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<福利厚生2013>薔薇の女神・爆誕

●嗚呼、真夏のバカンス!
 白い砂浜、まぶしい水面。夏は今、真っ盛り。
 水平線に夕日が沈み、夜の闇が辺りを包む。だが会場の熱気は盛り上がる一方だ。
 篝火が会場を照らし、なんとも食欲をそそる香りが立ち込めてきた。
 そう、ここは弱肉強食のバーベキュー会場だったのだ!

●舞い降りる一輪の薔薇
 時は少しばかり遡り、アーク本部。
 ブリーフィングルームに集められた一同を迎えたのは、満面の笑みを浮かべる『艶やかに乱れ咲く野薔薇』ローゼス・丸山(nBNE000266)だった。
「ハイハイ、クッソ暑い中集まってくれてごくろーさま。今日は、日々アクセク働くアンタ達に、ご褒美をあげちゃう為に呼び出したのよ。
 なんとリッチに、南の島のバカンスにご招待! ど~ぉ? すっごいでしょ、アークもやるわよねぇ。あ、机の上にあるのは、旅のしおりよ。アタシが心を込めて作ったの!」
 確かに机の上にはホチキスで簡単に綴られた小冊子が用意されていた。かなりの量だ。一体何人で行くつもりだというのか。
 どれ、と一冊手にとって見れば、旅の予定と、滞在する島の略図、注意事項と続く極々普通のしおりと言えた。
 が、何故か途中の一ページに、ローゼスの履歴書と思しき紙が一枚、挟まっている。完全に計算しつくされた流し目をした証明写真もさることながら、目を引くのは生年月日欄だ。ドギツい蛍光ピンクのマーカーでアンダーラインが引かれていた。西暦は黒く塗り潰されていたが、誕生日は8月28日となっている。8月28日。予定では、島の滞在期間内だ。
「あらっ! いっけな~い、アタシったら間違えてうっかり微塵の他意もなく自分の履歴書を挟んじゃったワ!
 あら、あらら!? 全然さっぱり少しも全く気付かなかったけど、島に居る間にアタシ、誕生日を迎えるみたいねッ! あ、いいのいいの! 気にしないでね!!」
 ギラリと眼光が光り、一同を獲物を狙う狼のような眼差しが射抜く。数多の死線を乗り越えてきたリベリスタ達の背中が、ぞくりと冷えた。
「アタシ、当日は島でプラップラしてるから! もし! もしも!! もし何か用事がある場合は呼んでね、すぐ行くからッ!!!」
 ギラギラした瞳を向けたまま、一人一人に旅のしおりを押し付けていくローゼス。ハンパじゃない気迫が、そこにはあった。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年09月07日(土)23:44
どうも、恵です。
輝く太陽、煌く水着! 南の島でバカンス!! 素晴らしいですよね!

●状況
南の島で面白おかしく過ごしましょう。
南の島にありそうなモノは、大体あることとします。但し、あまりにアレなモノは省かれる場合もあります。ご了承ください。
時間帯として夜になります。何故かローゼスがポケットマネーでバーベキュー大会を開催しています。タダ酒、タダ飯にありついて大騒ぎするのも良いでしょう(但し、未成年キャラクターの飲酒・喫煙は禁止となります)。
会場には幾つかのバーベキューグリルが設置されており、また盛り上がっている会場から少しだけ離れたところに、カクテルを提供するカウンターが設立されています。
会場の中心は大騒ぎでき、バーカウンターでは落ち着いた雰囲気を楽しめるようになっています。

●ローゼス・丸山について
常にそこらをブラついてます。
格好は、白地に真紅の薔薇がプリントされたアロハシャツを羽織り、黒地に紫の蝶がプリントされたバミューダタイプの水着を着ています。更に、肩から『本日の主役!』というタスキをかけ、星の形をしたピンクのフレームのサングラスをつけています。ハッキリ言って、凄く目立つ格好です。
自身の誕生日を祝ってもらいたくてウズウズしています。一番ステキなお祝いをしてくれた方に、とっておきのお返しをするつもりのようです。
勿論、深く気にせず南の島でのバカンスを楽しんでください。声をかけられれば即座に反応しますが、無理に声をかける必要はありません。

●備考
 ・このシナリオはイベントシナリオです。
 ・参加料金は50LPです。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
 ・特定の人と絡む場合は『時村沙織 (nBNE000500)』という形で名前とIDをご記入ください。
 ・グループで参加する場合は【グループ名】をプレイング冒頭にご記入いただければ、全員の名前とIDの記載は不要です。
  (グループ全員の記載が必要です。記載が無い場合は迷子になる可能性があります)
 ・NPCに話しかける場合は、フルネームやIDの記載は不要です。
参加NPC
ローゼス・丸山 (nBNE000266)
 


■メイン参加者 42人■
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
覇界闘士
テテロ ミーノ(BNE000011)
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ホーリーメイガス
アリステア・ショーゼット(BNE000313)
マグメイガス
ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
デュランダル
鯨塚 モヨタ(BNE000872)
インヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
マグメイガス
風宮 悠月(BNE001450)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
覇界闘士
宮部乃宮 火車(BNE001845)
マグメイガス
音更 鬱穂(BNE001949)

