●称号考えてほしいひとこの指とーまれぇえぇぇぇいえあ! エビバディ、カモン! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年08月22日(木)00:42 |
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●「称号って、自分で考えて自分で名乗ってるんだよね……自称だよね?」と言い出した友人のことを俺は絶対に許さない抱きしめてやる 昨今何かにつけてエースリベリスタのたまり場になるがその半数以上が金を払わずに帰って行くという驚異のハンバーガーショップがある。RUMOR-RUMORである。 「じゃあこの幸福定食ひとつ」 「ほい」 メニューを指さしたベルカの前に、ストンとお菓子が置かれた。 一粒何百メートルのキャッチフレーズでおなじみ、例のキャラメルである。おまけのついたやつである。 カウンターに顎肘をつけるナビ子。 「で、今日は何しに来たの?」 「開始三百文字足らずで趣旨を忘却している……だと……?」 色々な意味で愕然としているベルカの額に『条件反射の犬』という札をくっつけ、ナビ子はカウンター横の扉を開けた。 「そういえば今日はお客さん少なくない? まあいつも少ないけどさ」 「そう? まこは沢山人が居る所しか見てないけど」 ポテトをくわえた真独楽がくるっと振り向いた。どうやら鳴未と一緒に○×ゲームをしているらしい。いわゆる3×3マスの囲碁だ。 「ね、鮎がまるまる一匹挟まってるバーガーってないの? あと甘酸っぱくて冷たいスムー……」 「ほい」 ホットドッグに生鮎(ぴちぴち)に甘酢を添えたものを差し出した。 黙ってナビ子の口にねじ込むまこにゃん。 「ところで称号は? JCらしいオトナなやつをお願い!」 「『いっそついててくれて助かった』」 「なにそれ!?」 ホットドッグを(鮎ごと)ごっくんしたナビ子に色んな意味でどん引きするまこにゃんである。 ふと顔を上げる鳴未。 「あ、また負けた。これって必勝パターンあるんスかね」 「相手の視界と平衡感覚を奪えばイケるはずです!」 新たにポテトセットを持ってきた七栄さんがガッツポーズでンなことを言い出した。 「いや、そういうのじゃなくて……いや、知ると面白くなくなりそうなんでいいッス。それより称号を考えてたなら……」 「あっ、それは聞いてます! 『一般的な二十歳男性』だそうです!」 「思ってた以上にきっついスね……」 静かにポテト食い始める鳴未をよそに、福松がトレー片手にカウンターまでやってきた。 「よう、元気にやってるみたいだな」 「あっ『早すぎた高二病』の福松さん!」 「それナビ子が言ったんだな? 額に三発くらいぶち込んでやる……!」 「何を叫んでいるの」 そうぞうしいわ、と言って『613番』がトレーを置いた。 渋々席に着く福松。 「すまん。今日はおごりだ、好きなもの食ってくれ。嫌いなものはあるか?」 「別にないわ」 口ずさむように言う『613番』。 「好きなものは?」 「別にないわ」 全く同じトーンで言う『613番』。 福松はほほを掻いて天井を見上げた。 「……生きてみて、どうだ?」 「別に」 トレーの上に鮎ドッグを置いて、『613番』は言った。 「普通よ」 ……と、そこで突然福松の携帯が鳴った。 メールだ。SHOGOかららしい。 開いてみる。 『ブルスコファーブルスコファー。ハウステンボスマジ天国だよ人生の疲れが癒えるんだよチーズ作ろうよチーズ君のイトヒキガイがとろとろモッツァレラだよぉーうひぃー』 「……何?」 「いや、いつものことだ。気にするな」 暫くするとナビ子が遊びに行ってくるーとか言って店を出て行った。 仕事しねえのかよという顔で見送る瀬恋。 余談になるが、テーブルには『JK893』という札が置かれていた。 「所で……なあ、そこのアンタ。補助員サポ子か。本名かよそれ?」 「そもそも私に本名などというものはありませんが、強いて言うなら……」 「ふーん。所で篠田組が今どうなってるか知ってるか?」 「いえ……フィクサードの行く末に興味がありませんので。調べますか?」 「ああ、たのむ」 了解しましたと言ってどこかへ電話をかけ始めるサポ子。その横で、まおがちょんちょんと彼女の肘をつついた。 「お疲れ様です。例の件で……。経費? 甘えないでください、自腹が切れないなら物理的にあなたの腹を切り開いて売ります。はい、連絡待ってます、よろしくお願いします。あ、まお様。どうかしましたか?」 「これ……」 電話を畳んだサポ子に、まおは白いハンカチを差し出した。プレゼント用の包装がなされたものだ。 「どうもありがとうございます。手は痛みませんか?」 