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平和を奪う金色の瞳


 その日、沙紀はショッピングモールにいた。今日は夏休みを利用して、友人とショッピングなのだ。
「うーん、これ買うとアシ出ちゃうな……でも、デザイン良いし、どうしよっかなー」
 服を買いに入った店で、沙紀は真剣に悩んでいた。
 デザインがこの上無く好みのものを見つけてしまったのだ。買えない訳ではないが、まだ夏休みは中盤戦。ここでお小遣いを一気に使ってしまうのも怖い。
「祐子、どう思う? アレ? どこいったんだろ」
 友人に相談しようと、振り向くとそこに姿はない。どうやら、別のものを見に行ってしまったようだ。その時、沙紀は閃いた。試着してから考えれば良いのだ。
 ひょっとしたら、先に試着室に行ってしまったのかも知れないし。
 そんなことを思いながら、試着室に向かうと、果たしてそこには友人の靴が脱ぎ散らかされていた。
「なんだー、祐子。試着行くならそう言ってよー」
 自分のことを棚に上げて、試着室に首を突っ込む沙紀。
 偶然同じ靴を履いてた人だったらどうするのか、とかそんなことは想像もしなかった。
「え? なに……これ……」
 いや、むしろその先にある光景を想像できるものなど、どれ程いるというのか。
 試着室の中が不気味な洞窟に繋がっているなど!
「デロデロデロデロ」
「えっ……」
 思考が追いつかない沙紀の前に、その「生き物」は現れた。ぎょろっとした金色の目を光らせ、ぬめぬめと光沢のある手を伸ばしてくる。

 そして数分後、店員は怪訝な顔で靴を拾う。
 主のない、2組の靴を……。


 今年の最高気温が記録されたり、某イベントの開催される8月のある日。リベリスタ達はアークのブリーフィングルームに集められる。心地よい部屋の冷気にリベリスタ達は一息つく。そして、リベリスタ達に対して、『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)は事件の説明を始めた。
「これで全員だな。それじゃ、説明を始めるか。あんたらにお願いしたいのは、アザーバイドの討伐だ」
 守生が端末を操作すると、人型をした不気味な怪物。全身をぬめぬめした皮膚に包み、ぎょろっと光る金色の目を持つ獣人だ。人間と違う姿だが、その生き物が邪悪な知性を宿していることだけははっきりと分かった。
「識別名は『ダークアイ』。これが複数体いる。こう見えても高い知性を持っているようだ。声帯が違うから俺達の世界の言葉を話せないが、理解している節もある。こいつらが、侵略活動を行うのを止めてくれ」
 守生の話によると『ダークアイ』達は彼らなりの邪悪な文明を築いているのだという。そして、偶然が重なってこの世界へのリンクチャンネルを開いてしまった。ボトムチャンネルに興味を抱いた彼らは、まずは様子見に、この世界の住人を拉致しようというのだ。おそらくは実験台として。
「こいつらが人を捕まえるために選んだ場所はショッピングモールだ。たしかに、多少人がいなくなっても分かりづらい場所だ。困った所に頭の回る連中だぜ」
 だが、彼らも運が悪かった。
 このボトムチャンネルには、アークが、リベリスタ達がいるのだ。
「『ダークアイ』の拠点はショッピングモールの地下。駐車場の一角を改造して、自分達の基地にしている。どうやら、「結界」みたいな能力を持っているみたいだな。ここへ強襲を掛けるのが正攻法だろう」
 基地には8匹の『ダークアイ』がいる。彼らの戦闘力は決して低くないので、真っ向から戦うと苦戦を強いられるかも知れない。それに、既に女の子が2人ほど捕まっているのだという。彼女らの安全まで考えることが出来るかは微妙なラインだ。
「それと、もう1つの手がある。『ダークアイ』は今、服屋の試着室を利用して女性を攫っている。だから、あえて攫われた振りをすることだ」
 なにかしらの破界器で試着室と彼らの基地を繋いだようだ。彼らは好きなタイミングで隙だらけの人間を攫うことが出来る。だが、そこに付け込む隙がある。
 少なくとも『ダークアイ』達は攫われた女性が恐怖で動けなくなることを知った。それ故に、簡単な柵程度のものは用意しているが、女性が抵抗してくるということは考えてもいない。だから、不意を突くことは容易なはずだ。
「適当にはしゃいで隙だらけな振りをしていれば大丈夫なはずだ。全員でそうやって乗り込むのも手だし、あるいは強襲する班と二手に分かれて動くのも、タイミングさえ合わせればアリだろうぜ」
 彼らの基地にはDホールが存在する。『ダークアイ』を倒し、これさえ破壊してしまえば彼らの脅威はもうあるまい。
「説明はこんな所だ」
 説明を終えた少年は、その鋭い瞳で睨むように、リベリスタ達に送り出しの声をかける。
「あんた達に任せる。無事に帰って来いよ」



