● ――ねえ、こんな噂知ってる? 学校で今流行っている噂がある。町外れの寂れた豪邸、お金持ちが気まぐれに建て、気まぐれに売り払ったというお屋敷。 そこに入ってすぐの大広間にある大きな古時計に触れると、時計が動き出して襲ってくる。そんなどこにでもあるような噂話。 肝試し程度の気持ちで行く奴も居そうなモノだけど、なぜだか妙に嫌な気配がして、触れる前に帰ってくるんだそうだ。 それなら、僕が行ってきて確かめてこよう、そう思ってお屋敷の前まで言ったけれど、そこでもう十分に怖くて、僕は逃げ出してしまった。 何か普通じゃないモノを感じるあそこには、近づきたくもない。 君子危うきに近寄らず、そんな言葉をこないだ習ったっけ。 ――とある男子小学生の、夏休みの日記より。 ● 我が輩は嗜好の一品である、持ち主も次の屋敷に持って行けずきっとなくなく置いていったに違いない。それくらい我が輩は貴重な一品なのである。多分。 この美しき木目、完成された美こそ我が輩の素敵さ、時計を刻むリズムも正確に、時間を支配するまさに時の支配者。 我が輩最高、我が輩素敵。まさに我が輩ビューティフルである。 故に下浅な輩が我が輩に触れるなどあっては成らぬ、在れば、罰を下さねばなるまいて。 ● 「今回の依頼はエリューションゴーレムの討伐」 ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達へ『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はいつも通りに淡々と告げる。 「対象が居るのはとある郊外の大きなお屋敷、といっても持ち主が手放していて、荒れ放題の埃まみれ。潔癖な人には辛いかも。 ともあれ問題のエリューションゴーレムはそこに入ってすぐの大広間にある大きな置き時計。ホールクロックと言うタイプだとか」 資料に書かれた項目に目を通させながら、冷静に現場の状況を告げる、多少嫌そうな表情をするリベリスタも居るが、まぁ下水道なんかよりはましでしょ、とイヴはさらりと流す。そしてそのまま解説を続ける。資料に書かれているのはかの名曲にもありそうな大きく、アンティークのような置き時計。 「まぁ姿形はあくまでもただの形、本質はもう変質してしまったエリューションゴーレム。誰かが触れるとうごきだす。そういう特殊さから暴れることもなくて、一応今まで被害なしに、淡々とフェーズが進んで行っていたみたい。現在のフェーズはまだ2、でも放って置けばもっと進行する今のうちに仕留めて」 そう、エリューションは時間とともに強くなっていく、フェーズ2とはいえ、既に個体としては強力で、タフになってきているから気をつけてとイヴは続ける。 「時計に触れるか、攻撃なんかをすると時計のエリューションゴーレムが動き出す。ただしソレと同時に、数字に手足が付いたような不格好なフェーズ2のエリューションフォースも出現する。数字も時計に合わせた12、結構な数」 とはいうものの、そのくらいはもはやリベリスタなら慣れっこであろう事、敵戦力を確認してなんとかなるかと安心したような顔を見せるリベリスタも多い。けれどそんなリベリスタ達にイヴは解説はまだ終わっていない、と釘を刺す。 「相手のエリューションゴーレムの能力は特殊。常時自分達の速度を上げ、こちらの速度を低下させる。さらに配下のエリューションフォース達は速度を攻撃力に転化する、ソードミラージュのようなスキルも持っている」 戦場で先手をとることは状態異常の付加や攻撃相手を選べることなど、有利なことは言うまでもない。それを可能にしやすくさせるスキル、厄介きわまりないとイヴは告げる。 「エリューションフォース達の攻撃には状態異常も付加されている、状況によってはかなり不利になる、後手に回ることも想定した上で、戦いには望んで」 それでも、きっと皆は勝つと信じているから。そういってイヴはリベリスタ達を送り出す。信じること、ソレしかできないから。 「あ、ついでにそのエリューションゴーレム、喋るらしいから。とっても尊大に、我が輩的に、自分の価値が自慢らしい。