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シュプールの星誕祭

●悪夢の軌跡
 町外れの丘の上に今は潰れた天文館がある。そこは恋人たちの願いを叶える場所としてひそかに話題になっていた。今宵も一組のカップルが廃墟に足を運んでいる。
 溝口健二は恋人の真鍋笙子と手を繋ぎながら中を彷徨い歩く。
中は非常に薄暗くて懐中電灯だけが頼りだった。やがて目的の場所であるプラネタリウムの場所にたどり着く。天井が完全に破けてしまって本物の夜空が見えていた。
「ここがあの噂の天然のプラネタリウムか」
 健二は思わず呟いた。先ほどから鼓動が高くなっている。
 都市伝説ではこの場所で告白するとそのカップルは生涯に渡って幸せになれるという噂がまことしやかに語られていた。健二は今日プロポーズする気でいた。
 噂は単なるうわさでしかない。それでも健二はどうしても笙子と一緒になりたかった。今日が奇しくも笙子の誕生日である。なにかを期待している笙子の瞳。
 緊張しないはずがなかった。健二はポケットに手を入れて石を握りしめた。
 冷たい感触の堅い石は先ほどそこで拾ったものだった。元々展示物会場だった場所に堕ちていた少し大きめの黒い石。それは「星の石」と呼ばれるレプリカだ。
 それを恋人に手渡しながら想いを伝えると願いが叶うという。健二はタイミングを見計らいながらようやく石をポケットから取り出した。
「さっきからどうしたの? 健二君黙っちゃってさ」
「笙子聞いてくれ。俺は――」
 健二が想いを伝えようと石を差し出した時だった。
「きゃあっ!」
 石がいきなり炎を吹いて飛び上がった。まるで流れ星のようにプラネタリウムの中を駆け巡りながら辺りを焼き尽くす。突然の出来事に健二と笙子は悲鳴をあげた。
「健二君、あれを見て!」
 笙子が指差したところには巨大なサソリと蛇使いの大男が現れていた。
 それは間違いなく展示場に展示されていた像だった。それが今や動き出して健二達にむかって襲い掛かって来ていた。蛇使いの男はすぐに入り口を阻む。
「俺達は――お前らが憎い。殺してやる」
 男は口元をにやりと歪ませて間合いを詰めてきた。

●忘れられた残思
「町外れの丘の上にある今は潰れた天文館にE・ゴーレムたちが現れた。奴らは廃墟に侵入してデートしていたカップルに襲いかかろうとしている。このままでは幸せなカップルが見るも無残なことになってしまう。そうなるまでに彼らを救ってきてくれ」
 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)がアンニュイな表情で額に手を当てながら物思いにふけっていた。そして集まったリベリスタたちをまえにようやく目を開けた。
 蛇使いの男たちは幸せなカップルを襲う習性を持っていた。
 自分達を忘れた人々への怨念とこの場所で幸せそうにデートをして別れてしまったかつてのカップル達の想いの残思が積もってついにエリューションを覚醒させてしまったのかもしれない。
「E・ゴーレムになった巨大なサソリと蛇使いの像が館内の入り口を封鎖して彼らを逃げられなくしている。さらに館内に落ちている無数の星の石もまるで流れ星の弾丸のように辺りを飛び回っているから気をつけろ。それではリベリスタの幸運を星に願って」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:凸一  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年09月08日(日)23:30
こんにちは、凸一です。
都市伝説を知ってやてきた幸せなカップルが天文館で破滅の危機に陥っています。
もう二度とこのようなことが起こらないように、
E・ゴーレムを倒してきてください。

それでは、以下は詳細です。
宜しくお願いします。


●任務達成条件
E・ゴーレムの討伐&カップルの無事


●場所
人里離れた丘にある潰れた天文館。中は展示広場とプラネタリウムの跡からなっており、戦闘するには十分な広さとスペースがあるが辺りはとても暗い。足元にも瓦礫が散乱しており足元の状態もあまりよくはない。展示広場とプラネタリウムは入口のひとつで繋がっておりそこからのみ自由に両方の部屋を行き来できる。


