●トンデモナイ代物 「本日はお集まり下さって誠に厚く御礼を申し上げます。さっそくですが、皆様方には京都の家元で開かれるお茶会と称したお見合いパーティに参加して頂く思います。運命を失った不届き者が紛れ込んでアラサー女性を狙うとのこと。ぜひ阻止して頂きたい」 艶やかな着物姿に身を纏った『Bell Liberty』伊藤蘭子(nBNE000271)が髪を掻き上げながらいつもとは違う厳かな口調でリベリスタに説明をする。 会場となる家元のお茶会には大勢の名家出身の日本美人女性や名の知れた地元の名士がやってきて将来の結婚相手を探すという。みんなそれぞれが自分の家の跡継ぎ問題を抱えており婚活にかける想いは並々ならぬものであった。 「今回助けて欲しいのは神宮寺麗華(28)で、実は私の学生時代のお友達よ。彼女はアーティファクトの香水を身につけている。その効果によってノーフェイスの男を引き付けてしまい襲われそうになってしまうの。ノーフェイスの退治とともに、この香水も一緒に回収してきてくれると嬉しいわ」 蘭子はその香水の恐ろしい効能について述べ始めた。香水を身につけると一時的に見た目が若返って魅力的になるという。お肌が十代の頃のようにピチピチになり、お腹周りのぜい肉が落ちて細くなりスタイルがよくなる。今までモテなかった女性でもこれを使用することによって男性からモテて困ってしまうというトンデモない代物だった。 だが、そのアーティファクトには一つ厄介な副作用があった。男性にモテるといっても運命を失った誰からもモテなさそうなダメな男性にしか好かれなくなる。 なんとも皮肉な効果だった。より美しくなれるとはいえ、アプローチしてくる男性がよりにもよってダメなノーフェイスばかりとはやりきれない。リベリスタならまだしも一般人で美人でもある麗華にとっては災難だ。はやくアーティファクトとノーフェイスを退治しないと麗華が襲われて命の危険が生じてしまう。 「貴方たちには家元のお茶会に侵入してきてもらうことになるわ。ただし、家元のお茶会に入れる女性は容姿が優れた慎ましく上品でお淑やかな大和撫子だけよ。もしガサツなところを見せたり言葉遣いを間違えると即刻会場からみんなに叩き出されるから注意して」 蘭子は注意事項を述べた。お茶会に参加している女性はみんな着物姿の見た目は上品な振舞いをする和風美人ばかりだった。中には優れた三味線やお琴や短歌や習字を披露して他のアラサー女性を出し抜こうとする者が大勢いるほどだった。 「なんとか、ノーフェイスの男共を麗華から引き離して惹きつけて、隙を見てアーティファクトも回収してきてほしい。まあリベリスタであるからには当然、それくらいの素養はできると期待しているわ。くれぐれも恥をかいて途中で追い返されないようにね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年09月27日(金)21:31 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●魅惑の大和撫子 「るんるんるん~♪」 神谷 小鶴(BNE004625)が鼻歌交じりに『History of a New HAREM』雪白 桐(BNE000185)の着付けを控室で行っていた。着物用ブラジャー、ウエストニッパーでがっちり体型を作ってその上から着付けを仕上げていく。 「雪ちゃんは可愛いんだから、磨けばすごく良くなると思うの」 着物は紺色に、淡い色で花の模様のある、少しかわいい系の感じにする。帯は薄い黄色でバランスを整えてライトブラウンのハンドバックを持たせた。 手慣れた様子でロングのウィッグをアップにしてアクセサリーも付ける。落ち着いたそれでいて若々さのあるイメージに桐を仕立てる。 「間接キスですよ?」 小鶴が自前の口紅で化粧をしようとしたところで桐が呟く。 「いやあだもう~。雪ちゃんたら今さら照れてるの?」 桐は観念して小鶴の思うがままにさせる。準備をしている傍らで日本舞踊や茶道が得意な小鶴にその作法や振舞いの心得を教えて貰う。とくに言葉遣いに関してはメモを取りながら徐々に桐は美しい日本の大和撫子に徐々に近づいて行った。 