●悪夢の如き戦闘機竜 機竜。 それは上位チャンネルより来訪したアザーバイドであり、未確認金属生命体の総称である。 彼らは総じて金属の外殻で覆われ、ハ虫類に近いフォルムを有している。 独立した知能をもち、上位チャンネルではこれを恐るべき技術で制御し兵器利用しているが、すべての機竜を思うままに操れるような技術は存在していない。いや、我らが知らないだけだろうか。 機竜は独自に戦闘能力と飛行能力を有し、巧みな空中戦闘を可能とした。 『民間神秘警備隊エンジェルガードの報告書より抜粋』 巨大なガレージの中である。 「一見してただの変態戦闘機じゃが、いじってみればなるほど面白い。ヤツが興味をもつわけじゃなぁ」 瓶底のような眼鏡をつけぼさぼさの白髪をはやした白衣の男が、手袋をした両手をにぎにぎと動かしていた。 手に連動するように彼が腰掛ける車いすからは無数のマニピュレーターが伸び、妙な形をした機械を凄まじい速さで組み立てていく。 ちょっぴり化け物じみた光景だが、どうやら珍しいものではないようで、屈強な金髪男性がコーヒーを二つ持ってガレージに入ってきた。 「コーヒーが入りました、松戸助六博士」 「すまんすまん。おー、ちゃんとシロップマシマシじゃのう。見かけによらず気が利くわい。ええと……リチャード?」 「チャールズ・スィーニーです博士。民間神秘警備隊エンジェルガードの隊長です」 「そこまで丁寧に自己紹介せんでも知っとるわい。そういうワシは……うーむ、そういえばどこの所属なんじゃろう。ニートという気がしてきたわい」 マニピュレーターで器用にコーヒーを飲む博士の横で、男は目の前の機械を見た。 「かつて六道傘下組織松戸研究所にてフルメタルフレームの研究開発を行なっていたあなたが、まさか機竜の人工コアを製造する技術まで有していたとは驚きました」 「『ホワイトマン』の研究内容がそれじゃったからな。これまでコアを回収したり怪人組織から機材をパクってきたりしてくれた連中のおかげでこうして実際的な兵器開発に移れたわけじゃ……その辺の詳しい説明は?」 「いらないでしょう。オープニングをこれ以上冗長にしてはいけない」 「ふむ……メタい。まあしかし、何事も知っている前提で語るのはよくないからのう。必要なところだけ説明していいか?」 博士は後ろを振り返り、一人の女性リベリスタの顔を見た。 補助員 サポ子(nBNE000245)。珍しく名前のあるモブリスタのひとりである。 「はい、よろしくお願いします。現在起きている事態と敵の情報はアークのフォーチュナが粗方解析を終えています。それらの情報とリベリスタ戦力を提供する代わりに、その……」 「うむ」 サポ子、博士、そしてチャールズ隊長は奇妙な機械を見上げた。 「わしらが総力をあげて組み立てたリベリスタ空中戦闘支援アーティファクト運用機械――『メタトロン』をレンタルしよう」 ●『メタトロン』と『賢人号』 所は変わってアーク。 フォーチュナはリベリスタたちを集めてここまでの説明を行なったところだった。 「このように、『賢人号』と呼ばれる9体の機竜が日本海上空に出現。彼らは陸地を目指して進行を始めています。もしたどり着かれてしまえば少なくない被害が発生することでしょう」 モニターに表示されたのは、翼の生えたトカゲのようなフォルムをした機械だった。 「機竜。機械生命体のアザーバイドで、彼らとアークはこれまで多くの戦闘をこなしてきました。今回の機竜『賢人号』はエネルギー弾による機関銃や、高性能な誘導機能を持つエネルギーミサイルを搭載し、かなり高度な空中戦闘を行なうようです」 となれば、こちらもそれ相応の準備をせなばなるまい。 具体的には、常に飛び続けていられるリベリスタを相当数用意するということだ。 「現場への空輸と翼の加護支援についてはサポ子さんが行なってくれます。皆さんには飛行状態となり、彼らを海上で撃破してもらいます」 とはいえ相手もそれなりに強力なアザーバイドだ。レベルの足りないリベリスタもいるだろう。 ということで……。 