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:KSK  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年08月24日(土)23:32
皆さん、こんばんは。
夏の特番part2、KSK(けー・えす・けー)です。
今回はアザーバイドと戦っていただきます。

●目的
 ・『ダークアイ』の撃破及びDホールの破壊
 ・少女2名の救出

●戦場
 ショッピングモール地下の駐車場。
 守生の指示に従って、アザーバイドを襲撃します。どの時間帯に向かうかはお任せしますが、囮作戦を実行するなら、昼間になるでしょう。
 一般人がこれ以上紛れ込む可能性は無いです。明かりや足場に不便はありません。

●アザーバイド
 ・ダークアイ
  爬虫類じみた外見を持つ獣人。巨大に輝く金色の瞳が特徴的です。外見に反して知性は高いが性格は邪悪。「タワー・オブ・バベル」があれば会話できますが、実りはさして無いでしょう。
  人間の神経に快感を与える光線銃を持ち、相手の抵抗を奪います。
  どうでもいいことですが、彼らの世界には雄しかおらず、クローニングで数を増やしているようです、現状は。
  能力は下記。
  1.鉤爪 物近単 流血、致命
  2.快感光線 神遠単 麻痺、ブレイク
  3.毒の息 神近複 毒、猛毒

●一般人
 ・沙紀
 夏休みに友人の裕子とショッピングにやって来た女子高生。
 2人ともダークアイに囚われており、恐怖で動けません。
 ことが終わったら、記憶を処理したり、納得のいく説明を行う必要があるでしょう。

どちらかと言うとグロな雰囲気のシナリオです。お気に召しましたらよろしくお願いいたします。
BNEは全年齢。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
マグメイガス
二階堂 杏子(BNE000447)
プロアデプト
氷雨・那雪(BNE000463)
プロアデプト
言乃葉・遠子(BNE001069)
デュランダル
虎 牙緑(BNE002333)
スターサジタリー
ルヴィア・マグノリア・リーリフローラ(BNE002446)
クリミナルスタア
★MVP
禍原 福松(BNE003517)
スターサジタリー
靖邦・Z・翔護(BNE003820)
レイザータクト
アンドレイ・ポポフキン(BNE004296)


 ぎらつく真夏の太陽が街を照らす中、『ティンダロス』ルヴィア・マグノリア・リーリフローラ(BNE002446)は薄暗い駐車場でトラックの中にいた。空調が効いている分、ここはまだマシだ。一歩外に出れば、地獄のような暑さが襲ってくる。
 そして、喉の渇きを覚えてペットボトルを手にしようとした時だった。狼の意匠を凝らしたバングルから反応があった。一瞬、自分の給水と仲間の大事、どちらを優先するべきか躊躇した上で、通信に答えることにした。
「あぁ、こっちの準備は出来てるよ。いつでも突入可能だ。……うん、あぁ。それじゃあ、よろ……」
 そこまで言った所で、ルヴィアは盛大に噴き出した。
 もう我慢の限界だ。その笑い声に、アクセス・ファンタズムからは抗議の声が聞こえてきた。
「悪い悪い。それじゃ、よろしく頼むよ。作戦の大事な所はアンタらにかかっているんだからさ」
 なおも続く怒りの声を無視して、ルヴィアは通信を切った。そして、ひとしきり大笑いすると、改めてペットボトルの中身を飲み干す。
「さあ、張り切って仕事と洒落込もうかね!」


