●秘密の近道 元々は橋本キヨさんという高齢の女性が1人で暮らしている場所だった。広大な敷地のほとんどは山林と田畑で、夫に先立たれ子や孫が都会に出てしまってからは自給自足出来る分だけ耕し収穫して暮らしていた。 いつの間にかキヨさんの姿が消え、木造平屋の家が解体されても隣近所も1㎞ほども離れていては不審に思う者も少ない。そもそもここは過疎の村だ。気が付けばキヨさんのいた敷地には山奥の村には立派すぎる真っ白な病院が建っていた。 「橋本キヨの孫、橋本亮が死亡する運命を変えて欲しいの」 ブリーフィングルームに現れた『ディディウスモルフォ』シビル・ジンデル(nBNE000265)は言った。橋本亮は祖母の安否を確認するために新設された病院を訪れる途中、化け物達に襲われて死ぬ。夕日の赤と流れる血の赤、そして真っ赤に染まる殺戮者。それがシビルが万華鏡のシステムで強化された予知で視た未来図だ。 「私が視た敵は燃えるように赤い花。秋になると土手とか空き地に固まって咲いている赤くて上向きにツンツンした真っ赤なの。でもね、普通より大きくて強くて人をすりつぶして血を吸おうとする危険なもの」 これみたいな花だとシビルはノートパソコンの画像を示す。それは青い空の下、目が痛くなるような鮮やかで毒々しく群生する彼岸花であった。 「花のお化けがいるのは人が少ない場所だからまだ被害は出ていない。病院に向かう山深い近道だから。でも橋本亮は子供の頃、夏休みでよく来ていたから祖母の家へと向かう秘密のルートを知っていた。だから彼が最初の犠牲者になる……それを止めてあげられるのはあなた達しかいない。それに……」 と、言いかけてシビルは止めた。 「ううん、まだこの先はよく視えない。今は死すべき罪のない彼を助けてあげて」 シビルは大人っぽい口調でいい、ボソッとイケメンだし、と言い添えた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:深紅蒼 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月07日(月)22:52 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●お昼すぎ 「真昼、どれかわかるか?」 鷲峰 クロト(BNE004319)の問いに『Le Penseur』椎名 真昼(BNE004591)はかぶりを振った。まぶかにかぶったフードの奥、物理的に視界を遮っていたとしても真昼の目は誰よりも遠くまで詳細に見通せる。 「該当する彼岸花の群生を確認してはいるけど、れがエリューション化しているかは決め手に欠けるね」 真昼は残念そうな様子もなく事実を淡々と告げる。現場は山の中の割には拓けていて、明るく見通しもいい。どれも普通の花の様に咲き誇っているが地面に奇妙な跡はない。 「移動可能と推測するに足る痕跡もないよ。確証はないけどね」 真昼はさらに言い添えた。実際に戦う前に入手出来る情報は全て仲間達と共有しておくつもりだ。 「そうか、わかった」 クロトは戦いに備え全身の反応速度を亢進させる。 「……綺麗だな」 山の緑と薄茶の道を背景に炎の様な激しい赤が乱舞するのを『友の血に濡れて』霧島 俊介(BNE000082)は愛おしそうに見つめた。大好きな花、鮮やかで美しいその花を殺戮の血で穢したくはない。俊介は世界に溢れる聖なる力を我が物へと吸収しつつそう思う。 「本当ですね。人の血を吸って咲く花……なんて美しく素晴らしいのでしょうか。部屋のインテリアとして飾っておきたいくらいですよ」 那由他・エカテリーナこと『残念な』山田・珍粘(BNE002078)は体中から闇より冥い漆黒を生み出し、己の身体に武装する。 「キサが感情を調べてみよう。もしかしたらエリューション化している個体を特定出来るかもだしし、その方が効率的だよね」 倒すべき敵を求めて『K2』小雪・綺沙羅(BNE003284)は力を使う。