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心身切り裂く氷魔は嗤う

●氷山を攻略せよ
「最近暑くなってきたよな」
 集まってきたリベリスタに『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が掛けたのはそんな言葉。
 とは言え彼もバンドに予知にと忙しい日々、単なる世間話をしにリベリスタを呼んだ訳ではあるまい。
「こういう時期は冷たいものが食べたくならないか?」
 しかし、こういった会話を挟むという事はそこまで切羽詰った事件ではないという事。
 それに安堵し、或いは社交辞令的な返答として首を振ったリベリスタに伸暁は笑った。
「食べたいよな」
 言質を取った、とでも言いたげないい笑顔に、数名は嫌な予感がこんにちは。

「よし、じゃあ今頷いたヤツ、これに行ってくるといい」

 提示されたチラシは『かき氷大食い大会! 優勝者には豪華賞品!』というもの。
 胡乱気な目で見つめるリベリスタに、伸暁は髪をかき上げる。
「おいおい。俺だって単なる大食い大会を勧めてる訳じゃないぜ。これの優勝賞品の一つ。ダウンジャケットがアーティファクトなんだ。
 ああ、周囲に害をなす類のアーティファクトではないから安心して競技に挑んで構わない」
 とはいえ放置はできない、と伸暁は肩を竦めた。
「このアーティファクトは柔らかいが凄く硬い。装備者の行動をほとんど阻害せず副作用もなく、その癖に鉄壁の防御となりえるアーティファクトだ。万一フィクサードに奪われたら面倒な事になる」
 顔を引き締めたリベリスタに対し、フォーチュナの青年はあっさりと続けた。
「ポリエステルだから炎に吃驚する程弱い、って致命的な弱点があるんだけどな」
 そんな所だけ元の性質を受け継いだのか。
 というかそれなら然程の脅威でもないんじゃないのか。

「お前らの力を使えばこれだけ失敬してくる事も可能だろう。
 ――けれど勝者に与えられる栄冠に対し、それじゃ失礼じゃないか?」
 周囲の革醒を避ける為には栄冠とか言ってる場合でもない気がするのだが、幸か不幸か伸暁の予知ではしばらくその兆候は見えないらしい。
 だからと言って参加するのが妥当かと言えばまた別だが。
 そう告げれば伸暁は折角の楽しいイベントなのに盗難騒ぎとか可哀想だろ、とこんな時だけ情に訴えてきた。
 本当に彼自身がそう思っているかはともかく。
 
 気付いたらなんだかんだでサインさせられた人数分の参加申込書をひらひらと振って、伸暁は思い出したように付け加える。
「ああ。規模は町内会の祭りレベルだけれど、内容はグローバルに、って事でシロップを掛けたかき氷だけじゃなくて、フルーツやソフトクリーム、アイスの乗った……つまりハッピンスやらハロハロも食えるらしいぜ。
 ま、具に何をどれだけ乗せても一杯は一杯としてしかカウントしてくれないけどな」
 俺は後から活躍を見させて貰うな、と笑う青年は、明らかに楽しんでいた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:黒歌鳥  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2011年07月26日(火)21:33
 難易度で見破られる程度のタイトル詐欺。黒歌鳥です。

●目標
 優勝してアーティファクトを持ち帰る。
 リベリスタの皆さんの気合があれば優勝できると信じてます。
 もし駄目だった場合はご近所の佐藤与詩子さん(34)のお宅にお持ち帰りされてしまいます。
 そうしたら頑張ってアークの別働隊が摩り替える事になります。大変ですね。

●状況
 多くのかき氷屋台が出ている広場です。
 年齢制限なしで参加可能なので、健康等に配慮してわんこ形式ではありません。
 大会参加者のみが隔離されたゾーンで各自好きな屋台を回って好きなだけ食べます。
 制限時間は一時間。
 最終的に持っていたプラスチック製の器の数で優勝者を決めます。
 屋台の人含め、衆人環視の元で行う競技なのでズルは駄目です。
 こっそり捨てたり拾ったり貰ったり奪ったりすると失格となってしまいます。
 仲間と励まし合いつつ正々堂々頑張って下さい。
 合意の上なら邪魔しあっても構いません。

 一つの屋台の傍でひたすら食べ続けて頭の痛さに悶えるも良し。
 梯子して味を変えつつ限界に挑むも良し。
 何味が食べたいとかこんなのあるかなあとか色々詰めて下さいませ。

