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腕に巻くアレ

●アドバイスの妥当性は聞いてない
 僕はモテなかったので、恋愛のなんたるかというのが全く分からない。
 それどころか、ファッションにも気を遣ったことがないので、彼女が出来てしまった現状でどう気を使えばいいのか、という問題にぶつかってしまった。
 当然、男同士の付き合いだけは多かったのが幸いしてアドバイスを幾つかもらったが、その中で微妙にわからなかったのがひとつ、ある。

「腕にシルバー巻くとかどうよ? 無いなら貸すけど」
 シルバーを巻くという単語が微妙にわからなかったが、取り敢えず調べて身なりを整えて、何とか成るものだと考えた。
 ……あんなことになるとは思わなかったけど。

●その発想はおかしい
「シルバーってシルバーアクセでいいんだよな? 腕ってブレスレットの類だよな?」
「僕はそんなものつけませんけど、そうなんじゃないですか? 大変そうですよね銀製品の手入れって」
「ああ、割とめんどくさいけどそういうのも……いやそうじゃなくて」
 モニターに写っている市街地の惨状は、そんなファッション関連と毛ほども関係ない状況だった。
 馬だ。サラブレッドがところ狭しと走り回り、荒らしまわっている。特に食料品店と八百屋の被害が甚大だ。食われてる食われてる。
「そうですね。『シルバー』巻いちゃったんでしょうね」
「その返しはおかしい」
『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000202)がズームアップさせた先には、見るからに大人しめの少年が馬に引きずり回されているのが見える。ハミ(轡)の部分が何故か手首と繋がっていて、動かせないまま引きずられているのだろう。……よくわからない。
「形状からするとこれはキンバーウィック銜でしょうね。何でこんなマイナーなものが使われて……いやまあ、それはさておきまして。この銜はアーティファクトです。『ハイウィック』、本来はハミの一部として作られたようですが、何かの経緯で腕輪に整形されたようです。で、まあハミとして使われていた頃の影響か、所有者の精神力に依存して馬のE・フォースを発生させることが出来るようですね」
「何その……なに?」
「更に厄介なのは、そのE・フォース『シルバーギャグ』は馬に対し強力なフェロモンを放出するようで、たまさか通りかかった厩舎の馬が暴走してこんなんなんっているらしいです」
「つまり、本体のE・フォース以外手を出したら」
「競走馬って高いですからねぇ……」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:風見鶏  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年10月01日(火)23:10
 何も言わずに走れ(馬が)

●達成条件
○E・フォース『シルバーギャグ』撃破
○アーティファクト『ハイウィック』回収または破壊
○神秘暴露の極力の回避、競走馬の確保

●エネミー&アーティファクトデータ

○アーティファクト『ハイウィック』
 馬の轡の一部だったものをシルバーアクセサリーに整形しなおしたもの。銀製品として、また、経歴において極めて価値が高い可能性があるが、二束三文で流通していたらしい。
 現役時代の馬の思念がこびりついている模様。
○E・フォース『シルバーギャグ』
 馬のエリューション・フォース。
 体力はさほど高くはないが、競走馬の思念のためか回避と速度が異常に速い。
 積極的に危害を加えるタイプではないが、自衛を目的とした行動を起こす。
・馬フェロモン(P:放出されている間、戦場に居る馬を落ち着かせることが困難である)
・後ろ足蹴り(物近単・ノックB)
・いななき(神遠複・ショック)

○馬×3
 一般的なサラブレッド。競走馬のため無傷での確保が必要。幸いにも運搬してた頭数が少なかったようである。
 基本的に市街地(戦場)周辺で荒ぶっている。

○少年
 アーティファクト所有者。どうにかするのは解決後でいいと思います。
 彼女も近くに居ます。ほろべ。

●戦場
 真っ昼間の市街地。
 足場も視界も十分ですが、混乱が激しいのでお気をつけ下さい。

元ネタ全部わかったらそれはそれでおかしい(褒め言葉
ご縁あれば、宜しくお願いします。 
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
梶・リュクターン・五月(BNE000267)
プロアデプト
氷雨・那雪(BNE000463)
クロスイージス
大御堂 彩花(BNE000609)
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
スターサジタリー
モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)
ナイトクリーク
月杜・とら(BNE002285)
インヤンマスター
九曜 計都(BNE003026)
クロスイージス
ジークリンデ・グートシュタイン(BNE004698)

