●騙し討ち 「お宅の寺の周りに物騒な連中が徘徊していると通報があって警備にやってきました――巡査の藤田五郎と言うものです。お兄さんは御在宅でしょうか?」 警官姿の糸目の大柄の男が門先に立っていた。応対に出てきた安倍芽衣香に顔の下半分だけを歪ませて嗤った。柔和な口調とともに男は中に入ってくる。 「兄は今本堂で法事の最中です。まだ時間がかかるかと思いますが、よければ兄に用件をあとで伝えておきましょうか」 「よければ中で待たせて貰えると助かります。そのことでぜひお兄さんと話したいことがありますので。本堂の方はどちらになりますか?」 男は芽衣香の返事を待たずに敷地の中に入ってくる。芽衣香はその男の手が異様にごつごつしているのを見て不審に思った。普通の警官にしては様子がおかしい。 それでも芽衣香は不審な者がうろついているという話に気を取られていた。もしそれが本当だとすれば大変危険なことだ。はやくお兄様に知らせなければならない。 この日はちょうど亡きリベリスタ達の法事の日だった。先日池田屋旅亭で会合を開いていた際にフィクサードの『新撰組』に襲われて命を落とした者たちだ。 そこで安倍行哉と芽衣香は助けに来たアークのリベリスタたちに救われて運よく命を取り留めることに成功した。あのときの凄まじい恐怖はいまでも忘れない。 だが、そこで多くの犠牲が出た。助け出されたのは行哉と芽衣香以外に一人だけで他の者はみんな惨殺されてしまった。兄はそれから罪の意識に苛まれていた。 もし自分がしっかりしていれば仲間を殺させずにはすんだと。だからこうやって月命日の日には殺された仲間の関係者を集めて今でも熱心に供養をしている。 「藤田さん、その物騒な連中って?」 芽衣香がそう振り返って男に問いかけようとしたときだった。振り向いた芽衣香は目の前に大きな鋭い刀を突きつけられていた。その瞬間恐怖のあまり絶叫する。 「芽衣香! どうしたんだ!!」 法事をしていた行哉が芽衣香の悲鳴を聞いて飛び出してきた。 「それ以上近づくとお前の妹の命はない。俺達の用事はただひとつ、この間殺しそこねた安倍行哉――貴様の首とこの寺の制圧だ」 「お前はもしかして『新撰組』参番隊組長――斉藤一」 行哉は藤田五郎すなわち斉藤一を睨みつけた。すでに寺の庭と本堂には大量の羽織姿の新撰組隊士たちが雪崩込んでいた。誠の旗を振りかざして刀を容赦なく構える。 「騙されたことに気がついたようだな。だが、遅い。この寺はもう我々の手で厳重に包囲されている。どこにも逃げ場はない。どうだ取引しないか?」 「――取引だと?」 「もしお前が腹を切ってこの寺を明け渡してくれたら妹だけは助けてやる。だが、お前が自害しなければ芽衣香は代わりに殺される。同時に先祖代々守られてきたこの寺も破壊されてしまうだろう。お前は半殺しにされながらトドメを刺されずその生き地獄を味わうことになる。さあどっちを選択するかすぐに選べ」 ●自分の命の代わりに 「京都の在野リベリスタの拠点になっていた大寺院にフィクサード組織『新撰組』が押し入って制圧したようだ。すでにそこの住職でリベリスタでもある安倍行哉とその妹である芽衣香が人質に取られている。状況は極めて最悪だ。このままでは二人の命が危ない」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が手短に説明した。一刻を争う状況に話を聞いていたリベリスタたちも唾を飲み込む。 『新撰組』たちは京都での覇権を狙っている。そのためにまず在野リベリスタたちの拠点になっている寺を叩きに掛ったようだ。この間殺しそこねた若い人望あるリーダーの安倍行哉を抹殺して大打撃を与えて寺の拠点をも手にいれようとしている。 