「今回、戦闘経験の低いリベリスタでも空中戦に耐えうるよう、支援機体を二機貸して貰っています。詳しい説明は資料をご覧になってください。では――」 扉を開け外へ出るとヘリの音が近づいてくる。 「早速出発して下さい。どうかご武運を」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年08月26日(月)23:34 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●戦場上空にて 兵士輸送用ヘリ内。 強化ガラスの窓から見える雲の近さに、『二つで一人』伏見・H・カシス(BNE001678)はしばらくの間黙っていた。だが戦闘区域へ近づくというアナウンスを受けた途端、急に人が変わったように頭を抱え出した。 「うわああああ高い高い高いやだああああああ! おりるおりるうううう!」 「ど、どうしたの! 何があったの!?」 「あー、その子の『それ』はいつものことなのでお気になさらず」 平然とした顔(ただし仮面である)で銃の手入れをしていた『怪人Q』百舌鳥 九十九(BNE001407)が僅かに顔をあげるだけですぐに無視した。 なじみの人間が気にするなと言うならまあそうなのだろう。 セレスティア・ナウシズ(BNE004651)は両膝に手を置いたままじっと足下だけを見ることにした。 精神が多少以上に壊れている人間は革醒者界隈に少なくない。それはこちらの世界と接して割と初期に知ったことだ。フュリエの中にもそういうヤカラは随分といたので、まあまあ珍しくも無い。 ただ一番問題なのは、これだけの高度まで上がったのが人生初めてだということである。 「……ふ。せいぜい、愉しませて貰うわよ」 あと、膝がやばいくらい震えていることである。 ぱらぱらタブレット端末を操作していく『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062)。 その横では『折れぬ剣』楠神 風斗(BNE001434)が腕組みをしていた。 「過去の報告書に目は通したか」 「炎型のことだな。元は人間だと推察されていたが……」 「ああ、読んでもますます分からない。規模的に見て尖兵のような雰囲気だし、どうも不穏だ」 「まあよく考えたら、お名前がちょっと変ですしね。最近のきりゅー」 経験があるのかと聞かれ、『ミックス』ユウ・バスタード(BNE003137)はこくこくと頷いた。小銃の点検を終え、サイトを確かめているところである。 「前はなんだか、日本の戦闘機や軍艦の名前だったんですよ。最近はやってるでしょう、天雷や大鳳なんていう……今は名前も雰囲気も随分違いますよね」 「んー? なんだかよく分からないけど、とにかく飛べるんだよね! そこまでは分かった!」 腕をぐるんぐるん回す『むえたいがー(ドヤァ)』滝沢 美虎(BNE003973)。 「そうですよー。鳥になりましょー、びゅーん!」 「いえー!」 勝手にテンションを上げ始める二人。 そんな彼女らをよそに、 『アンデファインド』街野・イド(BNE003880)はブロック中央にベルト固定された二台の『メタトロン』に目をやった。アナウンスが入る。 『エースの皆様。まもなく戦闘範囲に突入します。ご指示通り敵群頭上からの降下作戦となります。イド様、セレスティア様は直ちにメタトロンに搭乗、固定処理を行なってください』 「分かりました、加護をお願いします」 イドはセレスティアと並んでメタトロンに搭乗。両腕両足を専用のソケットに挿入し、抱きつくような体勢で胴体もベルトで固定してもらった。 ヘリの後部ハッチが開き始める。 「異世界の技術から作られた神秘兵器。学習し、理解し、性能を引き出します。故に完全なリンクを」 ハッチが完全に開いたのを確認。 「メタトロン、テイクオフ」 翼の加護を受けた仲間と共に、イドはヘリから勢いよく飛び出した。 ●賢人号 さあ。 あなたの空想の中に広大な青空を描いて欲しい。雲は足の下に。より深いコバルトブルーの成層圏がはるか頭上に。