● 「やばい」 もう何がどうしてそうなったのか分からない様な言葉を零しながら汗を拭い『槿花』桜庭 蒐 (nBNE000252) は言った。 太陽光が楽しそうに注いで来る。 「すっごいやばい」 ● 時刻は遡り数時間前。 何時も通りのアークの仕事としてエリューション退治に出向いたそうなのだが、とにかくやばいやつだったのだ。 身体は橙色で、何か光ってて、取り敢えず、強そうだったそうだ。 何かバリアとか張ってる気がすると、バリアを張るポーズをとってみる桜庭少年。 因みに最近ハマった少年誌の必殺技ポーズをとりながらトンファーで殴ったら利いたそうだ。 桜庭少年、ポーズは四門先輩や数史さんと練習した後、イツキさんにキレを見て貰ったから完璧だとドヤ顔。あんまり自慢になってないが当人は嬉しそうであった。 「なんか、スッゲーカッコイイポーズ取らなきゃ効かないっぽい、気がした! ほらさ、魔王にフツーにキックして勝っても詰まらんじゃん? ちょっと頑張ってカッコイイポーズ取らなきゃ勝ったとしても勝った気がしないじゃん? 俺のチョーカッコイイ必殺技で倒した感じしないと世界が救われてもtake2だと思うじゃんか!」 世界の平和が二の次であった。 何がどうしてそうなったか分からないが、蒐はラスボスが居たんだよと声を荒げ続けている。 酷い状況に眩暈がするリベリスタが彼の言葉の続きを促した。イマイチ良く分からない。 「いや、まじ、すっげーつよそうなやつがあらわれたんだってば! これはヒーローごっこでもしないとマジでやばいとおもうわけですって!」 「敵の名前は?」 聞いて驚くなよ、と蒐がにぃ、と笑う。 今までにない以上に楽しげな笑顔であった。 「太陽」 眩暈が、した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:椿しいな | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 7人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年08月26日(月)23:23 |
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■メイン参加者 7人■ | |||||
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●本気でつよそう 燦々と降り注ぐ太陽を見上げながら、一人の男は立っていた。 纏う宇宙服。地球(テラ)の事を思うたびにヘルメットの中には涙が溢れ、漂う。 彼は、その時思ったのだ。太陽(ソル)がなければ地球(テラ)はない、と。 『地球・ビューティフル』キャプテン・ガガーリン(BNE002315)が一人回想を行う中、片手にクーラーボックスを持ち、ピクニックにでも行く様な格好をした『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)が汗を垂らしながら俯いている。 如何した、覇界闘士(つよそうなやつ)! 明らかにグッタリしているではないか! 「やばい、熱い。もう暑いじゃなくて熱い」 「……言ったろ、トンファー先輩、すげぇ強そうって……」 ストレッチと屈伸運動を始める夏栖斗の隣、同じく運動を始めた『槿花』桜庭 蒐 (nBNE000252) の言葉に両翼――手を広げた『デイブレイカー』閑古鳥 比翼子(BNE000587)が荒ぶるひよこのポーズ。 「太陽とは天より地上を照らす! エネルギーを超えた命を育む圧倒的な力をもつもの!」 「ああ。太陽(ソル)は必要なるエネルギーだ」 頷くガガーリン。比翼子とは何かがズレている気がする。そう、圧倒的な何かが……。 「まさにあたしのことである! 太陽はあたし! あいつはあたしではない! ゆえにやつはにせものの太陽である! 以上、三段論法!」 訳が分からないよ。 