●邪魔する者は天誅 「この世界は腐りきっている。新しい平和な世の中を作りなおすために俺達の手で再び維新を引き起こす。『新撰組』の奴らが出払っている今が絶好の機会だ。お前らの力を存分に見せつけて幕末以来の栄光と威信を取り戻せ!」 包帯に全身を撒いた異様な出で立ちの男が志士たちに呼びかける。男の名前は鬼蜘蛛江壬志――暗殺人斬り集団『鬼蜘蛛一派』の頭領だった。 先祖を幕末の長州維新志士にもつ剣客たちだ。尊王攘夷を唱えて新時代を築き上げるために幕府と命をかけて戦った者の末裔。特に同じ京都に拠点を持つフィクサード集団『新撰組』とは因縁がある。 「江壬志さん、襲撃の準備の手筈は整いました。あとは進撃するだけです。さいわい『新撰組』の方も他の案件にかかりきりでこちらの動きには気づいてないようです」 まだあどけない少年の顔をした江壬志の一番弟子である――長曽根虎徹が状況を報告にやってきた。重火器をすでに現地の近くに隠密に運んだという。 「虎徹、おめえは先に先遣隊に合流しろ。今回は俺が直々に指揮を執る。それまで先に俺からの命令を伝えておけ。俺も後からこいつらを率いて向かう」 「頭領直々に指揮ですか。こりゃあみんなも士気があがりますね」 「当たり前だ。なんたって国取りだからな。俺達の本格的な維新の始まりがここからスタートするんだ。最初くらい派手に暴れるってもんが筋だろ」 「おー怖い怖い。さすが江壬志さんですね。わかりました。みなさんにはそう伝えておきます。くれぐれも手を抜くな、ってね」 虎徹はにやりと笑みを浮かべてすぐに奥へと引っ込んで行った。すでに江壬志の前に集まった志士たちのボルテージは最高潮に上がっている。 傍らには同じ『鬼蜘蛛一派』の幹部である蓬莱山慈苑が指を鳴らして壁際で座禅を汲んでいた。体格の大きい破戒僧の手には鉄のグローブが捲かれている。 「慈苑、覚悟はいいな? お前の拳は頼りにしているぜ」 「救世の為、私は明王になることを決意した。すでに来世での幸福は求めていない」 慈苑はそう言って立ち上がった。江壬志に礼をしてすみやかに立ち去った。江壬志は苦笑して彼を見送った。すでに時期は迫っている。 「京の都は鬼蜘蛛江壬志が奪い取る――邪魔する者は全て天誅を加えろ!」 江壬志は仲間を奮い立たせてついに決起の狼煙をあげた。 ●京都炎上、維新革命 「名刹寺の門前にフィクサード集団『鬼蜘蛛一派』が進撃してきた。奴らは重火器で持って京に火を放つ気でいる。このままでは辺りの寺院仏閣や家が大惨事に巻き込まれてしまうだろう。その前に何としても奴らの暴挙を止めてほしい」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が一刻も争う状況に早口で説明した。ブリーフィングルームで集まって聞いていたリベリスタたちも思わず息を呑む。 『鬼蜘蛛一派』はすでにある名刹の寺門の前まで軍を進めてきている。そこで作戦合図の開始を待って辺りに火を放とうとしていた。 京に火を放って混乱に陥れる。他の敵対する勢力に先んじて京を焼き尽くすことによって先手を取るつもりでいるようだ。とくに今回の作戦の場所は自らの先祖が幕府軍に敗北した因縁の場所と同じ名をもつ寺門でもある。鬼蜘蛛たちの士気も相当強かった。 「現代兵器に改造したガトリング機関銃やアームストロング砲をもっており、さながら幕末の戦いを再現しようとしているようだ。もちろんそれ以外にも奴らは子供のころから厳しい就業に堪えてきた剣客たちがそろっている。とくに今回の作戦には数名の幹部が直々に指揮を執っているから気をつけろ。無事に作戦成功できることを切に望む」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年08月02日(金)00:31 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●定めに選ばし者たち 門前通りには逃げ回る人々がいた。叫び声をあげながら鬼蜘蛛一派から必死で離れようとしている。中には混乱が起きて転倒してしまう者もいた。 「正直、武力で国取りをするには規模も時代も違い過ぎる。