黒部 幸成(BNE002032)
デュランダル
イーリス・イシュター(BNE002051)
ソードミラージュ
エレオノーラ・カムィシンスキー(BNE002203)
ソードミラージュ
鴉魔・終(BNE002283)
プロアデプト
酒呑 ”L” 雷慈慟(BNE002371)
マグメイガス
宵咲 氷璃(BNE002401)
プロアデプト
ロッテ・バックハウス(BNE002454)
クロスイージス
ノアノア・アンダーテイカー(BNE002519)
デュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
ナイトクリーク
六・七(BNE003009)
マグメイガス
斎藤・なずな(BNE003076)
ナイトクリーク
椎名 影時(BNE003088)
スターサジタリー
蛇目 愛美(BNE003231)
クリミナルスタア
曳馬野・涼子(BNE003471)
スターサジタリー
靖邦・Z・翔護(BNE003820)
ナイトクリーク
鳳 黎子(BNE003921)
クリミナルスタア
藤倉 隆明(BNE003933)
ナイトクリーク
ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963)
クリミナルスタア
熾竜 ”Seraph” 伊吹(BNE004197)
ナイトクリーク
浅葱 琥珀(BNE004276)
ミステラン
鯨塚 ナユタ(BNE004485)
プロアデプト
椎名 真昼(BNE004591)
フォーチュナ
断頭台・ギロチン(nBNE000215)
フォーチュナ
奥地 数史(nBNE000224)
フォーチュナ
月隠・響希(nBNE000225)
マグメイガス
マリア・ベルーシュ(nBNE000608)

●開宴
 夕日が水平線に沈む。一日の終わりが近づく、なんとなく寂しげな夏の夕方。
 が、いつもとは逆に辺りの空気は徐々に盛り上がりを見せた。バーベキューと酒盛り。一日の終わりはまだまだということだ。

 飢えた獣の目で徘徊するローゼスの目の前に、バッと大きな薔薇の花束が差し出される。
「誕生日おめでとうなのだ」
「お誕生日おめでとですよ」
 雷音とそあらだ。立派な、色とりどりの薔薇。新たに歳を重ねたローゼスの年齢と同じ、29本の美しい花。棘の処理まで施されているところは、さすがの気配りだろう。
「あらっ! ありがと、二人とも! そあらと、えーと雷音だったかしら?」
「うむ、朱鷺島雷音だ。よろしくなのだぞ」
 フォーチュナとして在籍するリベリスタの名前くらいは把握している。が、会うのは初めてなのだ。
「赤は情熱、ピンクは気品、白は清純。同じバラでも沢山の花言葉があるのだ」
「ちなみに黄色はあまり良い言葉がなかったので除いておいたです。でも美しさに嫉妬されて黄色い薔薇を送られる事もあるかもですねぇ」
「やはり君にはバラがよく似合うとおもうのだ」
 花言葉を添えて花束がローゼスへと手渡される。そしてさらに。
「あと、あたしからはローゼスさんのイメージで、このお酒を。三高平にお酒の目利きが上手な人がいるのでそこのお店で買ったものですから美味しいと思うです」
「ボクはサシェと、ローズヒップティを選んでみたのだ。お口に合うといいのだが」
「ありがと! 本当に嬉しいわ!」
 美しいピンクの仕上がりの酒と、淡い薔薇の香り袋。そして美肌を保つ効果があるとされる、ハーブティ。なんとも女性らしい、華やかで優しげなプレゼントだろう。
 その横では、次々とバーベキューグリルに火が灯り、辺りに食欲をそそる香りが立ち込めてくる。
「ふぉっふぉっふぉ、ろーぜすおいわいせくしーずさんじょうっ」
 そんなグリルの一つを囲み、ミーノが両手に焼けた肉を構え声をかけた。キツネのビーストハーフである彼女は、どうやら熱いものが得意でないらしい。ほふほふ言いながら、肉を頬張っている。
 そんな彼女の世話を焼くように、ユーヌはトングを華麗に操っていた。カボチャにタマネギ、人参。次々とグリルに並ぶ食材。
「お芋も良いな。後はお肉もぽいぽいっと焼いてみよう。ああ、こっちはもう焼けてるぞ?」
「ユーヌちゃん、焼いてるばかりじゃ駄目だよ? 私も焼くのお手伝いするし、沢山食べて下さい、だよ?」
 自分が食べるよりも、食べる姿を楽しそうに見ているユーヌを気遣い、アリステアもトングを手にした。しかし、ミーノの食べっぷりを見ていると、確かに頬が緩む。実に微笑ましい光景だろう。
「ろーぜすおめでとなの~!! おいわいにちょーーーたくさんごはんたべにきたっ!
 たべつくすいきおいでミーノ、きたっ!」
「えっと。本日の主役…? ローゼスさん。お誕生日おめでとうございますっ」
「ふむ。まぁ、誕生日おめでとう」
 まさしく三者三様。元気なミーノ、困惑気味のアリステア、クールなユーヌ。そんな三人から祝いの言葉が投げかけられた。
「ありがと! 三人とも、たっぷり食べて、たっぷり楽しんでね!」
 ローゼスは嬉しそうに礼を言う。『本日の主役』の襷の効果は伊達ではないようだ。
 飲んで、食べて。ゆったりとした時間が過ぎていく。ミーノ程ではないが、思い思いに焼けた肉や野菜に手を伸ばすアリステアとユーヌ。
「しかし、香ばしい匂いの中にいると、羽根に匂い移らないか心配になってくるな?」
「う~ん、そうだね。羽根にお肉の匂い、移っちゃってるよねぇ……。けど、後でしっかりお風呂入って落とすことにして、折角だから今は、美味しいものをたくさん食べるよ!」
 美しい翼を持つ二人らしい悩みだろう。そんな二人の横で、満腹になったであろうミーノは、目を瞬かせた。
「ほふ~……たくさんたべたらねむくなってきたの~……」

