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鬼蜘蛛ノ天誅、黒船ノ来航

●黒船の襲来
「黒船だ、黒船がやってきた、みんな逃げろっ!!」
 小さな漁村の住民が突然混乱の渦に巻き込まれて逃げ惑う。湊の向こうには見たこともない黒船がやってきていた。砲弾の雨を降らせ辺りを焼き尽くしていく。
 兵庫の摂津にある小さな港にフィクサード『鬼蜘蛛一派』の船が現れた。彼らは自称幕末の尊王攘夷派に所属する維新志士の末裔だった。
「この軍艦羅刹の大砲をお見舞いしてやれ。ここから京都はすぐ近い。混乱に巻き込んでふたたび戦乱の世の中にしてやる。むろん勝利するのは俺達、鬼蜘蛛だ」
 鬼蜘蛛一派の頭領である鬼蜘蛛江壬志が吠えた。彼は包帯で全身を覆った異様な風体をした大男だった。甲板の先端に立って部下に命令して大砲を撃たせる。
 湊に停留していた漁船は次々に沈没した。あまりの圧倒的な火力を前に人々は幕末の黒船の最来だといってパニックに陥っている。
 江壬志は霊刀の菊一文字を振りかぶって高らかに嘲笑した。総資産の三分の二を費やして大型漁船を改造して密かに建造した小型駆逐艦だった。
 拠点とする瀬戸内海の小島に隠していたが、このほど改造によって新しい艦が完成した祝いに出撃することになった。江壬志の目標は京都の制圧だったが、まずは京都に近いこの小さな港を新しい基地にするために総攻撃をしかけたのである。
「それじゃあ、江壬志さん僕はみんなと一緒に先に大暴れしておきますね」
 長曽根虎次郎がほほ笑んで江壬志に頷く。飄々としたまだあどけない表情をした優男の青年だった。だが、江壬志の片腕を担う凄腕の剣客である虎次郎はこれまで散々リベリスタやフィクサードを暗殺してきた過去を持っている。江壬志の信頼は厚かった。
「ああ、存分に暴れてこい。慈苑も一緒に付いていってやれ。俺はこの羅刹から高みの見物としゃれこもうじゃないか。せいぜい失望させるなよ」
「すでにあの時襲ったリベリスタの小娘がいるようだ。もしかしたら応援に他の連中もやってくるかもしれない。そうなると油断は禁物だぞ」
 江壬志の言葉に破戒僧の慈苑がぶっきらぼうに応える。手に持ったAFによって先に暴れている部下たちの情報を伝授していた。すでに地元のリベリスタ数名が応援に駆けつけているとのことだった。これまでの経緯を考えて慈苑は江壬志に忠告する。
「なあに、心配いらねえぜ。今回は羅刹が付いている。これまでとはわけが違う。いざとりゃ一発後ろから撃ちこんでやる。俺達の方が強いという格の違いを今度こそ見せつけてやるぜ」

●鬼蜘蛛の天誅
「兵庫の摂津にある小さな漁村にフィクサードの『鬼蜘蛛一派』の船が現れて人々を混乱に陥れているわ。奴らは大砲を撃ち込んで漁村を破壊し、人々を虐殺して漁村を自分たちの物にしようとしている。はやく彼らの横暴を止めてきてほしい」
 『Bell Liberty』伊藤蘭子(nBNE000271)がブリーフィングルームに写し出された情報を指しながらリベリスタ達に説明を加えていく。分厚い資料を元にしてこれまでの関連事件や鬼蜘蛛たちの戦力などを交えて丁寧に解説した。
 鬼蜘蛛たちは瀬戸内海のある小島を根拠地にしているようだった。これから目標となる京都の制圧の一歩として兵庫の小さな漁村の制圧に力を入れてきた。
 元は漁船である『羅刹』はアーティファクトの黒い鉄の装甲で覆われて防御力を増強させていた。さらに大砲を備え付けて機関銃も三門取り付けた攻撃力を備えている。
 湊にすでに侵入してきて中には江壬志が乗っている。羅刹を攻撃しようと近づいて来る者に対しては自らが迎撃して守る気でいた。
「すでに湊では先陣を切って上陸した鬼蜘蛛一派の部下たちが火を持って漁村を焼け野原にしようと企んでいるわ。事態は一刻も争う。現場には京都から駆けつけた地元リベリスタの賀茂璃梨子も奮闘している。くれぐれも貴方たちの健闘を祈ってるわ」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:凸一  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 2人 ■シナリオ終了日時
 2013年09月26日(木)22:26
こんにちは、凸一です。

