● その行動はエリューションにとってただの狩り。 捕食する。 ただその目的のためだけに特化した能力を有し、獲物を喰らう。 「夜の山って怖いね……」 「だなぁ。けど、都会から離れただけあって綺麗な夜景は見られるぜ?」 山の奥。 ペンションに旅行がてらやってきた恋人同士らしい男女2人組が、星空の輝く下を歩いている。 行く先は透き通った水の流れる川原。 互いに語らい、思い出を作るには確かに格好の場所だ。 「足元、気をつけろよ。躓いたりしたら大変出しな」 「う、うん。手、握っててくれる?」 頼りがいのある男性と、少し甘えん坊な部分の垣間見える女性。 2人の目指す場所は、もう少しだけ先。 ――しかし2人の思い出作りの場所に続く道は、無慈悲な捕食者の狩場でもあった。 土の中を自在に進み、獲物を土中から狙うワニ。 1人くらいなら軽々と掴んで飛べそうな体躯を持った、コウモリ。 大地の下から、空の上から。 捕食者達の目が、2人の獲物を狙い怪しく輝く。 ● 「というのは、少し未来の話よ」 とりあえず現状では被害者は出ていないと、桜花 美咲 (nBNE000239)は告げた。 遠くない先の未来。 近いうちに必ず訪れる絶望の時。 集まったリベリスタ達に課せられるのは、もちろんこのE・ビーストの討伐だ。 「ただ、少しだけ厄介……なのよね」 問題があるとするなら、エリューションの特性だろうか。 ワニは土中を自在に進む能力を有しており、土中からの奇襲攻撃を最も得意としている。 ずっと地面に潜り込んでいるわけではないが、土中からの噛み付きの後に地表に出ている時が攻撃のチャンスとなるだろう。 コウモリは元々がコウモリであるため、回避に非常に長けている。 特筆するほどの攻撃力は高くないが、注意だけは常に必要だ。 「とはいっても、皆ならきっと大丈夫。何事もなく終わらせたら、星空の下でのんびりとした時間を過ごすのも良いかもしれないわね」 如何に相手の能力を把握し、乗り切るか。 油断だけは決して、してはならない。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:雪乃静流 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月10日(木)23:15 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●獣達の狩場 そのエリューション達にとって、弱き者は狩るべき存在。 空腹を満たすための狩りは、弱肉強食の理に従っただけのもの。 ――彼等の狩場はまだ少し先だろうか。 「蝙蝠は兎も角、ワニは元々どっかから逃げたか捨てられたかしたのかねぇ」 相対するエリューションの情報を反芻した『赤錆烏』岩境 小烏(BNE002782)が、ワニのE・ビーストが現れた経緯を推察する。 当然ながら日本にワニは本来生息していない。 ならば捨てられた個体がエリューション化したと考えるのは、やはり妥当な話ではあるか。 「何かの都市伝説の本に『白いワニ』の話はありましたけど、今回は普通のワニなんですね」 周囲を警戒しながら歩く『三高平妻鏡』神谷 小夜(BNE001462)は都市伝説のワードを口にするが、もしも発生したのが都市部、しかも下水道なら、或いは――? そんな話はともかくとして、現れたエリューションは倒さなければならない存在である。 「いい夜だな。これで此処が狩場じゃなかったなら尚いいけど」 そう『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062)が感嘆する程に、星が輝く夜空の下。 山道を歩くリベリスタ達も、エリューションにとっては食い散らかす餌にしか見えていないのだろう。 しかし今宵の標的は、力の無い弱者――即ち単純な獲物ではない。戦う力を持ち、狩猟者を狩るだけの力を持つハンターなのだ。 