーティーってさ、子供の頃は意味がよく分からなくって、海外の映画とかで見ては『なんでこの子らアホな格好して飯食ってんの。罰ゲームなの?』って思ってたんだけど、まあ時が経って21世紀にもなるとシャレオツな海外パーティーのまねごとみたいなことするようになるじゃないですか。この前も友達から『仮装パーティーするから仮装してホテル集合』みたいなメール来たんですよ。何こいつスイーツ女子なのって思ったし、ぶっちゃけ五年ぶりのメールだったから無視しても良かったんですけどね、なんかビ……ビュ、ビェ? ビュッヘ? あの立って食べ放題するやつ? だったので、まあ出ることにしたんです。まあ私のお家っておもしろアイテムの博物館みたいになってるんで、そういう道具には事欠かなかったっていうか、正直自信満々だったんで、中でも一番高いやつを身につけてホテルに向かったんですね。それでね、まあ、ね……」 ナビ子は包丁(精巧なダミー)を手にむっくりと起き上がると、切った羊羹をひときれ包丁で刺して食べ始めた。 「道中で職質、そして流れるように補導されたんですけどね! 28歳がね! 理由? 推して知るべしですよ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月16日(水)23:30 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●どこに突っ込んで佳いか分からない時は全部突っ込むという精神 シャレオツなフェーカーのスーテラでオレカフェのプーカーをてーみぎにつーもーしていた『芋女(酒)』ラシャ・セシリア・アーノルド(BNE000576)がこちらを振り返った。 「折角のハロウィンですからね、私も仮装をしてみたんです。してみたんですよ?」 赤いズボン。赤いジャケット。赤い帽子。赤い髪。コーヒーに染まった白髭。 右目から何かの滴をひとつぶながし、ラシャさんは空を見上げた。 「サンタ服は……まずかったかなあ……」 『やだーあの人ウィンハロとマスクリスを勘違いしてるー』 『まじうけるんですけどー』 『ちょべりばなんですけどー』 「せいっ」 ラシャさんはその辺のカボチャにカフェカップを叩き付けると、髭をむしり取って立ち上がった。 もうこうなるとただの赤い人である。 余談ですが赤スーツの人が昨年12月に掲げていたスローガンは『サンタはいる。俺がサンタだ』でした。本当に余談でした。 「えーっと、それよりゴリラですねゴリラ」 「ウホホ?」 「ウホッ、ウホホホホ!」 「ホッホォオオオオオオオ!」 「ウホウオウホホウホウホ!(ドゴゴゴゴゴゴゴ)」 「ウッホホオホホオオオオオウ!(ドゴゴゴゴゴゴゴ)」 ゴリラと『GOEIOKA』岡崎 時生(BNE004545)がドラミングしあっていた。 その横を素通りするラシャ。 彼女は懐(多分谷間とかじゃないですか?)から一本のバナナを取り出した。 「ゴリラと言えばバナナ。これを置くことでゴリラが引っかかるという……」 「バナナといったらおとーさんです」 『通報ロリ』キンバレイ・ハルゼー(BNE004455)が巨大カボチャを上下に割って中から出てきた。古来より伝わるタマ式出現術である。 キンバレイはバナナをそっと拾い上げると、胸に挟んで賢明に先端部分を舐め始めた。 舌を這わせたまま喋る。 「まいひに、おとーさんのばははにほほうひひへはふはら……んちゅ……ごひらとひえは、おとーはんのでぃーほらいふに、ん……ほんはほひとと、ほりらが、へっふすしへるほうががあっへ、おはひふへいを、したいっへいうはら、あさはへずっとひへはんへふ」 「ああ、これがセルフ自主規制というものですか……」 「ウホ?」 「ウホッホ……」 「ホッホウ! ホッホウ!」 