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真夏の夜の任務


 茹だる様に暑い夜。
 只歩くだけで汗が噴き出す様な、嫌な湿気、気温。日本の夏はいつもこうだ。
 文明の利器、クーラーに肖り涼しい部屋に引き籠る事こそ至高。そうは思えないだろうか。
 けれど“彼ら”は此の季節、自ら好んで外で過ごすのだ。
 それは、何も頭の中まで茹で上がったからではない。彼らは彼らの、獲物を狩るためその歩を進める。
“でーとすぽっと”なる空間に群れる子羊共よ、悔い改めよ。
 ぎりりと握る拳。食い縛った牙を開いて、闘争本能を解き放ち、叫ぶ。

 『リア充、爆発しろぉぉおお!!』


「……ええと、要するに彼等の迷惑行為を止めて欲しいの」
 節電対策で余り空調の効かない部屋の中。大きく画面に映されたのは、雄々と叫び暴れる青年達の姿。どうみても八つ当たりです、本当に以下略。
 アークはいつから子供の御守りを始めたのだろうか、警察仕事しろ、等と白目になるリベリスタを前に、仕方ないと『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は話を続ける。
「彼らは、こう見えてフィクサードの集団なの。七派には所属していないみたいだけど、結構な実力者揃いみたいだよ」
 粛々と資料の項を進め、任務の内容を説明していくイヴ。いつもより作業感の強いブリーフィング。何やら彼女なりに気に食わない事でもあるのだろうか。内容を纏めるとこう。
 彼らは全部で8人。決まってデートスポットに現れ迷惑行為を働く。毎度人気のある地点に現れる為、いつか死傷者を出しかねない事。殺害までは必要無い事。そして最後に。
「今回観測した地点に彼らが現れた場合、間違いなく今夜の花火大会は延期になってしまうの。きっと沢山の人が悲しむことになるから、止めて」
 瞬間、合点のいったリベリスタが数人。さっとイヴが後ろ手に団扇を隠したのを、彼らは見逃さなかった。
 手を振り出ていく皆は、いつもより少しだけ頼もしい気がして。年頃の女の子の願い位、叶えてやろうぜと火が入る。
 さあ、任務だ。真夏の孤狼共に、贖罪の弾丸を。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ぐれん  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年08月25日(日)22:47
 
 見敵必殺。どうも、ぐれんです。
 ギャグタッチな純戦、説得があるかは皆さま次第です。
 血沸き肉躍る戦い♂を、楽しんで言って下さい。ホモ要素はありません。
 
◆舞台
 夜の田舎の川岸。今夜の花火大会予定地。一般人の姿はありませんが、市街地は近いです。
 平地で十分に広く、障害物も特にありません。
 光源も良好、ナイター型の強力なライトで十分に明るく照らされています。
 発見する地点はイヴが事前に特定している為、
 きちんと準備すれば奇襲をかけるも餌を撒くも好きに遣れそうです。

◆成功条件
 フィクサードの撃破、撤退、もしくは投降させること。
 尚、殺害の必要はありません。
 
◆エネミーデータ
 フィクサード×8
 ・リーダー『孤独死』鵜久森・桂斗
  ジーニアス×ソードミラージュ
  速度に特化した典型的な剣士スタイル。  
  一般非戦スキル所持、中級スキル程度までを使用します。
  
  Pスキル:りあみつる断罪の剣
  恋人の居る相手に対し、攻撃力大幅上昇。
  恋人と揃って参加している場合、その二人に対し攻撃力上昇に加え、全スキルにBS火炎を追加。

 ・副リーダー『一周まわって余裕』城谷・圭悟
  ジーニアス×デュランダル 
  火力に特化した典型的な戦士スタイル。
  一般非戦スキル所持、中級スキル程度までを使用します。