 ※注意※
 子供の教育に悪いとの事でゲテモノ系はあまり備えてません。
 食品類の持ち込みも不可です。
 おかず系の具(肉とか海鮮)はないです。お酒はビール程度です(未成年不可)
 終わった後には温かいコーヒー・紅茶・お味噌汁が準備されています。

●備考
 サポートの方は見物客もとい応援扱いです。
 参加者とは別のゾーンで色々なかき氷を食べられますので、どうぞお好きに励ましたり囃したりそれは置いといて食べたりして下さい。
 ただ上記の通り、器を参加者に渡したりすると失格になってしまいますので、送るのは応援オンリーで。

 どうしても食べ放題の方に参加したいんじゃー、という場合も問題ありません。
 ただし程々でリタイアの扱いになります。
 他の参加者さんの士気を盛り上げたり下げたりして下さい。

 優勝までの目安とかは分からないのでフリーダムに楽しんでどうぞ。
 楽しんだもの勝ちです。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
雪白 桐(BNE000185)
ソードミラージュ
天月・光(BNE000490)
ソードミラージュ
早瀬 莉那(BNE000598)
覇界闘士
祭雅・疾風(BNE001656)
ソードミラージュ
桜田 国子(BNE002102)
ホーリーメイガス
月杜・とら(BNE002285)
マグメイガス
宵咲 氷璃(BNE002401)
ソードミラージュ
★MVP
イセリア・イシュター(BNE002683)
■サポート参加者 4人■
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
マグメイガス
丸田 富子(BNE001946)
プロアデプト
己己己己・那洲歌(BNE002692)

●攻略、開始
 晴れ渡る空照り付ける太陽山と並ぶかき氷の屋台上がる花火に賑わう人。
 吊り下げられた横断幕には『納涼! かき氷フェスティバル!』の文字が燦然と輝いていた。

「さー、店開きだね!」 
 気候に逆らわずスク水にエプロンという涼しげな格好で挑む『素兎』天月・光(BNE000490)の背後には氷。店舗の募集は大会参加受付よりも以前に行っていた為に個人店舗は叶わなかったが、人手が足りないと言う地元の甘味処が是非にと協力を求めてきたので一日店員である。氷についてのアドバイスも聞き届けられ、ほぼ希望に近いものを手に今は客を待っている。多分伸暁が知らない間に救われた。代金的に。
 客引きにしては露骨な格好――と思われる事もなかった。足に腕に絆創膏を貼り付け快活に動き回る光は、『元気なスポーツ少女』的な目でむしろ微笑ましく見守られている。
「とりあえず表に書いてあるの全部」
「私もお願いします」
「おおっ、いらっしゃーい♪」
 のっけから豪気な注文を放ったのは雪白 桐(BNE000185)と『がさつな復讐者』早瀬 莉那(BNE000598)の二人。
 とは言え光が提供しているのはスタンダードな三種類。きらきら輝く三つの山も、大会優勝を狙う少年少女らには朝飯前以前の起き抜けの水一杯の様なものだ。さくさくさくさく、さり気なく痛覚遮断を使用して氷の山を掘り進める莉那に、落ち着いて口に運ぶ桐の感想は簡素なものだが、作り手への賛辞は充分に伝わって来て光はにんまり笑う。
「ん、うまいな」
「オーソドックなイチゴはやっぱり美味しいです」
「このかき氷は頭が痛くならないからどんどん食べてねっ!」
 優勝を信じてるからね! と励ましつつ、本日の自力優勝は端から頭にない光はがりごり氷を削るのだった。

 超常の力を扱う、この最下層の世から外れた理に生きるリベリスタ。それも、この世の習いにて生きる場所では全くの無意味なのか?
 否。『さくらさくら』桜田 国子(BNE002102)はそれを否定する。これは試練だ。神か運命かは分からないが、大いなるものが与えた試練。試練に打ち勝つには根性と真っ直ぐな心が必要なのだと古来から決まっている。
 ――と、存分に己を励ましつつ、そんな思いとはちょっと外れた所でうきうきしながら国子は屋台を回る。だって参加費アークの経費で出たし。お小遣い少ないけど思う存分甘くて冷たいもの食べられるし。
 それは常に財政事情と戦わねばならない一般高校生的な身分としては、浮かれて当然の恩恵である。
「もうどんどん入りそうな気がする……!」
 甘酸っぱいレモン味の氷を噛み締めながら幸せそうに呟く国子の耳がちょっとぴこぴこしてるのは、リベリスタだけに見えた事だろう。

