● 「忘却の石?」 「はい。ラ・ル・カーナには不思議なものがあるのです」 「無くなっちゃったのかしら?」 「はい。今……アークにはその石が一つも無いのです。あるとリベリスタさん達が喜びますよ」 「補充すればいいじゃない」 「まあ……そう簡単でも無いのです。まずラ・ル・カーナに行って……」 「働かざる者……なんとやらなの? じゃあ!」 ――マリア、ラ・ル・カーナに行く!! ● ということで、大体『クレイジーマリア』マリア・ベルーシュ(nBNE000608)のせい。甘やかす『未来日記』牧野 杏理(nBNE000211)も杏理だが。 「でも、ただ探すのじゃつまらないわ」 「は……はぁ、何かするのですか?」 「うん! あのね、多く石を採取した方が勝ちなのよ」 「つまり、チーム戦ですか?」 「うん!! 妨害有りの!!」 「え、妨害有りなんですか……? でも怪我をしない範囲で、ですよ?」 「うん!!! じゃあちょっと其処ら辺でリベリスタ捕まえてくるわ」 「い……いってらっしゃいませ……」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年09月07日(土)23:52 |
||
|
||||
|
||||
|
● 競争する事でお互いの石の採掘する力を増幅させる――なんだか杏理が考えたにしては、殺伐としているような。 苦笑交じりに、悠月は隣の拓真と一緒に歩みだした。拓真こそ、忘却の石にはお世話になっている。せめて自分が使用するかもしれないものくらいは確保しておこうと悠月と供に此処へ来たのだった。 そんな仲間との戦闘を避ける様に悠里は森の奥へ歩を進めていた。何故、何故味方で足を引っ張り合うのか――妨害しあったら取れる石の量が減ってしまうじゃないか。そんな尽きない疑問が脳内でぐるぐる回る。 「やっほー、マリアちゃん。退屈?」 「悠里。退屈よ」 彼が見つけた、金髪の少女。いつも浮いている彼女だが、今は珍しく川に足を突っ込んでいる所だった――と思いきや、川の中の魚の様な生物に堕天落とし始めた。 「……ほら、これあげるからもうちょっと頑張って!」 軌道修正が必要だ。魚を石にして流す遊びをさせるのでは無く、忘却の石を探させる方向へ。悠里が差し出したのはから揚げの入ったお弁当。 「マリア食べる!!」 餌を目の前にした腹ペコの猛獣が飛びかかるが如く、弾丸の様に飛んできたマリアにお弁当は呆気なく盗られた。 半分食べて、半分は。 「残りはマリアちゃんが頑張って石探したら後で上げるね」 「お弁当のために、頑張ってやるわよ!!」 刹那――悠里の眼前が何やら雫で埋まった。そしてなんだか柑橘系のとてもいい臭い。 目の端にチラつくのは何やら青い物体――マリルだ。 「超必殺『破滅のオランジュミスト』ですぅ! これで白組の輩は全員、目がー目がー!!状態になるといいですぅ!!」 「えと……僕、眼鏡……」 「この最強のビーストハーフ(ねずみ限定)のマリルちゃんに勝てるとでもおもって……」 ハッとした。まさか、この男、オランジュミストを破ったとでもいうのか。彼はのたうち回る所か、無効化していたのだ。もはや、打つ手は――考えろ、そう、誰かが言っていた。逃げるが勝ちと。 「にゅわぁぁぁ! 今日のところはかんべんしてやるですぅ、おとといきやがれですぅ」 その場から一目散に逃げていく姿に、やたら戦意が削がれた悠里はそのまま拳を解いたのであった。 「こういう石だ。サンプルですまないが、こんな石を沢山見つけると良い訳だ」 「うんうん、解った。あのね、ありがとう。マリア石の形とか知らなかったのよ」 晃はマリアに石の形と見分け方を教えていた。その丁寧な教えにマリアはとても感謝したように顔を縦に振っていた。 「マリア、俺も一緒に行こう」 「むいー、ほんと!? マリアねー1人じゃ寂しくて死んじゃうのよ」 「後衛守るのもイージスの役目だからな」 マリアは最強の盾を手に入れた! とでも言いたげに満面の笑みで晃の肩に腰を置いた。つまり、肩車。案外軽い彼女の体重を肩に置き、2人は石を求めて歩き出した。 「第三勢力の杏里組だ、おらぁ!!!! 赤組、白組、両方に目にもの見せてやるぜ! ヒィーッハッハハァー!」 「さあ二人共! 頑張るよー!」 拳を握り、竜一の大声が上位世界の大地を駆けて行く。その隣で壱也が両手を挙げて意気込んでいる中…。 「い、壱也、これはどういうあれこれなのだろうか?」 雷音は壱也の耳へ小さな声で話しかけた。 「さ、さぁ……解らないけど、第三勢力みたいだよ」 「それは、大丈夫なのか……?」 「さあ……」 女の子2人がぼそぼそ言葉を交わす中、竜一は罠の説明をしていた。