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ぼくときみのなつのおわり



 小さな蝶を追い掛けて、森を駆けて。小さな段差を飛び越えて。とと、躓くところだった。危ない危ない。
 上げる目線。その瞬間、ぶわりと強い風が吹き抜ける。咄嗟に瞑る目。なんなんだ、と開くと、其処には。
 ――何処までも突き抜けるような、蒼い空。自然と零れる“わあ”という感嘆に、僕は感動しているのだと自覚する。
 知らない世界。此処は何処なんだろう。不安と興味が闘って、勝利したのは、大きな大きな好奇心。
「ねえ“親友”、見えるかい。すごいとこに僕達きたんだ!!」
 煌々と光る『君』に、いくぞ。なんて掛け声を掛けてから、ぼくは駆け出した。
 草原を抜けて、色濃い世界を冒険して。帰り道なんて、忘れてしまった。


「……小さな頃って、何でも出来る気がして何も迷わないよね」
 集まる皆に、遠い目でぽつりと呟く『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)。
 君も未だ、等というツッコミを華麗に流すと、イヴはいつもの様に資料を配布し、話し始める。
「少年の外見をしたアザーバイドの出現が確認されたわ。皆にはこの送還をお願いしたいの」
 いつものボコってお帰りパターンですかねえ、との声。何処か嬉しそうに少女は左右に顔を振って。
「今回は、このアザーバイドと遊んで遊んで、遊び疲れたらお見送りをしてあげて欲しいの」
 何時からアークは御守りの仕事なんて始めたんだ―、なんて文句にぴしり、と指を立てて。
「神秘秘匿は立派なお仕事の一つだよ、きちんと報告もすること」
(少なくとも見た目は)年が近いとあってか、何やら食い付きが強い。仕方ないか、と肩を竦めて。
 何はともあれ、ゆっくりまったり遊ぶお仕事。たまにはいいか、とリベリスタは一つ伸びをしてから、部屋を後にした。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ぐれん  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年09月19日(木)23:41
 残暑が幾らか後引くものの、もう夏も終わりですね。
 どうも、ぐれんと申します。

 今回は楽しくまったり余暇を楽しむ依頼。
 是非、一緒にあそんでいってあげて下さい。

◆成功条件
 アザーバイド『少年』の送還、ゲートの閉鎖

◆舞台
 田舎の畦道。近くには大きな川と林があります。
 真夏の暑さと日差しが照りつける時間帯での活動となりますので、
 熱中症対策も多少なりともあれば良いかもしれません。
『少年』が来訪したゲートは林の出口、大きく目立つ木の付近にあります。
 予め『万華鏡』で出現地点は明確ですので、探し回る必要はありません。
 
◆エネミーデータ
 アザーバイド『少年』×1
 
 小学生の少年に似た体躯のアザーバイド。
 フェイトを得ていませんが、無害ですので、満足して帰って貰う事が依頼の中心となります。
 髪色は銀。目の色は燃える様な赤。右の手の甲に大きな鉱石状の緑色の突起物有。
 その他の外見は特に人間と相違ありません。
 身体能力はずば抜けて高く、容易く人間を殺めてしまう程。自覚もありません。
 見た目に相応しく“じゃれ合い”での叩く、蹴るを好みますが、革醒者に対してもそれなりの威力が有ります。
 身体能力以外は普通の子供と特に変わりません。感情表現に富み、単純で、素直です。
 身体を動かす事と、水遊びが大好きです。
『少年』というのは外見から一括りにされる分類であるため、個体の名前ではありません。

 右手の甲の石を『親友』と呼び慕い、大切に思っています。
 向こうの世界では、独りぼっちなのかも知れません。
 
 ・『親友』
『少年』の右手の甲の鉱石。透き通った緑色をしています。
『少年』の言葉に呼応する様に光るが、特に音や言葉を発する訳ではありません。

 以上となります。
 皆さまのプレイング、お待ちしています。
 
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
マグメイガス
シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)
ホーリーメイガス
エルヴィン・ガーネット(BNE002792)
ホーリーメイガス
雪待 辜月(BNE003382)
マグメイガス
シェリー・D・モーガン(BNE003862)
プロアデプト
一条 佐里(BNE004113)
ホーリーメイガス
海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)
ナイトクリーク
浅葱 琥珀(BNE004276)