「大丈夫です。今度はこれを使ってください。服がなくなっちゃうので」 「勿体ないお言葉です」 どこか仰々しく頭を下げるサポ子である。 こくこくと頷くまお。 そんな彼女の手元には『ハングマン』と書かれた札が置かれていた。意味をよく理解していないまおが「男じゃないんですけど」とコメントしたのは言うまでも無い。 ●実質的には居酒屋にたまるだけの依頼に意外と需要がある組織ことアーク 「おねーちゃーん、鳥のからあげー」 「はーい!」 と言って、なんか比翼子が運ばれてきた。 何度やるねんこのネタ、とか言われそうなものである。 「ナビ子くーん、たわし買えよー。レベル35までにいくつ売れたかで深化分岐するんだよー」 「それ少なかったら幻想種(からあげ)になるとかそういうのなん?」 「多分許されませんよね」 「じゃあ称号は……」 「たわし以外で」 「じゃあ『真珠夫人』」 「たわしの呪縛が深まってるよ……」 悲しげに呟く比翼子をスルーして、ナビ子は居酒屋の奥にある座敷へと進んでいった。 「子供の頃は缶蹴りをよくしたなぁ。あれは楽しかった」 「ふむ……」 「ふむでござる……」 おっさんたちが唐揚げ(他意の無いメニュー)だの刺身だのを食ってのんべんだらりとしていた。 具体的には虎鐵、アーサー、信長……じゃなくて正宗の三人である。最大15歳差くらいあるはずなのになんでか同年代みたいな会話だった。 「そういえば最近、雷音の元気がないのでござる。カズトもしょんぼりしているし」 「戦後問題というやつだな。大抵の問題は戦時中より戦後にわき出るもの。いっそふわもこアニマルにでも埋もれさせてはどうだ? そういう夢を見たが、幸せ過ぎて一瞬世界平和が訪れたぞ」 「ふむ……」 「所でなぜ正宗殿は神妙な顔をひたすらキープしているでござる?」 「この前声が信長っぽいと言われたのでプレを顔文字で埋めてみたのじゃ」 「馬鹿だ。馬鹿がいる……」 「権利的にギリギリセーフ臭いのがまたムカつくよねー」 ナチュラルに混ざって唐揚げ食い始めるナビ子。 が、ハッとしておっさんトリオが一斉に振り返った時には、既にナビ子は消えていた。 代わりに三枚の札が置かれている。 『一人英雄伝説』『妖怪飲んだくれじじい』『ロリ侍』。 「ふむ……」 「ふむ……」 「ふむでござる……」 おっさんたちはぐいっと酒を飲み干し、札を見なかったことにした。 あるカウンター席のこと。 「前にですねー、姉さんがアークに来たと思ったらいきなり男に口説かれて、姉さんが取られるって焦ったことがあったんですけど私よく考えたら姉居ませんでした。誰だろうあの美人」 「遠回しなナルシズムか? しかしいいもんだな、こうして気ままに酒を飲んで過ごす時間というやつは」 「あーれー? フッ君から返信こないなー。やっちゃってんのかなー、しっぽりしちゃってんのかなー!?」 「ヤツにそんな機能あったかのう……そのうちつけるかのう……」 ひたすら妄想のことだけ語る恭弥に、やたらシリアスフェイスを維持する鷲祐に、深夜特有の下ネタを連発するSHOGO。あとゲストの松戸博士という組み合わせである。 ノリがほぼ深夜ラジオだった。 セキトモのノリだった。 「大丈夫大丈夫、オレの声優セキトモだから。『ばろらじ』のパーソナリティだから」 「それは初耳だな……」 「オープニングにラジオドラマ撮るんですよね」 「お前、出るたびに担当声優かわっとらんか? 聞き違いかのう……おっと、そういえばさっきこんな札を貰ったんじゃった。ほれ」 松戸博士がそれぞれ恭弥、鷲祐、SHOGOに札を渡してきた。 『もう女はいらない』『突き抜ける爽快感』『まるで生の感覚』。 「悪意と他意を感じる組み合わせだな……」 三人はこっくりと頷き合ってから、ナビ子に恐怖画像メールを一斉送信した。 「ギャアアアアアアアアアアアアアアア!」 携帯片手にナビ子がカタカタ震えていた。 そんなやつを無視して焼酎を飲み交わす赤髪ロングの人たち。具体的にはラシャと陽子である。 赤髪ロングで成人女性のサガか何かだろうか。とにかくこういう人らはすぐ酒飲んでくだを巻く。 「チッキショー、あそこで負けてなきゃなー。今頃焼酎じゃなくてもっと派手な酒開けたのになぁくっそ! おかわりー! とりあずビール!」 空になったジョッキやらグラスやら升やらをがらがらと下げさせる陽子。 その向かいで、ラシャはエイヒレの入ったお猪口をちびちびやっていた。 「よく飲みますね」 「これが呑まずにいられるかってのよ」 「勝ったら勝ったで呑むんでしょう?」 「あはは言えてる!」 ピーナッツを豪快に頬張る陽子。 「そういえばビールいかないの?」 「あんまりビールは……エビスくらいならいけるんですが、もっぱら焼酎とかですね。