偽物キャラは大体苦戦するけれど勝つのがヒーローだ。『なんかすごくつよそうな偽物』に苦戦しながらも最後の力を込めて倒せばいい。なぜなら比翼子は八月二十日の模擬選(α)さいきょうだから! そう、その時だけ『さいきょう』だったから! そんな彼女たちの前に突如襲い来る『なんかすごくつよそうなやつ』。その顔を見るたびに視線を逸らす『戦ぎ莨』雑賀 真澄(BNE003818)。だが、彼女と違って目を光らせて見詰めている『きょうけん』コヨーテ・バッドフェロー(BNE004561)のテンションはうなぎ登りだ。 「正統派な正義の味方よか使命なんざ無視、戦いでのキモチ良さだけを追求する。カッコよくね?」 「カッコイイ……!」 「命知らずのダークヒーローっぽいやつ! そっちの方が性に合ってんなッ! 蒐のスキなヤツにでてこねェの? そういうカッコイイの!」 あ、でるでる、と高校生・桜庭少年が最近ハマる少年漫画について語り出す。太陽ガン無視である。 スルーされ続ける太陽っぽい良く分からないエリューションを見詰めながら『天晴』高天原 てらす(BNE004264)は英霊聖遺物を手にテンションを上昇させる。超テンション。楽しくて仕方ないと言った風である。 「うぉぉぉ!! ギラギラに照り続ける太陽!! 夏は最高にテンションあがるな!!」 太陽、何処か嬉しそうである。物凄い嬉しそうな太陽のキモさに真澄が小さく息を吐く。そんな彼等に突如、喰らわせられる太陽の紫外線たっぷりの光線。 ――ギィン。 光線をさえぎる様に剣で受け止めて、赤いリボンが靡く。『腐敗の王』羽柴 壱也(BNE002639)ははしばぶれーどから腐のオーラを放ち、立っていた。 「あぶない、大丈夫?」 その全身から溢れ出る腐った――否、破壊の神が如きオーラを感じ、ウザイ顔をしていた太陽が身体を震わせる。 『ふ、腐敗の王――!!』 「なんで知ってるんだい?」 ――戦闘開始! ●そこに太陽が居たから 宇宙服の男が前に立つ。まさか太陽も地上でこんな宇宙大戦に発展するとは思っていなかっただろう。 「ワタシは悲しい。太陽(ソル)と地球(テラ)は親密なものだ。 だが今、太陽は目の前にいる。それではいけないのだ。太陽と地球は適切な関係を保ってなくてはいけない。そうでなければ地球は死んでしまう」 壮大な話に太陽が身構える。殴る蹴るの暴行を繰り広げんとする太陽に構えたSTA-099・チャレンジャー。 ぽか、と軽く殴る音にさえもガガーリンは動じなかった。 いや、身体は傷つかぬとも心が傷ついたかもしれない。そう、心が、じくじくと痛んでいるかもしれない。 「……だからワタシは今、あえて立ち向かおう偉大なる太陽に。何故ならば…ワタシは地球を護る者、キャプテン・ガガーリンだからだ!」 今、地球(テラ)の平和を掛けての守護者(ガガーリン)と太陽(ソル)の戦いが始まった。 凄まじいドヤ顔に真澄は白衣に水着と言った青少年の眼の毒といった格好をしている。セクシーなお姉さんに太陽もはなまるを付けたい位だ。 「お、おやまぁ……なんて顔をしてるんだいこの太陽は……あまりお近づきになりたくないが、致し方ないね」 『――!』 太陽、フラれる。 しかし、太陽は今、キャプレン・ガガーリンにモテている。それだけは事実なのだから。セクシーなお姉さんはカッコよさが減少せぬ様にと仲間達をサポートする様に動き出す。 おおっと、ここで、太陽踏み込んだ! その動きを避ける様に翼の加護を経たてらすが飛びあがる。 「私の名前はてらす。どんな時でも周囲を明るく照らす存在になって欲しいって言う両親の願いと天照大神が名前の由来なんだぜ!」 『良い名前ですね!』 太陽絶賛。満足そうなてらすがふふんと笑う。日向ぼっこ大好きでもこの太陽はいただけない。 「知ってるか! 私はただの太陽じゃなくて太陽神だぜ! 神がついてる分、なんか偉い感じがするだろ?」 『くっ……!』 怯む太陽の前に滑り込み、びしっと炎顎を構える夏栖斗。