鬼蜘蛛たちも奥の手を出してきました。
前回までとは違って意気込みも高く士気も上がっています。
ですが、ここで叩いておけば一気に優勢に立てるでしょう。

それでは、以下は詳細です。
よろしくお願いします。


●任務達成条件
フィクサード『鬼蜘蛛一派』の撤退
一般人の避難と漁村の防衛


●場所
兵庫の摂津にある小さな漁村。入江は凹型で深く大きな船も近くまで侵入できる。羅刹は海岸から50メートルのところに停留して砲撃を加えてきている。入江の前には漁村の民家が列になって立ち並んでおり、30人ほどが付近で逃げ惑っている状況。なお、湾内には手漕ぎの2人用ボートが2隻無傷で残っているためいざとなったときは使用可能。


●敵詳細/フィクサード「鬼蜘蛛一派」
幹部
・鬼蜘蛛江壬志(34)/ジーニアス×デュランダル/ハイリーディング&マスターテレパス/バトラーズOD&ジャガーノート/相手の思考を読んで心に話しかけて混乱させたりする戦法を取る。霊刀『菊一文字』を所持し、刀が高熱で常に燃え盛っており切れ味は鋭く斬った相手を炎に包ませる。
・長曽根虎次郎(15)/ジーニアス×ソードミラージュ/物質透過/瞬撃殺&グラスフォッグ/変幻自在に動き回ってハイスピードで相手の背後をつく攻撃スタイル。目にもとまらぬ速さで一瞬にして迫るため先読みはほぼ不可能な攻撃をしかける。
・蓬莱山慈苑(28)/ジーニアス×覇界闘士/ハイバランサー/土砕拳&鬼業紅蓮/真っ直ぐに突っ込んで力任せに敵を殴り倒す。特製の金属の手袋を撒いた拳で破壊力を増強させており、地面を叩くことで遠距離からの衝撃波の範囲攻撃を伴う。

・その他地上の雑兵×3/ホーリーメイガス(聖神の息吹)レイザータクト(フラッシュバン)、スターサジタリー(ハニーコムガトリング)

・小型駆逐艦「羅刹」
大型漁船を改造してアーティファクトの黒い鉄の装甲で防御力を固めている。神秘攻撃を反射させて威力を半減させることができる。攻撃は大砲一門に機関銃が三門。小回りが利いて自在に湾の中を動いて廻る。またモータボートを三隻備えている。甲板は広くて十分に戦闘を行えるスペースがある。


●味方戦力
賀茂璃梨子(21)ジーニアス×インヤンマスター/初期スキルまで使用。すでに雑兵たちをまとめて相手しておりすでに疲労は極限に達している状況。責任感は強くアークのリベリスタを信頼しており指示には忠実に従う。


●その他補足
江壬志は「羅刹」の甲板で待機し、湊では雑兵とともに虎次郎と慈苑が漁村の民家に火を放とうとしている状況。逃げ惑う一般人は容赦なく攻撃対象にする。璃梨子はひとりで雑兵と対峙して回りを雑兵に囲まれて危機に陥っている。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトクリーク
星川・天乃(BNE000016)
スターサジタリー
不動峰 杏樹(BNE000062)
デュランダル
雪白 桐(BNE000185)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
プロアデプト
如月・達哉(BNE001662)
クリミナルスタア
藤倉 隆明(BNE003933)
レイザータクト
文珠四郎 寿々貴(BNE003936)
ナイトクリーク
三藤 雪枝(BNE004083)
■サポート参加者 2人■
ホーリーメイガス
リサリサ・J・丸田(BNE002558)
ホーリーメイガス
テテロ ミミミルノ(BNE004222)

