●涼 その日の差し入れは、夏になればよく見かける、金魚のお菓子。おまんじゅうであったり、ゼリーであったり、形は様々だが、涼を感じさせるもの。甘味を楽しむリベリスタ達に、『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)が声をかける。 「金魚はお好きですか? でしたら、うってつけのお話があるんです――」 ●きらきら どーん。 現れたのは、球体の水。 直径50メートルはあろうかという、大きな水。 その中に、体長1.2メートルほどの、これまた大きな金魚がいた―― 「と、いうわけです」 金魚のお菓子を食べているときにそんな話を持ちかけられて、喜ぶ者、なんとも言えない反応をする者。ともあれ、その金魚のアザーバイドを送還してほしい、という依頼だった。 「場所はこの近くの海岸です。点検日、ということで他の海水浴客に会うことはないでしょう」 「金魚が海にいるって、どういうこと?」 「正確には、海上……いえ、空中にいる、と言うべきでしょうか」 海上に突如として現れた巨大な水の球体の中に、赤と黒の、ひらひらした綺麗な金魚が一匹ずつ。二匹は悠々と泳いでいて、一見無害にも思えるのだが、なんとその球体は出現した瞬間に周辺の人を取り込み、空中へと浮上する。さらに一日ほどで壊れ、金魚が海に泳ぎ出してしまうのだ。金魚だというのに、不思議と海を泳いでも平気なようだ。そうなれば送還はおろか回収することすら困難であり、また、人がいないとは言え、放置していれば一般人が巻き込まれないとも限らない。 「皆さんが辿りつく頃に、ちょうど金魚が出現し、水の空間が形成されます」 水着を用意し、最初はただその辺りを泳いでいればいい。そうすれば、球体内に入ることは容易だが、内部は水で満たされているため、動きは阻害されるし、呼吸もできない。 「その球体ですが、外側からある程度力を加えることで破壊可能です」 壊してしまえば金魚は外に出て海を泳ぎ出すため、水中よりもいくらか相手はし易くなる。金魚が人間から逃げ回る様子はないが、何か手を打たなければ逃げられる可能性もある。 「D・ホールですが、金魚が出現した場所の高度10メートル付近に出現しています」 強引に押し返すことも可能だが、金魚はそれなりの大きさがある。性質は比較的大人しいものの、無闇に傷つけるようなことをすれば反撃してくるだろう。 「その金魚の目的って、なんなんだろうな」 「恐らくは異界からの迷子で、特に目的は持たないものと思われますが……」 特徴的なのは、とても美しい金魚であること。そして、その美を主張するように、観覧者を閉じ込め、悠々と泳いでいること。我が身を傷つけられることを非常に嫌い、傷つけられれば尾ひれで叩いてくること。 「このあたりを勘案してみては如何でしょうか」 海日和、お菓子をひとつ頬張って。 リベリスタ達は、金魚の待つ海へと向かう。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:犬塚ひなこ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年08月15日(木)22:34 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●夏空と金魚 きらめく太陽のひかり。宙に見えるのは透き通った水の球。 眩いほどに陽光を反射する海の上。そこには、ふわふわと浮かぶ球体内を優雅に泳ぐ金魚達がいた。 「わぁ……幻想的で、夢みたいで……すごく、綺麗……!」 金魚の出現と同時に、『みにくいあひるのこ』翡翠 あひる(BNE002166)は水球の中に取り込まれていた。しかし、水中呼吸の力を心得ているあひるは、別の意味での驚きに瞳を輝かせている。 そこは敵意など皆無。赤と黒の巨大金魚は不思議そうにしていたが、どうやら感動するあひるへと興味を示したようだった。