●こうなったのは大体夏のせい 革醒したクーラーの言い分。 『猛暑だからって、毎日毎日24時間フル稼働でこき使うんじゃねー!』 一方、それに対する革醒した冷蔵庫の言い分。 『夏家電の若造が我が儘言ってんじゃねえ! こちとら一年中だぞ! 8760時間フル稼働だぞ!』 ●と言うか暑さのせい 「とある電機屋の売り場が1フロア、凍りついた」 暑い日でも、いつもと変わらぬ様子で『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は言う。 ブリーフィングルームのモニターに映るのは、真っ白な世界。 「クーラーと冷蔵庫が革醒。どちらも冷やす機能が超強化された。 それをフル稼働させながら主張をぶつけ合ってる。該当エリアの気温はマイナス40度を観測。とても涼しい」 北極の最低気温に迫りつつあるじゃねーか。 涼しいなんてもんじゃないよイヴさん。 「売り場からの避難、封鎖は間に合った。残るミッションは両者の破壊。よろしくね」 全国各地で40度以上の気温を観測した所があるとか聞くけれど。 さて、マイナス40度の世界と、一体どちらがマシと言えるのだろう。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:諏月 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年08月25日(日)22:46 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● ――ヒュゴォォォォッ! 封鎖区域へと足を踏み入れたリベリスタ達の耳を叩く風の音。 家電売り場だった筈のそこは、今やマイナス40度の極寒の世界。 「寒い! 寒いよ!」 『落とし子』我妻 湊(BNE004567)の声が響く。 彼も「いやっほー、涼しい」なんて言ってる余裕があったのは数秒前までだ。 「まさか、夏場にこれの封印を解くことになるとは、ね」 『先祖返り』纏向 瑞樹(BNE004308)は、この環境に最終兵器の封印を解く事を決意した。 それは、一歩間違えれば堕落の道を歩むという諸刃の剣。 巷ではダメ人間製造機なんて異名すらついている。 しかし、瑞樹はソレを幻想纏いから躊躇いなく取り出した。 着る毛布ー! 「あー、あったかいぃぃぃ」 寒ければ寒い程、こいつの暖かさが身にしみる。早くも瑞樹の目がとろんとしてきた。 ふと気づくと『いとうさん』伊藤 サン(BNE004012)が、瑞樹の方を見ていた。 「それ、欲しい」 無言で首を振る瑞樹。 「僕、メタフレでゆとりだからキツイ寒さとか駄目だし。キツイ暑さも駄目だし。ほら、もう機械化部位がキンッキンに冷えてやがるんだぜ」 「冬眠しちゃだめかな……」 伊藤が寒いアピールする横で、瑞樹は暖かさがもたらす眠気の誘惑に負けそうになってた。 ダメだこの人、話聞いてない。 「耳が指が冷たいよう寒いよう。存人さん抱きついて良いですか」 だから伊藤は矛先を変えた。 「うん、伊藤さん。その要望は受け付けられません」 『視感視眼』首藤・存人(BNE003547)も即答だった。ですよねー。 「俺、快適温度を求めるインドア派なので、流石にずっと凍ってられる程、体力がないんです」 先人にならって心頭滅却すれば氷もまた熱し、とかなるかと思ってた存人だけどやっぱり寒かった。 コートだって着てるけれど、それだけじゃ、ずっとここにいたら死にそうだ。 「じゃあ肩車してくれ存人さん。それで超合体さつじんましん大降臨だ」 「なんですかそれ。まあ、寝たらマジックミサイル程度は飛ばせます」 「OK、寝たら起こしてね!」 OKじゃないって。それ唯の同士打ちですよ。 