黒霧辺りが好みです」 「ああ芋の? 私あんま芋はいかないなー。あそこの蕎麦は呑んだことあるけど」 と、そこへさらっと混ざるナビ子。 「てかビールだめなん?」 「炭酸苦手で」 「じゃあ黒ビールいってみたら? 芋好きなら行ける気がするのなんか。でも専門家がすぐそこにいるから、例のバーに言って聞くのがベストだよね」 「専門家? あー、新田酒店か」 グラス持ったままくるりと振り返る陽子とラシャ。 「へいかーんぱーい! いぇーい!」 グラスを両手に持ってぐるぐる回る新田酒店さんの姿がそこにはあった。 「いぇーい!」 一緒になってグラスをがちがち慣らす竜一もいた。 3DTが二人もそろっていた。ちなみに三人目が加わるのはおよそ三年後のことになる。 「いやー黒木屋くるのもすっかりおなじみになったなあ。てかなんでここ普通に営業してんの? 誰かが買収して立て直したの?」 「rumorrumorと一緒で『存在してるだけで維持費が入ってくる』タイプの店だねここ。いわゆるダミー企業だよ。合法賄賂落とす時にここへ来てクソ高い酒とか個室とか使うの。だから普段客とかまず入らなくて、持ち主的には宴会場にピッタリなのね」 「持ち主って?」 「分かりません、一体誰紅なんでしょうね……」 ウィスキー片手に瞑目する赤スーツの人。どうでもいいけど出過ぎじゃないのかこの人。『ベニーがBNEアニメ化したらありがちなことスレ』に絶対『自分が出ちゃう』って書かれるぞ。あと『永久に回収されない伏線』と『最終回が24時間スペシャル』ね。 「あっ、俺ベニーの称号考えてきたぜ! 文字数食うから一個だけ抜き出しといてくれ!」 「じゃあこの『割と誤変換多い』で」 「自虐かよ!」 「通常の十倍仕事できる代わりに神様がつけたハンデなんです。そういう病気なんです。どれだけ対処しても誤植が潰れないので、無駄な努力をするくらいなら他へ回そうと」 「まあ、普通は信じて貰えない感覚だろうね。ミスっていうのは手順を踏めば必ず無くなるものだから」 ブルーのカクテルグラスを両手で覆うロアン。 「世の中には『どうしてもまっすぐ二足歩行ができない人間』もいるってことを、人はよく忘れるからね。あ、そういえばスランプなんだって? がっつりやるか放り投げるかの二択っていうけど、どっちがいいの?」 「ガッツリした依頼出すか放り投げた依頼出すかですね」 「結局依頼出すんだね」 ……などと話していると、隣のテーブルにいた佳乃が熱燗ちびちびしながら目をそらした。 「うわあ……なんだか知らない世界のことを話してる……」 「アークリベリスタにはよくあることだよ」 そして安定のナチュラル混ざりで会話に加わるナビ子。 「そういえば、ハンバーグの悪魔に触手で陵辱されそうになったらまさかのメアド交換が始まって最終的に健全なおつきあいをした夢を見たんですけどなんででしょう」 「理想と現実を折り合わせた結果じゃない?」 「私、何を理想にしてると思われてるんですか」 半眼の佳乃。 すると隣のロアンと新田酒店が目をカッと開いて振り向いた。 「何がおつきあいだよ! ケッ!」 「こんな格好して町あるけばそりゃ彼女もできないよ、ちくしょう!」 「あの人たちなんで荒れてるんです……?」 「きっと仲間だと思ってた竜一が見せつけてるからじゃね?」 ふとそちらの方向へ目をやる。 「おや竜一、カクテルとは残念だな。お酌してやろうと思ったのにな?」 「えっ、本当!? んっふっふユーヌたん好き好きー! 今日もかわいいなあもうかわいいなあ!」 竜一がユーヌ抱えてアヘアヘしてた。 まさかこんな依頼にカップルがデートしに来るとは思わないから表現がポップになるが、あーんしたりフーフーしたりちゅっちゅしたりの連続である。 「ふふ。成人したお前にお酌してやるのが楽しみだったんだ。そのうち私にもシてくれ」 「約束だよユーヌたん! んーまっ! その頃には結婚しようね! ひ孫まで作ろうね!」 それを黙って見つめるフリーの男女たち。(ラシャたち含む) 「ナビ子、この人らに称号つけてあげて」 「『無限死亡フラグ』と『フラグを折る係』かな」 「っていうか、超能力集団特有の恋愛圧力が渦巻くなかでよくフリーを貫けますよね」 「いやまて、そういえば新田酒店はフリーじゃねえぞ!」 「あっ、そういえばこの前イチャつく2ピン作ってた!」 「何が3DTだ! ゲームの箱捨てられずに取っておくみたいなもんじゃねえか!」 「焼き払えー! ワイン注いでフランベしてやる!」 「みなさんおちっ、おちおちおちついて!」 一気に乱闘騒ぎに発展する黒木屋店内であった。 尚、後に写メと共に送られてきた称号表によれば……。 『芋女(酒)』ラシャ。 『麦女(酒)』陽子。 『宴会部長』新田酒店さん。 