「特に意味の無いバンドが会場を襲う!」
「素晴らしい演奏でお前の誕生日を祝ってやっても良い!」
「ううん、最高の形でお祝いしてあげるよ!」
「ローゼス様! 巨乳兵団が盛大にお祝いするのですぅ!」
 高らかに響き渡る声。会場中央に作られたライブステージにスモークが焚かれ、颯爽と現れる四人。ノアノア、なずな、壱也、そしてロッテだ。
「ヒュー! 皆茫然自失としてやがる!」
 凄まじいテンションで登場した四人に、唖然とする会場。だが、こうした演目もまた、一つの醍醐味ではなかろうか。
「巨乳兵団……?」
 誰かが呟き、メンバーの一部に視線が集まる。
「おい誰が巨乳じゃないって? ちょっと控えめなだけで、これから大きくなる……予定なんだから!」
「今は慎ましやかだがそのうち膨らむんだから覚悟しろよ!!」
 必死のアピールを繰り広げる壱也となずな。怒る二人をフォローすべく、ノアノアがマイクを握る。
「やめろよ、どこみてんだよ。こいつらだって頑張ってんだぞ!! それをなんだお前ら! そんな干からびた干し柿見るような目で!!」
「おい誰が干からびた干し柿じゃふざけんな!!」
「おとなしくしてろ……お前の胸を綺麗に削げねえだろうが」
「ちょ、ちょっと、今クールにキメてるから揉めるのはやめてくださいよぉ……。揉むのは胸だけにしとけですぅ!」
 凄まじい仲裁だが、とりあえず三人とも気を取り直しマイクに向かう。しかし、何故か四人とも楽器は手にしていない。
「おっと内ゲバ起こしてる場合じゃないな……。よし! お前ら! 私たちの歌を聞け!!」
「さあ、伝説の幕開けだ! ローゼスさんよ、最高のバースデイにしてやるぜ!」
 そして――背後に据えられたラジカセから爆音が響く。
「ボクらの1stシングル。聴いてくれ。『くれんの乳房』」
 同時に響き渡るシンバルの音。ノアノアの手には何も握られていないが、確かにシンバルを鳴らす動きをしている。音はラジカセからであり、つまり、エアシンバルということだ。他の面々も同じように、思い思いの楽器を手にしている……ような動きをしている。
 ブブゼラを奏でさせれば右に出るものは居ないと言われてる筈の超プリンセスブブゼラ。ロッテの動きからは、確かにブブゼラの美しい音色が聞こえた。ブォォブォォと。ハンパじゃなく楽しそうなロッテ。
 横では壱也がエアギロを奏でていた。ギリギリとラジカセでは再現できないような臨場感溢れる音が届く。と思ったら、どうやらエアギロを弾いているつもりで歯軋りをしていたようだ。ナニやら思うところが沢山ある微妙な乙女心らしい。
 そんな怨嗟溢れる演奏を払拭するかのようにリズムを取るカスタネットの音。なずなの手にカスタネットが見えたのは、夏の幻だったのだろうか。間奏ではなずな自ら、カスタネットの音を再現する。
「うんたんうんたん、うんたんたん……」
 別方向で伝説に残るライブが今、行われていた。
 ライブを楽しむローゼスに、声がかけられる。まだ年端もいかない二人の少年だ。ローゼスと少年という絵面だけで、不安を感じてしまうのは何故だろうか。
「はじめまして! これから依頼で世話になることがあったらよろしくな! 南の島でお誕生日か……最高じゃん、おめでとう!」
「オレはまだ革醒したばかりの新人だけど、これからよろしくおねがいします。それと、お誕生日おめでとうございます!」
 モヨタとナユタの兄弟が、バーベキューの串を片手にローゼスを祝う。大人が多い会場だが、その雰囲気を楽しんでくれているようだ。
 そんな二人からの言葉を聞きながら、顔つきが変わるローゼス。そう、これはまるで……獲物を見つけた獣の視線だ。
「ありがと、アンタたち! さ、ちょっと向こうの木陰で色々オネーサンとお話しましょう?」
 ローゼスの背後が歪んで見えたのは、グリルが立ち上らせた陽炎か、はたまた別の何かか。が、まだ幼いとはいえ、二人も立派なリベリスタだ。鋭敏に空気の異常さを察する。
「オレ、ちょっと飲み物取ってくるよ! にーちゃん、ローゼスさんとお話しててね!」
「じゃぁモヨタ、一緒にお話しましょぉぉぉかぁぁぁ」
 兄の背をグイグイと押し、ナユタはさっと人ごみに紛れた。きょとんとしたモヨタの肩を、ローゼスががっしりと掴む。
「ちょっ、なにすんだナユタ……。ひぇ、オイラそっちのシュミはないって……うわああああ!?」
「うふふふ……!」
「うっす、ローズねーさん。夜だっつーのにあっついよなあ」
 間一髪、声がかかる。旅のしおりを団扇代わりに、夏栖斗が笑顔を浮かべていた。
「あら、夏栖斗。来てくれたのね」
「ただ飯食らいにきたよ。豪気だね。ポケットマネーって。ローズ姐さんお金持ち! 薔薇の女神!」
「やっだぁ、美しいだなんて!」
「それと、誕生日おめでとう。気に入ってくれるとうれしいぜ。どう? 僕イケメンだろ?」
 若干の噛み違いを見せるが、言葉と一緒に小箱が胸元に飛び込む。中には、上品で華奢な蝶のピアス。
「ステキ! 大事にするわ!」
「ちゃんと帰ってくるから、姐さんはいつもおかえりって言ってくれたらうれしいぜ」
「当たり前よ! しっかり帰ってきなさいよ?」
 バチコーン! とウィンクをするローゼス。夏栖斗が笑顔で応えた。