「これ1台持って帰ったら、私の部屋の電気代かからずに涼しくなっていい……なんて言ってる場合じゃなかったわね」 自分よりも場慣れしている筈の人達の理性が早くも崩れていく様子を見て、そして、自身の身にも降りかかる、ついぞ覚えのない寒さに、『空虚な器』片科・狭霧(BNE004646)は気を引き締める。 「東北地方に生まれた身ではありますので、普通の寒さであれば慣れていますが……。 ええ、マイナス40度、というのは流石に初体験です」 青木 駒(BNE004609)は、コート、手袋、ブーツと冬物装備。 更に、用意していたマフラーを鼻から下にぐるぐる巻きつけている。ちょっと声がもごもご篭って聞き取り難いけど、仕方ない。寒いんだ。 「戦うのは初めてなの。足を引っ張らないように気をつけるから宜しくね」 「ご安心を。皆様のお怪我、癒してみせましょう」 「ま、ケツは持ってやるから、やりたい様にやれよ」 振り向いて告げた狭霧に、『紫苑』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)が微笑みかけ、『消せない炎』宮部乃宮 火車(BNE001845)がぶっきらぼうながらも気遣う。 そして8人のリベリスタ達は、極寒の真っ只中へと踏み込んだ。 ● ダイヤモンドダストが目に眩しい。 ここはもう、リベリスタであっても、一歩間違えれば凍りつく程に寒い空間だ。 だが、そんな中であっても、チャンスを与えようと思う者がいる。 「冷蔵庫にエアコンの皆様。日々、私達の生活を助けて下さり感謝です」 ふわりと宙を漂うシエルが、深々とお辞儀をする。 駒が貼った防御結界もあるため、他のメンバーもまず彼女の言葉を待つ事にした。 「私達は覚醒した貴方達を壊します」 目を伏せながら、シエルはきっぱりと告げる。 「されど、その前に……何故貴方達が造られたのか……それを思い出して頂きたいのです」 『夏が暑いからだろ』 『色々冷やしたいからだろ』 クーラーと冷蔵庫から返ってくる思念の返事はにべもない。 しかし、それを気にする事なくシエルは続ける。 「覚えていますか? 貴方達が造られし時、込められた想いを。 何時間でも、幾日でも、幾年でも、連続で使用されようとも、壊れないモノを作ろうと言う造り手の方々の想い。 そして……造られし貴方達の、矜持であった筈です」 と、そこまで言った所で、湊がシエルの袖を引いて、凍りついた伊藤と狭霧を指で知らせる。 「あら。少しお待ち下さいね」 シエルは家電達への話を一旦止めると、仲間達に手にした巻物を向ける。 数多の癒し手の間を移ろいその想いを刻んだそれは、神秘を呼び暖かな癒しの風を吹き渡らせる。 風が、仲間達の体の熱を、奪われた体力をあっさりと取り戻した。 それに合わせて、駒が邪気を払う光を放てば、凍りついた2人も自由を取り戻す。 「覚えていますか? 家電売り場に並ぶ迄に、貴方達が幾度も経験してきた厳しいテストを」 そして何事もなかったかの様に、家電への語りかけを再開するシエル。 厳しい耐久テストを乗り越えた家電達だからこそ、彼らに伝えたい事がある。 「私がお手伝いに行っている孤児院には、暢子(のぶこ)さんと言う冷蔵庫があります。 彼女が孤児院に来て30年経ちますが、彼女はまだ『現役』です」 リベリスタも家電達も、黙って聞いている。 「私は、貴方達が如何に素晴らしいのか、思い出して欲しかった。 貴方達に頑張っている『仲間』がいることをお伝えしたかったのです」 革醒した彼らは壊すしかない。それでも、せめて伝えたかった。 そして彼女は笑顔で告げる。 「今後も節電に努めますね」と。 『ちょ、待てぇぇぇぇ!』 その決意に、家電達が一斉に騒いだ。 「……何かいけなかったでしょうか?」 きょとんと首を傾げるシエルさん。(天然らしい) 『今の流れでなんで節電になるんだ! 