●狂気の男に見初められた少女 赤いランドセルを背中に背負った3人の少女達。小学校3年生と彼女達の名札には書かれている。この少女達は同じクラスのようだ。 「うん、それじゃ、また明日ね!」 少女のうちの1人が他の2人に手を振って別の道へと歩いていく。 そして、1人で歩き始めた少女を見つめる狂気の瞳。 「くくく……!」 そいつはにやりと微笑む。ぶつぶつと呟く男は瞳を輝かせ、少女の姿を追っていた。ボブカットの髪、くりっとした瞳、清楚な白い服に赤いスカート。 男はこの数日、何度もこの少女の尾行を行っている。確実に少女をこの手にすべく、少女の通学路を確認して対策を練っていたのだ。 彼……高堂・敏広は、リベリスタ達の手によって、一度は手にした『嫁』を取り逃がしていた。その上で高堂は拉致監禁の疑いで指名手配をされている。しかしながら、彼はフィクサードとして警察の追跡を免れ、こうして新たなる『嫁』を探していたのだ。 「くく、これなら明日にでも……」 人気のない路地。ここならば、目立つことなく少女を我が物とできるだろう。高堂は再び、この上なく至福に満ちた笑みを浮かべたのだった……。 ●新たなる誘拐事件を防ぐ為 「皆様の力をお借りしたいのです。よろしいでしょうか?」 『ラ・ル・カーナより流れる風』フェスターレ・アルウォン(nBNE000258)は、アークに詰めていたリベリスタ達へと声をかける。彼女の言葉に耳を傾ける者の姿を確認したフェスターレは、依頼の説明を始めた。 「以前、少女の誘拐をした男性がいましたわ。その時、私もリベリスタの皆様と一緒に付き添いまして、誘拐された少女を保護したのですが……」 残念ながら、その誘拐犯……高堂・敏広はその場から逃走、その行方は知れていなかったのだが、万華鏡が彼の引き起こす新たな事件を予見したのだ。彼は新たなる『嫁』を求め、目に付けた少女をその手中へと収めようと画策している。 「狙われる少女の名前は、伊東・佳里菜さん。小学校3年生でボブカットの少女ですわね。下校中、友人達と別れた直後を高堂に狙われるようですわ」 また、敵は万全を期している。前回、リベリスタに邪魔された際、配下にしていたフィクサードを自分の元へと来させられなかったことを悔いていたようだ。今回、失敗がないようにと、フェーズ1のノーフェイス3体を配下として周辺に潜ませているようだ。 誘拐現場となる場所は、住宅の密集する路地。買い物をする主婦の姿をたまに見かけるが、それ以外、下校時刻にはさほど人の行き来がない為に、高堂はこの場所を選んでいる。 高堂達はとにかく佳里菜の誘拐を最優先にして動き、この場からの撤収を図るようだ。 「高堂をここで逃がしてしまうと、また別の少女誘拐を企てると思いますわ。それを阻止する為にも、ここで高堂を取り押さえましょう。皆様、ご協力くださいませ」 フェスターレは丁寧に、リベリスタ達へと頭を下げるのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:なちゅい | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年09月24日(火)23:00 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●少女の保護を! 今日も静かな住宅街。 少女達の楽しそうな声が響く。3人の小学生女子が、クラスの話題、アニメの話題、そして、たわいない話で盛り上がりながら、家路につく。 その近辺では、少女を守るべく集まったリベリスタ達がタイミングを見計らっている。保護すべき対象は、その少女のうちの1人、ボブカットの少女、伊東・佳里菜だ。 スーツ着用の『ヤク中サキュバス』アリシア・ミスティ・リターナ(BNE004031)。一見OLの風貌をした彼女は、買い物袋を持って周囲を警戒している最中で少女達を発見した。