●有頂天の乱痴気騒ぎ
「ってことで今日は誕生日のお祝いに馳せ参じましたぁ!」
 琥珀の元気な声。同時に、バズーカ型のクラッカーから放たれた色鮮やかな紙の薔薇が夜空に咲く。一緒に舞う、パラシュートに取り付けられた垂れ幕。垂れ幕には『ハッピーバースデー レディ・ローズ!』の文字だ。
「まっ。ド派手で嬉しい演出じゃない! ありがと、琥珀!」
 興奮のあまり、ブッチュゥ! と口を尖らせて迫るローゼスだが、危ういところで回避する琥珀。
「や、その。これ、良かったら使ってくれよな!」
 渡される小袋から転がり出るのは、薔薇十字のリング。
「いつもアークのフォローを気丈に受けてくれて有難うなっ! これからも勝利へと導いてくれよ! ヨロシク!」
「つれないわねぇ。けど、任せておきなさい! アンタ達の行く末は、アタシが導くわよ!」
 ローゼスが満面の笑みで言う。
 二人を横目にグリルに立ち向かう二つの影。一つは小柄な少女であり、もう一つは……馬だ。
「なんと! バーベキューなのです! ぶっこむですよ! はいぱー馬です号!」
 言葉通り、グリルに猛然と立ち向かうイーリス。
「ローゼスさん! 誕生日ですか! こいつはめでたいのです! はいぱー祝うのです!」
「ありがと、イーリス!」
「じゃじゃん! これは! ドレスなのです! ローゼスさん、そしななのです!」
 華やかな薔薇のドレスが手渡される。鮮やかな赤が目を引いた。
「ありがと、嬉しいわ! よく噛んで食べるのよ?」
「これは! おいしい、桜肉なのです! 食べないですか? おかしな馬なのです」
 なんとも微妙な表情を浮かべるはいぱー馬です号。思わず目頭が熱くなる。
「あ、兄さん居たんだ。びっくりだよ」
「ああ、うん居たよ。南の島で独りぼっちとか嫌だもの」
 影時と真昼の二人も、仲良く……グリルを囲む。真昼の相棒である白蛇の白夜も一緒だ。
 兄に対して実にクールな対応の影時。常日頃から、彼女はこんな様子なのだ。
「可愛いでちゅね白夜たん。……ハッ。今見たのは忘れてね」
 白夜を愛でる仕草もまた、クールである……のかもしれない。
 いい具合に焼けた肉に齧り付く真昼。品が無いかもしれないが、バーベキューの楽しみ方としては正しいだろう。
 その横で、大きすぎる肉を鋏で切る影時。生肉もカットして、そのまま焼くのかと思いきや。
「白夜ちゃんのご飯にしまちょうねチチチチ……」
 白夜の前に差し出して気を引く。実に楽しそうである。
「アンタたち、しっかり食べてる?」
「あ。ローゼスさんおめでとう。また新しい一年が始まったね。
 僕、影時。あっちは真昼。宜しく。肉、食べる?」
 そのまま、鋏に突き刺さった肉を差し出す影時。なかなかワイルドだ。
「ありがと。アンタみたいなカワイイコに勧められるなんて、役得だわね。二人とも、楽しんでね!」
 肉を頬張り、鼻歌混じりにふらつくローゼス。
 ふと空を見上げれば、満点の星空。やはり街とは違う。
 この休息が戦った日々のご褒美で、妹が少しでも楽しそうにしてくれてたなら、オレはまだまだ頑張れる。
 強い決意が、真昼の胸に宿る。
 賑わうグリル。つい歓談に興じて、肉が焦げてしまうことも、やはりよくあることだ。
 が、そのちょっと黒くなってしまったモノでも、逆にまだ半焼けでちょっと赤かったりするモノでも、涼子は全く気にせず口に運ぶ。どうやら、酷く腹が減っているようだ。
「いい食べっぷりね」
「ああ、ローゼス。おめでとう」
 声をかけるローゼスに、食べる手を止めて可愛らしい小瓶の入った袋を渡す涼子。ローゼスのような人種は、きっと肌を気にするだろうという考えからだ。そして、その考えは大いに的を射ていた。化粧などはしないが、異常に肌年齢には固執するのだ。ブッ飛んだ思考の持ち主である。
「近所のおネエさんがすすめてたヤツだから」
「ありがと。さすが女のコね、着眼点がステキだわ!」
 クネクネと喜ぶローゼスと、淡々と喋る涼子。凄い対比である。