「さて、どうやら狩場に入ったようですね」 星空を遮る大きな影が頭上に闇を落とした時、上を見上げた『エンジェルナイト』セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)はその影を落とした主を敵だと認識し、鞘からスラリと霊刀東雲を抜く。 頭上を舞うは6匹のジャイアントバット。 およそ普通の蝙蝠からはかけ離れた巨大さではあるが、巨大化しても通常のサイズの蝙蝠と変わらず軽快に飛んでいる。 「下にはワニ。動物園でもあまりみない組み合わせデス」 「この組み合わせは、RPGよりは横スクロールアクションゲームって感じがしますね」 土中からの襲撃に備える『飛常識』歪崎 行方(BNE001422)と『勇者を目指す少女』真雁 光(BNE002532)は、どこからワニが現れても対応出来るようにと、何時でも攻撃を仕掛けられる構えだ。 空には蝙蝠。 地中にはワニ。 「今回することは至極単純。敵を斬る、ただそれだけのこと」 確かに衣通姫・霧音(BNE004298)が言うとおり、今回は現れたエリューションを倒すだけの、『目的だけならば』単純極まりないミッションだ。 だが上からの攻撃に気をとられれば下から。 下からの攻撃を警戒しすぎれば上から。 「単純だけれど大事な任務。油断せずに行きましょう」 必要とされるのは、戦況を把握するのに十分な冷静さ。決して油断をして良い相手ではないという霧音の言葉は正論である。 ――その時だ。 「きちんと対策をたてて戦えば、問題ないはずです。注意し……」 頷き、同様に注意を促そうとした『不倒の人』ルシュディー サハル アースィム(BNE004550)の足元の土が僅かに隆起したかと思えば、一瞬で彼を飲み込みそうなほどの大口が彼の体を噛み千切りにかかったのは。 どれほどに警戒していても、足元、それも土中からの攻撃は、それを察知できるほどに研ぎ澄まされた感覚が無ければ、どうしても不意を突かれてしまうもの。 「残念だが、私にはバレバレだ」 完全に避けきれるかどうかはともかく、それだけの反射神経を有しているのは、2匹目の攻撃を察知し傷を可能な限り小さく留めた小烏と、 「まずは翼を。飛び過ぎないように、気をつけてください」 仲間達に小さな翼を授け、飛ぶ力を与えた小夜のみ。 現れた化け物を倒す。 請け負ったのは単純なミッション。 単純ではあるが、まともに噛み付かれたルシュディーの傷は相当に深く、アースアリゲイターの力の強さが窺い知れる。 「土中からの攻撃……面倒ね」 3匹目に噛み付かれ表情を歪める霧音は、牙が肌に突き刺さる直前に身をひねり、傷を可能な限りの最小限に留める事は出来ていたが。 それでも。 それでも、空と地から迫る敵はリベリスタ達を獲物と定め、次々に襲いかかってくる態勢を取っていた。 「全て断ち斬るわ。さあ、始めましょう」 「世界の平和を守るため。正義のリベリスタ、セラフィーナ出撃です!」 充満する殺気に臆する事無く、妖刀・櫻嵐を手に飛ぶ霧音。 そして霊刀である東雲を手に、セラフィーナの刃が土中からの狩猟者に迫る。 弱肉強食の理の中、勝利を手にするのは人か、それとも獣か――? ●大地から、空から アースアリゲイターが再び獲物を求め、土の中へと潜っていく。 2匹目、3匹目――立て続けに潜る様子を見れば、獣であっても本能で連携してしまうのだろう。 「こちらの準備は整ったね……ここからだよ」 対するリベリスタは万端な準備を整えるために一手間を要したものの、セラフィーナがそう言う程には迅速に態勢を整えるに至っていた。 頭上を飛ぶジャイアントバットは少しでもアースアリゲイターの攻撃を援護しようというのか。 「寄ってこないのか? 意外と臆病だな」 超音波や羽ばたきによる攻撃に尽力し近寄ろうともしない蝙蝠達に、獣ならではの慎重さを感じる小烏。 「しかし水の中ならぬ土の中か。