●報告と会話の要約。 「特性を持たせるというのは上手く行けば効果的ですが、それを活かせない戦いとなる事が殆んどです」 「相手が一定以上の知性を持っていれば、その可能性は極めて高くなります」 「また、運営する上でもそれぞれの個体に高い知性を持たせなければ優位に戦いを進める事は難しいでしょう」 「長所を持たせるよりは欠点をできるだけ無くした方が、戦闘だけでなく運用面でも便利……というのが結論のように思います」 「個々の能力に関しては追加装備等で変更できるようにするのが無難なようです」 「まだデータの収集は必要ですが、方向性は見えてきたと言えるでしょう」 ●E・ゴーレム、出現 「E・ゴーレムの集団が現れました」 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう言いながら、スクリーンに画像を表示させた。 飛行機とヘリを組み合わせたような外見のE・ゴーレム1種と、人間に似たフォルムを持つE・ゴーレム2種。 出現場所と思われる地図の隣に、3種のゴーレムの映像が表れる。 もっとも人型の方は、人間と比べると腕の部分がやや大型で長め……少々前傾になれば両腕が足元まで届くような形状となっていた。 人間というよりは手も使える四足動物、ゴリラなどに近いといえるかも知れない。 そういえばパワードスーツをゴリラに例えたSF小説もあっただろうか? こちらは中に人などいない、自動で動くゴーレムではあるが。 「人型は2種類いますが、武器や装備が異なるだけで基本は同じ個体のようです」 マルガレーテがそう言うと、幾人かのリベリスタたちが難しそうな顔をして見せた。 知性が高く自分で武装するE・ゴーレムが絶対にいないという訳では無いが、ある程度似た個体が複数存在し、しかも装備によって2種に分かれているとなれば、偶然発生したという可能性は極めて低いと言える。 もちろん絶対にありえないとは言えないが…… 「とにかく、このE・ゴーレムたちの排除が今回の目的となります」 マルガレーテの言葉にリベリスタたちは気持ちを切り替えた。 今は発生原因の究明よりも優先すべき事があるのだ。 「二足歩行型のゴーレムは全部で8機です」 表示されていたゴーレム画像の一方、人型2種が拡大されるのを確認すると、フォーチュナの少女は説明を開始する。 人型ゴーレムの内訳は、片方の腕と肩に小型の銃器を装備し動きを阻害しないような装甲を持つ動きの機敏なE・ゴーレムが4機と、全身に防御用の重装甲を施し両腕と両腰部に射撃武器を装備したE・ゴーレムが4機の計8機となる。 「動きの機敏な方……仮に軽装機動型としますが、こちらの武装は射撃用の小火器のみとなります」 とにかく機動力を重視した機体のようで、動き回る際には空いている方の腕も利用して急な方向転換や姿勢の変更等も行ってくる。 機動性が高いだけでなく、回避能力にも優れているようだ。 また、射撃の方も精度が高い。 「攻撃力そのものは高いという程ではありませんが、連射してくる可能性もありますので警戒してください」 対して武装と装甲を充実させた重装型とでも呼ぶべき個体の方は、必要最小限の移動しか行わないようだ。 「まとめて範囲攻撃を受けないように、その上である程度攻撃を集中させられるように移動する以外は無理に動こうとせず、攻撃に専念するという戦い方をするみたいです」 重い装甲は物理と神秘双方への高い防御力に加えて、耐久力そのものも向上させているようだ。 動きそのものは遅いが、精密な動作は可能なようで射撃の命中性能も決して低くは無い。 それでも命中し難ければ、時間を費やし照準を定めて攻撃を行うようである。 「回避能力の方は、ほとんど無いに等しい……という感じのようです。そちらを犠牲にして他の能力を高めているみたいですね」 攻撃の方は神秘系の能力を強化した自動小銃と、掃射と連射が可能な中型の機銃。 そして着弾点の周囲に炎を撒き散らす小型榴弾砲の3種類。 