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遭難った!!

●バトった!!

 ――その戦いは過酷だった。

 とある島に現れたアザーバイド。
 それを倒すため、リベリスタたちはこの島に訪れたのだ。
 木々がいくらか生えて森をつくり、崖には波と風が削って創りだした小さな洞窟のある無人の島。
 接岸したボートを目ざとく見つけて敵襲を察知したアザーバイドは、リベリスタたちと死闘を繰り広げ――そして、遂に消滅したのだ。
 ボートを巻き添えにして。

●こまった!!
「ちょっと、どうしろっていうの!?」
 木っ端微塵、という言葉がふさわしいボートを前に愕然とした顔で喚く『深謀浅慮』梅子・エインズワース(nBNE000013)を無視して、リベリスタは幻想纏を起動する。通信の向こう、アークのオペレーターはこちらの説明で状況を把握すると『すぐに船を要請します』と請け負ってくれた。
 海原を見渡しても、夏の陽が強くぎらつかせる波が時折目に付くばかりである。
「もうっ! こんな強い日差しじゃ、日焼けしちゃうのだわ」
 梅子の言葉に何人かのリベリスタがツッコミを入れようとして、気がつく。
 彼女の翼が、傷付いていた。
「――? ああ、これ? ……まあ、重傷ってほどじゃないのだわ」
 そういえば、アザーバイドとの戦いを終えてから梅子は一度も飛ぼうとしなかった。
 平気だと嘯く梅子が、しかし羽を一度も動かそうとしないことが、怪我の程度を物語っていた。
 帰還のための救援はすぐ来るはずだと、梅子に伝えようとしたリベリスタの幻想纏から、オペレーターの声が聞こえた。
『ゴメンナサイ、すぐ迎えに行くのは難しそうです』
 ――今、なんて言った?
 絶句したリベリスタの心の声を聞き取ったわけでもあるまいが、オペレーターは申し訳無さそうな声で言葉を続ける。要点だけ抜き出せば、既に出向いた急な救助要請や故障など、様々な偶然や不運が重なって、今、この島にすぐ向かえる船やヘリはまったくないということらしい。急いで明日の昼前になる、とか。
 リベリスタたちは顔を見合わせる。
 肩をすくめて、梅子は言った。
「無人島一日生活、ってことね。遊びに来たと思えばいいのだわ」
 強制バカンス(?)、はじまり、はじまり。




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ももんが  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年08月28日(水)23:27
そうなんった!! ももんがです。
ちょっと変わったお話なんかいかがでしょう。

●一行でわかるOP解説
討伐に行ったはずが、ちょっとした事故で無人島に閉じ込められてしまいました。

●時間
討伐終了時点でAM10時です。
迎えの船は翌日AM11時頃に到着します。

●戦闘
はげしいたたかいでした。
リプレイ開始時点で既に終了していますが、どんな敵だった、とかどんな怪我をした、など自由に自己申告してもらって構いません。スルーしても構いません。
なお、重傷を負っている、と主張した場合は重傷になります。

●事前準備(※じゅうよう)
今回の遭難は事故です。
事故であるため、万華鏡で予測できていなかったものとして扱います。
各種アイテムやアークからの支給品は、戦闘の準備として持ち込んだもの、と理由付けが出来るものは持ち込んで構いませんが、遭難生活を快適に過ごすためだけに持ち込むことはできません。
(例として/普段からアウトドア趣味であるなどの理由なく大型テントを持ち込むのは難しいでしょうし、討伐後に遊ぶつもりだった場合は水着を持ち込んでいても不思議ではないでしょう)

●無人島
何十年か前までは住んでいた人も居た小さな島です。
現在では周囲十数キロを海に囲まれ、文字通りの孤島となっています。
島の中心から森が広がり、数件だけある建物なども森に飲み込まれ、ほぼ廃墟と化しています。
こういった無人島にありそうなものなら概ねあります。