●荒れ狂う波とともに
 風が強く吹き付けている。荒れ狂う波の向こうに大きな黒船が現れる。
 猛烈な弾幕を陸に浴びせながら接近してきた。
 鬼蜘蛛一派が次々に人々に襲いかかる。松明を持って民家に火を放とうと暴れながら徐々に追い詰めて行く。そこへナイフを片手にした『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)と『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062)がシスター服を靡かせながら突っ込んで行く。弾丸の雨を交しながら後に続く仲間の先陣を切る。
「まさか軍艦まで持ち出すとはな。鬼蜘蛛江壬志という男、これ以上捨て置けば何をしでかすかわからない」
 快は敵にアッパーユアハートを放つ。
 一般人を襲う手下が怒りを食らって一斉にリベリスタの方を振り向いた。
すかさず杏樹が一般人に声をかける。
「そっちは危険だ。巻き添えになりたくないなら向こうへ」
 敵がいない方向に杏樹は一般人の誘導を始めた。その間に傷ついた賀茂璃梨子を助けようと『History of a New HAREM』雪白 桐(BNE000185)が刀を振りまわしながら敵味方入り乱れる戦場へ割って入る。
「貴方たちは――?」
「アークです、味方が陣地構築します」
 桐は敵に聞こえないように囁きながら撤退を促す。一言で事情を察した璃梨子は桐に庇われながら素早く後方へと退いた。
「――避難誘導お願いします!」
 璃梨子は目で頷いて杏樹とともに一般人の対処にあたる。その隙に『息抜きの合間に人生を』文珠四郎 寿々貴(BNE003936)が海岸に大胆にも出て行く。
「さぁーて、この距離・この配置。わかるね? 包帯のおっちゃん、実は期待してんだろ?」
 寿々貴は沖合の羅刹に搭乗する鬼蜘蛛江壬志に叫んだ。包帯に全身を撒かれた異様な姿の男が刀を振り上げて応答する。口元に不敵な笑みを浮かべている。
 すぐさま寿々貴は陣地の詠唱を唱える。むろん寿々貴の意図が分かった江壬志は部下に命令して寿々貴に照準を合わせて機関銃を撃たせた。
「砲撃を掻い潜り、接近する……か。親衛隊戦、を思い出すね。でも、あの時ほど状況は悪く、ない。さあ、楽しい楽しい戦い、を始めよう」
 寿々貴を狙わせないように『無軌道の戦姫(ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)が水上歩行を使用して羅刹目がけて突き進む。天乃の姿を認めた砲撃手はすかさず目標を切り替えて天乃に集中砲火を浴びせた。
「……救援に来たメンツの一部がおかしいんだが……。バロックナイツとか7派の幹部クラスでも殴りに行くのかと思うぐらい過剰戦力な気がしてならん……。いや、敵も因果応報だから同情はしないけどさ」
 『ジェネシスノート』如月・達哉(BNE001662)は思わず呟いた。快や杏樹、それに天乃たちの奮闘ぶりに達哉も身震いする。だが、自分もこうして傍観している場合ではなかった。すでに砲弾を浴びて仲間が傷つきつつある。
 『青い目のヤマトナデシコ』リサリサ・J・丸田(BNE002558)は『さぽーたーみならい』テテロ ミミミルノ(BNE004222)を後ろで守る。ミミミルノは達哉と協力して回復を適宜施しながら戦場を駆け巡った。分担して仲間に翼の加護を施して後ろから強力なサポートを援護する。すでに銃弾が飛び交う戦場に敵味方が入れ激しい戦闘が繰り広げられる。