節電は人間の都合だろコンチクショー!』 なんか踏んじゃったみたいです。 (やっぱりこうなりましたか) 人間が入っていったら『お前らのせいだ』って言われるんじゃないかな。 そんな予感が当たってしまい、どうしたものかと存人が思案した次の瞬間。 「バカが……。本分を疑って見失いやがって」 ズガンッ! 火車の声と同時に、炎を纏った暴と書かれた手甲が、クーラーに叩きつけられた。 「オウ、そうだ。オマエ等に『造られた意味』を与えてやってる人間様だ。 俺からもチャンスくれてやる。休んで良いぞ。運転止めろ」 『え、いや、いきなり言われても』 率直な火車の言葉だが、返って来たのは戸惑い。 止まる素振りがないので、さっき殴ったクーラーをそのままガッと掴んで、睨みをきかせる。 「あのな? 人間様が暑いとか寒いとか思った時にしかオマエ等は存在意義がねぇのによ。 毎日24時間役に立ち続けられるなら、精々ありがたがれよ。 なぁ? えぇ? おいィ?」 『で、でも動き続けるって疲』 「いいか。オマエ等が存在してんのは、暑いとか寒いとかそんな日の為だ。 造り出した人間様が、一々スイッチ押したりした上で稼動させてやってるんであって! オマエ等の都合で稼動させたり停止させてんじゃねぇんだよ!」 『……』 「休みを寄越せ? 壊れたらメンテして大事に使うわ! その点冷蔵庫の怒りは最もだろ! オイ解ってんのか! これ以上、人権みてぇな権利だの言い出しやがったら遠慮無くぶっ壊すぞ!」 『……』 火車の迫力に、クーラーの思念が沈黙する。 相手がクーラーだから絵面があれだけど、要は首根っこ引っつかんで脅してる様なものである。 「さすが火車さん。クーラー、ビビってるぜー!」 「迫力が違うわね……」 伊藤が思わず手を叩き、狭霧がちょっと感心する。 火車もシエルも、今回のメンバーの中では経験、実力共に抜きん出ている。 寒さの中でも己の意志を伝えようとするのも、ベテランと言える場数の差の現れか。 「オラ、判ったらサッサと運転止めて冷蔵庫に謝れぇ!」 『いや、無理です』 なんかプルプルしてる感じの思念で答えてくるクーラー。 「まぁそうだろうな。無駄なんだろうさ。判ってたぜ」 『あ、いえ。だからその――』 「あ?」 『どうやったら止まるんですかね、私達。自力じゃ止まれない事に気づいたのですが』 『そう言えば、儂ら冷蔵庫も、止まれんなぁ』 クーラーの思念を、冷蔵庫も肯定する。 唐突なカミングアウトに、リベリスタ達の間に沈黙が落ちる。 「うっわー。ずっと出力全開とか、マジ地球に優しくない。ダメじゃん」 ややあって、湊が呆れ果てた声を上げた。 「24時間強制的に動き続けるクーラーとか、電気代がすごいことになっちゃうじゃん!」 最終兵器の暖かさに少し眠気を覚えていた瑞樹も、これには憤慨する。 「……何とも釈然としませんね」 「休みたくて革醒したんじゃなかったんですか、このクーラー達は」 駒と存人が思わず顔を見合わせる。何なんだろう。この本末転倒さは。 「あー。判った判った。チャンスをやろうなんて思った俺がバカだった」 無駄なんだろうって、火車も判ってた。でも、こうなるとね。 火車がすっごく良い笑みを浮かべる。再びその手に炎が生まれる。 「オマエ等、廃品処分だわ」 火車の手から燃え上がる炎の勢いが増していく。ごうごうと、消えない炎が燃え盛る。 鬼の業。その名を冠した炎の武技。地獄の炎が、クーラーも冷蔵庫もまとめて飲み込んだ。 ● 「よく考えたらさー。マイナス40℃の世界とか遊園地のアトラクションにあるじゃん?」 吹きすさぶ冷気からシエルを守りながら、湊が呟く。 「短時間なら一般人も耐えられてんじゃん? よって革醒者なら何とかなるんじゃないかな。 そう思うと。