暫く様子を見ていたラシャ(あとゴリラとゴリオカ)たちだったが、キンバレイはすぐにババナを噛み千切ってカボチャの方に行った。 「まえにコーポの人に教わったんです。こういうのはこうして……」 胸にカボチャを抱くと、次の瞬間にぐしゃあってやった。 俗に言う『SIEL HAG-GARD LOOK』という必殺技である。(交際)相手は死ぬ。 胸に強く抱いた所で急激に目のハイライトを消すのがコツである。 「次はごりらです……」 「ウホ……!」 カボチャ汁にまみれた腕を広げ、ガタガタ震えるゴリオカの頭を包んだ。 「天国に送ってあ・げ・る」 「ウボオオオオオオオオッ!?」 ※現在不適切な映像が流れておりますので、しばらく湖をゆくボートをご覧ください。 ボートの船首で椅子に座り、駅弁を只管食べ続ける『興味本位系アウトドア派フュリエ』リンディル・ルイネール(BNE004531)がいた。 「この前、山梨の駅でお弁当を買いあさっていたらお巡りさんに声をかけられたんです。なんでもコスプレで出歩くと犯罪に巻き込まれるぞだそうで。私びっくりしてしまって、慌てて鏡を見たら耳がとがっているじゃないですか。そうなんです。うっかり幻視をわすれてしまっていて。これで補導なんてされたらたまりません。それはもう飛んで逃げましたよ。あ、飛ぶと言っても飛行したわけじゃないんです。走って……あ、いえ、お弁当のタワーを崩さないように早歩きでさりげなく逃げましたよ。なにせ珍しいお弁当でしたから。カボチャのグラタンだそうなんですが、大きなカボチャがどっかりと入っていて、グラタンの代わりにほうとうが使われていたんですね。柔らかく煮込まれたカボチャは当然ほくっとしていて美味しいんですが、ほうとうの若干歯ごたえのあるもにっとした食感とのバランスがとられていて、ソース自体は単純なホワイトソースだったぶんカボチャとほうとうの味わいが強調されていた印象でした。あれを暖かい状態で食べられなかったことが心残りといいますか、冷めた状態だからこそのおいしさだったと考えるべきか。皆さんも甲府駅に立ち寄った時はぜひご賞味くださいね。あっ甲府って言っちゃった。それでは――」 遠ざかっていくボート。 そして終わるリンディルの出番。 「ウホオオオオオオオオ!」 「ウホッ……ウホオウホ、ウホホウッホ……」 ドラマ復活しなければ即死だったみたいなことを言いながら立ち上がるゴリオカ。 そんな彼の後頭部に『赤錆皓姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)のローリングソバットが炸裂した。 「ハロウィンパーティがなんぼのもんよー!」 砕け散るゴリオカヘッド。 彼を踏み台にして、舞姫さんはこんにゃろこんにゃろとその辺のカボチャを殴り始めた。 「リア充どもがキャッキャウフフしてる仮装パーティーなんて? 都市伝説ですし? わたしそんなの見たこと無いですし? 携帯のメールなんて? お母さんからしか来たこと無いですしー!?」 滅びろリア充どもと言いながらカボチャをくりぬく舞姫さん。 「ハロウィンだバレンタインだクリスマスだとバテレンどもに惑わされおってからに、ご先祖様に恥ずかしくないのですか。なにがトリックだ、とっくりみたいな顔しやがって! くぬっくぬっ!」 粉々になったカボチャを踏んづける舞姫さん。 「おこだよ! 激おこだよ! アッパーマイハートだよ! カボチャなんだから煮付けになってなさいよ! なんで炊いたら溶けちゃうのよ! 緑井色の韓国カボチャに至ってはとにかく硬いのよ! 包丁で切る野大変だし、家庭菜園でとれたようなやつを貰ったが最後スレッジハンマー必須なのよ! 台所でソニックエッジしろっての!? 包丁戦闘マスタリ取得しろっての!?」 「ウホ……ウホホ……」 「うするさいゴリラ! わたしが話してんでしょ!」 