 たっぷりとフルーツの乗ったかき氷。フラッペ。言い方はなんでもいい。ともかく氷だ。それに苺。冷凍ではなく生で乗っている。たっぷりだ。『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)と『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)は顔を見合わせて花笑みを浮かべた。
 社会人と学生という垣根を越えた友人である二人は、互いの生活環境の差ゆえになかなか共に出かける事が叶わない。だからこそ仕事とは言え『一緒のおでかけ』に心弾むのだ。
「そあら、そあら、いちごだ! 生いちご! ボクの苺もあげるのだ!」
「苺! 苺なのです! らいよんちゃんあたしにくれるのですか、優しいのです!」
 代わりは桃? それともメロン? きゃっきゃと笑い合う二人の場合、どちらの精神年齢が実年齢に近いのか、というのは気にしてはならない。というかそもそも片方二十歳越えてるけどそう聞こえないとか言っちゃいけない。
「ふ、おお、頭がきーん……!」
「はぅぅ、急いで食べ過ぎたのです!」
 フルーツを交換し合い、揃ってしゃぐしゃぐ氷をかき込み、痛み頭に涙目で見詰め合う彼女らは、それでもこの日、友と笑いあえて幸せなのだから。うん、綺麗に纏まった。二人ともはしゃいで急ぎすぎてごろごろしてるけど。

 そんな二人をにこにこと眺めながら、『三高平の肝っ玉母さん』丸田 富子(BNE001946)は自身も手にしたパッピンスを混ぜて混ぜて口に運ぶ。ちなみにパッピンスとは豆とかフルーツが豊富な韓国産かき氷だ。途端。
 カッ。
「うぅぅぅーーーまぁぁぁーーーいぃぃぃーーーぞぉぉぉーーーーー!!」
 なんだか目が光って背後に氷山(ペンギン付き)が見えた気がするが気のせいだ。何キャラだとか言うな。
 屋台の主――『地元の味を是非日本で!』と意気込んでやってきた大学の留学生交流サークルの面々が照れくさそうに笑った。美味い物は海と国境を超える。そして最高の調味料は込めた思い。富子の優れた舌はしっかりそれを受け取ったのだ。
 滔々と語る富子の講釈全て書き上げたい所だがぶっちゃけそれだけで終わりかねないのでここで割愛。後程『グルメおばちゃん』として彼らのサークルの話題を攫った事も蛇足である。

 しゃくしゃくしゃくしゃく。

●さてそろそろ加速するぞ
 と、極普通にかき氷を楽しむ面々を余所に、独自路線を突き進む面子も無論存在する。

「ブルーハワイは良いね。この青色がなんとも清々しい」
 そう、まるで今日の青空の様に。独自の美的感覚でブルーハワイのみを目前に山と積んでいるのは『キュアリオスティ』己己己己・那洲歌(BNE002692) だ。頑張ろう、という鼓舞と共に、自身も青い山々に挑みだす。
 しかし何故か、先の通り延々とブルーハワイ。そんなに人工的な青が気に入ったのか。それとも青に拘りでもあるのか。本人にしか窺い知れない所だが、その山が減っていくペースは速い早いはやい。スピードだけで言えば、参加者中随一かも知れない。
 だが。
「一般の悔いなし……!」
 脱落も超スピードだった。後は任せた!と本気で悔いのなさそうな声音で言い切りぶっ倒れる。良い子の皆はペース配分も気を付けようね。
 
「フフーン、とらは16歳でもう大人だからぁ~。エ・ス・プ・レッ・ソ お願いしマース♪」
 顎に指を当てて妙な語尾上げ口調で告げた『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)は、ふと気付いてくるりと振り返る。
「あ、練乳はたっぷりで……」
 どこが大人だ。
 しかし優しい屋台のおばちゃんはそんな事には突っ込まない。笑いながら練乳と、甘く作った角切りコーヒーゼリーを乗せてとらに差し出す。この暑い中に着ぐるみを着てきたという根性のようなものも評価されたのかも知れない。
 そんな彼女と『剣姫』イセリア・イシュター(BNE002683)が目標として視界に入れているのが、今回優勝するはずだった佐藤与詩子三十四歳。スプーンに山盛り載せてわっしゅわっしゅと食べていく様子は中々に恐ろしいペースである。大食いの人は基本的に一口が大きいが、一口の大きさと胃のサイズに何か関連でもあるのだろうか。不思議だ。
「ふっ、やるではないか。主婦」
 イセリアはそう嘯いてメロン味のかき氷をしゃくしゃくしゃくしゃく掻きこんで行く。そのままだと飽きてしまうかも知れないので、次々味を変えながら。――いちじくのコンポートは氷と粒々が相俟って実に良い食感だ、とか思えていたのはまだ本気の序盤だったと、彼女は後で振り返る。