法事によって多くの一般人が寺にまだ残っている状態だった。このまま戦闘すれば失われた同僚の家族たち一般人にも危害が及びかねなかった。 安倍行哉は戦闘を諦めて自害することを斉藤たちに申し出た。自分の命の代わりに妹や寺が助かるのならばそれでも構わない。なにより死んだ仲間たちの家族を殺させるわけにはいかなかった。自分が生きているのは彼らの命の引きかえだった。 「すでに安倍行哉は自害の刀を持たされて今にも切腹しようとしている状況だ。このままでは安倍行哉は死んでしまうだろう。それに奴らは最初から約束など守る気がない。行哉が死んだらつぎに芽衣香を殺して一般人も虐殺するつもりだ。そうなるまでになんとか応援に駆けつけて彼らの命を一人でも多く救って来てほしい」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2013年08月05日(月)22:41 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●黒蜥蜴の支援 「誠の双剣――一瞬、新城弦真が生き還ったのかと驚いた。だが、こんな馬鹿な手紙を寄越すのは弦真の孫である貴様しかいない。そうだろう、拓真?」 目付きの険しい背の高い男が裏門に現れた。長刀を背負って黒いコートを羽織った若い男の登場にリベリスタたちは緊張に包まれた。 「黒蜥蜴、蒼乃宮静馬――久しぶりだな。ゆっくり会話をしている時間もないから単刀直入に言う。お前の力を貸してくれ」 『誰が為の力』新城・拓真(BNE000644)は仲間に紹介した。新撰組に恨みを持つフィクサード組織『隠密御庭番衆』の御頭であることを伝える。むろん、本来はリベリスタとも敵対する存在。拓真自身も静馬と先日死闘を繰り広げたばかりだ。 「この貸しは高くつくぞ。俺達の目的は新撰組、特にあの近藤を倒すことだ。お前たちの味方になったわけではない。今度会ったら全力で拓真――お前を始末する」 「むろん承知だ。借りは必ず返す。歪崎、すまんが蒼乃宮の案内をしてくれ」 「――ボクがデスカ?」 拓真に頼まれた『飛常識』歪崎 行方(BNE001422)が戸惑いながら返事をした。昨日までアークに敵対していた相手を信用しろと言われて戸惑うのも無理はない。 「大丈夫だ、蒼乃宮は信用できる男だ。実力は言うまでもない」 拓真の真剣な言葉に行方は頷いた。そこまで拓真が言うのだから問題ないだろう。 「ひゅー、なんか熱くなってきたぜ。一般人も芽衣香もかならず救ってみせる。それまで死ぬなよ、安倍!」 『刹那の刻』浅葱 琥珀(BNE004276)が拓真たちのやり取りを見て吠えた。すでに一刻の猶予もない。ここから先の話は敵をなぎ倒しながら進むのが速い。 「ハーシェル、そっちの準備はできたかの?」 『陰陽狂』宵咲 瑠琵(BNE000129)がAFを使って表門にいる『エンジェルナイト』セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)と連絡を取り合う。 『こちらは準備完了です。はやく合図をください!』 セラフィーナの決死の言葉が聞こえてきた。すぐに瑠琵は拓真と交代した。代わって通信に出たセラフィーナと激励の言葉を交したあと、最後に『腐敗の王』羽柴 壱也(BNE002639)と代わってもらう。 「こっちは皆俺が助けておく――羽柴、お前は友達を助けてこい」 『ありがとう!! 新城さ――』 「前から思ってたが、拓真でいい。俺達同級生だろう?」 拓真の言葉に壱也は笑ってうなずいた。どことなく張り詰めていた彼女の気持ちを少しでも和らげることができたならと拓真は願って通信を切った。 