「両種共にホーリーメイガスやマグメイガスのスキルを使用する敵をある程度優先して攻撃を行うようです。あと、飛行型が残っている間は攻撃を集中させるようにしてきますので、注意して下さい」 全機の胴体にアンテナ状の部位が存在するが、もしかしたらそこから情報等を得ているのかも知れない。 「飛行型の方ですが、こちらは1機のみでフェーズは2……あ、二足歩行型の方も全てフェーズは2のようです」 飛行型ゴーレムは人型ゴーレム達の上空30m程度の高さに位置しているだけで、自分から攻撃は行ってこないようである。 「一応遠距離攻撃が可能な機銃らしき物を装備していますが、射程に入ってきた敵への迎撃のみに留めるようです」 射程外から攻撃を受けた場合は退避行動的な動きはするものの、ゴーレム達のいる戦場の上空にできるだけ留まろうとするようだ。 「地上のゴーレムが全て破壊されるとこの機体も壊れるので、無理に狙う必要は無いのかも知れませんが……この機体が存在していると、二足歩行型の攻撃精度や回避の能力が僅かですが向上するみたいなんです。おそらく何らかのサポートを行っているのだと思います」 そういってマルガレーテは表情を曇らせた。 「耐久力や装甲はそれほど高くはありませんが……その分という事なのか、機動力は優れています。地上からの超遠距離攻撃なら命中は比較的容易だと思いますが、同じように飛行した状態となると当てるだけでも難しいかも知れません」 できるだけ急いで倒し敵の戦闘力を少しでも弱めるか、無視して攻撃を仕掛けるか? もっとも、飛行や超遠距離等の手段が無ければ必然的に後者を選ぶことになる。 戦場一帯は障害物も起伏もほとんど存在しない、背の低い雑草が生えるだけの平坦な地形である。 地形を利用して……というのは難しいだろう。 「幸いというべきか、近くに住宅や農地等はありませんので一般人が迷い込むような事はありません」 周囲は気にせず、戦闘に専念して下さい。 そう言って説明を終えると、フォーチュナの少女は集まったリベリスタ達を見回した。 「どうかお気をつけて。ご武運、お祈りしております」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:メロス | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年09月26日(木)22:18 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●不審なE・ゴーレム 「万華鏡と報告書の幾つかを見るに、どうも以前にあったらしいEゴーレム事件との関連性が見える気がします」 『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)の言葉を耳に入れながら、ジークリンデ・グートシュタイン(BNE004698)は確認しておいた過去の事件を思い返した。 (過去にアークが交戦した類似の敵に関しては……) 「親衛隊との接触があった6月頃のものが近いか」 (若干前、12月頃にも類似の事件、と……これは恐山も絡んでいたのか) 断定する気はないが、無関係とも言い切れない幾つかの事件。 「装備の違う同様のゴーレムが多数ですか、人為的くさい相手ですね」 無事倒し終わったら少し調べてみますかと口にする『History of a New HAREM』雪白 桐(BNE000185)に賛同を示すように、ジークリンデは言葉を発した。 「戦闘を疎かにするつもりはないけど、これは調査の必要はありそうね」 「事を首尾良く治めたなら、以前の物との比較の為にも、かの残留物は持ち帰った方が良さそうですね」 二人に同意するようにアラストールも頷いてみせる。 勿論、その前に為すべき事を忘れてはいない。 「無理はしないでくださいね?」 桐は初任務の二人にそう声をかけた。 「戦うんです、か? 私、そういうの苦手です、怖いです」 (だって敵が私のこと殺そうとしに来るんですよ。