確かに5つ、他よりも強い何かを発するモノが在る。 「ボクも話しかけてみるのだ。普通の彼岸花ならきっと返事をしてくれるはずだ」 優しい新緑の瞳を持つ『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)は片端から毒々しい程赤い彼岸花へと心話を投げる。しかし隣あい重なり合って咲く彼岸花から5つを特定するのは難しい。 「オレにも見た目だけではどれがエリューションか分からん」 淡く血の色が透けて見える瞳を懲らしても『ファントムアップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)の目では敵を見極める事は出来ないが、だからといって何もしないわけにもいかない。義衛郎の手は既に愛刀の柄へと伸びている。 「義衛郎さん、仕掛けますか?」 神々しい程に美しい攻守に秀でた2つの衣を手にした氷色の瞳と翼を持つ『天の魔女』銀咲 嶺(BNE002104)が問う。太古より、衣は武器であり防具であった。嶺の装備もそれと同じく悠久の時を渡ったものなのだろうか。 「そうだな。今日は他にも用がある」 走る義衛郎の足下の草が千切れて空に舞う。鞘からほとばしる三振りの刃が陽光にギラリと光り凄まじい速さで時を斬り裂き、氷刃が霧の様に全ての彼岸花を氷結しようと浸食しようと襲いかかる。そこへ嶺の気糸が真っ直ぐ進み鮮血色の花を散らした。 「片端から倒しましょう」 「それしかないね」 真昼は嶺が倒したのとは逆の端へと気糸を伸ばし絡め取る。 「あなた方を倒す者の名は、那由他またはなゆなゆです!」 それ以外の名は認めない! とばかりに言い張ると紫色の髪の残念な人は暗黒の瘴気を彼岸花へ放ってゆく。 「この花を見ると秋だなって思うけどね」 花が駄目になってしまうのを残念だと思いつつ、綺紗羅は冷たい魔の雨を降らせてゆく。霧の薄れた視界の中で赤い花々が凍り付くが……そうではない花も存在する。 「それか! すまねぇが人命が懸かってるんで観賞には浸れねぇんだ!」 扱い易いフェザーナイフで前に出たクロトが凍っていない花へと仕掛けた。鋭利な刃に左右から切り裂かれても凍らなかった花は散らず、しかし今度は氷をまとって動かなくなる。 「……んっ、感傷だっけ?」 脳裏に浮かんだ漢字をそっと訂正するクロト。 「そうね。耐久力が違って当たり前ね」 「氷雨で凍り付かなかったのがエリューション化している花ですね」 綺紗羅と真昼が現象の合理的な結論にたどり着く。そして霧の消えた群生地に今なお咲いているのは5輪だけだ。 「せっかく咲いたのにごめんなのだ」 花を散らせてしまった悲しみに雷音の瞳が曇る。けれど、それを乗り越える心の強さを今の雷音は持っている。 「だから絶対にこの花は倒すのだ」 雷音が解放した強い力が肌を刺す様な冷たい雨に変わり彼岸花のエリューション達に豪雨の様に降り注ぐ。たった今、クロトの攻撃を受けて既にうっすらと表面を氷結させていた花が真っ白に変化し、次の瞬間ぱりんと割れる。花も茎もガラスの様に砕けて地面に散ってゆく。 「ごめんな。今だけ……お休み」 「これで終わらせるぜ」 俊介の全身から放たれる聖なる白光と義衛郎の鋭すぎる刃は時の流れさえも切り裂く力が剣呑な氷刃の霧で埋め尽くしてゆく。 「また見に来るから、さ」 霧が晴れたあとには、踏み荒らされたような残骸が折り重なって地面に倒れていた。 ●昼下がり 彼岸花たちがエリューション化したのは偶然ではないかもしれない。それが今、花たちに引導を渡したリベリスタ達の懸念であった。その予測が正しいのであれば、エリューション化を促進したなんらかの原因が存在していた事になる。 「これで何かわかるかもしれませんよね」 出来る限り沢山のサンプルを使い捨ての試験管に入れ内部がクッション素材で出来た収納ケースに入れると自称『那由他』はしっかりと鍵を掛ける。