そこらじゅうに張り巡らされた、というかいつ作ったのだそんなものとツッコミせざるを得ない罠の群。 「ここを踏んだやつに無数の丸太が真上から落ちてくるって寸法よ! ……って、聞いてるか!?」 「き、聞いてるよ!! なるほど、罠でひるませるって戦法か!! 竜一くんにしては中々やるね」 「わ、罠は、控えめに……怪我をしちゃだめなのだぞ」 そんな3人の背後には杏理が立っていた。成程、第3勢力。成程、罠。 「ご、ごめんなさいごめんなさい、言い訳はできないが、えっと、第三勢力なのだ」 「構わないですよ。そういう発想は嫌いではありませんし……といいますか、好きにしてくださったほうが杏理は嬉しいのです」 雷音がなんだか申し訳なさげに杏理へ頭を下げた。両手を横に振りながら、杏理はそれに好意的に返したのだった。しかし事件は起こるもので。 「ところで、その罠って何処にあるの?」 壱也が竜一へ近づいた時だった。足もとから聞こえた無機質な音――ポチ。 「ぽち?」 彼女の耳に聞こえる、異様な風切り音。刹那見上げてみれば、巨大な丸太が落ちてきている最中であった――!! 「なな何!? 丸太降ってきたあああ」 壱也は雷音と杏理の服を掴んで、咄嗟に横へと投げ飛ばす。砂煙と、草を薙ぎ倒しながら2人は助かったものの。 「竜一壱也、上なのだ!! 危ないのだ!!」 「あぶない? いやいや、なにが……ぎゃー! 丸太が落ちてくるうう!」 「うわあああ丸太がげほげほ」 ぶちゃん。ぶちゅん。 骨が砕け、血が弾けて雷音の頬を染めた2人の血。もはや彼等の内臓は潰――いや、やめておこう、ご想像にお任せします。これほのぼの系イベシナだから。ほのぼのだよ。 等々、今度は丸太が転がってきたりで災難はあと2回訪れたとか。 杏理が貧血で卒倒しかけている隣で、咄嗟に雷音が奏でた回復の力の有難さが今一度よく解る。 「……ば、ばか、仕掛けた人がかかってどうするのよ!!」 「俺の右腕何処いった……うわあよせッ、揺するんじゃない!! 今俺、凄いデリケートぎゃああああ」 ちょっとしたグロ画像になってしまった竜一はさておき、回復していく壱也は竜一を掴んで揺すっていた。その度に竜一の中身という中身が散乱する。 「少々荒事になってしまって申し訳ない」 杏理へ頭を下げたのは雷音だった。杏理は杏理で若干の苦笑いが隠せないまま、顔を横に振って。 「ま、まあ……フュリエさんたちの迷惑にならない範囲でなら良しとしましょう。ね、竜一さん」 ザキオカが? ラ・ル・カーナに? 来るぅ~~~~~~~!↑↑ その声がやたら耳の横で聞こえている様で、何故だか腹の中が煮えくり返りそうな気分がした第3勢力。 一眼レフを構え、カシャッと音を立てた時生。 「自分で仕掛けて自分で引っ掛かるのもある意味才能だ。その大事な人生のメモリーを今この瞬間、写真として刻んだよ。一ディレクターとして、そういうコマひとつひとつを逃せない性というものは罪なのだろうかね。今この瞬間も、何故か得物を持って接近してくるリベリスタが居るとか。全て世の中が悪いんです。だが許そう、僕もまた特別な存在だから……」 解説すれば時生はアッパーユアハートをセルフユアハート。刻んだ大切なメモリーってやつは『ストーン・ハンター ~駆り立てるのは野心と欲望、横たわるのは犬と豚~』にて掲載中(嘘)。 その頃マリアはフツに捕まっていた。初動でかけられた極縛陣もそうなのだが、呪印封縛がマリアの行動を静止させ、その場から動けなくしていた。 「白組の動きが遅くなりゃ、赤組が石を掘りやすくなる」 「マーリーアーもー掘りたーーーーーーーーーーーーーーい!!!」 「すまん、時間切れまで付き合ってもらうぜ」 「やだやだやだやだやだー!!」 とは言え、フツは手を抜く事は知らず、そのままマリアの傍で彼女の捕縛し続けた。とは言えフツにも限界はある。例えばEPが無くなった時などなど。 「フツッ、マリア石見つけないと悠里からお弁当もらえないの」 「うむ」 「フツッ、マリア退屈しちゃうのよ!」 「うむ」 そんな会話はしばらく続く――と見えて、マリアの身体がひょいと持ち上げられた。 「ようマリア、やる気満々の良い表情してるじゃん。暴れまわりたいんだろ? 壁役やってやるから、思いっきりやっていいぜ!」 まるで子猫の後ろ首を掴んで顔を覗きこんでいるかの様なエルヴィンとマリア。 ブレイクイービルが響く中、やっとこさで動けるようになったマリアが「エルヴィン!」と彼にしがみついた。 「よー、フツ。俺との相性は悪いってとこか?」 「絶対者には、敵わねえな」 「まあまあ、いいじゃん。フツの実力は強いと思ってる。全力でかかってこいよ!」 