その傍には『くまびすはこぶしけいっ!!』テテロ ミミルノ(BNE003881)がおり、にぱっと人懐っこい笑みを浮かべている。 「きんぎょさん、こんにちはっ。ミミルノたちはいっしょにあそびたいだけだよっ!」 ばた足で金魚に近付き、ミミルノは告げた。 言葉はまだ通じていないだろうが、その気持ちは金魚達に十分に伝わったようだ。アースカラーのひらひら水着をなびかせたあひるが手招きをすれば、二匹はそちらに寄ってゆく。 「下で待つ友達も、あなた達と泳ぎたいって待ってるの。よかったら、下の海で一緒に泳がない……?」 「きんぎょさんをゆーどーしていっしょにあそんでさよならばいばいだいさくせん、なのっ!!」 『――?』 そう提案してみたあひるとミミルノだったが、金魚達には要点が伝わっていない。 だが、二人が仲間達のいる方向へと泳ぐと、二匹もその後について泳いできた。球体の端まで誘導さえ出来れば、そこには『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)達が待っている。 徐々に近付いて来る仲間と金魚を見つめ、アンジェリカはふと思う。 「外国では金魚を丸い金魚鉢で飼っちゃいけないって条例のある街があるんだよね」 だけど、今見えるこの光景のように、丸い金魚鉢で泳ぐ金魚は風情があってとても良い。アンジェリカがほんわりとそんな事を考えている傍、隣にいた『さすらいの猫憑き旅人』桜 望(BNE000713)はうずうずと尻尾を揺らしていた。 「体の猫成分がなんだかちょっと疼くけど、我慢、我慢っ」 ネコ科としての本能を自制しつつ、望は改めて金魚に視線を移す。尾びれを揺らす赤と黒の金魚はとても大きいが、姿だけを見るならばとても可愛く思えた。 「おっきなきんぎょさんですねー」 キンバレイ・ハルゼー(BNE004455)が興味津々に球体を覗き、『運び屋わたこ』綿雪・スピカ(BNE001104)もくすりと笑みを零す。 「あらあら……随分と大きな迷子。しかも二匹。どこの海から来たのかしら」 何処かから来たのだと言うのならば、この子達には帰るおうちがあるはず。それならば、今日の運び屋さんのお仕事は『迷い金魚をおうちへお運びするお手伝い』ということだ。意気込んだスピカは期待に膨らむ胸を抑え、金魚の到来を待つ。 そうして、何とか声が距離まで金魚が近付いた。 『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)はそっと泳ぎ寄り、金魚達の特殊言語を使って話しかける。 「こんにちは、金魚さん。迷子で不安だろう? お家へ帰る方法をおしえるのだぞ。でもせっかくのボトム。少しだけボクたちと泳いで遊ばないかい?」 『――! ……♪』 すると、声の無い言葉が返ってくる。 それが肯定の意志だと理解した雷音は、近くで待機している仲間に大丈夫そうだと告げた。そして、雷音は少し下がっていて欲しい旨を告げ、あひるとミミルノが金魚を連れて離れる。 「では、邪魔なこれを壊させて貰うのだ」 次の瞬間、雷音の放った式符が無数の鳥となって水球を包み込んだ。 途端に水が弾け、金魚達が海の中へ、とぷんと着水する。目の前に落ちて来た金魚の傍に付き、『お砂糖ひと匙』冬青・よすか(BNE003661)はたどたどしく話しかけてみた。 「初めまして、きんぎょ、さん。よすか、はよすか。お名前は?」 『――』 「ない、のかな。だったら……紅緒と黒斗は、どうかな?」 よすかの提案に、金魚達はくるりと尾ひれを揺らして答える。それは名を受け入れる頷きの代わりに思え、仲間達はほっとした笑みを交わしあった。 紅緒と黒斗。今日はじめて名前を与えられた金魚達もまた、楽しげに海の波に揺られていた。 ●海の青色 無事に海へと金魚が降りた今、後は思いっきり遊ぶだけ。 「すいちゅーミミルノしゅつじんっ」 ざばーん。元気良く水を掻きあげて泳ぐミミルノは実に楽しげだ。