●梅子
羽は捻挫のような状態だと考えて下さい。
この依頼中は飛ぶのを嫌がります。
放っておいても勝手に遊んでいますが、何か特別にさせたいことがある場合は相談で【梅子確定】と付けられた『最初の』発言を参照します。
ただし、【梅子確定】の発言が600字を超えた場合は何も指示されなかったものとして扱います。
また、相手は梅子です。その指示が気に喰わない場合などは従わない可能性があります。

●成功条件
楽しんで下さい。無人島の一日を快適に過ごそうと努力するも良し、脱出しようと策を練るも良し。
ただし、脱出を目指す場合は梅子が不調であることを考慮して下さい。


参加NPC
梅子・エインズワース (nBNE000013)
 


■メイン参加者 8人■
ソードミラージュ
カルナス・レインフォード(BNE000181)
マグメイガス
アーデルハイト・フォン・シュピーゲル(BNE000497)
ナイトクリーク
ジェイド・I・キタムラ(BNE000838)
クロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
クロスイージス
セリオ・ヴァイスハイト(BNE002266)
ホーリーメイガス
メイ・リィ・ルゥ(BNE003539)
レイザータクト
ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)
マグメイガス
リンディル・ルイネール(BNE004531)

●自らの遭難を知った『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)曰く。


「へー、そうなんだー☆」






「やめろ、そんな目で見るなーやめろー武士の情けだー!」
 そんな叫びをあげるベルカを生暖かい瞳で見つめながらリベリスタ達は状況を再確認する。
「プラムちゃんを傷つける最悪な敵だったが何とか倒せたな。
 それにしても移動手段がなくなるなんて、何という幸う……災難だ」
『プラムLove!』カルナス・レインフォード(BNE000181)の口から本音が転がりかける。ただ、カルナスの言うとおりボートは文字通り粉々で、使い物になる場所を探すより乾かして焚き火の薪にする方法でも考えたほうが有益だろうという状況だ。
 エンジンも、動かすなど到底できそうにないのを確認し『チープクォート』ジェイド・I・キタムラ(BNE000838)が不景気な表情で粘りを手から振り落とした。この粘液の正体はわかっている。考えるまでもなく、ヤツのものだ。
「――いや、激しい戦いだった。
 夏にクラゲは風物詩とは言え、あんな馬鹿デカい奴が……いや、なんか魚介類だったよな。多分」
 段々と自信を喪失しているのは、粘液が妙な臭いを放ちつつゆっくりとその手を焼こうとしているせいか。波に手を突っ込んで洗い落とすジェイドの後ろ姿に『興味本位系アウトドア派フュリエ』リンディル・ルイネール(BNE004531)が疑問符を投げた。
「何ていうんですか? あれ? タコみたいな、あるいはイカみたいな感じだったんですけど。
 タコもイカもお寿司は好きですけどー、触手でぬるぬるやられるのは大嫌いです……」
「クラーケンのような巨大な海洋軟体生物です」
 リンディルは「たこわさ」が何なのかも知っているくらいには日本の食事に慣れたフュリエだ。イカタコの原形も頭のなかに浮かんでいるのだろうが、味が舌に蘇るほうが早かったのかもしれない。彼女の疑問に答えたのは、色々な意味で火照った体を弱冷気の魔法で冷ましている『銀の月』アーデルハイト・フォン・シュピーゲル(BNE000497)。
「それにしても、強敵だったな……タコだかイカだか、何にせよヌルヌルしていた。
 その上ベトベトする何かを吹きつけてくるのだから、これが海でなければどうなっていただろうか」
 髪についたベタベタをぶるぶると濡れた犬のような仕草で払い落とそうとする『そうなんだー☆』ベルカ。
「うう、体がべとべとですよぅ……?」