●遂げる本懐
 芳来山慈苑と長曽根虎次郎が現れるとすぐに『悪童』藤倉 隆明(BNE003933)と桐が敵に真っ直ぐに突っ込んで行った。
「会うのは二度目だなぁええ? ぶん投げられたのは痛かったぜぇ?」
 隆明が威嚇すると慈苑は僧衣を脱ぎ棄てた。巨大な身体に筋肉が隆々と浮き上がる。倍ほどもある巨漢の男に隆明は拳を突きつける。
「貴様か――こりもしない奴だ。そんなに死に急ぎたいのなら仕方あるまい。この芳来山慈苑が仏に代わって救世の本懐を見せつけてやる」
「まぁよ、テメェが何を思いソコに居るのかは知ったこっちゃねぇんだよ。俺もテメェも武器は拳! 存分に殴り合おうぜ、それが一番分かりやすい形さ」
 隆明が振りかぶって真っ直ぐに突進していく。腕を力一杯後ろに引き付けておもいっきり慈苑の身体に拳を叩きつけた。鈍い音ともに慈苑が後退する。
「どうした? それが貴様の本気か――ならばこちらも行くぞ」
 慈苑は筋肉で隆明の拳を受け止めていた。手ごたえはあったが、それ以上に慈苑の防御力の方が高かった。これには隆明も顔を顰める。
「おおおおおおっ!! 殴るっていうのはこういうことだぁあ」
 慈苑は吠えた。体重を乗せて一気に引くと強烈なカウンターパンチが隆明の鳩尾にヒットした。口から大量の血を吐いて隆明が転がる。
「どうした? もうおしまいか」
「なに――?」
 慈苑の顔色が変わった。隆明が思いのほかすぐに立ち上がっていた。本来であれば慈苑の強烈なパンチを食らったものはすぐに死ぬはずだ。
 だが、隆明はダメージを食らいながらも戦う素振りを見せる。まだ目には闘争心が溢れていた。慈苑も隆明の覚悟を見て再び拳を握りしめる。
「だったら遂げてみせろよ本懐ってやつを、俺を倒せんのならなぁあああ!!」
 隆明は再び同じように拳を叩きつけた。めり込んだ拳に慈苑が顔を顰めた。先ほどとは違った魂の籠った拳に慈苑も口から血を吐いた。
「……ねぇ。ほんとは、分かってるんでしょ? 自分の行為が救世からは程遠いって怨恨や憎悪を否定する気はないけどね。崩界を助長するだけの破壊活動が、誰を救うってのさ」
 寿々貴が慈苑に口を挟む。その隙に隆明と璃梨子に回復を施す。
「お疲れー。そんな中悪いけど、もちょっといける? 一緒に倍返しといこうかー」
 璃梨子は頷いた。お陰でまだ戦えそうだった。一方、苦しんでようやく立ち上がった慈苑はふたたび隆明に拳を繰り出してきた。
「それが正しいかどうかはこの拳で証明してやる」
「上等だ、慈苑。てめぇの腐った根性を俺が死ぬまで叩き直してやらぁあ!」
 隆明も寿々貴や璃梨子に攻撃させないように再び拳でぶん殴る。壮絶な撃ち合いによって何度も互いの身体に鉄拳が叩きこまれた。痛みを遮断して限界を突破する。
 意地と意地のぶつかり合いで壮絶に殴り合う。
「――よそ見している場合ではありませんよ。貴方の相手はこの僕がします」
 隆明と慈苑の死闘の横で長曽根虎次郎と桐が対峙していた。虎次郎は飄々として草履を結び直している。江壬志に貸して貰った名刀の長曽根虎徹を弄ぶように振回しながら桐に突きつけた。
「自分達の世を作って、その先は? 暴力振るう相手も居なくなったら身内で食らいあいますか?」
 桐は刀を抜いて構える。可笑しそうに虎次郎は答えた。
「そんなこと考えもしなかったなあ、そうなったら面白いですね。でも安心してください。この瞬撃殺なら痛みも感じずに一瞬で死ねますから。それでは僕の早さについてこられるか――行きますよ」
 その瞬間虎次郎が目の前から姿を消した。気がついた時には後ろに回っていた虎次郎が刀を振り下ろしていた。刀と刀が激しくぶつかる。一瞬僅かに早く動いた虎次郎の刀が桐の左腕を斬っていた。傷口から大量の血が溢れ出る。
「あれ? おかしいな。確かにしとめたはずだけど」
 桐は間一髪のところで虎次郎の攻撃を交していた。あと数センチ遅れていたら首元をバッサリ切られていた。集音装置を使って足音の数を把握するという技を使って桐は虎次郎の瞬撃殺からかろうじて身を守ることに成功していた。
 だが、虎次郎もすぐさま瞬撃殺を繰り出す。目にもとまらぬ速さで迫る虎次郎の攻撃に防戦一方になった。桐は制服やスカートを斬られてしまう。体中が傷と血にまみれて身体が言うことをきかない。桐はついに刀を鞘に収めた。
「もう終わりですか? 最初からそうやって諦めていれば――」
 虎次郎はそう言いかけて口をつぐんだ。桐の目が本気だった。
納刀した状態で鞘に手をかけて重心を低くする。虎次郎は意図を悟って自分も刀を仕舞った。
「その構えは抜刀術――いいでしょう。ならば僕も本気を出してこの瞬撃殺で貴方を仕留めて見せます。江壬志さんの言う弱肉強者が正しいことを証明します」
「先の事は知らないなんてよくもいいますね。 もしそうなら何をもって平和な世といっているのか、所詮暴れたいだけの名目なら語るな下衆が」
 最初に虎次郎が視界から消えた。続いて桐も動く。
目にも止まらぬ速さで同時に刀が撃ち放たれる。
次の瞬間、吹き飛んだ刀が地面に突き刺さった。その刀は間違いなく虎次郎の長曽根虎徹だった。