アンティークって、めんどくさいね」 やれやれとイヴは肩をすくめてそう呟く、役に立つかは分からないことだから、補足ね、とだけ付け加えて。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:今宵楪 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年08月24日(土)23:30 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● リベリスタ達は件の屋敷前に集合する、手入れの行き届かない庭は草だらけで歩くのにも邪魔だった。 「危険な時計なんか壊してゴミ箱にぽいだ」 そんな中で時計が無くても夜明けなら私が知らせてやろう、そう豪語するのは『デイブレイカー』閑古鳥 比翼子(BNE000587)その人、幻視がないその姿はひよこと評判だがきっと体内時計は鶏まで進化しているので、夜明けを告げるのには十分なのだろう。 「金持ちの豪邸……くっくっく、お宝の予感ね。金持ちが忘れて行った金目のモノを手に入れましょう」 ソレをモチベーションにするのは大変まずいきもするところでモチベーションを上げているのは『ヴァイオレット・クラウン』烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)さんである。た、多分置いていったモノはあるけどあんまり持っていくと問題があるんじゃないかと思われるのですが……。本人のモチベーションは高いのできっと良い、多分。 「1から4がお昼時で、5から8夕暮時、9から12がお休時ってなんだこれ、午後の話しか。午前ちゃんはどこ行ったの?」 非情にも突っ込み所に突っ込んできたのは『雷臣』財部 透(BNE004286)だがその疑問への答えを持っている者は居ない。うん、多分午前さんはお盆でお休みだったのだろう。あ、財部の趣味は趣味は回転テーブルを回す事だそうです。 「それにしても粗大ゴミが囀りますね? 思い込みが激しい馬鹿なんですか? ゴミ屑なんですか? ああ、失敬ゴミは喚きませんね」 このまま出しては回収車に怒られてしまいます。きちんと砕いて分別して捨てないといけません。そう辛辣に今回のE・ゴーレムを酷評するのは『落ち零れ』赤禰 諭(BNE004571)、ゴミの分別は大事ですけど粗大ゴミは粗大ゴミでイイと思いますよ、今回! 「時計さん、きっとすごく大事にして貰ってたんだろうね…。だから、持ち主さんに置いて行かれた時に自分が特別だと信じる事で寂しさを紛らわせたのかな…」 酷評する諭とは対照的に感傷的に今回の敵たる時計を慮るのは『ルーンジェイド』言乃葉・遠子(BNE001069)だが、それでも闘う意志はゆるぐことはない。例え寂しくても、ソレでも人を襲うモノは、世界を崩すモノは放ってはおけない。彼女の好きな砂時計とは違う、置き時計、それを壊さなければいけないのだから。 「肝試しをする輩は感心しないが放っておいて犠牲者がこの先出ても困るしね」 冷静にそう観察して居るのは『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)。確かにアークとしても犠牲者を出すわけにはいかないからこその今回の任務だ。抗う力さえもない人々を守るためにある力を手に祭雅は任務に挑む。 「ちくたくちくたく。時間って,不思議でね。何時だって時間を進めて早足なの」 たどたどしく句切りながら『お砂糖ひと匙』冬青・よすか(BNE003661)は言葉を紡ぐ。でもいいなとは思わないと、早足だと追いつけないのが残念だから、もっとゆっくり時間が歩めばいいのにとそう夢見るように呟いて進みゆく。 そうしてリベリスタ達は屋敷の内部へと足を踏み入れていった。 ● 「思ったより、埃が凄いね…。出来るだけ埃を立てない様に戦いたいけど、難しいかな…?」 念のためにと結界をはりながら遠子がぽそりと呟く。たしかに内部は埃が溜まっており、戦闘が激しくなれば余り埃を立てない、というのは難しそうだった。 「確かに荒れている上に埃ぽいな。件の時計はあれか?」 疾風も誇りに辟易しながら探索し、時計を見つけ出す、明らかにそこから感じる気配は普通のモノではない。