まだ年端もいかぬ少女達を目にして、彼女は今回の犯人について思う。 (父性愛としては認めなくもないが、歪みすぎてないか?) 成熟する前の個体を愛したとしても生産的でない。そもそも弱い者を虐げる存在を許していては、私のような……。アリシアはそこで我に返り、アクセス・ファンタズムを使って仲間達へと連絡を取る。 さて、リベリスタ達は、佳里菜を追うはずのフィクサード、高堂・敏広の姿を探す。彼は佳里菜をつけているに違いないのだ。今のところ、その姿は確認できないが。 「そのロリコン、前にホントに少女誘拐してるんだろ? 懲りてもいないし悪いことの意識もないようだな」 悪態づく『輝く蜜色の毛並』虎 牙緑(BNE002333)の言葉に、『小さき梟』ステラ・ムゲット(BNE004112) が頷く。前回の依頼にも参加していた彼女は、少女を監禁していた高堂の姿を垣間見ているのだ。 「懲りないな、本当に。冗談抜きで『死ぬまで治らない病気』なのか」 会話しながらも、ノーフェイスの襲撃に対処できるようステラは集中力を高める。 近場で隠れていた『ピジョンブラッド』ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963) は、その会話を聞いていた。こういうクズが神秘を得るとロクな事ないよねと、彼は呆れている。 「彼が行動を起こす前に、女の子は絶対助けるよ。フェスターレさん、頑張ろうね」 「……はい、よろしくお願いいたしますわ」 ロアンの呼びかけに、『ラ・ル・カーナより流れる風』フェスターレ・アルウォン(nBNE000258)は丁寧に返す。 丁度その時、佳里菜が手を振って2人の少女と別れる。1人、歩き出した少女に、歩み寄る人影があった。 「?」 少女、佳里菜は知らない人影の接近に、きょとんとして振り返った。 声を佳里菜へとかけたのは、ロアンだ。彼がさわやかに微笑むと、佳里菜はにっこりと微笑み返す。 「ちょっと怖い人達が居るね。ここは危ないから、僕についておいで」 ロアンが視線を走らせると、物陰で怪しい動きをする者がいた。その様子を苦々しい顔で見つめる男。間違いなく高堂だ。 「おにいさん、そこで何をしているの? かくれんぼ?」 見た目は小学校高学年ほどのハーフの少女、『しのぶれど』蓮城 燁子(BNE004681) が高堂を見つめる。顔を見られたと思った高堂。自身が指名手配されているのは彼もよく知っている。だからこそ、この機を逃すわけにはいかないと感じた彼は、物陰から飛び出して一直線に佳里菜へと駆け寄る! そこで、同じく飛び出してきた男が高堂にぶつかった。 「おい、どこに目をつけてるんだ」 ぶつかった牙緑は、高堂を捕まえて因縁を吹っかける。 さらに、前髪を軽く切りそろえた黒髪ロング、薄水色のシャツに紺色のプリーツスカートという、一見小学生のような容姿の少女が高堂へと歩み寄り、高堂の服をつかむ。 「ごめんなさい、助けて、道に迷ったの……」 その少女、実は『氷の仮面』青島 沙希(BNE004419) が変装したものであった。敵に思考を読み取られる可能性も考えた沙希は、小学生っぽい思考を行うよう務める。 沙希の容姿に少しだけ心が揺らぐ高堂。だが、敵の狙いはあくまでも佳里菜のようだ。 「……お前ら、俺の嫁を捕まえろ」 高堂の出す合図で、周囲に控えていたノーフェイス達が、少女を捕まえるべく現れる。 牙緑は、ノーフェイスの出現を警戒してアクセス・ファンタズムを取り出すが、連絡の必要はなさそうだ。その前に現れた、『荊棘鋼鉄』三島・五月(BNE002662) と『永遠の隠しボス』灰森 佳乃(BNE004526) 、そして、ステラの3人はいつ飛び出してもいいように、万全の体勢で構えていたのである。 OLに変装していたアリシアも同じく、ノーフェイスの前へと立ち塞がる。彼女は先ほど止めた思考を、再び頭に巡らせた。