 ・その他『リア充討伐軍』
  全員ジーニアスで、
  前衛にクロスイージス、ナイトクリーク、ダークナイト、
  後衛にホーリーメイガス、マグメイガス、プロアデプトが居ます。
  リーダー、副リーダーよりは格段に劣る実力ですが、弱くはないです。 
◆備考
 ・プレイングの最後に、『恋人:有/無』を記載してください。
  文字数の関係などで記載がない場合、出発時のステータスシートから判断します。

 ・リーダー、副リーダーはそこそこのイケメンで、
  他のメンバーは偶に二人がナンパされているのを知っていて、良くは思っていません。
  討伐軍同士は仲良しですが、喧嘩を始めると手が付けられない程まで発展することがあります。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
斜堂・影継(BNE000955)
覇界闘士
葛木 猛(BNE002455)
ソードミラージュ
リセリア・フォルン(BNE002511)
ソードミラージュ
カルラ・シュトロゼック(BNE003655)
ホーリーメイガス
綿谷 光介(BNE003658)
ミステラン
ルナ・グランツ(BNE004339)
覇界闘士
コヨーテ・バッドフェロー(BNE004561)
ミステラン
イメンティ・ローズ(BNE004622)



 ――茹だる様な夏の陽が、その身をひっそり消した後。
 過ぎる風が幾らか涼やかに変わる頃、静かな川岸に二つの影があった。
「今夜は、花火大会だな……」
 夕焼け小焼けを見送って、のんびり歩きながら結んだ左手。前後に緩く振りながら『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)は隣の影へと告げる。
「そ、そうですね……」
 余り揺らさないでください、と幾らか落ち着いた声で返したのは、『蒼銀』リセリア・フォルン(BNE002511)。
 薄暗い畦道に二人きり。邪魔するのは幾らか響く虫の声と、川のせせらぎ。こんな“おあつらえ向き”な場所に居るのに、彼女は幾らか乗り気ではないようだった。
「花火に出店に……何と言ってもリセリアの浴衣姿か? 良いねえ、今から楽しみだ」
 その間に猛は指折り数えて、屈託のない笑顔で告げる。が、振り返るその目には迷いの覗くリセリアの姿があって。
 嗚呼、と合点がいった様子で歩みを止めると、不意にその身を抱き寄せる。二つの影が、重なって。
「あっ……、ちょっと」
 突如消える距離、触れる肌。驚きを隠せないリセリアの耳に、猛は幾らか小さい声で。
「釣るんだったら、此れ位じゃねえと駄目かも知れねぇだろ?」
 どうせ“見せ付ける”のなら、楽しんだ方が良いと言う。
 ん、と小さな唸りで肯定を告げ、照れるその顔を隠すリセリア。気が進まないとはいえ、嬉しく思うのは人間の性か。
 この時が続けば良いのに、などと彼女は思うのだろうか、暫しの静寂を、“餌”の足音がけたたましく汚した。