故にリベリスタ達はそれに対抗するため陣形を整える、 回復手と成るよすかを角に配置し、他の皆で射線を遮る、諭の影人を護衛に付けるなど各々の準備を整える。 「頼りにしてんぜ、よすか。終わったら、アイスおごってやっからよ!」 「うん、しょーちゃん,アイス楽しみにしてるね」 甘いモノ好きなよすかへそう声を掛けるのは『男一匹』貴志 正太郎(BNE004285)、自分自身は中衛の立ち位置で、射線を遮れるようによすかを守ろうとしていた、ソレで居ながらも前に出すぎないのは自分自身の攻撃をいかすため。複数対象を攻撃できる正太郎の技は今回の数が多いE・フォース相手には有効であろうからだ。 そうして各々が付与や集中をこなしても時計は動かない、あくまでも、触れなければ、攻撃しなければと言うことか。そうして整えた上で一斉に集中砲火が異形の雰囲気を纏う時計を襲う。 「ターゲットロック&フルファイア!」 エーデルワイスの絶対的自負を背負う神速の抜き打ちが時計を打ち抜いたその瞬間、リベリスタ達の体をずっしりと重くのしかかる雰囲気が襲う。 「我が輩に! 触れることすら許されぬ下浅の輩どもが! 傷を付けるとは無礼千万!」 古時計が体を揺らし、目覚めたように周囲には時間を操る、その空間が発生するそれでも一気呵成にたたき込まれる集中砲火は最初から時計に傷を付けていく。遠子の気糸が、比翼子の双剣が、疾風の名に恥じぬ疾風のごとき雷撃が、諭の重火器が、透の圧倒的な一撃が、正太郎の抜き打ちが、よすかの式神が! ぐらりと一瞬その身を揺らす、それほどにため込んでいた分のダメージを与えていく。 「はっはっは、成る程成る程、闘う者としては強者か、我が輩の本気を見せるのに十分じゃな!」 そう時計が笑い声を上げると周囲にE・フォースが出現する、ここからが本番、とリベリスタ達も表情を引き締める。なにせあいてはE・ゴーレムも合わせて13体、先手を取られやすいと不利な条件もあるのだから。 「さぁ、木端微塵になる時よスクラップ共!」 速度に差を付ける空間内、そんな中でもエーデルワイスは先手を取りエリューション達を打ち抜く。派手に笑いながら、派手に儚く飛び散りなさいと、そう残酷に告げながら無数の抜き打ちで漆黒のカードがエリューション達へと突き刺さる。 「さーかかってきやがれ埃かぶったボロ時計! 美しくてかっこいいあたしがボコボコにしてやんよ!」 「ぼ、ぼろ時計じゃと! 我が輩をその様に呼ぶとは、貴様のような小娘風情が、小娘が!」 そして先手を取るのは自らの速度を大幅に引き上げた比翼子も同じ。E・ゴーレムの側面へ回り込みながら小馬鹿にした言葉を投げつける。味方がE・フォースを片付けるまではE・ゴーレムを引きつける。ソレが今回の彼女の役目。そして怒りを誘うその一言は効果も覿面、一発でE・ゴーレムの怒りはMAXであった。 「そのようにいう不敬、万死に値すると心得よ!」 そう怒りと共に時計の針が飛ばされる。一瞬比翼子の身につき刺さったソレは出血を伴うもすぐ消え、本体から新たな針が生えてくる、不思議構造だがE・ゴーレムなので仕方無い。 そしてそのすぐ後にはE・フォース達の猛攻がリベリスタ達を襲う。総計12体、状態異常も交えたソレはリベリスタ達の戦力を奪う石化といったものまで含まれている。射線を遮るように、そして庇い役も置いた陣形のおかげで回復手のよすかまでは攻撃は届かないものの、前線で受け止めたものたちの傷は消して浅くはない。 「はっはっは、なんだなんんだ、お前達も所詮この完璧で優雅に美しい我が輩と闘うには未熟かー? うーん?」 「なにを言うんだ。荒れたままに放置された時計にどれ程の価値があるというのか。きちんと手入れされてこそ価値を維持出来るものだ」 その惨状を見て嗤う時計を疾風は一蹴する。彼自身は石化の被害を受けながらも、それでも、その価値を失った時計に明確な対抗心を燃やして。 「みんな、あまり無茶しないでね」 そして同様に自分自身も被害を受け、炎を身に受けながらも遠子は他の味方を心配する。そして彼女の強さは決して優しさだけではない。彼女は論理に裏打ちされる、戦闘のプロ、敵と向き合い、多数の滝を巻き込みながら、その気糸を舞い踊らせる。 