いじめに来るだけでも怖いのに……) 泣きたいというよりは、もう涙ぐみながら……『被虐思考』フェリシー・フールドラン(BNE004701)は、少し前……これまでの自分自身の事について振り返ってみた。 『君みたいな革醒者でも受け入れられて楽しくやれる仕事があるよ』 そう言われたのだ。 (細かい説明とかよくわからないから来てみたら……) よりによって、という気持ちは当然ある。 それでも……引き受けてしまったのだ。 「お仕事は、大切です」 滲む何かを、振るえる膝を止めるように、自分に言い聞かすように呟いて。 「とりあえず、敵をやっつければいいんですよね?」 彼女は視線を彼方へ向けた。 その先には彼女たちが戦うことになるE・ゴーレムたちの小集団の姿がある。 「バリエーションが2種類……飛んでるの入れても3種類。ちょっと物足りないわね、できれば4種類ぐらい欲しいところね。狙撃型とか回復型とか」 (とは言ったものの、実際に出てきたらちょっと困るけど) 幾度か実戦経験のある、神谷 小鶴(BNE004625)は対照的に落ち着いていた。 ゲームやアニメ等のロボットものをよく見たり遊んだりしていると、ついそんなこと考てしまう。 もっとも、これがゲームや遊びではない事は充分に自覚している。 これは実戦……この世界の真実、現実なのだ。 ●リベリスタ達 「耳が痛いな」 フォーチュナから確認した情報と情景を思い出しながら、『クオンタムデーモン』鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018)は呟いた。 『長所を持たせるよりは欠点をできるだけ無くした方が、戦闘だけでなく運用面でも便利……というのが結論のように思います』 アークのリベリスタと全く正反対の結論といえる。 そして間違った意見とは言えない。 あるいはその方が、汎用性という点で優れているかもしれない。 「反論があるとすれば二点」 リベリスタ達の内には、欠点を補って余りあるほどに尖った個性がもうゴロゴロと存在してしているという事。 そして今回の行為は……戦闘ではなく、一方的な退治、駆除、制圧、鎮圧、迫害、殲滅、掃滅であるということ。 (ともあれクライアントの命令は何も変わらない) 官憲たるアークの当然の責務として。 「限られた能力とままならぬ知性で、対象の異分子を排除します」 互いに遮る物の無い戦場でE・ゴーレムたちもリベリスタたちを発見し、動き始める。 「僕もロボだぞ負けないぞ」 (僕には血の通った肉と動く脳味噌があるからね) いざ勝負! 『いとうさん』伊藤 サン(BNE004012)も覚悟を胸に、ド鉄拳を構えながら前進を開始した。 「異世界からようこそ、か? それとも、誰かお前達を作った奴が居るのか……まぁ、良いさ」 (答える気は無いだろうから) 呟きながら『停滞者』桜庭 劫(BNE004636)が肩に剣を乗せる。 まだ被害らしい被害は出ていないようだが、このまま放置は出来ない。 (何時までもこの世界に居られたら、何れは厄介な事に為る事には違いないだろうからな……) 「力づくでも、ボトムから出て行って貰う」 (一般人が此処に来ない事が救いだったな……) そんな事を思いながら、少年は仲間たち共にゴーレムへと駆け始めた。 「最初から遠慮は無しだ。此処で壊れて貰う!」 ●「……交戦、開始」 (ああ、日本語で言うのはまだ違和感があるな) 仕方のないことねと思いながら、ジークリンデは言葉を発した。 リベリスタとE・ゴーレム。 両集団はそれぞれの陣形を整えるようにして距離を詰める。 劫、アラストール、桐たちは前衛となるべく位置を取り、小鶴は全員に翼の加護を施しながら僅かに身体を浮上させた。 足場は悪くないが、飛んでいるほうがいろいろと動きやすいと考えての事である。 「私は回復範囲から出てしまうかもしれませんので無理して回復範囲にいれようとしなくていいですからね?」 