「ヒューッ! 御熱いねェお二人さん、此方が火傷しちまいそうだ」
 その先頭、ぱたぱたと仰ぐような仕草と共に告げたのは、『リア充討伐軍』の軍隊長、鵜久森桂斗。その取り巻き達が、にやにやと横並びに集まり見詰める。
 予定通りとはいえ、此処まで容易く網に掛かるとは。そんな苦笑を噛み潰しながら、二人は一度離れ視線を投げる。
「誰だ、お前ら……」
「よくぞ聞いてくれた、俺達ァ知る人ぞ知る恐怖の――」
「お待たせしました、まいふれーんずっ!」
 緊迫感を突如破ったのは、『永遠を旅する人』イメンティ・ローズ(BNE004622)のふわりとした声。金の髪を左右に揺らして、二人と敵方の間に割って入る。ぽかんとしている両者を置いて、残るリベリスタも続いて姿を現す。
 しかしその中に、『月奏』ルナ・グランツ(BNE004339)と『影の継承者』斜堂・影継(BNE000955)の姿は無かった。
「ンまッ! 此奴等、お二人だけなら未だしも集団で花火大会なんてッ…!」
「……落ち着け我が友よ、いつものおネエ口調出てんぞ」
 仲間の一人を制し一歩前に出たのは軍隊副長、城谷圭悟。背に携えた大剣を引き抜き地に突き立てると、告げる。
「丁度良い、リア充を潰すのに加えてアークのリベリスタと遊べるなんざ、そうそう無いチャンスだもんなァ……」
 静かに燃える熱血漢。丁度そんな様子で向ける好戦的な目線に、リベリスタ達も得物を引き抜き、臨戦態勢を展開する。
「良いぜ良いぜ、そう来なくっちゃなァオイ!」
 両の拳を打ち付けて、火花を走らせ笑むのは『きょうけん』コヨーテ・バッドフェロー(BNE004561)。早く戦わせろ、と逸る気持ちに身体を震わせる。
「……殺すな、と言われてはいるのだがな」
 その隣。殴った結果どうなろうと、仕方ないだろう。そんな物騒な台詞を吐くのは『Spritzenpferd』カルラ・シュトロゼック(BNE003655)。
 アークからの指示は、殺害までは必要ないとの事。しかしこの二人、理由は違えどその指示を遵守する気は余りないようだ。前者は“半殺しだッけ、ナンだっけ、忘れた!!”様子。後者はこの通り。
「行くぜリベリスタ共ォお!!」
 討伐軍の鬨の声と共に、闘争の火蓋は斬って落とされた。


「本当に、暑苦しい連中だな……」
 重なる火線。先陣を切ったのはカルラの高速の一撃だった。一挙に突貫、手前の目標へ勢いの儘に拳を叩き込む。
 ソードミラージュ、とは良く言ったものだ。その手には手甲、十分な耐久力に加えて決闘者に迫らんとする粉砕者たる大火力。大御堂の茶次ぎの名手は、戦場では紛う事なき『フィクサード狩り』であった。
「そうですね、少々頭を冷やして貰いましょう」
 続いてリセリアは猛の脇を抜け跳躍、前衛に並ぶ敵方へ氷の霧を見舞う。連中の頭を物理的に冷却せんと放った霧は確かに被害を生むも、突貫した男達を止めるには至らない。
「さあさあ、どんどん行くぜェ!!」
「ウチの姫が待ってんだ、さっさと終わらせて貰うぜ!」
 霧を裂いて放たれるのは、桂斗の幻影と猛の迅雷。雄々と掛け声と共に互いを抉り、焦がし、傷付けていく。
「貴方達には寧ろ、リア充の恐ろしさを知って頂きますよ……」
 最前線から一歩引いた位置。『贖いの仔羊』綿谷 光介(BNE003658)は眼鏡を闇夜に光らせながら癒しの息吹を体現する。
 柔らかな雰囲気を持ち、癒し手たる今日の彼は、何処か据わった目で幾許かの決心とオーラを纏っていた。