ほら、慣れてきた」 それは絶対者な湊だからできる、自己暗示的なものだと思われます。 「いやぁ、俺は慣れませんね。寒いです。髪、凍ってますし。髪で釘打てますかね、やりませんけど」 いい笑顔を見せる湊に、かぶりを振って存人がぼやく。 「クーラーも冷蔵庫も、ないと俺の生活回らないので。感謝はします。 でも、適温に冷やしましょうよ。ビールの凍る冷蔵庫とか、寒くて毛布の必要なクーラーとか、使えないですよ」 そんな事を言ってる内に、存人自身、自分で何を言ってるのか判らなくなってきた。 寒いのは困る。 暑くない夏も困る。 暑過ぎるのは普通に困る 「要するに全部暑いのが悪い。こういう事ですね」 行き着いた結論が何かおかしい気もするが、気にしない事にして存人はグラスアイのついた古い本を掲げる。 召喚された魔炎が炸裂し、クーラーも冷蔵庫も数体まとめて飲み込んで燃やしていく。 「ゴミだもんなコレ。焼却処分にしたらぁ!」 一切の容赦なく、炎の武技を火車が放つ。 そこに、シャーッと音を立てて伊藤が滑り込んできた。 2人の炎の技に合わせる形で、滑りながらも、魔力を練り上げて行く。 「三つの力! 三つの心! 三つの技! 今ここに重ね合わせ、全てを炎で包み込む! 燃えよ燃えよ燃え盛れ、赤く染まって灰と成れ!」 叫んで、伊藤は両腕を敵に向ける。内蔵された5連砲が姿を現し、業火の矢を無数に放つ。 滑ったおかげで多少狙いが甘くなり、何体か外れたが、それでも家電達の4割程を一気に撃ち抜いた。 三重に重ねられた炎の技に、数体の家電が沈黙し、無事な機体も炎に焼かれ外装が溶けていく。 「クーラーの馬鹿ッ!」 『!?』 炎の熱が収まった所に、瑞樹の声が響いた。突然の罵倒に、クーラーは目(ないけど)を白黒。 「貴方を24時間も使い続けるなんて贅沢、誰もが出来るわけないでしょ! むしろ、うちでは扇風機の方が頑張ってる! 時々、室内が暑すぎて風が熱風になったりするけど、懸命に羽根を回しくれてるの!」 自身の生活環境を暴露しながら、物の怪の骨より作られたと言う白い刃を向けて、瑞樹が呪力を練り上げる。 「いつもありがとう、扇風機! 私、クーラーなんかに負けないから!」 扇風機への賛辞と共に、呪力を解き放つ。 現れた赤い月が、彼女の前に漂うクーラーに等しく不吉を告げる。 「体動かしていないと本当に凍ってしまいそうね」 狭霧が弓を構え弦を引いて、光の矢を連続で放つ。 それらは、仲間の攻撃でダメージを負った機体を確実に撃ち貫いた。 寒さに耐えて念入りに神経を研ぎ澄ませた甲斐があったと言うものだ。 「店の被害を減らすと言っている場合でもないですね……参ります!」 駒が杖を構え、呪力で冷たい雨を呼び、家電達へと降り注がせる。 「癒しの息吹よ……!」 油断なく、シエルは癒しの風を吹き渡らせ、仲間達を支え続ける。 本気で攻撃し始めたリベリスタの猛攻の前に、殆ど為す術なくクーラーも家電も次々と大破。 「――19、20! よっし!」 撃墜数をカウントしていた湊が、20を数えた所で背負ったままだった魔砲杖を手に取る。 同時に、戦場の風の勢いと冷たさが弱まってきたのを、全員が感じ取る。 もうリベリスタ達が凍りついて動けなくなる程の寒さではなくなったことを意味していた。 つまり、湊がシエルを庇う必要はもうない。 「さあ、ようやくだ。ややこしいこと考えずに、思いっきり撃ちまくれるぞー!」 射撃モードにした魔砲杖から、光の弾丸を連続で発射する。 湊が攻勢に転じた事で、リベリスタ達の家電撃墜ペースは更に上昇。クーラーも冷蔵庫も、どんどんその稼働数を減らしていく。 「僕だって機械だ。機械VS機械の決着を付けてやる!」 5連砲は一旦しまって、伊藤が冷蔵庫の前に立つ。 「だが、戦う前にネタバレ。機械が勝つ!」 