 強敵との戦いが残したダメージは皆無ではないが、精神的ダメージは(特に女性にとって)意外に深刻なものだった。梅子なんか地味に静かだと思ったらさっきからずーっと海水でバシャバシャとひたすら羽を洗ってたりする。よほど気持ち悪かったらしい。さらにしっかり洗おうと羽を動かしかけて顔を歪めた梅子に、色んな意味で我慢ならない状態だった人物がいた。
「――プラム嬢を傷つけさせてしまうなんて、一生の不覚。
 プラム嬢はもちろん、桃子嬢にも申し訳が立たない。これはもう、腹を切って詫びるしかないじゃないか。
 誰か、誰か! 介錯を頼む!!」
『うめももの為なら死ねる』セリオ・ヴァイスハイト(BNE002266)である。思い詰めたセリオの叫びは、しかし一心不乱に羽の手入れをしている梅子の耳には入っていない。
 梅子と同様ベトベトの洗い落としにかかっていた――こちらは手足だが――『アークのお荷物』メイ・リィ・ルゥ(BNE003539)が、落ち具合に納得のいった様子でふう、と息を吐いた。
「……うん、凄い戦闘だったね。
 タコだかイカだかは全体把握できなかったからわかんなかったけど、うねうね触手でプラムちゃん達が手足とられてあれやこれや、挙句に何故か粘つくイカ墨? でぬとぬとぐかぐちゃ」
 実際の所、イカスミかタコスミか消化液なのかすらわからないけれど。
 メイがその激しい戦闘の模様を(何故か)ビデオを構えて録画していたのは、一体誰の要望なのか。
 それはともかく、ビデオの無事を確認したメイは、はああ、とひときわ大きくため息を吐いた。各種状態異常や大ダメージを連発した敵を相手に後衛多めの布陣で挑んだため回復役の負担は大きく、いわゆるガス欠状態のメイである。もうこうなったら録画係貫いてやる、なくらいの気分なのだ。
 一番ダメージが大きかったのは再前衛で敵の攻撃を受け続けたクロスイージスたるツァイン・ウォーレス(BNE001520)だったわけだが――彼は同時に、当然のように最も丈夫だった。
「ま、気休めだけどなっ、いくらかましだろ? 痛くなったら無理しないで言えよな~」
「痛くないわけじゃないけど……これくらいならそんな酷い状態じゃないのだわ」
 痛そうな様子を気にかけたのか、英霊たちに呼びかけてその誇りを梅子に光臨させる。ツァインとリンディルのふたりがガス欠なしの回復技持ちだったことも、このメンバーが全員重傷なしで生き残った理由でもある――のかもしれない。梅子の怪我の程度は腫れ上がっているのが少し痛々しい程度、これなら確かにすぐに治るだろう。アーデルハイトもまた、濡らしたハンカチを梅子に渡しながら同じ結論に至る。周囲に心配をかけていることに気がついた梅子が勢いをつけて立ち上がり――そこで初めて、彼女は見た。
 砂浜の中心に、正座しつつ、上着を脱いで手触り良さそうなおへそ周辺(水着絵参照)をさらけ出し、ブロードソードを自分に向けるセリオの姿。
「……セリオ? 敵はもういないんだし刃物なんてしまうのだわ」
「な、何と優しいお言葉!! こんな俺でも生きててもいいと!?
 このセリオ・ヴァイスハイト……今まで以上にお役にたてるよう努力します!!」
 辞世の句を読もうとしていたセリオの耳に届いたのは、後半だけだったのかもしれない。
 梅子は首を傾げてから、まあいいか、と切り替えた。
「??? ……まあいいわ。ともかく、これからどうするか決めなきゃね」
「ひじょーに仕方ないが明日までここで過ごさなければいけないな……ひゃっはー!
 よっし、プラムちゃんと一緒にサバイバルだ!」
「一日無人島生活か! たまにはこういうのもいいじゃんかっ」
 カルナスの(何故か嬉しそうな)宣言にツァインもノリノリで同意し、ベルカが涎をだばぁしながらしっぽをぶんぶんと振る。
「未知の秘境を探検する……これが浪漫で無くてなんだと言うのか」
 ろまんですね。
「私はここに秘島探検隊の結成を宣言する!
 名誉隊長は同志プラムで、行動隊長は私だ!
 その他にも、同様の作戦行動を行う者は暫定隊員と見なす!
 探検隊の任務は、大きく分けて二つ、必要物資の調達と、周辺地域の探索である。
 今回は救出期限が判明しているので、当該日時までの体力維持が最優先とされる。
 よって、重視するのは物資の調達! 特に水の確保は最優先であ……る?」
 熱弁していたベルカがふと周囲を見ると、既に彼女はポツンだった。
 げんじつはひじょうである。