「今日は……オレは仕事なんざしねーっ!!」
 ――開口一番、現場へと向かうリベリスタの列を先導する『一人焼肉マスター』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)は天を割る意気で空高く叫んだ。
 一年中仕事は有るんだ。こんな時くらいオレは遊ぶぜえ、と伊達眼鏡を輝かせ竜一は駆け出した。
「私たちに、誰かさんを止める仕事が増えなければ良いけれど」
 何をやらかすか解らないから、と溜め息を漏らしたのは『揺蕩う想い』シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)。
 忙しく駆け回る竜一を視界に収めつ、彼女は髪を揺らす風に秋を感じていた。夏ももう終わりね、と零して過ぎ行く鳥を目で追いかける。その視界の端、ふと気付いて。
「……神裂さん?」
 シュスタイナが首を傾げ掛けた声に、それまで何処か哀しげに空を見上げていた『ヴァルプルギスナハト』海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)はびくっ、と肩を震わせ向き直って。
「わ、ワタシは寧ろ見せ付けてあげるのも有りだと思うわ」
 大丈夫。と否定するや否や、色香溢れる豊満な身体を反って見せてセクシーポーズ。少し遊んであげてもいいじゃない、なんて軽率な事を並べて見せた。シュスタイナと隣を歩む『銀の腕』一条 佐里(BNE004113)が納得のいかない表情を見せれば、ふふんと鼻を鳴らし食指を立てて云う。
「もしもの時は、神秘の有効活用をしましょう。神秘界隈の“討伐”には私たちの力が必要ですもの」
“厄介なエリューション共”を倒すのに、ちょこっと力を出しても良いでしょう。なんてフラグめいた事を言いながら、林の傍の脇道を指差して。
「そんなことよりほら……、あそこ」
 海依音が示す先には、太陽を見上げる小さな背中があった。


「こんにちは、来訪者さん達。――俺はエルヴィン。君は?」
 新たな世界を堪能する『少年』を迎えたのは、『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)の屈託のない笑顔だった。
 かちゃり、と掛けたグラサンを額までずらして見せれば、妹想いの優しい兄貴が覗いて。
「ぼ、僕は……」
 えぇと。言いかけた処で言葉が詰まる。――僕には名前が無いんだ。
 如何かしたかい、と目線を合わせる様に屈むエルヴィン。『少年』は目線をぷいと避けてしまう。が。
「よく来たな少年、言葉は解るか?」
 幾らか演技めいた声掛けをしてみせたのは、『大魔道』シェリー・D・モーガン(BNE003862)。来訪者の薄い反応にむう、と幾らか考えた末に雪待 辜月(BNE003382)をちらりと見遣る。
 ああ、と合点のいった様子の辜月は、マスターテレパスを用い少年へ『言語』を『情報』へ変換し直接送信する。
 直感で理解するそれは届いたのか。顔を左右に振って否定を紡ぐ少年の前に辜月は歩み寄り、私が喋りますからね。と胸に手を当て再度言葉を届ける。
(こんにちは。良かったら一緒に遊びませんか)
“此奴、脳内に直接……!”なんてやり取りは無く少年はおお、と楽しげに反応を見せる。言語を用いない会話が新鮮なのだろう。
「でもね僕、ひとりぼっちなんだ」
 返るのは一言。口元に浮かべた笑顔は寂しさの裏返しか。そんな少年の頭に、ぽふりと帽子が被せられて。
「それならほら、俺達が居たらぼっちじゃないだろ?」
 不思議そうに見上げる視線の先。声の主は『薔薇の花弁を射止めし者』浅葱 琥珀(BNE004276)。うん、と元気よく頷く姿に笑顔を向けて、緩く手を引き歩み始めた。


