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始まりの赤い闇

●二つの産声
 思い返してみてほしい。はじまりはいつの事だったか。きっかけは果たして何だったろうか。
 貴方は明確な答えを返せるだろうか。
 眠りの終端、覚醒の時。そしてそれらの転換点。連続していようが断絶していようがその境目は確かに存在する。そして全てが変わるその瞬間を、貴方は知っているはずだ。

 彼女の場合、背中に走った熱と痛みがそれだった。
 いや、明確に境目がこの瞬間とは言えないだろう。だが妹との談笑中に起こったこれが発端であり、この前後に絞り込めるのは確実だ。夢うつつ、とはとてもいかない激痛の中で、彼女は自分と妹が変わっていくのを見た。視界に広がっていく白は、自らの背から生えた翼だろう。
 翼。そう、翼だ。舞い上がる白い羽毛は明らかにそれが翼だと示していたし、それと共に広がっていく自分の知覚が、翼の持ち主が誰かを教えてくれた。笑ってしまいたかったし、怖くもあった。明日の会社やこれからの日常、それらが急速に遠ざかっていくのを感じていた。
 だが、それと同時に彼女は悟った。世界の姿と、その危機、そして自らの使命を。それは戸惑いを助長するものではあったが、混乱の最中にあった彼女には一筋の光のように見えた。
 変化に伴う苦痛から解放され、彼女は幾分か表情を明るくして顔を上げる。今のこの感覚を、そして今のこの状況を、彼女は自分の妹と共有したかった。

 彼女が目にしたのは、変わり果てた妹の姿だった。背中から二本の腕が新たに生え、見ている間にも身体は水気と張りを失っていく。
「お姉ちゃん、おねェちゃん……渇く……喉が、カワ、イ、たヨ……」
 彼女は元からある腕で自分の喉を掻き毟り、新たに生えた腕を、姉の方へと伸ばした。


 遠い昔か、それともまだ身近な過去か。どちらにせよそれは既に過去の話だ。
 境界を知るのは目覚めた者だけ。目覚めた後で、ようやく気付くのだ。

●境界線
「エリューションの発生を確認しました。事態は緊急を要します」
 集まったリベリスタ達に、天原和泉(nBNE000024)が事務的に語り出す。場所はここからそう遠くない、一見して普通の民家のようだが……まさにエリューションと化した直後という事だろうか。
 彼女は続けて『緊急事態』である理由を語る。
「付近にはフェイトを得、リベリスタとして目覚めたばかりの女性が居ます」
 そうして示された場所は、エリューションの付近というよりも同じ場所といった方が正しいだろう。
「使命に目覚めて居るとはいえ、戦い方も知らない状況です。先輩であるあなた方で彼女を導き、協力してエリューションを排除してください」
 新たに生まれた仲間をみすみす死なせるわけにはいかない。そして、フェイトに目覚めたとは言え道を踏み違えれば……
「健闘を祈ります」
 最後に彼女はそう告げて、一同を送り出した。

●現場で分かる事
・茜崎眞子
 優等生タイプの姉。力を得、フェイトを得たばかりのリベリスタです。使命にこそ目覚めましたが突然の事に戸惑い、どうしていいかわからなくなっています。
 背中には翼、当然ですが武装はしていません。

・茜崎恵
 妹。力を得ましたが、未だ夢の中。自らの使命に目覚めていないエリューションです。
 元の性格は甘えたがり。姉にべったりでした。
 背中から長い腕が二本、体皮は乾き、ひび割れた土のようになっています。動きはぎこちないものの素早く、腕で触れたものから生命力を吸収する力を持っているようです。ずっと掴まれていれば、それこそ無尽蔵に体力を吸われ続ける羽目になるでしょう。
 渇きと苦痛に苛まれています。生命力を吸収している間のみ、それらは緩和されるらしく、基本的にそのために動きます。

・状況
 住宅街の中、空き地の隣の民家の一階。リビングからキッチンまでぶち抜きの間取りで12畳程の広さです。他の住人は出かけているらしく、居るのは二人だけ。
 リベリスタの到着は最速でもOP冒頭の直後になります。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ハニィ  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年07月29日(金)22:55
 貴方はいつか力を得、フェイトを得ました。彼女もまた、あの日の貴方と同じ状況に居ます。
 先を行く貴方だから言える事もあるでしょう、『あの日の頃』を思い出し、行動に移してみてください。
 依頼の成功条件はエリューションを排除する事という一点のみです。もちろん現場で見てどう動くかは皆さん次第ですが。ええ。