弱い者を虐げる存在を許していては、自分のような存在が生まれかねないと。 「結論、ロリコン死すべし」 「そうですね。ロリコン死すべし」 アリシアはノーフェイス達に向けて光弾を発射した。五月もそれに同意する。 五月は配下達へと迫り、その1人へと掌打を食らわせた。注意を向けさせる為の一撃だったが、ノーフェイス達が自分達へとロープを振り回してきたことを確認し、五月はうまくいったとかすかに笑う。 本来、少女を捕まえるべくしてノーフェイスが持つロープ。怪我を押してこの依頼に臨んでいる佳乃がその軌道を見つつ思う。 (怪我人ですが、いずれ世界を支配する者がその程度で泣き言を言ってられませんよね) 佳乃は毒針を手にして、ノーフェイスの押さえへと入っていく。 ロアンを追おうとした1体のノーフェイス。しかし、ステラがすかさず気糸で敵の体を絡めとろうとした。その糸が足へと引っかかったノーフェイスは、思わず倒れこみそうになる。 「皆、後お願い!」 佳里菜を抱えるロアンは、仲間達へと一言呼びかけてから、壁を駆けていく。さすがに、ノーフェイス達は壁を走る彼を追うことができない。 「く……」 高堂は自らが嫁と呼ぶ少女を連れ去られ、悔しそうに呻いたのだった。 ●敵の足止めを! 遠ざかる佳里菜の姿を、高堂は悔しそうに見やる。その眼前では、牙緑ががっちりと高堂をブロックしていた。 「キモチワルイおっさんより、あっちの王子さまがいいってさ。そりゃそうだよな」 少し吹き出す牙緑は、全身の闘気を自身の持つ巨大な剣へと込めていき、高堂へと叩き込む! 大剣をもろに食らった高堂は吹っ飛ばされ、壁へと激突する。彼はよろめきながら立ち上がり、歯軋りしながら邪魔するリベリスタ達を睨み付けた。 そこで目に付いた燁子の姿。高堂は彼女へと狙いを定めて、襲い掛かる。彼はあくまで少女へと狙いを定め、この場を突破する気のようだ。漆黒の光の右手へと集めて燁子へ放つ。 ただ、燁子も考えなしに高堂の前へといるわけではない。黒い光を受けながらも、燁子は不敵に微笑んだ。わたし、きっと貴方のお母様より年上だわ、と。 「何だと……、ぐっ」 驚く高堂に、彼女の放つ光が浴びせかけられた。そして、燁子は高堂に一言告げる。 「人生の大先輩に対して、こんな無礼はあんまりじゃなくて?」 その近くでは、高堂が呼び寄せたノーフェイス達がロープを振り回してこちらの足止めをしようとする。 「最近転校してきたの、ここ、よく判らない……」 ランドセルまで背負った沙希は、自身の前にいるノーフェイスの気を引こうと、呼びかけてみていた。 ノーフェイスは構わず彼女へと攻撃を繰り出そうとするが、その目に光るものを認めて少しうろたえる。 その躊躇する敵に、銃弾が撃ち込まれる。見ると、アリシアが構えた銃から煙を吹かせていた。 向かい側のノーフェイスは、ステラが動きを止めるべく、気糸を発し続ける。 (縛られるのは好きじゃない。このまま動きを止められれば良いが) 糸に絡みつかれながらも、力技で動こうとするノーフェイス。そいつらは必死にこの場を突破しようとしている。その姿に、ステラは少しだけ気圧されてしまう。 「やはり、私では『足止め』すら……」 しかしながら、ノーフェイスをブロックしているのは、ステラだけではない。フェスターレがそのカバーへと回っていたのだ。 「微力ながら、私もお力添えをいたしますわ」 彼女の発する光に焼かれ、高堂の配下は苦しみの声を上げる。叫びながらもロープを振り回して、こちらの身動きを止めようと躍起になっていた。 もう1人のノーフェイスは、五月と佳乃が押さえつけている。 佳乃が敵の隙を見て毒針を突き刺す中、五月は飛んでくるロープに注意を払っていたが、一瞬の不意をつかれてしまう。彼は蹴撃でかまいたちを作り出し、ノーフェイスの体を切り裂く。 「欲望任せで幼い女の子に手を出すとか、情状酌量の余地なく判決死刑ってところでしょう」 五月のその言葉は、高堂へと向けられていたが、まずは目の前の敵を足止めせねばならない。