常人であれば押しつぶされそうな空圧を切り裂き、殺人的なスピードで飛び出したあなたは急激な上向きターンをかけて真下へとカーブ。 丁度この地点を通過する筈の機竜『賢人号』九機を索敵――発見。グリーンのフィルタ上に敵アイコンと識別番号、HPメーターと目測距離数を描画。敵耐久性能と速度、武装強度その他を六角グラフで表示。上部に赤文字でENGAGEと表示された。これらは全てイドのエネミースキャンとハイテレパスによって脳内に描画されているものである。 ぱっと手のひらを突き出す美虎。 「むぁてまてぇい! 暴れたいならむえたいがーと仲間たちがこの場で相手になっちゃる!」 「仲間たちとはずいぶんだな」 ニヤリと笑う風斗。 「通過地点が分かるなら上もとれるというわけだ。初撃でダメージを稼ぎたい。遠2攻撃は待って、充分引きつけてから全体攻撃を浴びせかけろ。俺と美虎は幻A(アルファ)を集中攻撃。カシスは歌を連続発動、防御はセレスティアに一任しろ。いいな!」 「うっしゃー! とらカッターいくよー!」 飛び回し蹴りの構えをとる美虎。剣を大きく腰の後ろへひく風斗。 二人のカマイタチが十字に重なり、間抜けそうに飛ぶ機竜に向けて放たれ――たまさにその瞬間。 機竜九機はそれすべてが一個体の生き物であるかのように全く同時にコンパクトターン。戦闘機ではまず行なえない直角な上方カーブをかけると花のように一斉展開。九本の開放螺旋を正確に描きつつ機関銃射撃をしかけてきた。 「うお――!?」 リベリスタは、特に風斗は良くも悪くも人間である。今回はむしろ悪い意味で人間であった。 空中戦闘において『頭上と足下』が死角になるのは重力にとらわれているからだ。だが革醒戦闘において重力はつゆほどの価値も持っていない……などと説明するまでも無く。 「全員避けろ!」 「それが出来れば苦労しない」 杏樹はバックラーを前方に突きだして寝るような姿勢をとり被弾率を下げつつ銃を構えた。 「広がりきる前に一発はいれる。九十九、手伝え」 「はいはい」 九十九と杏樹は同じ体勢で背中と盾と合わせると、それぞれ斜め前方向に銃を突きだしたまま高速で回転。炎の矢と弾丸が大量にまき散らされ、螺旋回途中の機竜たちへと浴びせられる。 弾幕と弾幕が交差し、お互いの身体をめちゃくちゃに蹂躙し合った。 ユウはそんな鉛の濃霧を垂直降下で無理矢理突っ切ると、翼を大きく広げて180度ターン。小銃を親指で連射モードに切り替えると円を描くようにインドラの矢を乱射しはじめた。 「弾幕負けしてるっ。カシスさん、回復弾幕張って!」 「うわわっ、わかりま――わかっ――うおおおおわ!?」 「落ち着いてっ、どっちかに収まって!」 高所と弾幕に晒されてパニックになりかけたカシスだが、そこは場数を踏んだリベリスタ。天使の歌を展開し、味方の傷を即座に修復しにかかった。具体的に言うなら、風斗たちの腕や足に空いた一センチ程の穴を無理矢理肉で塞ぐような有様である。 そんなカシスとて弾幕に晒されているのだ。 避ける自信もまるでない。だが当たる心配だけはなかった。 「こ――んの!」 セレスティアがメタトロンのボディを横向きにしてカシスの前へ滑り込ませる。エネルギーシールド展開。弾幕が次々にめり込み、エネルギーをめりめりと消耗させていく。顔のすぐそばにある耐久メーターが目に見えて減っていくのが分かった。 「もうちょっと我慢しててよね。こっちの世界もこっちの空も、リベリスタ仕事するのも初めてなんだから。一瞬で落ちちゃったらみっともないのよ!」 弾幕が一瞬薄れた所を狙って意識を集中。ホログラフィックディスプレイにELL-RAYと表示された。途端、人の頭ほどの光弾が出現、見えないライフリングを走り螺旋回転をかけて発射された。弾が機竜の首へ急速接近。スローモーションの中で更に遠くから発射されたライフル弾と合流し、機竜の外装甲を破壊、内部構造をかき混ぜながら反対側より突き抜けた。女性の断末魔ともとれる声をあげさせ首部分を破断。機竜はきりもみしながら墜落していった。 はっとして上空をみやるセレスティア。 