「オウ!」 この瞬間2対1になった状況だったのだが、フツはそれでも長時間耐えてみせた。 「掘るとか掘られるとか掘り返されるとかはノンケ大臣に任せたらいいじゃん」 それは青い誰かの事なのだろうか。翔護は風のよく通る崖の上からラ・ル・カーナ全域を眺めていた。見晴らしはとても良い、つまり、千里眼がよく栄える。 見つけるは石――もはや彼にその作業をするのは簡単な事である。言い違えれば、翔護はあんまり動かない。でも許すよ。 (だって! だってSHOGO正直スキルツリーとかよくわかんないし! バイトついでに充電しに来ただけだし!) よせ、メタなものはやめて! というのは建前であり、彼の本心をダイレクトに言えば異世界のチャンネーのナンパである。 今こそ唸れオレのセンスフラグ! 唸れよ。 たまには唸れよーーッ!! 光あれ。 石探し開始直後、快は仲間へラグナロクをかけていた。本気で勝ちに来た男。 フュリエ達の情報頼りに此処だと決め、快は地面を掘っては埋め、掘っては埋め、掘っては埋めるの繰り返し。少し時間はかかったものの、やっと一つの石が見つかった。これぞ神々の意思の導き――石だけに。 「もらったーわー!!」 突如周囲が真っ暗になった。それもそうだ、これはよく知っている技――マリアの堕天落としだ。しかし快は絶対者、堕天落とせていない。 発動したのは反射のカウンター。ラグナロクのものであり、サイバーアダムの真骨頂が発動した瞬間マリアは尻もちをついた。 「堕天落としで俺を止められると思うなよ?」 「あ、あれ……む、キイイーッ!!」 悔しがるマリアを目の端に置き、葬送曲が来る前にと快はその場から離れようとした――瞬間に茂みから手が出て来て其処へと引き込まれ、鳩尾に衝撃が走る。 「こんにちはぁ、快さん。マリアさんの声が聞こえたもんでな、ちょっと話を聞こうか?」 バキバキボキィと指を鳴らす椿が、快のマウントポジションを取っていた。顔は笑顔そのものだが、内面に飼っている闇が抑えきれていない、これぞグレ……否、組長の真の力だというのか!! 「ただ、細い鈍器で全力で体殴られるって拷問やんなって……深い意味はあらへんよ?」 深い意味、絶対あるだろ。その後の快の運命は2人のみぞ知る。 「ククク……フゥーハハハハー!!! この私が赤組として参加するからには、全力である! 赤は労働者の血と鉄の色なのだー!!」 ~30分後~ 「よし……石探そう」 ベルカは崖の上から世界を見下しつつ、1人で大笑いしながら演説していた。せめてもう少し人気のある場所でだな。 その後はなかなかに真面目なもので、ベルガはフュリエを捕まえては石の在処を聞き出していく。 「石ってどんな匂いがするの?」 「えっと……石の臭いがします……?」 ニニギアは出会ったフュリエやすれ違ったフュリエに挨拶をしながら、歩いていた。 「此処はいつ来ても、落ち着く場所ね。ボトムでもこんな植物が元気な場所はそうそうないわ!」 「ボトムも……行ってみたいものです」 金髪のフュリエがニニギアの隣に座って、一緒に景色を楽しんでいた。そういえば、と切り出してニニギアは忘却の石の話をする。 「ああ……あれが必要なのですか、そういえば前、ひとつだけでしたら見かけましたよ」 「わ、ほんと? そこに連れて行ってほしいのだけど、いいかな?」 「勿論ですよ」 ニニギアはフュリエの少女の後ろを追っていく――にしても仲間のリベリスタ達が戦闘をしているのは何故なのだろうか。 此処に来るのも、あの決戦の日依頼だとレイラインは景色が一望できる場所で一人立っていた。 あの時のレイラインとはまた違う、尻尾がひとつ増えての再来。それはあの時よりも力が増している事を示していて。もし、あの時に今の力があれば全てを救えていたのだろうか――。 「……こちらは、元気でやっておるよ」 もはや景色が変わった世界に、そう呟いた言葉は風に攫われていった。しかし彼女は首を振ってから立ち直る。 「おーう、ベルは殺る気満々じゃのう。元気なのは良いこ……と?」 「レイライン! あのね、石見つけた!」 「うむ、それは良い事じゃがなんで石に血がついておるんじゃろうなぁ」 「錐!!」 大声だった。それはそれは怒鳴るような。 「どちらが多く集めるか勝負だ! アハハハ、負けるのが怖いか? 怖気づいたか? 俺の勝利はもう決まったも同然! 覚悟しておけよ錐! 俺はお前より優れているんだぜ!!」 宝珠は兄であり、弟である錐を指でさし、勝ち誇った表情で笑っていた。それに対して錐はいつもの事が始まったかと溜息を出したい気分だが、実際に出したらそれはそれで怒られそうなので出せずに飲み込んだ。 ――と、そんな事があり啖呵を切って石探しに没頭していた宝珠だが、実際の所、石の形やら何やらまで知らなかったからか、今は涙目で兄であり弟を探す始末。 対して錐は、色鮮やかに見えていたラ・ル・カーナの世界がなんだか色あせて見えると、苛立ちが隠せない。石を掘っていたスコップを投げつけ、ストレスをぶつけた。 ● 「石集めに夢中になって迷子にならないよう注意するのよ?」 「はーい」 氷璃の目の前でマリアは片手を上げて返事をした。 いつでもマリアは人のために動いている。それは不器用であれど、きっと皆のために石を見つけてくれるだろうと氷璃はマリアの頭を撫でた。 「お姉様は何をするの?」 「私は、調査よ。こう見えても魔女を自称する私だもの。こういうものは興味深いわ」 「ふーん」 エクスィスの足元で、氷璃は何かを調べては手記に纏めていく――それを見て、マリアはもう一度手をあげた。 「じゃあ、マリアも魔女やる!!」 「むむむむ」 楽は地面を見つめて、蹲っていた。彼は透視をして地面を透かせてみていた。その先に透けない物質――つまり忘却の石がある訳なのだがそれが随分遠くにある。 ひたすら掘れ! というのは確かにその通りではあるものの、1人ではなかなか骨が折れる距離であった。 「ひたすら掘ってみるしかありませんよ、がんばりましょう! はっはっはっはっは……」 「お手伝い、しましょうか?」 三郎太だった。地面を見つめていた楽を不審に思って話しかけてみたのだ。彼はスコップを持っている――2人なら、作業はきっと早いだろう。 「サンキューな、お礼にボトムの話でも聞かせてあげるよ」 「わあ、本当ですか? ボトムはかなり行ってみたいなって思っていた所なんです」 エルヴィンは所変わって、フュリエに聞いて石を見つけていた。お礼のボトム話はフュリエの少女たちにはとても興味を引くものだったようで、彼の周りには自然にフュリエが集まっていった。 「錐ー寂しかった……寂しくは無かったけど心細くねえけどやっぱり俺、お前と一緒じゃないと駄目だー!!」 しばらくして宝珠は錐に再開した。見つけた途端、お互いの耳と尻尾が敏感に反応して、ピンッとそそり立つ。しかし錐は宝珠の頭にチョップを一発。 「あだ!!」 と頭を抑えた宝珠はそのまま涙目で錐を見上げた。怒っているのだろうか、いや、それは違う。頭に乗せられた手の平が、彼女の髪を撫でたのだった。 「お、なんだあれ? やった、石じゃないか?」 牙緑は滝の真横、崖……といっても面接着が無いとどうにこうにも足場がおけない場所に立っていた。非常に器用である。 手にしたのは、それはとても忘却の石に酷似していたのだが、そのような神秘の力が見当たらない一品。 「あれ、違った、でも何か珍しい石だからお土産に持って帰るかな」 マリアは見上げていた。見ていた場所は豊満な胸であった事をユウは気付いているのだろうか。 「マリア知ってるよ、ゆうばすたーど」 マリアがキャッキャを笑いながら、ユウの周りを飛び回った。そう、彼女に勝負を挑むのがユウの目的だ――。 「術と銃の違いはあれど、同じく炎の使い手同士! いざ、しょうぶ!」 「遊んでくれるの!? マリア、遊ぶ遊ぶ!!」 魔陣展開が発動した――そして飛び交う炎の連鎖攻撃。二人の周囲だけ気温が異常に違い過ぎて近づくフュリエがいない。 「あ、でも人とかフュリエに向けたらダメですよー?」 「えっ! なんで!?」 「なんで!? ……なんででも、です! 忘却の石が隠れていそうな場所を選びましょう!」 妹が兄の手を引く、そんな微笑ましい光景があった。 これは勘違いするんじゃない。妹の考えは兄が迷子になってはいけないための、対策である。つまり、いつもの影時、真昼。どうやら影時はやっとこさ兄である真昼の存在を理解したようで、今日は「なんだ、居たんだ」「うん、さっきからね」というお約束は無かった。 「ああ、本当に異世界ってあったんだね」 「僕も驚きですが」 妹はずんずん奥へと進んでいく。まだ、石は見つからない。 「兄さん、千里眼使えますか?」 「うん、使えるよ。使おうか?」 「お願いします」 此処で忘れていたのか、影時は真昼にお願いをした。そういえばそんなものがあれば石の採掘発掘には、かなり楽ができるだろう。 瞬時、千里眼を放つ真昼――ラ・ル・カーナの綺麗さを再度実感しつつ、彼等の石の探索を続く。 「ゲームとかだと敵を倒すとアイテムが落ちますが、その感覚でOKですかね」 「うん、オッケーだと思うわ」 テュルクは隣に浮いているマリアに話しかけた。どうやら石があると色々便利だと聞いたもので、テュルクはそのお手伝い。そして何故かこんな殺伐とした戦場で殺伐としたマリアと一緒に居る。 