●市街地における被害軽減(ルビ:うまのしりはかぴかぴである)
「馬だ。凄いな、馬だ」
 至極当然で素直にも程がある感想を口に載せた『刃の猫』梶・リュクターン・五月(BNE000267)に、周囲のリベリスタは大仰に頷くことしか出来なかった。だって馬だもん。何かやたら気合入ってるもんコレ。エリューションですらない馬だって後ろ足で蹴られれば、一般人は実際死ぬ。馬に興味を持ち過ぎて隠した尻尾が見えてしまっては都合が悪い。耳が動いてもきっちり隠れてくれるのだけは感謝せねばなるまい。主に帽子に。
「よく、わからないけれど……恋人にいいところを、みせたかった……の?」
 なんであんなアクセサリーを選んでしまったのだろう、と自らが身に付けるそれと比較しながら、『微睡みの眠り姫』氷雨・那雪(BNE000463)が小首を傾げる。
 恋路の邪魔は馬に蹴られることを宿命漬けられる程度にはよろしくない行為だが、当の馬が邪魔に入っているのでは話にならない。
 シルバーアクセを選ぶのは分からないでは無い。選択肢が余りに悪すぎたのだが、それはそれ。口にするまでもないほどに、詮なきことである。
「高価な馬とは困ったものだな? 少年の命より高いらしい」
 さして面白くもないふうに首を振った『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)にとって、少年が死のうが競走馬が死のうが大した違いはない。
 どちらも生きていれば価値はあろうと、死んでしまえば廃棄物として処理される道理であるゆえに、依頼の解決に優先される競走馬のほうが価値が有るのだ。
 ……たとえ、逃げまわる一般人からスナック菓子を奪うような駄馬が混じっていたとしても、だ。
「競走馬は本当に高いですからね。大御堂の身内にも馬主がいるのでよくわかります」
 競走馬の脱走事件を思慮の端に載せた『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)は、知人の顔と馬の顔とを思い浮かべた。一億を超えるのならまあ、確かに少年一人よりは高いのかもしれない。死亡時の賠償的な意味で。
 怪我が元で現役を張らずとも、血統が良ければ種馬となることもあるのだろうが、それはまた別の話。
 ふと、ユーヌが結界を展開しようと指先を向け、その違和感に顔を顰める。
 彼女が『レッツゴー!インヤンマスター』九曜 計都(BNE003026)による空間魔術を形成する場持たせに用いようとしたのは、若干ながら効力の高い結界術であった筈である。だが、用いることが出来るのは革醒者として十人並みの通常結界のみ。要は、一般人に対する人払いの効力がやや落ちるのだ。現状に於いて致命的と呼ぶには遠いミスだが、さりとて無視出来るものではない。

「それにしても変わった仕事ね。捉え所が無いというか、何というか」
 軍人であるジークリンデ・グートシュタイン(BNE004698)にとってここまで「おかしい」依頼が神秘の世界にあるというのは確かに、驚きとともに迎えるべきものなのかもしれない。
 だが、神秘の入り口に居るからこそこれに驚くのであって、正直なところよくある話だったりするから洒落になっていうない。
(競走馬社会って厳しいよな……)
 そんな依頼に捉えどころを見つけることに際して、『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)程度に慣れている者も中々居ない。
 仮に、これら競走馬に何かあってからでは彼ら自身の将来にも関わるのである。無論、彩花の知人同様、最終的に損をするのは馬主なので勘弁頂きたいのは理解できるところである。

「おそらく、碌な成績を残せずに引退して繁殖入りが出来なかったんでしょう」
 フェロモンにやられて暴れまわる馬と、当のエリューションとを眺める『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)の言葉には色がない。興味が無いからだ。
 そも、所有する装備からして無骨な兵器を好む彼女(というか大御堂重工全般)に対して、シルバーアクセの類に価値を見い出せというのも中々に無理な話ではある。無理に興味をもつ必要も、無い。
 