「よしっ……捕獲完了っと!」
 音符マークを携えて、先程まで姿を見せなかったルナが戦場へ合流する。この戦場より半径50Mという広大な範囲は、彼女の手に“堕ちた”のだった。
 待ち受ける同族へ向けウィンクをひとつ。此処からが私達の正念場、と作戦開始を告げる。
「――桂斗ちゃん、だっけ?」
 カッコ良いんだね、と魔力を練り上げながら放つは不意のお誘いの言葉。
 この後の花火を一緒にどうかな、等と見た目は幼い少女が放つには十二分に過激な言葉。
「いやいや、未だ俺達一言さえ話してない処じゃねーか、よっと!」
 放つ火球を避けながら断りを告げるも、夏の寂しいこの季節。相手方の居ない桂斗には多少の効き目を発した様子。それと並行して。
「副リーダーさん、強いとですねーっ」
 本日は、ところによってあろーれいん。なんて零しながらイメンティが放った援護射撃。もろともしない様子で戦闘を続ける圭悟へ言い放った。
「戦闘中に賞賛等、敵方にすることではない……なっ!!」
 リベリスタと刃を交えながらも、策略か、と告げる圭悟にぶぶんと顔を振って。
「イメも強くなりたいとですよ、どうやったらいいとですかー?」
“仲良ししたい”のはあくまで事実。嘘は長くは続かない、等と言うが彼女の眼には一寸の迷いもなくて。
「まぁ……、気が向いたら教えて遣るよ」
 少なくとも戦いが終わったらな、等と返る言葉。この男、容易く陥落。 
 脇から見れば俗にいう、ただの逆ナンパ。羨まし許せん状況を前に、リベリスタは口々に『リア充討伐』の看板を笑った。
「ナンでェ、あの二人は今まさに御前ェらの敵になッてンじゃねェか!」
 闇騎士が放った暗黒。その瘴気を焦がしコヨーテが振るう拳と共に、カルラの連撃が容赦なく叩き込まれる。
 ぐらり、よろける程の大火力に闇騎士は膝を突き耐える、が、その体力は早くも底を着き始めていた。徹底的な単体攻撃に加え、彼らの癒し手からの支援が届いていなかったのだ。

 その頃、戦場の最後衛に当たる癒し手は、揺れていた。怒りのせいだろうか、本当に聞こえているのか。頭に響く声と戦っていたのだ。
(お前達には、あの青髪カップルの前に誅罰を下すべき相手がいるはずだ!)
「――し、知った事か、僕ァ人前でいちゃラヴする輩が大ッ嫌いなんでやんす…!」
(見ろ、異世界出身、耳長合法ロリ系美少女と語らっている奴らの堕落した姿! 実に妬ましかろう!!)
「ぐぬぬ、それは確かに悔しいでやんす…」
(「大体、日頃から逆ナンされることがあるような奴を許して良いのか!?)
「そ、それは……」

「――否、断じて否だッ!!」

 突如響くのは、戦場全体を揺らすほどの怒号。皆が振り返るその先で、謎の覆面を携え立つ男が一人。
 すらりと高く、精悍な身体つきは間違いなく“彼”を連想させるものであった。そして先程の声の主も、後ろからそっと話しかける彼の物だったのだ。
「な、なんだ貴様、でやんすっ!」
「我が名は……リア充を爆破する者、シャドウブレイダー!」
 万物をも灰塵と帰せ使む大剣斧を手に名乗ると、跳躍。桂斗の元まで一挙に距離を詰めると、迷いなく決闘者の一撃を放った。
 轟と響く音と巻き上がる砂埃。なんとか一撃を受け止め睨む桂斗を背に、剣士はぐるりと辺りを見回し、告げる。
「この世に蔓延るリア充共……、全員叩き斬ってやる、神妙にせぇい!!」