「石は多い方が勝ちなんですよね」 「そうよ! だから妨害もありなのよ。例えばこんな感じで」 刹那、マリアの手が漆黒色に光った。それは堕天落とし――。 「うわ、兄さん危ない……っ」 「影時!?」 突如降り注いだ、黒き閃光に影時は思わず兄を背に庇った。この兄と妹は今、石をひとつ採掘し終わった所だ。こんなヘマで石を渡す訳にはいかないのだ! 「あんまり、期待しないで下さいね兄さん」 そんな言葉言われたって。真昼は自慢妹の頼もしさを再度実感していた。 「ね? テュルク、敵の色は狙っていいのよ」 「人に向けるのは危ないですが……まあ今日は許しましょう」 そんなこんなで、テュルクは採掘に徹し、そしてその頭上ではマリアが彼を護っているのであった。しかしマリアは脆いからね。 「はいはい、あんまり石化ばらまいていたらダメですよ」 「キュッ」 佐里だ。マリアの身体を気糸で絡めた挙句、縄でその身体を縛り始めたのだ。 「佐里はなかなかSM好きと見たわ!」 「えーっと……そういう訳じゃないけれど、こっちのほうが赤組には有益だから、ですかね」 もはやマリアの石化被害は赤も白も超えて重大な問題になっている。せめて味方くらいは石化させないでくださいと頭の中で呟いた佐里はそのまま縄に巻かれたマリアを転がす。 よし、これでひとつの不安要素が消えた。 (何と戦うつもりなんですかね、私は……) しばらくしてだった。 「マリアも派手にやっていそうだな」 仁はやけに天気のいい空を見上げて、居たわけだが足の下に違和感。それを強く踏んでみれば―― 「むきゅっ」 なんて声がするものだから下を見てみれば、縄で巻かれたマリアが転がっていた。 「何してんだ? 新しい遊びにしては感心しないぞ」 「違うもん。巻かれたんだもん」 経緯はすぐ上にある訳ですが、大体マリアが悪いのは隠しきれないだろう。仁は溜息混じりに彼女の縄を解いてやった。同じチームだものね。 「今から杏理をフュリエに保護させに行くところなんだ。一緒にいくか?」 「マリアいくいく、命の恩人よね仁!」 「そこまでではないが」 「石ですか?」 「はい。どこかに多くある場所とかご存知ないですか?」 「んー……」 レイチェルは地道に現地のフュリエへ声をかけては忘却の石の在処を聞いていた。しかしそれは一番最良の方法と言えるだろう。彼女の手記のラ・ル・カーナ地図は赤いバッテンの線で埋まっていく。 「そういえば川のほとりにあったかもですよ、そこまでお連れしましょうか?」 「ご迷惑で無ければお願いしたいです」 「はいー、こっちですよ」 「皆本気出しすぎじゃない?」 「……まあ、アレだな。やるってことはやられる覚悟はあるんだろ?」 そんな風景を見ながら、アリステアと涼はできれば平和にと願いながら掘るのであった。アリステアはスコップとバケツを、涼は大きなスコップを、まるでなんだか砂遊びをしにきた仲の良い子供の様――って言ったら失礼ですか。 しかし平和とは長く続かないもの。 「いえーい☆ ガンガン探すよー! 目指すは忘却の石、坂道泥道かっけぬっけてー☆ 目指すは地獄の一丁目~☆」 「此処地獄だったの! キャハハハハハ!!」 「ほっらほーら、天でも地でもおとしちゃおうー☆」 「てやー!!」 葬識がマリアを肩車し、最狂の石化戦車が進軍してきた。ひどい殺伐とした歌声と合いの手が響く中、漆黒の石化閃光が無差別攻撃してきた。 アリステアへ流れて来た堕天落としの一片を、涼はその大きなスコップで弾き飛ばしながら、大丈夫?という目線でアリステアを見た。 「雪合戦の時もこうやって一緒にいたんだよね。懐かしいね」 「雪合戦くらいから仲良くなったのかな。確かにそう思うと懐かしいね」 そういえ半年以上前の話になるのだろうか、こうやって遊んだのは記憶に新しい。あの日も、とても大騒ぎな事件でしたね。 「あの時みたく、後でお疲れさまって言いながら何か飲もうね」 「修羅場から生きて帰れたらな……」 お互いにお互いの瞳を見て、それから苦笑い。それでもアリステアは涼を護り、涼はアリステアを護るのだろう。とても良いコンビの二人が石を見つけるのは、そう時間が経たない頃であった。 しかしその間にも攻撃は続く。涼はアリステアを抱えて逃げ惑う訳だが其処に居たのは恭弥。 忘却の石は大切なのだ。こんな大事なものをスキル使って争奪し合うだなんて、おかしいんじゃないかと恭弥は考えていた所なのだが。 「……とか思ったんですけど、やっぱり……陣地作成! そして全力防御!」 戦力が迫ってきたら、そうせざるを得なかった。抗えたなかった、だって些か怖いし……? 「無くなれば、また取りに来れば良いだけですしね! 