佳里菜が安全だという知らせが入るまでは、それに徹するという手はずとなっている。だが、それさえ終われば。 着信音の鳴る、アリシアのアクセス・ファンタズム。彼女は二言、三言、通話相手と話した後、皆へと告げた。 「ロアンから、彼女の安全を確保したとの知らせだ」 それを聞いた五月は、表情を変えることなく敵に向けて言い放つ。 「そんなわけで今から死刑です」 ロープから抜け出した五月は敵へと近づき、掌打と共に気を流し込む。内臓を破壊されたノーフェイスは口から血を吐き出していた。 その頃、佳里菜を彼女の自宅近辺まで連れてきていたロアン。 「ありがとう、またね!」 「ああ、気をつけてね」 佳里菜が見えなくなるまで手を振っていた彼は、急いで戦場へと戻っていった。 ●さあ、全力で相手を! 敵の足止めを行うリベリスタ達に対し、高堂とその配下達は邪なる欲望をむき出しにして全力でその力を行使する。ノーフェイスの手にするロープは時折、リベリスタの身を拘束し、荒ぶるままに高堂は闇のオーラを放つ。 ただ、リベリスタ達は守るべき者は守りきった。それならば。 「それじゃ、こちらも手加減なしでいくぜ!」 足止めから、敵の撃破へ。牙緑が全身から吹き出したオーラを電気へと変換させる。そして、全身に電気を纏った状態で、高堂へと体当たりを繰り出す。 体に痺れるような電撃を走らせた高堂は、ぶつぶつとなにやら呟き始めた。闇のオーラを全身から生み出した彼は、それらを武具へと姿を変える。 しかし、それを黙って見ているリベリスタ達ではない。 「私も怖い思いさせられたんだもの、遠慮なく殺らせて頂くわ」 後ろへと下がっていた燁子は、高堂に今こそ攻撃の一手をと、魔力の矢を飛ばす。それは高堂の右腕を穿った。 さらに、ノーフェイスを相手にしていたアリシアだったが、高堂が自身を強化したのを見て、高堂へと銃弾を放つ。その体を貫通した一発は、高堂の闇の武具を全て取り払ってしまう。 「く、また邪魔を……!」 高堂は怒りで目を赤く光らせ、リベリスタ達を凝視した。 交戦は続く。現状は1体の敵に対してリベリスタ2人での戦い。単体での力で勝る高堂達だが、その動きに統制は全く取れてはいない。チームワークで分のあるリベリスタ達は、徐々に敵を推していく。 佳乃の突き刺す毒針から、ノーフェイスへと毒が流れ込む。あからさまに顔色を変えた敵へ、五月は再度近寄る。そして、繰り出す掌打と流れ込む気が、ついにその体を完全に破壊した。ノーフェイスは目から光を失い、道路へと倒れこむ。 配下の数が減り、リベリスタ達は優勢になっていく。ステラの相手するノーフェイスも、ロープを振り回す手の動きが鈍り出していた。 しかし、ステラもまた、そのロープの拘束に体力を奪われていた。フェスターレはそれを見て、詠唱を始める。 「かの者に、大いなる慈悲を……」 その詠唱が終わると、ささやかな癒しの風がステラへと吹き付ける。力を貰った彼女は、ノーフェイスを仲間へと任せ、今度は高堂の足止めをすべく、気糸に力を込めていく。 敵の気を引いていた沙希も、ロアンの知らせを受けて戦いに加わっていた。彼女の放つ光が味方全体を包み込む。ノーフェイスロープに縛られていたアリシアは光に力を貰い、縛り付けられたロープから自力で抜け出した。後衛で危機にさらされていた燁子も、体力を持ち直したようだ。 体力を回復させたリベリスタ達。完全に押され始めた配下達が怯み始める。アリシアは、そのノーフェイスの動きを見逃さず、光り輝く銃弾を撃ち放つ。それを胸へと受けた配下は一瞬で絶命し、地面へと果てていく。 「く……」 配下がいてなお、推される状況。ステラの伸ばす気糸を避けた高堂は、意地でもこの場から逃げ出すことを考えていた。 そこへ現れた人影が、高堂へと死の烙印を刻み付ける。 「これはメルティ、そして君はギルティだ。