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鱗粉撒いて、戯れて


「紅茶は何に、致しましょう?」
「ボトムのアッザムが素敵だったわ」
「毎日同じ茶葉じゃない」
「でもでも、私はアッザム好きなのよ」
「なら、今日はハーブティーはどう?」
「ボトムのハーブティーは素敵だったわ」
「昨日と違う茶葉は不安」
「でもでも、私はハーブティーも好きなのよ」
「あらあら、ダージリンがいいのかしら?」
「それも昨日と違うじゃない」
「でもでも、私はダージリンも好きなのよ」
「なら全部に混ぜちゃいましょう」
「「「「そうしましょう」」」」

 今日も平和な一日が来ると思っていた。けれど今日は平和じゃない一日。
 突如、大きな牙に鋭い爪が『彼等』のお茶会をぶち壊したのだ。叫び声をあげて逃げ惑う彼等は小さき者。漂う紅茶の香りに釣られたか、招かれざる客は大きな顎で吼えたのだった――。

「ああっ、人間から頂いた大切なティーカップが!」
「どうしましょう」
「でもあんなのに勝てっこ無いわ」
「どうしましょう」
「「「「どうしましょう!」」」」


「皆さん、こんにちは。今日も依頼を宜しくお願いしますね」
 『未来日記』牧野 杏理(nBNE000211)は集まったリベリスタ達にそう切り出した。
「とある山奥に妖精が住んでいるみたいです。彼等はフェイトを得ていない……申し訳無いように思えるのですが、元の世界に還って頂きたいのです。それか、さ、最悪、討伐……とか、いやいや、そんな酷い事……っ」
 おとぎ話でもよく居る妖精。我等リベリスタにはフィアキィという存在が近いものだろう。彼等はきちんと言葉が通じ、温厚な性格でお茶会好きだという。
「彼等に帰ってもらうだけなら、そんなに苦労はしないとは思うのですが……どうやら彼等のお茶会中にEビーストが介入するみたいなのです。その討伐もお願いします」
 やる事は多そうだ。エリューションの討伐に、アザーバイドの送還。しかしこれもリベリスタの大事なお仕事。
 妖精たちは自力でDホールを開ける事もできるのだが、どうやら大切なものがあるようで帰ろうにも帰れない状況なようだ。
「場所は、妖精が作った神秘的空間の中です。陣地みたいな……それでいて、E能力者なら誰でも入れるし出れる程度の脆いものです。そのおかげで一般人の介入はけしてありません」
 中はまるで春。花は咲き、丁度良い気温に、優しい風が吹いている。そんな場所。
「良かったらクッキーでも持って行ってくださいね。きっと妖精も喜ぶと思います。それでは宜しくお願いしますね」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:夕影  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年10月01日(火)23:10
 夕影です 以下詳細

●成功条件:アザーバイドの対処と、Eビーストの討伐

●Eビースト:黒狗×2
・フェーズ2
・全長3mにまで肥大化した黒い犬です。ブロックには2人必要です
・リジェネレート小、精神無効、呪い無効

 攻撃方法は以下
・噛みつく(物近単ダメージ大BS流血ショック必殺)
・切り裂く(物遠貫BS流血失血)
・振り払う(物近範ノックB)
・吼える(神遠全BS圧倒ダメ0)
・火を吐く(神近範BS業火致命)

●アザーバイド:妖精×20
・手の平サイズの羽のある小人
 見た目はほぼフィアキィと同じですが、羽は鳥の羽や悪魔の羽まで様々です
 色で属性があり、赤が炎、青が水、黄色が土、白が光、黒が闇、などなど
 性格は様々ですが、共通して温厚です
 タワーオブバベル不要です

・戦闘面ではあまり役に立ちません。20人揃って、やっとレベル25相当の攻撃ができます。回復スキルができます
・Dホールは自分で開いて、自分で閉じる事ができるようです

●場所:とある山奥にある神秘的空間
・E能力者や革醒したものだけがその場所を感知し、入る事ができます。したがって一般人対策は不要です
・中は植物園のようになっており、まるで春のように花が沢山咲いています
・時刻はお昼です