「それでは参りましょうか――囚われた罪なき人たちと大切な友人を取り戻すために」 『朔ノ月』風宮 紫月(BNE003411)が拓真に頷いた。静馬を含めた一同に向かって拓真は号令を下した。新撰組が厳重に警備する寺の裏門に攻め入る。 「貴様らリベリスタか! ここは絶対に通さん」 新撰組の隊士たちが平突きの構えを見せた。先頭を切って走ってくる拓真たちに一斉に斬りかかってくる。 「お前らに関わっている暇はない! 引かぬなら押し通させてもらう!」 拓真は走りながらガンブレードを突きつけると、敵にハニーコムガトリングをぶっ放した。威力ある攻撃の雨に隊士たちはうめき声をあげる。 「――こちら土方、リベリスタ共が」 土方がAFを取り出して通信を試みようとした隙に、瑠琵が式神を放った。鴉が土方に真っ先に飛んでいって突き刺さる。土方は不意を食らって通信機を落とした。 さらに後ろから紫月が業火の矢を隊士たち全員に放つ。隊士たちは立て続けにリベリスタ達の猛攻に押された。 土方も反撃を見せようとしたが、すでに辺りは乱戦模様になっていた。味方を巻き込みたくない土方は迂闊に得意の攻撃ができない。おまけに通信機を落としてしまったせいで仲間の救援も出来ない状況だ。 「くっ、こうなったら少しでも足止めさせなければ――」 土方は味方を巻き込むこと覚悟で村雨を握りしめると、縦横無尽に次々と辺りの者を切り裂いて回った。隊士は巻き込まれて傷を負った。 だが、土方の捨て身の攻撃に琥珀や行方が傷を負う。すぐに紫月が回復を施して回る。立ち直った琥珀は迫りくる隊士に叫んだ。 「外道行為を行いながら義を翳すたぁふざけた野郎共だな!」 琥珀は魔力で作ったダイス達で敵を爆花の中に呑み込んだ。辺りに絶叫が響いて一人の隊士がついに地面に突っ伏す。 「さてさて新撰組のようなもの。時代劇の出来損ないデスネ。アハハハ!」 行方も暗黒で敵を巻き込む。敵が攻撃を受けてひるんだ隙に、行方たちは静馬を先導しながらそのまま門の中へと先になだれ込んだ。 ●泥沼の決闘 「お礼参りか、ご苦労なことだな。数を頼みの襲撃は新撰組のお家芸。手段としては悪くない。だが所詮、押し売りの強盗紛い。矮小なプライド満たしたいだけか?」 『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)は近藤に挑発の言葉を投げかけた。表門には新撰組の中で最強の双剣使いの近藤がいる。まず彼を引き付けなければ早期の突破は不可能だった。 「やってきたでござるな、アークのリベリスタ共よ。それにしては骨のある奴が見当たらないがどうしたでござるかな」 「それはやってみなくちゃわからんだろう」 『Friedhof』シビリズ・ジークベルト(BNE003364)が返答した。すぐに仲間にラグナロクを使用して援助する。 近藤はリベリスタ達がすぐ近くに迫って来ても余裕だった。ゆっくりと腰にある刀に手をかけようとする。ユーヌが先にフラッシュバンを叩きこんだ。 「邪魔だ。どけてもらうぞ!」 ユーヌは奮戦した。アッパーユアハートでさらに他の敵を引き付ける。 隊士たちは攻撃を受けて体勢が緩んだ。その隙を狙って『ティンダロス』ルヴィア・マグノリア・リーリフローラ(BNE002446)が隊士に襲い掛かる。 「さーて、楽しもうぜ。暴れたくて仕方ない!」 すばやく動きながら遠距離から複数の隊士に銃弾の閃光をあびせる。『白月抱き微睡む白猫』二階堂 杏子(BNE000447)を背中に庇いながら動いた。 自ら先頭に立って道を切り開く。隊士たちも負けじと、ギガクラッシュで反撃を試みてきた。ルヴィアを弾き飛ばした。