 賑やかなショッピングモールの一角。壁に設置された鏡の前で、透明感のあるチュニックを羽織った女性は、両腕をクロスさせてポーズを決める。
「頼まれなくてもはしゃぐクチ、それがSHO……おっと、今は噂の女子スパイSHOCO!」
 その女性の容姿に見覚えは無くとも、アークに身を置くリベリスタならその特徴的なポーズで気付くことだろう。彼女はそもそも女性ではない。『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)だ。元々細身の体型なので、意外と様になったものだ。
「何やってる……のよ。早く行く……わよ」
 声を掛けたのは小柄な少女。白いフリルのついたワンピースが清楚な印象を醸し出している。白いつば広のレディースハットが顔を隠しているのが残念な所だが……。
「何言ってるのフッk……じゃなくてSCMATS! アテクシ達は今、恐怖に震える女子達を救う使命を帯びた女子スパイ!」
「そんな設定のことはどうでもいい」
 思わず素の口調に戻ってしまったので、お分かりだろう。七派のフィクサードにも一目を置かれる『ラック・アンラック』禍原・福松(BNE003517)だ。この姿を見たフィクサード達が何を思うかにはあえて触れまい。ちなみに、SCMATSはSHOGOが勝手につけたコードネームである。
 説明しておくと、敵性アザーバイドが発見された場所はショッピングモール。女性向けの店で人を攫うべく活動をしているのだという。そこで囮となるべく、SHOGOと福松は女装して潜入することになった。他にもマシな選択肢あったんじゃないかという気もするが、相談開始24時間ちょいにして、流れるようにして決まった作戦なのである。
 さすがに、店員に怪しまれては元も子もない……ということで、『ルーンジェイド』言乃葉・遠子(BNE001069)のファッションチェック及び演技指導も行われた。その甲斐もあってか、意外と違和感が無い。
「分かっているじゃない。だったら、いつもより背伸びして初めてのブラを持ってらっしゃい!」
 ノリノリのSHOCOを一睨みすると、福松は無理矢理自分のテンションを上げて叫んだ。
「わぁ! SHOCO! あの服素敵! あなたに似合うと思う!!」


「どうやら、食いついてくれたみてぇだな」
 トラックの中で囮チームからの連絡を受けた『輝く蜜色の毛並』虎・牙緑(BNE002333)は、八重歯を剥き出し怒りを露にする。獲物を前にして、もう我慢が効かなくなった肉食獣を連想させる顔だ。
 もし、アザーバイドの目的が単に侵略であったなら、あるいは純粋なサディズムであるなら、ここまで不快な思いをせずに済んだのだろう。もちろん、怒りは感じたろうが、そもそもの律する世界の法則が違うのだと自制は出来たはずだ。
 だが、こいつらが胸糞悪くなる目的を持っていることは想像に難くない。
「まったく。ショッピングモールにアザーバイドなんて……迷惑極まりないですわね、夏休みのショッピングは女性の特権ですのに。無粋な邪魔はいけませんわ」
「……まぁ、目の付け所は悪くない、けれど……好き勝手されるのは……業腹、よね……」
 牙緑の顔を見て『白月抱き微睡む白猫』二階堂 杏子(BNE000447)はクスリと微笑むとトラックを降りる。フォーチュナの予知した敵の拠点に向かうためだ。『微睡みの眠り姫』氷雨・那雪(BNE000463)もまた、眠たげな目をこすりながら仲間達について行く。まだ『スイッチ』を入れた訳ではないが、女の子が捕まっている以上、もたもたするわけにはいかない。
 と、アザーバイドの拠点に向かう中で、杏子が苦笑を浮かべる。
「まぁ、普段とは色々な意味で違うお仕事になりそうですけど」
「知り合いの子が喜びそうだし、女装二人組の記念撮影………急務じゃなければ、狙ったのに……残念ね」
 急ぐ理由を付け加えるのなら、囮に向かった2人の勇者のことも忘れてはいけない。いけないのだが、思い出そうとすると、自然と温い笑みが浮かんでしまうのは困った所だ。
 そうやって、軽口を叩く仲間達を『攻勢ジェネラル』アンドレイ・ポポフキン(BNE004296)が手で制する。アジトに近づいたからだ。
 牙緑の五感は既に敵の発する気を捉えてか、今にも飛び掛からんばかりにその全身を滾らせている。
 アクセス・ファンタズムからの反応を見ても、ここで躊躇する必要は最早あるまい。互いに目配せをすると、それぞれに武器を構える。
「さぁ戦争でゴザイマス。大胆不敵痛快素敵超常識的且つ超衝撃的に勝利シマショウ」
 そして、機械の指揮官の号令一下。リベリスタ達は異界の侵略者との『戦争』を開始するのだった。
「小生が居るからにはこの戦争に我等ノ敗北ナドありませぬ。勝利と正義の栄光の為に
 ――Вперед!」