 どしゃ、と砂浜に大きなクーラーボックスが幾つか置かれる。近くでは生ビールのサーバが設置され、準備は万端というところだ。さすがは快。酒のことなら彼に任せておけば、まず間違いは無い。
「みんな飲み物いったかい? それじゃえーと、今日何に乾杯なんだっけ? 誰か知ってる? ……知らないんじゃしょうがないね、始めちゃおうぜ!
 キャッシュからのー、パニーッシュ☆」
『かんぱーい!』
 宴会の音頭とることにかけてのみトップランクのリベリスタを自称する翔護の音頭で、各々手にしたグラスを天高く掲げる。響くグラスの音、湧き上がる笑い声。
「ローズ姐さん、これ。皆で呑んじゃうかもしれないけど、清酒「三高平」の純米吟醸ひやおろし、今年最初の入荷分を持ってきたよ!」
 さすがの快。曰く、バーベキューにも合う日本酒と言う事らしい。快が選んだ酒ということだけで、期待が高まる。彼の酒に対する姿勢・センスは、一部では、あの沙織以上と認められているのだ。
「ありがと! せっかくだし、皆で飲みましょ!!」
「あ、ローゼスさんはお誕生日おめでとうだよ! よし、これで完璧なまでに義理も果たしたね! ってわけで……いざ戦場へ!」
 箸を手にグリルに向かうウェスティアが、これ以上ないほどサッパリとした祝辞を述べる。いっそ清々しいくらいのお座なりな言葉だが、宴を楽しんでくれていると思うと、これもまた正しい姿勢だろう。決して不快感はない。
「ありがと、しっかり食べるのよ!」
「ローゼスさんはお誕生日おめでとう! あとここってローゼスさんの奢りなんだってね? それもありがとう!」
「ローゼスさん、お誕生日おめでとう! この前は有難うね。お疲れ様」
「丸山は誕生日おめでとう!」
 悠里とロアン、拓真が酒を片手に祝う。ギラリと光るローゼスの眼光。
「ありがと。ところでアタシ、今晩偶然にも空いてるんだけど……!!」
「あ、僕、彼女いますんで! そういうのはノーセンキューです!」
「あの……僕もその、女の子が好きなので……」
「あ、あれ。悠月はどこにいるかな」
 まるでレスリングの試合のように、中腰になり三人の隙を伺うローゼス。既に混沌とした絵だ。三人は冷や汗混じりに辞退する。
「おぉ……? 自己主張激しい奴だな……フォーチュナ?」
「ローゼスさんはおごってくれる人。私覚えた」
 そんな光景にギョッとする火車と黎子の二人。何とはなしに一緒に会場をうろついていたところにこんな光景が飛び込んできたら、そりゃ驚くだろう。が、平然と二人を見るローゼス。彼にとっては全てが日常茶飯事ということだ。
「二人とも、楽しんでってね!」
「生きて誕生日迎えられるってのは良い事だ。そんでもって祝えやなんだと奢りまでして主張か。結構なこった。大いに奢られてやろう!」
「遠慮なく! 飲んだり食べたりさせてもらいましょう!」
 豪快に笑う火車と、やる気満々の黎子。
「ローゼスさんお誕生日おめでとう、楽しい一日にしようねー」
「お誕生日おめでとうローズちゃん、さあ飲みましょう」
 お次はジョッキを手にした七とエレオノーラだ。皆が笑顔でローゼスを祝ってくれる。こんなに嬉しい事が、他にあるだろうか。差し出されたジョッキをグイとあおり、口の周りに泡のヒゲを作ってローゼスが笑う。
「げっふぅ。ありがと! 二人も飲んで食べてね!」