 眞子は既にフェイトを得ていますので、世界の仕組みに関する説明は無くても構わないでしょう。とはいえ最初は混乱状態。皆さんのやり方次第で協力的になったり拒否反応を示したり色々です。
 まぁ物分りは良い方ですので、適切に接し、懇切丁寧に伝えれば協力してくれる事でしょう。
 当然ですが、『彼女の今後』はこの事態をどう言う経緯で、誰の手で決着をつけるかで大きく変わります。

 それでは今一度過去を振り返り、足元を見てみてください。
 その道は果たして正しいのでしょうか。

 ご参加お待ちしています。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトクリーク
倶利伽羅 おろち(BNE000382)
プロアデプト
天城・櫻霞(BNE000469)
スターサジタリー
ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)
ソードミラージュ
雪白 凍夜(BNE000889)
マグメイガス
柩木 アヤ(BNE001225)
ナイトクリーク
長谷川 又一(BNE001799)
デュランダル
イーシェ・ルー(BNE002142)
クロスイージス
セルマ・グリーン(BNE002556)

●間一髪
 変わり果てた妹の姿を目の当たりにし、茜崎眞子は愕然としていた。自らの背に宿ったそれは天からの賜りものだと、そう感じた実感は既に吹き飛んでしまっている。
 乾きひび割れた恵の肌はいつもの瑞々しさから遥かに遠く、こちらに伸ばされている長い腕からは禍々しさすら感じる。
「ぼーっとしてるんじゃないよ!」
 恵の両腕が硬直した姉を掴む寸前に、間一髪で乱入者が二人を引き離す。眞子の肩を掴んだ『ディレイポイズン』倶利伽羅 おろち(BNE000382)が下がるのと入れ替わりに、『深闇に舞う白翼』天城・櫻霞(BNE000169)と『守護者の剣』イーシェ・ルー(BNE002142)が前に出る。
「そこまでです。姉妹仲がいいのは結構ですが、この状況は見逃せません」
 そしてその後ろに立った『畝の後ろを歩くもの』セルマ・グリーン(BNE002556)がオートキュアで二人を順に援護する。
「あ、貴方達は?」
 形としては『自宅への乱入者』である。動転して尋ねる眞子に、盾を構えたイーシェは迷いなく応えた。
「助けに来たッス!」
 そう、彼女等は救いに来たのだ。目覚めたばかりの同胞を、そしてこの危機的状況を。
「ひとまず、怪我は無いようね」
 恵から引き離された眞子の姿を確認し、『天眼の魔女』柩木 アヤ(BNE001225)が巻き込まれる一般人が出ないよう強結界を張る。
「貴方も、翼を……?」
 その背に広がる黒翼は、眞子にある種『同族として』の安心感を与えたようだ。突然の事態だがそれを拒否するような感情は薄いらしい。
 それを見て取り、『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)は眞子の両肩に手を置く。聞き分けの良い少女。しかし彼女は、この状況を理解し、受け入れる事ができるだろうか。
 『リベリスタに救われた』という自らの目覚めの時を思い、彼女は口を開いた。
「妹さんに怪我はさせないわ。まずは、落ち着いて」
 今度は自分が救う側になるのだと、自らにそう言い聞かせながら。

「渇く……渇き……あァ……」
 目醒めの時は、こうして流れ始める。
「だが……何を以って『救い』と言うのやら」
 手狭になった部屋に降り立ち、『八咫烏』長谷川 又一(BNE001799)他の者には聞こえぬ声でそう呟いた。

