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機械仕掛けの革醒者


 ただ、とっても羨ましかったんだ。
 一般人から見れば、魔法の様な素晴らしい力を持った革醒者。
 時には、壁をすり抜け。
 時には、千里を見通す。
 時には、どんな些細な音さえ拾うし、バランス力だってお手の物。
 もっと頑張ってみれば異性の心を手に入れられるし、周囲の人間の心まで読んでしまえる。
 一つ間違えれば、人の命を簡単に奪える力は脅威だが、格好良いと思ってしまうし。
 逆に、どんな外傷でも治してしまう事が可能な治癒能力は素晴らしい。
 此の日本が崩壊せぬよう、戦場に向かう彼等は幼き日に見た漫画の主人公其の物である。
 ヴァンパイアの牙には敬意と尊敬を。
 フライエンジェの翼には麗しさを。
 メタルフレームの機械部位には揺ぎ無い意志を。
 ビーストハーフの獣化部位には誇りを。
 ジーニアスの背には此の先の未来を。

 なのに。

 なのに、何故だ?
 何故、私にはそれが『無い』。
 彼等と私との違いはなんだというんだ。
 同じように人間の女の股から生まれて、同じように息を吸って、同じように二本の足で歩いて、同じように食べて、飲んで、寝ているというのに。
 もし、私に力さえあれば。あの日、あの時、娘が意識不明になる事も無かったというのに――!!
 世界を呪おう。
 此の世の仕組みは絶対におかしい。
 神の下、皆人類は兄弟であり、平等であるべきだ。
 力のある人間と、力の無い人間という差なんて失くすべきだ。
 故に私は力を望む。
 ただ、とっても羨ましい反面で、嫉妬せずには、呪わずにはいられなかったんだ――。 


「人工的に、作られた革醒者ですよ」
 『未来日記』牧野 杏理(nBNE000211)は集まったリベリスタ達を見回して、そう言った。今回はアーティファクトを破壊してきて欲しいというのが、依頼の主軸だ。
 されど、相手は『一般人』だというのだが、今回ばかりは『能力者』として位置付けた方が良いのだろうか。
「彼は、『まだ』一般人です。
 神秘に関与しているリベリスタ組織で働いていた、協力者や関係者がほぼでしょう。
 時村家が具体例ですが。神秘の世界の事全てを、革醒者だけで如何にかするのは正直無理です。其処には少なからず、事情の知っている一般人が携わる。
 此の、三高平も同じように」
 だが、同時に今回相手する彼は思ってしまったのだ。否、他にもいるのだろうが。
 羨ましい。
 妬ましい。
 何故自分にあの力が無いのか、と。
 だから手を伸ばしてしまった。触れてしまった。
「恐らく裏で、六道が手を引いています。六道の研究員ですかね、此の世界の人類全てを革醒させようとでもしているのかは、知りませんが。なんだか実験台にされているようで、とても気の毒なのですが……」
 アーティファクト『パワードスーツ』。
 身体に埋め込む式のアーティファクトであり、何らかのジョブのデータがセーブされている。
「おそらく、今回はデュランダルのセーブデータ。
 少しだけ解析しましたが、恐らくデータの元になっているのはアークのリベリスタのデータです。高位の名声の、ですね」
 しかし其の力を昨日まで一般人であった者が上手く扱える訳も無い。非常に劣化した力を使って来るのは目に見えている。
「他にもアーティファクトはありますね、エリューションを使役するものですが其方は資料の方を見てくださいませ。
 そして、お急ぎください。先程も言いましたが、彼は『まだ』一般人です。ですがアーティファクトには増殖革醒の影響が強いように見えます。故に、時間が無いのです」
 ひとつ、蛇足かもしれない話をしよう。
「彼の、娘さんはリベリスタだったのですよ。とても無邪気で、お節介な女の子。
 ですが、先日……エリューション退治の際に、仲間を庇った娘さんが瀕死の重傷を負いまして。
 今日まで目も覚まさずに、病院のベッドで寝たきりに成っております」
 けれど。
「杏理の予知で、恐らく数日後ですが必ず目を覚ますのです。
 手遅れになるかも、ですが……でも、でも!! 全てが手遅れでは無いって杏理は信じたいのです!!」
 杏理は深々と、頭を下げた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:夕影  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 6人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年05月01日(木)22:16
 夕影です 何もせずとも恨みを買っていたようですよ、そんな感じ