すぐに杏子が回復に向かう。 「私が回復手とは……どうにも違和感が拭えませんわね」 苦笑しながらそれでも庇ってくれたルヴィアをなんとか立たせた。 ユーヌとルヴィアが引き付けている間、『ならず』曳馬野・涼子(BNE003471)を含む仲間のリベリスタ達は先に表門から中へ侵入した。 涼子は銃を放ちながら威嚇して注意を引き付ける。壱也とセラフィーナの方へ敵が向かわないように動く。 近藤も突破されかけてようやく動き出した。涼子たちを後ろから追撃しようとしたところでシビリズが1人で近藤の前に立ちはだかる。 「相手はこの私だ。追わす訳にはいかんのだよ。さぁ、君はここで私と泥沼の闘いをしてもらおうか!!」 聖骸闘衣を纏ったシビリズが近藤の前に立ちはだかる。 「おぬしこの拙者相手に一人でやる気でござるか? 死ぬでござるよ」 そう言いながらどこか楽しそうに脇差を一本取りだした。 脇差で迫る近藤にシビリズが身体を張った。めった切りにされながらシビリズは耐えに耐えた。何度も斬られながらもシビリズは歯を食いしばって我慢した。 中に侵入したルヴィアと杏子は廊下で隊士たちに回りを囲まれた。涼子が暴れ大蛇で回りの敵をなぎ倒しにかかる。味方を巻き込まないように集中した。 「ま、意地ぐらいは見せなきゃよ。さー抉れー、ルルハリルー」 ルヴィアが助かったとばかり、銃弾の雨をお見舞いした。 「先ほどのお返しですわ。私たちの攻撃を受けてみなさい!」 杏子もトラップネストで隊士を足止めして支援する。ルヴィアと杏子の息の合ったコンビネーションに迂闊に隊士たちも近づくことができない。 だが、それでも度重なる隊士の苛烈な攻撃にルヴィアも傷ついて消耗が激しくなっていた。後ろから杏子を狙って敵が平突きで襲ってくる。 「ぐふあああっ!!」 ルヴィアは杏子を庇って血を吐いた。先に突破しようとしていた杏子がルヴィアのピンチに戻ってこようとする。 「大丈夫ですか? 今助けに――」 「さっさと行った、今回はお前が要だろ!!」 ルヴィアは杏子にきつく言い放った。ここで杏子がこの場所で立ち往生してしまったら意味がなくなる。杏子は仕方なくルヴィアを置いて先に進んだ。 「ここから先は誰も通させはしない」 ユーヌがルヴィアを助けに入る。玄武招来で敵に一斉攻撃して制圧した。 ●誠の双剣の誕生 庭を突破してきた瑠琵が影人を増員させて攻撃に当たらせた。すぐにリベリスタの侵入に気がついた隊士たちが応対に出てくる。 「お前らその小娘を奪われんじゃねえぞ」 藤堂は隊士たちに命令した。 芽衣香が隊士たちに囚われていた。身体を抑えつけられて動けない状況だった。口元を押さえられていて満足に言葉を喋れない。 「その程度で京都を炎上させようと思っていたのか? 語るに落ちたな、新撰組よ」 拓真が双剣を抜いて藤堂に迫った。挑発して最大限に相手を引き付ける。 「威勢だけはいい奴だ。わざわざ人質を取って誘きよせた価値がある。だがどちらがでかい口を叩いているか今ここで証明してやるぜ」 藤堂はジャッジメントレイを放つ。攻撃を食らった拓真は両手で身体をガードしたままその場に膝を突いた。再び藤堂が村雨で後ろから拓真に襲い掛かる。 「ここは俺に任せろ。お前は早く先へ行け」 その時静馬が拓真の背中に入った。 「蒼乃宮、すまん。ここは任せた」 「誰に向かって物を言っている。お前と違って俺は柔じゃない」 静馬が拓真を庇うように立った。殺人奇剣を振りかざして藤堂を攻撃する。その隙に拓真は芽衣香のいる場所に向かう。 芽衣香を捕まえている隊士に剣を叩きつけた。行方と琥珀の動向に気を取られていた隊士は拓真の攻撃に地面に倒された。 「私のことよりもお兄様達が――お兄様が死んじゃう!」 