 リベリスタ女性陣の声掛けに加え、謎の人物シャドウブレイダーの出現によって、戦場は混沌と化していた。
 リベリスタが狙うは当然『リア充討伐軍』の構成員。対して敵方は様々な想いが混ざり合い、その結果ぶつかり合う。
「何やってんだ、さっきから回復支援が……」
「僕ァ、リア充の敵でやんす」
「おま……戦闘中に何言ってやが――」
「大体、アンタ達はいっつも良い思いしてるの知ってるのよォ!!」
 戦闘中に家族の話をするな、なんて言葉があるが、それは大方フラグなどではなく集中力の問題。
 口々に言い合いをしながらの戦闘など以ての外。統制の取れない敵方の動きに、リベリスタ達が苦戦する要因は無かった。
「アンタ達みたいなリア充、爆発しなさいよォオオ!!」
「しまっ……」
 敵方のクロスイージスが振るう全力の一撃に、猛は直撃を受け体勢を崩す、が。
「どんなに邪魔したって、リア充は爆発なんかしませんよ?」
 其れまで沈黙を守っていた光介は、簡略化された独自の術式を用い癒しの神を体現し、言う。
「このニット帽は、彼女がクリスマスに編んでくれたやつなんです」
 するり、頭に付けた季節外れのニット帽を外して云う。
 きちんと彼の羊の角の部分が広めに取られていて、幻視しなくても大丈夫な優れものなんです。なんて緩んだ表情の儘続けて。
「あ、こっちのナイフは付き合う直前の思い出で……」
 すらり、懐から出したのは輝く銀のペーパーナイフ。全身に纏うリア充オーラは、先程まで何処に隠れていたのだろう。
「そう、リア充ってやつは……こうして妬まれるほどに、己の幸せを噛みしめるんです!」
「――お前ら、悪い。此れ俺の得物だわ」
 突如始まった自慢ショー、360度どの角度から見ても幸せが噴き出るこの男を、何故最初に切り伏せなかったのだろう。
 怒りやら嫉妬やらが噴き上がり、一周まわって冷静になった頭。桂斗はその爪が白く染まるまで剣を握り、突貫。
「手ェ貸すぜ、リーダー」
「アタシももうダメ、この羊さんから潰すわ……!!」
「 満 場 一 致 で や ん す 」
 他の敵方も、一挙に光介へと攻撃を集中。その身が巻き上がる砂埃や爆炎に包まれ、見えなくなるまで渾身の一撃を見舞う。が。
「――全部、『しょうがないよなー、ボクの彼女、こんなにかわいいんだもん』って思うためのスパイスになっちゃうんですよ……」
 迷いなく運命を差出し立ち上がる光介の眼差しには、何処か彼の中に眠る“野生”が宿っていた。
「……余り、リア充の頭の沸き具合をなめないでください?」
 にこ。
 一挙に敵方に走る電流。戦意と勢いを確かに抉り、恐怖さえも植え付けてリベリスタ側の優勢を誘った。
「そろそろ遊戯が過ぎたろ、頃合いだ」
 彼らのやり取りを一歩引いて傍観していたカルラは再度突貫。副リーダーの圭悟の眼前で小さく告げると、疾風の如き一撃を見舞う。
 その綺麗な顔にサヨナラを言えよ、等と冷徹に放つと、利き手でもう一撃。
「ッちィ……、未だぁあ!!」
 左右に脳を揺さぶられた圭悟は、定まらぬ視界で反撃。眼前のカルラへ渾身の一発を振るうも、その矛先は大きくぶれて。代わりに捉えたのは同じく駆けたコヨーテ。
 重々しい金属同士が衝突する音。直撃を受けたと思われた彼はにィ、とキメ顔をして見せ、受け止めた剣を跳ね上げ、烈吼。
「悪くねェパンチだよな、お前。だが俺にャあ届かねェぜッ!!」
 轟々と燻り燃える拳を振り抜いて。城谷圭悟を、此処に伏した。同時に。

「――御前の剣じゃ俺は斬れんよ坊主……」
「む、無念……ッ」
 俺は、非リアだからな。と剣士が述べた決め台詞と共に、桂悟の身が地に伏す。

「ククク……待たせたなリア充共……」
 ゆらり、緩慢とした動きで振り返るシャドウブレイダー。その兜の奥で燃える眼光は、真っ直ぐに猛とリセリアに向けられていた。それは確かに、殺意にも似た色が込められていた。
 その源は嫉妬、餌の為とはいえ見せ付けてくれたじゃねえか。などと小さく呟きながら、剣士は確り握った剣斧を振り上げて。その側近(?)たる二人の姿も、それに続いて。
「僕ァシャドウの兄貴についていくでやんす……!」
「ンまッ、私もイクしかないじゃない!!」
「……負け犬の錆び付いた牙で、その首食い破ってやらァ!!」


「「「雄々ぉぉおおお!!」」」 

  

