● アザーバイドの少女は両手に何らかを抱えて走り回っている。 綺麗だから帰ったらお姉ちゃんに見せるんだと決めて居た水晶玉が魔的な光りを孕んでいると知りながらも、少女は一生懸命に公園の中を走っていた。 草木が擦れる音が『オバケ』が出たみたいで怖くなる。 小さな足で確りと地面を踏みしめながら走る少女が転んだ時、ころころと水晶玉は転がっていった。 あ、と少女が思い立ちあがったときにはその水晶玉は目の前から消えて居る。 ない、ないと探しながらわんわんと泣く彼女の頭にはトナカイを思わす角が生えて居た。 ――そんな事があったのは、『恋色エストント』月鍵・世恋(nBNE000234)がブリーフィングでドヤ顔をする2時間前の話である。 ● お願いしたい事があるの、と告げる世恋は何故かアザーバイドの少女と手を繋いでいる。 毎度ながら小さな子供を拾ってくるのが得意なフォーチュナである。 「この子、迷子なんだけど、一緒に返すの手伝ってくれないかしら? えっとね、水晶玉を失くしちゃったみたいなのでそれも一緒に探して欲しいなあって……」 探偵ごっこみたいなものねと頷く世恋の後ろで『×○@;!!』等と聴きとれない言語で捲し立てるアザーバイド。 「世恋、理解してるのか?」 「いいえ、全く」 ――危険ではないと言う事を他のリベリスタに確かめて貰いましただとか何とか。 兎にも角にも三高平に存在する公園の中で失くした水晶玉を探して欲しいと言う事だ。 周囲に危険がない事をあらかじめ確認してあるので後は探せばいいということなのだが。 「大丈夫、ほんっと大丈夫だから。公園で失くした物を探して、彼女――えっと、お名前は……うーん、聴きとれない。取り敢えず、彼女に水晶玉を見せるだけ見せて欲しいの」 「ええっと、見せるだけ?」 「ええ。アーティファクトなのでアークで確保しておきたいわ。なので、何とかして彼女を説得するのもお仕事のうちね」 世恋さんもお手伝いします。危なくないし、と近場の公園を指差してにっこりと笑うフォーチュナ(24)。 「えっとね、公園の遊具の影にあると世恋探偵は見込んでいます! 運動会の季節よね? ほらほら、頑張りましょうよ! 世恋探偵は必死に探すべきだと思いました!」 ね、『 』探偵! と楽しげに告げる世恋の声に如何した物かなとリベリスタ達は肩を竦めずには居られなかった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:椿しいな | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 6人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年09月30日(月)23:15 |
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■メイン参加者 6人■ | |||||
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●こうえん 人払いをしてある朝の公園で、兎の耳をぴょこぴょこと揺らしながら『雪暮れ兎』卜部 冬路(BNE000992)はトナカイの角を持ったアザーバイドの前でしゃがみこんでいた。 「言葉が通じず大変じゃったろうなあ……」 しゃがみこみ、しっかりと大きな蒼い瞳を覗きこめば『識別名:小鹿』は何処か緊張した様に冬路の眼を覗きこむ。武器は持たず、戦闘の要素となり得る者は全て置いてきた冬路は小鹿を怖がらせない為の準備を整えたのだろう。 「私はウラベ。お主の名前を聞いていいかの?」 『――!』 大きな蒼い瞳が驚いたように開かれる。共にブリーフィングルームにいた『恋色エストント』月鍵・世恋(nBNE000234)など『●×@!!』と言った理解できない言語を喋っていたのだから、小鹿からすると『お姉ちゃん』達と同じ言葉を喋る人物に出会えた驚きと、嬉しさがあったのだろう。 『せ、セルバート……』 振るえながら告げた少女の前で耳をぴこぴことさせながら微笑んだ冬路の声は優しげだ。 