●十字に交差する想い
「寿々貴は絶対に倒させない。来るなら全部倒してやる!」
 杏樹は部下たちから寿々貴を背に庇った。敵のスターサジタリーのハニーコムガトリングを身体で受け止めながら必死になって耐える。
「杏樹さんここは任せろ! 俺が敵を引き付けている間に全員を狙い撃て!」
「わかった、やってみる」
 快と杏樹は場所を入れ替わった。快が再びアッパーで引きつけているうちに、杏樹が敵の死角へと回り込む。快がナイフで威嚇したのと同時に敵が動いた。
 杏樹がそうはさせまいと狙いを定める。業火の矢が一斉に襲いかかった。予想していなかった方向からの攻撃に部下たちは苦しみもがく。
「よし、まずはお前からだ!」
 快は目の前に居るホリメに向かってナイフを突きつけた。首元を狙って容赦なく切り裂いて息の根を止める。杏樹が快を狙っていた敵に銃で狙い撃った。
 絶叫とともに残りの敵が精密な銃弾で撃たれて地面に同時に突っ伏した。
「サンキュー杏樹さん、狙われていたから危ないところだった」
「あとは――あいつか。漁村を襲うとか、どうしようもない連中だ。根城になんかさせない。全部潰してやる」
 快と杏樹は見事な連携によって部下を掃除した。互いに何度も一緒に戦っていてだいたいやりたいことや考えていることは理解できる。
「僕も行く。新田や不動峰にばかり頼っているわけにはいかないからな」
 達哉は快と杏樹に宣言した。
「もちろんだ。その『羅刹』を貴様の野望もろとも沈めてみせよう。鬼蜘蛛江壬志、お前が盗ろうとしている「国」の護り手が、斯くあることを知れ!」
 快は皆に強く答えた。
「みなさんにつばさを……っ! これでうみのうえもへっちゃらですっ!」
 ミミミルノからすぐに翼の加護を貰って海上へと飛び立つ。すでに先には集中砲火を浴びて一進一退の攻防を続ける天乃の姿があった。後ろから快と杏樹が迫って敵の砲撃の弾幕を分散させる。天乃はその隙をついて大胆に突っ込んだ。
 戦艦が近づいたところを見計らってオーラで作った爆弾を大砲の砲身に叩きつけて爆発させる。すぐに鬼蜘蛛江壬志がやってきた。
「さあ、踊って……くれる?」
「よくここまでやってきたな。だがここからおめえらは生きて帰れないぜ」
 天乃はデッドリーギャロップで締めに掛る。そうはさせまいと炎に包まれた剣で天乃を薙ぎ払った。灼熱の業火に包まれて天乃が甲板に墜落する。
 達哉がすぐに駆けつけて回復を施す。天乃を助け起こして江壬志に鋭い眼光で睨みつけた。
「黒船とか尊王攘夷の意味を勘違いしてないか? お前らのやってることは単なるテロリズムでしかない。理由か……お前らには戦略、思想と信条、国益というビジョンがないという一点に尽きる。無辜の民を虐げるお前らに正義などない!」
「どうやら威勢だけは良いようだ。俺がこの国を強い国に作り変えてやる。強い者がこれからの時代の強い国を作るんだ」
 江壬志は刀を構えて達哉に襲いかかる。その前に快が間に入って攻撃をブロックする。快は炎の刀で切り裂かれて苦痛に顔を歪めた。