 以下詳細

●成功条件:アーティファクトの破壊と、一般人の捕縛か討伐。又、エリューションが発生した場合の全討伐

●能力者:射場・朱木(まとば・あけぎ)
・53歳、一般人
 パワードスーツを埋め込まれて、そこそこの革醒者として動きます
 パワードスーツを手放したくない様なので抵抗する事でしょう
 ノーフェイスになるまで、戦闘開始してから1分の猶予があります
 ノーフェイス化した場合、即時フェーズ2まで進行。以下のスーツを身体に取り込み、其の力を発揮します

 また、舞彩(まい)という娘が存在します

●アーティファクト:パワードスーツ(データ:デュランダル)
・アークのデュランダルのデータが入ったアーティファクト
 一般人が身体に埋め込む事により、使用が可能。今回は背中に

 副作用も多い
 例えば、増殖革醒。例えば、衝撃に耐えられない。例えば、突然の制御不能。例えば、過度な疲労により急激な老化等リスクが高い

 以下の攻撃方法が可能です
 メガクラッシュ?(パワードスーツ劣化型)
 戦鬼烈風陣?(パワードスーツ劣化型)
 ジャガーノート?(パワードスーツ劣化型)
 120%?(パワードスーツ劣化型)
 以上の攻撃を行いますが、本来のスキルの威力よりは劣ります

●アーティファクト:質量あるデータ(versionゴーレム)
・フェーズ1程度のエリューションゴーレムを生み出します
 土がある場所では無限に生み出せますが、それ相応の体力が必要です
 依頼開始時に5体存在しております
 以下の攻撃を行います
 殴る(物近単BSショック)
 蹴る(物近貫)
 絡みつく(神遠単BS麻痺)

●場所:自然公園
・時刻は夜、人気はありません、足場にも問題はありません

それでは宜しくお願いします
参加NPC
 


■メイン参加者 6人■
ハイジーニアスデュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ハイジーニアスデュランダル
新城・拓真(BNE000644)
ナイトバロン覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
フュリエミステラン
シェラザード・ミストール(BNE004427)
ビーストハーフ覇界闘士
翔 小雷(BNE004728)
ジーニアスナイトクリーク
鼎 ヒロム(BNE004824)


 力が正義か悪か、是か否か。
 粗末な言葉によって、確立された定義を当て嵌めたがるのは人間の性であるのかもしれない。
 だが射場・朱木にはそんな事は如何でもいいのだ。
 確かに力を求めて、陳腐な道具を言われるが儘に着込んでしまったのは、世界から見れば悪なのかもしれないが。
 此れで良いのだ、此れで良かったのだ。
 朱木が胸内に感じていたのは、此れまでに嫉妬で埋め尽くされたソレが消えた爽快感。此れで娘と同じ景色が見えるのだ。そう願うのは、悪とされてしまうのだろうか。
「けれど、何故だろうな。まだ胸のつっかえが取れないんだ」
 此処が終着点では無い。
 現状はまだ通過点に過ぎない。
 まだ、まだ先があるのだ。そう、『本物』に成るという先が。
「其処までに、した方が良いと思うんだがな」
 『質実傲拳』翔 小雷(BNE004728)の言葉が、朱木の暗夜を行く足を止めた。
 振り返った朱木の貌は、明らかに疲れたように沈んでいて生気が感じられない。緩やかに自殺へ向かっている、そんな感じ。
「射場・朱木だな? そのアーティファクトを手放せ、出なければお前は化物に成り下がるぞ」
 今は敵とかなんだとか別として、彼の身体が危ない事をダイレクトに『誠の双剣』新城・拓真(BNE000644)は伝えてみるのだが。
「なんの事だ」
 万華鏡が演算した未来を知っているのは、未来視したフォーチュナと伝え聞いた依頼関係者のみだ。
 勿論の事だが朱木の頭の中には此の先『本当にノーフェイス化する』という事実は知らない。
 そうで無くとも、朱木は此れから増殖革醒の影響を受け、フェイトを得るだろう幻想を夢見ているからこそ、脅迫の類だと、拓真の言葉は右から左へと流されてしまうのだ。
「隣の芝かねぇ……」
 『合縁奇縁』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)は、両刀の刃を其の腕に持った。剣先を向けるのは、もしかすれば自分の力がコピーされているのかもしれない代物で。
 竜一こそ、一般人から革醒者に成った出だが、力にも、其れを使って如何するとも、あまり興味が無い彼にしてみれば。朱木が理解出来るか出来ないかと言えば五分五分。
 此処まで色々喋ったが、正直朱木がノーフェイス化するまで時間が無い。
 既に走り出したリベリスタを止めるかのように、地面から這い出てきたゴーレムを従え、朱木は言う。
「丁度良い。話し相手を探していたんだ。聞いてくれよ、身体でな」
 此の先は、拳で語ろう。