10mほど離れた位置でイドが無表情にこちらを見下ろしていた。メタトロンのヘッド部分からは機銃のようなものが露出している。 脳内のグリーンフィルタに『幻A_撃破。→次目標_幻B』と表示される。 セレスティアは片眉を上げてそれに応えた。 序盤の弾幕合戦で相手のスタイルは大体読んだ。機竜たちは隠し球の存在に一応警戒しつつ、カシス及びその壁役への集中攻撃を行なうことにした。 一機が機関銃射撃を継続。その間残り七機が花のつぼみを閉じるかのような軌道を描いてカシスへ集中した。 「伏見狙いか、そうはさせん――いくぞ滝沢!」 「おっけー合わせるよっ! 拳剣一触――!」 自分たちを通過しようとした一機めがけ、風斗が全力で剣を叩き付ける。 首部を叩かれて体勢がブレる機竜。そこへ美虎は強引な斜め回転からのエルボーアタックを叩き込んだ。 「とらエルボー!」 首をごきりと折り曲げられる機竜。せめてもの抵抗か、背部から露出させた誘導ミサイルを発射。他の機竜たちと混ざってカシスへと急接近する。だがそれが最後の一発だった。首の折れた機竜を待っていたのは、風斗の剣が腹を貫通するという当たり前の未来だけである。 「二機目撃破! 避け――」 「――れるわけないでしょ!」 誘導ミサイルの複雑怪奇な軌道はまず避けようがない。セレスティアはメタトロンのボディを無理矢理叩き付けて強制被弾。ボディが拉げて小爆発を起こした。 「セレスティア!」 「いいから回復に集中!」 被弾した箇所をそのままに、機関銃射撃からカシスを庇ってボディをさらす。神経がくっついているのか激しい痛みが全身に走った。 「うっ……く!」 歯を食いしばるセレスティア。エネルギーシールドをできるだけ多く展開した。 「もうちょっと我慢してね。あとで美味しいお酒奢るから!」 「き、機械にお酒はちょっと……」 カシスは今回、生憎単体向けの回復スキルは積んでいない。せめて威力を増すべく聖神の息吹を顕現。セレスティア(もといメタトロン)の損傷箇所を鬱ぎにかかる……が。 全力で突っ込んできた機竜がメタトロンに直接かじりついた。押し込まれる。が、カシスにぶつからないように逆噴射をかける。 そこへ複数の誘導ミサイルが接近。 セレスティアは大きく舌打ちすると、せめて片側だけでもとメタトロンのボディをぶつけた。 連続爆発。 「伏見!」 「セレスティア!」 天を仰ぎ見て叫ぶ風斗と虎美。彼らが目撃したのは、耐久限界までカシスを庇って大破したメタトロン・セレスティア機と、残りの誘導ミサイルをしこたま食らって腕や足をもっていかれたカシスだった。咄嗟にフェイトを消費して腕と足を復元。聖神の息吹を展開しようと試みる……が、そこへ機竜が突撃。カシスの胴体へおもむろに食らいつき、肉食獣のそれと同じように振り回して放り投げた。 盛大に血とその他をぶちまけて墜落をはじめるカシス。 「ちょ、やばいんじゃ……!」 『負傷者の保護はお任せください。戦闘の継続を!』 サポ子からの通信を受け、カシスたちのキャッチをとどまるユウ。 「よそ見をするな。こうなれば先に相手を潰した方の勝ちだ」 銃を振りかざすと、薙ぎ払うように降りつつ連射。大量に打ち出されたインドラの矢が機竜たちに突き刺さり、つぎつぎに炎を上げた。脳内に表示されているHPメーターが減っていくのが分かる……が、全員おしなべてというわけではない。相手も回避と防御をしているぶん、多少はダメージ量がばらけるものだ。 そして生き残った機竜は一斉に杏樹めがけて誘導ミサイルを叩き込んできた。 「そうだろうと思った」 接近したミサイルを無理矢理ふんずけると、爆風に乗って次のミサイルを回避……するが、三発目が背中に着弾。もろに食らって吹き飛ばされる。舌打ちしながら身体ごとふりむき銃を構えると、眼前1メートルの所に機竜が迫っていた。銃を連射。目と思しき部分を集中的に攻撃。対する機竜も爪を突き出し杏樹の眼球をおもむろにえぐった。 「う――ぐぅあああああ゛っ!」 両目から滝のように血を流しながらも聴覚と嗅覚を集中。