芽衣香は助けられてすぐに叫んだ。 「安心せい。行哉も一般人も見殺しにはせぬ!」 瑠琵が芽衣香に声をあけて庇った。襲ってきた敵の剣撃から背中で守る。身体を斬られて瑠琵は顔しかめたがそれでも絶対に離さなかった。 影人に芽衣香のサポートをさせて自身は本堂に向かう。紫月は千里眼で本堂の中の様子を見透かした。その情報をすぐに瑠琵に教える。 「本堂裏の仏像に爆弾が仕掛けてあります」 「なんと罰当たりな。了解じゃ、すぐに向かう」 瑠琵が本堂の扉を蹴破ると一般人がいた。みんな恐怖の面持ちで前にいる原田を見ている。影人たちが逃げださないように警戒していた。 瑠琵も影人を連れた。目には目、歯には歯、影人には影人。攻撃で一般人を巻きこまないように注意しながら自身は原田の元へ直行する。 「フィクサード風情が『新撰組』を騙るか――お主等は壬生浪士組の方がお似合いじゃよ。その行いを“悪”と断じられ粛清されるが良い!」 瑠琵が原田に向かって挑発する。その間に後ろから拓真も追いついてきた。 「早く逃げろ、動けぬ者が居るなら助けてやれ……後は、俺達の仕事だ」 拓真が一般人の避難を手助けする。飛びかかってくる影人は自らの剣で持って次々に切り裂いていった。敵の影人の数が減って行く。 「こしゃくな真似をしやがって! これでも食らいやがれ!」 原田が堪らずに幻影を使って一般人を作りだす。幻影の一般人の陰に隠れて原田は瑠琵の背後を突こうと迫った。 「気を付けて、後ろから襲ってきます」 紫月が幻影を見破って瑠琵に敵の位置を教えた。すぐに反転した瑠琵は、原田が躍り出たところに指先を向けてエナジースティールを放った。 「ぐはあああっ! なんだこれはっ」 精神力を強烈に奪われた原田は堪らずに苦しんだ。それでもようやく落ち着きを取り戻した原田は拓真に槍で突撃してきた。 拓真は原田の長槍を双剣で受け止める。 激しい競り合いが始まった。原田も負けてはいない。拓真の力に押されたように見せかけて身を引く。バランスを崩した拓真に槍を突き立てた。 腹を抑えながら拓真は激しく呼吸をする。すでに腹から出血がひどくなった。 「新撰組よ、改めて名乗ろう。俺の名は新城拓真──誠の双剣、新城拓真だ!」 拓真は祖父の称号を自身の名乗りに使った。 もう誰が為の力などと迷わない。俺は祖父の称号を今この瞬間に受け継ぐ。 俺は己の誠と義を貫く! 「貴様、もしかしてあの弦真の孫か――!」 原田は一瞬反応が遅れた。拓真の剣を受け止めたはずが、さらにもう一方の剣で 腹を狙われた。深く身体を抉られた原田は絶叫した。 「ぐはああああああああ――――」 拓真によって原田は本堂の畳に突っ伏した。その間に瑠琵が爆弾を仏像の裏から回収することに成功していた。それを影人に持たせて本堂の正面で戦っている隊士たちの前に持って行く。一瞬爆弾を見た隊士は目を点にした。 大爆発がその瞬間起きて隊士たちはものの見事に吹き飛ばされた。 「風情がないのぅ」 瑠琵は一般人を庇いながら得意に不敵に嗤った。拓真達と共に敵の攻撃を防いで裏門へと後退していく。 「黒蜥蜴の一味が戦場に乱入してきました。ここは持ちません。退却します」 土方が近藤と連絡を取り合ってついに撤退を決断した。 ●いつか果たす約束 「名前をかたって、ご立派な刀を持たなきゃ、人も斬れないんでしょう? 小娘一人、斬れるものならやってみな!」 涼子は地下へと続く廊下の階段で永倉を抑えていた。 「いいだろう、俺の実力を受けてみるがいい!!」 挑発に乗った永倉が剣を構えてグラスフォッグで攻撃を仕掛けた。涼子は自身が氷漬けにされるのは構わなかった。 その隙に仲間が地下牢へと進んでくれればいい。わざと自分ひとりが仲間から離れて犠牲になる。