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祝福の鐘が鳴る。或いは、朱い花嫁……。

●誰かの為の
 リンゴンリンゴンと鐘が鳴る。海が見える小さな教会である。毎週末には結婚式など開かれる人気スポットだ。集まる人々を自然と笑顔にする、そんな不思議な魅力を放つ場所。
 だがしかし……。
 異変は突然、訪れた。
 鳴り響いていた鐘の音が歪み、罅割れ、ノイズに変わった。
 真っ白だった建物の壁は、まるで血でも被せたような錆色へと染まっていく。
 芝生は枯れて、空が曇る。雨雲と、稲光。降り始めた雨は、不気味な錆色をしていた。
 一瞬で廃墟のような外観へ変わる教会。目にも明らかな異常事態。
 だが、なにより異常なのは、この異変が教会周辺でしか起きていないことである。
『ウフフ……。幸せかしら?』
 鈴のような声が響いた。鐘の音に混じって、教会に響くその声は、女性のものだ。
 ゆっくりと開く教会の扉。現れたのは、朱色のウェディングドレスを着た花嫁である。この世のものとは思えないほどの美貌と、魅力的な肢体。
 穏やかな、幸せそうな笑みを浮かべている。
 しかし、彼女が胸の高さに掲げたブーケは、枯れていた。
 更に……。
『………』
 彼女の背後から、2体の鬼が姿を現す。醜く歪んだ顔に凶暴な目。負の感情をばら撒くような威圧感。
 思わず目を逸らしたくなるような外見をしている。
 赤い鬼と、青い鬼の2体だ。赤鬼は大斧を、青鬼は鉄槌を持っている。
 朱色の花嫁に付き従うように歩く鬼たち。
 誰もいない教会で、花嫁と鬼は鐘を鳴らす。

●鐘がなる日
「妬み、嫉妬、負の感情。それらが集まって生まれたのが、彼女たち。E・フォース(花嫁)と(赤鬼)(青鬼)の3体。被害が出る前に始末してくることが条件」
 どうやら、教会から始まった異変は時間経過と共に拡大しているらしい。『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)がモニターに映し出すのは、今よりも僅かに先の未来の光景。
「降りしきる血の雨は、人体にとって有害なもの。もちろん貴方達リベリスタにも影響を及ぼす。(毒)状態を誘発するみたい」
 長期戦は、こちらにとって不利になるばかりだ。
「花嫁のフェーズは2。遠距離範囲攻撃を得意としている。一方、鬼たちは近距離攻撃を得意としていて、打たれ強いのが特徴」
 幸い、敵の数はそう多くは無い。3体を教会から出さないようにするのは比較的簡単だろう。
 問題は、教会を中心に広がる異変である。花嫁の能力なのだろうが、じわじわと効果範囲を広げているのだ。
「最初に被害者が出るまで、猶予は1時間ほど。2時間を超えると完全にアウト。任務は失敗になるから気をつけて」
 それまでの間に、鬼たちのブロックを抜け、花嫁を撃破する必要がある。
 恨み、妬み、嫉妬の感情が渦巻く教会だ。幸せそうな花嫁は、果たして何を思っているのか。 
 これは、美しく、幸せに満ちた教会を取り戻すための戦いである。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年08月13日(火)22:49
こんばんわ、病み月です。
みなさん、いかがお過ごしですか?
今回は、教会に現れた不気味な花嫁との戦闘になります。
それでは、以下情報。

●場所
海が見える教会。敷地面積は半径60~80メートル程。教会は荒廃し、血の雨が降っている。
不気味な雰囲気に満ちていて、空気が重たい。
隠れる場所などはない見晴らしのいい場所である。
血の雨に濡れ続けると(毒)のBSを受ける。
教会の荒廃は、時間毎に進行。1時間で最初の犠牲者が、2時間で手遅れ(任務失敗)となる。