●事前自付は不可とします。OPの直後にリベリスタが介入します

それでは宜しくお願いします
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
東雲 未明(BNE000340)
覇界闘士
雑賀 真澄(BNE003818)
クロスイージス
浅雛・淑子(BNE004204)
ナイトクリーク
浅葱 琥珀(BNE004276)
レイザータクト
アンドレイ・ポポフキン(BNE004296)
ミステラン
シンシア・ノルン(BNE004349)
覇界闘士
コヨーテ・バッドフェロー(BNE004561)
デュランダル
篠塚 華乃(BNE004643)


 一歩でも二歩でも、歩けば歩くほど土が足の形に抉れ、同時に草花が無様になっていく。折角綺麗にしてあった妖精の庭園は、もはや見るにも絶えない荒れ地へと変わりつつあったと言えるだろう。
 小さな赤色の妖精が、現実を見たくないと瞳を閉じてくるりと百八十度回転し、そのまま前方へ逃げる様に飛んだ。

 ぽすっ
「きゃっ!」

 しかし赤色の妖精は逃げる事ができず、何か柔らかいものにぶつかったのであった。小さな叫び声を開けて、恐る恐る目を開いてみれば―――
「おッ! 大丈夫かッ、ぶつかっちまってごめんなッ!」
 『きょうけん』コヨーテ・バッドフェロー(BNE004561)の大きな顔があったのだ。ピンク色に染まった瞳に、ギラリと光った歯を見た赤い妖精はまた小さく叫び声を上げた。またまた庭園を荒らす者でも増えたのか、そう妖精が泣きそうになった所で。
「勝手にお邪魔してごめんなさいね、ちょっとあの犬に用事があって」
 『薄明』東雲 未明(BNE000340)の澄んだ声が響いた。未明とコヨーテはそのまま暴れている犬の下へと歩いていく。得物こそ持ち、獲物を駆逐せし者達。
「ふぇ……?」
 きょとんとした瞳で、赤い妖精は二人の後ろ姿を見ている事しかできなかったが、その二人に続く五つの影が、また、赤い妖精を通り越していく。
「わあ、本当に庭園だ! でもちょっと……これは酷過ぎるね」
 『樹海の異邦人』シンシア・ノルン(BNE004349)は周囲を見回しながら、率直な感想を述べた。庭園はもはや手遅れであろうが、されど妖精たちはまだ命がある。せめてそれだけで救うべく。
「皆、離れろぉ!」
 『刹那の刻』浅葱 琥珀(BNE004276)は大声で言ったのであった。弱気に、絶望が彩った妖精たちの心は瞬時に違う感情を弾きだす、まずは自分を守らねばという事もあるのだがそれ以上に此の人たちならなんとかしてくれると言う希望。ただ、その希望はある意味『人任せ』なものでもあるのだが。
「ああ、君君。そうそう、君だよ」
 『戦ぎ莨』雑賀 真澄(BNE003818)は先程の赤い妖精を手招きした。なんだろうか、取って食われるんじゃないかまで考えた赤い妖精だったが身体を真澄へと向け話を聞いてくれる形を取った。
「今から言う事をやってほしいのさね。一番は死ぬんじゃないよって事だけどさ」
 彼女が妖精に分け与えるのは、知恵と支援。
「あんた達は私達が守るから安心しな。怖がらず、皆で帰ることだけを考えておくんだよ」
 『blanche』浅雛・淑子(BNE004204)は後方より、祈り手を作った。其処にキスを落として、願うのは。
(お父様、お母様。どうかわたし達と、妖精さんたちのお茶会を守って)
 齢十五にはまだまだ恐れるものは多いだろう、牙も刃もそれに属するというもの。だが淑子は敢えて笑った。恐怖を隠すための仮面を被ったというのもあるのだろうが、傍に居た黄色の妖精を驚かせないために。
「ごきげんよう、妖精さんたち。危険だから、どうか離れていて頂戴ね」


 この時点で、というよりも琥珀が大声を上げた時点で黒狗はリベリスタ達の存在に気付いている。大きな爪を光らせながら、迸るのは殺すという意思そのもの。
 一体はリベリスタへと戦意と敵意と食欲を向けたが、もう一体は目の前の青い妖精へとそれらを向けていた。
 ぷるぷる、震える青い妖精はどうやら恐怖心に支配されてしまっては飛ぶことも忘れて地面に落ちていた。持ち上がらない腰と足にべったりと泥を着けて、そして黒狗の顎が彼女へ急接近していく。他の妖精が目を多い、妖精の誰もがもう駄目だと叫び声を上げた時。
「こらー! 妖精さんをいじめちゃだめ!!」
 『チャージ』篠塚 華乃(BNE004643)の後ろより、何かが飛んだ―――そして。