精々、声の大きなテロリストと言った所でしょう」 『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)は怒りを込めてそう言い放った。聖骸闘衣を纏って臨戦態勢を整える。 「何が維新だ。屁理屈で正当化しているだけだ。人も街も護ってみせる!」 『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)も到着するや否やすぐにAFから装備を取り出して見に纏った。逃げる人々を一刻もはやく助けるために。 「京都で新撰組がとかいう報告書に目を通したことはあったが。その次は鬼蜘蛛と来たか、一体何処の時代劇なのやら。まあ敵がフィクサードだろうが、エリューションだろうが。どうせ俺のやることは何も変わらない。立ち塞がるならねじ伏せるまでのこと」 『アウィスラパクス』天城・櫻霞(BNE000469)が冷静沈着に言い捨てた。 「癇癪を起こして暴れるだけならガキでも出来る。仮に京都を焼き払って攻め落として……いったいそこに何が残る」 歯軋りしながら三影 久(BNE004524)も鬼蜘蛛一派の残虐な振舞いを目の当たりにして憤った。時代錯誤な奴らは自分の手で始末することを心に誓う。 「やれやれ、同郷として呆れますね。そんな体で天下を取れると思い上がるとは。度し難い、脳筋ですね。京を焼いても何の意味もない。妙な歴史オタクは手に負えませんね」 『落ち零れ』赤禰 諭(BNE004571)も久に頷いて言った。これ以上同郷の恥さらしを生かして置くわけにもいかない。全力で敵を打ち負かす。 「親衛隊と言いこいつらと言い、過去の亡霊どもがやかましいね。カビの生えた連中にはとっとと退場してもらいたいよ」 『狂気的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)は手にした銃をくるくる回しながら言った。 (人は力を持つと、こうも愚かになれるものなのか。実に浅ましいことだ。定めに選ばれし者を狩るのは悔やまれるが、崩界を助長させるならば本末転倒、生かしてはおけない) レディ ヘル(BNE004562)も心の中でそう呟いていた。内に秘められた闘志は決して表には出てこないが、すでに彼女もやる気は漲っていた。 「包帯だらけとか大谷吉継さん思い出したけど、あのひと幕末じゃなかった。世界は腐ってるとかさ。まぁ確かに碌なものじゃないんだろうけど、見てる目と認識してる脳が腐ってるから、全部腐って見えるんだよやだねぇ」 『息抜きの合間に人生を』文珠四郎 寿々貴(BNE003936)も容赦なく相手をこき下ろした。普段の穏やかな表情ではなく戦闘時の鋭い目つきに変わっている。 リベリスタたちは現場につくとすぐに逃げ回る人々の前に出て行った。鬼蜘蛛一派の攻撃が始まらないうちに急いで避難誘導に立ち向かう。 ●掲げた理想と虐殺 「で、国の歯車たる一般人が逃げ回っているようだが……恐怖による圧政が願いか? 一人の指導者を妄信する独裁政治が好みか? どちらにしても、他勢力の不在を理由に行動する奴にそんな器が有るとは思えないがな」 久が鬼蜘蛛たちの前に躍り出て叫んだ。相手を威嚇して逃げ回る人々から意識をこちらに向けさせる。案の定敵はそこで進撃の歩みをとめた。 「てめぇら、邪魔だ。そこをどけ! このガトリングとアームストロングで蜂の巣にしてやるぞ。それとも俺たちに盾つく気か? おもしれぇ、やってみろよ」 鬼蜘蛛江壬志は包帯を全身に撒いていた。刀を振り上げて高々に嗤う。異様な風体の男に久も一瞬戸惑ったが、すぐに切り替えた。 「掲げた理想は立派だが、目的と手段が噛み合ってねぇな。一般人を巻き込んでの革命活動なんざ愚の骨頂だ。ただ自分に酔っているだけの虐殺じゃねぇか。外道共が……人を人とは思わないお前達を、俺は人とは認めない」 久の挑発に江壬志はあからさまに機嫌を悪くした。 「上等だ。野郎どもいくぞ! かかってこいや!」 江壬志がそう指示を出してガトリング機関銃が辺りに火を噴いた。宣戦布告とともに鬼蜘蛛一派達が一斉にリベリスタ達に襲い掛かる。 「どこまでできるかはともかく、面倒を避ける手は取らないとだね。