「派手にいこうぜ! 気合い入れてけよ、透!」 「おう、より多くぶん殴って戦況をひっくり返すだけだ!」 正太郎の威勢の良いかけ声と共にその両手から銃弾が撃ち出され、合わせるように透の気迫の込められた一撃が12の姿のE・フォースを吹き飛ばす。速度低下とて元々遅ければ意味は薄い、非常に割り切った考え方の透である。ちょっと悔しがっている気もするガ多分、きっと問題無い、勝てばいいのだ。 「さあ、楽しいショータイムはじめましょ。よすか、結構好きよ? こう言う肝試しみたいなの」 言葉を紡ぎ、お砂糖を囓りながら、石化に苦しむ疾風や諭を癒す光をよすかは戦場に輝かせる。肝試し、確かに埃まみれの洋館で、時計と踊るそんな恐怖体験もあるだろう。それを楽しいと評しながらも冷静に、よすかは自らの癒し手としての力を振るっていく。 「的が増えた方が戦いやすいでしょう」 そのよすかの光によって石化から回復した諭は式符を操りさらなる影人を産み出す。紙切れ一枚とてガラクタ相手には十分と、よすかを一体に守らせながら、他は重火器でE・フォース達へと攻撃を加えさせる。今回の敵は単体攻撃主体故、こういった的を増やすことは、攻撃を逸らすことにも繋がり、諭の能力は状況を有利にさせていくだろうことが伺える。 E・フォースの数も多く、被害も大きいながら、それでもリベリスタ達は立ち向かう。あくまで単体主体で攻撃がばらけているからこそ、一人一人にはまだ余裕がある。そしてそのままおしきるために、もう一歩、もう一歩と攻撃の手は緩めず、戦い続けていくのだった。 ● 戦いの中、攻撃は激しく、どうしても体力的に不安のあるメンバーである遠子や悟は連続で攻撃を受けることもあり、そのたびに必死に耐えていたが、フェイトを削って何とか立ち上がっている状態でもあった。 諭に言わせれば埃まみれで転がる趣味はない、と言うところか。しかし現実には中々数の差を影人で補っていてもなかなか難しい戦いではあった。 リベリスタ達の戦法は至極単純であり、効果的もあるが、お休み時の石化はやはり厄介であり、攻撃の機会を奪われるなど、どうしても後手に回る不利を拭いきれずにいた。 「小娘も頑張っておるが、中々どうして、この我が輩の相手をするのはそろそろ限界ではないのか、ハッハッハ」 そんな中でE・ゴーレムが小馬鹿にしたように、その時計の針を振るって比翼子を傷つける。攻撃を直接受け止めないように努め、ダメージを極力抑えてきた比翼子であるが、流石に戦い続けてくると消耗も激しい。 「……ごめん! 透御願い」 「了解、こいよ! タフな男ってのも持てる男の条件だぜ」 その言葉通り、消耗した比翼子と入れ替わるように透がE・ゴーレムと比翼この間に割り込み、比翼子は後退する。アッパーユアハート、その効果をかけ直し自分にボスの目を向けながら透は意気込み挑む。レディーを守ってこその、自分なのだからと。 そして被害が大きいのは比翼子ばかりではない。単純に数が多いこともあり、単体攻撃ばかりとはいえ状態異常も含む攻撃で先にも述べたようにリベリスタ達は消耗していた。よすかが必死で回復してはいるが、ブレイクフィアーも必要とされているため、ダメージの回復は遅れがちだったためだ。そんな状況を変えるため、正太郎は覚悟を決めて言葉を放つ。 「さっきから我が輩我が輩って廃墟に放置された粗大ゴミの分際で笑わせるぜ! おいおい、ずいぶん時刻がずれちゃいねえか?」 それは挑発の言葉、状態異常を無効化する絶対者故に、自分自身へと攻撃を集めれば状態異常による被害は抑えられる。そのための言葉。 「ぬ、ぬぬぬぬ! なんじゃと、おいお前達、あの不敬な輩を八つ裂きにしろ! 我が輩を粗大ゴミなどとは無礼無礼無礼じゃぞ!」 しかしてそれは実現する、E・フォース達のこうげきは目算通りに正太郎に集まり、その身を削る。しかしソレで傷つこうとも正太郎は運命の力を借りて立ち上がる。 「運命を使い果たそうと、遠子には指一本触れさせはしねえ!」 あ、ごめんなさい、わりと指自体は触れてます。乱戦なので結構触れてます。それでも立ち上がるのはあいゆえに。 