「凄いね、アーティファクトの分際で持ち主護るように出来てるよ☆」
 そこはかとなく毒があるのは『前から』であるが、語り口に何処と無く『現在の』彼女が混じったような、とらの言葉。アーティファクトを正確に視界に捉えた上で確実な判断を可能としているそれは、リベリスタ全員の行動方針を確立させた。
 ……そして、包帯頭のフォーチュナが地団駄を踏むであろう未来を幻視した『普通』が居るのも忘れてはならない。

「あぁぁぁぁぁぁ……」
「……なんとも虚しい気がしてくるな」
 那雪の声のトーンがやや冷静なものにシフトする。エリューションに引きずられている少年と、それをはらはらと見守る少女の図式は「安全である」からこそコメディタッチだが、無事が保証されていなければ危険極まりなかっただろう。
 運命が綺麗に纏まっているのか、はたまた嫌がらせにほど近い悪戯の類であるのか。この状況からは、分かり得ない。

●流れ流れて(ルビ:げろぶくろすたんばい)
「ごめーん☆ これ呪われアイテムだからぁ」
「え、呪われってその、え?」
 少年の視界から巧妙に杖を隠しつつ、とらの一手が巧妙にエリューションの身を縛り上げる。仮に動けたとて、彼女が正面から移動を阻害している以上はそう振り回されることもあるまい。保護されているとはいえ、競走馬のスピードで乱雑に振り回されれば、出来の悪いジェットコースターより尚悪い。事件が終わってから吐瀉物にまみれてカップルの破局となったらそれは……いや、アリだな。
「邪魔くさいな、傷つけられないのが面倒だ」
 ユーヌの装備は、他のリベリスタよりかは幾分か隠蔽に適している。
 護符により強化された手袋の中に、これまた護符を主体とした拳銃。隠そうと思えばいくらでも隠せるだろうし、仮に見られても厨二病の延長のようにしか判断されないだろう。実に意に沿わない話であろうが。
 その挑発に中てられた馬達は、思い思いの勢いで彼女へと突撃を敢行する。受け止めて命の危機に陥るかといえば否。だが、傷つけられないという制約は厳しいし、当たりゃ痛くないはずもないのだ。
 ユーヌに向かってきた三体のうちひとつを、ジークリンデが押さえつけようとする。体躯の違いは規格外だし、激突の衝撃も大きい。リベリスタとしての任務経験のない彼女にとって容易とは言い難い……が、所詮一般生物と革醒者の違いである。
 エリューションに比べれば、何のことはない。心構えの違いは、確実に足を踏み止まらせるだけの挟持を与えたことにほかならない。
「大丈夫か?」
 更に、もう一体。競走馬のブロックに入りつつ、少年へと視線を向けたのは五月だった。彼女の声がもう少し低いものであれば、ある種倒錯的な慕情に少年が揺れてしまうこともあったやもしれない。彼女持ちって話はどうなったんだろうか。
 首輪がちりん、と鈴を鳴らすのが風に乗る。しかし、混沌のさなかにある一般人達にとってそれは些末事でもあった。
『落ち着くッス……いい子だから、大人しくしたほうがいいッスよ?』
『そんなこと言ったって、この雰囲気は興奮しないほうがおかしいわよ、分からないこの、こう、ネ!』
『まったくだネェー。この状況で落ち着けとか無理ってもんだよォー?』
『率直に言って、興奮している』
(……駄目だこれ!? あたしの言葉すら届いちゃいねぇ!)
 空間隔離を徐々に進めながら、計都は焦りからか、背筋を寒いものが走ったような気がした。
 こいつらのフェロモン補正なんなの。対話が通じない。リベリスタ達がブロックに入っていなければ、先ず間違いなく『ええかっこしい』でひと暴れしてその競走馬生命を棒に振っていたことは容易に想像できた。
(ここで怪我でもしたら待ってるのは安楽死なんだよなぁ……)
 エリューションの対処に当たるとらも、競走馬に向ける視線は悲喜交交といったところである。思い切り走ることが理想であれば実現させるのはやぶさかではないだろうが、結果としてその生命を縮めるのは果たして正しいのかどうか。
「と、取り敢えず陣地を展開させるッスよ、少年は大丈夫だとしても、できるだけ早めに事態を収拾させた方がいいと思うし!」
「待ちが長かった分、きっちり働くとしましょうかね。馬が盛ってるのを何時までも眺めていても楽しくありませんし」
 現実世界から徐々に隔離されつつある状況下、戦場は不可侵となり神秘の隠匿を完璧なものとする。
 そうなって初めて――この戦場に於いて最大最悪とも言える一大兵器、『殲滅式自動砲』がモニカの手に顕現するに至るのである。こんなもん、巷間に晒したらそれこそ晒し首もいいところである。