 行動順的に早過ぎた拓真がゴーレムにより、足を止められてしまった。
 リベリスタ達が優先したいのは朱木のノーフェイス化阻止であり、其れを止める為にはアーティファクトの破壊が必要で。
「頼む!」
「はい! 道を、作ります」
 シェラザード・ミストール(BNE004427)が細く、折れてしまいそうな腕に乗ったフィアキィに目線を送った。
 好奇心旺盛なフィアキィ――シャルマは周囲の土くれの人形を見回しつつ、手を叩いて。
「お願いね」
 シェラザードの言葉に、シャルマは片手を上げた。
 刹那、爆音と炎が発生。後方へと一気に押し込まれていく――ゴーレムの間を前衛たちが駆け抜けるには十分な程に。
「残りの時間、あとどんくらいだったか忘れた!!」
 其れは朱木がノーフェイスに成る時間で、ヒロムが仲間に聞いてみたが。
「僕も正しい時間が測れる訳じゃないから、わかんないかな……」
 と『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)は返した。
「なら取りあえずさっさと終わらせば良いって事よ」
 小雷の腕が振り払われた。風が起こった、其の一筋の風を焔が飲み込んで一面の温度が急上昇していく。
 『純潔<バンクロール』鼎 ヒロム(BNE004824)が横に振られた刃を顔面すれすれで避けつつ、朱木の後方を取った。
 くるりと回り、ヒロムは朱木の背に気糸を絡めようとした時には、朱木は振り向き剣を振り上げていた。
「羨ましいよ、君達が。どうせ、偽物である私を馬鹿にしているのだろう?」
 奥歯を噛みしめ、剣先で肩を貫かれた痛みに顔を歪めながら、ぽたぽたと落ちる紅い体液を見つめた。違うと、言葉が出なかったヒロムの代わりに小雷は吼えた。
 ヒロムから言わせれば、朱木が悪とは言えない。寧ろ、そう力を望んでしまって当たり前だと思っていた。だが、上手く口が動かせない。
 ヒロムは剣を抜かれれば、再び大量の血を流した。だが、抜かれた剣の柄を掴み、繋いだ気糸を其処から巻き上げ朱木の身体を拘束したのだ。
「革醒者が憎いというのであれば結構。力があれば恨まれ、厭われる。それは一般的な人間の間ですら同じ筈だ」
「力が無い苦しみを知らない癖に、説教か? 若僧が!!」
 気糸を噛み千切った朱木が、拓真の剣を受け止めた。
 成程、拓真もそうだがその馬鹿力を受け止められるとは、アーティファクトの力も伊達では無いか。
 弾かれ、戻された拓真の身体を悠里が受け止め、入れ替わる様にして悠里の足が跳躍した。
「違う、違うんだ、僕らは怒りに来たんじゃなくて……止めに来たんだ!!」
 背中にアーティファクトがあるという事は回り込む事が必要な訳だ。朱木の後ろに着地した悠里が、振り向きつつ裏拳で土砕を放つのだが。
「止めないでくれ、私は進まなければならない!!」
「そういう事じゃなくて!!」
 悠里の腕をゴーレムが掴んで止めたのだ。伝わらない、伝わらないね、核心的部分が。恐らく此処でノーフェイス化を信じない彼だ、娘が助かる事を伝えたとしても信じられないだろう。
 シェラザードの弓が唸る。朱木に奮闘する彼等に、土くれを近寄せないように矢を放ち人形を減らしていく。だが減らせば減らす程、増える。其れは朱木の体力低下を促すのではないかと、彼女の心が焦っていた。
 どうか、早く彼が如何にかなる様。シェラザードは其れでも弓を放つ。其れが、道を作る。
 悠里は笑った。
「竜一くん! 今だ!!」
 朱木の顔が上を向いた。満天の星を背に、飛び上がり得物を振り上げる竜一が影って見えた。
「その男こそ、アークのトップリベリスタ!(多分)そのスーツのデータの元になった男! デュランダル・オブ・デュランダルズ!」
 竜一の、両手の筋肉が引き締まる。
 限界以上であり肌が所々切れて血が噴き出す。だが痛い等嘆く事も無く、竜一は両刀を振り落す――!!
「うるぁぁぁあああああ!!」
「『剣龍帝』結城”Dragon”竜一だ!」
 金属と金属が触れあう轟音が響いた。片手で竜一の両刀を受け止めた朱木は、勢いに数mだけ後方に押し込まれた。
「剣……龍、帝」
 此れが、オリジナルの力なのかと目を丸くした朱木に少しの恐怖が訪れたのは此の時であった。
「いや、結城”Dragon”竜一ね……普通の、結城”Dragon”竜一」
 腰低めに、控えめに手を横に振って訂正しだした竜一であった。ええい、シリアスが迷子だ。