「……すみばぜんでじだ!!」
 あれから暫くして。其処には縛り上げられ並んで座らされたリア充討伐軍(+1)の姿が。その御顔は原型をとどめない程に“お仕置き”されていて。
 こんなこと、もうダメですよ。等と頬を膨らませながらのルアの治療を受ける彼らには、幾許の幸福な表情があった。
「花火大会を楽しみにしている、一人の女の子を知っています」
 ぽつり、説教モードに入ったリセリアは口を開くと、溜め息と共に告げる。頭に思い描いたのは、兎の人形を携えたあの子だろうか。
「彼女の様な子を悲しませるのが楽しいですか?」
「あ、否……そういう訳では」
 最低だと思います、と曖昧な否定にぴしゃりとリセリアは告げる。それから。
「そんな性根であるのなら、成程。誰も振り向かなくて当然です。私も、私でなくても――今のままな貴方達とのお付き合いなど御免被ります」
 怒るのではなく、諭すように。幾らか冷めた口調で話すリセリアに、一人の隊員が顔を上げて。
「じゃ、じゃあ僕ァしゃんとしてればいつか――へぶゥッ!!」
 調子に乗るな、とカルラの拳が的確に隊員の一人の顎をぶちぬいて。
「やァん、鬼畜ゥ!!」
 囃す様に叫ぶ別の隊員に再び断罪の一撃が叩き込まれる最中、リーダー、副リーダーの両者は深々と頭を下げて。
「……すまなかった。正直、暑さでどうかして居たのかも知れん」
「それに、正直不毛すぎる戦いだと気付いちまってよ」
 一番どうかしてんのは、幸せボケてるリア充共だしな、なんて呟きを零して。
「ってな訳で、これから花火をみんなで見るとか。どうかな?」
 ぱちん、と身体の前で小さな手を合わせてルナは皆に告げる。丁度時間もそんな頃合いで、戦いも一段落ついだし、と。
 もう闘争の意味もないだろう、渋々了解するもの、やっほいと飛び上がる者、どろんと姿を消すもの。それぞれに反応を見せると、暫しの休戦と場所を変える。

 ひゅるるるるーん、どん。
 
 夏の風物詩。終わると何処か寂しい、花火大会。
 様々に輝く灯りの下に、幾つもの影があった。寄り添うもの、寝転ぶもの、静かに遠くを見詰める者。
「おーい、待たせたなーっ!」
 一般人に混ざりまったりムードのリベリスタの元へ、姿を消した剣士と“丁度入れ替わりで”現れた影継が合流する。
 どんな社長出勤だよ、なんて猛の突っ込みも、花火の轟音に呑まれて消える。まぁ、説教するの飽きたし後でいいかと手を振り歓迎して。

「副長さーん、改めてイメとりあじゅうするですよー!」
「お、異世界から来たブロンド耳長系美少女」
「じゃあ隊長さんはお姉ちゃんとリア充するのかな?」
「お、同じく合法ロリ系耳長美少女」
「ななッ、貴様らはやっぱりそっちの人間でやんs――ぶふォ!!」
「やァん、鬼畜ゥ!!」
「今度は俺が殴ッて良いかァー? 半殺しで止めッからよォー!」
「いやァあー!」
「嗚呼、シエルさんと言う名の星空に笑顔と云う名の大輪が」
「――誰か止めろ此奴、俺が剣を握る前に」
「馬鹿だよなこいつら。あと浴衣可愛い」
「……ええ。あとどさくさに紛れて言わないで下さい」
 
 昨日の敵は、今日の友(但し例外あり)。
 騒ぐ彼らを祝福する様、夏の夜空を大輪が照らして。
 同じ空の下で、きっとあの少女も。目を輝かせ心に刻む。過ぎ行き巡るこの季節を。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■

 永らくお待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。ぐれんです。
 上記の結果となりました。御参加、ありがとうございました!
 シャドウブレイダーの下りや、リア充自慢。
 諸々楽しく書かせて頂きました。
 
 またの御参加、お待ちしています。
 それではまた、三高平で。