●敵詳細/E・ゴーレム
・巨大サソリ
手の鋭利なハサミによって相手を斬り殺す。また尻尾にある毒針によって敵を突き刺し敵に致命傷を与える。壁や天井などを縦横無尽に高速で駆け回ることができる。

・蛇使いの大男
巨大な毒蛇を操って攻撃をしかけてくる。敵を一度に何人も撒きつけることが出来て、その強力な力で敵を絞め殺す。また大きな毒牙を持っており噛むことによって身体を麻痺させて致命傷を与える。男自体は遠距離からの範囲攻撃で連続的に弓矢で殲滅攻撃する。

・星の石×30/直径十センチ程の黒くて堅い石。炎を纏っており、館内を自由自在に弾丸のように飛び回っている。当たると炎に包まれて燃えあがってしまう他、魅了されて引き付けられる効果も持っている。とくに動くものに反応して襲い掛かってくる。


●その他補足
天文館には入り口→展示広場→プラネタリウムの順に侵入できる。プラネタリウムの中で健二と笙子が蛇使いの男に襲われている状況。展示広場では星の石達が飛び回り、サソリが縦横無尽に辺りを駆け巡って来るものの侵入を拒む。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
天城 櫻子(BNE000438)
スターサジタリー
天城・櫻霞(BNE000469)
マグメイガス
雲野 杏(BNE000582)
ナイトクリーク
荒苦那・まお(BNE003202)
ホーリーメイガス
雪待 辜月(BNE003382)
ミステラン
風宮 紫月(BNE003411)
★MVP
ナイトクリーク
浅葱 琥珀(BNE004276)
ソードミラージュ
桜庭 劫(BNE004636)

●幸せを約束する場所
 人里離れた丘に天文館は立っていた。壁に罅が入り窓ガラスは割れている。周りを森に囲まれた廃墟はとうの昔に生命活動を終えたように静まり返る。
 都市伝説によればこの天文館のある場所で告白すると願いが叶う。今宵も一組のカップルが中に紛れ込んでいた。
「この場所に居るE・ゴーレムは“非りあじゅ~”さんの思念なのかしら? 多方面な意味で寂しいのかもしれませんけれど……一般人に危害を加えるとか、八つ当たりは駄目ですぅ~」
 『ODD EYE LOVERS』二階堂 櫻子(BNE000438)は小首を傾げながら呟いた。ちょっと天然の入った櫻子の発言に『アウィスラパクス』天城・櫻霞(BNE000469)も苦笑する。エリューションにそんな概念があるのかわからないが、櫻子は最後に可愛く頬を膨らませて櫻霞の袖をぐいぐい引っ張る。
「恋人狙いのエリューション。最早珍しい事例でもないが二人揃ってこの手の仕事に当たるのは何回目だろうな? 今回も何時も通り対処すればいい訳だ。さて、精々哀れな面々に見せ付けてやるとしようかね」
 櫻霞は櫻子に向かってきっぱりと言った。袖を引っ張る櫻子の頭を撫でて落ち付かせる。櫻子も頷いて尻尾と猫耳をぺたんとさせた。
「昔っから良く言うだろ? 人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死んじまえってな。どうも、馬です。一切合切、手加減なんかしない」
 『停滞者』桜庭 劫(BNE004636)は冗談を言いつつも目つきはすでに険しく前方を見据えていた。恋人たちの想いが永遠にと願わずにはいれられない。かつて自身が楽団との戦いで家族を失ったような苦しい思いをさせないためにも。
「カップルさんはきっちり救って輝ける未来を全うして貰わないとなっ」
 黒いマントを着た『刹那の刻』浅葱 琥珀(BNE004276)も劫の意見に同意する。ポケットに入ったあるものを密かに握りしめた。琥珀は不敵の笑みを浮かべる。
「……ぇと、別れてしまったカップルの怨念って凄い八つ当たり見たいな。無念そうなのは判りますが、暴れさせるわけに生きませんので止めさせていただきます」
 雪待 辜月(BNE003382)は少し汗を出して困惑する。とりあえずきっちりエリューションを退治するしかないという櫻霞の意見に頷いておいた。
「恋人達が幸せを約束する場所での悲劇ですか……。まだまだ彼らは、これから先の未来を歩む権利がある。それを邪魔する権利は誰にもありません」
 和服に身を包んだ『朔ノ月』風宮 紫月(BNE003411)がきっぱりと言い放った。まだ紫月には彼氏はいない。恋人ができると自分はどうなるのだろうと思う。それは姉にもその恋人であるあの人にも打ち明けた事のない想いだ。
「蛇さんかわいいです……じゃなくて」
 『もそもぞ』荒苦那・まお(BNE003202)は違った観点からどきどきしていた。すでに扉の前にやって来ている。この向こう側にはエリューション達とそれに襲われそうになっているカップルがいる。まおは改めて気を引き締めた。
 扉に手を掛けると『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)が今にもうずうずした顔でその時を待っていた。手を広げて大きな火球を作りだす。目を閉じて集中しながら程良い頃合いまで我慢する。ようやく集中から杏が目を開ける。
「今よ!」
 杏が叫ぶのと同時にまおが勢いよく鉄の扉を開け放った。リベリスタ達が一斉に扉の中に向かって突入を開始した。