私を倒さないと出られませんよ! それか手に持っている忘却の石を差し出すなら、解放してあげても良いですよ!」 しかし次の瞬間、集中攻撃が飛んできたのは言うまでもない。 いつ使う時が来るか解らない忘却の石だ。やはり自分が使う分くらいは自分で掘っておいた方が後ろめたくないという気持ちはあった。 フィリスと琥珀は一緒に同じ場所で地面を掘っていた。この場所に来てしばらく掘っていた訳だが、フィリスの手が段々と遅くなっていく。 「フィリス大丈夫か、バテてないよな?」 「まあ、これくらいの肉体労働はせねばな……最近、体重計が気になって仕方がない」 琥珀の気遣いに、フィリスはニコっと笑って答えた。作業をしているからだろうか、汗が滲み、やけに喉は渇く。 「勝負が絡むからには負けられねーぜ。白は赤より強し!」 掘って掘って掘って掘って、フィリスの体力をカバーするかのように、琥珀の手は止まらない。そんなひたむきな姿にフィリスはつい微笑んでしまっていた。 2人が石をひとつずつ掘り当てるのは、この後すぐの話でもあるのだが、時折手を止めては他愛も無い会話をしてみたりと、仲の良い姿は輝いているようだ。 「仕事が終わったら特製スイーツ作ってやるから気合いでファイトだ!」 「よし、あと一息だ。仕事の後のスイーツの為に頑張るのだぞ!」 相変わらず葬識に肩車をして貰っているマリアは石を獲得したようで、石を葬識の頭の上に乗せて遊んでいた。しかし其処に、遠方より影。突如そこから撃ちだされた気糸がマリアの手元を掠って、石がころりと転がっていく。 「葬識、落としちゃったわ! あっち、あっち、早く」 マリアは上から葬識の顔を覗きこんで、頬を叩いた。 「んー?」 その転がって来た石を持ったのは、褐色の腕。 「石は、貰いましたよ」 紅の瞳が輝いた――レイチェルだ。彼女はその石を持って木の影から離脱して逃げていく。作戦は成功だ――この距離なら先に逃げてしまえば追いつくまい。彼女の計算は完璧なのだ。 「なんなら石化ごっこする? どっちがいっぱい石化させれるか競争してみよー☆」 「人体で作る忘却の石なのよ!!」 「お? でもそれは無理かなー☆」 「こっち来るんですか……っ」 奈落剣と堕天落としがレイチェルの背後を追う――。 「わ! すごーい、トップリベリスタ同士の争いがやってる」 そこに偶然居合わせた、不幸なアフロディーテ。どう不幸かというと、大体マリアの流れ弾である。 「え、こっちくるの!? や、ちょ、キャーッ!!?」 レイチェルにセレアが接触した。手の中の石を運ぶとセレアは言う 「情報伝達や運搬作業は任せてちょうだい?」 しかしそれはセレアの企みであった。何故なら彼女はレイチェルとは違う色の組であったのだ。50人程度いる戦場だ、誰がどっちの組だなんて覚えている方が少ない。 信用した彼女の手から石がセレアに渡った――!! 刹那、走り出したセレアにレイチェルは頭の上にハテナを浮かべた。 「もとよりこの時を狙っていたのよ! 最初から計画してたんだから裏切りじゃないわ!」 そこで気づいた彼女の企み……それでは遅かった。しかしレイチェルの真横を葬識とマリアが駆け抜けていく。嫌な予感がするのは、当たるからなのだろう。 「ここはオレが引き受けた! 行け!」 セレアとすれ違う影。その一瞬の間に福松は彼女へ逃走を促した。迫ってくる敵へBSSSを打ち込み、牽制していく彼。1人で駄目だが2人ならとセレアは立ち止まったのだが、それを見た彼は黙っていなかった。 「何、すぐ行く。心配するな……さぁて、来な!!」 その力強い言葉に押されてセレアは離脱していく――。 千里眼と超直感にて石を探していた福松だった。彼の非戦は有効なものが多く、既にひとつの石を彼は所有しAFへ仕舞っている。そう、もう何も怖くないのだ――自軍が勝つために、全力を出すのは当たり前の事なのだから。 ● 「此処はよく石が発見されますよ。でも根気よく掘った方がいいかと思います」 「ありがとうございます、わざわざ場所まで連れてきてくださって!」 三郎太はフュリエの助けを貰って、石がよくあるという場所に来ていた。こんな時に非戦でもあれば石を簡単に見つけられるのにと頭を下に向けていた所で、フュリエの少女に大丈夫ですかと聞かれたのがきっかけだ。 スコップを持ち、三郎太は地面を掘りだす。少しずつだが、穴は深くなっていく。彼のひたむきな努力は無駄では無い。必ず石を見つけて、白組に貢献するのだろう――。 『リベリスタなら、いうまでもなく簡単な仕事です』とか『リベリスタなら、ノリノリでいける簡単な仕事です。』に比べたらこんな仕事容易いと、彩歌は言う。やめろ、そのタイトルはまずい。 