 ――未だ太陽は高い。皆は日陰で『少年』が幾らか慣れる様にと、談笑に耽ることに。
 勿論、来訪者と交信が困難な場合は想定済み。その中でも異彩を放つのは、何の苦労もなく少年と会話を始めるエルヴィンの姿だった。――全ての言語の源とも言われる『バベルの塔』。その全ての階層の言葉を扱う彼に、言葉の壁は些細なモノだった。
「……そうか、名前が」
「向こうの世界じゃ必要ないものなのかも」
 幾らか打ち解けたか。名前の有無を答える少年に、どうしたもんか、と考える一同の中で佐里が突如ぱんっ、と手を叩いた。
「それじゃ、あだ名を付けちゃいましょうっ!」
 アザーバイド、識別名『少年』をそのままの呼び方なんてナンセンスでしょう、と眼鏡をくいと上げて語る佐里。彼女曰く、男女どちらでも行けそうな名前が良い、とのこと。
 なんでさ、と噛み付く竜一に、“見た目が男の子でも、生物学上の男性かなんてわかりませんもの”とさらりと返してみせて。
「ああ、そんなの直接見て確かめてみれば――否、なんでもなかった!!」
 わきわきと両の手の指を動かし少年に迫る竜一であったが、シュスタイナの“何をしでかすおつもりかしら”的な笑顔に止められる。こほん、佐里は一度咳払いをしてから少年の前へと歩を進めて。
「ユーリ、なんてどうかしら。割と呼びやすいのを選んでみたつもりなんだけど」
「ユーリ!」
 即決。満足そうな笑顔と共に『少年』のあだ名は『ユーリ』と決まったのだった。
「ではユーリ、少しだけ話を聞いて貰ってもいいかの?」
 ユーリに優しく笑い掛け隣に座したシェリーは、少しだけ『大魔道』の大人びた表情を覗かせた。
 それから、少々真面目な話を。『少年』が――否、ユーリがこの世界にとってどんな存在なのかを。そして、時間が限られていることも。
「決して長い時間ではないだろうが、妾たちも時間が許す限り共に遊ぼう」
 けれどそれが終われば、お別れ。
 それでも良いか、と訊くシェリーに、素直に頷くユーリ。幾らか切ない雰囲気に包まれるリベリスタとは反対に、此れから待つ遊びの方が楽しみな様子で。
「よーし、そうと決まれば遊ばないと、だろっ!」
 一つトーンを上げた声で立ち上がったのは琥珀。さあこい、と駆け出したのは砂利の畦道。反射的に少年はその後を追い掛ける。――もの凄い速度で。
「わっと……よしユーリ、悔しかったら捕まえてみろ!」
 背後から轟、と迫る小さな影をするりと避けて言う。やんちゃ盛りなユーリが、この馬鹿正直な挑発に乗らない筈はなかった。
「その通りだな、どうせなら遊べるだけ遊ばないと、だ」
 すくっと立ち上がるリベリスタ一同。何やら準備している傍らで、琥珀とユーリの戦闘は激化していた。突き出す拳を脚を、簡単にするりと受けて、流して。
 そろそろ負けて遣るか、なんて琥珀が考えていると、ユーリは諦めた様子で目を輝かせる。すげえ、お兄さんマジすげえ。なんて遣り取りの最中、横から辜月の声が掛かった。
「お二人さん、鬼ごっこでもやりましょうか、なんて」
 此方の世界の遊戯。簡易なルール説明は、何とも便利なマスターテレパス。映像を脳内に直接届けて、少年は理解した様子。
「よーい、どんっ!」
 駆け出す皆を祝福する様に、高く高く太陽は輝いていた。