「……動く、な……爆ぜろ!」
 天乃が締めつけからのオーラによる爆弾攻撃で江壬志をふき飛ばす。快から離れた隙に今度は杏樹がピアッシングシュートで狙い撃つ。
「鬼蜘蛛だかなんだか知らないけど、私はそもそも、まだお前たちが誰かも聞いてないからな」
 杏樹の攻撃で江壬志は膝をついた。それでもどこかまだ余裕の笑みを浮かべて刀を杖代わりに立ち上がる。杏樹に江壬志は言い放った。
「俺は鬼蜘蛛江壬志。この世の頂点に立ってこの国を作りかえる。それにはまずお前のような鬱陶しいシスターが邪魔だ。死の為の祈りを捧げて地獄に堕ちるがいい」
 江壬志は刀を振り上げて襲おうとする。だが、再び杏樹の前に快が立ちはだかった。何度も何度も立ちはだかる快にさすがの江壬志も言葉が出る。
「どうしてそこまで仲間を庇う? お前は味方の代わりに傷ついて損をするばかりだ。そんな戦い方ではいつ自分が死んでもおかしくないぞ」
 江壬志は快の本心を読み取ろうとした。
「心を読めるなら読むがいい。今の俺にはお前を止め、そして倒す事しか考えていない。船を破壊する仲間を狙って揺さぶろうとしても無駄だ。彼らへの信頼は、その程度では揺るがない。彼らも俺を信じてくれているのだから」
 その隙に杏樹が船内にいる砲撃手に業火の矢を放つ。続いて砲身や機関銃を狙い撃って縦横無尽に破壊つくす。天乃も厄介な操舵室を爆弾で吹き飛ばす。
 その時船下で大爆発が起きた。潜伏していた『名状しがたい忍者のような乙女』三藤 雪枝(BNE004083)が水中からスクリューをぶっ壊す。
 雪枝は水中呼吸を使って羅刹の下まで泳いできていた。機器遮断で魚雷探知機やソナーに囚われないように欺瞞して近づいた。次々に船底に穴をあけられて船が傾き始めていた。浸水によって羅刹が徐々に大きく斜めに傾いていく。
「鬼蜘蛛江壬志! その首貰った!」
 雪枝は水中から這い出してきていきなり後ろから小太刀で斬りかかる。突然の奇襲攻撃に江壬志はなすすべもなく背中を切り刻まれる。
「くそっ! おのれ油断した。この鬼蜘蛛江壬志ともあろう者が、たった一人の娘のために羅刹を沈ませられるなんて」
「一人じゃない。これは俺達みんなの力だ。お前の今回の敗北は自らの力を過信した油断と仲間を最大限に信用しなかったことだ」
「貴様――大馬鹿だな。面白い。ならば仲間を庇ってその思い通りに死ね!」
 江壬志は吠えた。炎に包まれた刀を振り被って振りかぶる。快は熱感知と超直観を澄まして江壬志の太刀筋を読んだ。燃え盛る炎の剣より先にナイフを突き出す。
「お前の刀と俺の刀、二つの武器が描く闘気の軌跡をよく見てみろ!」
「ば、馬鹿な――」
 瞬間、江壬志の表情が曇る。刀とナイフが互いに空中で交差した。
「十字、即ちラストクルセイド!」
 菊一文字より早く快のナイフが江壬志の懐に深く突き刺さった。その瞬間、江壬志が絶叫して傾いた甲板を転がり堕ちて行く。