 やはり流石リベリスタだ。シェラザードが周囲のゴーレムを穿ちつつ、朱木を抑え込むのは容易かった。
 恐らく戦闘も、開始40秒で終わる。
 戦力が高かったのもそうなのではあるが、編成された個々が己の力の使い方をきちんと解っていたからでもあろう。
 だが、此処で少し話をしよう。聞いておくれよリベリスタ、立ち止まれなかった男の我儘を。
「いたずらに力を求めてもお前の娘を傷つけた連中と何ら変わらない」
「私は、上手く使って見せる……!!」
 小雷の拳がゴーレムを貫く、嗚呼、護りの壁も少しずつ消えていく。彼は諭すように、言葉をゆっくりめに話して彼へと伝える。
 上手く使えると信じて、何人が上手く使えずに散ったものか。
「革醒できたとして、一人だけでは世界は何も変わらんぞ」
 此の世界はどうも捻じ曲がっている。小雷は其れの理不尽を知っていたからこそ、己に彼を重ねていた。だからこそ、此の先彼がノーフェイス化した先の絶望や、最悪を悟っていた。其処へ向かわさない為に、小雷は、
「今の貴様を見て娘が喜ぶと思っているのか」
「くっ」
 喜ぶ――否、きっと其の逆だってもう気づいているのだろうと言葉で殴った。
「六道にていよく言い包められたか、それとも実験台にされてるのを納得の上なのか?」
 小雷と入れ替わり、ヒロムが朱木の身体を掴んだ。其処から回される気糸を自分の身体ごと朱木を拘束して。
 正面からよく見た朱木の顔が、口が、横に引き攣った。
「利用されていると解っても、止まれなかったのかよ!!」
「く……くっ!!」
 ヒロムの拘束から逃れようと、彼の腕を掴んで引き剥がそうとするのだが気糸が絡んでおりビクともしない。
 すれば、朱木の後方より足音が響く。
「だが、それ以前に──お前は重大な事を間違えようとしている」
 拓真が剣を構え、ピタリと背中にあるアーティファクトへと剣先を着けた。
 羨ましいと、其れが欲しいと。持っていないものを持っている彼等の存在自体が目障りだと、憎いと恨む事はよく解った。
 けれどもだ。
「力を得たまでは良いかも知れない。だが、その力でお前は何を為すのだ」
「娘を……娘を……起こすんだ、何か、上位の世界にその方法があるかもしれない」
 彼の娘が起きるという事実を知っているリベリスタからすれば、それは要らない世話である事はよく解っていた。シェラザードにしてみれば、人間の親子愛がわかりにくかったかもしれないが、彼女でさえ彼は助けなければいけないと理解している。
 だが拓真は言う。先程言ったように、朱木はノーフェイスに堕ちると。だからこそ、
「やめろ」
「成り果てれば、その力を得た理由すら忘れる」
「やめろ……」
「……只の自暴自棄だと言うのなら、お前を止めさせて貰う」
「やめろおおおおおおおおおおお!!!」
「なっ!?」
 意地であった、負けん気であった。偽物であれ本物を超えたって良いだろう。
 ヒロムの気糸の中、身体が引き千切れる寸前であったが、朱木の右手が拓真の刃を掴んだのだ。勿論手の平はよく砥がれた剣に触れればそれなりに切れて、血が落ちる。
「ちょちょちょちょちょ、身体千切れんぞあんたァ!!」
「構わん!!」
「いやそれは構えよ!! 馬鹿野郎!!」
 ヒロムが吼えたが聞く事は無く。拓真の剣を掴む力もかなりのリミットオフ。
 伝えに来たんだ。娘の舞彩ちゃんが目を覚ます事を。悠里は、いや此処にいる全員がそうなのだろうが、其れを伝える前に殺す事もノーフェイスにする事もしたくない。
 其れは、戦闘が終わった後に伝えようとばかり思っていたのだが。
「もうすぐ目を覚ます娘さんは、あんたを見てどう思うかね? 今の姿は胸を張れるか? うちの親父も一般人だがカッコイイもんだぜ」
「あ、言っちゃうんだ」
 言えない悠里の代わりに竜一が言った。
「露草。狙うのは背中のアーティファクトだけだ、間違ってもおっさんの身体を貫くなよ」
 額の汗を拭いながら、竜一は緑の栄える片手で持つ刀にしては長すぎるそれを前に出した。其の、刃に露草色をした瞳が一瞬だけ映った。彼の深層意識の奥で、宝刀に宿りし意識が目を覚ましたのだ。
 拓真の剣をやっと離した朱木であったが、もう、遅い。拓真の口が動くのを朱木は追った。