いましがた通り過ぎた機竜へ正確に射撃をしかけてやる。だがそこまでだ。クイックターンで戻ってきた機竜の口が目の前でばっくりと開いたのを、音で察した。 「なあ」 真っ暗な視界と激痛の中で問いかける。 「お前は誰に改造されたんだ?」 開いた口のなかに、淡く光る正十二面体が見えた。 杏樹の小さなあたまが機竜の口におさまり、ばくんと閉じられ、そのまま通り過ぎる。 「不動み――!」 「さわぐなうっとうしい」 妙な発音で述べてから、杏樹はベールのない頭をふるふると振った。 「奴め、正確に眼球をえぐってきたぞ。まあ支障は無いが……それは奴も同じみたいだな、無駄弾を撃った気分だ」 「いやあ、流石に死んだと思いましたなあ。さて」 銃を構える九十九。そこへユウが合流し、辺り一面を真っ赤に染めるほどの全方位射撃を開始した。 脳内のグリーンフィルタに表示されたHPメーターが一気に削れ、全ての機体にEMPTYと表示された。 ぼろぼろに崩れて墜落しはじめる機竜。 脳内に大きくCLEARと表示された。 「おっとっと、戦利品戦利品と」 落下する機竜の頭をむんずと掴むと、九十九がどこか満足げに肩を揺らした。笑っているのかも知れない。 「しかし今更ですが……飛行しながら同じように飛んでいる相手を拳銃で撃つっていうのは、なかなか非常識ですなあ」 「そうか? まあ、そうかもしれん」 迎えのヘリを確認し、九十九と風斗はゆっくりと帰還の準備を始めた。同じくゆっくりとメタトロンと共に降りてくるイド。 「任務完了。賢人号のコアや部品を回収したいのですが、可能ですか?」 『杏樹さんと九十九さんにお手伝い頂けるならあるいは。メタトロンも利用しますか? チャールズさんたちが死亡するまでエネルギーを搾り取ればあと十分は稼働できそうですが……』 「いいえ。I、私はまたメタトロンに搭乗したいと考えます。ところで、この中に誰かが入って?」 『…………知りたいのですか?』 「…………はい」 『あとで教えます』 ●人工物の限界 この後、杏樹のマスターファイブと九十九やユウの熱感知を利用して比較的損傷の少ない機竜幻型『賢人号』のサルベージ作業を行なった。この間カシスの式神がやたらと役だったことは付け加えておく。 水上に浮かんだヘリへとくずれた機体を引き上げてきたところで、ユウたちはぎょっとした。 床に二人の巨漢がでろんと横たわっていたからだ。 ユウと風斗は微妙に面識があるので余計だ。彼らは確か……。 「ボブとカニンガム……チャールズの部下か? なぜここに」 「メタトロンの人工コアとして貢献していたからです。二号機は大破しましたので、ボブさんは暫く入院が必要ですね」 さらりと述べるサポ子を前に、風斗の顔が青ざめた。 「それは……」 「時間がないので説明を省きますが。メルボルン作戦で回収した人工コア製造技術を松戸博士が解析、応用したものです。彼らFL世界人にしか適用できませんでしたが、命の危険はないとのことです」 よく見れば、ボブたちは床に転がっているのにカシスやセレスティアはシートの上で綿毛布にくるまっていた、圧倒的な扱いの差を感じる。 「あっ、えっ……と」 ナイーブな風斗や美虎は言葉に詰まっていたが、その点杏樹や九十九は冷静なものだった。 「回収してきたコレ、アークで解析できるかしら」 「あのおじさんに丸投げですかな? かなり後回しになりそうですのぅ。それならいっそ」 「I、私は松戸博士へ提出することを提案します」 シートに腰掛けていたイドが視線だけ動かしてそう言った。 「彼らは専門家です。また同じ敵が現われた時にむけ、メタトロンの技術向上を図れるでしょう」「それはそうだけど……」 持ち込んだカップ麺をもぐもぐし始めたユウへと視線を移す。 「よろしくおねがいします」 ハッチを閉じたヘリは水上を離れ、夕日を背に飛び立った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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