そしてここからは最も疑惑とされる新設された病院の調査だ。 「橋本亮君の今日死ぬはずの運命は覆されましたけど、彼のお祖母様まで助けなければ本当の意味において彼を助けた事にはならないでしょう」 真昼がどうシミュレーションしてみても、祖母が行方不明のままでは橋本亮の未来から死は消えない。 「にしても、過疎の村に病院ねぇ……まぁ身内なら消えた身内が何らかの事件に巻き込まれたって思うのが普通だしなぁ」 クロトには亮の気持ちが理解できるし、当然だと思う。亮が疑惑を持つ病院を調べてみるのはアリだろう。 「じゃあ心してかかろうか。ここが神秘と無関係じゃないのはもうわかっているけどね」 と、既に調べられるだけの下調べは済んでいる綺沙羅は言った。それによれば、病院の名称は聖ヒュギエイア記念病院。標榜診療科は内科と外科、小児科、産婦人科、精神科とある。勤務医の出身大学は私学系だが特定の学閥はなく系列病院もない。けれど、理事の中には浅場悠夜(あさば ゆうや)など首魁の名こそなかったけれど三尋木のフィクサード達の名が連なる。そして病院長は配島聖(はいじま あきら)と表記されていた。 「……はいじま」 傷跡をなぞるように俊介はその名を口にした。 「やはり三尋木の息がかかった施設だったのですね」 薄々そうではないかと予想していた嶺は暗い表情のまま言った。病院という閉鎖された生と死に直結した場所でならば人体実験を行う事さえ出来るだろう。こんな山奥ならばなおさらだ。 「オレはスーツに着替えて見舞客を装ってみるか。休憩所で評判や噂話を仕入れたら、橋本キヨさんの居所もわかるかもしれない」 義衛郎は放り出していた少し大きめのビジネスバッグを拾い上げながら言った。 「定時連絡は30分に一度程度、アクセス・ファンタズムで……でいいな」 皆がコクンとうなずいた。 「ボクは予定通りここで橋本少年を待つのだ。行ってらっしゃい。何かあったらこれで連絡して欲しいのだ」 ずっと通話状態にしておくから、と雷音は言い1人誰もいない山道に残って皆を送りだした。 「行ってきます~期待して待っていてください」 留守番の子供にでも言うかの様に言い置いて珍粘こと那由他は病院へと歩き出した。 ●夕暮れ時へ つい目と鼻の先で行われた戦いを関知した者はいなかったのだろうか。森の中に忽然と建つ白い建物は平穏そうであり、変わった様子はないように見える。 「ここは見える」 真昼の力ならばかなり遠くからでも病院が見通せる。その場所から眺めると、正面口のある外来棟は壁の中まで見通す事が出来るものだった。つまり普通の建築物だと言う事だ。真昼はホッと溜息をついた。施主が誰かは判っているから全ての建物が対E・能力者用の防御が施されていたとしても不思議ではない。 「ごめんなさい」 小さくそう呟いてから、真昼は更に外来棟の内部を見通す。行き交う人々に手中すると服が透けて裸の人間ばかりになった。けれど、ポツンポツンとエリューション化している人間が存在しているのがハッキリ判る。 「多いですね」 真昼は布で覆って見えない眉をひそめる。人口におけるエリューション化の割合などは知らないがそれでも病院内は驚くほどに比率が高いのだ。 「他の建物は……見えませんか」 外来棟と接しているもう2つの建物には千里眼に対する防御があって、内部を見る事が出来ない。 「キヨさん……一体どこにいるのでしょう?」 なぜだか危険な予感がして、真昼は唇を噛んだ。 那由他はステルスを使い、蛇がまきついた器の紋様があちこちに施された病院へと潜入してゆく。 「シビルさんも女の子ですね、イケメンが好きだなんて。私も可愛い子が大好きで……いやいや、そうじゃなくて、今は病院を探る事に集中しないと。病気は何がいいでしょうね。やっぱり腹痛でしょうか?」 