●二羽の雛
 木の幹のように乾いた肌を掻き毟り、恵は喉からしわがれた声を絞り出す。
「喉、が、あぁぁぁ……」
 両手で喉を握り締め、干からびた瞼の下で瞳が蠢く。この様子では自分の、そして周りの現状を把握できているかも怪しい。彼女にあるのは、ただ渇きと苦痛だけなのか。
 瞳が捉えた人間に、背中から生えた腕が真っ直ぐに迫る。苦しげな本体とは逆に、その動きは獲物を狙う獣の如く素早い。
 だがイーシェと櫻霞を狙ったその腕は、直前の乱入者によって空を切る。
「目、覚ましやがれ」
 ここに来たリベリスタの最後の一人、『復讐者』雪白 凍夜(BNE000889)が、まさに文字通り冷や水をぶっかける事で彼女の虚をついたのだ。
「喉が乾いた? 知るか馬鹿野郎。寝惚けるのも良い加減にしろ」
 彼の粗暴にも聞こえる言葉に込められたそれは、果たして誰に対する怒りか。
 ぶちまけられた水は、しかし一瞬にして恵の中へと消えた。真綿に水が染み込むが如く、急速に。だが彼女に宿った砂漠は、その程度の水で潤う事はないらしい。
「足りない、これ……じゃぁ……!」
 凍夜の声に応えることなく、再度振るわれた腕は全力防御の体勢にあるイーシェと、櫻霞を捕らえる。押し退けるというより地面に引き倒すように力がこもり――
「何ッスかこれ……!?」
「吸血、か?」
 掴まれた二人は痛みよりも、力が抜けていく感触を強く感じていた。まるで吸血攻撃を受けているような感覚。掴まれた箇所から、血以外の何かが急速に失われていく。

「――今の貴女なら、理解できるはずよ」
 目覚めた力と世界の仕組み、そしてエリューションの存在を簡単に告げ、ミュゼーヌが眞子の瞳を覗き込む。眞子は既にフェイトを得ている、ここまでは問題無いだろう。そう、ここまでは。
「貴女が力を得たと同時に妹はあのような姿に成り果てた。……彼女はもう助からない」
 アヤが続きを引き取り、恵を指差す。恐らく眞子には受け入れ難い事であろうが……
「でも唯一救う手段が貴女にあるとしたら……どうするべきか分かるわね?」
 救う手段はただ一つ。苦しみと渇きから解放する事。そしてそれは、眞子が成さなければアヤ達の手で行われる事が言外に告げられる。リベリスタの使命が、守るべきものが彼女等にはあるのだ。
「彼女を放っておけば、革醒は進行し増殖し、更に被害は増えていくわ。彼女がそんな事を望む人かどうかは、貴女の方がよく分かっている筈よ」
 ミュゼーヌが言葉を重ねる。酷な内容ではあるだろうが、理解してもらわなくてはならない。そうでなくては、眞子の『これから』も成り立たないのだから。
「……彼女を救ってあげたいなら、お願い。私達に力を貸して」
「でも……」
 頭で理解は出来ているはず。だが、それでも眞子は首を縦には振らない。なぜなら――
「お……姉チャん……」
 目の前で、恵がそう呼んでいるのだ。

「アンタが姉さんを求める気持ちはわかるッスけれど、絶対に先には進ませねぇッス!」
 姉の名を呼ぶ恵の前に、再度イーシェが立ちはだかる。
 兜の下の表情が歪んでいるのは、繰り返される吸収攻撃によるものだけでは無いだろう。至近距離で戦う合間に、変わり果てた姿の中の縋る様な瞳を見つけてしまったのだ。
「絡め取れ、不可視の糸よ」
 イーシェを掴み取ろうとしたその腕を、櫻霞がトラップネストで縛り付ける。
「もうどうしようもないのは、自分でも解るだろう」
 動きの止まった恵に、気糸を操りながら櫻霞がそう告げる。それは質問というよりも、死刑宣告に近い。
 声が通じているのか、それとも気糸の呪縛を逃れるためか、恵が呻き声を上げながら身を捩る。
「やめて、恵を傷つけないで!」
 直接的な攻撃こそなかったが、苦しむ姿を見ていられなかったのか、眞子がそう言って前へと進み出る。

 悪意など誰にも無い。誰が悪かったわけでもない。ただ眞子は少しだけ前に出て、恵は求めていた姉の姿を認めてその力を振り絞った。
 それは、抱擁と呼ぶには些か凶悪に過ぎたかも知れない。