クーラーボックスは木陰に置いてきた。 トンファー後輩(蒐)と頷きあって、『カッコいい』所を見せるのだ! なんたって、日曜の朝はちゃんとテレビを見てるのだから。カッコイイヒーローを見てるのだから! 「お前の狼藉はここまでだぜ! イッツショータイム!」 かつん、とトンファーを打ち合わせる。太陽に向かって走ると言う青春ドラマの様な風景が其処にはある。 トンファーからビームが出したいけれど、ちょっとそれは後輩には無理だろう。――勘弁してやるよ、太陽! 必殺技はまた来週だ! 「カッコよく行こうぜ! トンファー後輩!」 「おう! トンファー先輩! コヨーテさんもガッツだぜ!」 「やってやるぜェ!」 ドヤ顔コヨーテは革命のダイアモンドを構えて決死の風を靡かせる。ダークヒーローが太陽の様な明るい存在に負けるわけがいかないだろう。 「愛も夢も正義も開くも興味ねェな……オレに必要なのは『戦い』だけ。何にも負けねェ『強さ』だけだッ!」 (カッ、カッコいい……だとぅ!?) ガンッ、と重い石が頭に打ち付けられた感じがする。比翼子とてこんな所で負けてられない。 カッコよく……そう、カッコよければ閑古鳥商店だって売り上げを上げれる筈。たわしが9703個の在庫があるのだから! 「あたしはカッコい……っぐわぁあああああっ! あっちゅ! 足の裏っ! 足のっ裏っ! あっちゅいいいいい!」 「きゃああ、比翼子ちゃんが! 敵に! クッ……何て強い奴なの!? この太陽!」 じたばたじたばた。両翼をばさばさとさせる黄色いひよこ……失礼、黄金のフェニックス・比翼子。 はしばぶれーどを握りしめギッと睨みつける壱也の蘇生魔術(おうえん)虚しく比翼子は熱されたアスファルトから退避し叢へ。 「……あ、あたしは、もうだめだ……みんな、生きて帰ったら『比翼子は勇敢に戦った。正に勇者だった。黄金のフェニックスとさえも呼ばれた』とあたしのファン達に伝えて……くれ……ガクッ」 「ひ、比翼子さぁぁぁん!」 木陰にそっと寄り添う比翼子。彼女の尊い犠牲(?)を胸に特攻する壱也。きらり、と涙が頬を伝う。 「ヒーロは遅れて登場するもんでしょっ! こんな、仲間に対してひどい仕打ち、許さないんだから!」 しかし、彼女の片手にはシュークリーム。「いっちー、ソレ何?」と問いかける夏栖斗の声に壱也は頬のクリームを拭いながらにんまりと微笑んだ。 「あ、これ? 来る途中に特売のシュークリームが売っててさ、ついつい寄り道しちゃった。食べる?」 「あたしの犠牲を! 無視しないで!」 ぴい、と泣く比翼子に笑って、夏栖斗のクーラーボックスの上に置かれた特売シュークリーム。 本日の戦闘のご褒美です。 ●太陽(ソル)と地球(テラ) べちん、べちんと頬を叩く様子は何か異様な光景だ。ぷるぷるとする太陽が御免なさいと両手をじたばた。 何処か喜んでいる表情に真澄の表情が曇っていく。悪いお姉さん(水着着用)がフィンガーバレットにちゅ、と口付けた。 「ねぇ、太陽でも泣くのかい?」 太陽が顔を上げた所に渾身の土砕掌。太陽さんの気持ち悪い微笑みが一気に歪む。両手足をじたばたとさせ転がっていくその様。 ヒールを履いた足でぐりぐりとしながら、太陽の事を見下ろす真澄。ある意味ではご褒美だ。 「ああ、気色悪言ったらありゃあしない、もっとしゃんとしたらどうなんだい!」 『そ、そう言われても、ぴぃ><。』 ぶりっ子の様に泣きだす太陽に苛立ちも急上昇。或る意味ではこれが『酷い』効果だ。 そんな太陽の前に光り輝くてらす(太陽神)。発光しながら仲間達を癒す歌声。両手を広げて優しげな笑顔。 ふわふわと浮かぶてらすの暖かな微笑み。太陽がここには二体存在した。ガガーリンさんも感涙だ。 「太陽暑苦しいだけじゃないんだぜ! ピカーっと光って暖かな光りで仲間を包む! どうだい? 神様っぽいだろう! 私は後ろで皆を支える太陽だ!!」 「ああ……やはり太陽は素晴らしい。太陽が強いのは当たり前だ。 