「ローズちゃん、見た目イケメンがいいならここに沢山揃ってるから指名してもいいんじゃないかしら。選り取り見取りよ」
「ほんと、アークは良い男には事欠かないよね。じっくり吟味すると良いんじゃないかな。まあ大体が彼女持ちなんだけどね……」
「そぉなのよぉ。どっかにフリーでステキな王子様が転がってないかしらねぇ」
 クネクネと言うローゼス。酒が入った事により、加速度的にヤバい存在へと変貌していく。
 そんな彼に、隆明が楽しそうに声をかけた。昼間っから飲んでいた隆明は、既にご機嫌のようだ。
「あ、本日の主役じゃないか! 誕生日だって聞いたぜー、ローゼスさんおめでとう!
 ほれほれ飲め飲め何がいいよ! あ、これプレゼントな、今開けてもいいけど中身見て怒るなよ!」
「あら、隆明~ご機嫌ね!」
 手渡された包みを開くと、そこには凛として佇む際どいブーメランパンツが在った。ローゼスの好みに合わせ、しっかりマゼンタピンクだ。
「まっ! 隆明ったら! 女のコに下着送っちゃうなんて、もう!」
 更にクネクネは加速し、ローゼスは照れながら喜ぶ。小さな子が見たらひきつけを起こしかねないインパクト。
「ひゃっふー! 楽しんでっかー! 飲んでっかー!」
 隆明はご機嫌のまま、誰彼構わず笑顔で声をかけて会場を散策しにいった。入れ違いに、眩しい笑顔の少女が見える。
「ローゼス、何回目アニバーサリー? 何回目アニバーサリー?」
「ンもぅ! そんなに何回も聞かないで頂戴ッ!」
 無邪気に笑うマリア。少しだけ怒った顔をして、すぐに笑うローゼス。
 それより、マリアが手にしているのは、まさかお酒ではなかろうか。少しだけ不安に感じたローゼスだが、そのグラスに手を伸ばす女性がいた。氷璃だ。
「マリア。貴女にはまだ早いわ」
 ひょい、と氷璃が持ってきたグラスと交換される。新しいグラスにはオレンジジュースが満たされていた。マリアから受け取ったグラスを、そのままクイッとローゼスへ掲げる。
「それじゃあ、ローゼス。貴方の誕生日を祝して――À votre santé」
「ふふ。ありがと、乾杯」
「ちょっと、マリアおこちゃまだと思わないことね! でもオレンジジュースも美味しいわ。お酌! マリアにお酌しなさい! キャハッ苦しゅうないわ!」
 お酌をして欲しがるマリアの為に、二人はオレンジジュースを探しに行く。
 二人を微笑ましそうに見送るローゼスに、先ほど見事な乾杯の音頭を取った翔護が楽しそうな笑みを浮かべながら歩み寄る。既に顔が赤い。
「マルちゃんお誕生日なの? 何だい先に言ってくれればよかったのに。何歳?」
「レディに歳を聞くなんて、いけないコねぇ。翔護と同い年になったわよ」
「めでたい、めでたい! さ、じゃぁコレ。持って持って!」
「あら? あらら?」
 ぽんぽんと手渡される花火。よくわからないまま、歳の数である29本の花火を全て手にするローゼス。持ちきれない分は、口にくわえている。想像するだけで危険な光景だ。だが、酒の席とは恐ろしいもので。
「たんじょ~び~おめでと~♪」
 気にせず着火する翔護。僅かの間をおいて、全ての花火から美しい火花が飛び散る。まるでローゼス自体が発光しているかのようだ。ハンパじゃなく怖い。
「きゃぁぁぁ! アタシ美しい!? 良い子は絶対マネしちゃだめよ!?」
「わははは~」
 ベロベロに酔った翔護と、アタマのネジがブッ飛んだローゼス。笑う声が響き渡る。