『一人異端査問会』ロアン。 『永遠の隠しボス』佳乃。 『紅スーツ=白スーツ+PCの返り血』ベニー。 ……とのことである。 ●大人のロマンがあるゲーム、BNE(キャッチフレーズ) カウンターと二台のテーブルだけしかない狭苦しい店に、R&Bミュージックが流れていた。 一人だけの店主がデノンのレコードプレイヤーを二台同時に操作して器用に音楽をクロスフェードさせていく。 ここはウィークエンドバーという、土日の夜しか開いていない奇妙なバーである。 「よぉ、待ち合わせしてんだけど……なんだよこの店わかりづれぇよ。完全にアパートの一室じゃねえか」 「あっ鎖ちゃんこっちこっち」 手を振る郷に軽く舌打ちすると、鎖はどっかりと隣のカウンター席に腰掛けた。 「こいつと同じので。もしくは甘いやつ」 「あ、やっぱ甘いやつなんだ? っていうかお酒飲むんだ」 「仕事で人付き合いするにゃ酒と煙草は必須だぜ?」 「あー、わかるかも」 禁煙をして困ることの一つに『情報に疎くなる』というのがあるが、これは世間的には共感を得がたいことだろう。 「そういうお前は、車は?」 「今日は電車だから平気。明日仕事だからオールは無理だけどね」 「アンタとのオールなんて最初から求めてねーよ」 出てきたグラスを傾ける。 カランという小気味よい音がした。 席は離れてテーブル席。合成革のソファに身体を沈める蜂須賀朔の姿があった。 氷の浮いたグラスを持ち上げて回す。 「こういう所に来るのは初めてなんだが、悪くないな」 「まあ、人付き合いが苦手なあなたには丁度いい暗さと狭さでしょうね」 「身も蓋もない話だ」 眼鏡の男性フォーチュナがコーヒーを手に言った。バーなのだから酒を飲めと言ったところ、アルコールはやりませんの一点張りだった。空気が読めないとはこういうことを言うのだ。 「アークに来てからは珍しい経験をよくする。特殊生命体との戦いがそうだ。あの科学者には期待している。妹によれば、等々力雲厳という刀使いの覇界闘士なんかもいたらしいな。興味がある」 「人殺し遊びは楽しそうですね」 「あぁ、実に面白い」 グラスを半分ほどあけてから、朔はそうだと呟いた。 「妹に称号をつけてやってくれ。私はいい」 「死人に称号が?」 「そうだ」 「はあ。ナビ子さんの発案で構いませんか? 確か……『キルデレ』でしたかね」 グラスを置いて、朔はソファに背を預けた。 「ははっ」 バーのすぐ隣には和食系のでかいレストランが建っている。リベリスタたちが集まっているのは主にそっちだった。 そんな店内に鉄火丼かっくらいながら喋る狄龍がいた。 「ってわけで、『男たちのバンカーバスター』『錆天大聖』『関帝錆君』ときたんだが、錆のつくいい称号ないかねナビ公」 「錆にはCURE 5-56」 「ありきたりなの以外で」 「でも錆って日本の字義じゃ『金属の精』でしょ? 叙情的には『寂び』に通じてて『わびさび』の色調にもなってるくらいだし、日本語表現したらまずそこにぶち当たるよね」 ずずーっと茶をするるナビ子。 「お前って、思い出したように無駄な知識披露するよな」 「文字粘着でつまみ食いしてないで、素直に『金精』で通しときなよ楽だよ」 「そういうもんかねェ」 「無駄知識と言えば」 お茶漬けすすってたロウが糸目をちょろっと開けた。 「ホワイトナイトって知ってます? 前に依頼で聞いたんですけど、あれグッときましたよー。ああいう称号ないですかねえ」 「えー、でもロウってクー・クラックス・クラン(KKK)ぽくない? 発狂集団自殺はジャンルが違うっていうか……」 「はあ、それは知りませんでしたが……調べてみますかねえ」 「じゃあステイシィさんは? 再殺部隊のステーシーさんなのです」 「右手はどっち? ブルキャン?」 「ライダー」 「じゃあ『リテイク』でいくより……ちょーっとズレたところで『ハッピーアイスクリーム』でいったらいいんじゃね?」 「あ……? あー、あーあー」 「この人たち何の会話してるんです? 全くついていけないんですけど」 糸目に戻ったロウの横に、ブリリアントがちょこんと座った。 「バイドバーガーひとつ」 「流石にこの店にはねえよ」 「他にはあるみたいな言い方はよせ。しかし称号を考えるにも私の場合はネタがなあ、ううむ……」 「ラグナさんだもんね」 「うむ。いつかアルティメットキャノンをメガ波動砲と言い張るのが夢だ」 「あっ、三作目なんだ。私ファイナル基準で考えてたから、なんでこの子ダークナイトにならなかったんだろうって疑問だったよ。めっちゃレーザー撃てたのにって」 「しかしあの頃の感動というものがなあ。むしろ私的にはあれが最終兵器(ファイナル)だし……」 「やっぱ『幼体固定』でよくね?」 