●敵
E・フォース(朱い花嫁)
フェーズ2
朱色のウェディングドレスを着ている美しい女性。幸せそうな笑みを浮かべ、枯れたブーケを手にしている。美しい外見とは裏腹に、その身を構築しているのは恨み、妬み、嫉妬の感情である。
動作は鈍いが、反射神経は良いようだ。のらりくらりと攻撃を回避する。
【エンヴィーブーケ】→神遠範[呪い][石化][致命]
放り投げたブーケを中心に、負のオーラを撒き散らす。
【幸福】→神近複[隙][混乱]
不気味な赤いオーラで対象を覆い尽くす。
【不幸】→神遠複[不運][呪殺]
負のオーラを凝縮した光弾を乱射する攻撃。

E・フォース(赤鬼)(青鬼)
フェーズ1
醜い外見。巨大な身体をしている鬼たち。朱い花嫁と同様に、嫉妬など負の感情から生まれた存在。花嫁を守るように動くのが特徴。
花嫁に比べ、気が短く凶暴。体力、攻撃力に優れている。
【妬み】→物近単[ノックB][怒り]
手にした武器を、大上段から振り下ろす。
【恨み】→物近貫[ブレイク][流血]
武器から放たれる貫通する衝撃波。


以上になります。みなさんのご参加お待ちしています。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
天城 櫻子(BNE000438)
スターサジタリー
天城・櫻霞(BNE000469)
スターサジタリー
ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)
覇界闘士
鈴宮・慧架(BNE000666)
プロアデプト
言乃葉・遠子(BNE001069)
覇界闘士
葛木 猛(BNE002455)
覇界闘士
テュルク・プロメース(BNE004356)
インヤンマスター
赤禰 諭(BNE004571)

●朱い花嫁
 赤い雨が降る。荒廃した教会。どんよりとした空模様。立ちこめる陰鬱としたオーラ。
 つい数分前までは、至って普通の真夏の教会だったと、誰が信じるだろうか。
 異変の原因は、教会前で微笑む美しい花嫁である。E・フォースと呼ばれる怪物だ。
 その背後には醜い鬼が2体ほど控えている。
 現場に到着した8人のリベリスタ達を見て、花嫁は淡く微笑んだ。
 突然の来訪者を歓迎するように、そっと前へ手を伸ばし……。
 次の瞬間、無数の赤い光弾が撃ち出された。

●嫉妬に狂って……
「陰々鬱々鬱陶しいですね。内面の醜悪さに捨てられたなれの果てですか? 逆恨み系ですか?」
 影人を召喚し、仲間達を庇わせる『落ち零れ』赤禰 諭(BNE004571)。嘲るような笑みを浮かべて、片手で影人を指揮する。光弾に撃たれた影人は、次々消えて行くが、問題ない。
「幸せかしらと問われたならば、ええ勿論と答えましょう。己の幸せと、幸福な未来を疑うことなかれ」
 言い聞かせるようにそう呟く『一般的な少年』テュルク・プロメース(BNE004356)。地面を蹴って、真っすぐ前へと駆け出した。
 影人の作った隙を逃さなかったのは、彼だけではない。次いで『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)も矢のように飛びだした。
 2人に対応するように、花嫁を護るよう動く赤鬼と青鬼。斧と鉄槌を振りあげ、テュルクと猛を迎えうつ。
「よぉ、お前の相手はこの俺だ。鬼って奴とは、初めてやりあう訳じゃないんでね」
 拳と武器とが衝突し、お互いの動きは僅かに膠着。
 次の瞬間には、更に激しい攻防が始まっていた。拳と武器の打ち合う音。響き渡る金属音と、飛び散る鮮血。
 赤い雨の降りしきる中、戦う鬼と男達。
 それはまるで、何かの神話の1シーンのようでもあった……。

 じっと、戦場を見つめている『ルーンジェイド』言乃葉・遠子(BNE001069)は、すぅ、と小さく深呼吸を繰り返す。意識を集中させているのだ。手にした魔導書にオーラが収束されていく。
 眼鏡の奥の遠子の瞳は、薄く閉じられている。
「花嫁さんって女の子の憧れで幸せの象徴なのに、恨みや妬みの化身として顕現してしまうなんて皮肉だね…。誰もがこんな風に幸せになりたいと思っているだけなのに……」
 教会という幸せな場所で生まれてしまった、嫉妬や妬みのEフォースを想うと、少しだけ切ない想いが湧きあがってくる。
 そんなことを想いながら、遠子は意識を戦闘へと向けるのだった……。

