●0と1の境界の果て -0,1,or- 脳という器官には、微弱な電気の信号が駆け巡っている。 これを模したコンピュータ。異国の言葉で"電脳"というそれは、0と1の最小単位の信号で動く、脳のフェイクである。 尤も、常識の範疇では、最新鋭のコンピュータであっても、人の脳に遠く及ばないのだが―― ●げえせん++ 日本で有数の、電気屋が多く立ち並ぶ街がある。 昼は、観光客や家電製品を求める人々でごった返すものの、21時を回ると人通りは少なくなる。 されど、最近では夜になってもチラチラと明るく、とかく大通り中央に鎮座する巨大ディスカウントストアに至っては、明かりが途絶える事はない。 駅から降りて、大通りを歩くこと5分程の所に存在するゲームセンターも、24時まで営業を続ける程に気合いを入れて明かりに貢献しているのである。 この日、とある日。冴え冴えとした夜の時分。奇妙な少女が足を止めた。 魔法使いめいた三角帽子に、フリルをあしらった巫女の衣装。黒髪に真紅の瞳。一見にしてコスプレと見紛う姿であった。 「ふうん、ここが『げえせん』か」 少女は厚底ブーツをコツコツ鳴らし、フロアを進む。ビデオゲームコーナーへと移動する。 ビデオゲームコーナーでは、ゲーマー達が寝食を忘れるほどに熱中している。少女の場違いな姿に気を払う事もない。 少女は、人だかりが出来ているゲームに一寸目を止めた。 パーソナルコンピュータにつくマウスと、操縦桿の様なスティックを用いる特異なゲームである。 「あのロボットの奴は――何かパスだ」 次に、何やら可愛らしいパズルゲームを見て、口角を上げる。 「パズルゲームは試した事なかったか。何となく」 少女は右手を握り、開く。 開くと、掌の中央から六角形模様の球体が現れる。 「さあ、さて、どんな下僕ができるか。うふふのふー!」 撫でるかのような軽やかな動きで、球体をメリメリとゲーム筐体の画面に押し込む。 バチバチと筐体から紫色のスパークが生じる。 ぼかん。と筐体が爆ぜて、黒もうもうとした煙の中より、大量のじぇりの様な物体が雪崩の様に飛び出した。 「ヒョオオオッホーッホー!」 色とりどりなジェリ達に、少女は楽しみながら飲み込まれる。 どんどん増殖するジェリ達は、あっというまにフロアを埋め尽くして、そして。 ●ゲーセン行こうぜ! 「(´・ω・`)じゃない」 『リンク・カレイド』真白 イヴ(nBNE000001)は最初に風評被害が無いように努めた。 (´・ω・`)は『どりん』と読むが、今日はあんまり関係ないらしい。 「げーせんでE・フォース。パズルゲームの筐体から、じぇり型E・フォースがぽこじゃか出てくるから、その発生源の筐体を壊して」 映像を見れば、確かに色取り取りのじぇりっぽいラグビーボール程の球体が、雪崩の様に出てきている。今回の任務は、この群れを掻き分けて掻き分けて倒して倒して、発生源を叩くという話らしい。 「一応、元がパズルゲームらしいから、何かするとこのじぇり型E・フォースを、大量に消滅させられるみたい」 何だかしらんが、面倒なら一掃できそうな技で殺ってしまっても差し支えないだろう。 何故ならば、放っておけば、中にいるゲーマー達が窒息死してしまう事は想像に難くない。時間をかけては不味いのだ。 或いはこのじぇり型達が溢れて、街にまで飛び出してしまい神秘秘匿面でも問題が生じる事だろう。どんな味がするかも重要だ。 「ところで、この少女なんだけど。何者?」 そして、話はじぇり型出現させた少女である。 今回の事件の元凶と見て良いだろう。 手渡された資料によれば、以前にも似たような事件が発生していたという。 「何者かまではもうちょっと時間かけて探ってみないとわからない。けれど『人以外』というのは確かよ」 「以前あった事件と同一犯ではない?」 「違うと思う。前はフェーズ3のE・フォースが元凶だったけれど、今回のこの子からは、アザーバイドに近い感じがする」 アザーバイド。 それは、異世界からの住人に用いられる呼び名である。 『人以外』である事が確かであれば、撃破するに越したことはない。そして掻き分けて進んだ際に遭遇する可能性もあるだろう。 「最後に大事な事を一つ」 イヴは一呼吸置いて、皆をじっと見る。 