●飛び方
 左右両方から振るわれた腕は、それぞれに床を破壊して止まる。その中心には、へたりこんだ眞子の姿が。そしてその隣には、それぞれに振るわれた腕を逸らした凍夜と又一の姿があった。
 眞子を下がらせ、リベリスタ達はすぐに陣を敷きなおす。ダメージの積み重なったイーシェに代わっておろちが前に出て行く手を塞ぎ、セルマが負傷者を癒していく。
「……無力なもんだな」
 再び押さえ込まれる恵を見遣り、又一がそう口にする。ああいう状況に陥った者に対し、自分達が出来る事は極めて少ない。
「どうしようもない、なんてことは無ぇ」
 だがそれを聞いた凍夜は、どこか頑なな表情でそう言った。
「恵って言ったか。彼女は、未だ生きてるんだ」
「そうか。……そうだな」
 そのやり取りでお互い納得したわけではないだろうが、ここで意見を交換している時間は無い。凍夜は恵の方へ、又一は眞子の方へ。二人は背を向けて動き出した。

「な……ンで……?」
 疲弊しきったような声で、恵は邪魔する者達にそう尋ねる。吸収攻撃中は渇きが緩和されるとは言え、それ以外の時は常に苛まれ続けているのだ。これでは肉体ではなく精神が持たない。
 姉と妹、二人一緒に運命に微笑まれていればどれだけ良かっただろう。そんな事を考えながら、セルマが傷癒術で以ってイーシェを癒す。
「アンタは、ダメだったッス」
 だから、通せない。イーシェの発した答えはそれだけ。恵は運命に選ばれなかった。ゆえに厳然として、彼女にとって恵は敵なのだ。
「どうシて……?」
 その質問に対する答えは、誰も持ち合わせていない。伸ばされた腕を受け止めたおろちには、恵の悲痛な声が聞こえてきた。恵は苦しむばかりの現状を嘆き、自分の不幸を呪っていた。無事である姉の事を恨んでもいたし、縋ってもいた。
 救いを求めて伸ばした腕は、しかし姉には届かない。
「甘えんな」
 おろちに向けられたのとは逆の腕を、凍夜は自分から掴んで見せた。
「良いか、自覚しろ。これはお前の手だ。お前の意思で止められるはずだ」
 腕を掴まれたという感覚は、間違いなく恵自身に届いている。苦しみから逃れるのに夢中だった彼女は、ついに逃げ場なく『それ』を自覚した。
「お前の手が何したか、思い出せ。お前の大事な姉ちゃんを殺そうとしたんだぜ?」
 続けて、自分を取り戻させようという凍夜の言葉が彼女を打つ。渇きの最中にあっても、彼女にはうっすらとわかっていたのだ。腕を伸ばせばどうなるか、その手で掴むことで姉がどうなってしまうのか。それでも、彼女は手を伸ばしてしまった。
「そんなもんに屈して良いのか、なあ茜崎恵。本当にそれで良いのか!」
 良い訳がない。
 恵は自覚する。何故に彼等が自分だけの邪魔をするのか。それは恵自身が化け物と化してしまっているからだ。渇きを癒すために姉を手にかけようとした自分は、既に。
「いいわケが、無イ……!」
 こうしている合間にも凍夜の命を吸っている腕を、彼女は無理やり引き剥がす。おろちに向けていた腕も同様に。だがその瞬間に渇きが彼女に襲い掛かり、理性の光が呑まれていく。
 しわがれた悲鳴を上げて、恵は渇きに抗う。
 近づくなとばかりに振り回された腕は、リビングの床や天井をでたらめに傷つけ、リベリスタ達を後退させた。

「貴女の妹……いま、とても、苦しんでいるわ」
 恵の内なる戦いを読み取り、おろちがハイテレパスを用いて眞子へと言葉を伝える。
「彼女が、その苦しみから本当に解放される道はただ一つしかない……。今の貴女は…わかっているはず」
 暴れる妹を、そしてミュゼーヌやアヤ、おろちの言葉を聞き入れて、彼女も同じ結論に達していた。
「けれど、本当にそれしかないの? 本当に恵は、それで救われるの?」
「それは俺たちにもわからねぇ」
 この運命は皮肉か救いか。それは見方によるだろう。
 たとえ革醒し力を得ても、それは運命に対して非力に過ぎる。それを真正面から受け止めなくてはならない。そこを受け入れられず、自滅していくものは多い。それをいくつも見てきた又一の言葉は、少ないながらも示唆に満ちていた。
「だから、どうか……最後は一番の大切な人の手で送ってあげて欲しい」
 又一の言葉に頷き返し、眞子は決意を固めた。彼女の翼は非力だが、無力ではないのだから。
 大きく広げられた白い翼が、戦場と化した室内に風を呼ぶ。