ばしゃばしゃと弾ける水飛沫は太陽のひかりを映し込み、きらきらと光っている。スピカは口許を綻ばせ、目映い陽射しをめいっぱいに浴びた。 眇めた片目を太陽から外せば、傍を泳ぐ黒金魚が見える。 「お友達になって、くれる? じゃあ……一緒に遊びましょ」 最初はおずおずとだったが、スピカは自分の思いを素直に告げた。黒金魚の黒斗もスピカに寄り添うように泳ぎ寄ってくれており、親愛の情が見て取れる。 ふりふりと揺らされる尾とひれは黒。スピカが纏う水着は正統派の白。 相反する色ながらも、ふたりが泳ぐ様は不思議と様になっっていた。その様子を眺めながら、望も近くへと寄ってみる。 「それにしても、ほんまいい時期に来てくれたなぁ。めっちゃ海水浴シーズンやし♪」 望は耳をぴんと立て、夏の風と海の心地好さに浸った。その楽しげな声に反応したらしき黒金魚もぱしゃんと水を弾かせる。その際に何か言われた気がして、望は首を傾げた。 「何て言ったんやろ?」 「泳ぐのに気持ち良い空と水だ、と言っているみたいなのだ」 すかさず雷音が通訳をして意志を伝える。金魚の黒斗も同じ気持ちなのだと分かり、望は明るい笑みを湛えた。雷音も金魚達も喜んでくれていることが嬉しく、思いを言葉にして気持ちを伝える。 「実はみんな、金魚さんと遊ぶのを楽しみにしてきたんだ」 「――♪」 楽しい気持ちは、もっと楽しい気持ちを呼ぶね。 そんな風に答えたのは赤金魚の紅緒だ。雷音の周りをくるくると回った紅緒、その後ろにあひるが続き、海の最中に可愛い円が描かれる。 水球の中から見える景色は水の中を飛んでいるみたいだった。けれど今、こうして海の中を泳ぐのも心地好い。金魚達はもしかしたら先程の景色を楽しむために、ここまで来たのだろうか。 たくさんの想像を巡らせながら、あひるは金魚に話しかけた。 「良かったら、その大きな体に乗ってみてもいいかな……? 一緒に潜って遊ぼ……!」 ――おいで。 そんな風に思えるしぐさをした後、赤金魚はあひるの下に潜り込んだ。彼女を乗せた紅緒はそのまま水面下に潜り、姿を消す。 「あっ、ずるいのだ!」 「金魚さん~、待ってほしいです!」 あひる達を追って雷音が海に潜り、キンバレイも素潜りにチャレンジしようと追い掛けた。 だが、歳の割におおきな胸が浮力を作り、キンバレイはうまく潜れずに浮かんできてしまう。むむ、と口元を引き結ぶ少女だったが、めげたりなどしない。 そんな一幕があった中、アンジェリカも金魚の傍へと近付く。 彼女が身に纏っている水着は、赤に黒い縁取りがポイントの紐ビキニだった。赤と黒の金魚とお揃いにも見える水着は、アンジェリカの白い肌と相俟って実に色鮮やかだ。 そして、少女は黒金魚に問い掛ける。 「ねえ、丸い水球の中から見る世界ってどんな感じだったの?」 件の件、丸い金魚鉢が禁止されている理由。それは、そこから見る世界は歪んでいるから、金魚が可哀想だという理由らしい。けれど、実際の金魚はどう思っているのか。 すると、黒斗はくるりと回った。 通訳ができる雷音は傍に居なかったが、代わりにこの場には思考を読み取れるよすかが居る。 「ええと、悪いものじゃない、って、言ってるように思う、よ」 はっきりとした言葉は分からないけれど、と告げるよすか。 「歪んでいるから悪いってわけじゃないのかしら」 アンジェリカは興味深げに頷き、黒斗をじっと見つめた。よすかも黒金魚を撫でようと、浮き輪越しにそっと手を伸ばす。特に抵抗もされず、少しざらざらとした感触がよすかの手に伝わった。 今日はいつも一緒にいるパンダのたゆちゃんは浜辺でお留守番だ。ひとりになるのは心細い気もしたが、今のよすかの傍には仲間や、金魚達が居る。 「想い出を一杯作る、これ、夏休みの目標。だから……よすかも、楽しんで貰えるように頑張る」 そして、少女は改めて思いを宣言する。 そこへ波乗り絶好調のミミルノが波と共にざぶんっと現れ、満面の笑みを浮かべた。 「ミミルノたちももぐるのっ! みずのなかをすいすいおよぐときもちいいんだよ!」 