「一番酷い部分を抽出したな」 「まーたマニアックな話してるぅ」 珍しく酒を入れずに馬刺しつまんでた御龍が割り箸をちょいちょいと振った。 「そういえば、最近夢見が悪いんだよねぇ。なんか引くずってんのかなぁ」 「なに、最近誰か轢いたの?」 「それで仕事続けてたら大問題だよぉ」 「あ、いまいい称号思いついた」 「……一応聞くけどぉ?」 「『女デコトラ伝説』」 「だと思ったぁ」 あのシリーズいつ終わったんだっけなあみたいな話をしていたら、カツ丼片手に守巡査が寄ってきた。 「称号の話ですか? いいですねえ、俺のは杉様の詞からですよ」 「おれの名はポリスマンってか。あの称号書くたびにJRさんが恐かったんだよね。音楽的な方の」 「なら今のは……」 「あれもあれでホモ漫画じゃん」 「私は称号をくれてやれなんて言ってませんよ?」 「誰です今の赤い人」 後ろを通った誰かへ振り返る守。 顎を撫でていたナビ子はふと顔を上げ。 「ここは原点に立ち返って『無免許巡査』でどうかね」 「ただの犯罪者ですよねそれ」 「じゃあ『全裸刑事(フルオープンデカ)』」 「前の紹介まんまじゃないですかぁ! やだー!」 腰をくねくねさせる守にそっとどん引きしつつ、ナビ子はお会計を済ませにレジへ向かった。 ●まも☆ちんの突撃街頭インタビュー 「皆さんこんにちは! 『そろそろナビ子が出過ぎだ』との声を貰ったのでマイクをパスされた『まも☆ちん』姫宮心デス! ナビ子さんのつける称号とかいらなかったので丁度良かったってもうついてるううううううううう!」 マイク持ったままノオオオオとか言ってのけぞる心。空にぷかぷか浮いて人様の通行を邪魔しない、とても優しい苦悩表現である。 「今日は『子供の頃やった遊び』をテーマにインタビューしてみたのデス! では映像をちぇけら!」 『リア充時限爆弾』S楽悠里さん。 「ドッジボールかな。学校の朝とか休み時間に校庭出てやったよね。丁度弾平やってたし、ダイレクト世代だったんだなあ。あ、知ってる? あれのゲームボーイ版があって、相手のHPがつきるまでボールをぶつけるの。絶対ゲームの趣旨間違えてたよね。あっ、日本酒とお刺身ちょーだーい!」 『谷間が本体』シルフィア・Qさん 『全年齢向け触手AV』H多野のぞみさん 「子供の頃? 私ヒッキーだったからねぇ……基本的に本を読んでたわ。子供だったり大人だったりのね。勿論勉強もしてたわよ。あっ、でもたまに姉を拉致って山に登ったりしたかしらね……」 「え? 私は特にこれっていうのはないんですけど」 「イソギンチャクと戯れたりとかしなかったの? ドジョウとお風呂入ったりとか」 「わたしを何だと思ってるの?」 『定評のある美尻』M厨夏栖斗さん 「なにこの悪意ある称号! そんな実績一度も解除してないよね!? トロフィー獲得してないよね!?」 「以上です、スタジオにお返ししますデス!」 ……と言って、心はハンバーガーショップのカウンターにぺたんと突っ伏した。 隣でげっそりする夏栖斗。 「最近、仕事のサボり方が巧妙になってきたよねナビ子さん。よくショップクビにならないね」 「だってお給料貰ってませんし」 「ボランティアなの!? あっ、そうじゃなかった。子供の頃の遊びが何かってインタビューじゃなかったっけ」 「えー、でも御厨夏栖斗の遊び方ってあれでしょ、先輩の家でエロ本読むとかでしょ?」 「違うよ! プレステだよ! バイオとかだよ!」 「えっ? 17歳で?」 「……2のだよ! ベスト版だよ!」 「そっか、ボクはてっきり夏栖斗が同年代なのかと思ったよ」 「古い知識さりげに知ってるしね」 「エロいし」 同時にきゅきゅっと振り返る悠里、シルフィリア、Eカップ巨乳美女触手鎧ヌメヌメ天国パート2。 「あれ? ユーリさ、さっき日本酒と刺身注文してなかった? なんでハンバーガーショップにいるの?」 「日本酒くらい今時コンビニでも売ってるじゃん」 「だからってハンバーガーと並べなくてもよくない? あっ、そうだちゃんとした称号ちょうだいよ! ピンにもしてない尻を強調されたんじゃたまんないよ!」 「え、欲しいの?」 「折角だから欲しいよ」 「わかった。ほれ、キャッチしろい!」 フリスビーみたいに投げられた札をがしっとキャッチする夏栖斗。 『解毒少年』。 「……あ」 どばんと音をたてて扉が開かれた。 「さあよこせ天下の日本銀行券! 一万くらい!」 タヱである。他にいたら困る。 カウンター席に飛び乗ると、そのまま正座して見せた。 「あと称号もよこせ! いますぐに!」 両手を出してプリーズギブミーベイベーするタヱ。 それに対してナビ子はやれやれだぜのポーズで首を振った。 「おいおいタヱちゃん十二歳だからって欲がなさ過ぎるぜー」 「え、まじっすか。