「オ ス ワ リ」

 金属の、それでいて長細いものが黒狗の脳天を捕え、そのまま黒狗の頭は綺麗な縦線を描くように地面に叩きつけられた。『攻勢ジェネラル』アンドレイ・ポポフキン(BNE004296)が大きすぎる狗の頭の上に足を置き、その下で伸びている黒狗の顎は幾らか砕けていた。
 あまりの衝撃に青い妖精はころんころんと吹き飛ばされながら、華乃が彼女の身体を両手で受け止めた。青い妖精は、触ればなんだか涼しげな温度。
「怪我は無い? 大丈夫?」
「はいっ、死ぬかと思いました……っ!」
 ふわりと浮きあがった妖精は綺麗に弧を描きつつ飛び進み、アンドレイの頬を触った。
「あの、ありがとうございました」
「ハイ。我々ハ味方でゴザイマス。成る可く後ろへ、可能ナレバ我々に支援ヲ!」
「承りました! でも私達、あんまり強くないの」
「ご安心を。必ず護りマス」
 だが敵が空気を読むのは此処までだ!
「わー!? アンドレイさん、足ー! 足ー!!」
 華乃の声にふと気づく。瞬時、パチリと目を覚ましたアンドレイの足下は、勢いよく起き上ってはアンドレイを振り落したのだ。
 躾けのなっていない畜生め――そう心の中で呟いた彼。吹き飛ばされる直前、咄嗟に片手で抱きとめた青い妖精がアンドレイの手の中から眩しい光を放っていた。

 ――光は集まる。

 眩しい光は琥珀の力から放たれたものだった。妖精たちに危害か行かぬよう、黒狗の行動全てを止めるための光。目を閉じ、それでいて前が見えぬと顔を振る黒狗を視界から外さず、手についた泥を叩き落とした琥珀。そこに追撃するのは世界樹の恵みである弓を引くシンシア。
「いっちょあがり! このまま大人しくしてくれよな!」
「琥珀さん、胸の膨らみは……それはなんですか」
「え? からあげ」
「ええ……まあ、とても美味しそうだよね」
 おそらく臭いで黒狗を琥珀自信が引き付けようとした産物だろう。よりジューシーになったからあげをおもむろに取り出した彼は、一個だけパクっと食べてみる。
「ウメーッ」
「琥珀さん、後ろ後ろ」
 予想より遥かに早く起き上った黒狗。その歯と歯の間から漏れているのは獲物を探す涎でもあったが、真っ赤に燃える炎もあり。吐き出されたそれは、周囲を赤色に染め上げていく。
 炎の陣から飛び出した琥珀は黙示録を持ち……されど手には精神力で練り上げた気糸を絡みつかせていた。
「この前会ったんだけどさ、火の鳥のアザーバイドよりかは涼しい炎だな!!」
 絡め取って、絡め取って、足、首、胴に糸は絡まっていく。仕上げに燃えている指に絡みついた気糸をクイっと引っ張れば黒狗は完全に動きを止める事を強制されたのであった。
「琥珀さん、炎で聞こえなかったけど何か言ってた?」
「いや、ただの独り言っす……」
 そして再びシンシアの矢は直線を描いて飛んでいき、それは黒狗の瞳のひとつを潰すのだ。