●翼を広げて
「負けんな、自分自身に、こんな残酷なだけの運命に何かよ!」
「や……メ……来ないデ……」
 凍夜の飛ばした檄が恵を揺さぶり、意識を引き戻そうとする。
「お前のその手は、お前の中の弱さだ。切り拓いて見せろ。羽ばたいて、見せろよっ!」
 運命への呪いと、願いを載せた彼の叫びは確実に効果を見せては居た。一時的とは言え恵は理性を取り戻し、今もこうして苦痛と戦っている。
 彼がここまでするのは、失った妹と彼女を重ね合わせているからか。だが何にせよ、彼の言葉に恵が応えることはできなかった。
 堪え切れない苦痛に押され、計四本の手が彼に向かって殺到する。
「危ない!」
 それを打ち払う純白の翼。腕では無く、翼を振るった眞子がそこに居た。
「ちくしょう……ッ」
 状況を悟り、凍夜が歯噛みする。言いたい事はまだあるし、できる事もまだあったかも知れない。だが事態の当事者たる眞子が決意を固めた以上、彼に言えることは無い。

「世界や私達を恨んでも、お姉さんを恨まないであげて下さいね?」
 セルマのその言葉は、果たして届いているのだろうか。両手を振るって暴れる恵とリベリスタ達の戦闘は、一方的とも言える流れで展開していく。
 おろちの鋼糸が絡み、アヤの遠距離からの攻撃が着実に体力を削る。恵の動きが明らかに鈍いのは、『慣れぬ体である』というだけが理由ではあるまい。
「もういいの、恵さん……その渇きから解放してあげる」
「アタシらより、お姉さんに送ってもらったほうが、妹さんも浮かばれるッスよね」
 ミュゼーヌの精密射撃とイーシェの渾身の一撃が道を拓き、その間を眞子が舞う。
「恵……」
「……おねぇちゃん」
 躊躇いは無い。これが救いであるのだと、彼女は信じた。
 決然とした表情を浮かべたまま、眞子は気を込めた翼を打ち振るう。暴風を伴うような一撃を受け、ノーフェイスは吹き飛び、力尽きた。


 びしゃりと散った返り血が、眞子の翼と顔を汚す。乾ききったような体を流れていたそれは、黒に近いほど濃い赤色をしていた。
「……やれやれ、終わったか」
「もう苦しくはないでしょう? お休みなさい」
 武器を仕舞った櫻霞と、セルマが倒れ行く恵を見てそれぞれに言う。そして又一と凍夜は、決して最後まで抜くことの無かった刀から手を離し、姉妹から視線を外した。

「……」
 眞子は世界を救った。使命に従い、新たな仲間に従い、世界を救い、妹を救うための一手を選んだ。
「……ああ」
 引き返す事などできなかった。運命は彼女を選ばなかった。世界を救う使命があった。他に方法は無かった。これは彼女のためで、彼女を救ったのだ。
「あああああああああ……」
 けれど、そんな理屈に縋った所で変わりはしない。
 嗚咽とも怨嗟ともとれない、喪失感をそのまま音にしたような声を上げ、眞子は恵の亡骸を抱きしめる。
 彼女を切り捨てたのは、誰か。

「……それでも、倒して、救わねぇといけねぇッスよ。魂と、尊厳を」
 膝を折った眞子の背中にイーシェがそう告げる。そして新たに生まれたリベリスタに、櫻霞は右手を差し出した。
「ようこそ、理不尽だらけの非日常へ……共に足掻くとしようか」

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 眞子は皆さんのおかげでリベリスタとして歩き出しました。
 ですがその裏に飛べない鳥が居た事も、ひとつ覚えておいてください。