読まれる事なく準備できればいいけど、いやまぁ読まれてもいいか邪魔されなければ」 仲間が敵を抑えに行った隙に寿々貴が陣地を作成する。鬼蜘蛛たちが一般人から離れている隙に巻き添えを食らわないように戦場から弾き出す。 ガトリング銃の攻撃が苛烈さを増した。 狙いは明らかに後ろにいる寿々貴やレディだった。 「ぐはあああっ」 諭と久が間に入ってかばう。レディも撃たれながら寿々貴に攻撃を通さないように必死になって身体を張った。 「こちらに急いでください! 早くしないと敵がやってきます!」 アラストールが威風を使用して一般人を門の中へと避難させる。混乱が起きそうになるところを府警の姿をしたレディが巧みに身ぶり手ぶりで誘導した。 警官姿をしたレディに忠実に人々たちは動く。将棋倒しにならないように十分に注意しながら懸命に手を振り続けた。銃弾を背に浴びながらも必死に攻撃から人々を守った。 「あそこに逃げ遅れた方がいらっしゃいます!」 上空で諭がファミリアーで支配した鳥が旋回していた。逃げ遅れた人たちを見つけてアラストールに伝える。寿々貴も拡声器で叫んだ。今まさに敵の覇界闘士に襲われそうになっていて、陣地の中に残ってしまった人を救助するためアラストールは急ぐ。 「この人たちは絶対に殺させはしません!」 ジャスティスキャノンを食らった敵はすぐにこちらに向かってきた。そこをアラストールが一気にブロードソードで斬り裂いた。倒れた敵を蹴り飛ばしてすぐに一般人を確保するとそのまま門の中へと一緒に走った。 「さあもう大丈夫だよ。ここなら安心だから戦闘が終わるまでじっとしててね」 寿々貴は全員が避難したことを確認すると、超幻影を使ってその中に救出者をすべて敵から見えないように隠した。 「くっ! なかなか前に進めないよ、お兄ちゃん」 ガトリング機関銃の執拗な攻撃にリベリスタ達はなかなか前に進めない。銃弾を随所に受けながら虎美は歯を食いしばった。こんなところで倒れるわけにはいかない。 虎美は攻撃を避けるようにして素早い動きを見せた。銃を敵に向けながらスターダストブレイカーの弾柱を一斉に放射する。 襲い掛かってきた複数の敵が虎美の攻撃で崩れ落ちた。 「骨董品ですか? レトロですね、コスプレ集団らしくて可愛らしいですよ?」 諭が呪力で敵の砲台めがけて雨を降らせた。容赦なく降り注がれる冷たい雨に凍らされてしまい砲撃手は前に進めなくなる。 「お前らが一番邪魔なんだ。まずは早々に消えてもらうぞ!」 櫻霞は狙いを澄ましてガトリング機関銃とアームストログ砲の狙撃手を狙い撃った。虎美が回りの敵を掃除した隙に厄介な敵を始末しにかかる。 「ぎゃあああああ――――」 狙われた敵は顔面を撃ち抜かれてその場に突っ伏した。だが、敵も黙ってばかりではない。長曽根虎徹が櫻霞に瞬撃殺で迫っていた。 「ぐはぁっ!!」 攻撃した後の隙を狙われて櫻霞は血を吐いて突っ伏す。 避難誘導を終えたレディが回復に飛び回った。すぐに助け起こされた櫻霞は顔についた血を拭いながら敵を睨みつけた。 「さあて、ちょうどいい。お前から狙うか。安心しろ、誰だろうとどうせ末路は同じだ、精々楽しめよフィクサード!」 「くっ! これでは――反撃できませんね。仕方ありません」 お返しとばかり櫻霞がハニーコムガトリングをぶっ放す。これには虎徹も攻撃を避けることができずに全身にダメージを負った。 俊足を生かしてそのまま安全圏へと後退する。すぐ傍の戦場では蓬莱山慈苑が疾風とがっぷり組み合っていた。 ●強い奴が勝つ 疾風が慈苑と肩を組んで押し合った。敵は自分よりも一回りも大きい破戒僧だ。圧倒的なパワーで拳を鳩尾に叩きこんでくる。 「ぐはああっ!!」 血を吐いて地面に疾風が転がり込んだ。 「貴様にはわかるまい。寺の子供達をリベリスタに殺された恨みなぞ」 「もしかしてそれで破戒僧になったのか?」 「そうだ、いつかアークに復讐したいと思っていた。あの子たちは身寄りのない孤児だった。それを運命を失くしたという理由だけで皆殺しだ。俺はまだ当時は無力なただの僧侶だった。あの時ほど仏の存在を疑ったことはない。まさかこんなに早くその機会が訪れようとは思いもしなかったがな」 「維新を成してまた気に食わなくなったら壊すのか? 真に腐っているのはどっちだ? 