ぶつぶつと独り言をいいながら、那由他は病院の中へと入って行くと、驚きを隠しながら総合受付というカウンターに立ち寄った。 「あの、お腹が痛いんですけど診て貰えますか?」 初診だと告げると制服を着た若い女が愛想笑いを浮かべながら保険証の有無を聞き紙を渡してくる。すぐ隣にも同じ紙を持った女の子がいた。 「あなたも初めてですか?」 「えぇ。学校の健康診断でひっかかっちゃったの」 女の子は心細かったのかホッとしたようだった。 「大きくて綺麗な病院ですよね?」 「寄付で作ったばかりって聞いたけど……」 そこで女の子は受付に呼ばれて去ってゆく。那由他はアクセス・ファンタズムをそっと取り出し交信した。 「受付の人……ノーフェイスです」 「そうですか、それは安心ですね」 見舞客や外来患者達が休憩したり、飲食出来るちょっとしたスペースには日頃から話を聞いて貰いたい人達が集まっている。義衛郎の様に新顔で聞き役に徹してくれる者は格好のターゲットであったらしく、軽く30分も2人のご婦人達から嫁への愚痴を聴かされている。 「酷いもんよ。うちの嫁は底意地が悪いのよ」 「いいじゃない。喧嘩するだけ仲がいいんでしょ? 「すみません。仕事のメールが入ってしまって……」 義衛郎は気さくに笑って中座し少し離れたところでアクセス・ファンタズムを操作した。 「そういえば、最近キヨさんを見ないねぇ」 「VIP待遇だっていうじゃない。ここの土地を提供したんだから」 「でもずっと見ないわよ」 「そうねぇ……」 義衛朗がいなくなった事で2人のご婦人達は警戒心なく会話している。 「橋本キヨは特別病室にいる可能性がある」 それだけ仲間達に伝えると、義衛朗は歩き出した。 「こんな場所にある割には結構繁盛してんじゃねぇか」 クロトは正直びっくりしていた。人里離れた森の中に建つ病院に正直、これほどの患者が集まるとは思っていなかったのだ。だが、行き交う人々の声に耳を傾ければ、近所には小さな診療所だけで普段ならばそれでもいいがそれだけでは不安だったというものが多い。 「しっかり、こんなに人が多いのは誤算だったぜ。これじゃあ気配なんか探りようも……」 そこでクロトはハッとした。安心したと言いながら帰ってゆく老人にエリューション化の気配を感じたのだ。しかもフェイトの恩恵を少しも感じない。 「ノーフェイス!」 振り返ったクロトの目に、孫らしい制服姿の少女が映る。 「おじいちゃん、どうだったの?」 「なんだ、小枝子じゃないか。迎えに来てくれたのか?」 「うん。一緒に帰ろうよ」 「帰るか!」 笑いあう孫娘と祖父の優しい風景。けれど、孫に降り注ぐ世界の愛は祖父へは微塵も注がれていないのだ。 「なんだ、ここ。一体……どうなってるんだ」 あちらでもこちらでも、エリューション化した人間が多すぎる。 警備員の服に着替えてそっと病院の裏手から近づいた俊介は、近づく程にこの病院が深く秘匿されるべき神秘に関わっている事を感覚で理解していた。三尋木のフィクサードが作った病院だ。ごく一般的な診療や治療だけをしているわけがない。しかもこんな淋しい場所には不釣り合いに大きな病院だ……いや、大きすぎる。 「なんだ? 病院って普通こんな形をしているのか?」 その病院は3つの長方形な建物が一点で接している様な形をしていた。ひとつは正面口に接していて外来棟らしい。更に裏に回り込むともう一つは入院棟の様だった。6人部屋や8人部屋らしい病室が幾つか並んでいるように見える。 「もう1つは……なんだ?」 窓の数や形状からひとつひとつの部屋は大きいが、はめ殺しの開かないガラス窓になっているうえにカーテンかブラインドで内部の様子が全く見えない。 「中からじゃないとこれ以上は無理か?」 とにかく外来棟にある正面口に廻ってみようと俊介は今来た道を引き返していった。 幻視で翼を隠した嶺は病院の周囲から探索を始めていた。一通り歩き回って怪しいところがない事を確認すると、見舞客を装って正面口のある外来棟から侵入する。 