世恋の服を握りしめる小鹿――セルバートに小さく微笑んだ『紫苑』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)はそっとしゃがみこみ冬路へと通訳を頼む。 「初めまして、シエルと申します。……特技は」 す、とセルバートに翳される手。驚いた様に目を瞑る少女の膝――転んだ時に作った擦り傷だろう。少し血が滲み幼い少女からすると大きな怪我の様に思える――を掌で包み込む。 「癒しの息吹よ……」 ふわり、と包み込む風にセルバートが瞬いた。大きな瞳が膝を見詰め、隣のフォーチュナ、冬路を順に見詰めた後、凄い凄いとははしゃぎ出す。 シエル自慢の回復術はセルバートからすれば『魔法』の様な物なのだろう。楽しげに跳ねる小さなアザーバイドに『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)は兄になった様な心持で小さく微笑んだ。 「あ、あのね、私、纏向瑞樹っていうの。同じ目の色でお揃いだね、よろしく!」 優希の隣から一歩前に出て、愛らしい笑顔を浮かべた『先祖返り』纏向 瑞樹(BNE004308)は屈み、自分の瞳を指差した。大きな蒼い瞳がぶつかり合い、『同じ!』と喜ぶ様な動作を見せるセルバートに瑞樹は嬉しそうに微笑む。 「異界言語(バベル)が使えると会話に不自由なくて助かるな。通訳大変だろうが、よろしく頼む」 「うむ、任せておくが良い」 頷いて耳をぴこぴこ揺らす冬路に『やる気のない男』上沢 翔太(BNE000943)は有難うと優しく笑う。 彼等の自己紹介を聞きながら、娘を想いだしてふっと笑った『渡鳥』黒朱鷺 仁(BNE004261)はセルバートの『探し物』を手伝おうと視線を合わせて小さな小鹿の頭を撫でた。 「探偵ごっこか。月鍵の将来は名探偵か、或いは――『迷』探偵か。何にせよ、世恋・ホームズは楽しそうだな」 「まあ、仁さん。世恋さんは『迷』わないわ!」 胸を張りふんぞり返るフォーチュナにくすくすと笑うシエルは『名探偵は形から』と虫眼鏡と玩具のパイプを用意していた。 「さて、セルバート様、参りましょうか」 探偵ごっこだと張り切るリベリスタの中で、小鹿は懸命に頷いて彼等の後を小さな足で追った。 ●たんていごっこ 「月鍵探偵の名推理に期待だよ!」 瑞樹の期待を背負った夢見がちフォーチュナ・月鍵探偵は瞬きをしていた。 ブリーフィングルームでドヤ顔を浮かべたり、楽しげに推理を披露する姿。瑞樹より8つは上になるフォーチュナだが、その姿に「可愛い」などと瑞樹は想ってみたり。 ――残念ながら、月鍵探偵はロマンティック脳だ。 仲間達の期待に身体を固くしている様子を見て、優希が小さく苦笑を浮かべる。 「セルバート、転んだのはどの辺りだ?」 ぎゅ、と冬路の手を握りしめていたセルバートに問いかける優希探偵。あっち、という様に指差した先へとゆっくりと翔太は歩いていく。 「探偵の推理通りだろうか……まあ、探せばいいかな」 翔太の言葉に何処か不安げなセルベートへと冬路は胸を張り耳をぴょこぴょこと動かした。 若く、愛らしく見える冬路の姿は同じ『動物』の要素があるからだろうかセルバートは好感を抱いていた用だ。 「大丈夫じゃぞ。任せておくが良い。水晶玉は、我々が探そうぞ!」 こくこくと頷くセルバートに気付いた様にシエルが手招きする。セルバートがそっとシエルに近付けば、彼女の視線は滑り台に向けられている。 「セルバート様はあの少し高いモノ……滑り台お好きですか?」 子供の視点から見れば滑り台もジャングルジムもとてつもなく巨大なものに見える。丸い瞳が向けられて、緊張した様なセルバートは『……!』と興味があるといった仕草を見せた。 シエルの灰色の翼が広げられる。そっと抱え上げて浮かび上がれば腕の中で小さなアザーバイドが楽しげに手を振る。 「ふむ、空か。楽しいか?」 『!!』 たのしい、と告げているかのような笑みを仁に向けるセルバート。一方の彼は月鍵探偵と共に地道な捜査。 