 横一閃、振り回された尻尾に未明と淑子が吹き飛ばされた――代わりに黒狗の近接の間合いに入って来たのは真澄の弾丸であった。
「犬の躾は嫌いじゃないんだ、さあおいで。その口に弾を優しく捩じ込んだげるよ」
 乱れ撃つ――金属の雨は黒狗の身体の至る場所に穴を空けていく。黒狗が真澄を視界に止めた瞬間に、彼女は手の平を上にする形でこっちに来いとジェスチャーを送ったのであった。
 ならば望み通りに。ブロックの無い黒狗は走り出した。軽く擦れば肉を抉る程度のその爪を輝かせ。
「行かせないわよ」
「やらせないわよ」
 早々に戦線復帰した未明、淑子。未明は正面から黒狗を抱きしめる形で止め、淑子は黒狗の長すぎる尻尾を引っ張って真澄への接近を止めたのであった。
 前へ行こうとする力を抑える未明の足が、地面を足の裏の形で抉っていく。その力が弱まった瞬間、未明は鶏鳴を取り出しその刃を黒狗の首へと差し込んでは、抜いた。返り血が顔を染めたとしても、攻撃は止めない。
 後方から淑子の大戦斧が光を帯びて淡い光を放っていた。左手で黒狗の尻尾を引き、右手には背丈には似合わない刃を持つ。
「あなたに恨みは無いけれど……でも、大暴れは良くないわ」
 更に輝きを増した斧を片手で振りかぶった淑子。そのままそれを引っ張っている尻尾の付け根へと落としていけば、あとは斧が尻尾を切断してくれるだろう。
「琥珀、頼んだよ」
「あいあいさー」
 仕上げに琥珀の光は再び放たれた。黒狗二体の距離が開いていたのもあり、二体同時に麻痺にさせる事は不可能であれど。だが一体を止めるだけでも十分の威力。
 ――攻撃は続く。
「でっけェイヌッ! しかも黒いのかッ。かっけェなッ!」
 まるで自分が憧れる姿か。コヨーテは一体の黒狗を抑えながら、未明たちが攻撃する黒狗を見据える。足に力を入れ、そして振り回したのは腰から下。其処から繰り出されていくのは風の刃――胴に縦傷を入れられた黒狗が咆哮をあげた。
「へへッ、イヌっころ、覚悟はイイか? 暴れるコトしか知らねェ者同士、手加減ナシでいこうぜッ!」
 当てた事、攻撃がきっちりと決まった事にニカっと笑ったコヨーテ。しかし、後ろから「コヨーテ殿、危ないデスヨー」というアンドレイの声が聞こえていたか聞こえていなかったかは定かでは無いが。
「生意気なワン公にしっかり教えてやんねェとな…アークのイヌの強―――」
 がぶ。抑えていた黒狗の顎が、頭は完全にコヨーテの胸辺りまで噛みついた。
「なんだッ! 前が見なくなったぜッ!」
 とコヨーテが言っているかは定かでは無いが、モグモグされているコヨーテの手が行き場を失くして彷徨っていた。その光景を見ながら慌てていた華乃と、冷静なアンドレイ。
「ひー!! コヨーテさんの上半身が食われてるよー!!!」
「メタルフレームは美味しいのでゴザイマスカネ?」
「そういう問題では無いと思えるんだけど、ビーストハーフの方が美味しいかもしれないって、こんな話してる場合じゃないかな!?」
 ほぼ同時に動いた華乃とアンドレイ。
「あっちは楽しそうさね」
「死線すれすれの戦場なんだけどね」
「まあ、いいではないですか」
 真澄に、未明、淑子がアイコンタクトで短い会議を行った所で。

 ――光は溢れた。

「今度は何かしら。ねえ、そこの貴女? 所でそんな近くに居たら危ないわよ」
 未明が肩の近くで飛んでいた真っ白の妖精は言う。
「「「「届けましょう、歌を。癒しの旋律を!!」」」」
 妖精二十人全員が、各々が司る色に輝いていた。それは聖神の伊吹にも相当する程度の癒しをリベリスタ達へ与えてくれる。
「コヨーテさんを吐けー!!」
「そろそろ茶番もオワリデス」
 華乃は魔力槍を振りかぶり、それを刺すでは無く黒狗の背中目掛けて叩き落――――そうとした所で気づく。『妖精が大事にしているティーカップ』がその瞳に映ったのだ。咄嗟に槍を投げ出して、彼女はテーィカップに覆い被さる形でそれを護る体勢に移った。というのもすぐ近くには黒狗の足があり、もはやいつ潰されてもおかしくは無い状況。
「これだけは壊させないよ!!」
 跳躍せしアンドレイが断頭将軍を振り回しながら、空を舞う。護る約束もあれど、しかし敵を潰す容赦無き心を持ち。
「ураааа!」
 回転の力をつけた得物にて黒狗の背中がぱくりと開く。叫び声に、そして力の薄まった上半身を投げ捨て、涎だらけのコヨーテが身体を震わせて拭いながら言う。
「なんかこいつッ! 歯が折れてたなァッ!! だからか、あんまり痛くなかったゼッ!」
「ああ、それならさっきアンドレイさんが踵落としで顎破壊してましたよ」
「俺も負けてらんねェなッ!!」
 ――戦争は、間もなく終わるのだろう。お返し――と言わんばかりにコヨーテは痛みに暴れる黒狗へ炎の拳を迸らせる。噛みつかれたなら噛みつき返してやろう――ただし、その前にこの紅蓮の炎を貰っておけ。
「手加減無しッて、言ったからなッッ!!」
 コヨーテは自慢の歯を見せて笑っていた。ビキビキと音を立て、力が入っていく腕を振りかぶり。
「じゃあなッ!」
 それを撃ち落とせば、黒狗の身体は倒れていく――その倒れる着地点には華乃がティーカップを護っていた。『妖精のティーカップは壊させない』その事を思い出した真澄が飛び込んで来ては長い脚を振り回して黒狗の死体を跳ね除けたのであった。
「やれやれ、大丈夫かい?」
「ティーカップは大丈夫です!」
「いや、私が気にしたのはあんただよ華乃」
 刹那、黒い毛並はコヨーテの炎で燃え上がっては、灰になって消えたのであった。さ、もう残りは一匹。
「ソノ首が飛ぶ迄シコタマ『教えて』アゲマス故。小生はスパルタですがサイゴまで付き合いマスヨ。オスワリ。フセ」
 一体が倒された事に、若干後ずさりした黒狗に敗北という文字はお似合いであった。