 花嫁がブーケを投げ飛ばす。空中を舞うブーケから、負のオーラが撒き散らされた。周囲の空間をじわじわ浸食していく。
 それを見て、花嫁は幸せそうにほほ笑んだ。
 ふわりと風に踊りながら、ブーケが落下。
 その途中、1発の弾丸が、枯れたブーケを撃ち抜いた。空中で四散し、ばら撒かれるブーケ。花嫁の視線は、弾丸を放った『鋼脚のマスケティア』ミュゼ―ヌ・三条寺(BNE000589)に注がれる。
 表情は笑顔のままだ。しかし、その眼には怒りの色が色濃く浮かんでいる。
「御機嫌よう……。生憎花婿とはいかないけど、貴女をエスコートしてあげる」
 マスケット銃を構えたまま、ミュゼ―ヌは言う。硝煙を香りをなびかせて、彼女はそっと微笑んだ。
 その瞬間……。
『ん……な?』
 ぐい、と花嫁の体が突然宙に舞い上がる。何者かに掴みあげられたかのように、高く高く。
 ジタバタともがく朱い花嫁。
 その身が、力任せに地面へと叩きつけられた。砕け散る瓦礫の中、花嫁が見たのは、数メートル先で何かを投げたような姿勢をとっている1人の少女の姿であった。
 にこりと笑って『大雪崩霧姫』鈴宮・慧架(BNE000666)は歌うように告げる。
「リンゴンリンゴンと鐘は鳴る。血に染まり皹割れた鐘を鮮やかな金色へと清らかに直しましょう。狂ってしまった音色を正して清らかな鐘の音を鳴らしましょう。だって私は鈴宮だから」
 弐式鉄山。距離すら超えて、相手を投げる彼女の得意技である。

『主役は花嫁なのですよ……? わきまえなさい』
 不気味な赤いオーラが放出される。地面を汚し、空気を汚染し、赤い雨すら吸収し、オーラはまるで、津波のようにリベリスタへと迫っていった。
「女の嫉妬は醜いな、見るに堪えん」
 拳銃片手に『アウィスラパクス』天城・櫻霞(BNE000469)が前へ出る。しかしすぐに、拳銃を魔力盾へと持ち替えた。身体ごとぶつけるようにして、『ODD EYE LOVERS』二階堂 櫻子(BNE000438)を庇う。
「ふん、簡単に通すとでも?」
 櫻霞の口元から血が流れる。赤いオーラは、彼の体に確実にダメージを与えたようである。
「あ、ありがとうございます……。御無理はなさらずに」
 淡い燐光が瞬いた。櫻子の回復術。傷ついた櫻霞の身を癒す。
 仲睦まじい2人を見て、花嫁はピタリと動きを止めた。
 頬笑みを湛えたまま。
 しかし、溢れ出て来るオーラからは、禍々しいまでの嫉妬心や妬みの念が感じられる。
「さぁ、参りましょう。貴女達に本当の幸せがどういうモノなのか、教えて差し上げますわ」
 櫻子の言葉が引き金となったのか……。
 花嫁の周囲に、大量の光弾が展開された。

 次々の光弾が増えて行く。不気味に、禍々しく赤く光る弾丸だ。中心で微笑む花嫁はひどく幸せそうな顔をしている。
 すい、と花嫁は指を振る。それと同時に、光弾は放たれた。空気を切り裂き、轟音靡かせ、光弾が降り注ぐ。
「騎士は他にいるようですのね、前座程度ですね。ああ、前座もさらっと吹き飛ばせないとは、程度が知れますね?」
 複数の影人が散開。諭の指示で一斉に光弾を迎撃し始める。諭自身も、愛用の重火器でもって光弾を撃ち落とす。
 光弾と砲弾に撃たれ、赤い雨が蒸発。赤い霧が立ち込める。
「う……っと」
 諭の口の端から血が流れる。吸い込んだ雨のもつ毒素のせいか。あまり長時間、この雨を浴び続けるのは危険らしい。
 散開した影人も、そう長くは光弾を受け切れないだろう。
 やれやれ、と溜め息を1つ轟音と共に、重火器が火を吹いた。