一言伝えながら前進すると、桐は全身に纏った闘気を破壊の戦気へと昇華させた。 「――来たれ、我が根源の形」 アラストールも前進してくるゴーレムたちを阻むようにと位置を取りながら、英霊へと呼びかけ加護の力を白鋼の甲冑へと変質させ身に纏う。 劫も高速戦闘へと適化させるべく身体のギアを一瞬で切り替えた。 そして……あばたと伊藤の銃撃を合図にするようにして戦いが開始される。 「さー往くぞー」 (初っ端だもの、派手にやらなきゃ締まんない) 折角やるならド熱血に。 出来るだけ多くの敵を射程内に収められるように位置を取ると、伊藤は機械化された腕部の銃口から業炎と化したエネルギー弾を発射した。 一方、あばたはゴーレムの胴体に付属しているアンテナらしき物体へと狙いを定める。 「そんなにこれ見よがしに生えていれば、取り外したくもなります」 呟きつつ両手の二丁、シュレーディンガーとマクスウェルを高速で操ると、彼女は精確な銃撃で重装型のE・ゴーレムたちを狙い撃った。 まずは敵戦力を減らす事。 その為には、より攻撃を当てられる重装型を狙うのが確実である。 (重装型は攻撃が痛いしね) 重装型を常に射程に収められるように位置を調整しながら、彼女は消耗を厭わず精確な連続射撃で攻撃を続けてゆく。 (さて、私が取り得る戦術はあまり多くない) ジークリンデは構えを取ったまま、敵の動きを観察した。 指揮と索敵を兼ねた個体が上空に留まり、地上に白兵戦機体を配備している。 (理にかなった配置ではあるが、砲台型の防御面への考慮が足りなすぎる) その部分を突いて『重装型から潰す』というのが今回の基本戦術である。 「だからこそ敵の軽装型を自由にさせるのは都合が悪いわね」 (もとより私の戦力は打撃面では微々たるもの) 「であれば『1枚の壁』としてカウントするのが最適ね」 軽装の機動型1機の前に立ち塞がると、ジークリンデはブロードソードを振りかぶり、膂力を爆発させた。 フェリシーの方はというと、詠唱によって魔方陣を展開しながら重装型の1体を標的に定める。 (他の皆さんも攻撃しているものを狙えば、早く倒せて敵の数を減らせるでしょうか?) 「狙って……撃ちますっ!」 彼女は造り出した魔力弾をそのまま、E・ゴーレムに向けて解き放った。 対するゴーレムたちはその攻撃と行動を分析し、すぐに反撃を開始する。 数機は窺うようにリベリスタたちを攻撃し、そして数機は……ホーリーメイガスとマグメイガスの能力を使用した者たち、小鶴とフェリシーを狙うように行動を開始した。 ●ぶつかり合いと、駆け引き 「やめてください! 私のこといじめないで!」 今度は本当に泣きべそをかきながら、フェリシーはE・ゴーレムたちの猛攻に身を固くした。 幸いというべきか、彼女を狙えたゴーレムたちの数は少ない。 後衛たちを攻撃させぬようにと複数の前衛が敵の前進を阻むべく前進していた為である。 もっとも、相手も遠距離攻撃が可能というのもあって全てを防ぐのは難しかった。 「先ずは数から減らしていく……剣の錆になりたい奴から掛かって来い!」 劫は複数の幻影を展開しながら切っ先の存在しない両手剣を振るい、高速の斬撃を対峙するゴーレムへと繰り出してゆく。 あばたと伊藤が射撃で一度に複数を狙っている事もあって、攻撃を重複させる事は容易だった。 直撃を受けた重装型が判断力を乱し、付近の味方を巻き込むようにして機関銃を掃射する。 それに重ねるようにして、伊藤が業炎弾で戦場を薙ぎ払った。 小鶴とフェリシーの様子に気を配りながら、倒れず戦い続ける事を第一に考える。 (痛いの嫌だし、倒れるとかカッコ悪いし、足引っ張りたくないし) 頑張りたいし。 距離を詰めて格闘戦へ向かう前に。 伊藤もまた消耗を厭わず、魔力を両腕の銃身に注ぎ込む。 とはいえゴーレムたちも怯む様子は微塵も無かった。 直撃を受けた重装型は炎に包まれはしたものの、軽装型たちは直撃を回避し、あるいは完全に攻撃を回避しながら機敏に動き回り、小鶴やフェリシーを狙えるようにと移動する。 