もっとくれるんっすか!?」 「ほーらタヱちゃん、驚きの百万ジンバブエドルだよー!」 「ひゃ、ひゃくまん!?」 札束をびたーんとされて、タヱはびっくり飛び上がった。 「さあ今日から君の称号は『プライドは金で買える』だ!」 「マイネームイズマネー!」 やったー今日はビフテキじゃーとか言いながら店を飛び出していくタヱちゃん。 「日本円にして七円強……か」 ぼーっと中空を見つめるしのぎ。 「ところで艦――」 「別ゲーの話はさせねーよ!?」 言わせねーよ!? のテンションでぎゅいんと振り向くナビ子。 「人気があればあるほど厳しいんだから。恐いんだから。ベニーの首くらいいつでも飛ぶんだから」 「そうなんだ?」 「ほら、これあげるから帰りなさい」 しのぎに『明後日からの使者』という札を渡して帰らせた。 「ってオイまじで帰んのかよオイしのぎぃ」 持参したペッパーの実をぽりぽり食うコヨーテが、自分に渡された『アルティメット野良犬』というくっそ語呂の悪い札から顔を上げた。 「まイイや。何の話だっけ? あっ、オレお兄ちゃんと妹いンの。妹にはウザがられてたけど、お兄ちゃんとはよく遊んだな。よく半殺しにされたっけなァ……今ヤったらどうなンだろ」 「エッ、遊びって半殺しにするものなの? にーちゃんと遊んで死にそうになったこととかないんだけど」 二人並んでシェイク啜ってたナユタとモヨタが、二人同時にに顎を上げた。 「ないなー……あ、そういえば前にBNETRPGの夢見た。何の宣伝かと思った」 「宣伝とかにーちゃん……その話題続けても大丈夫なの?」 「情報少ないし、無理臭いなー。それより称号だよ。ガキ大将もそろそろ卒業したいけど、コレっていうのがなー」 どうよ、と同時にカウンター越しのナビ子に向き直った。 「『選ばれしバーコードバトラー』」 「ありもしない設定つけれてるっ!」 「あれでしょ? 神のバーコードの欠片を持つ選ばれしバトラーなんでしょ。四人の仲間を見つけて悪のバーコード組織と戦うんでしょ?」 「すごくどっかにありそうだしにーちゃん出ててもおかしくないけど、それだとオレの立場ないよね」 「大丈夫、ナユタは『選ばれしカブトボーガー』だから」 「もっとマイナーなところを突かれたっ!」 「出てそうじゃない?」 「出てないよ! もーいいよー、甘栗食べる?」 「秋になったら頂戴」 とか言いながら袋から直取りしていくナビ子だった。 リュミエールとテテロが二人がけテーブルで向き合っていた。 なんかちょいちょい関わることが多いというか、リュミエールの方からちょっかい出すことが多い二人である。 「すきだったあそび?」 「そ、アソビ」 「んー……あやとりっ!」 「あやとり?」 「ひも一本でいろいろできるんだよっ!」 「アー、捻ったり切り裂いたりトカ、デキルヨナー」 「そーゆーのじゃないの。でもママはいろいろできて、まほーみたいでたのしかった」 「フーン。あ、チーズケーキ焼いてきたけど食ベルカ?」 「たべるー」 小さいながらもワンホール丸ごと掴んでもぐもぐ行くテテロ。 がっつきすぎだろと思うリュミエールだったが、ハンバーガーショップでケーキ広げてる自分もかなりがっついてるので黙っておいた。 「それで、なんでミートたちごはんたべにきてるの?」 「称号だろ?」 ポテトの箱からピッと札を二枚引き抜く。 『前衛型支援機』『歩く廃刀令』。 「ナンダコレ……」 『違法ロリ』と書かれた札を持ったキンバレイ。 『脱法ロリ』と書かれた札を持ったリンシード。 二人は一度顔を見合わせ、お互いの札をのぞき見て、最後に天井を眺めてから「んー?」と呟いた。 「まあ、ローライズとサスペンダーしかつけてないキンバレイさんが完全に違法(アウト)なのはともかくとして、可憐で清純派の私が脱法(ファール)とはどういうことですか」 「まあまあ、子供の頃の話しましょ。二人ともまだ十代の前半でしょ? 子供の頃っていうより、今の遊びになるんじゃない?」 その場を仲裁しようと小夜香が両手を翳した。 「私はお医者さんごっこかな」 「わたしもやりますよ。おとーさんに『お胸が痛いので』って言うと『では毒を吸い出しましょう』と――」 「まって、ちょっとまって。多分それ触れたらダメなやつだとおもうの。私だってね、ちゃんと女の子同士だったし……そうよねフラックスさん?」 「はい。私はもっぱらお姉様とです。他はまずありえませんね」 「そ、そうよね」 「まずお姉様に『お腹が痛いわ』と言わせ私は『では毒を吸い出しましょう』と――」 「ごめんなさいこっちも触れたらダメなやつだったわね」 「お姉様は最強に可愛らしいんですよ?」 「おとーさんもとてもいいおとーさんですよ?」 