ワニってよりもモグラだね」 当のワニは土中に潜り、攻撃のチャンスを伺っているらしい。さながら彼女が言うようなモグラのように。 しかもその攻撃は突然だ。 どこから飛び出してくるか――それを相手にほとんど悟らせずに噛み付くのは、狩猟に特化した機能とも言える。 「ちょこまかちょこまかと。親近感はあるが、ここまで大きいと可愛げもないな」 ならば、『今、この時点で』攻撃を仕掛ける事が出来る蝙蝠を狙うのは当然の選択であり、燃え盛る炎の矢の雨を降らせ仕掛けたのは杏樹だ。 確かに蝙蝠は素早く、普通ならば当てるだけでも精一杯かもしれない。 とはいえ、そこはシューターである杏樹の攻撃である。多少は避けられてしまっても、降り注ぐ炎の矢の前に無傷でいられた蝙蝠は1匹もいない。 「――今の箱舟を取り巻く状況、考えなければならないことは山程あるけれど」 火に包まれ、僅かでも集中を欠いた個体がいたならば、その隙を撃ち抜く事は霧音にとって造作も無い仕事だろう。 小さなコインのど真ん中に穴を開けるほどの、正確な射撃――。 「今は、このくらい単純に剣を振るくらいが、きっと丁度良い」 雑念を持たず単純に敵を穿つ。ただそれだけを考えた彼女の一撃が、ジャイアントバットの腹にすらも穴を開ける。 それは誰がどう見ても致命的な傷なのだが、蝙蝠は必死に飛ぶ。 獲物を狩る執念か、尋常ならざる生への執着か。 「夜の森、夜の道、夜の動物。そして夜に踊るは都市伝説。さあ格の違いを叩き込んでやるのデス。アハ」 必死に生にしがみつく蝙蝠は、行方にとっては格好の的だ。 全力で攻撃するにはオーバーキルも甚だしいせいだろう、彼女は周囲の蝙蝠すらも巻き込む暗黒を放つ態勢をとった。 「――足元、注意してくださいっ!」 不意にセラフィーナからの注意がかかり、獲物を引き裂く大きな口が地面から現れ行方に牙を剥く。 「……ッ! しつけのなってない動物デス。やはり動物は痛くなければ覚えないのデス。アハハ」 噛み砕かれる痛みに顔を歪めながら、それでも動きを止めることなく冷静に攻撃に転じる行方。 それは彼女が強者たる由縁。 体に走る痛みは並々ならないものではあるが、彼女は冷静に目標を撃ち落す。 「傷はすぐに癒します、皆さんはワニへの攻撃を」 すかさず息吹を放って行方の傷を癒した小夜の存在は、この戦いにおいてはやはり心強い。 「皆さん、土中からの攻撃には十分注意を……! お気をつけて!」 加えて小夜の息吹の恩恵に預かり、最初に受けた傷がある程度塞がったルシュディーの施した十字の加護は、ジャイアントバットの音波や旋風に対しての保険に十分な効果をもたらしてもいる。 このまま勢いに乗って押し切れるか? と問われれば、それにはやはり『NO』と答えざるをえないが。 「ゲームセンターのアレを思い出しますね。危険度では段違いですが!」 RPGの勇者よろしく、光の走らせた激しい雷撃はワニと蝙蝠の両方の体に衝撃を与え、蝙蝠の2体を撃墜寸前まで追い込むほどのもの。 偶然か必然か、攻撃の際に一歩前へ踏み出したことで、足元から襲い掛かったワニの攻撃すらも回避する事が出来ている。 「うわ、危なかったですね……! でも、勇者を目指すものとしては、こんな敵に負けるわけにはいきませんからね!!」 光が口にした『負けられない』は全員が胸に秘めている事だ。 負けられない気持ちは怯まない気持ちへと繋がる、勝利を目指す一手を支えるには不可欠なものだ。 「皮膚が硬いなら、柔らかい所を狙うのみです」 その気持ちを持って、セラフィーナが軽快に飛んでワニへと迫っていく。 振るうは霊刀『東雲』、放つは高速の連続突き。 『グ、ア、グアアアア!』 如何に体を覆う皮膚が硬くとも、貫けないわけでは決してない。 見事というほかにない直撃の直後、再びその刃が何度も傷口を抉る。噴き出す血は刃が刺さるほどに激しくなり、見た目にも大きなダメージである事は明らかである。 ――しかし、狩猟を行うアースアリゲイターは何時だって冷静だった。 「このままいけば、一匹くらいは……」 仲間達の猛攻に勝てると踏んだルシュディーが見せた、わずかな気持ちの緩みを彼等は見逃しはしない。 3匹目のワニが勢いよく土中から飛び出し喰らいついたかと思えば、 『キュエエエッ!』 空から強襲した蝙蝠が彼の体を掴み、舞い上がり――地面へと激しく獲物を叩きつける。 「……しまった……!」 流石の小夜とて、獣達のこの急な連続攻撃にはやはり出遅れてしまう。それほどに素早い『狩り』だったのだから、対応する事は不可能に近いとも言えよう。 「いやありがたい。折角の好機は生かそうか。しかし――」 大きく上空に上がったジャイアントバットは狙うには丁度良い標的でしかなく、小烏の投げた式符が直撃したところで、狩りを終えた蝙蝠は獲物を喰らうことなく地に堕ちていく。 彼女の瞳に映るのは堕ちた蝙蝠、そして動かないルシュディーの姿。 意識を失ったのか、指ひとつ動かさない彼は最早狩られるだけと言っても過言ではない。 「守りにいくべきか? いや……ここは攻撃か」 乗りかかった勢いを削がれたせいか、杏樹のみならずリベリスタ達全員に生じたのは、小さな迷い。 倒されたルシュディーを守るか、攻撃を続行するか。 ここから態勢をどう立て直すか。勝敗の決め手は、ここに集約されていく――。 ●弱肉強食の戦い 食うか食われるか。 この戦場においては、強き者が全てだ。 「勇者……を目指すボクの雷の魔法くらうですよ!」 全てのワニが地上に現れたタイミングを見計らい、激流のように獣達を飲み込んだのは光の放つチェインライトニングの輝き。 その輝きに蝙蝠は目が眩んだのだろうか、それとも冷静な判断がつかなくなったのか。 「音波に気をつけろ、乱雑になっているせいか、どう動くか読み辛いな……む」 がむしゃらに動く蝙蝠の動きは獣の本能だけで動いているらしく、さしもの杏樹ですら、どう動くか予想がつかなくなりはじめている。 そんな彼女の体を掴み、舞い上がる1匹の蝙蝠。 「掴むまでは良かったが、そこからが雑すぎるぞ」 大地に叩きつけようと勢いをつけて放り投げた相手にそう告げた彼女は、背中に施された翼を上手くコントロールしてその勢いを殺しつつ、大地に降り立った。 「本能だけで動くなら、単なる獣と同じデス」 進行しているフェーズの問題でもあるかもしれないが、上空に留まる蝙蝠を木を利用したジャンプで真っ二つに裂いた行方の言を取れば、蝙蝠のそれは狩猟者の体をなしていない。 時間が経つにつれ戦線を立て直していくリベリスタ達に対し、E・ビースト達は徐々に追い詰められていた。 「どれが敵かしら? どれが――」 「あれです、目標は目の前で暴れていますよ」 運悪く蝙蝠の音波で敵の区別がつかなくなった霧音は、小夜の言葉に乗せられた吐息に我を取り戻し、眼前のワニに狙いを定める。 ワニの表皮は恐ろしく硬い。硬いが、 「全神経を集中させた一太刀に、間合いも防御も意味は成さない」 彼女の放つ死神の魔弾の前では、その硬さは紙も同然。 眉間を撃ち抜かれたワニは断末魔とも言うべき最後の大暴れを見せた後、大きな音と共に地面に崩れ落ちた。 「これが居合いの奥義よ」 一瞥したのはほんの一瞬。 続けて彼女が見たのは、鞭のように振り回されるワニの尻尾を軽いステップで避け、隙を見出そうとする小烏の姿だ。 「ちょいと立ち止まっておくんなよ」 当たるだけでも強烈で、もしも直撃すれば吹き飛ばされるだろう尾を紙一重で避ける様は、鳥が風に乗り飛ぶ姿を彷彿とさせる。 「人食いワニの自由も今日で終わりです。空腹のまま倒れなさい!」 そんな彼女の援護に回ったのは、逆側から回り込んだセラフィーナ。 虚を突いた腹部への一撃に意識が向いたそのタイミングは、小烏にとっては絶好のチャンスに他ならない。 「いい援護だ、トドメといこうか?」 「そうですね……終わらせましょう!」 