「寝床の廃墟探しは午前中で切り上げたほうが良さそうだな」
「夜に廃墟を探しに行くのは怖い気がします! なんというかホラー映画的な感じで!」
 万が一見つからなかった場合、そして使い物にならなかった場合は、別個に寝床になる場所を作らなければならない。時間を切って探すというカルナスの提案に、反対意見は出なかった。積極的に賛成したリンディルもよくよく聞けば「昨夜そういうDVD見ちゃったんです、ものすごく後悔……」とのこと。キノコ人間の映画とかか。
 とにかくなにもしないまま夜を迎えることだけは避けるべく、建物探しに数名が森のなかへと分け入った。
「一応飛べるから、空から廃墟とか井戸とかそーいうものが見えないか探してみるよ」
「頼んだ。九人がとりあえず休める位広い場所があれば良いが、無理は言わねえさ」
 自身がフライエンジェであることを好ましく思っていないメイだが、この緊急事態にそうも言っていられない。ジェイドの言葉に頷くと、空を目指す。戦うわけではないのだ、多少の無理は利く。ゆっくりと旋回したメイが樹木の緑が不自然に少ない場所を見つけるのに、然程時間は必要なかった。近寄れば、間違いなくそこは、かつて学校として使われていただろう建物。
 メイは下から見上げているリベリスタたちに、こっちにあると示して廃墟に降り立つ。
 ――ずざざ、ざしゃあああ。
 滑ったり転んだりする音が遠くから聞こえた気がした。
 そういえば、地上に道があるのかどうか確認していなかったと、メイは思い至る。
「……墜ちたり躓いてもボクのせいじゃ無いよね?」
 小さな校舎。たったひとつしかない教室の窓ガラスは既に残らず割れていたが、木板の床は白く埃が積もってこそいたもののかつての質感を残している。
 少し遅れて到着したアーデルハイトは髪に絡まった樹の枝を払うとふむ、とひとつ唸った。
「皆で休める場所を確保するためには、掃除や瓦礫の撤去が必要でしょう」
 言いつつ、彼女が私の寝袋はこれですからと取り出したのは棺だった。
 ――鏡に写る吸血鬼の矜持として、どうやらそのあたりは曲げられないらしい。

 樹の枝や蔦で作られた箒を構え、足元を土で汚したセリオが気炎を上げる。
「正直、プラム嬢以外は放っておいてもサバイバルできそうだしな。
 プラム嬢が使用するスペースのみは完璧に仕上げる。
 今日一日過ごす為の、などと言う半端な考えは捨て去る――妥協は許さない、劇的に奇跡的なビフォーアフターを見せてやるぜ」
 遭難という状況も、セリオにとっては情熱のスパイスにすぎない。
「常識にとらわれてはいけない、時には一度破壊することも必要だ」
 匠、ここに降臨(?)。
「破壊そして再構築……奇跡を召せるぜ! 梅桃運命黙示録ッ!!」
 なんということでしょう、セリオの箒が凄まじい勢いで埃を排除していきます(全力手作業)。
 埃をかぶっていた電球もすっかりぴかぴかに(やっぱり手作業)。
 ――その電球につながるはずのスイッチをぱちりと鳴らして、電源が繋がっていないことを確認するジェイド。勿論、電力などとうにこの島には送られていないのだが、それは発電を可能とする彼の前では問題にならない。かぎ裂きの増えた上着を脱ぐと、工具を手に他の設備も確認にまわる――結果として、廃棄されていた扇風機と、一部屋を明るく照らす程度の証明は確保できた。