「(´;ω;`)じゃない」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:Celloskii | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月03日(木)23:08 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●因縁の交錯 -Cross Over- 見上げた所に浮かんだ月の眩しさは、人工的な光で細る。 すっかり日が短くなった秋の宵の下。青墨色の闇と光のグラデーションが町中に落ちて、しかし大型ディスカウントショップの前で人々が喧騒し、静けさも細る眠らぬ街。 「ふぅ~ん、なかなか面白そうなことをするアザーバイドちゃんじゃない♪」 『ヴァイオレット・クラウン』烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)は、得物のカードを右手、左手に携えて愉快そうに笑った。 ゲームを実体化するこの性質。 それにどことなく、性格的に近しい空気を覚えていた。愉快犯的な、痛快を求めるような雰囲気が、とても。 「是非お近づきになりたい所ね、うふふふふふふhhhh」 そしてゲームセンターの異変は既に始まっていた。エーデルワイスが最速で駆ける。 「アザーバイドとお近づき――ですか」 『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)は、一方、不安を募らせる。イヴから渡されたアザーバイトの断片的な情報から、過去に交戦した『あるアザーバイド』が妙に引っかかるのである。 「アザーバイドと言えばヴァプマの時は大変だったなぁ、あれも黒い球体を使ってたっけ」 ヴァプマ――VAPMOR。 それは、異世界の寄生虫型アザーバイドの名である。世界を、神秘すらも、侵食して領域を広げんとする侵略者であり、全ての神秘の敵である。 「あー、嫌なこと思い出しちまったい」 もしも、本当に奴であったなら。連戦は一寸待った方が良いだろうか。と考えて、四輪駆動のバンをアクセスファンタズムより取り出す。 『陰陽狂』宵咲 瑠琵(BNE000129)があばたの考えを察したか、車に乗り込むあばたに軽く声をかけた。 「元凶たる少女に関しては因縁染みたものを感じるが、此処で取り逃がしても縁があればまた逢えるじゃろう」 瑠琵も、『ヴァプマ』との交戦で、あばたと同じ戦場に在った。その際、大きく斬り裂かれた一撃を受けている。薄氷の勝利と言うべきか。それ程に強力なアザーバイドであったのだ。 「ともあれ、まずはじぇりじゃ。速やかに発生源を止めねば被害は拡大するばかり。行かねばな」 「そうですね。仰るとおりで」 あばたが車のエンジンをかける。既にエーデルワイスはヒャッホーしながら走っている。瑠琵も後に続く。 「しかし、どりんではなく、じぇりですか」 『怪人Q』百舌鳥 九十九(BNE001407)は、ふむと首を傾げる。 「正直な話どっちでも良いと言えば良いんですが、数が多くて、増えるのが厄介なのは変わりないようですな」 あばたと瑠琵の二人が交わす事にはタッチせず、それはそれとして。得物の銃を握る。 「しかし――今度は何にとりついたんですかのう。厄介な話ですな……とりあえずは、頑張ってじぇりを撃ち消すとしましょう」 九十九は首を正して、三人に続く。 「とりつく……?」 九十九の『今度は何にとりついた』という呟きに、一方『三高平妻鏡』神谷 小夜(BNE001462)は、引っかかるものがあった。 アザーバイドは何かに取り憑く性質であるのなら、『取り憑かれた者』が何であるか。『彼女』を追いかけている当事者としては。 「でも、じぇり。懐かしいですね。通あたりが一番好きだった気がします、システム的にフィーバーは複雑になりすぎてどうも、こう……」 やはり、この件を長らく追い続ける、ゲームスキーなのである。 『薄明』東雲 未明(BNE000340)は、この手のゲームに若干狼狽を覚えていた。 「実はこの手のゲーム、ちょっと苦手なのよね。落ち着いて考えればいいはずなのに、焦ってミスしちゃったりしてさ」 しかし、よく考えれば、普段は絶対に出来ない『むきゃー! 詰まってく!! ひぇぇぇ! バタンキュー』を、最悪、力押しで無理矢理消せるのだから、ストレスは微塵も感じないだろうか。 むしろそれをやりに来たと言えようか。デュランダルこそが決闘者である。 「『一時閉店、翌朝より通常営業』の張り紙は持ってきたわ。