「ふ、触れたくないわ……これ以上足を突っ込みたくないの」 両手を翳して首を振る小夜香。 「ふう。何か称号のアイデアを貰おうとしてたのに、これじゃあ全然進まないわ」 「アイデアをお探しですか?」 驚異的な存在感の薄さでいつのまにか全員分のドリンクバーを配り終えていたサポ子が、手元のタブレット端末を操作した。 「小夜香様は翼と肌の色が最大の特徴ですから、こんなのはどうでしょう」 表示されたのは古い石版彫刻だった。 「これは?」 「ZU(ズー)、もしくはANZUD(アンズー)と呼ばれる幻想生物で、白い翼の獅子と言われます。メソポタミア神話に描かれ、シュメール語で『重厚な雲』を指します。翼を広げ大きな扉のように敵を阻む物語や、元々聖鳥として信仰されていたものが人型神の流行によって『退治されたことで神の側へつく怪物』という解釈へ変わる流れまで含めてお勧めできる題材だと思います。あえて天使を題材にしないところがミソですね」 「は、はあ……」 「以上です。失礼します」 と言って、サポ子は再び背景と同化した。 ●ナビ子をメインに据えた時ほどナビ子の出番が少ない 「ばろらじネーム『しゃどかげ』さんからです」 「『子供の頃、ポケなんちゃらで伝説パーティー組んでたら、近所の廃人によって先鋒全抜きされました。それ以来素直な気持ちでプレイできません。こんな俺を、罵倒ってください』」 「ばとってー!」 「すっぴーぃ!」 「あなた……インドメタシン買い占めなさい!」 「「ばろらじっ!!」」 「皆さん改めましてこんにちは、スピカ役の綿雪よ」 「せ、セラフィーナ役のオードリー・ヘップバーンです!」 「深雪役の宇佐見です」 「ラヴィアン役のリファールだっ……ぜ!」 「セラフィーナさん……何言ってるの?」 「えっ、ちょっと、皆やるって言ったじゃないですか!」 「すげーなー、ヘップバーン来てたんだー」 「ギャラ弾んでそうですね」 「やめっ、やめてください! 見ないでー! 私をそんな目で見ないでー!」 「この番組は絶賛稼働中の大人気PBWゲームBNEをなんとなく応援する番組よ」 「まずはこの頼りから。宇佐見さん読んでください」 「はいえーっと……ばろらじネーム『永遠の見習い』さんからです。『ベニーさんこんばんは。BENY'S LINEいつも楽しく聞いてます。前にタイでコスプレアイドルになる夢を見ました。でもなぜか修行用のウミガメ衣装を選び、めっさいい顔で現地カメラマンたちに親指をたてました。俺は疲れてるんでしょうか』……この人、送る番組間違えてるわね」 「だよな」 「あー、でも、変な夢ってよく見ますよね。わたしゾンビの夢見ました。最後はヘリで脱出するんです。スピカさんは?」 「あるわね。恐竜時代に飛ばされて、卵に飛びついたらアロサウルスの卵で、親サウルスに追いかけ回される夢。目が覚めたときすごくドキドキしてたわね」 「追いかけられてばっかりだな。なにか後ろめたいことでもあるんじゃないのか?」 「あー、よく言いますねそれ。深雪さんはそういうのありません?」 「んー……そういうのは無いんだけど、ドキドキしたことならあるかしら」 「というと?」 「子供の頃によく追いかけっこして遊んだ幼なじみがいるんだけど、彼に校舎裏に呼び出される夢だったの。何を言われるんだろうってドキドキしてたら目が覚めたわ」 「…………」 「…………」 「そーかー、セラフィーナたちがゾンビや恐竜と追いかけっこしてる間にそっちは幼なじみとキャッキャうふふかー」 「そんな言葉どこで覚えたの?」 「あっ、でも彼とは今はまだいいお友達よ」 「『まだ』?」 「あっ、やっ、じゃなくて……! 何言わせる気よ!」 「はいでは次のコーナー!」 「スピカ・ポエム……」 ●シリアス極まりない依頼にキャピキャピした称号で入ってしまった時のやっちゃった感 『お花遊びをするの。色水遊びに、ポプリ作り。花冠とブーケを作って、お嫁さんごっこ。まだ見たことの無い君と、永遠の愛を――』 「ていっ!」 動画停止ボタンを強打するナビ子。サポ子がひゃあと悲鳴を上げた。 「あっ、何するんですか聞いていたのに!」 「これ以上は危険だと思って。あ、そういえばセラフィーさんから手紙届いてるよ。見てみ」 言われて、便せんをぴらっと開いてみた。 『あさってナビゲーター』『十徳サポーター』。 「……どう?」 「ありがとうございます。モブ立ちの間の自慢になります」 「なるんだ……」 「尚、私の称号は文字数の圧迫と不必要な自己主張につながりますので永久に空欄とさせて頂きます」 「ご了承ください」 「そして二人で三時間かけて考えた称号がこちらになります」 『WIKI神様』斜堂影継。 『プリーズキルミー』高橋禅次郎。 『真心レターナー』綿雪スピカ。 