 建物を探しに4人が向かい、梅子を除く残った4人は食料調達を主目的に動くことになっていた。何せこちらは鼻が利くのが3人もいるのである。後の一人、リンディルはというと。
「水着があります! 緑色のビキニでかわいいやつ!
 あとお菓子とかもありますよ、主にキャンデーとかチョコとかそういう系の。
 あとは……スマートフォンとか……」
 ヒント:電波0本。
「……海の中にチェインライトニングとか、試してみたいですよね!」
「何を目標に撃つの?」
「そこのヒトデとか?」
「……ヒトデって食べられるの?」
 という問答の結果、梅子と一緒に待ち惚けとなった。
 大丈夫、スマフォで写真撮れて音楽聞けるなら時間は潰せるって!

 ベルカはずっと懸案事項としていた水探しに注力する。
「――幸いここはかつて人が住んでいた島だ。
 住居の痕跡を辿れば、どこから水を引いていたのか目安はつくだろう。
 あるいは水源が尽きたから無人島になったと言う事も有り得るが……」
 それを嘆くのは、実際に水源が枯れているのを見つけてからでも遅くはないだろう。
 もう一度鼻をひくつかせ、ベルカは森のさらなる奥へと足を踏み入れる。
「果物が無いと水分調達が面倒になるからなぁ~、何かあったかー?」
 ツァインは同じような側面から、果物を探すことを選んだ。いくつかの食べられそうな果物――匂いが強い上に虫もつきやすい桃などのような果物は無理があったが、キウイなどは(齧った限りかなり酸っぱかったが)食べられないこともなさそうだった。あとは食べられる野草もいくつか――だが、これで9人分となると足りるだろうか。ツァインは顎に手を当てて考え込むと、やがて何か思いついた顔で砂浜へと踵を返す。
 一方、カルナス。
「……実のところ、今回の依頼のあとキャンプを計画していたから米とカレーのルーは持っているんだよな」
 用意周到とはこのことか。
「しかしせっかくのサバイバル、現地で食料が確保できるならそれに越したことは無い。
 これらは食糧確保に失敗しない限りは隠しておくとするかな」
 軽く頭を掻いて、森の奥ではなく廃墟周辺を歩いて回る。
 かつて人が住んでいたのだから、畑だった場所を見つけられる可能性があると判断したのだ。
 ――これが大当たりだった。
 カボチャ、キュウリ、トマトにナス。きれいなものはさすがに少なくとも、明らかに食べられる状態のものを沢山見つけることができたのだ。しっかり洗えばそのまま食べることもできそうだ。

 ところで浜辺に戻ったツァインだが。
「獲ったどぉぉ~~~ッ!!!」
 手頃な棒の先に剣を括りつけ、即席の銛にして素潜り無人島生活!
 これで彼らは野菜や魚など、そこそこの量の食事の確保に成功したのだった。