ふと、彼女の瞳に映ったのは義衛郎と嶺だ。見るからに此方のチームの妨害をしにかかっている。ならばと彩歌は木陰から、人差し指を伸ばした――そして撃ちだされた気糸。その精密な一撃は2人を順番に射抜く。 「やば、こっち見られた」 彩歌の視線が義衛郎とぶつかってしまった。その瞬間に、彼はダブルアクションを活かして、猛スピードで接近して来る。その背後を追うようにして、嶺も一緒だ。 「悪いね、勝ちたいもので」 義衛郎の瞳が彩歌を捕えた。 「すいませんねぇ、負けるのも惜しいもので」 嶺の瞳も同じく彩歌を捕えたのだった。負けられない、勝つまでは。つまり2人の攻撃を1人で受け止める彩歌だ。確かに勝ち目は無くとも絶対者である彼女は数秒持ちこたえたという。 ESPや勘であった。適当に掘れば出てくるものでも無く、拓真と悠月はお互いの力でカバーし合いながら目的のものを探す。 しかしその前に目に入って来たのは味方の色の子が襲われている姿だ。 「悠月!」 「はい」 飛び出した二人――向かうは義衛郎と嶺の下へだ。降り注いだ魔曲が嶺を狙う――。 「おっと、大丈夫かね?」 「大丈夫です。……痛くないですか?」 嶺に向かっていった攻撃は全て義衛郎が吸収した。その義衛郎の広い背中に手を置いた嶺は、心配そうな瞳で彼を見つめれば、義衛郎は大丈夫だと笑顔を返した。 さあ、反撃といこう。大切な人を攻撃されて、黙っている義衛郎ではない。同じく、護られているだけの嶺では無いのだろう。 その時、降り注いだ堕天の暗闇。 「拓真みーっけなのよ、悠月もよ」 「張り切っているな、マリア。やる気になるのは構わんが、程々にな」 惨事といえば惨事。もはや敵味方関係無く堕天は落とされていた。全く、仕方の無い子だと拓真は眉間を抑えた。 「程々にしてるわよ、だってほら、マリア堕天しかしないもの!」 「ああ、まあそうなんだが……」 そこで悠月はマリアの目線が平行に成るように、自分の身を屈めた。ルーンシールドは使えないのか、と。マリアに問う。 「あなたならすぐに覚えられそうだけれど」 「あんまりマリア舐めないでよね! それくらい持ってないわ!!」 ガク、と頭を倒した悠月。しかしきっと、もしそれが覚えられたのなら――。 「――自分や誰かを護れる力になるかもしれない」 その言葉にマリアはピクリと反応したのだった。 シェリーと辜月は一緒に石を探して歩いていた。所属している色は違うものの、2人の仲の良さが垣間見える様だ。 「ん~、良い景色です。石探し忘れて……つい散策してみたくなっちゃいます」 「そうじゃのう。此処の景色も前とは変わったと聞く」 2人が見ている景色――ラ・ル・カーナは少しずつだが変わりつつある。バイデンが居た頃より美しく、そして生命力溢れるこの世界。 2人はそのうち、木陰に腰を置いて一緒にお弁当を食べ始めた。 「水筒に冷たいお茶と、サンドイッチ作ってきました」 「うむ、ありがとう辜月。準備は妾がしよう」 「準備して貰ってすみません」 そうは言いつつ、シェリーも食べ物を用意してきていた。それはきゅうりやトマト、茹でたとうもろこし等々夏野菜のオンパレード。シェリーはいつもこういうものを食べているのかと辜月は認識した。 「瑞々しくて、疲れに丁度良いのです。きっとシェリーさんが丹精込めて育てたからですね」 「け、決して料理ができぬからではないからな。妾は昔からこうなのじゃ」 少し頬が紅潮している2人。もはや本来の目的は忘れて、此処でのデートも悪くは無いのだろう――。 「赤組にひとつ追加!」 「わっ、夏栖斗さん、こんにちは」 「ご機嫌麗しゅう!」 赤組の箱に石がひとつ追加された。夏栖斗の褐色の腕が頭を掻きながら、もう片方の手をひらひら上げて杏理に挨拶した。 その時響いた、姫乃の声。 「わーははははははは! 地面を抉りながら、戦気烈風陣すれば一石二鳥でござる!!」 得物を振り回し、華麗に舞う姫乃。しかしだ、どうした事かそれは範囲攻撃だ。彼女の作り出した、戦気の爆風は――杏理に当たる直前で、夏栖斗に首根っこを掴まれて止められた。 「フォーチュナもいるからな、あっちでやろう姫乃ちゃん」 「おおっ、それはすまぬ事をしたでござる!? あっちでござるなー」 素直な彼女はそのまま得物を担いで行った。おそらく再び、戦気で事件を起こしそうな雰囲気を醸し出して。 「大丈夫?」 「ああ、はい、そんな事もあるんですね」 ふと、振り返った夏栖斗に杏理は苦笑いで対応した。 「ねえ、杏里。バイデンがいたころ、君はラルカーナに助けに来てくれたよね。一年越しになったけど、ありがとう。怖くなかった?」 「え……」 一気に頬が紅潮した杏理。