子供を怖い目に遭わせて……懺悔しなよ?」 現れたロアンが、口元に笑みを浮かべて高堂へと言い放った。 ●ロリコンは死すべし 残る敵はは高堂のみ。逃げに転じようとする彼だが、一行は逃がさぬよう攻撃していく。 高堂は闇をオーラをリベリスタ達へと飛ばした。その一撃は決して軽くはない。燁子が清らかなる存在に呼びかけて癒しの風を起こし、仲間達の傷を癒す。 とはいえ、ロアンが戻ったことで、リベリスタ一行は俄然有利になっていた。残っていたノーフェイスもすでに虫の息だ。そして、五月の掛け声とともに、もう1体のノーフェイスの体が内部破壊を起こし、その死体が地面へと転がる。 リベリスタ達に押さえつけられていた高堂は、少しリベリスタとの距離を取ろうとする。それを許さぬと、一行は彼へと詰め寄った。 「く、くく……」 前回は部下が間に合わず、嫁を取り逃がした。だから、部下さえいれば。高堂はそう思っていた。しかし、天は我に伴侶すら与えないかと、高堂は苦笑いする。 ただ、彼はそれを受け入れるつもりは毛頭ない。 「俺は、諦めんぞ……!」 高堂は無茶苦茶にオーラを放ち出した。そして、この場を切り抜けようと、彼はリベリスタ達から背を向けて駆け出す。 「ギロチン代わりということで、その首切り飛ばしてあげます」 彼の後ろで、五月が空を蹴る。巻き起こるかまいたちが逃げる高堂を捉え、その身を深く切りつけた。血飛沫が道路へと舞う。 さらに、高堂へと呪いの弾が撃ち込まれた。弾丸を撃ちぬいたアリシアにとっては心臓狙いの一撃だったが、わずかに逸れて右胸へとヒットする。 「私はテロ屋だからな。こういうやり方しかわからない」 アリシアは過去、生き地獄を見てきていた。その体験は、彼女にとってはトラウマとも言える。ここで高堂を逃がせば、また佳里菜は狙われ、自分と同じような地獄を見るやもしれない。 そんな世界をぶっ壊せるなら。 「いくらでも殺してやる」 再度、彼女は銃を高堂へと突きつける。 「くく……、だまれ……!」 高堂の手から放たれる漆黒の光が、沙希と佳乃の体を貫通した。佳乃はそのままがっくりと地面に倒れてしまい、動こうとはしない。 かろうじて踏みとどまった沙希は、再び高堂を見据えて死の刻印を刻み込む。そこから発生した毒素は、高堂の体を蝕み始めた。 フェスターレは慌てて、傷つく仲間達の傷を癒すべく、福音を響かせる。体力を少しだけ持ち直したリベリスタ達は一息つく間もなく、高堂を追い詰めていく。 「酸素の無駄遣いは今日までだ、悔い改めなよ! 地獄でね」 高堂を追いかけたロアンが彼の背中へと刻み込んださらなる刻印は、まるで、高堂に死を約束しているかのようだ。 「次こそ……俺の、嫁を……!」 しかし、それに抗うように、高堂は逃げ出そうとする。 この男は、この世の中の危険のうちのたった1つかもしれない。自分がやっていることは、大海の水をくみ上げることで災厄の雨を減らそうとするとの同義かもしれない、それでも。 (この世の危険を僅かばかりでも減らせれば) ステラは極細の気糸を伸ばすと、糸は高堂の左足を貫通する。微々たる痛みだが、今の高堂にはそんなことはどうでもよかった。ここから逃げて、新たな嫁を。 そんな彼の前へ、牙緑が立ち塞がる。彼は自身の全ての力を大剣へと篭めていく。 「オマエが二度と嫁探しできないように、その喉笛喰いちぎってやるよ!」 牙緑は刀身から荒れ狂う闘気を放つ大剣をを高堂へと叩きつける! 「ぐおおおぉぉぉぉっ!」 住宅街へと響く低い叫び声。高堂は奇怪に顔を歪ませて、ゆっくりと地面に果てていく。 事切れる高堂。誘拐事件に端を発した事件は、今ここに幕を下ろしたのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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