太陽が居たからこそ、そして地表に水があったからこそ地球には美しい自然が芽生え、命が育まれたのだ」 その言葉に照れた様な太陽。瞬間隙をついて、夏栖斗が飛びあがる。続く蒐に夏栖斗は振り仰ぎ「蒐!」と呼んだ。 「必殺のアレだ!」 「うそっ!? あ、はいっ!」 二人揃ってジャンプしたトンファーキック。無茶ぶりに蒐は慌てて飛び上がる。ヒーローと言えばやっぱり、『コレ』だ! 「行くぜ!友情のツープラトントンファーキック!」「キーックッ!」 背中あわせの斬風脚。真っ直ぐ飛ぶソレを繰り出した次の瞬間、蒐が頭から真っ逆さま。 「あ、あー君!」 「蒐まで! クッ……オレが教えてやンよ、味わったコトねぇような地獄をなッ! 傷ついても何かその……それすらかっけェシーンに変えンぜ?」 顔に伝う血――がなかったので汗を拭う。マフラーをはためかせ、真っ直ぐに振り下ろす腕。太陽に与えるカッコよさは此処からだ。 「あっちィな……この位ハンデくれてやったとしても、お釣りが出るけどなァ。でもよォ、止まるワケにゃいかねェんだ。 鳥に『飛ぶな』と言えるか? 花に『咲くな』と言えるか? ……男に、戦士にッ! 『戦うな』って言えンのかよッ!」 渾身の焔が太陽にぶつけられる。灼熱の嵐の中、滑り込む壱也が息を吐く。暑い。折角の夏休みになんてことだ。 「わたしの本気、見てみる? 強いんだから! わたしの件は心の強さ。だからわたしは倒れないし、強い!」 とても、強い! 雷撃を纏うはしばぶれーどが食い込んで、太陽がうろたえる。彼へと下される正義(地球愛)キャノン。 「いわば地球の父、とも言えるのがあの偉大なる太陽なのだ。だがそれも適切な距離感を保っていてこそだ。 太陽が近づきすぎれば地表は焼け砂漠と化し美しい地球は死の星と変わってしまうだろう。 適切な距離感を取り戻さなくてはいけない。母なる地球の為に……喰らうが良い!」 淡々と語り、涙を浮かばせるガガーリン。太陽は、ドヤ顔ながらうろたえていた。 ●母なる大地 混沌とした意識の中、比翼子はぼんやりと夢を見ていた。 木陰は涼しい。熱されたアスファルトは、本当に辛かった。燃える様な熱さだった。芝生も熱い。救いが無い。 ――比翼子……比翼子……聞こえますか……。 「お、お母さん……!? 幼稚園の頃に丸焼きになったおかあさん!?」 ガバリと起きあがるヒーロー願望17歳。びにう。 ――あれは悪い夢です……私は生きているのです……。 「ハッ……そ、そうだった……三歩歩いたら忘れていた……」 まさかの発言を零しながら『お母さん』の囁く言葉に耳を澄ませる。母は、静かな声で比翼子に語りかけていた。 忘れていた。そうだ、お母さんの云う通りだ。私は(表示攻撃力が)強い。自分を信じれば良い。 自分を信じる心を持つ者こそが本当のヒーローなのだから……故に、自分は(ダメージ0でも)強いと信じられる! 「あたしは! 灰の中から蘇る! でもあっついいいいいい!」 けれど、アスファルトは強敵だった。再び、ごろごろごろ。だが、諦める比翼子ではない。 「あ、比翼子が起きたみたいだねぇ。大丈夫かい?」 「あたし、使命を思い出した!」 頷く比翼子に笑う真澄。彼女等の横をすり抜けて、コヨーテと息を合わせて夏栖斗が真っ直ぐに飛び込んだ。 「行くぜ! コヨーテ!」 「おう、夏栖斗、見せて遣ろうぜッ! オレたちのッ! 死角ナシのッ! 本物の『灼熱』ってヤツをよォ!」 コヨーテと夏栖斗。その二人が飛びこむ所へと壱也が声を張り上げる。 「コヨーテくん! 御厨くん! 今だよ! いっけえええええ!!」 彼女の声を聴きうろたえる太陽に向けて両者共に焔を纏った腕を振るい上げる。 「「焔大車輪!!」」 180度ずつ周囲をぐるりと囲んでいく。熱い敵だからこそれ以上の熱量でつっこめ! 本物の灼熱は負けないのだから! 「っしゃ!真澄、ぶっこめ!」 「私のお仕置きは痛いだけじゃあないよ! 熱いのを食らった気分はどうだい、出来損ないの太陽さん?」 「つっづいていくよー!」 