そして正太郎に攻撃が集中したが故によすかには回復の余裕が、他の皆には攻撃のタイミングが訪れる。そう、その迂闊な一斉攻撃で出来た隙は一斉の攻撃をたたき込む好機と成る。 エーデルワイスのターゲットロック&フルファイア! 遠子の放つ無数の気糸が! 疾風の放つ雷撃をまとった斬撃が! さんざん皆を苦しめたE・フォース達を一気に吹き飛ばす。狙い続けたお休時が一斉に消し飛び、夕暮時、お昼時もそれまで範囲の被害を受けていたこともあり、目に見えて倒れる者もおり、残った分も弱ってきていた。 「どんなに取り繕っても不要品な事実は変わらないんですよ」 そう諭が痛烈な皮肉を込めて降らせるのは全てを凍らせる雨。それに加えて呼び出した影人達の集中砲火によって残っていたE・フォース達もまた消し飛び、残ったのはE・ゴーレム一体限り。 「ば、馬鹿な我が輩の兵隊が全滅滅滅!?」 「さぁ、もう出し惜しみする必要もねー思いっきり攻撃に回るよ!」 よすかによって回復された比翼子が再びE・ゴーレムへと迫り実体を伴った幻影と共に背後からE・ゴーレムを切り裂く。それを契機としたように続々と味方の攻撃がたたき込まれていく。 「処刑の時間よ、憎悪の鎖に吊るされなさい」 エーデルワイスのその宣言と共に繰り出される鎖は彼女が傷ついている分だけ威力を増し、彼女自身すら蝕みながらもE・ゴーレムを縛り上げる。絶対的な有罪を、ソレを突きつける、その技を持って彼女は愚かなE・ゴーレムを断罪する。 「う、うるさいうるさい処刑するのはお前らじゃ! 我が輩を誰だと思っておる、さる名工の手によって造られし名時計ぞ、それをこのようにぼろぼろにぃ!」 透の手による怒りを振り払いリベリスタ達へとその針をE・ゴーレムがまき散らすも、それだけで倒れる者はもう居ない、勝負の決着はそこまできていた。 「お休時を過ぎたら俺達の時間だ。俺くらいの年頃は深夜24時を過ぎた辺りから元気になるんだよ」 年代ものの爺さんは、いいからさっさと永遠の眠りにつきやがれ。そう宣告しながら放った透の裂帛の一撃が最期の一撃となり、E・ゴーレムはその動きを止め、ぐしゃりと崩れおちる。自分だけ時間が速く動くって事は確実に歳取るの早い、そんな皮肉を最期に透は賭けていた。 ● 「みんな、お疲れ様……すっかり埃まみれになっちゃったね」 遠子はそう皆をねぎらいながらよすかについた埃を優しく払っていく。そしてそのまま時計に近づくと一言、おやすみなさい、綺麗な時計さん、そう呟き、時計に付いていた埃も払っていた。 「そう、時計さんは、幸せだったんだね。時を支配できるって素敵だけど、甘ったるくて面白くないから、よすかは嫌いだけど」 埃を払って貰った後、周囲を掃除したよすかは、サイレントメモリーを使い、時計の残骸に触れ、その思いを、使われていたときの思いを読み取り微笑む。時は刻まれていくモノ、そう、時を刻むなら、よすかがその分の時を持って進んでいくからお休みなさいと、そう告げるように。 「道具は大切に使われてこそ価値があるものだよ」 そう呟く疾風はアークに対処の終了を報告し、屋敷を管理下に置くように申請していた。時計以外のモノでも、掃除もしくは修理すれば価値のある物もあるかもしれないからと。きっと物達も、使われていることが価値を維持できるモノだからと。 「ガッデム! そこでそうきますか!」 本日のメインイベント宝探しね(きらん)と意気込んでいたエーデルワイスは取り乱す。アークの管理下に置かれるなら勝手に持っていくわけにもいかないだろうから当然である。良い物一つくらい残ってるよねと期待していた上にモチベーションをそれに頼ってた彼女にとっては非常に残念だが、まぁしかたないことである、合掌。 不思議な不思議な時計の話はコレでおしまい。アークのリベリスタ達は時計の残骸もまた修復できればと頼み、帰り路につくのであった。 あ、正太郎さんはちゃんと最後によすかさんにアイスを買って上げたそうです、いいお兄さんですね。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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