『どっちも機械ならそりゃそうだろ』 ネタバレしたら、冷蔵庫につっこまれました。 「つっこむんじゃねえよロケットパーンチ!」 パンチと言いつつ、冷蔵庫を掴んで床に叩き付ける! 『パンチじゃねえ……よ』 そんな思念を最後に、また冷蔵庫が一体沈黙した。 「ムーンサルト!」 直後、伊藤のその言葉と同時に、存人の放った魔炎が炸裂した。 「どうして俺の攻撃に伊藤さんが掛け声を……」 うん、判らん。 「勝手にキレて革醒した、オマエ等が悪いんだぜ!」 火車は、炎を拳に纏わせるまでに留めて、一体一体丁寧に真正面から堂々とぶん殴って回る。 「シエル様。もう、私の傷癒術で回復は間に合うかと思います」 駒が防御結界を貼り直しながら、シエルに申し出た。 残る家電の数が両手の指より僅かに多い程度だ。あれ程冷たかった風も、今はもう驚異にすらならない。 「そうですね。駒様、後はお願いします」 駒の申し出に頷いて、シエルは僅かに高度を上昇させると、これまでよりも更に強く羽ばたく。 「魔風よ……在れ!」 魔力を込めた羽ばたきが生み出した風の渦が家電を切り裂いていく。 「くっ……これ以上は危険ね。間違いなく堕落する」 同じタイミングで、瑞樹は最終兵器を脱いで、幻想纏いに再封印。 「冷蔵庫は……うん。年中、お世話になってます。でも、倒します」 壊すのが忍びなくて攻撃しづらかった冷蔵庫。だが。事こうなればもうそんなことは言っていられない。 身軽になった瑞樹が不吉を告げる死神のカードを放てば、冷蔵庫が一体沈黙した。 いよいよ危機感を感じたか、残る家電が右往左往し始める。 「逃げるってことは、よく訓練されてないただのEゴーレムだな! よく訓練されたEゴーレムは、逃げない奴だ!」 良く判らない自論を言い放ち、湊がまた一体の冷蔵庫を沈黙させる。 瑞樹に、湊。 自分よりも十は若い2人も迷わず戦う姿を、狭霧は見ていた。 神秘界隈では、見た目の年齢が当てにならない人もいるとは聞いたことがある。 (けれど、子供が戦うなんて本当はあってはならない事でしょうに……難儀なことね) そんな難儀な世界に、もう狭霧もいるのだ。 「まさか私まで、この世界に入る事になるとはね」 気づけば残るは一体のクーラーのみ。彼女は静かに弓を構え、狙いを定める。 どんな切欠でこの世界に入ったにせよ、今ここにいる事は狭霧の意志だ。今、弓を持つのは、狭霧の手だ。 「……見てて頂戴ね」 その呟きは、誰に向けたものだったか。 放たれた光の矢が、最後のクーラーを貫き沈黙させた。 ● 戦いを終えて外に出てきたリベリスタ達を待っていたのは、容赦ない夏の暑さ。 「ああ、これですよ。これが、暑さと言う現実ですよ」 どこかうんざりした様子で存人が言う。 「冷蔵庫にエアコンの皆様。貴方達の想い、確かに胸に刻みました」 シエルは振り返り、戦場だった場所へと深々と再び一礼。 「いつもお世話になってます。いつもありがとう。基盤拾えたらお墓作るからな」 伊藤も両手を合わせ冥福を祈っていた。 「あの売り場、早く復旧するといいのですが」 「ま、後始末は本部に任せようや」 どこか心配そうな駒に、火車が慣れた様子で告げる。 「ところでさ。体冷えたし、温泉施設とか寄って帰りたくない? ていうか寄ろう」 「暖かいコーヒーでも買って帰りたいわね。あと、お酒も」 「えー。私は涼しさの方が名残惜しい。アイス食べたい」 暖を欲する湊と狭霧に対し、暑さに辟易した様子の瑞樹は涼を求める。 ともあれ。 彼らが本部に帰還すれば、クーラーの冷えた空気が出迎え、冷蔵庫で冷えた飲み物が待っている筈である。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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