『ギャロップイヤー』宇佐見深雪。 『決め打ちエンジェル』セラフィーナ・ハーシェル。 「以上です!」 「ちょっとまておりゃー!」 窓ガラスを突き破ってラヴィアンが飛び込んできた。 「俺の称号まだだろ! 世界最強っぽいやつ考えてくれよな、うまくできたらうまい棒やるから」 「あっ、そうでした。二人で考えたのがあるので……これを」 「なーんだあるんじゃんかよ。なになに?」 『CV関智一』 「……おいこら」 「ごめんなさいこちらです」 『物理フレアバースト』 「……お、おう」 ラヴィアンは珍妙な顔をしたまま窓から帰っていった。 雑居ビル屋上にて。 チョコスティックを加えてフェンスによりかかる、初富ノエルがいた。 「あんた最近見ないじゃん。どっか行ってた?」 同じくフェンスに背を預け、腕組みをするゐろは。 「別にー。そっちは? 花届いた?」 「まーね」 頭に過剰なほど花をくっつけたまま、ノエルはチョコをぱきりと折った。 「あんたさっき、『白ギャル』とか呼ばれてたよ」 「あんたも『ヤマンバ』じゃん」 「うっせ」 「ほんと、まじうざいし……」 「そだ、花のお礼」 口にチョコを突っ込まれ、ゐろはもぐもぐと転がした。 「見ない間にアークやけに進化しててビビるんだけど。なんかあったの?」 「しらね」 風が吹いて、互いの髪が無造作になびいた。 「暇」 「だよね」 「カラオケいく?」 「いかない」 「あっそ」 二人は新しく取り出したチョコを加えたまま、ぼうっと曇り空を眺めた。 一方その頃。 「はいっ、こちら宴会場でーす! ユウでーっす!」 両腕をばっと開いたユウが、満面の笑みで画面を占有していた。 カメラを引いてみる。 「まさかの、一人でーっす!」 会場外のなんちゃらご一行様みたいな札には『純正混合物』さまと書かれていて、なんか遠回しな嫌がらせみたいなことになっていた。 「マグロ納豆ご飯おいしー!」 けどなんか平和そうだったので、そっとしておくことにした。 とある、夜の公園でのことである。 昨今ジャングルジムや回転ジムの残っている公園を見つけるなど、野生のシーラカンスを観測するくらいの珍事だが、不思議なことにそこにはジャングルジムが残っていた。 『フュリエ食いしん坊万歳』と書かれた札を手に、ベンチで一人峠の釜めしを頬張るリンディル。 「あらおいしい。この駅がなくなっちゃったのが残念ね。もっと早くこの世界に来ていれば……」 「本当ですか? 一口ください」 『フュリエ日本探訪』と書かれた札を手にお茶漬けをサラサラいくシィン。 なんなのこの子ら。 ほっぺにご飯粒つけたまま顔をあげるシィン。 「それで、自分たちはなぜここに呼ばれてたのでしたっけ」 「さあ……なんだか最近見た夢の話とか聞かれたけれど、何のために聞かれたのかもサッパリだわ」 「自由すぎる依頼だから最後くらいは綺麗な絵で終わらせてって言われた気がしたんですが……もしかしてあのジャングルジムの上に登ってる人と関係あるんでしょうか」 ほっぺにご飯粒つけて顔を上げるリンディル。 ジャングルジムの頂点に立ち、胸に手を当てた燕尾服の男がいた。セッツァーである。 「……無関係だったら、それはそれで恐いわね」 「あっ、恐いと言えば以前おばけに追いかけられて殺される夢見ました。こういう夢って変身願望からくるんでしたっけ?」 「追いかけられての下りを含めたら、誰かに成り代わって責任から逃れたいって願望な気もするけど……」 「リンディルさんの夢は?」 「知り合いの子(男子)が箱に入って『たこわさ』の演技をしてる夢でした」 「なんでたこわさ……でも美味しいですよね、なんか」 「日本酒に合うのよね。って、シィンさんは未成年だったわね」 うふふと笑い会うフュリエさんたちを背に、セッツァーは胸のポケットから札を一枚撮りだした。 『バリトンメイガス』と書いてあった。 「いついかなる時も歌に囲まれていた祖父を見て、ワタシは当然のように音楽家の道を目指したものだった。声(うた)の力を信じているのはなにもワタシだけではない。一族全てがそうだったのだ。だからこそ誇りを持って歌い続けよう……そして『最後くらいは綺麗に終わりたい』というその願い、叶えて見せようではないか」 夜空に向けてアカペラで歌い始めるセッツァー。 画面の下から流れ始めるスタッフロール。 歌が終わる頃になって、公園の隅であずきバー食ってたナビ子が顔を上げた。 「称号まで含めて名前……か」 今宵はこのままふけていく。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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