「人を愛するというのは、決して綺麗な事ばかりじゃないわ。必ず貴女をここで討伐する」
 鋼の脚を花嫁の肩にかけ、銃口をその胸に押しつける。僅か数センチの動作。引き金を引く、というだけの僅かな殺意。ゼロ距離から放たれる銀弾が、花嫁の胸を撃ち抜いた。鮮血が吹き出し、赤いウェディングドレスを更に赤く染めた。
 ミュゼ―ヌの銃撃。轟音と共に吹き飛ぶ花嫁の体。空中を舞うその身を、慧架がキャッチする。
「嫉妬に狂った花嫁・・・いいえ嫁ではないですね相手がおりませんし。他人を祝福できない人に幸せは訪れません!」
 落下の勢いそのままに、花嫁を地面に叩きつける。土が抉れ、クレーターが出来る。そのクレーターの中心で、朱い花嫁は血を吐きのたうつ。けれど、その口元に浮かんでいるのは笑みのそれであった。綺麗な顔を赤い雨が汚す。
 返り血を浴びたような酷い形相。
 次の瞬間、花嫁から噴き出したオーラが、慧架を覆い尽くした。
 ドクン、と空間それ自体が鳴動する。それと同時に、オーラに包まれた慧架がふらりとよろける。結構なダメージを受けたのだろう。助けに向かおうとするミュゼ―ヌだったが、オーラが邪魔して近づけない。
『美しい娘………妬ましいわ。消してあげる』
 ギリリ、と花嫁の手が慧架の首を締め付ける。首の骨の軋む音。負の感情が渦巻く教会で、血染めの花嫁はこの上なく美しい。
「負の感情で幸せになれる者など、貴女達だけです。貴女の想う幸せは、唯の迷惑ですわ」
 燐光が舞う。傷ついた慧架の体を覆い、回復させていく。花嫁の視線が櫻子へと向けられた。邪魔をするな、とでも言いたげな瞳が、櫻子を捉える。
 ドサリ、と地面に投げ捨てられた慧架の体。呻きながら起き上がる慧架に目もくれず、花嫁は櫻子へ向き直った。
 放り投げられる枯れたブーケ。溢れるオーラと、負の感情が櫻子を襲う。
「さて、何処まで効いてくれるかね?」
 拳銃片手に櫻霞が前へ。櫻子を庇うように立ちはだかる。銃口から放たれる無数の弾丸が、ブーケからばら撒かれたオーラを次々と打ち消していく。
 まるで蜂の群のような弾幕の嵐だ。途切れることのない銃声が空気を震わせる。
 暫しの間、膠着状態が続いた。その結果、撃ち負けたのは櫻霞の方だった。無論、花嫁も無事ではなかったが、解き放たれたオーラによって、櫻霞の体が飲み込まれた。
「ふむ、流石に連発はもたないか」
 魔力盾を構えるも、間に合わない。身体を張って、櫻子を護る櫻霞。
 ガクン、と櫻霞は地面に膝を付いたのだった……。

 振り降ろされた鉄槌を、猛は拳で受け止めた。風圧で猛の腕が切り裂かれる。飛び散る鮮血を頭から浴びながら、猛は吼える。
「細かい戦いっつーのはどうにも苦手でいけねぇ。てめぇもそっちの方が好みだろう?」
 冷気を撒き散らす猛の拳。まっすぐ、青鬼の胸に突き刺さった。醜く歪んだ蒼鬼の顔。牙を剥きだし、吼える。
「う……ご」
 大上段から振り下ろされた鉄槌を、猛は両手を交差させて受け止めた。衝撃までは殺しきれず、ダメージを受けたのか、猛の骨や筋肉が悲鳴を上げる。
 固く結んだ首の隙間から、血が流れた。
 ピシ、と音をたてて氷りつく鉄槌。このまま使えば、やがて槌は砕けるだろう。気付いていないのか、頓着していないのか、青鬼の猛攻は止まらない。
 両手で鉄槌を掴み、青鬼はそれを大上段に振りあげた。