「おー、ええなぁ。なら、潜水対決でもしてみるのはどうや?」 無邪気な誘いに望が乗り、アンジェリカ達も同意した。 スピカも潜水に興味を示し、興味津々に黒斗に泳ぎ寄る。ドルフィンスイムのように青い海を一緒に泳げたならば、きっと夢心地だ。 「わたしもあひるさんみたいに背中に乗せてもらいたい……って、きゃ――!?」 その途端、黒金魚がスピカを乗せて海へと潜った。相手が相手だけに、振り回される形になってしまっていたが、スピカのあげた声には喜色が交じっている。 そうして、思いきり潜った海の中は――空とはまた違う、深くて静かな青がいっぱいに広がっていた。 ●楽しい時間 やがて、潜水勝負は競泳対決に変わる。 「君達も速そうだけど、ボクは胸に水の抵抗を受けるような邪魔な物体は持ち合わせていないからね」 だから結構早く泳げるよ、とアンジェリカは胸を張る。それを見ていたキンバレイが自分の胸を見下ろし、ぱしゃぱしゃと水を弾けさせた。 「いいですねー。わたしは浮き輪にも胸がつかえるのですー!」 歴然の差。暫しの沈黙。 仲間達は空気を察して何も言わない。何故だか金魚達までもが可哀想な子を見るような目つきでアンジェリカを見ている気がしたが、それは気のせいだ。きっと。 「うん、自分で言ってて哀しくなってきたけど。ともかくボクも負けないからね!」 びし、と宣言したアンジェリカは悲しさを紛らわせるように意気込んだ。 そうして――競泳が終われば、次なる遊びが待っている。スピカは用意して来たビーチボールを掲げ、手を振って仲間達を誘った。 「金魚さんとボール遊びしたい人、寄っていらっしゃい」 「ええなぁ。私も混ぜてもらおかな♪」 望が応え、他の場所で遊んでいたよすかや金魚達を呼ぶ。海上で浮かびながら行うビーチバレーはなかなか難しく、紅緒と黒斗もはじめてする遊びに四苦八苦していた。それでも、仲間達の間に流れる空気はとても賑やかで楽しげだ。 そうして様々な遊びに興じ、みんなで過ごす時間は実に面白い。 空の真ん中にあった太陽は少し傾いていたが、まだまだ日は高いままだ。ほんの少し遊び疲れた仲間達は今、ぷかぷかと海に浮かんで小休止していた。 「聞いてくれるか、紅緒、黒斗。ボクの家にも君達みたいに可愛い金魚がいるんだ」 雷音は空を見上げながら、自分の家で愛でている子達を紹介した。 名前は華、月、風。本当は一緒に連れて来たかったのだが、普通の金魚は塩水では泳げない。 『……、……!』 残念。この世界にいる私達に似た仲間とも会ってみたかったのに! そう語った金魚達はわずかにしょんぼりしていた。だが、雷音はやさしく微笑んでみせる。 「大丈夫。かわりに、帰ったら君達のことをおみやげ話にするのだ」 「わあ、それは素敵……! あひるも紅緒と黒斗のこと、お友達に話してあげたい、な……」 あひるは金魚の背中に乗った心地を思い出していた。泳ぎ疲れてしまうことすら忘れ、kん魚と一緒に潜った海中の景色。それはいつも見る水の中とはまた違った感覚になり、不思議な心地を運んでくれた。 きっと、それは異世界の友達と一緒だったから。 えへへ、と笑ったあひるにつられ、雷音も小さな笑みを湛える。 ミミルノも満面の笑顔で二人の近くに泳ぎ寄り、紅緒と黒斗の前ではしゃいでいた。 「ちきゅーのうみのおよぎごこちはどーだった? きにいってくれてるよねっ!」 質問をしていても、答えがどう返ってくるかなんてもう分かっている。予想通り、金魚達はこの世界の水も良いものなのだと示し、ヒレをぱたぱた動かした。 やがて、時間は過ぎてゆく。 海の中で遊び続ける最中、望はふと良い考えを思い付いた。 「あ、そうや記念に写真撮っとこ。みんな一緒の思い出を残すのも良いと思って」 どうや? と提案する望の言葉に首を振るものはいない。アンジェリカも記念撮影をしようと思っていたのだと頷き、浜辺から一眼レフカメラを取ってきた。 海に仲間が並ぶ中、よすかは金魚の後ろへ回る。