そのゴーレムたちの射線や動線……移動経路を妨害するようにジークリンデは動き、後衛の2人を狙い難い状況を作りだす事に成功していた。 (要は仲間が重装型を潰す間、私が持ちこたえられればいいわ) そう割り切って、彼女はほぼ妨害に専念するような形で行動していたのである。 その間に、他の前衛たちは重装型へと攻撃や牽制を行い続ける。 アラストールも挑発によって出来るだけ多くの敵を自身へと引き付けた。 「敵の攻勢は引き受ける! 存分に戦われよ!」 仲間たちへと呼びかけつつ、クロスイージスの騎士は初任務の2人の様子に特に気を配る。 初めての任務となれば、緊張等で本来持っている力を上手く発揮できないこともあるかもしれない。 逆に気を使わせないように、アラストールはさり気なく2人の様子を覗った。 ゴーレムたちの攻撃は集中すれば強力ではあったが、それでもアラストールを打ち倒せるほどではない。 しっかりと守りを固めつつ攻撃の一部を反射する事で寧ろゴーレム達にダメージを与えながら、アラストールは前衛の一角を維持し続ける。 同じく前衛でやや突出していた桐は、敵が範囲攻撃に巻き込まれないように散開しているのを確認すると、ゴーレム達の陣形の端へと移動した。 鋭さより重みで切り潰す巨大剣へと力を集中させ、重装型のE・ゴーレムへと叩き付ける。 直撃を受けたゴーレムは鈍い音を響かせながら隣を移動していた重装型の近くへと吹き飛ばされた。 敵を纏め、味方が範囲攻撃を行い易いように。 そう考えての攻撃ではあるものの、その威力は充分に重装型を傷付けるだけの破壊力を持っている。 撒き散らされる榴弾の炎を纏う戦気で弾きながら、桐は巨大な金属塊を揮い続ける。 それら前線の戦況を確認しながら、あばたはゴーレムたちへと銃撃を浴びせ続けた。 前衛が崩されそうな場合や誰かに攻撃が集中している場合は妨害をと考えてはいたものの、今のところはその様子は無い。 あばたは攻撃を狙いやすい胴体などへと変更すると、ダメージを蓄積させる事に専念し銃撃を続行した。 ●そして、決着へ 周囲の魔力を取り込んだ小鶴も、癒しの符によってフェリシーを回復させつつ、前衛たち……主にジークリンデの負傷に注意し、ダメージが蓄積する前にと癒しの福音を響かせていた。 前進はせず常に後衛に、ただ出来る限り全員に回復が届くようにと意識する。 その前方でジークリンデは防御に専念して攻撃を耐えたりしながら、戦線を支えていた。 敵に打撃武器持ちが居ないということは、裏を返せば射線さえ潰せばいい。 少なくとも自分と向かい合っている1機が後衛を攻撃する事は阻止できる。 位置によっては他の機体の妨害も可能だ。 無理はせず、自分に出来る事を冷静に判断し、ジークリンデは戦いに貢献し続ける。 「こっち来ないでください! 私のこと殺す気でしょう!」 一方で彼女と同じく初任務のフェリシーの方はというと、興奮した様子で叫びながら魔方陣を展開し攻撃を行っていた。 もっとも、仲間を巻き込まないようにという意識は常に持っている。 (だって仲間を誤爆しちゃって仲間の数が減ったら危険ですから) フェリシー自身はそう思っているものの……元々彼女の内には、攻撃が当てられないほうが知り合いを傷つけるより全然いいという想いが存在しているようだった。 ……もしかしたらそんな優しさが、誰かを傷付けるより自身が傷付くことを無意識に選択してきたのかも知れない。 感情的になりながらも意外なほど的確に、フェリシーは召喚した魔の炎をE・ゴーレムたちの近くで炸裂させた。 ゴーレム達は気に留めぬ様子で攻撃を続けるものの、その攻撃は最初の頃と比べると統制が乱れ始めている感じがある。 リベリスタ達が行っていた攻撃による混乱や吹き飛ばし、牽制や足止め等が、徐々に効果を発揮しつつあったのだ。 それでも、損傷は大きいものの全機がいまだ稼働しており火力は健在だった。 