「見栄えに不満はありますが、お付き合いいただきましょう」
 舞踊刀を翻し、テュルクはまるで踊るように赤鬼の周囲を跳ねまわる。大きく、優雅に振り抜かれた刀が、赤鬼の全身を切り裂いていく。
 傷口が凍りつくのは、テュルクの使用した魔氷拳の効果であろうか。
 だが、赤鬼も負けてはいない。
 獣のような声をあげ、斧を大きく振り回す。放たれた衝撃波が、テュルクの胴を撃ち抜いた。皮膚が避け、内臓にまでダメージが貫通。
 テュルクの動きがピタリと止まる。
 その隙を逃さない程度の脳はあるらしい。大斧を振りあげ、赤鬼は大きく宙へと飛んだ。

 青鬼と赤鬼。共に怪力を活かし、ダメージを恐れない猛攻を得意とする相手であるようだ。
 そう分析し、遠子はくいと眼鏡を押し上げた。眼前で戦いを繰り広げる仲間達。そのサポートが彼女の仕事。
 集中に集中を重ね、ここぞというタイミングを逃さないよう気を張っている。
「もう、誰かを恨んだり妬んだりするのは終わりにしよう……?」
 魔導書から、無数の気糸が解き放たれた。音もなく宙を駆け抜け、その気糸はまっすぐ鬼へと向かって突き進む。
 差していた傘を投げ捨て、赤い雨に身を晒す。全身を赤く濡らし、雨の毒に身を侵されながら、それでも視線はまっすぐ鬼へと向けている。
 カン、と意外なほどに小さな音が響いた。
 鬼の持つ鉄槌と斧の柄に、遠子の気糸が突き刺さった音だ。
 それだけで、鬼の武器は自壊した。罅が走り、砕け散る武器。ボロボロと降り注ぐ欠片を浴びながら、猛は笑う。テュルクはそっと視線を上げた。
「てめぇとの戦いにケリつけてやらァ!」
「ひとりで倒す必要などないわけで……」
 冷気を纏う2人の拳。素早く振り抜かれたそれが、鬼たちの顔面に突き刺さった。
 ピシ、と奇妙な音をたて、鬼の頭部が凍りつく。
 次の瞬間、鬼の頭が砕けて散った。
「皮肉だね……」
 荒廃した教会と、降りしきる赤い雨。毒に侵された体を引きずり、2人に近寄る遠子が呟く。
 恨みや妬み、嫉妬に狂った鬼は消えた。残るは花嫁、ただ1体だけである。

●恨み辛みのその先に
「ひらひらと紙切れと舞い踊るのがお似合いですよ。どうせ牛とたいして変わらないでしょう?」
 重火器片手に諭が呟く。視線の先には花嫁の姿。
 オーラに突っ込み、飛び跳ねる影人。ちょこまかと鬱陶しい影人を、花嫁のオーラが食い潰す。注意のそれた一瞬の隙を仲間達は見逃さなかった。
 倒れた櫻霞を櫻子が回収。ミュゼ―ヌと慧架がそれを護るように後退していく。
 影人を消し去り、それを追撃しようとする花嫁だったが、しかし諭は、それを許さない。
 放たれた弾丸が、花嫁の進路を潰す。
「御祝儀なら弾んで差し上げましょう、鉛玉ですが……」
 酷薄な笑みを浮かべた諭は、更にもう1発、花嫁目がけて鉛弾を撃ち出した。

「さぁ、痛みを癒し……その枷を外しましょう」
 櫻子の声が静かに響く。飛び散る燐光。優しい光だ。暖かい。
 傷ついた仲間を癒し、毒を浄化していく。もっとも、赤い雨は降り続いているのだから、それも単なる気休め程度か。一刻も早く花嫁を倒す必要がある。
 怒りを込めた櫻子の瞳が、花嫁を睨みつけた。両手を胸の前で握り合わせ、まるで祈るような姿勢で、櫻子は小さく息を吐いた。