●結末は綺麗に(ルビ:もげろ)
『お前が暴れてたら少年が危ないじゃねーッスか! 大人しく……』
『やだ。はしる、たのしい』
 馬の思考原則からして、説得は無理だったらしい。エリューションとして思念が固定化されているのもまた、混乱を招く原因だったのかもしれない。何が言いたいかというと、倒しちまえってことである。
 それに、元より保護されているなら無理に解除に動くよりは安全なのである。

「面倒だな、慎重に動かすのが」
 アッパーで自らへの注視を強いていたユーヌは、その流れを殺すこと無く連続して影人を生み出していく。
 ヘイトコントロールとブロック要員の編成はともすればバランス維持が厄介にはなるが、それを補うに影人は悪く無い選択肢なのである。
 尤も、フラッシュバンを使うに使えぬ局面でもあるため、という側面があるのも事実ではあったが。
(状況が整ったらユーヌに向けていい、のか……? 無理に庇う必要は無いだろうか)
 と、ここで状況整理に疑問を呈し始めているのはジークリンデである。競走馬ごときに影人が失われるとは考えにくいが、そのあたりの戦力バランスが如何程なのかを類推するのは、初めてにほど近い経験下の彼女が判断するには些か厄介でもあった。
 だが、結果として彼女が選択したのは自らの意地であった。実利的であるかといえばやや疑問が残るが、クレバーな選択を押して尚、我を通すことは決して悪い事ではあるまい。
 数十秒の猶予を作る形で、それは間違いなく『成果』を生み出したのは事実なのだから。

 ……この状況に、焦りを覚えたのはリベリスタでも競走馬でもなく、エリューションである。
 好き勝手に走り回ることすら封じられた。蹴りつけてやろうかと思えば背後には絶対に回りこまない。これに知性があるとは考え難いが、確かに自らが窮地に陥っていることだけは、認識していたのである。
 ゆえに、ひゅうと鳴った馬の吸気に気づいたとらの動きが僅かに鈍ったとしても、指弾する道理はない。
 大きく、弾かれるように吐き出されたいななきが戦場を劈いて、何名かのリベリスタが硬直する。これを機にとばかりに、強引に前進しようとするエリューションだったが……そこまで、世間一般はやさしくはなかった。
「駄馬がフェロモンまき散らしてるだけでも迷惑なのに何調子に乗ってるんですか。大人しく転がってくださいよ」
 いななきを半ばで断ち切ったのは、モニカの放った砲弾である。頭部を過たず穿ったそれは、エリューションを大きく仰け反らせ、一瞬ながらその頭部を消し飛ばす。
 思念体でなければ一撃必殺と相成ったろうが、そうでなくともその威力は異常だ。
 反して、リベリスタ側のダメージ被害は決して大きくない。先んじて、計都が展開した守護結界が十分に作用した結果でもある。僅かな差だが、大きな結果だ。
「モニカはそのまま畳み掛けて頂戴。私はサポートに回ります」
「大丈夫ですよ、躾がなってないようですのでわかるまで頭を吹き飛ばしますから。お嬢様は盛った馬を止めて下さい」
 即座に計都とジークリンデへ癒やしを向けた彩花が雷牙を構え、攻めに踏み込むより早く、モニカの砲弾が二発目を弾きだす。
「再生するなら動きは止めないとどうしようもないな」
(気持ちは分からないでもないけど、夜倉兄も否定的だったから仕方無いよなあ。走らせただけよしとしないと)
 那雪、そしてとらの気糸が再生しかかった頭部を締め上げ、胴に及んで動きを止める。先程より明らかに覇気が衰えているとみえるそれは止めるに容易だったが、僅かな呼気が悲壮感を顕にする。