「ハッハー、捕まえてみよ鬼共よ!」
 切り落とされた鬼ごっこの火蓋。早速木の根元へ追い詰められた竜一であったが、そこは抜かりなく。
 木登りはお茶の子さいさいよぉ、との得意気な煽りと共に木の上へ。捕まらぬためなら手段を選ばない。まさに鬼。
 ちい、と竜一を諦める鬼の視界を掠めて、小さな身体が疾駆する。
「森のコロボックルと呼ばれた妾に、ついてこれるかのぉ!」
 その正体はシェリー。落ち着いた口調でありながら、今日のこの場は尋常じゃなく燥いでいる様子。
「ま、待って下さいよー……」
 頑張ってシェリーに追いつかんと駆け出す辜月に、その妖精は任せた。エルヴィンは親指を立て見送る。
 標的を決めかねる最中、視界の端で涼しげに走る佐里の姿をハケーン。これならいける。と唐突に思う。妖精でも鬼でもないし。
「さぁいくぜユーリ、挟み撃ちだっ!」
 強く地を蹴り一挙に加速。リベリスタの身体能力は常人を遥かに脱しており、鬼ごっこでもそれを発揮。
 左右に展開すると、ユーリの超加速に加え、逃げ道を塞ぐ様に迫る。殺った!
「そう簡単に捕まりませんよーっと♪」
 文字通りタッチの差。ギリギリまで引きつけてから佐里は“残像を残す程の”加速を以て少年の脇を抜け、回避。そして。
「痛ーっ!」
 ごちん。左右から挟み撃ちにする作戦は惜しくも失敗に終わり、論理戦闘者の前で敗北を帰す。そして額が痛い。

「風邪、引いても知らないわよ……っと」
 いつしか鬼ごっこに飽きたのか、水鉄砲を持ち出し遊び始める一同を眺めながら、シュスタイナは一人ご飯の用意を始めていた。
 どすん、と重々しいな音を立て運んで来たのは、9人分のご飯を入れた箱に、全員が座れるように大型のレジャーシート。
 曰く“リベリスタですもの、大した事はない”との事だが、結構な労力を要しただろう。
 手頃な日陰を見つけたのか、ひとまず休憩、と切り株に腰を掛ける。
「シュスカ君は、行かないでいいのかしら?」
 掛けられた声に振り返ると、海依音は水遊びから外れ木蔭に避難してきていた。
「ううん、私は……」
 答えを待つ視線に、答えを濁すその手を海依音は構わず緩く掴んで。
「ほら、何のために水着を着てきたのかしらん?」
 言われる儘に視線を落とすと、その身は確り少し大人な黒いシャツに黒水着。否定出来ない儘、あれよあれよと川岸に。
 ほら、と水鉄砲を渡されると、参加しない訳にもいかず。シュスたぁーん、なんて叫ぶロリコンの顔に思いきり一射を加えてやる。
「へぶっ、さぁさぁ、メインディッシュのご登場だぁ!!」
「さぁユーリ、女の子を狙え。集中砲火ぁー!」
 海依音達をを迎えにいく様に佐里とシェリーが歩み寄れば、そこは女性陣が全員一か所に集まったということ。
 竜一とエルヴィンの声を筆頭に、男性陣は一挙に火力を集中。彼女らの服を濡らしにかかる。
 女性陣から上がる声に、急に琥珀は悪人オーラを身に纏って。
「好きな子に悪戯したい、なんてああいう心理にすっごく似てると思うぜ!」
 狙え狙え、と言われる儘に少しだけサディスティックな遊びに耽る少年の視界の先は、いつしか楽園が出来ていた。
 女性陣は皆服のの下に水着姿。濡れて張り付くそれは、アダルティックななんとやら。
 海依音に至ってはシスター服の布が身体全体のラインを醸し出し、それはもう更に凄い事になっていた。
「もうほら、皆見てるのに……!」
 私なら透けないから。と前に出たのは竜一曰く今日のメインディッシュ、シュスタイナ嬢。
 黒いシャツもお構いなしに水を被れば、色はなくとも確りと華奢な身体の形が露わになる。
「こいつぁ……」
 きゃあ、なんて声も幾らかスパイスとなって。ほほう、と堪能モードに入る男性陣と、その隣であわわと顔を染めるユーリと“遣りすぎですよ”と慌てる辜月と。そして。
「――成敗、するわよ」
 このロリコン共、との呟きと共にシュスタイナは魔力を集中。魔陣を展開するや否や、増幅する魔力をそのままに練り上げる黒の葬送曲。
 え、ちょ。と言い訳を紡ぐ間もなく、割と本気の黒鎖の奔流が一挙に放たれ、悪ふざけの過ぎた三人を飲み込まんと迫る。
「シュスたん、あんまりだっはぁあん!」
「んな、直接攻撃はんぎゃぁあーっ!」
「我らの業界ではご褒美ですーっ!」
 様々に断末魔を残し、竜一、エルヴィン、琥珀は空高々と打ち上げられたのだった。
「見ておきなさいユーリ、あれが断罪の一撃というものよ」
 急に真面目な態度で声を掛ける海依音シスター。貴女が言うと説得力が尋常ではない。けれど。
「えっと……そもそもの切っ掛けって」
 冷静に突っ込まんと声を掛ける佐里であったが、その甲斐虚しく上がる音と飛沫で掻き消えてしまった。