「悠月はどうだ、楽しめているか?」
 大盛り上がりをする会場の、少しだけ外側。悠月が静かにグラスを傾けている。
 そんな彼女に、拓真もまた、静かに声をかけた。
「ええ、私は大丈夫です。……良いですね、こういうのも」
「そうだな。流石に今日もまた潰れる訳には行かないからな……」
 先日、快達と一緒に飲んだ時の事を思い出し、少しだけ苦笑いする拓真。くすりと笑う悠月。
 盛り上がる会場も、こうして静かに飲むことも、酒との正しい付き合い方と言えるだろう。
 二人の周りに流れる空気は穏やかで、落ち着いたものだ。居心地の良い空間とも言える。満天の星空、遠くから届く友の笑い声、そして隣にいる大切なパートナー。
 静かに時は流れていく。

「はーい!エレオノーラさんと飲み比べしまーす!」
 若干出来上がった雰囲気の悠里から、とんでもない発言が飛び出す。これまでの盛り上がり方とは若干異なるざわつきが、会場を包んだ。
「んー。じゃあハンデにあたしピッチャーで飲むから」
 それならば、と数名の勇者が名乗りをあげる。大きなピッチャーを持ち、数名の男と共にそれをあおるエレオノーラ。なんというか、凄く退廃的な光景かもしれない。
「……ぅっおう!喉越し最高!良く解らんがキレコク苦味ぃ!」
 ビールジョッキがこれほど似合う男も他にいないのではないか。火車の喉が鳴り、ジョッキの中身がどんどんと無くなっていく。まさに夏男と言った感じだ。
 が、すぐに顔が真っ赤になり、呂律が怪しくなる。
「肉にもあうんりゃな! するほれらりょれつア……」
「……やっぱりよわい!  多分しばらくしたら起きますので……」
 そのまま倒れこむ火車の精悍な身体を、黎子が支える。既に木陰に用意されたシートまでなんとか運ぶ姿は、なんとも甲斐甲斐しい。
 次々と堆く詰まれる、空のピッチャー。あの小柄な何処に、あれだけの量の酒が吸い込まれていくのか。
「エレオノーラさん、可愛い顔して物凄い飲むなぁ……。守護神は言わずもがな、か。
 僕も男だ、意地がある。そう簡単には負けないよ!」
 負けじと空いたグラスを置き、次のグラスを掴むロアン。多少フラつくが、まだ大丈夫。
 そういえば、いの一番に名乗りをあげた悠里はどうなったのか。無理しないよう釘を刺さないと。と視線を送ればそこには……。
 なんということでしょう。既にブッ倒れた悠里の姿が!
「……あっ、遅かった……」
 外野としてのんびりビールを飲んでいた七が、水の満たされたグラスを手に悠里を拾いに行く。
「はーい、どんどんお水飲んでねー」
「潰れた悠里はローゼスに膝枕して貰いましょうか」
「あら、大歓迎よ!」
 こちらもまた、可愛らしい見た目とは裏腹に酒をぐいぐいと飲み干す氷璃。飲みながらの提案に、ローゼスは自分の膝をバンバンと叩く。
「おー! まだいくのか!」
 ウェスティアが楽しそうに観戦する。が、彼女には理解しきれないところがあった。横にいる悠月に声をかける。
「しんどそうにしてる人もいるけどあれ楽しんでるんだよね…? うーん、大人って難しいんだね」
「そうですね。けれど、楽しんでいるのだと思いますよ。
 ……少し休みましょうか」
「……くそ、周りに釣られてしまったか……不覚だ」
 飲み比べを見ながら、ついグラスを重ねてしまった拓真を気遣い、木陰へと案内する悠月。対照的な酒の楽しみ方だ。
 飲み比べも、既に立っているのは二人だけだ。ピッチャーを次々と屠るエレオノーラと、酒のことなら任せろ、と豪語する快の二人。
「たとえ最後の一人でも、意地があんだよ……男の子には…な……」
 多少の羽目の外し方も、リフレッシュの方法としては正しいものである。

「お、マリアちゃん、眠そうじゃん?」
「……んむぅ」
 見知った顔を見つけ、終が声をかける。が、マリアは既に若干眠そうである。フラつくマリアを心配し、腰を下ろす終。終を枕に、ころんとマリアは眠ってしまった。
「こんばんは、鴉魔」
「数史さん。今日は飲まないの?」
 声をかけてきた数史に対し、自分の横をちょいちょいと指し、手に持っていたグラスを差し出す。
「あら、キュートな二人が壁の花なんて勿体無い!」
 とんちんかんな言葉と共に現れるローゼス。目敏いというか、なんというか。
「ローゼスさん、ハッピーバースデー☆ 良い一日を☆」
 終が、用意していた花束をバッと差し出した。色とりどりの花が、そっと香る。
「まっ! ありがと、終!」
 ギラつくローゼスの眼差しを直視できない終。若干乾いた笑いを浮かべている。
 そのローゼスに、ふわりと麦藁帽が乗せられる。シチュエーション的には凄くロマンチックな感じだが、その麦藁帽はこれ以上ないほど全力でピンクだ。当然、ローゼスの好みを配慮してのプレゼントだろう。
「ローゼスさんのお祝いに参りました。しかし遠くからでもまた目立つ……。っていうか何処で売ってたんですかそのサングラス」
 いつもの笑みを浮かべて、ギロチンが立っていた。横には響希もいる。
「ふふふ、特注品よ!」
「おめでとう、今年もいい一年をね」
「丸や……ローゼス、誕生日おめでとう」
 眠たげな響希と、僅かに名前を言いよどむ数史。以前、『丸山』と呼んだ時に微妙な顔をされたことを、彼は覚えていたのだ。
「俺からは、他に思いつかなかったんで酒でも。ローゼスだからロゼワインってのも安直かもだけど」
「数史おじさまも断頭台サンもいいセンスね。あ、あたしからのプレゼントはこれで」
 数史からはワインを。そして響希からはピンクの薔薇のコサージュがつけられる。
「ほらあれよ、綺麗なオネーサンには綺麗な花って事で。よく似合ってるわー、そのハイセンスなサングラスともぴったり!
 ……全員ピンクって言うか紫って言うかなのが……すごいわよね……」
 どんなシチュエーションなら、ローゼスの姿は周囲から浮くことなく溶け込めるのであろうか。恐らく、まずサングラスをどうにかしないと無理であろうが。数史は、改めて凄い格好だと感じた。驚愕を隠すため、慌てて手にしたグラスの中身を飲む。そんな数史を、不思議そうに見るローゼス。
「どうしたの? 数史?」
「……や、誕生日おめでとう」
「まあお誕生日はめでたい事ですよね。沢山でお祝いすればもっと楽しいんじゃないでしょうか。ところでお幾つになりましたかって聞いていいんですかこの場合」
「どんどん魅力が高まる29歳を迎えたわ! けど、あんまり広めちゃダ・メ・よ?」
 凄まじい気迫。乙女も青年もナイスミドルも、誰も理解できない複雑な事情があるようだった。