 目の前に広がる非現実的な光景を目に、言乃葉遠子は思う。
 自分達の日常は思っている以上に神秘に侵食されているのかも知れない、と。
 目の前にいる怪物達はリベリスタ達の姿を見て、不気味に嗤う。その笑い声からは、不思議と下卑た感情が伝わって来た。そして、彼らは狂乱したかのような唸り声を上げて、リベリスタ達に迫ってくる。
 しかるに一方、ここからちょっと離れたショッピングモールでは、そんな神秘世界の戦いを知らずに人々は今日も平和を謳歌している。
「身近な筈のショッピングモールで異形の存在が密かに人を攫っていると思うと……ちょっと怖い……
 けど!」
 魔道書を手にする遠子の全身から気糸が伸びて、アザーバイド達の身体を捕えて行く。神秘の力を受け入れることはまだ出来ない。それでも、やらねばならないことがある。
 そして、気糸に拘束され動きを鈍らせるアザーバイド達に向かって、牙緑は虎の如き怒りの雄叫びを上げると、虎の牙を思わせる巨大な剣を手に飛び掛かって行く。
「変態トカゲ野郎が。今まで通りオス同士で仲良くやってればいいんだよ!」
「女子供を狙うとは、な。理屈はわかるが、気にくわないな」
 那雪もまた、怒りに脳細胞を覚醒させる。
 先ほどまでの気だるげな様子はどこへやら、だ。
「さて……お前達は、どんなモノなのか……」
 眠り姫の瞳が紫に輝き、深淵を覗き込む。彼女の前で神秘を隠すなど出来ようはずもない。
 目の前のアザーバイド達は、旺盛な支配欲を持つ種族だ。それが歪んだ超科学とでも言うべきものを育み、偶然訪れたボトムチャンネルをも従えようとしている。
 なんとも下卑た存在だ、気に入らない。
「それ以上は、遠慮願おうか」
 静かな怒りの声と共に、那雪はアザーバイド達の特徴的な目を狙う。彼らにとっても急所の1つだったのだろう。たちまち醜い悲鳴を上げていく。
 しかし、アザーバイド達の恐怖はまだ始まったばかりだった。
「ショッピングモール・2人組の女・異世界からの狩猟者。完全に大三元だな、B級映画的な意味で」
 アザーバイド達の後ろから唐突に少年の声が聞えた。その後ろには4人の女性の姿しか無かったにもかかわらず、だ。
 驚いてアザーバイドの1匹が後ろを振り向く。
 すると、どうだろう。
 そこには、いつもの帽子を被り、スーツを着こなす少年の姿があった。
 主役にあらずとも。
 ヒーローにあらずとも。
 禍原福松はここにいる。
「デロデロデロ!」
 いきなり現れた敵に対して毒の息を吹きかけようとするアザーバイド。しかし、それよりも一手早く、福松はその鼻っ柱めがけて拳を叩き込む。
「ギラつきすぎだぜ。そんなんじゃ女に嫌われるぞ?」
「あーあ、SCMATS。せっかく初めてのブラ買ってあげたのに」
「着ける気なんざねぇ。そんなことより、お前も真面目に戦え、SHOGO」
「今のあたしは女スパイSHOCOって言っているでしょ? お魅せするわ、女子力の高いパニッシュ☆」
 福松と違い、アクセス・ファンタズムで普段着を出すことも無くSHOGO、もといSHOCOはアザーバイド達に向かって弾丸をばら撒く。女子力の高さとは何なのかと問い詰めても分からない所であるが。あえて言うなら、妙にスカートの動きを意識している辺りに、何かしらの意図はあるのかも知れない。
 完全な挟み撃ちの形をリベリスタ達は作り上げた。
 もし、全員が囮として乗り込んでいたら、アザーバイドは逃走を図ったかも知れない。
 全員で強襲をかけていたのなら、他の手立てを考えていたのかも知れない。
 しかし、ふざけているように見えても、SHOCOと福松は囚われた少女達を護るように動いているのだ。作戦を読まれないように、サインを送り合っているのも、その一助になったのかも知れない。