「ぇと、気を付けて下さいね?」
 先程空中遊泳から帰還した男子三人は、眉尻を困ったように下げた辜月に治療を受けていた。
 癒す側に入る筈だったエルヴィンも、結局煽りに煽って吹き飛ばされる始末。正座のまま治療を受け元気を取り戻したところで、シュスタイナは仕方ないか、の表情で一言。
「……反省したなら、ご飯にするわよ」
「「「うおおーっ!」」」
 元気な返事と共に、女子陣が広げたレジャーシートの上に全力ダイブ。
 ずっしりとした重箱がその中心に置かれると、待ち切れず左右に揺れる少年と竜一。宝箱を開けてみれば、食べ易く形の整ったおにぎりにおかずの数々、特に肉!
 ぱん、と皆で手を合わせてから、この時の為に腕を振るったシュスタイナに向けて、声を揃えて。
「いっただっきまーっす!」
 沢山暴れた後は、沢山御腹が減るもの。子供時代を思い出す様にあれが美味いこれが美味いと口々に騒ぎご飯を頬張り始める。
「ぬはは、足りぬ……足りぬぞぉ!」
 満足気に口元にお米を乗っけたままシェリーは『怪人大喰らい』宜しくがつがつと次々とおむすびを片付けて。
 食事は戦争じゃぞ、なんてキリリと決める彼女を無理はいけませんよぉ、と止める辜月にむすり。納得のいかぬ表情を浮かべるが、不意に立ち上がる琥珀にふと視線は移って。
「さてさて皆様、御注目ー!」
 じゃじゃーん、と取り出したのは、旧き良き瓶ラムネ。ぷしゅりと景気良く栓を開ければ“おぉ!”と上がる声にデモンストレーションは完璧。
 僕も、と真似て開けたユーリのラムネは、見事にぶしゅうと炭酸が暴発。うわぁと悲鳴混じりに爆笑してみせて。すっかりこの世を満喫している様子で。
「さぁ見ろユーリ、我が国の宝玉は此処に有り!!」
 きらり、輝く宝玉(※ビー玉)を瓶から取り出し掲げて上げて。竜一がドヤァと見せるキメ顔。
 さぁ遣ろう。と差し出される玉を確りと懐へと収めると、土産にすると良いぜと微笑む琥珀に親指立ててグッジョブサイン。
「はいはい、此方には西瓜ですよーっ」
「塩、掛ける派の人はいるかしら?」
 ビー玉で騒ぐ男性陣を置いて、佐里と海依音は冷やした西瓜を川から揚げて。
 料理に理のある幾人かが手早く西瓜を切り分ければ、緑の皮から紅色の実が覗く。補色の意外な組み合わせに、初めは驚いた者も居ただろう。
 少年もその一人。塩をぱらりと振りかけてから、勇気を出して一かじり。うめえ、と自然に出る“此方の言葉”に、皆は顔を見合わせふふ、と笑う。
 それから第二次西瓜大戦争が始まる皆を眺め、海依音が漏らしたのは以外にもふうと浅い、溜め息。
「……少し、懐かしいわね」
 収穫の秋の前は、いつもこうして誰かと騒いで、遠く染まる夕焼けを“未だ終わらないで”と呪ったものだ。
 細めた眸のその奥には、何処か優しい切なさが宿っていた。