「カップ、とても大事にしているのね」
 未明は、ティーカップに入った紅茶をかき混ぜながら言った。
「はい!」
「かなり前に」
「偶然この空間に」
「足を入れた人間に」
「頂いたのです」
「お菓子や紅茶を」
「教えてくれた」
「素敵な人でした!」
 紅茶の香りを楽しみながら、未明は口元へカップを持っていく―――今はもう、エリューションはいない。ただし、庭園は少々荒れ放題であるが気にする程でもない。
「護ってくれて」
「ありがとうございました!」
「人間って」
「やっぱり素敵!」
 リレーで喋る妖精たちに小さく笑いながら、真澄は琥珀が持ってきたクッキーを口に運びながら言った。
「そう。そう思ってくれるなら嬉しいさね」
「なるほどなぁ、そんな大切なものなら放って帰れないもんな」
 琥珀が納得したように頷いた。人間から頂いたというカップをまじまじと見ながら、琥珀の肩に燈色の妖精が「そうなんです」と呟く。
「トイウ訳でクッキー焼いてキマシタ。シンプルでトッテオキにカッタイ奴デス」
 アンドレイも自信作のクッキーを広げながら言う。とある人間にお菓子と紅茶を教えて貰ったならば、まだ他に教えてあげる事は沢山あって。とりあえず。
「シッカリ噛んで顎の力を鍛えマセウ、最低でも二十回は噛みマショウネ!」
「「「「「理解したわ!」」」」」
「顎が健康的な妖精になってしまうわね」
 そんな会話に淑子はくすくすと笑った。だがすぐに顔を真面目なものに戻し、言わなければいけないものを言うのだ。
 まずはこの世界の事。異世界の事。そして――この世界の事情。
「あなた方がいらっしゃるのは、此方の世界にとってあまり良くない事なの。どうか、ご理解頂けないかしら。疎んじているわけではないの。憧れの存在だもの」 
 淑子が小さい時、よく目にしていたお話にはいつも妖精が出てきていた。それが目の前で、それも一緒にお茶会をしてくれているのは素晴らしい事であったが。些か辛い別れに心が痛むけれど――でも。
「「「「「理解したわ」」」」」
 妖精も残念そうに、けれど大好きなボトムのためならと快く応じてくれた。
「ありがとう。良かったらお土産、沢山あるから持って行ってね」
 淑子がもってきた手作りの栗のダコワーズを始め、多くのお菓子を持ってきているリベリスタ達。お土産にしては十分過ぎるものだろう。
「はー、こんなに美味い紅茶初めてなのになぁ」
 嘆く琥珀。けれどすぐに笑顔を取り戻しては言う。
「また会えるといいな!」

 荒れ果てたけれど、紅茶の香る素敵な庭園。妖精に囲まれたお茶会は、まだあと少し続くのだろう。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
依頼お疲れ様でした
結果は上記の通りになりましたが、如何でしょうか
こんなお話大好きです、また会える日を夢見て――
それでは、また何処かでお会いしましょう!