「俺には『推理力』も『灰色の脳細胞』もないからな。足で探すさ」 ロマンはないだろうか、と世恋を見遣れば「探偵は歩くのが基本」だとドヤ顔をするフォーチュナ。 「操作の基本は足。泥臭い地道な捜査こそが実を結ぶのです! なんてね!」 「流石、瑞樹探偵だわ!」 両手を打ち合わせる世恋に瑞樹が小さく笑う。地道な捜査を行う仁はやや腰を屈めた姿勢で捜査を続行して居た。 いやはや、その姿勢というものは辛いものがあるのだろうが、小さなアザーバイドの目線に立たねば分からないものもあるという事だろう。 「この辺りだという事は解るんだが……これは水晶玉の転がった跡か?」 「――遊具の影にあるわよ!」 ドヤ顔で言う世恋の言葉に耳を傾けながらシエルは「どうでございましょうか」と滑り台の上でセルバートに問いかけた。 仁、翔太、そして世恋が探索する方面を指差すセルバートに頷き、ウィルオウィスプの銀時計から光源をふわりと漂わせる。その情景は蛍が飛んでいるかのようにも見える。神秘的とも言える光源にセルバートが嬉しそうに笑いながら、滑り台を一気に滑り降りた。 「おっと、あっちか? 行ってみようか」 小さな体を受け止めて、妹に接する様に優しい声で告げる優希にセルバートは小さく頷く。 瑞樹の呼び声にセルバートが小さな足で懸命に走っていく。翔太が『探偵の推理』を頼りに探したのは遊具の影だった。 「……あれは?」 仁が目を凝らせば転がっている水晶玉が目に入る。手を伸ばし、握りしめれば、優希の手を引っ張っていた小鹿が反応した様に指差した。 『!! あ、あれ!』 あれなのと、通訳の冬路に一生懸命に語りかけるセルバートに冬路はしゃがみこみ優しく微笑む。 「この水晶玉は危険なものなのじゃ。持ちかえって、もし姉殿が怪我をしたら哀しいじゃろう?」 『……! ウラベ、あれ、だめ?』 途切れ途切れに聞くセルバートに頷けば、シエルが小さく微笑んだ。危険ですよ、と優しいお姉さん(怪我を直してくれる人)が言うのだから間違いないのだろう。 「水晶玉を見せてあげたいってのは妹として可愛いとこではあるけどな、これは危ないんだ。 他に俺らから素敵なものを用意したから、それと交換しようか。セルバート」 『……なあに?』 こてん、と首を傾げるセルバートに優希は『びいどろ』を差し出した。澄んだ硝子を様々な色で飾り付けたソレを手にセルバートはきらきらと目を輝かす。 「壊れやすいから気をつけるのだぞ。後で、遊び方を教えてやろう」 頷きながらも水晶玉を諦めきれないのか、『でも……』と零した小鹿の姿に瑞樹は困った様に微笑んだ。 どうしても、綺麗なものだからお姉ちゃんに見せたいという気持ちが大きいのだろう。 「お姉ちゃんが痛かったり、泣いちゃったりする所は見たくないよね?」 『ん……』 「叱ってるんじゃないからな。お前の大好きなお姉ちゃんが心配なんだ」 ゆっくりと、ひとつずつ。あやす様に告げる仁に寂しげな顔で頷くセルバートは水晶玉をリベリスタに渡すと渋々ながら了承したのだろう。 小さな子供の頭を優しく撫で「ありがとう」と仁が言えば、少女は表情を明るくして頷いた。 ●あそびじかん ふう、と空を舞うしゃぼん玉。水晶玉のお土産と渡されたそれを一生懸命にセルバートは吹いている。 びいどろをストローの先に付けて吹くなどの工夫も凝らされている。きらきらと輝く瞳で一生懸命に吹くセルバートはしゃぼん玉を気に入ったのだろう。 綺麗、と瑞樹が言えばその言葉だけで嬉しいのか、更に『みて!』と言わんばかりにしゃぼん玉を吹いていく。 「素敵でございますね。さて……少し遊んでみませんか?」 立ち上がるシエルが手を伸ばせば、小鹿は一生懸命に頷いた。ショッパーに入れて保管されたしゃぼん玉と荷物はは用意したレジャーシートの上に置いている。 「この世界の遊び何だが、缶蹴りをしてみよう。月鍵も是非。童心に帰るのも良いだろう」 「是非!」 何時も童心に帰っているかのようなフォーチュナが張りきりますと言わんばかりに立ち上がる。元気よく跳ねる世恋を真似してセルバートもぴょんぴょんと跳ねて居た。 「冬路さんも、おいでおいで!」 