素手でずしゃあっとゴリラの胸を貫いた。 が、しかし。 「あ、これイーリスさんだった」 「なんと、わたしだったのです!!!!」 カッと目を開く『ごり子』イーリス・イシュター(BNE002051)の霊。 既に幽体離脱済みだった。口から出てた。 そのまま光に包まれてイーリスニルヴァーナした。 「い、イーリスさあああああああああああああん!」 空に浮かぶイーリスの顔。 『ここは日本。ローマにありてはローマ人の如く行き、その他にありては彼の者の如く域よとミラノ司教は言ったのです。好物はドリアであるとも! そうなぜならば安いからです! なので私、ゆーしゃたるもの冬至を尊重するのです。ゆえにカボチャをおいしいポタージュにしてやるのです。所詮おまえはご飯のおかずにならない身。おやつどまりなのです。おまえがカンボジア人なのか秋田県民なのかハッキリさせてやるのです。え? ニュージーランド産? それなら……ああっ! そう言ってる間に例のテーマパークに大量発生して! なんということをするのですか! 五百円程度の値上げで行けなくなった貧乏なリア充がないているのです。そううまーとなくのです。それは馬の鳴き声とおなじ。そう、もうお気づきかも知れません。なんと! はいぱー馬です号はリア充だったのです! でも、わたしのなきごえはうほ。……うほ? あ。そうです。気づいてしまいましたですか? 私はうほとしか言ってないのです。なんと、この問題の間違いは私だったので――』 「ちくしょう! こんなゴリラだらけの遊園地にいられるか!」 『関帝錆君』関 狄龍(BNE002760)が変なお土産まんじゅうを床にべちーんと叩き付けて言った。 そしてバナナを食う。 「俺、帰ったらゴリラの理想郷を作るんだ」 そしてバナナを食う。 「足を洗ってやり直そう。ゴリラショップを開くんだ……」 そしてバナナを食う。 「これは!? そうか、真犯人はゴリラの……早く知らせなくては!」 そしてバナナを食う。 「このゴリラは俺に任せて先に行けえぇ!」 そしてバナナを食う狄龍。 ラシャたちはその様子をメリーゴーラウンドの上から眺めていた。 「あの人はなぜバナナを食べながらゴリラフラグを立て続けてるんですか」 「ウホホッウホホッ」 「なんでもゴリラパワーを溜め続ければゴリラを引きつけることができるんだとか」 「ウッホウウッホ……ウホ? ウホホッ」 「なんと――!」 「なあ。所で俺、思ったことがあるんだが……」 白馬に跨がった『まごころ宅急便』安西 郷(BNE002360)が遠い目をした。 追憶の中に見るかつての自分。 休憩所のテレビでアメリカのホームドラマが流れ、吹き返した声でトリックオアトリートだのと言っていた。魔女やらガイコツやらに仮装した子供たちがドアの前に立ち、どっかのおばさんから飴を貰うシーンである。 海外じゃこのイベントに合わせて『ハロウィンで配るお菓子セット』みたいな商品を売り出したりするらしいが、日本じゃそういうものは聞かない。ハロウィンが近くなって売り出すものといえばカボチャ味のチョコレートだのケーキだの、いかにも成人女性が自分へのご褒美とか言って買いそうなお菓子ばかりだ。とてもじゃないが玄関先にきた子供にあげるものとは思えない。というかそんな子供を見たことがない。 日本にとってはお菓子メーカーの商売ネタでしかないんですかねえ先輩と、当時見習いだった郷に色々と教えてくれていたドライバーのおっちゃんに話を振った。妻と結婚十年目だというのに女子高生と舞浜のテーマパークに行く約束をしてウキウキするという終わった感じの人だったが仕事の腕は確かだ。早くて安全。そして確実。充分キャリアを積んでからケミカル系の運送業に転職するのだと言っていた。おっちゃんの仕事ぶりならいい稼ぎを出すだろう。 