今宵は貸し切りね」 「確かに、随分見たことのある代物だがエリューションはエリューション。増え続けられるのも嫌だしさっさと片付けて終わらせるとしよう」 こと戦闘や日常において、冷静冷ややかに在る『アウィスラパクス』天城・櫻霞(BNE000469)であったが、ゲームに鑑識が無い訳ではない。これがどういうシロモノかは心得ていた。 「しかしこいつら。種類ごとに同じ箇所に集めれば連続消滅するんだろうか?」 見れば、どうも因縁ある者がチラチラいるらしい。首を傾げる。直ぐに正す。黒と赤の銃を掌に。どうもアザーバイドの類には嫌な記憶しかない。 「まあ……良い」 立ちふさがるならば、撃つだけである。 「ふぃーばっ!」 『健全ロリ』キンバレイ・ハルゼー(BNE004455)は、実にこのゲームをやりこんでいた。極端に露出の高い服装で飄然と、一様に世間から解脱した有り様で、テンションを上げる。 「あーこのパズルゲーム知ってますー! 4つくっつけると消えるんですよね! 18連鎖でじぇりまんで会社がバタンキューですよねっ!」 秋の夜空の下。くしゃみが出そうになる。我慢する。 「では行きましょう! 邪悪ロリに光りあれ。きんばれいは健全ロリですけどねっ!」 味も見ておきたい。 各々の思索は、若干違えど目標は同じ。ゲームセンターより溢れ出るじぇり達へと八人は駆けた。 ●じぇりじぇりフィーバっ -payo_yen- ラグビーボール程の色とりどりのじぇりの群れ、いやさ壁と言うべきか。 「あはっははhhhhhh、さぁショウタイムです☆」 その壁に、エーデルワイスが身を投げ出した。突っ込む。ぷにゃあ、むにゃあ、といった感触が全身に押しくら饅頭される。ぷにぷにを堪能する。 「さてとスピード勝負ね、一気に攻めて攻めて攻めまくりましょうか。時間が立てば立つほど、持久力的にこちらが不利だもの」 一匹、口の中に入ってくる。噛み砕いて、赤と黒のカードを放つ。線と見紛う程に連なる高速連射で次々に、じぇり達を撃つ。次々に消滅していく。 「流石に多いな、少し掃除と行こう」 櫻霞は、射手の神の如き構えの後に即動する。エーデルワイスの赤と黒のカード達に続くように、赤と黒の銃から無数の弾丸をバラ撒く。 ばら撒いた所で、自分が放った弾が1つ、踵を返して戻ってくる。頬を掠めて通り抜けていく。 「反射か」 戻ってきた弾道から敵を見る。じゃがいもと見紛う、岩じぇりである。 力技で次々を打ち消すエーデルワイスと櫻霞の二人であるが、ここでドンとじぇりの数が増していた。 キンバレイは溢れてきたじぇりの同じ色を拾って、しゃがんで4つ並べてみた。 「うまくいけば連鎖とかも狙ってみたいなー」 ぷにょんと消滅する。どうやって並べるか。じぇり達が雪崩のようにキンバレイにのしかかる。べとべとーぷにぷにー。 未明は、どうやって並べるか、の一つの答えを用意してきた。 「落ちゲーみたく勝手に間詰めてくれればよかったんだけど!」 敵を押し込む強打により、じぇりを弾き飛ばす。なるだけ同じ色が固まっている所を狙い。 ぷにょん、ぷにょん。 「2連鎖!」 先ほど、櫻霞の弾丸をはじき返した岩じぇりが消滅する。 ただのじぇりを消滅させる際に、周囲に強めの戦闘力をもつじぇりが居た場合、どうも一緒に消滅するらしい。 「未明さんはそのまま直進してください。そこに3人ほど一般人が埋まってるようですな。それから――」 九十九が熱感知で位置を次々と伝える。 「ちゃんと気を付けて攻撃をしませんとのう。皆さんもお願いしますな?」 九十九も、櫻霞と同様に、雨のごとき弾丸でじぇり達をなぎ払う。こうして再び一発が戻ってくる。星じぇりである。 「反撃してくるじぇりは撃っておきたいですが、雑魚を幾ら蹴散らした所で、発生源を止めねば無駄になりますからな」 ここで全員の身体に浮遊感が生じる。小夜の翼の加護である。 「神社で誰も居なくてぼーっとしてる時にパズ●ラは結構やったんですが、逆にそのせいで混乱しちゃってます」 操作性が似ているやつを一寸やり込むと、誤って別のボタンを押してしまうなど、よくある話である。 此度はリアルバトルパズルゲームである。攻略の要として、岩じぇりや星じぇりといった反射をするじぇりからのダメージが、回復を上回らない様にしなければならない。 回復手である小夜。小夜は、その火力と回復のバランスの見極め、境界を、丹念に見ていた。 