手を引いて、全員で始めた缶蹴り。ルールを聞いて、鬼をしたいとはしゃぐセルバートに頷いた。 見つけやすい場所へと隠れる気遣いもありながら、リベリスタ達は至って真剣だ。 滑り台にへばりつくフォーチュナはさて置いても、異界の言葉で数字を数えて顔を上げるセルバートは胸を高鳴らせ走っていく。 (子供って意外とすばしっこいのですよね……) 胸を高鳴らすシエルの元へとひょこりとセルバートが現れる。 びく、と肩を揺らし、缶の元へと走るシエルの前に懸命に走るセルバート。やや手加減気味でも、セルバートは足が速いのか、シエルはぱたぱたと走っていく。 「はぅ……素で捕まってしまいました」 「中々やるな――」 へにゃり、と項垂れるシエルの頭を越える様に翔太の声がかかる。飛び出す翔太に咄嗟に反応し、挟撃する様に優希が顔を出す。 バッと振りむいたその先―― 「優希! 行くぜ!」 「ああ! セルバート、缶を頂くぞ!」 優希と翔太の挟撃にセルバートが跳ねる。小さなアザーバイドはそれでもアザーバイドか。缶を目の前に蹴りを放とうとするその瞬間を縫って、小鹿が三度缶を踏み付ける。 『ゆーき! みぃつけ、た!』 「――あ!」 瑞樹の声にシエルが顔を上げる。隠れていた仁が木の陰から覗けば、小鹿が優希を捕えたものの翔太に缶を蹴られた所だった。 それでも楽しいのか、悔しげに『むー』と頬を膨らます小鹿。 瞬間の反応に、仏頂面であった優希がゆっくりと笑みを浮かべていく。出来る限り笑顔で、兄になった気持ちで、屈んで頭を撫でた。 「フッ、大したものだな」 『!! ……へへっ!』 勝ったと笑う小鹿が優希を見詰めてにっこりと笑う。何かを感じ取ったのか、楽しげに笑う小鹿に優希は目を丸くした後、ふ、と笑った。 「よし、それじゃあ次は俺が鬼でもやろうか」 「仁さんから只者じゃない気配を感じるわ……! 冬路さん、瑞樹さん、シエルさん、逃げましょう!」 滑り台に張り付いていた女(24)が咄嗟に立ちあがり冬路の手を引いていく。 意味もわからぬまま逃げる小鹿に『鬼ごっこ』に変わったのか、きゃっきゃと手を上げて仁を手招いている。 彼が追いかければ、流石はアザーバイドの子供だろうか。その身体能力は子供ながら高い。 時折危なげな足取りで遊具の上に逃げたりする小鹿が翔太の手を引いて手招いた。 驚かせないようにと気を使う優希と翔太の二人を盾にしたりなどと、馴染んできたセルバートが随分な行いをして見せる中、仁が鬼の鬼ごっこが続いていく。 「ん? セルバード、如何したのじゃ?」 『……』 逃げ回りながらブランコをじ、と見詰めるセルバートに子供は移り気とは言ったものだと乗り方を教えた冬路。 乗ってみたいとはしゃぐセルバートを抱え上げ、シエルが背中を押せば輝く笑顔できゃっきゃとはしゃいで見せた。 「さて! よく遊び、良く休む。これも大事だものね!」 おむすびに唐揚げ、卵焼き等の定番の物をお弁当箱に詰め込んで瑞樹が優しく笑う。 オレンジジュース、コーヒー、お茶と3パターンの飲み物が用意されているのも瑞樹の気遣いだろうか。 「セルバートちゃんも食べれる物があるといいな」 『……これ、なあに?』 そ、っと指差したセルバートに冬路が「気になるなら、食べてみよ」と促した。緊張した様に卵焼きを口に含み、瞳を輝かせて『おいしい』とはしゃぐセルバートに瑞樹はほっと一息。 「ああ、じゃあ、いちごの飴とか如何だろうか? おやつに丁度良いと思うぞ」 可愛らしい包み紙のキャンディを差し出す仁にこれまた緊張した様に口に含むセルバート。これまた、甘味がお気に召したのは嬉しそうに口の中でころころと転がしている。 翔太が「お姉さんと一緒に」と手渡したクッキーも彼女にとっては不思議な味なのか、頬を抑え美味しいとご満悦だ。 「そじゃ、土産物を用意したからの。良ければ受け取ってくれんか?」 なあに、という様に首を傾げるセルバート。翔太がそっと立ち上がり、可愛らしいリュックを差し出せば彼女は大きな蒼い瞳を見開いて嬉しそうに笑う。 リュックの背負い方も分からないセルバートへと背負い方のレクチャーから始めれば『おもしろいものだ!』