●星々の祭典
 展示広場には大小無数の星の石が飛び交っていた。火を放ちながら周りにあるものをすべて焼き尽くそうとするかのように体当たりを行う。侵入したリベリスタの気配を感じて一斉に星の光がこちらに向かってきた。
「さあ、かかってきなさいよ! アタシの業火はアナタたちにはもったいないくらいだわ。ありがたく頂戴しなさい!」
 杏は愛用のギターを取り出して勢いよく振りかぶった。火球を前方に高く振り上げるとそのままの勢いでジャンプする。
 一番高い所に差しかかかった地点で上体を海老反りにする。そして一気に反動を付けるとギターで大火球を叩きつけた。
 地獄の業火は分裂して次々に星の石を巻き込んで行く。燃え盛りながら飛び交っていた無数の石が落下していく。
「――さあ、参りましょう。さあ、フィアキィ達。あなた達の力、存分に見せて差し上げなさい!」
 続いて侵入した紫月がフィアキィを呼び寄せて火炎を作りだす。両手から放たれた火炎弾が激しく敵に炸裂した。紫月の前に一気に道ができる。
「悪いな、そっちは任せる。さっさと全滅させて合流してくれよ?」
 劫が短く紫月にお礼を述べて立ち去る。
 櫻霞や櫻子たちを含むプラネタリウム組のリベリスタが急いでその道を駆け抜ける。途中襲ってきた星の石に対して紫月は光球を放つ。
「多少強引になりますが、道は作りましょう。……一般人の保護は頼みます」
 仲間を援助しながら紫月は叫んだ。琥珀も頷いて無事に通り過ぎていく。だが、ようやく皆が向こうへ抜けたと思った瞬間、巨大なサソリが紫月を襲った。
 大きなハサミで紫月の身体を後ろから挟み込む。
「はやく放してあげてください!」
 急いでまおは巨大なサソリのいる場所に斬り込んで行った。縦横無尽に星の石とサソリを巻き込みながら切り刻んで行く。
 堪らずサソリは紫月を投げ飛ばした。壁に叩きつけられて紫月は顔をしかめる。すぐに辜月が紫月の元へ駆けよって回復を施す。
「紫月さん、しっかりしてください。今助けますから」
「ありがとうございます。雪待さん」
 助けおこされた紫月は辜月にお礼を述べて立ちあがった。
「後願の憂いなく戦えるようにするのがお仕事です」
 辜月はそう言うとすぐに後方に下がった。後ろから戦況を見据えて敵の次の攻撃に備えて警戒する。サソリは天井に上がっていた。すぐさま下にいるリベリスタに向かって急降下してくる動きを見せた。
「危ないです。みんないったん後ろに下がっていてください」
 リベリスタが避難すると同時にサソリが地面に着地してハサミで刻んだ。間一髪のところで難を逃れてほっとするのもつかの間、サソリが突進してくる。
 残った星の石を攻撃していた杏がサソリに狙われた。鞭のように尻尾をしならせた毒針が杏に突き刺してくる。苦痛に顔を歪ませるも杏は鎧で堪えて見せた。
「どこに目がけて刺しこんでるのかしら。これだからDTは嫌だわ。狙うならもっと下の穴を狙うことね。虫には意味通じないか」
 杏は尻尾をつかんで離さない。その隙にまおがサソリの背後から忍び寄って手から放たれる無数の糸で絡みとった。一気に縛り上げていく。
「サソリさんは……可愛くないです!」
 まおに動きを封じられてサソリはもがき苦しんだ。なんとか脱出しようとしてハサミで振り払おうとしてくる。杏は激しく羽ばたきながら魔力の舞う風の渦でサソリと残りの星の石を巻き込みながら避難した。
「サソリが逃げようとします。頭の方へ早く回り込んでください」
 熱感知で敵の動きを察知しながら辜月が仲間に指示を出す。
 弱ってきたサソリに紫月が立ちはだかる。後ろからはまおが回り込んで前後を挟み打ちした。これにはサソリも逃げ場がない。
 紫月は両手を翳して地獄の火炎弾を作りだして叩きつけた。顔面に攻撃を受けて横に吹っ飛ばされたサソリは壁に激突して息絶えた。
「こちらは殲滅完了です、直ぐに向かいますよ」
 すぐに紫月はもう一班に連絡する。まだ交戦中のようだった。急いで応援に駆けつけるべく展示広場に居たリベリスタは隣室へと向かった。