「あの、お見舞いに来たんですけど……」 制服姿の女性に声を掛けるけれど、もっと前からわかっていた。 「え? えぇ?」 驚いているのは嶺の翼が見えているからなのだろう。 「どうかしましたか?」 もう一度嶺が言うとその女性は挙動不審な様子で入院棟と繋がる連絡口の方を示す。 「あの、各階にナースセンターがありますから、その、記帳してから、看護師に、話を……」 「わかりました」 適当なところで切り上げて嶺は示された方へと向かった。向こうが嶺の正体を見破った様に嶺にも彼女がフェーズ1のノーフェイスであることがわかっていた。嶺は橋本キヨを探して病棟へと向かうが、途中から追っ手がかかっていることに気が付いた。 「本当です。背中に大きな白い翼のある人が! こっちです!」 女性の声に混じって幾つもの足音が聞こえてくる。 「仕方がありません」 嶺は壁をすり抜けフライエンジェルの翼を駆使して病院を脱出した。 「あの病院、やっぱり変だね」 探査の能力が届く場所まで接近した綺紗羅はすぐに山道の方向へと戻ってきた。外来患者、入院患者、見舞客、業者、病院職員など多くの人々がそこにいるにも関わらず、雑多な感情が少ないのだ。どれもこれも多少の差はあっても、似たようなモノばかりだ。 「胡散臭いにも程がある」 そこまで把握すると綺紗羅は自作のパソコンを武器に病院のネットワークへアクセスを敢行した。ここでは知識と経験と技量と度胸と、そして愛用のパソコンのスペックこそが武器になる。セキュリティの壁を越えた先には建物同様3つの独立したシステムだった。outが最も脆弱でinが中程度、そしてbaseが最も強固な防御を持っている。 「しょうがないな」 綺紗羅はoutにダイブした。最も大きいデータは外来患者の個人情報だ。そこに病歴と画像データや処方箋、病状経過の情報が添付されている。幾つかはinへと転載されoutのデータが削除されている。 「なんかひっかかるわね」 綺紗羅はデータをコピーしつつinへのアクセスを試みた。ここの壁は高くて厚い。それでも拘束で色の違うKのキーを叩くと突破出来た。 「ここにはどんな情報が眠っているのかしら?」 情報の形はoutに似ているが、ごく僅か20~30件ほどに見た事のない印がある。ソースはbaseにあるらしい。 「あっ!」 その時、システムのガードが形を変え一瞬で綺紗羅ははじき飛ばされてしまう。 「きっとこの花達がエリューション化したのも病院も関係ある筈なのだ」 雷音が橋本亮と接触したのは仲間達から全ての情報を入手した直後であった。 「どうしたの、君。もしかして道に迷った?」 こんな夕暮れの山道に1人でいる雷音を不審に思ったのか、少し手前で足を止めた亮だが、心配そうに問いかけた。 「あの、お願いします。この先にある病院には行かないで下さい。危険なんです!」 「何? どうして?」 「この道は病院に通じている道ですよね。だからあなたが病院に行くのはわかります。でも、あそこは駄目です。危険な会社が経営しているブラック病院なんです」 本当の事は言えなくても嘘ではない。雷音は必死に言葉を探して亮を引き留めようとする。 「君はあの病院の事、何か知っているんだね。お願いだよ。僕のお祖母ちゃんが行方不明なんだ。助けてあげられるのは僕しか……」 「とにかく、とにかくここじゃまだ危険です。お話は別の場所で聞かせてください。ボクも話せる事はお話します」 夕暮れの中、雷音と亮が睨み合いの様になるけれど先に折れたのは亮だった。 「わかった。行こう」 2人は山道を病院とは逆の方向へと下り、所定の場所で仲間達を合流し追っ手を撒いて撤収した。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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