軽装型の狙撃で負傷していたフェリシーの近くで重装型の放った榴弾が炸裂する。 痛みに途切れそうになる意識を運命の加護で繋ぎ止め、フェリシーはそのまま詠唱を続行した。 そんな彼女を庇うように、射撃から格闘に移っていた伊藤がいったん後退する。 (女の子を護るのは男の子の役割さ) 総合的な攻撃力は下がりはしたものの、これによって後衛たちが狙われる可能性は更に減少した。 そしてついに……重装型の1機が銃撃を浴びて稼働を停止する。 戦果という点で考えれば1機のみではあったが、それが2機となるのにそれほど時間は掛からなかった。 広範囲攻撃や混乱による同士討ち等によって、他のゴーレムたちにもダメージが蓄積されていたのである。 アラストールに攻撃の一部を反射されダメージを蓄積させた機体もある。 戦闘はそのまま重装型が数を減らしてゆくという流れになった。 後衛への攻撃を防ぎ、ゴーレム達の総合火力が減少していくという状況で、リベリスタ達が形勢を覆される可能性は……ほとんど無い。 (グワアアア超いてぇええ! 森羅行森羅行!) 後衛を狙って放たれる攻撃を堪えつつ。 「うん、こんなの全然痛くないよ」 可愛い子の前では、カッコツケマンで居たいから。 泣きそうなフェリシーに向かって、伊藤は笑顔を作ってみせた。 直後、劫の斬撃を受けて最後の重装型が破壊される。 それを見た伊藤は小鶴とフェリシーを狙い難いようにと射線を塞ぐことを第一に考えつつ、斬風脚を用いての軽装狙いへと行動をシフトした。 「何が何でも当ててやるともさ」 充分に狙いを定めて鋭い蹴りでカマイタチを発生させる。 アラストールも祈りの剣に破邪の輝きを宿すと攻撃に転じた。 軽装型の1機へと接敵し、正面から小細工抜きの、真っ直ぐな斬撃をゴーレムへと繰り出してゆく。 あばたの銃撃が機敏に動く軽装型を精確に捉え、損傷を受けていた1機が動きを止めた。 「これが今の俺に出来る可能な限りの一撃だ、少しは痛いだろう?」 そう言いながら劫が更に動きを加速させ、1体に集中しての連続攻撃を仕掛けてゆく。 直撃を受けた1機が機能を停止させ、別の機体が青年へと銃撃を浴びせるが…… (そう易々とは当たらない) 「──俺には、記憶と経験がある。俺じゃない別の誰かのな」 劫は誰に言うでもなく呟いた。 (そいつが言ってるんだ、この程度では俺の『覚悟』は揺らがない、ってな) 「当然、俺も負けてやる気は一切ない……!」 続いた伊藤やフェリシーらの狙いを付けた攻撃が機体を掠め……もう1機も機能を停止させる。 最後の1機は渾身の力を篭めた桐の斬撃を受け、原型を留めぬほどに破壊され…… 0対8という戦果を以て、地上の戦いは決着を迎えた。 ●考察と可能性 最後のゴーレムに注意して桐が皆に声を掛ける。 飛行していた1機が墜落することで、全てのゴーレムは破壊された。 その残骸にリベリスタ達は慎重に近付く。 「これ、本当にE・ゴーレムなの?」 小鶴が感じていた疑問を口にした。 彼女が確認しただけでも、過去の報告書で似たような存在が確認されているのだ。 「このロボ誰かが造ったのかな?」 同意するように呟きながら、伊藤は周囲を警戒した。 少なくとも、見える範囲には誰も存在しない……が。 「元になったのはプラモデルか何かでしょうか? 産廃を捨てるには確かに良さそうな場所ですが」 あばたが可能性を示唆するように呟いた。 「何か判るかしら」 記号等が無いかと残骸を確認しながら、ジークリンデが呟く。 調べてもらえれば、何かが判明するかもしれない。 僅かに残っている残骸を回収し終えると、リベリスタたちは帰途に就く。 戦いの終わった草原を眺めながら……うーっと呻くと。 「平和一番だよぅ」 伊藤はそれだけ呟いて、仲間たちを追うように身を翻した。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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