●醜い嫉妬
「邪魔をするな! 死にたくなければすぐにここを出て行け!」
 蛇使いの大男が現れたリベリスタ達に叫んだ。傍には壁際に追い込まれて絶望的な表情で怯えている健二と笙子の姿があった。健二はすでに足を引きずり顔面から血を流していた。逃げる際に蛇に襲われて壁に激突して出来た傷だった。はやくしなければ二人とも蛇使いの大男にやられてしまう。
 櫻霞と櫻子は急いで蛇使いの前に行った。二人で手を繋ぎながら歩み寄ると、その場で皆に見せつけるように櫻霞が櫻子の身体を奪って抱き締める。
「あっ……櫻霞様」
 予想していなかった櫻子が思わず呟いた。優しく髪を撫でてくる櫻霞の大きな手に櫻子は幸福に包まれた。次は何をされるのか胸がドキドキする。
「櫻子……目を閉じるんだ」
 櫻霞はいったん身体を離すと真剣に目を覗き込む。目を閉じた櫻霞の顔が近づいてきて櫻子は緊張と期待で尻尾が震えた。自分も覚悟を決めて目を閉じる。
「何をしてやがる! 俺の前でそんな真似はさせないぞ!」
 蛇使いは怒りを剥き出しにして櫻霞と櫻子に突進してきた。櫻霞はすぐに櫻子を再び強く抱きしめるとそのまま横に飛び込んだ。
「どうしてそこまで目の敵にされなきゃならんのやら」
 起き上がった櫻霞は不敵に笑った。さりげなく櫻子の髪を撫で上げてさらに蛇使いに向かって威嚇するように言い放った。
「妬むのも僻むのも勝手だが、一般人を巻き込むなよエリューション」
 櫻霞は銃を向けて撃ち放つ。足を撃たれて蛇使いは堪らず膝を突いた。
「貴様俺を馬鹿にしたな。絶対殺す!」
 馬鹿にされたと思いこんだ蛇使いが弓矢を構えて一斉に放つ。凄まじい勢いで放たれた矢が雨になって降り注いだ。倒れ込みながらも櫻子だけは離さない。
 櫻霞は全力で櫻子を攻撃から守る。二人が蛇使いを引き付けているうちに、琥珀と劫が一般人のカップルの元へと急いで駆けつけた。
「助けに来た。静かにしてろ」
 琥珀は短く言ってすぐに健二を後ろへ下がらせる。だが、後ろから蛇使いから離れた蛇が襲い掛かってきた。
「危ない!」
 気がついた劫が襲われた笙子を庇って身体で攻撃を受け止める。蛇に噛みつかれて劫は苦痛に顔を歪ませた。蛇に巻き付けられて強烈な力で巻き込んでくる。
 その隙に琥珀が笙子と健二を後ろの席の陰に移動させた。琥珀は着ていた黒いマントを二人に被せて敵から見えなくする。
「悪夢はすぐ終わるから。ここで耳を塞いで目を閉じてて。君は彼女の傍に居てあげてくれ。さーて恋路を邪魔した奴を蹴りにいかねーとなぁ?」