前から、後ろから。 張り付いた式符によりもたらされた猛毒に呻くワニの意識が、突き立てられた刃を引き抜いた反動も利用して再び突いたセラフィーナによって途切れていく。 狩る側の存在が、狩られる側へ。 弱った狩人が他の狩人に狩られる事は、自然界でも起こりうる。 「さぁ、クエストの終了は近いですよ!」 そう光が言うように、獣達はその全てが傷だらけだ。 放った雷撃が直撃して落ちる蝙蝠もいれば、避けたところで霧音の精密な射撃が撃ち漏らしを逃がさない。 一方でワニは本来ならば逃げるべき局面だったが、目の前の獲物を喰らう衝動がそれを許さない。 「捕食者を狩る奴がいるってことを、その野生に教えてやる」 授業料がその命であるならば高すぎる授業料ではあるが、ワニの動きを見切った杏樹が授業料の取立てにかかる。 「さあ刻むデスヨ。粛々と、ざくざくと。アハ」 3匹全てが生存していない今、如何に地中に潜るとはいえ、地上に出てしまったワニは行方にとっては単なる的だ。 否、それはリベリスタたち全てにとってそうか。 「最後まで気を抜かずに。油断は絶対にいけませんよ」 勝利を確信しても、小夜の言葉が仲間達の気を引き締める今、リベリスタの勝利は磐石でもある。 自分達の狩場で、自分達が逆に狩られてしまう。 倒されていく獣達は、果たしてその真実を受け入れられているのだろうか? 「ボクは勇者を目指す者として……この剣にかけて!」 光の振るう『ゆうしゃのつるぎ』の一太刀を受けて倒れたアースアリゲイターの顔を見ても、その答は得られない。 ●星空の下で 満天の星空の下、勝利を得たリベリスタ達。 「結局のところ獣は獣。純粋な殺意のぶつけ合いになると人、ましてや都市伝説には敵うわけがないのデス」 襲い掛かってきた狩人達の果てた姿を見やり、やはり勝つのは人なのだと定義付けたのは行方だ。 本能のままに戦う彼等は、確かに強かった。リベリスタ側に無傷な者がいない程には、であるが。 「ともかく、これで後からやってくるだろう2人も無事で済みますねっ」 それでも勝ちは勝ち。 近い未来に恋を語るであろう2人の男女の未来を守った事実に、セラフィーナの頬が自然と綻ぶ。 都会の光の中では決して見る事の出来ない、美しい夜空。 その下で語らう恋は、とてもロマンチックな時間となるだろう。 それはリベリスタ達にも同様で、 「のんびりするにはいい夜だ。星を見ながらゆっくりお茶するには、な」 耳に届く風の音と虫の声は星空を楽しませるアクセントであり、静かなお茶会には丁度良いと空を見上げる杏樹。 「戦いの後には休息も必要よ。戦いが尽きることは無いのだから」 と霧音がいうように、戦士達には休息も必要ではある。 ……しかし、ルシュディーの傷は想定以上に深かった。 「今時町中じゃぁ中々お目にかかれない光景だ、少しくらい楽しんだってバチは当たるまいよ」 「そうは思いますけど……」 少しくらいならば良いだろうと言う小烏ではあるが、制する小夜は手当ての方が先決だと言う。 「帰りましょう、歩いている間も夜空は楽しめるのですよ!」 とはいえ帰路についたとしても、しばらくは星空の下を歩くのだ。 流れ星が落ちてこないかとキョロキョロ見渡す光は、空の中に流れる一筋の光を見逃しはしなかった。 3回願い事を言う練習も十分にしてきた。 空から零れる星に、彼女は誓う。 「多くの人を救い、皆から勇者と呼ばれる存在になることを誓います!!」 なれますようにではなく、なる。 光は願い事が叶うのを待つより、自身の力で手繰り寄せる強さを持っている。 ――その強さは勇気ある者だけが持ちえるもの。 その意味で言えば、彼女はもう既に真の勇者になっているのかもしれない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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