だがおっちゃんは沈んだ顔をして、懐からチケットを二枚ほど取り出して言った。お前舞浜のあそこ好きかと。郷的にはリア充のたまり場だったし、修学旅行の時もヤンキーじみた友達と適当に話をあわせるのに必死でよく覚えていない。そういえば当時の自分は必死だった。まあそれはいいか。 曖昧に応えると、おっちゃんはチケットを郷に押しつけて言った。シフト入ってない時に行ってこいとのこと。ペアチケットである。入園料がまるまる浮く。もう一度おっちゃんの顔を見ようとして、指輪がなくなっていることに気づいた。黙って目をそらし、ウッスとだけ言った。 悲しい事件だった。 だが本当に悲しいのはその先だ。 折角だからと当時知り合ったばかりの兄嫁を誘い、当然兄も誘って彼の地へ行った。その日のことだ。 園内にはなんかのキャラクターに仮装した子供たちが沢山居て、きゃいきゃい言いながらはしゃいでいた。微笑ましい光景だ。なるほど今月末はハロウィンだったな。そう思って右を見ると、ガチなアリスコスプレをした女性が本気の目をしてこっちを見ていた。 隣にはウサギのコスプレをした女もいる。すごいメイクだ。夏や冬にビッグサイトにいるような人たちだ。 彼女たちはファンシーなレストランの外装を指さして、あそこに立つから写真を撮ってくれと行ってきた。 おずおずと応えると、あなたも何かの仮装なんですねとピンクの作業着を指さしていった。思わず頷くと、一緒に写真を撮らされた。 恐怖だった。何この人たちと思った。 だってこの人たち、園にゆかりのあるキャラクターじゃないからだ。もっとこう、ガチな……もしくは別作品のキャラだったからだ。そのくせ首から提げたデカい懐中時計をデュエルしようぜみたいな無関係臭いポーズで掲げるし、意味がわからなかった。それ以上にとにかく恐かった。 だが興味から聞いてみた。 いつもその格好で歩いてるんですかと。 彼女たちはドゥフフみたいな声で笑って、こう言ったのだ。 だってコスプレですし。 「なんでだよ畜生! 仮装とコスプレは違うだろうが畜生おおおおおおおおお!」 「え、ダメなのか? これ……アウトか?」 頭に金色の輪っかをつけて棒みたいのを持った狄龍がおずおずと声をかけてきた。 お湯を浴びたのか水を浴びたのか知らんが、若干女っぽくなった狄龍が露出の多い孫悟空コスチュームに身を包んでカボチャに跨がるという図は、なんというか言葉にしがたいフェチズムがあった。 ちなみにカボチャを棒で貫通していた。武器でもないのにどうやったんだろうと思った。 目をそらす郷。 「なんかすごい回想長いっていうか、生々しかったんですけど……」 「生といえばおとーさんの生バナナを……」 「生といえば生ウニを豊富に詰め込んだ磯宴というお弁当が網走にありまして……」 「駅弁といえばおとーさんが夜の通学路をそれで往復しようって……」 「往復といえば中国新幹線は往復時にそれぞれ乗せてる駅弁が違うっていう都市伝説を聞いたんですがそれは……」 「おいそこ、業の深い連想ゲームを今すぐやめろ」 「なんと……!」 「ウホホ……!」 「ウホホホホ……!?」 「あれれ? ところで皆さんちゃっかりメリーゴーラウンドに集まっちゃってますけど、カボチャどうしたんですか?」 「それなら舞姫さんが『次はクリスマスだ』と言って残らず粉砕してましたよ」 「ああ……」 遊園地の広場にて。 舞姫は散乱する(カボチャの)バラバラ死体に囲まれていた。 両腕をだらんと下げ、遠い空を見上げる。 「滅びろリア充ども……ほろびろ……」 ひとしずくが、頬を伝って落ちた。 いとかなしき、戦いの物語である。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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