「カレーかき氷とかないかな」
 割とニッチ気味な要望を口にする『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)だが、あったよ。普通にあったよ。どんだけカバーしてんだこのイベント。とはいえ本物のカレーをかける筈もなく、あくまでカレー味のシロップを使用したものだ。
 ほんのり黄色くレモンにも似た色合のそれを疾風が一匙掬って口に入れてみれば、広がるスパイスの香り、仄かな甘み、紛れもないカレーの風味。それがうまいかどうかな……まあ、人による。想像よりはおいしい、と考えるべきか、普通のかき氷としては微妙、と考えるべきか。うん、カレー。
「どう?」
「風味はカレーです、ね……ってなんですかその山」
 掛けられた声に顔を上げた疾風が、『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)の手にした氷に思わずカレーかき氷を取り落としかける。
「昇天ペガサスMIX盛り」
 あっさり答えた氷璃だが、何そのアゲ嬢垂涎っぽいかき氷。でもあったんだよ。デコ系かき氷とか言って並んでたんだよ。あまつさえおっちゃんがにこやかに『特盛テンションハートスペシャルと爆盛小悪魔トルネードクラッシュのどっちがいい?』とか聞いてきたよ。どうなってんだこの国は。
「下の氷見えませんけど」
「些細な事だわ」
 涼しげな日傘の下に、やはり色合いだけ涼しげな服をしっかり着込んだ氷璃の答えは、あくまでクールだった。

 しゃくしゃくしゃくしゃく。

●お遊びはここまでだ、そしてここからだ
「うーん、溶けてきちゃいましたね」
「頑張れ頑張れ、行けるぞ桐ぽん☆」
「抹茶ラテに小豆が入ってるみたいな感じです」
 もうジュースみたいです、と言いながらくぴくぴ飲むレベルに到っている桐の隣で、休憩タイムに入った光がフルーツたっぷりのシロクマをはむはむ食べている。甘くて美味しい練乳氷。小豆とフルーツのアクセントが実に良い。
 この辺りはまだまだ平和である。

 そんな光景の横では、イセリアが物凄くがたがたしている。寒さだ。夏は暑いから寒くないとかなんとか叫んではいるが、見た目に寒そうだ。見かねた氷璃が背中合わせに立ち、ふかふかの翼で左右から包んで援護する。わーいもふもふ。
「か、感謝するぞ、戦友……!」
「倒れない程度にね」
 答える氷璃はまだ昇天ペガサス以下略に取り組んでいた。上部の生フルーツは片付けたものの、にこやかなおっちゃんが氷の下のフルーツはがっつり凍らせてくれていた為に中々溶けないのだ。難易度高い。流石昇天以下略の名を冠すだけある。

「平和なイベントだろうが、勝負事で負けてられるか!」
「倒れるならば前のめり!」
「そもそもカキ氷なんかに苦戦しててリベリスタやってられるかっ!」
「その通り、ヒーローは倒れないものです!」
 エキサイトしてきた莉那に合いの手を入れながら疾風もしゃくしゃくしゃくしゃく。あ、このハロハロに入ってる紫芋ペースト美味いなー、とか思う余裕はあれど、ちょっと限界が近い。
「体を温めなきゃ……!」
 ちょっと離れた屋台の裏手では国子が自慢の脚力を生かしてダッシュしている。長さが微妙なので宛らシャトルラン状態。一人体力測定である。近くのお子様がカウントしてくれてるぞ、頑張れ。
「こ、これを食べきらなきゃ人質が殺されちゃうのっ……!」
 とらに到っては一人トリップしだした。違う。彼女の必殺技(その四)マイセルフマインドコントロールだ! ちなみに天使の息はダッシュで体力を消耗した国子に使われた。やあ平和平和。