 琥珀はすぐに劫を助けに行った。魔力で作ったダイスを爆発させる。驚いて手放した劫の身体を琥珀はしっかりと受け止めた。
 ぐったりとした劫を連れて琥珀はすぐに櫻子の元へ走る。櫻子はすばやく回復の風を送り込んで劫を包み込んだ。
「痛みを癒し……その枷を外しましょう……」
 櫻子によって気力を取り戻した劫が自分の足で立ちあがった。
「これ以上余計な傷を負うわけにはいかないんでね、速攻で片をつけさせて貰う……! さっきのお返しをさせて貰うぞ」
 劫は先ほど自分を嬲り続けた蛇に斬り込んで行った。目にも止まらぬ早さで蛇を幻惑すると同時に剣で蛇の身体を切り裂いて回る。
 緑色の血が噴き出して蛇は倒れ込む。だが、その間にも櫻霞への蛇使いの大男の攻撃は苛烈さを増していた。そこへ琥珀が急いで割って入る。
「とっとと倒れてくれねーかなぁ、蛇男さん? 仕事が終わったら超可愛いお姫様が家でご飯作りながら待っててくれてるんだよ」
 琥珀はそう言ってポケットから一枚の写真を取り出して見せた。そこには長い桃色の髪に紅い瞳の豪奢なドレスを纏った美少女が写っていた。
 それは紛れもなく琥珀がフィリスから無断で拝借してきたフォトグラフ。まるでグラビアアイドルのように輝く渾身の一枚だ。
「貴様そいつはもしかして……」
「もちろん俺の愛する妻に決まっている。フィリスは俺を世界で一番愛してくれているんだ。どうだ羨ましいだろう? こんな美少女が俺のためにあんなことやこんなことまでしてくれるんだぜ」
 琥珀はジェスチャーでその行為を再現して見せる。琥珀の言うことはねつ造だった。だが、あまりにその露骨な動作に蛇使いは怒りを爆発させた。すぐに櫻霞に背を向けて琥珀に目を向ける。
 そこへ紫月から連絡が届いた。そちらに向かうという情報を得てすぐに紫月たち展示広場にいたリベリスタたちが顔を出す。
「そろそろ終わりにしましょう。……その妄執、此処で消え散りなさい」
 火炎弾を叩きこんで蛇使いを壁に激突させる。さらに杏が魔力の風を巻き込んで蛇使いをその場に釘づけにした。
「凍ってしまいなさい!」
 杏が蛇使いをその場に押しとどめている隙に劫が剣を振り上げて速攻する。鮮やかに詰め寄った劫は蛇使いの放つ矢を華麗にかわして跳躍した。
「醜い嫉妬は嫌われるぜ? そういう時は、素直に祝福してやるのが筋ってもんさ……っ!」
 劫は剣を振りかぶって叩き下ろすと弓を弾き飛ばす。さらに続けて下から斬り上がるように蛇使いの首元を切り捨てた。
「ぐああああああああっ―――――」
 蛇使いは絶叫とともに血しぶきを撒き散らしながら地面に崩れ去った。