「超直観で連鎖を狙うのじゃ」 瑠琵がえっへんとガン見する。 (´・ω・`)と違って個々に分裂しないだけマシではある。 先ほど、キンバレイが4匹並べて消している事や、未明がすっかり押し込んで連鎖している。未明はどうも楽しんできゃっきゃうふふしている節が見られる。 「では、コイン一個で完全制覇と行こうかぇ? ――南方を司りし者よ。我が召喚に応じ、焼き払え!」 浮力を得た俯瞰から、炎が舞い降りる。 瑠琵の朱雀――圧倒的なる炎は、最初こそじぇりの反射を受けるものの、継続して被害を与え続ける性質から、この手の敵には最良と言えるのである。 火の海になったゲームセンター内。 いよいよ一般人へ注意を払わねばならない所で、あばたが店員の姿を見つける。 じぇりにもみくちゃにされながら、這いずって出ようとしている状況に手を貸して引っ張り出す。 この時間に残っている従業員は、店長だとか、〆作業に残っている従業員の類であろう。 「通報があって来た、じぇりが毒物や爆発物であったら危険なので店員と客を外へ逃がして店を閉じろ」 話中に、ぷにょんと飛び出してくるじぇりの一体を、銃床で滅多打ちにする。 逃げようとする店員の襟を掴む。掴みながら"やれ"と脅して、じぇりを撃つ。 反射反射、反射を辞さない全弾発射。 雨のように降り注ぐ弾丸の雨と火の嵐。強烈な押し込みの2連鎖3連鎖。翼の加護を得た事で得た浮力の。全体の並びが俯瞰できるようになった戦況は、圧倒的なる火力も相乗して、未練もなくじぇり達を潰し行く。 遠間合いから狙える射撃も完備した8人の作戦は、発生源がチラリと見えれば即座に手が届く。決着は時間の問題であった。 「増え続けられても困るんでね、一撃で沈んでくれると助かるな」 櫻霞が筐体を捉え、筐体に銃弾を突き刺した途端。 「ヒャッホーーーー! Fooooooo!」 「ヒャッホーーーー! ……あら?」 エーデルワイスがじぇりをぷちぷち潰しながら、絶頂ヒャッホーして、もう一つのヒャッホーが輪唱される。ここに集った8人の誰の声のでもない―― 「おんやー? やっぱり来たのかぁ。下等生物ども」 じぇり達の群れの中から、黒髪の少女が一人。頭にじぇりをのせた、何処と無く間が抜けな風貌であるが、今回の元凶が飄然を顔を出す。 じぇりの対応であれば、十二分と言えた。 問題があるとすれば一点のみである。 ●形態『精神(フォース)』 -Machinery Matter- 「面倒な頃合いに出てくる」 櫻霞が一寸少女を見る。今回は手を出さないと決している。少女への対応者が動く事を見て、即座に筐体へと視線を戻す。銃口を向ける。 「あ、どこか適当な場所で眺めていただければー」 キンバレイがじぇりをもぐもぐしながら、少女に敵意がないことをアピールする。んしょんしょと連鎖になるように組んでいく。 「これはこれはご丁寧な下等生物。ふと思ったんだが、それ食えるの?」 「イチゴ味です。最近人間辞めてるなんて気のせいですよ? はもはも」 「そうか~イチゴ味なのか」 少女もキンバレイの真似をして、頭の上のじぇりを喰う。 最前衛にいたエーデルワイスは、横から抜けた櫻霞の弾道より、じぇりの群れの僅かな隙間から筐体を捕捉する。 「筐体が見えた! まずは最優先でぶっ壊すわよ!」 例の少女には一寸興味があるが、一旦は潰す。絞首の鎖を投げて、筐体の固める。げろげろと吐き出す筐体の画面を締める事で、じぇり詰まりを引き起こし。 「ほほーなるほどなー。下等生物にしては中々どうして、知恵がまわる」 頷く少女に対して、瑠琵が星儀をじぇりへと解き放ちながら問う。 「お主が元凶らしいがこんなもの増やすのが目的かぇ?」 「私等の仲間が君等に敗北したらしい。どうして下等生物に後れを取ったかを見極めたいのだ」 考えながらぽつぽつと悠長に構える少女への。あばたが考えていた断片的な情報が確信に変わる。 「成程。事に寄っては、アポがあれば次は『遊んであげられる』かもしれませんので」 リロード。次弾装填高速で行い。筐体へと向ける。 「(畜生めやっぱりか! キャパ足りない!)」 確信した事で、連戦は避けたい。 未明がじぇりの一体を改めて押しこむ。 キンバレイが積み上げた連鎖に対して、最後のトリガーと言える決定的な箇所へと。 「貴女、ボトム以外から来たの?」 未明はあと一息を確信し、一寸手を止める。 少女は続ける。 「君等風にいうならばな。その世界は全てが私達である。