●これにてお開きッ!
 ライブステージでは、がやがやと次に行われるであろう演奏の準備が行われている。
 が、その横で鬱穂と愛美がしょんぼりしていた。二人ともステージ衣装に身を包んでいるのだが、えらくへこんでいる。二人の様子に驚き、声をかけるローゼス。
「ど、どしたの? 二人とも」
「いやぁ実は、私達も参加するつもりだったんですよ、フェス。ちゃんとステージや機材使用の申請してたはずなんですけどね……」
「けど、このレジュメ、どう考えても私達が演奏するタイミングが無いわ。機材に関しても、私達に使える機材はないし……」
「あらぁ……。あ、コレ! コレがあるわよ!」
 ローゼスが手にしたのは、巨乳兵団が使用していたラジカセだった。確かにこれなら、演奏機材も必要ないだろう。
「ステージは、んー。コレでどう!? ショボいステージしか用意できないけど、意地でもアンタたちの演奏が聞きたくなったわ!」
 そぉい! と転がっていたミカン箱を目の前に置くローゼス。わくわくした眼差しが二人に向けられる。アーティストとしては、小さな舞台かもしれない。だが。
「……一応、頑張って新曲も用意して、衣装も仕立てたしね」
「……まぁ、鬱穂さんがこれで良いなら……」
 奏でられる演奏は、ローゼスのみならず、その場にいた幾人かの視線も集める。小さな舞台かもしれないが、これはこれで良いものではないだろうか。

 ライブステージに、四人の男が降り立つ。何より夏が似合うアーティストが、彼らだろう。
 普段の袈裟からアロハに着替えたフツが、盛り上がる会場を見渡す。
「色即是空、空即是色! 雲ひとつ無い空の下!
 余計なモンを脱ぎ去って! 空(ゼロ)になったら色(エロ)になる! お前だけの色で、この夏を塗りつぶせ!
 聞いてくれ、俺たちの新曲『是色~Z/ERO~』!!」
 かき鳴らされる竜一のギター、響く伊吹のベース、身体で感じられる雷慈慟のドラム。それらの旋律が一体となり、彼らの魂と言える音楽を形作る。

殺伐した依頼を抜けて、さっさと『空』に入ろう
悟らぬ者の説法で、暗い様子を眺めりゃ
そう、また目覚めし者の教えがじわりじわりと広まってきて
僕は応身仏に、顕現すると救世を始める
質の悪い徳だね
このまま煩悩ごと、輪廻から解脱しようか
なんて座禅で浮かんでいる

 華麗な竜一のギタープレイ。彼の名とお揃いの、龍柄のアロハがとても似合う。
 ギターも夏のこの場に合わせて、炎の鳥だ。

有無 今日はいまいち 説法に欠ける日だったとか
大 仏の気も知らないで「浮世が変わった」なんて
簡単に言う俗世の 胡散臭い教えだとか
空っぽの心空けて 色々思い耽っていると
浮世の暮らしは やけに色を求めてしまう

 トレードマークのマフラーをたなびかせ、雷慈慟のスティックが踊った。
 熱を帯び、魂が籠められるスティックが響かせる音は、聞く者の心を揺さぶる。

どうすりゃ悟れるのヘンになりそう Oh
煩悩で頭が曇ってる夜は
仏をどこまで信じればいいか 君が僕に教えてよ Oh

 サングラスの奥で、伊吹の瞳が燃える。ハーフパンツに上半身は裸と言うラフな格好であり、それがまた、演目とマッチする。
 爪弾くベースの旋律が、それぞれの演奏を見事に纏め上げる。実に心地が良い。

Viva南海! 過ぐNight time! 砂浜の真ん中で
アムリタい もうアムリタい 全仏横臥したまま
流れよう 諸行無常 この夏はYou三昧(サマーデイ)
空(ゼロ)がいい? 色(エロ)になろう もう一枚!

 身体の奥へと響くような、フツの歌声。
 今日と言う日が終われば、また戦いの連続となるだろう。
 しかし、こうした楽しい時間があるということを忘れなければ、つらい戦いにも耐え抜くことができるのではないだろうか。
 フツが、竜一が、雷慈慟が、伊吹が、それぞれの想いを込めて、歌い奏でる。

 歌が乗る夜風も、僅かに涼しくなっている。秋は、もうすぐそこだ。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
まずは皆様、お疲れ様でした。
皆様の素晴らしいプレイング、拝見させて頂きまして、とても楽しく思えました。
その楽しさをとにかく伝えようと頑張ったリプレイです。お気に召して頂けたら幸いです。

ほんと、ワガママなフォーチュナの相手をして頂いて、ありがとうございました!

ド派手な演出でハートをがっちりキャッチし、危うくローゼスのアッツいベーゼの被害者……じゃない、アッツいベーゼをもらいそうになった貴方に、この称号をお送りしたいと思います。

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称号付与!
『薔薇の花弁を射止めし者』浅葱 琥珀(BNE004276)