 諭の弾丸をブーケで受け止め、花嫁が飛び出す。不気味なオーラを撒き散らし、美しい笑みを血に染めて、まるで赤い矢のようだ。
 或いは、純粋な悪意の塊だろうか。接近されるだけで背筋が粟立つ。
「さぁリンリンと、凛々とベルが鳴る」
 チリン、と涼しい音が響いた。鉄扇の音だ。開いたそれで、慧架は花嫁の頭を打った。ガツン、と確かな手ごたえが返ってくる。それでも花嫁は笑っていた。
 す、と伸ばされた慧架の腕を、花嫁はぬるりとした動作で回避。そう簡単に掴ませてはくれないらしい。ちっ、と小さく舌打ちを零し、慧架は鉄扇を振り抜いた。
 花嫁の手刀と、慧架の鉄扇が衝突。花嫁の拳が裂け、血が噴き出した。
 次の瞬間、花嫁の周囲に赤いオーラの光弾が展開された。

 次々と増えて行く赤い光弾。一斉に放たれるかと思うと、ゾッとしない。素早く身を翻し、撤退へと移る慧架。それを追うように、光弾が一斉に放出された。
「そう簡単に終わるなんざ思ってないさ」
 げほ、っと軽く咳き込みながら、櫻霞は立ち上がる。フェイトを使った戦闘復帰。その身はすでに満身創痍。ただ、その眼だけは死んではいない。
 す、っと持ち上げた拳銃を花嫁へと向けた。腕が震え、狙いが定まらない。
 そんな櫻霞の手を、櫻子の小さな手が包む。そっと優しく櫻霞の手を握り、銃の狙いを花嫁へと固定。2人の視線が交差し、櫻霞は小さく笑う。
 カツン、と撃鉄の落ちる音。僅か数センチの殺意。爆ぜる火薬と発砲音。
 放たれた魔弾の隙間を縫って、櫻霞の弾丸が花嫁の眉間を撃ち抜いた。

 花嫁の額に弾丸が喰い込む。大きく仰け反った花嫁。その頭上から、何者かの影が降ってくる。煌めく金髪を翻し、振って来たのはミュゼ―ヌだった。
 肩に担いだマスケット銃の照準は、まっすぐ花嫁の首へと向いている。
 トン、と冷たい銃口が首に触れた。瞬間、弾ける火薬の音。放たれる弾丸。ゼロ距離から放たれた弾丸が、花嫁の細い首を撃ち抜いた。
「黒銀の誓いのヴェーゼ……受け取って頂戴!」
 飛び散る鮮血。細い首はちぎれ、赤いヴェールを翻しながら、美しい花嫁の首が宙を舞う。
 頬笑みを浮かべたまま、切り離された朱い花嫁の首は消えて行く。地面に倒れるその直前に、体の方も霞と化して消えてしまった。
 降りしきっていた雨が止む。雲は晴れ、荒廃していた教会は元に戻っていく。
「はぅぅ、怒ると何時も以上につかれますぅぅぅ……」
 ペタリとその場にへたり込み、櫻子は言う。よほど気を張っていたのだろうか。疲れが一気に襲ってきたのだろう。
「お前が此処まで怒るのも珍しい」
 座り込んでいた櫻子に手を貸しながら、櫻霞はふっと小さく笑った。
 いつの間にか……。
 教会を覆っていた負のオーラは晴れ、眩しい夏の日差しが2人を照らし出していた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様です。
こんばんわ。嫉妬から生まれた朱い花嫁の話、これにて終了です。
花嫁、鬼、共に撃破。被害が出る前に討伐完了しました。
いかがでしたでしょうか?
お楽しみいただけたなら幸いです。
それではそろそろ失礼します。
また縁がありましたら、別の依頼でお会いしましょう。

このたびはご参加、ありがとうございました。