と些か的外れな感想を口にしながら少女はぴょんぴょんと跳ねた。 「それがあれば結構色々入るな。さっき渡したびいどろもリュックの中に入れておこうか」 キラキたと輝く『びいどろ』をリュックに入れる優希に嬉しいと大げさなほどに頷くセルバートは満面の笑みを浮かべて居る。 小さな少女の笑顔に妹――真菜が呼ぶ声が聞こえた気がして、普段の優希からは見られぬ様な自然な笑みがふわり、と浮かぶ。 「セルバート様、見て下さいね? ……ほら」 つん、と指先でつついたのはクリスタルクローバー。透明度の高いクリスタルの中に幸せ(クローバー)を閉じ込めた可愛らしい置物はセルバートにとっては不思議な『遊び心』を感じさせたのだろうか。 勿論、お気に召したリュックサックの中に入れてとはしゃぐセルバートにシエルは優しく微笑んできちんと入れてやる。 『きらきら、きらきらする!』 シエルのクリスタルクローバーと並べられたビー玉を指先で弾けば「姉殿と一緒に遊んでみてはどうかの?」と冬路は優しく微笑んでいる。 小さな『水晶玉』は光りを反射してころころ、と転がった。 夢中になっているセルバートへと上から掛けられたのは『不思議』な鳴き声だ。 「がおー」 ほら、と世恋が冬路を指せば、其処には可愛らしい動物のぬいぐるみがある。そろそろと手を伸ばしぎゅ、と抱き締めた。どうやら彼女はぬいぐるみの柔らかな感覚を気にいったようだ。 「それに、ほら。これが硬化……いわゆるお金じゃな。ぴっかぴかに磨いてあるぞ。綺麗な彫り物じゃろ」 「水晶玉みたいね」 『……きれー……うらべ、これ、きれー!』 そうじゃろ、と微笑む冬路はセルバートに差し出せば幸せそうに彼女は笑う。 冬路の和菓子に仁のいちごのキャンディ、瑞樹のお弁当とお腹がいっぱいになったセルバートは遊ぼうと仁の手を引っ張った。 『じん、あそ、ぼ!』 「ああ……じゃあ、缶蹴りの二回戦と行くか」 立ち上がったリベリスタ達が、元気な小さなアザーバイドに翻弄されたのは言わずもがなであった。 ●かえりみち 「気を付けて帰るんだよ? 今度はこけないようにね」 ぎゅ、とセルバートが瑞樹の手を握りしめる。頭を撫でれば小さなアザーバイドは寂しげにリベリスタを見回した。 『――……!!』 「『帰りたくない』か……名残惜しいが、姉殿の元に戻るが良いぞ。心配させてしまうからの」 寂しいと頬を膨らませるセルバートに小さく苦笑を浮かべた冬路が視線を合わせれば、俯き気味の小鹿は小さく頷いて涙が浮かぶ目尻を拭う。 小さく息を吐き優希は瞬いた。小さなアザーバイドの姿は真菜――妹の姿が重なって見えたからだ。 「妹が出来た様で楽しかった。また、此方の世界に来る事があれば遊ぶとしよう」 『――?』 「『遊んでくれるの?』とな? 勿論じゃ。皆もそう言っておる」 手渡された土産物は全て翔太の用意した可愛らしいリュックに入れられていた。小鹿の趣味に合わなければ任務の途中に彼女に合う物を選びに行くとまで宣言していた翔太。 小さな小鹿が手で持っていくのは大変だと、持ち易く出し易い、小児に合うキャラクターものの可愛らしいリュックサックはセルバートのお気に入りになっていた。 しっかりと背負った彼女が『遊んでくれるの』とリベリスタを見回せば彼等は皆、何処か優しげに笑っている。 「……まあ、危険な子ではないしな。また一緒に遊べると思う。気を付けてな?」 「ええ。お姉さんにもよろしくなのです。……また、遊びましょうね?」 最後まで笑顔を浮かべたシエルに頷いて、小鹿は帰り路を辿っていく。 帰り道を閉ざす様にと優希がそのゲートを破壊すれば、その寸前にセルバートが吹いたのであろうシャボン玉がふわり、と穴から抜けだした。 仁の前で弾けて消えたしゃぼん玉。吹き方すら知らなかった小さなアザーバイドのお礼であるようにも、思えた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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