●幸せな夢を守る力
「しっかり! 私に捕まれ!」
 快も江壬志の刀にわき腹を刺されていた。間一髪の所で急所は外したが、深手を負わされた。そのときついに羅刹が真二つに割れた。
 快が転げ落ちそうになって杏樹が手を差し伸べて支える。それをさらに後ろから達哉や天乃それから雪枝が懸命に杏樹の身体を抑えた。
「みんな――ありがとう」
 快はすんでの所で仲間に助け出された。杏樹たちに支えられながら濁流に飲み込まれる羅刹から離れて逃げる。向こうにはモーターボートで同じく危機を脱出した江壬志の姿があった。命は助かったものの快に深手を負わされた状態だった。それでも強靭な強い精神によって力を振り絞る。
 リベリスタは快を安全な場所へ移すために陸へと急いだ。陸上では桐と隆明に対峙していた虎次郎と慈苑がまだ残っていた。
 壮絶な撃ち合いによって隆明と慈苑が互いに突っ伏したところに、刀を吹き飛ばされた虎次郎がスピードを生かして近づいて助け起こした。
「慈苑さん?」
「お前は先に逃げろ――ここは俺が食い止める」
 虎次郎は慈苑の言葉を汲み取った。桐に一瞥すると海岸とは逆の方へと逃げ出して行く。桐が後を追おうとした所で慈苑が立ちはだかった。
「ここからは一歩も通させはしない」
 すでに立っているのもやっとな慈苑に桐はトドメを刺そうとした。だが、後ろから気絶していたはずの隆明が桐の肩を叩く。
「ここは俺にやらせてくれ、たのむ」
 片目が見えなくなっている隆明もすでに戦える状態ではなかった。それでも桐はあまりの隆明の気迫に押されて後ろに下がる。
「じゃあ、最後の一発いかしてもらうぜ! うおりゃああああああ!!」
「望むところだ! ここに救世を完成させる!」
 隆明の拳が深く慈苑の腹に突き刺さった。隆明の身体に慈苑の拳が当たるよりも早かった。慈苑はついに後ろ向きに地面に突っ伏して倒れて動かなくなった。
「はあはあはああ……ついにやってやったぜ――ふう」
 隆明はあまりの疲労で突っ伏しそうになったが、桐にすんでのところで抱き抱えられた。すぐにリサリサとミミミルノがやってきて二人に回復を施す。
「大丈夫ですか? しっかりしてください」
 リサリサの太腿の上で隆明は幸せそうにぐっすりと寝込んでいた。羅刹を倒して帰ってきた快がその姿をみてとても羨ましく思った。
「まあ、なにはともあれみんな無事でよかった。俺にはこんな素晴らしい仲間がたくさんついている。これからも絶対に俺達はくじけたりはしない」
 杏樹や天乃が快の傍らでほほ笑む。頼もしい仲間たちに囲まれて快は決意を込めて言った。人々の幸せな夢をこれからも守って行く為に。

■シナリオ結果■
大成功
■あとがき■
みなさま、お疲れさまでした。

成功条件は、敵戦力の撃退でしたが、
敵軍艦の羅刹を見事に鎮めることができました。
さらに今回は個々の頑張りにおいてネームドの戦いにも全て勝利しました。
皆それぞれが、互いの役割において個人の特性にともなった働きをこなしつつ、さらには危ない所で今回は手厚い回復をえられたことも大成功の要因だった思われます。
攻撃陣も後衛陣も戦力が整っていてバランスがよかったですね。
また奇襲攻撃も素晴らしいアイディアでした。

それでは、またの機会にお会いしましょう。