隣では同じように『魔性の腐女子』セレア・アレイン(BNE003170)が黒のウィッグを被って黒のカラコンとファンデーションで日本女性の美しさを追求する。 「あとは幻視で誤魔化してって――神谷さんは準備をしなくて大丈夫なの?」 「えっ、あっ、忘れてました。急いで頑張ります」 小鶴は指摘されて慌てて黒のウィッグを被る。たまにはショートもいいなと思いつつ、銀色の模様がベースの黒い着物に、帯の色は藤色で……っと急いで仕度する。 「さあ行きますわよ。くれぐれも殿方に失礼のないように」 『天邪鬼』芝谷 佳乃(BNE004299)は完璧に着物を着こなして外ですでに待っていた。芝谷家の娘の気品さと上品さを全面的に醸し出している。派手になりすぎない落ち着いた藤色の着物が佳乃を美しく引き立たせていた。 「俺も一応殿方だぞ……」 『OME(おじさんマジ天使)』アーサー・レオンハート(BNE004077)は横をすり抜けていく佳乃たちに着流し姿をアピールして見た。だが、特に反応もなく一足先に会場へと消えて行ってしまう。アーサーは少し切なくなった。 『No-A』二拾 陸(BNE004731)と『No-C』零 四(BNE004733)は明らかにアラサーではなかった。だが、皆お見合いのことばかりに気を取られて小さな子供の姿が意外にも興味を持たれない。だれかの連れ子だろうと思われていた。 陸と四はお見合い会場が見える庭の方へと先に移動する。敵勢力の殲滅、AFの回収または破壊。一般人の救出という任務条件を頭の中で何度も唱える。 「これがお見合いってやつなんだ。なんかみんな目の色が違うわね」 セレスティア・ナウシズ(BNE004651)は会場に入るなりあちこちで談笑したり手習いを見せ合う婚活者たちを見て驚きを隠せない。セレスティア自身は超幻視で適当な和服っぽい服装をでっちあげていた。意外にも目立っていない。 陸と四が庭で別行動し他のメンバーはお見合い会場に入ってさっそくターゲットとなるノ―フェイスと神宮寺麗華に厳かな足取りで向かって行った。 陸はノーフェイスの身体的特徴を元にしてターゲットを絞り込むとすかさずAFで仲間に連絡してそちらに向かうように指示する。途中でオジサンに声を掛けられたが陸は無視して立ち去った。四も同様にお構いなく、と無視を決め込む。 まだ自分は若いからかもしれないが三十歳でこんなにも熱意をもってなにかに取り組もうとしている人たちが大勢いることに疑問を持った。 「ヤマトナデシコ。確か戦う女性とかではなかったですかね。戦争時代の。よくわかりませんね。ハラショー」 今の三十台でその意味がわかる者はどれほどいるだろう。誰も知らないその知識を持っている時点でただの子供ではない。 ●ご趣味はなんですか? 「それにしても、このようなお見合いの場、というのははじめてでございますが、皆様、親切そうな方ばかりで安心いたしました」 佳乃は軽くぽんと手を打ち、小首をかしげてにこやかに振舞う。佳乃はお茶会を開いている龍堂院実篤の取り巻きの中心で話し込んでいた。 「趣味にございますか? そうですわね、お茶とお花、あとはピアノを少々。はしたないとお笑いになられるかもしれませんが、乗馬も嗜んでおります」 佳乃の言葉に賞賛の言葉が掛けられる。周りにいる人たちは馬に乗ったことがない人がほとんどであったために逆に珍しがられた。 すでに佳乃は今の所完璧な出で立ちと振舞いで人々を惹きつけている。もちろん本当は東京競馬の方が詳しいのだが、そんなことは絶対に口はしない。 「佳乃さんは他にどのようなご趣味を」 実篤はじろじろと遠慮のない視線を佳乃に向かって投げかけてくる。 「サドが趣味でございます」 佳乃はつい本音をぽろりと喋ってしまう。 「茶道は先ほど聞きましたが――」 実篤が真面目に佳乃に答えた。どうやらバレずに済んだらしい。本性は茶道家ならぬサディストである佳乃は趣味ではなく性癖の方が正しい表現だった。 「ねえ、そこの彼女さん。僕と一緒にお茶でもどうですか?」 影の薄い木村がセレスティアに声をかける。セレスティアも一人でぽつんと距離を置いて傍観していたために木村も声を掛けやすかった。 