 貴様の目の前に居るのは、その力の大本となったデュランダルの一人。
 アークの数ある剣の中でも名剣と名高いリベリスタだ、勝つのは容易くないぞ

「ひっ」
 嗚呼、娘はこんな怖い戦闘をしていたのか――矢張り、此の世界は狂っている。朱木は、朱木は、そう思ったのだが。裏腹に心の中でくすぶっていた何かから解放されたい期待が生じていた。
 竜一の耳の奥で『判ったよ、我が主』という声が聞こえて、口が笑った。其の侭宝刀を突き刺した―――の、だが。
「なんだこりゃ、硬ッッ!!」
「「任せ――ろ!!」――て!!」
 小雷と悠里がほぼ同時に同じ事を言いながら、同じように行動した。
 竜一の右に悠里が、左に小雷が。地面に手を突き、片足を蹴り込み、宝刀露草の鍔を同時に蹴って押し込むのだ。
 まるでアーティファクトが抵抗しているよう、大量の電撃が露草の刃を拒絶していたのだが。
 バキン。
 と鳴れば、其の電撃も一斉に収まり朱木の身体が前へと倒れた。
「よ――、っと」
 気糸を消したヒロムが倒れた朱木の身体を受け止めたのだが、ヒロムにはこうも声が聞こえた。
 『すまない、六道が』と。