そして、彼女は泳ぎの邪魔にならないように気を付け、二匹の尾びれにリボンを結び付けてやった。 「写真、撮るなら待って。きっと、似合うから。うん……可愛い、よ?」 二匹がいいなら、想い出として持って帰って欲しい。 そう告げたよすかの気持ちが嬉しかったらしく、金魚達はいつも以上にひらひらと揺れる尾びれに興味津々だった。 「それじゃあ記念撮影をしよう。はい、みんな笑って――」 アンジェリカがシャッターを切り、軽快なカメラの撮影音が響く。それぞれの携帯電話やカメラに収められた巨大金魚との写真は、普通の人々から見れば合成写真だと思われてしまうだろう。 しかし、今日をこの場で過ごした者達にとっては確かに存在した大切な思い出の形だ。 画面に収められた写真の中には、輝く太陽にも負けないほどの笑顔が映っていた。 ●お別れと思い出 やがて、楽しい時間は過ぎ去ってゆく。 夕暮れが近付く最中、十分に満足したらしき金魚達は自分の世界に還ることにしたようだ。 ゲートが出来た場所まで泳いだリベリスタ達は、近付く別れに少し複雑な思いを抱いていた。何故なら、それは――金魚達と過ごした時間がとても楽しいものだったからだ。 ふわりと浮いた金魚はひらひらと尾を振って空を泳ぐ。 雷音は翼を広げて飛翔し、翼の加護を受けた仲間達もゲートの近くまで金魚達を見送りにゆく。 「素敵な夏の思い出を有難う。この思い出はずっとずっと大事にしたいとおもうのだ」 『こちらこそ、とても楽しかったよ』 「素敵な時間をありがとう……! 今日の出来事は、いつまでも忘れないよ」 雷音の通訳で紅緒の言葉が仲間に伝えられ、あひるはへにゃりと頬を綻ばせた。ミミルノとよすかもこくりと頷き、別れの言葉を懸命に紡ぐ。 「おつかれさまでしたなの。ミミルノも、いっぱいあそんでまんぞく!」 「ばいばい、またね。楽しい、夏休み、だった。また、遊べたら、良いね」 『君達のこと、忘れないからね』 よすかの声に黒斗が答え、雷音も告げられた言葉を噛み締めた。別れの時はやっぱり辛い。でも、だからこそ笑顔で見送ろうと決めた少女達は悲しい顔は決してしなかった。 「そうか、君達も覚えていてくれるか。……さよならだ」 『うん。さよなら。――ありがとう』 そして、金魚達は最後のお礼を残した後、ゲートの向こう側へと消えてゆく。 よすかとスピカはリボンが揺れる尾を見送り、小さく頷きあった。悲しいけれど、次元の穴は消し去るのが常。ブレイクゲートの力が発動し、穴は完全に閉じられる。 「どうか、元の素敵なおうちに帰れますように」 運び屋としての仕事を終えたと実感し、スピカは金魚達の無事を願った。 キンバレイはのんびりと次元の穴があった方向を見遣り、楽しかった今日を思い返す。 「次は鯨とかきませんかねー」 そんなことになったら大変だと望が突っ込みを入れ、リベリスタ達の間にくすくすと笑いが沸いた。 「ん~、それにしても結構日焼けしたなぁ。こんがりやぁ」 大きく伸びをした望もまた、金魚達と同じように充実した一日だった感じていたようだ。満足気な仲間の様子にあひるも何だか嬉しくなり、浜辺を指差して微笑んだ。 「さぁ、幸せな気持ちで、あひる達も帰りましょ」 「おー!」 ミミルノを筆頭に仲間達は帰路に付き、楽しかった思い出を胸に抱く。 いつかアザーバイドがこの世界に悪い影響を及ぼさないようになったら、金魚達のような優しい存在がいつでも遊びに来れるのに。ミミルノはもしもの世界を思い、思いを馳せた。 「みんながたのしくてしあわせ。そんなひがくるといいなっ」 そう、たとえば今日のように――。 今日という日を言葉にするなら、きらきらの一日。 そして――夏の思い出の一ページはいま、しあわせな金魚色で彩られた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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