●流れる星のシュプール
「ふむ、やっと終わったか。何時もこの調子で行けるといいんだがな」
 櫻霞はなんとか櫻子を守りきってほっと一息をついた。心配そうに見つめてくる櫻子に大丈夫だと言って聞かせる。
「あとは入口をバリケード封鎖しておくだけです。まおが最後にやっておきます」
 散乱した椅子や机を入り口に置いておけばもう中には入れない。廃墟と化した天文館は他にも危険が満ちていた。きちんと後処理をしておけばこのような悲劇に巻き込まれるカップルも少なくなる。
 エリューションを全て片付けた劫はすぐにアークに連絡した。一刻も早く現場を抑えて健二たちの怪我も見て貰わなければならない。
 もっとも二人は琥珀達が黒いマントを被せて席の方に身を寄せ合って隠れることが出来たお陰で命は無事だった。怪我の方も櫻子と辜月が回復をしたおかげで今すぐ死ぬようなことはなかった。健二と笙子は二人で抱き合って泣いた。
「お二人さん、いちゃつくならこんな所よりホテルにでも行きなさいよ」
 杏は堪らずに呟いた。それを聞いた健二と笙子が真っ赤になってしまう。杏はやれやれと言った表情でまだうぶな二人をからかって楽しんだ。
「後はさっさと撤退、出歯亀は趣味じゃない。次に蹴られるのが俺だとか、笑えないからな――」
 劫は親密な二人を尻目に先にその場を後にする。どうか二人がこれからも末長く一緒にいられることを望みながら杏の冗談に笑顔を向けて去った。
「必ずしも、その恋が実る訳ではない。けれど、それでも人は恋をするのですよ」
 紫月は思わず二人に言わずにいられなかった。自分が言えた義理ではないけれど恋と聞くとなんだか気になってしまう自分がいる。
「もしかして紫月さんは誰かに恋をしているんですか?」
 笙子に言われて紫月は戸惑ってしまう。一瞬だけあの人の笑顔が胸に過った。姉の恋人である両刀使いのあの人を前にすると複雑な想いに駆られる。
 彼氏が欲しいのだろうか――それもあの人のような? 紫月は慌てて首を横に振った。そんなはずはない。でももし一度恋をしてしまうと性格的にどこまでも思い詰めそうでまだ恋に足を踏み入れられない自分がいた。
「それより、これから上手く行くかはあなた達次第です。どうか、お幸せに」
 紫月は笑顔で言い残して先に行った劫を追い駆けた。
「やべえ、フィリスに黙って持ってきた写真、さっきの戦闘で破けちゃった。どうしよう。許してくれるかな。いやあ許してくれないだろうな……。でも、怒ったフィリスもすごく可愛いからなあ。うーん、てか俺さりげに好きだの愛してるだの超恥ずかしいぞ。頼むからこの報告書呼んでくれないようにお星さまに祈るか」
 琥珀は溜め息をついて諦めた。もうなるようにしかならない。フィリスお嬢様が寛大であることを祈るしかなかった。
 見上げた空の向こうには天然のプラネタリウムが輝いていた。開いた天井の向こうに無限に続く銀河を見ながら辜月も息を呑んだ。
「うわぁ、綺麗……」
 何億光年に渡ってこの地球に届いた光。すでに消滅した星の光もこの中には無数にあるのだろう。そう考えると永遠の儚さを思わずにはいられない。
 どうかこの世の全ての恋人たちに祝福あれ――。
 星が一瞬軌跡を描きながら夜空を横断する。
 辜月は宇宙の星たちに囲まれながらいつまでも魅入られていた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
みなさま、お疲れさまでした。

無事に恋人達を救えましたね。今回は数多い敵に攻撃を受けながらも、お互いに上手く連携をとりあって助けあえたと思います。
MVPは、中でも上手い奥の手で敵を引き付けて仲間を何度かピンチから救った貴方に。人質の救助でも上手く敵の魔の手から隠して無事に任務を達成しました。
それでは、世の中の恋人たちに幸あれ。
またの機会にお会いしましょう。