 しゃくしゃくしゃくしゃく。

 ――とは言え、何事にも終わりは訪れる。簡潔に言うとそろそろ巻いて行きますよ。

「くっ……俺はどうやらここまでのようだな……!」
「ああ、疾風さん――!」
 道半ばとは言え全力を出し切った結果、すげえイイ笑顔で倒れた疾風を支え、国子が自問する。果たして自分達はここまでなのか。試練に打ち勝つ事はできないのか。途中で休憩を取った自分はトップグループからは大きく差を開けられていた。
 いや、まだ希望は潰えていない。自分達には仲間がいる――!
「……これは急がないとですね」
「よぉーっし、沢山削っておくからねっ!」
 積み重ねられたプラスチックの器を眺め、桐が目を細めてペースを上げる。光がごりごり削って削って削りまくって援護する。
「次コーラ! その次カルピスな! あ、ヨーグルトとかもあるのか、じゃあそれも」
 痛覚を遮断した莉那に怖いものはない。食べて食べて食べまくる。

 だが、最も頂点に近いのはこの二人であった。
 寒さに対する対策を取りつつダウンジャケット確保に燃えるとらと、全てを捨てる気概でひたすら気合のみを使い勝利への野心に燃えるイセリアとのデッドヒート。
「クッ……頭が……! だがしかし、難敵なればこそ私のアーク初陣に相応しい相手!」
 背中に氷璃を貼り付けて――正確には氷璃の翼に貼り付いてかき込むイセリア。
 これでいいのか初陣。いいのか最初の難敵認定がかき氷で。
「ふふ……らめよぉ、ダウンジャケットはとらのものぉ……」
 とらもちょっと舌が痺れてきてうまく回ってないがご愛嬌。
 何が彼女らをそこまで燃え上がらせるのか、多分当人ですら分かっていないだろう。
「う、うふふ、ここはサハラ砂漠っ! 直射日光カンカンっ! とらの水分はこれが全てなのよ、貴重な水、さあ流し込むのよ!」
 とらがイマジネーションを働かせ、
「三つの器を横に並べ食べ分ける! これぞ我が必殺のトライ・ミラージュ! 我が前に敵はなし!」
 イセリアが訳の分からない必殺技を編み出した。敵はないも何も、真の敵はそのトライ略を形成するかき氷じゃね、とかいう突っ込みは無粋である。
「あ。頭痛いわね」
 そんな中でも氷璃は冷静に頭痛対策として氷をこめかみに当てている。周囲と相俟ってクールと言うかシュール。

 残り五分です、と思い出したように現れた進行役がカウントする。
 火花を散らすリベリスタ。+与詩子。
 もはや氷をプールしている余裕もない、できあがったものを順次かっこんでいく、冷たい。冷たいが熱い、心は熱い。
「とらの本気、見せてやんぜ……!」
「倒れても構わん! フェイトよ、我が手に!」
 なんか口調まで変わってるとらと、またもやこんな場所で使っていいのか不明なフェイトさえ賭けてイセリアが重ねた器は――たった一杯、イセリアの方が多かった。

 しゃくしゃく、しゃく。

●まだ食うのか
 震え続けながらも食べ続けた少女への拍手は、仲間内からも惜しみなく与えられた。

「悔しいですけど、おめでとうございますですよ。あ、もう時間気にしなくて良いのですよね、追加下さいますか?」
「夏はやっぱりかき氷だよね」
 人参ジュースに人参スティックを刺したお手製かき氷を食べる光はまだしも、食べ続けた桐もまだ収まらない。トック入りのかき氷を食べながら白玉みたいですね、とのんびりコメントする余裕もある。恐ろしい。
 優雅に紅茶を啜る氷璃とて、小休止だと言って憚らない。リベリスタは化け物か。
「すっかり体が冷えてしまったよ」
「味噌汁うめぇ……」
 とは言え、両手を温める様にコーヒーのカップを持つ疾風や、味噌汁(富子手伝い)を手にやけにしみじみ呟くとらの言葉が大方のリベリスタの心情を表していたのも事実である。イセリアは貰ったダウンジャケットを着てぶっ倒れていた。痛覚遮断で突っ走った分、反動が怖い莉那も大人しく汁物を啜っている。普段は孤高を貫く彼女だが、今ばかりは集団の近くに。人沢山いると温かいし。物理的に。

 最後に。
 体重増加を気にしていた国子だったが、突き詰めてしまえばかき氷は元は水。
 フルーツやシロップ、アイスの糖分で多少は増えたと言えようが――まあ、誤差の許容範囲であった事を記しておく。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 痛くならないと評判の天然氷のかき氷でも頭が痛くなった過去があります。何故だ。
 優勝者は気合の点で拮抗していたので最後はダイスの神様に頼みました。
 イセリアさんにはリアルフェイトの加護があった様子です。
 お疲れ様でした。