真澄の焔が太陽を殴り、姿勢を崩した所へと壱也が滑り込む。 もっと、もっとだ――もっとわたしに力を! 「はしばいちやくれいじーぼむ!」 『腐った爆弾が!』 「う、うるさい! これで終わりだああああ!」 雷撃が、太陽を貫いた。続き、青く美しい地球の正義を望む様にガガーリンの正義が貫かれる。 「マジックアロー喰らってみろよ! 注目するのはこのポーズだぞ! 勢いがあって、キレのある動作やポーズだけがかっこいいなんていうのは間違いだ」 『な、何――!』 「神々しく優雅な動作やポーズだってカッコイイだろ!」 ドヤ顔だった。もはや太陽よりもドヤ顔を行うてらす。コヨーテ。このドヤ顔に込められた地球(テラ)を護る力を受けて倒れ往く太陽を狙った様に比翼子がくつくつと笑った。 誰が決めたか、彼女は最強だ。 そうだ、最強なのだから、戦うと決めた時、既に勝敗は決しているのだ! 高く跳び上がる。てらすの翼の加護は『ひよこ』に翼を与えていた。 飛翔し、反転。天の太陽を背に受け宇宙の力をチャージする。そして目の前の太陽に向けてまっすぐに、跳びかかれ! 「くらえ!星と銀河と太陽に最強を超えた絶対勝利の力を約束されたあたしの究極最終超奥義!!」 ――これは攻撃では無い。ダメージは入らない。 攻撃では無いならば、何か証明だ。これは証明なのだ! 最強の名が真実である事の証明なのだから! 「超!! ひよこ! デイブレイク! キィィィーーック!」 ●いいはなし 「必殺技の名前、ますみパンチとか云えば良かったかい?」 「それ、カッケェな! あっちー……」 コヨーテが暑いのは仕方ない事だろう。上下レザーにマフラー。十分に暑いその格好に大丈夫、と声が掛けられる。 足元は水たまり。いや、これは汗じゃない。戦いの軌跡だ。ちょっとした血とかそういうのと同じである。 「オレは死んでも負けねェんだ、この地球(テラ)にもなッ!」 ドヤッ――! その顔に頷く蒐がすげえと瞳を輝かせる。最近見てるマンガのダークヒーローみたいだと少年大喜びの中、夏栖斗のクーラーボックスからスポーツ飲料が投げ渡される。 「熱中症になったら元も子もないしな! 水分補給大事!」 「あ、シュークリームもあるよ。食べるー?」 特売のシュークリームも合わせ、太陽(ちょっと気持ち悪い奴)を倒せた喜びに身を委ねるリベリスタたち。 「コヨーテさんも読む? 読む? 俺のオススメのヤツ」 「カッケーの居ンの? スッゲーダークヒーロー的な奴がいいッ!」 居る居ると楽しげな少年達の傍、汗を拭いながらスポーツ飲料に口を付ける真澄がシュークリームだと喜ぶ太陽神(てらす)を見詰めてくすくすと笑っている。 蝉の鳴き声が次第に少なくなっていく。暑いなあ、と笑いながら手にしたスポーツ飲料を飲み干した。 「てりゃ」 「ぎゃっ」 ぴた、と頬に当てられたペットボトルに驚き肩を震わせれば壱也が背後で可笑しそうに笑っている。 「いっちー、今日もあっついよなあ」 「あっついねー。あ、御厨くんのシュークリームとってくるね」 いってくる、と手を振る背中を見詰めながら、小さく息を吐く。団扇でぱたぱたと比翼子を仰ぐ蒐にシュークリームを頬張るコヨーテ。 ガガーリンは宇宙を思い地球と太陽の事を憂いていた。小さく笑みが浮かぶ。 『あの子』がいたら何て言うだろう? 「ねぇ、御厨君。また子供みたいに笑うのね」と可笑しそうに言うのだろうか。 「ねぇ、御厨君。ばかねぇ」と楽しげに言うのだろうか。 怒ったりする訳でもなく、ただ、子供ね、と小さく笑ってくれるだろうか。 な、――、僕は笑えるようになったぜ。安心してくれよな。 「……やはり、地球(テラ)は青いな」 空を見上げて呟いたガガーリンの言葉は空に飲み込まれて行った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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