本末転倒じゃないか!」 「子供たちのためにもお前たちには退場願う。俺達がこの世を支配すれば、もう争い事や無残に殺される子供達もいなくなるだろう。お前には恨みはない。だが、英霊となった御仏のために貴様には死んでもらう!」 恨みのこもった容赦のない蹴りが再び疾風を襲った。立て続けに強烈な一撃を食らって疾風が立っているのもやっとだった。金剛陣と森羅行をフルに使用して疾風がひとりで慈苑を抑えつけていた。仲間が一般人と他の敵にとりかかっているときにこの怪力僧を相手するのは自分しかいない。 体格の差があっておまけに攻撃力もケタ違いだ。このままではなぶられ続けた挙句に自分が倒されてしまう。なんとかして挽回しなければならない。 疾風はコンバットナイフを取り出した。慈苑の懐に飛び込んで首元を狙う。 「どこを狙っている。貴様の動きなどお見通しだ」 慈苑はすんでの所で疾風の腕を掴んでいた。 「それで勝てたと思っていたら間違いだ!」 疾風は腕を掴まれたまま相手の身体の背中を抱きよせた。そのままの勢いで上体を捻ると慈苑を渾身の力で引き寄せる。 「おまえは絶対に間違っている。目をさまさせてやるッ!!」 疾風は渾身の力で慈苑を地面に叩きつけた。 「国の為、人の為、新時代を切り開こうとした貴方達のご先祖様は立派だよ。けどさ、今の貴方達はどう? 崇高な目的もなく、ただ対抗心の為に力なき人を、罪なき人をただ殺してるだけじゃん」 虎美は鬼蜘蛛江壬志に向かって問いかけた。銃を突きつけていつでも攻撃体勢に入れるようにする。対して江壬志はまだ刀を抜こうとしない。 「てめぇらもそれは同じだろ? 罪なき無抵抗な奴らを運命がなくなったというただそれだけの理由で嬲り殺しにする。それじゃあ俺達とどっちが正しいかなんてわからないじゃないか。正しいのはただ一つ――強い奴が勝つ。それがこの世の心理ってもんだろ?」 江壬志は刀を抜いて虎美に躍りかかった。渾身の一撃を叩きこんで、虎美を塀に激突させる。むせ返った虎美はなかなか起き上がれない。 「大丈夫、まだやれるよお兄ちゃん」 虎美は脳内のお兄ちゃんに問いかけて自分を鼓舞した。 「優位に進めると思ったら大間違いだ、甘く見てもらっては困る」 虎美を庇って櫻霞が代わりに立ちはだかった。ピアッシングシュートを狙い撃って江壬志のジャガーノートをブレイクしにかかる。 「怪我はやだし逃げたいけど、絶対に倒してから帰るー!」 寿々貴もフラッシュバンを叩きこんで江壬志の動きを封じ込めた。 不意を突かれて江壬志は顔をしかめた。その隙になんとか起き上がった虎美がふたたび銃を突きつける。 銃を乱射して江壬志に大量の弾丸を浴びせた。江壬志も防戦一方となってこれ以上虎美に近づくことはできない。次第に疲労の汗が顔に浮かんできた。 (私とお兄ちゃんのラブラブっぷりを見るといいよ! お兄ちゃんぺろぺろちゅっちゅ。はやく帰って一緒にベッドでラブラブしようね!) 鬼蜘蛛江壬志は虎美の心の中を読んで思わず顔をしかめた。妄想の中で裸で絡み合う兄妹の姿に思わず苦笑を零してしまう。 「おまえ、なんて破廉恥な野郎なんだ。こんなバカげた奴は他に見たことないぜ。そんなにお兄ちゃんが好きならなぜ奪おうとしない?」 虎美は再び銃を付けつけようとして動揺した。お兄ちゃんには他に好きな人がいる。その人のことは虎美も嫌いではなかった。決して応援しているつもりではないが、それでもまだ心のどこかでやきもきしたところが残っている。 「わかったぞ。てめぇは、お兄ちゃんに嫌われんのが怖いだけだろ? そうやってラブラブしているフリをしていれば少なくともお兄ちゃんは自分を構ってくれる。本当は自分でも気が付いているんだろう? 自分の弱さに」 虎美は江壬志に心の中を読まれて動揺した。お兄ちゃんのことを言い当てられてしまって逆に心を揺さぶられてしまう。洞察力に潜れた江壬志は相手の弱点をつくことに長けていた。このまま相手のペースに乗せられてしまっては不味い。 「危ない、避けて!」 「シャアアアアア――――」 寿々貴の声にようやく虎美は江壬志が迫っていたことに気がついた。虎美は再び斬られて後ろの塀に激突した。 ●京の雨 「よそ見をしていると今度は貴方の番ですよ?」 