 一件落着……。
「には、まだ早いみたいですね」
 駆け寄って来た、シェラザード。よく見れば、周囲にはまだゴーレムが蠢く。
「一人、一体がノルマだな」
 小雷がそう言った刹那、六人は六体のゴーレムへ得物を向けた。


「あーあ、世界の為ならなんでも奪っちゃうのかにゃん。アークはブラックですにゃん」
「世界に優しくても人には優しくないぴょん。七派一角を壊したからといって調子乗らないで欲しいぴょん」
 意外にもフィクサードは姿を現した、数は二人、頭に猫耳と兎耳がちょこん。
 だがそれで全員かは、知れない。
「何しに来た、六道か?」
 小雷が人一倍殺気を出しつつ、二人のビーストハーフへ構えた。
 六道かと問われれば、二人は仲良く首を縦にふった。隠す事も必要無いだろうと。
「六道ども! てめえらの敗因はたった一つだ。
 デュランダルのデータを使うならば、誠の双剣のものを使うべきだし。強さを求めるならば、アークの銀腕のデータを使うべきだった。誰のデータを使ったのか知らないが、まだまだだね!」
「うるさいにゃん。言われなくても次はそうするにゃん」
「でも此処に居る全員のデータ回収できたぴょん、やーいやーいだっぴょん」
 次は此処に居る全員のデータが使われそうだ、そういう訳には行かない。悠里が走りだし、冷気を振り投げた刹那。攻撃を察知したように二人は闇夜に笑いながら、かなりダッシュで撤退していく。
「なんだったんだろう」
「なんでしょうね……とりあえず、語尾がにゃんとぴょんでしたね」

 目を覚ませば、全てが終わっていた。

 土くれは土くれに戻っていたし、パワードスーツの核と質量あるデータは粉々。
 起き上り、朱木が一番最初にしたことは取りあえず近くに居たヒロムを殴る事であった。が、其の拳も今となっては力無く、ひょろっと出された腕をヒロムの手が受け止める程度のものであった。
 けれども何故だろう、胸のつっかえが無くなっている気がする。
「力を求める事が間違いとは言わないさ。けど、革醒する事が正解とも俺は言い切らない。力がなくっても出来る事はあるかどうかを、家族とよーく相談するといいんじゃない?」
 顔を下げた朱木に、悠里の手が肩を掴んだ。
「舞彩ちゃんはもうすぐ目覚めるよ」
 其れは、本当の話。
「これから目を覚ます娘さんに元気な姿を見せるって事も、一つの出来る事だとは思うんだよね」

 最後に悠里は言っていた――。

 お父さんの声が聞こえる。
『僕は彼女の事を知らないけど、きっと家族や友達を守りたいって思ってるんだと思う』
 何時も、駄目って言われているのに危ない場所へ行ってごめんなさい。
『だからその家族が危険な事をするのはきっと望まないから』
 何時も私が代わりになりたいと言ってくれていたのは、やさしさだとわかっていました。
『戦えなくても良いんだ』
 でもね、お父さん。私は幸せだよ。
『彼女の帰る場所でいてほしい』
 だって、此の力でお父さんが居る世界を護れるのだから。

 ――ま、―――まい、――――舞彩!!

「……お、父さん?」
「舞彩!!」
 
 病室の廊下、壁に背を預けていた拓真が居た。
「力など、必要とされないのが一番良い。何時か……」
 彼の娘も戦わなくても良い世界に。そんな日が訪れるのだろうか。
 部屋に置かれた、花束が風にふかれていた。少しは此の世界も、やりようによっては優しいのかもしれない。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
依頼お疲れ様でした、結果は上記の通りでしたが如何でしょうか
ジャガーノートする暇が無かった(アホ面
皆様のおかげでハッピーエンド、でも対価は少し大きかったかもですね
それではまた違う依頼でお会いしましょう

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称号ゲット!
『剣龍帝』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)