 いつしか、川原は西日に染まっていた。誰からでもなく、自然と始まる後片付け。
「――ぼちぼち、かな」
「うん」
 ぽふり、大きな手をユーリの頭に乗せてエルヴィンは呟く。頷いた少年も、夕陽に視線を投げたまま。
 最初のぞろぞろに少年を加えた9人は、ゆっくりと林の入口へと向かう。『万華鏡』で予め解っている、さよならする場所へ。
 皆それぞれに挨拶を告げてから、次々に抱擁を軽く交わして。
「……名前、嬉しかった」
 むす、と幾らか膨れたまま御礼を言うのは、名前をくれた佐里の前。少し年上のお姉さんに耐性が無いのは小さな男児の定めか。けれど、一緒に遊んで同じ釜の飯を食った仲。
 すごく楽しかったですよ、と素直に告げる佐里に引っ張られる様に、軽くハグをしてから、次へ。
「最初話掛けてくれた時ね、本当は少し怖かったんだ」
 はぐ、とくっついた儘エルヴィンにそっと告げる事実。ショックの電撃が走るが、続けて。
「けど、今は大好き」
 エルヴィンにしか届かない“その言語”で言葉にしながらにひ。と笑う。抱き締める腕に強く強く力を込めて。
 嗚呼、俺もな。と頭をぐしゃりと乱されてから、隣へ。
「――私達の事、覚えていてくれる?」
 合わせる目線。気恥ずかしそうに先に口を開いたのは、シュスタイナ。幾つも浮かんだ言葉から大切に選んだ一つを、告げて。
 こんな時、どんな事を言えば良いかなんて解らなかった。皆器用に話しているのに、なんて考えているとユーリは何やらごそごそと。
「これ」
 たったの二文字。差し出したのは先程の昼食タイムの宝玉の一つ。
 9つあるビー玉のうち、皆青いのに、当たりかハズレか一つだけ緑だったものだ。それを無理矢理にシュスタイナの掌に押し込んでから、告げる。
「ご飯もね、すっごい美味しかった。絶対忘れないから」
 うん、と静かに返す彼女とハグを交わして、最後の一人。
「……えろ魔人」
 御挨拶ね。と悪戯な笑顔と共に、えろ魔人こと海依音はぎゅう、とユーリの頭を豊満な胸へ押し付けてみる。
 うぎゃーっ、と唸る身体を抱き締めた儘、少しだけ寂しげな声で、静かに。
「またね。これがお友達とのお別れの言葉なの」
 ん、と顔を上げようとする少年をがっちりとホールドしたまま、続けて。
「また、いつかもう一度会えるための約束のおまじないよ」
 最後まで言ってから、やっと解放してやる。海依音がするりと手を離すと、その時が来た事がなんとなく伝わって。
 少年はぐるりと、時間を掛けて皆の顔を焼き付ける様に見回してから。
「またね」
 大きく手を振り、門の奥へ姿を消す少年を見送って、ありがとうと追い掛ける様に紡いだ佐里は、その大穴に手を振れてから、一つ息を吸って。
「いきますよー、せーのっ」
 
 ぱきんっ
 
 ――帰り道。過ぎる風はもうすっかり涼しくて、耳を澄ませばりり、と虫の声。
 夏の終わりが終わりを告げて、巡り巡って次の季節。実りの秋は、もうすぐそこだ。



■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 
 御参加、ありがとうございました。ぐれんです。
 
 夏の終わりの不思議な出会い。楽しんで頂けたでしょうか。
 以上の様になりました。
 覚悟完了☆してる方や、良い感じに討伐されて下さった方もいて、終始楽しくプレイングを書くことが出来ました。
 危うく、戦闘皆無な禁断症状でどうにかなりそうだった点も、あのワンシーンで救われたものです。

 それでは、三高平でお会いしましょう。
 またの参加を、心よりお待ちしています。

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 ドロップアイテム:『びゐだま』
 カテゴリ:アクセサリ
 取得者:シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)