攻撃を食らって動けなくなったところを永倉はさらに瞬撃殺で涼子をめった切りにした。 「ぐはああああっ!!」 堪らずに涼子は叫んだ。倒れてしまうが再び気力で立ち上がる。 すでに仲間の姿はなかった。涼子は自分の役割がまず一つ達成できたことに笑みを浮かべた。壁になって私はここで任務を全うする。 「なにが面白い! 自分の立場がわかっていないようだな」 「それはこっちの台詞だ。遠くを見て足元が見えていないのはアンタだ」 涼子が永倉を階段で足止めしている隙に、地下牢へ二人が潜入した。瀕死状態の安倍行哉が刀を持たされて自害させられようとしている。 「行哉さん、助けに来ました! できるだけ離れてください!」 セラフィーナの言葉に行哉が驚いて顔をあげた。 「安倍くん、帰ってから説教だよ、ばか」 「セラさんに壱也さんまで……!」 壱也が行哉の前に割り込んだ。言いたいことは山ほどあった。 本当ならビンタの一つでもしてやりたい。それでも壱也は斉藤に向かってブレードを構えた。今倒すべき相手は憎き斉藤だった。 「沖田を殺したのはわたし。かかっておいでよ、偽物」 「そうか――あの時沖田君を殺したのはお前か。いいだろう、小娘。俺がお前を倒して沖田君の手向けとしてやる。いくぞっ!」 斉藤は左から渾身の突撃を繰り出してきた。壱也はブレードで斉藤の剣を止めようとするがあまりの力に弾き飛ばされる。 壁に激突して壱也は背中を強く打ってうめく。斬られて出血がひどかった。 「壬生の狼とやらは、人質を取らないとまともに戦えもしないんですか? かかってきなさい。貴方が僅かでも武士の誇りを持っているのなら!!」 残りの隊士たちが一斉にセラフィーナに向かう。東雲をしっかりと握りしめた。行哉のほうを絶対に攻撃されるわけにはいかない。 セラフィーナは敵ではなくて天井の照明を狙った。 その瞬間、辺りが暗闇に襲われる。隊士たちが騒ぎ立てた。前が見えなくて恐怖に襲われる。斉藤もこれには舌を巻いた。 「斉藤――とくにあんただけは絶対に許さない!」 壱也には状況のすべてが見えていた。暗闇の中で斉藤は混乱している。まったく壱也に目を向けていなかった。 壱也は身を低く構えた。ブレードの刃を横に倒して腕を思いっきり引く。そのままの姿勢で壱也は猛スピードで斉藤に突撃した。 「あんたの技でわたしが葬ってあげる! 覚悟しろ――――!」 壱也は斉藤に渾身の突撃を食らわした。 「ぐあああああああああああっ――――――!」 渾身の突撃を食らった斉藤は壁に激突した。それでも止まらずに斉藤は別の部屋にぶち抜かれた。 その瞬間、寺の柱が壊れて天井が崩れ落ちてくる。 「行哉さん、しっかりと捉まっていてください!」 セラフィーナも行哉を抱えるとそのまま天井に向かって突撃した。斉藤に負けず劣らずの攻撃で穴を開けると外へと飛び出す。壱也も階段から脱出する。 血だらけでぐったりしている行哉に包帯を強く巻いて止血を施す。 「みんな俺のせいだ――俺がしっかりしていないから、芽衣香も寺も仲間のリベリスさえも守れない。みんな壊されてしまう」 「何言ってるんですか! 行哉さんのお陰で救われた命だってある。それに私は皆でお寺に遊びに行くって約束、まだ守れてないんです。だから行哉さんも芽衣香さんも、皆助けてみせるよ。絶対に!」 セラフィーナの言葉に行哉は頷いた。ちょうど下を見ると、新撰組の隊士たちが崩れ落ちる寺から撤退していくところだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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