「デロデロ」
「デロデロデロ」
 そして、アザーバイド達の精神は腐っていた。1人でも多くの敵を道連れにしようと強烈な抵抗を始めたのだ。仲間のため、等と言う高尚なものではあるまい。ただ、死ぬ間際に苦しむ敵の姿だけでも見ておきたいからだ。
 アザーバイド達の中には突出した戦闘力を持つものこそいないが、反面それぞれが相応の戦闘力を有していた。また、外見に似合わず、連携を取る知性の持ち主でもある。
「やー悪い、もう堪えらんねぇ! さっきの姿思い出すとさ」
「うるさい、黙っていろ」
「しっかし、2人とも良くお似合いで」
 そんな敵を相手取りながら、ルヴィアの顔には余裕が浮かんでいた。むしろ、先ほどの福松達の姿を思い出し、戦闘中に吹き出す始末である。SHOCOはと言うと、ファンの声に応じていつもの決めポーズを取っていた。もっとも、余裕に見える背景には、仲間達を支える杏子の姿があってこそだろう。
「……さぁ、参りましょうか」
 杏子の身体を覆うようにいくつもの魔法陣が浮かび上がる。そこから響くのは、仲間達を癒す福音の歌声だ。
「デロデロデロ」
 リベリスタ達の戦いを見て、なにかしらの違和感を覚えたのだろう。手に銃のようなものをもったアザーバイドが杏子を狙う。しかし、その桃色の怪しい光が癒し手の元へ届くことは無かった。
「……ぅん。ま、やらせるわけには行かないからね」
 ルヴィアが杏子の前に立ち塞がったからだ。身体に妙な感覚が流れ込んでくる。しかし、彼女はその状態でなお、集中を保ち漆黒の弓をアザーバイドに向ける。極限まで高めた集中力の前で、この程度は誤差のようなものだ。
「神秘ってのは本当にミラクルだよな、何だって起きるんだから。今回に限っては色々な意味で『良い物』も見れたし」
 弓を振り絞ると、光の矢がアザーバイド達に襲い掛かる。
 続く戦いの中で動きを鈍らせていたアザーバイドの頭が血飛沫を上げて飛び散る。
 アンドレイは一層胸を躍らせて、勝利の快哉を叫んだ。
「絶対攻勢こそ我が戦争也。覚悟セヨ、ソシテ死ね!」
 斧を振り上げ、アンドレイは疾風怒濤の勢いでアザーバイドに攻めかかる。一見すると粗野で野蛮で、やたらめったら斧を振り回しているようにしか見えない。しかしその実、攻撃は精密にして細緻。的確にアザーバイドの防御の薄い点を突いている。
 そして、アザーバイドは腕を切り落とされると、汚らしい体液をぶちまけながら醜い悲鳴を上げて、のた打ち回る。アンドレイが首を踏み締めると、ようやく動きを止めた。
「我が勝利への礎と成れ! 勝利の美酒、チャチな光線ナドでは決して得られぬその快楽こそ小生にとっては至上最大の快楽なのだから! ураааа!!」
 ことここに至って、戦いの天秤は覆しようも無い程、リベリスタの側に傾いていた。
 追い詰められたアザーバイドは連携も乱し、見苦しい抵抗を見せるも、もはや悪あがきにしか見えない。
「女の人達にはこれ以上指一本触らせない……」
 遠子の左目が一瞬、緑色の光を放つ。この儚い日常を守りたいという、切なくか弱い、それでも消えない祈りの発露であろうか。
 現れた気糸がアザーバイド達の逃げ場を塞いでいく。
 その隙に福松は静かな集中力を持ってリボルバーに弾丸を込めると、冷静に引き金を引いた。
 銃声が鳴り響くごとに、アザーバイドは瞳を撃ち抜かれ、動かなくなっていく。
 そして、わずかばかり傷の浅かったものが最後の生命力を振り絞り、せめて無力な女性に飛び掛かろうとした時だった。アザーバイドは底知れぬ殺気を感じた。
 それは猛虎の爪牙。
 怒れる野獣の誇り高き断罪の牙。
「オマエの喉笛、オレの牙で食いちぎってやるよ」
 牙緑の言葉は、アザーバイドが最後に耳にした言葉であった。