個にして全。私はその一端といえば良いか」 一目にして判別できた事がある。――フェイトは無い。 「過去似た案件で出たEフォースに似てる気がする。本当にただのアザーバイドなのかしら?」 「不運な事に、私が"依代"にした奴はどうにも知識が偏っていてね。どうも死にかけだったのは君等の仕業かな? そいつは元々『こうして情報を得ていた』から真似をした。言語を得られたのは幸運だったが」 一様確信した所で、もう一人。 後方から攻撃――久々のセイクリッドアローであったが――と回復の二択を思索していた小夜が一言。 「あ、そういえばゲーム興味あるんですか? どんなゲームがお好きでしょう」 「しゅーてぃんぐかなー。やったことはないが何となく」 やった事は無いが、シューティングが好きという。 「偵察が目的かえ? 見逃してやるから名ぐらい名乗れ。暗澹たる闇の主よ」 「んんー。私等を知っているのか。ならば成程。これは面白い。ビーストを負かしたのも君等か」 これは蛇足だったかもしれないと、一寸考える。 「まあいいや。帰る。そうだな――『フォース・ヴァプマ』とでも名乗っておくよ。じゃ」 飄然と去りゆく少女――フォース・ヴァプマはすたこらさっさと駆け足でゲームセンターから出て行く。 「もう帰るの!? ちょっと話したかったのに」 エーデルワイスは仕方がないとSee you again。さり気なくフラグを立てて置く。 「今度はもっとでっかいゲームで遊びましょうね。MMORPGとかなんてどうかしらー?」 少女は応じる様に手をヒラヒラさせて去る。去った所で、戦いは最終段階に入った。 攻撃能力を持ったじぇりは、エーデルワイスの鎖で生じないものの、ただのじぇりがひたすら邪魔なのである。邪魔ではあったが―― 「おっ終い!」 キンバレイがひょいっとじぇりをぶん投げる。2連鎖、3連鎖、4連鎖、5連鎖....15連鎖! 「もう一回!」 未明が押しこむ、16連鎖、17連鎖、18連鎖。 重なる連鎖に次ぐ連鎖が、大きく前方を開かせる。 「やれやれ、やはりヴァプマか」 瑠琵が嘆息する。 星を卜い、筐体へと呪殺を重ねる。 「実は私、パズルゲームは苦手でしてな。行き詰る度に、この邪魔なブロックを力技で消せないものかと思っていたものです」 がちゃりと銃を携えた九十九が、のんびりと、しかし鋭く狙いを定める。 真正面、射線大いに良好。渾身の針穴通しで筐体をぶちぬく。黒もうもうとした煙がそのひび割れから一気に吹き出す。 「丸見えだ。弾丸よ――」 翼の加護を制御して、櫻霞が跳躍する。 「抉れ」 黒もうもうとした煙を俯瞰から見て、決定的な角度。決定的に、ひび割れに対して寸分違わず、撃ちぬく。 : : : 「もうちょっと食べておきたかった」 キンバレイの口中と胃から、じぇりが消える。途端に空腹を覚えるのである。 「今回の仕事はとてもスッキリした気分になれましたな」 九十九はスッキリした面持ちで語る。 力技で消せるところに中々と面白みがあった。 「問題は、うーむ。倒しきれて居なかったと言う事ですかな」 櫻霞がタバコを一服して、得物をアクセスファンタズムに納める。 「仕事はこれで完了か……だが、短期間で次が無いことを願いたいね」 懸念はやはり共通して、フォース・ヴァプマと名乗った少女である。 「バグホールは無いみたいですね」 一端、周囲を調べた未明であったが、それらしきものはない。どこか別の場所で現れたと推測された。 「真白室長が面白がってくれそうな案件ですし、抱き込めたらいいなあ」 あばたの言である。 万象を侵食するアザーバイド。ヴァプマ、賢者の石に興味をもった室長に報告を出しておこうと考える。 「いずれにせよ、また現れるじゃろ」 瑠琵も銃から空薬莢を抜きながら呟く。 フェイトが無いならば、敵対は必然である。 「後は職員に任せて撤収しましょう」 街中である。留まっていればいよいよ騒ぎになると、小夜の言葉で現場から離れる一同であるが。 「あ、何のMMOにするか言うの忘れてた!」 エーデルワイスがしれっとフラグをもう一度立てて、今宵の邂逅は終焉する。 見上げた所に浮かんだ月の眩しさは、やはり人工的な光で細っている。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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