「何よ、あたしの興味引こうってなら、何か面白いことしてごらんなさいよ」 「えっ、俺キムタクだよ」 寒いおやじギャグを放ったがセレスティアの表情が険しくなった。 「つまんない、あっちいって」 横暴な態度を見せたセレスティアに木村もさすがに心が折れる。ガラスのハートの持ち主であるキムタクは女子に馬鹿にされて意気消沈してしまった。 「きゃあっ、ちょっと何をしていらっしゃるの!」 「大変申し訳ありません、別室に稽古用の着物を用意しておりますので、そちらにお着替えください」 セレアがコップに入った水を盛大に神宮寺麗華にぶっかけた。隣にいた岡崎と本田があからさまに不機嫌そうな顔をして迫ってくる。セレアは二人が麗華にちょっかいをかけられないうちに強引に着ものが皺になるという理由で連れ去った。 麗華の着替えを手伝うついでにセレアは着物の裾からこっそりとアーティファクトの香水を抜き取った。セレアは誰にも見られないように牙をこっそりと口から出して不敵な笑みを浮かべる。まんまとセレアの策略が上手く行った。 続いてセレアは陣地作成の詠唱を始めて準備を密かに整え始めた。 「この若輩の身に教えて頂けないでしょうか?」 桐は実篤に声を掛けた。実篤も桐に教えていたが徐々にスキンシップを図られるようになって桐はすぐに逃げた。特に並みの女性よりも美しく輝いていた桐はお見合い会場で一番の注目対象になっていた。先ほどから途切れもなく次々に声を掛けられてさすがの桐も困惑する。 たまに覚えたての振る舞いや言葉にボロが出て失敗したがそれが逆に微笑ましいと人気に拍車が出る一方だ。 「両親に今のうちから顔知って貰いなさいといいまして……」 若いことを突っ込まれてしまったが、何とか誤魔化して事なきを得る。何とか食い下がる男性陣をやんわりと制しつつようやく周りは岡崎達だけとなる。 「ねえ、俺達と一緒にレッツパーティしょうZE?」 岡崎が腰をくねらせながら小鶴にしつこく迫る。小鶴も舞踊やお茶を上品にこなして桐ほどではないにしても人気があった。 「う~ん、私こういうの始めてですから」 小鶴は奥手な感じを醸し出しつつ上目遣いで岡崎を見上げる。これはもうたまらいと馴れ馴れしく腕を回してくる岡崎に桐はダメ押しの一言を放った。 「神宮寺さんが戻って来られるまで私のお相手願えますか?」 桐と小鶴は人気のない場所へ岡崎と本田を連れ込むことに成功していた。 ●婚活の場のはずなのに 「ゲイ富岡さんですか――?」 アーサーがついにゲイ富岡に声を掛けた。開始からずっと躊躇って今の今まで先延ばしにしていたがついに覚悟を決めて話しかけた。 アーサーのやるべきことは一つだった。他に邪魔ものがこないか見張っているゲイ富岡をなんとかして惹きつけなければ仲間に被害が出る恐れがある。 「貴様はもしかしてコレか?」 嬉々として指を突き立ててくるゲイ富岡に一言「そうだ」と答える。ゲイ富岡は着物を大胆にもはだけてその鍛え上げられた筋肉を見せつけた。 「ちょっとこっちに来てくれないか?」 さりげなく誘ってくるゲイ富岡にアーサーは無言で従う。 ……俺、なんでこんなことやってるんだろう? アーサーはどうしようもない気持ちに襲われたがそれでもゲイ富岡に続いて出た。人気のない庭に辿りつくといきなりゲイ富岡が後ろからアーサーに襲いかかってきた。 「な、なにをするんだ! や、やめろ」 「恥じらう必要はどこにもない。ここは俺達だけのパラダイスだ。それをお前も望んでいたのだろう? さあ俺の支配の指の虜になるんだ!」 そう言うが否やゲイ富岡はアーサーの後ろからごつごつした指を突っ込んだ。激しく責め立ててくるゲイ富岡の超絶テクニックに思わずアーサーは声を漏らす。 「いたああああっ! やめろおおおっ!! ああああっ、いたあああ! それはそんな風にするもんじゃないいいっ!! あああイクうううっ!? お、お、お稲荷さんがナンマイダアアアアアアッッ!!」 アーサーは激しく痙攣してその場に倒れ込んだ。ちょうどその時セレアからAFで連絡が入って陣地作成が成功したことを告げられる。あと少し早ければ極楽浄土を見なくて済んだのにとアーサーは重い身体を引き起こした。 振り向きざまにギャロップレイを放つとその場でゲイ富岡の動きを封じ込める。 