「ほらよ、忘れていた靴だぜ」
「どうもすいませんでした」
 戦いが終わった後で、リベリスタ達はショッピングモールの中にいた。
 無事にD・ホールも破壊し、少女達は救出された。事件の記憶も福松の魔眼で「熱中症で倒れていた」ということになったのだ。
 礼を言って去って行く少女達の姿を、遠子はどこか寂しげに眺めている。
 神秘の絡まない尊い日常。それに彼女らが帰すことが出来たことが嬉しくもあり、帰れない自分に思う所があるのだろう。
 福松は帽子を目深に被る。
「彼女らに怖い事は無かったのさ。楽しい夏休みを過ごすといい」
「彼女らは色々忘れてしまうけど、これだけは覚えておいて。今日、SCMATSは初めてのブラを付けて女子坂を登り始めたって事を……!」
「ん……2人とも、可愛かったの……」
 そして、クールに去ろうとするところで、未だに女装姿のままのSHOCOが茶々を入れた。
 福松が何かを言う前に、那雪も力強く頷いた。
 先手を打たれた福松は何かを言おうとして諦めたのか、スタスタと足早にその場を去る。
 訪れた平和に笑い合うリベリスタ達。リヴィアはひとしきり大笑いした後で、杏子を呑みに誘う。
「暇だろー? ちょっと付き会わねぇ?」
「仕事も終わりましたし……それもいいですね、景気良く行きましょうか。色々と大変なお仕事でしたものねぇ」
 靖邦さんと禍原さんが一番大変だったのでしょうけれど、としみじみ杏子は続ける。
 その言葉が聞えなかった振りをして、一層足を速める福松。
 これもまた、リベリスタ達が取り戻した平和の形なのだろう。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
『平和を奪う金色の瞳』にご参加いただき、ありがとうございました。
B級ホラー風味のアクションシナリオ、如何だったでしょうか?
なんか途中からC級にまでぶっ飛んだ気もしないではないですが。

MVPは禍原・福松様に。
フォローに戦闘に、と大忙しでした。
オチを持って行ったのも含めて、緩急付いた楽しいプレイングでした。

それでは、今後もご縁がありましたら、よろしくお願いします。
お疲れ様でした!