虎徹が目にもとまらぬ速さで瞬撃殺を繰り出してくる。全力防御でなんとか寿々貴は何度か堪えたが度重なる攻撃についに倒れた。陣地が破れてしまう。だが、このときまでに一般人は全員避難をしていた。慌てる必要はない。 レディはすぐに飛んで行って回復を施した。寿々貴はすぐに立ちあがった。虎徹を倒すために自分も頑張らなければならない。 「みんなが頑張っているのにまた倒れちゃいけない」 寿々貴は手番が空いた隙にオフェンサーとディフェンサードクトリンを適宜使って味方を強力に後ろから援護した。 さらに傷ついた虎美の回復などもして支援に奮闘する。寿々貴の懸命な支援によって味方も徐々に闘志を盛り返してきた。 生き残っていた敵の幾人かも防御の要である寿々貴を狙って攻撃してきた。影人を増やした諭がなんとか間に入って止める。前にやってきた敵に噛みついた。 「不味いですね。薄くて飲めたものじゃないですね。脳の軽さに比例してるんですか?」 激しい戦闘によって諭も消耗していた。吸血によって自身を回復した。 「何時の時代の撃ち合いなのだか雑兵同士の戯れ合いの気分ですね」 激しい撃ちあいの末に敵が倒れて行った。それでも縦横無尽に暴れる虎徹を止めるのは至難だった。ようやく久が相手の動きを見定める。 「短かったがお前達の本格的維新はここで終わりだ。一般人の無差別虐殺……改心の余地無しあの世で後悔しろ!」 久が1$シュートで相手の足を狙い撃つ。撃たれた虎徹はその場に崩れ、その隙にアラストールがリーガルブレードで首元を狙った。 「時代遅れの敗残兵が何を言う、いや、貴様等は唯の駄々をこねる子供と変わらん。民を巻き込んで何が維新か――もはや言葉は無用か、後は剣で語れ」 「ぐはああああっ!!」 虎徹は激しい攻撃を食らってついに倒された。 「虎徹!! くそっ! 慈苑はどうだ?」 「鬼蜘蛛こそ、大分さっきは押されていたな」 「ばかやろう。あれは余裕ってもんだ」 江壬志と慈苑が互いに敵を相手にしながら軽口をたたく。言葉とは裏腹に自身もかなり体力を使って息を荒くしていた。さすがに序盤で回復役を失ってしまって長期戦をやることが困難になっていた。 「貴様なかなかやるな。俺たちをここまで押しとどめるとは」 慈苑はようやく起き上がって疾風を睨みつける。すでに深手を負っているようだった。額から血を流しているがまだ目には闘志がにじみ出ていた。 「さすがにこれ以上はもたんな。退却するぞ」 江壬志は部下にそう言い捨てて身をひるがえした。 タフな敵を前にリベリスタもさすがに消耗していた。これ以上戦えば味方にも甚大な被害が出そうだった。すでに深い傷を負っている味方もいる。 重火器と敵のホリメとタクトはすでに全滅していたが、幹部を抑えている間に大分消耗させられていた。 最後に生き残ったデュランダルが一斉に襲いかかってくる。 「虎美の連続攻撃、見ててねお兄ちゃん」 虎美が江壬志のあの世への手向けにするはずだった弾丸の雨をデュランダルに一斉にぶっぱなす。それ以上前に進めなくなった敵に久がさらにハニーコムガトリングで撃ち殺して全員が地面に動かなくなった。 「江壬志たちはさすがにもう追えないか……さて、次はどう出る? これで終わるとも思ってないさ」 櫻霞が懐から煙草を取りだして火をつけた。 ゆっくりと煙を吐き出しながら心を落ち着かせる。敵の大体は撃破したが、幹部が残った以上また京都に現れるに違いなかった。 「あの慈苑という僧はまた勝負したいですね。同じ覇界闘士として負けられない。それにあいつは間違えている。正義の味方の意味を。今度は倒して慈苑にその意味をこの拳で教えてやりたい」 疾風は拳を力強く握りしめて言った。怪我人が出ていたために、急いで救急車の手配をして忙しく奔走した。 「馬鹿に馬鹿にされたのは気分が悪いですね。京の天気は雨ですか――」 諭は空を見上げた。いつの間にか黒い雲が流れ着いていた。今ではもう見なれたレディが大きな翼を広げてどこかへと飛び立った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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