夏栖斗の純粋に輝く金色の瞳をまともに見れなくなってしまって顔を伏せてしまったのだ。 「怖……かったです。でも、だからこそ皆さんを尊敬しています。夏栖斗さん、いつも頑張っていますね、いつも勇気をありがとうございます」 「忘却の石?」 「うむ。そうだ……何か小さな情報でもいいのだが」 「そういえば……どこかで見かけましたよ。草木がよく生い茂っている所でした」 焔は耳よりな情報が聞けそうだと、目の前の赤髪のフュリエから情報を集めていた。いつか、もしかしたら自分も忘却の石にはお世話になるかもしれないのだ。ならば収集に赴いて、せめて自分分くらいは確保しておかなければ申し訳無いのだ。 「あ、思い出した。此処からちょっと遠いのですが……」 「大丈夫だ。思い出してくれたのか、感謝する」 しかし、その時だった。焔の背後から聞こえる元気の良い声! 「そこのフュリエ! 今こっちのチームに来たらなんと! このバニラアイスをつけちゃうぜっ」 ラヴィアンがボトムから持ちよったアイスやお菓子を手にフュリエの買収を図ったのだ。焔とラヴィアンは別々のチームである。 「忘却の石を一個見つけるごとにお菓子一個支給だ。さあ、がんばろーぜ!」 「ほ……報酬ですか……」 つい、釣られそうになっているフュリエを見て焔は動く。その腕に、迸る紫電を巻きつけながらラヴィアンへと迫るのだ――!! 「悪いが、此方のチームの勝利のためだ……」 「ぎゃー!! 本気だー!!?」 しかし2人の行動が一気に止まる。紫月が近くでエル・フリーズをしながら、一度だけにこっと笑ったのだ。 「降りかかる火の粉は払うだけ、ですよ。暫く、大人しくしていて下さいな」 つまり、近くに居たフュリエが怯えていたのが彼女の目にはいってしまったようだ。今こそ、この世界の力を借りている紫月だからこそ、止めるを得なかったその行動。 (そういえば、知らぬ間に逸れてしまいましたけど、新城さんと姉さんはどうしてるかしら?) ふ、と思い出した彼等の事。千里眼で探すのは容易いが、2人の時間を邪魔しても仕方ないのかもしれないと使うのを躊躇っている紫月であった。 杏樹に、ユーヌ。ウルザに伊吹は世界の果てを目指していた。しかしその後ろから駆け足で近づいて来た影。 「あ……皆さん、それ以上は色々かくかくしかじかでアウトなので。貴方たちが勇敢な戦士である事は解っていますが……そっちは駄目です」 「ああ、フュリエが直々に止めに来るとは思わなかったな。やっぱり駄目か」 「はい……やっぱり駄目な部分です」 金色の髪をしたフュリエが4人の後ろを着いて来たのだった。 「ふむ、カメラとかもきちんと持ってきたんだがな……」 「冒険心はくすぐられるが、原住民にそう言われてしまっては仕方ないか」 「すみませんね」 ユーヌがやる気満々で持ってきたカメラだったが、どうにもこうにも世界の果ては写せなさそうだ。伊吹は歩を進めるのを止め、来た道を帰り出す。 「オレ、羽があるけど。だから落ちても大丈夫だぞ」 「えっと……その、ごめんなさい、駄目なものは駄目なので……」 「手伝っていただいて、ありがとうございます理央さん」 一緒に石の個数を数えていた理央へ、杏理はにこりと笑ってお礼を言った。 「いえいえ、どういたしまして。流石は妨害有りだ、所々で戦火だったようだよ」 「で……ですよね、皆さん元気で何よりだと思います」 「そういうもんかな」 「そういうものかと」 2人は石を数えていく、白は杏理が、赤は理央が。そのうち数える石も無くなってきたものの、2人の会話に止まるという事は知らないようだ。 「例えば、危ない人をボクのスキルで止めたり、さ」 「あらら……それは相当、大変だったかと思います。ありがとうございます理央さん」 さっき聞いた、デジャヴの様な会話は続くのであった。 「よかったら、お握りでも食べませんか? お二方」 そこに生佐目がお握りを数個乗せたお皿をコトンと置いた。生佐目は石を探すリベリスタ達のためにお握りを握って、それを配布していたのだ。 「気が回って素晴らしいですね、美味しいですよ生佐目さん」 「はは、足りなかったらコンビニにどうぞ」 そこまで言って生佐目と杏理と理央の頭にハテナが浮かんだのだった。 ラ・ル・カーナに、コンビニは無いな……。 作業は続いていく。心優しいリベリスタたちが手伝ってくれたおかげで忘却の石は沢山集まった事だろう。 「ああ、勝ったのは赤ですね」 「マリア負けちゃったわ」 「ふふ、リベリスタさんたちが頑張ってくれました」 そんなこんなで、今日も1日は終わっていくのであった。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|