「な、なんだこれは新手の緊縛ぷれいか? いいぞもっとやれ!」 勘違いをしているゲイ富岡に溜め息を吐いた。遠慮なくアーサーはさっきの仕返しとばかりにソニックエッジで執拗に攻め立てた。 「大体、なんで婚活の場のはずなのにお前みたいなのが来ているんだ!? ちゃんとそういう趣旨の所に行けばいいだろ!?」 アーサーが怒りを込めて同じように後ろから攻撃をぶちかます。 「ああああ気持ちいいっ!! だって俺はノンケを無理やり襲う方が、す好きだからあああっ!! お稲荷さんがナンマイダアアアアアッ!!」 ついにゲイ富岡は絶頂の言葉を叫びながら突っ伏した。一方で桐と小鶴が連れてきた本田と岡崎達も突然豹変した女子たちに恐れをなしていた。 陸と四が攻撃開始とともに飛びかかって行く。絶妙なコンビネーションでもって陸がまずメガクラッシュを放って岡崎を弾き飛ばす。さらに仲間を助けようとした本田に対しては四が1$シュートを放って弱点である頭皮を狙い撃った。 「や、やめろおおっ!! 髪が髪がなくなる」 慌てて本田は薄い髪の毛をさらに薄くして針のような髪を飛ばす。攻撃をうけて四は後退したがすぐに小鶴が回復を施して立ち直らせた。 今度は本田が力づくで四を押さえつけようとしてきたが、陸が再び剣で本田を斬って捨てると絶叫してその場に崩れ落ちた。 続いて岡崎がギターで煩い雑音の衝撃波を放つ。桐が小鶴を防御して代わりに攻撃を受け止めて助ける。小鶴を狙われて怒った桐は岡崎に詰め寄った。 「そんなに死にたいのなら八つ裂きにしてあげますよ?」 桐が怒りながら跳躍する。岡崎がギターで攻撃を受けとめようとしてくるが、桐は渾身の120%の力で持ってギターもろとも岡崎を切り裂いた。 ●最後のお楽しみ 「おのれ、よくも騙したな――」 龍堂院実篤は佳乃に日本刀でいきなり斬りかかった。佳乃は腰に差していた冬椿を高々と振り上げると不敵な笑みを浮かべて隅に実篤を追い詰める。 さらに後ろから木村を追いたててやってきたセレスティアがいた。実篤と木村は互いに合流して一緒になって戦う素振りを見せる。 セレスティアは翼の加護を仲間のリベリスタ達に付与した。だが、隙を見て実篤もセレスティアの方へと刀を振りまわして斬ってきた。 堪らずセレスティアも傷つく。これ以上好き勝手には動かせまいとエル・フリーズで動きを封じ込める。そこへセレアがやってきて構わずチェインライトニングで一気に木村も巻き込んでケリをつけにかかった。 木村は攻撃を受けながらもなんとか脚力をいかして逃げようする。だが、回り込んだ陸によって剣で叩き斬られてついに突っ伏した。さらに容赦なく陸はトドメをしっかりとさして次なる敵へと突き進む。 実篤はボロボロになりながらも刀を杖代わりに立ちあがった。そこへ陸と四のコンビが実篤に正面から襲いかかる。 陸が剣で実篤の刀を抑えにかかった。二人がせめぎ合う隙に横から実篤目がけて四が1$シュートを再び狙い撃つ。刀を弾き飛ばされた実篤は後ろに逃げようとした。背中を向けたところをセレアが狙いを定める。 「最後に残ったのは貴方ね。でも殺すのは惜しいわ」 「た、たのむ助けてくれ。金なら幾らでも――」 「そんなことを思ってるわけないじゃない。さあ死になさい」 セレアがマジックミサイルをぶっ放すと実篤は苦しみながら地面に突っ伏した。全ての敵を倒してセレアは溜め息を吐いた。たまに真面目に仕事をするとやはり疲れる。やはり窮屈な格好は自分には似合わないと思う。 持っていた香水はどうしようかと思っていた矢先に陸がやって来て粉々に破壊してしまった。まだ若い陸には不必要なものかしらねとセレアは呟いた。 「雪ちゃんお見合い会場に戻ってお茶でも楽しみましょう」 「えっ、まだやるんですか。仕方ないですね、もう」 小鶴と桐は楽しそうに会場に戻っていく。せっかく着飾ったのだからもう少しこうして一緒に桐と大和撫子を堪能したい。小鶴は桐の袖を引っ張りながら急いで会場へと戻って行った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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