「うおぉぉ、思った以上にちゃんとした住まいに……! お疲れさーん!」
 ツァインは感慨に声を上げた。灯りがある!
 周囲に星と月以外の光がない場所で、それはどれほど心に響くことだろうか。
 掃除の済んだ元学校内には、(何故か)枝と葉で編まれた椅子があり、梅子はそれに座らされていた。
「……ふ、ふっふーん。これこそあたしの本来受けるべき待遇よね!」
 鷹揚な態度とドヤ顔も何か腑に落ちない感が漂っているのは、梅子の耳にも外の騒ぎが聞こえているからだろう。魔術で火を付け、野菜を焼き始めていたところに、ツァインが持ってきた魚も投入されたのだ。魚と野菜だけだが、もうちょっとしたBBQのような状態だ。梅子も火の側に行きたくてそわそわしているのだろう。しかし今の状態でわいわいと密集する位置に行っても、迷惑なだけ――。気の使い方がずれているのはまったく梅子らしいといえば梅子らしい話でもある。
 それを見て、ツァインは――にやりとした。
「こんな暗い夜は星空の下で怪談でもやろうか?」
「――!?」
 びくり、と後ずさる梅子。意にも介さず、ツァインは話を続けだす。
「先輩の友人って人の実際にあった話らしいんだけどな?
 その人は廃墟めぐりが趣味だったらしいんだ。そうだな、ちょうどこの島みたいな――」
 ふ、と。
 灯りが消えた。
「~~~!!?」
 梅子の悲鳴は声になっていない。
 空気を読んだジェイド(発電機)のしわざである。
 外の面々も、自体は把握しているのだが――正直、止めるより見ている方が面白い事態に、救世主は望めない。ひとりリンディルが、DVDを思い出してかあわあわしているだけである。
「……嫌な悪寒を感じ後ろを振り向くと……誰も居ないはずの廃墟に人影がぼぅっと……」
「きゃああああー!!」
 突然、悲鳴の質が変わる。目を見開いて、BBQとは反対側の窓の外をわなわなと指差す梅子。

 そこには、ぼう、と立つ人影があった。
 濡れた長い髪の、白い女――。

「!? ……って、ベルカ?」
 どさり、と。その女が倒れこんだ。
 何かあったかとその姿に駆け寄ろうとしたリベリスタ達の後ろから、呑気な声がした。
「水だ! まだ枯れていない井戸を発見したぞー! ……? ……な、何かありましたか?」
 水を浴びてきたのか妙にさっぱりした雰囲気のベルカが、皆の視線が自分に集中しているのを悟って困惑の顔を浮かべた後、あ、かぼちゃだーとイイ感じに焼けたのをひとつつまんで口にする。
 リベリスタたちは、そろり、と、現時点の背後――つまり、さっき白い女が倒れた方に目を向ける。
 だれもいなかった。
 ――アーデルハイトが、こほん、と咳払いをひとつした。
「とんだ夏休みになりましたね。このまま帰れないのも面白そうですが……」
「やだやだやだやだ、帰るうううう!!!」
 半狂乱の梅子をなだめるまで、一時間かかったという。


「まったりしてれば半日ぐらいすぐですよ!」
 翌日の朝にリンディルが提案した、船が来るまで砂浜で遊び倒して時間を潰すという案に、どういうわけか殆んどのリベリスタが賛同した。
「怪我したレディに鞭打つ趣味はねえのさ。とりあえず日差しがキツいから、日陰に居ろよ?」
「もう平気なのだわ!」
「怪我人のサポートを最優先に、おかしい事はないだろ?」
 ジェイドの遠回しな気遣いにそう主張しながらも相変わらず飛ばない梅子。その横に、控えるように立つセリオも、もうこれ以上怪我をさせるタイミングはないだろうという安堵が垣間見える。
「プラムちゃん、今年こそ写真を取らせてほしいんだ!」
 デジカメを手に頼み込むカルナスに、梅子が断る理由などない。

「じゃあ、皆で撮るのだわ! 集合写真ね!」

 にっこり笑って、でも、決定的にわかってない――まったくもっていつもどおり、平常運転だなあ、と。
 ビデオをセットしながら、メイが微笑んだ。


 ベルカが波の合間からドヤ顔を出して両手を上げる。手には魚。
「とったどー!」
「フフフ……それは俺が昨日のうちにやっておいた!」
 ドヤ顔ツァイン。
「なん……だと……? では、いぬがm――ごぼがぼごぼぼがぼっ!?」

<了>

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした! 成功です。
きっと敵は粘液べったべたで麻痺とか物理大ダメージとか触手複数攻撃とかEP回復とかの超強敵だったに違いありません。
『事故』という設定での縛りでしたが、楽しんでいただけていたら、幸いです。
ご参加ありがとうございましたっ。