 競走馬達が身勝手に動き回っている、といっても所詮は一般生物の範疇に過ぎない。ユーヌの影人が数を増し、誘導に足る数を揃えた以上は必要とされるのは方向性だ。
「動きを止めるのは中々難しいな? 言うほど価値もない駄馬だからか、それとも勢いが余っている優良馬だからかは知らないが」
「そう言うなユーヌ、この馬はなかなかどうしてイケメンだ」
 戦局がリベリスタ側に傾いている以上、無理に戦場に戻る必要は実のところ、必要性が薄い。
 影人で動きを抑えるとしても、荒ぶっていてはどうしようもない。馬の一頭に軽く触れ、五月は小さく笑みを浮かべた。余裕があるのだろう、その動きに焦りはない。
 対照的に、誘導に携わりつつ表情が硬いのはジークリンデだ。義務感が前面に出ているが為か、表情ががちがちになっているのは仕方ないというところか。
 この辺りは最早経験の差であり、埋めることはそう難しいものではないだろう。何れこの依頼の異常性に頭を抱える彼女がいたとして、まあそれはそれである。

 彩花の拳を覆う象牙色の得物が、一際強く光を放つ。
 都合二人の行動封じに動きを縛り上げられたエリューションの背面へ、叩きつけるように連続して拳が跳ねる。交差する軌道を放ったそれが大きく爆光を放つのに合わせ、少年が路上へと弾き飛ばされた。
 ともすれば危険な状況に一同が色めき立つが、僅かに彼を覆うヴェールのようなものは未だ崩れ落ちておらず、保護されていることを確認させた。
 言葉にしようがない疲労を伴いながらリベリスタ達は残された競走馬の沈静化に当たらねばならない。
 尤も、フェロモンが立ち消えただけで大人しくなるわけではないのだから、そこは計都の『説得』と彩花の手習い程度の乗馬技術、モニカのどこか手慣れた手綱さばきによって何とかなったりしたのであった。


「君さ、時計とかのが似合うと思うよ。頭良さそうだし☆」
 結界が消滅していく中、五月が『馬が大きな音でビックリした』という形で簡潔にごまかしたところで、とらが先ず口を開いた。
「君なら服は素材に拘ってシンプルに、丈を半端にするとちょっと小技が利く感じ。店のディスプレイも参考にするといいよ。
 どうしても巻きたいなら、革かな。シルバーはペンダントトップみたいにワンポイント程度に抑えた方が、ハード過ぎなくて取っ付き易いよ」
「え、シルバーは派手すぎるんですか……その、どうしようこれ……」
「どうせだから……こういう、シンプルなブレスのほうが使いまわしもいいのよ……?」
 こくこくと、自分に言い聞かせるように頷く那雪と、大仰に頷くとらの二人を交互に見やり、少年も納得したようにしきりにメモをとっていた。いつの間に。
 ちなみに、さり気なくシルバーギャグは那雪の渡したリングと引き換えに外されていました。素晴らしい業前である。
「シル、バー? 綺麗だな」
 ファッションについては余り詳しくない五月がしげしげとそれを眺め、彼から見えないように幻想纏いへと収納する。

 感謝の言葉をひとつふたつ告げた少年は、新しく手に入れた腕輪と、幾ばくかの知識を手に少女の元へと駆けていく。
 こころなしか顔が上気している二人が衣料品の専門店街へと足を向けたのを見て、取り敢えずこういう解決もアリか、ということになったりしたわけだが……

 数分後、那雪の幻想纏いより。複数名込みの会話。

「リア充さんのお手伝いしたのよ!」
『……はぁ』
「うむ。ふたりとも幸せそうに買い物に出かけたぞ。馬も怪我はないぞ。良かったな」
『左様ですか』
「幸せな結末で良かったな? 一番見たかったんだろう?」

『……畜生、もげりゃいいのに』

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 彼女が居るならコーディネートしてもらえばいいじゃないですか、ねえ。