● アーク怖い、アーク怖い、アーク怖い。 だってあいつら、裏野部フィクサード以上に過激的だし、正義の味方と思いきや「人殺すの好きです」とか言い出しちゃう奴いるし、戦ってないと死ぬってくらいにフィクサードを見つけては目の色変えてぶち殺してくるし、挙句の果てには僕に遊んでください!!なんて言ってくるし、もうなんなのあいつら、解った馬鹿だ、バカなんだろ!! なあ、解る? この気持ち、今、僕、僕、僕―――!!! 「何回目かな、絶頂しちゃった。十回はイってるよね。 今すんごい怖い、怖くて下半身疼いちゃった。怖いと生きてるって思えて気持ち良いんだよね」 パンツは十五枚くらい常備するべき。パンツは大事だ。 話は一気に変わるが、殺意が好きだ、殺意を向けられるのが好きだ、敵わない敵を前にした時が好きだ。意味不明なくらいに馬鹿げている力に毎日脅えて、ぬるぬる生活しているのが好きだ。もはや隠さず言えば狂介さんが好きだ!! そんな感じの恐怖というものが大好きで、それを通じて生きている実感に悶える黄泉ヶ辻――架枢深鴇。 彼が居る屋敷は見るからに脆くて、廃れて、『出そう』な所である。もはやワクワク、ソワソワと時めく胸の鼓動が隠せないくらいに、ニヤついている深鴇は闇の奥で一人、虚構へ向かって話をしている。 「自己紹介まだだっけ? 僕、死神太郎☆ お友達募集なんだよね、この世に一秒でも長く生を感じるための、フレンド(笑)がね。君が噂の女の子っぽいジャン! 女の子が泣いていたら救ってあげるのが普通だよね。おいでよ、彼氏からセフレ、一日限りの友情からお兄ちゃんまでこなしてあげるよ」 伸ばした深鴇の指の先端。金色に輝く爪が笑っていた。 ● 「夏ですねぇ、今日も依頼をお一つ宜しくお願いします」 『未来日記』牧野杏理(nBNE000211)は集まったリベリスタ達へ切り出した。 「今回はとあるエリューションの討伐をお願いしたいのですが……黄泉ヶ辻のフィクサード、架枢深鴇という変態がその場に一緒に居るのです。 彼はまあ……特殊過ぎる性癖を持っていて、それをくれるならどっちでもイケるというか、あ、これは凄い蛇足なので、聞かなかったことにしてくれても良いです」 さておき、彼はとある森の奥にある屋敷の中に居るという。そこは如何にも出そうだ、という雰囲気を持ち合わせており周囲の街の住人は近づこうともしない場所なのだが。 「まあ、出ますね」 サラリと杏理は言った。 結果を言ってしまえば何も面白く無いのだが、屋敷にはEフォースが住み着いている。それは少女の形をしていて、屋敷には似合わない浴衣を纏った姿だそうだ。 「彼女は『花火』と繰り返し呟いているのです。それが花火をしたいのか、花火を見たいなのかはよく解らないのですが……このまま屋敷に居られてもフェーズの進行や一般人への害があるかもしれません。討伐を、お願いします」 先程の話を再びするが、現場には既に深鴇が居る。彼はおそらく己を護る盾が欲しいのだろう。彼の所有する爪のある指輪型アーティファクト『ヴァンパニッシュ』はフェーズの小さいエリューションを使役する事が可能になるものだ。そしてその牙は、リベリスタが到着する頃には少女を貫いているだろう。 「少女の眠りと、敵の撤退を。やり方はお任せしますので、どうかお気をつけて」 ● 浴衣が開け、爪痕がついた白い胸。其処から血は流れない。 深鴇の膝の上に乗る少女はぽつりと呟く。 「もう一度……お友達と……」 どうしようも無い願いに「成程ね」と呟いた深鴇。そのまま窓の奥を見ながら、少女が過ごした数十年の空白に溜息を吐いた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年08月04日(日)23:17 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
● 浴衣の少女を後ろから抱いて、切り揃えられた長い髪の毛を撫でる架枢深鴇。ふとピクリと動いた少女が、顔を上げた。 「誰か、来るのね」 「嗚呼そうなっちゃう?」 ダダダダダー!と大きな足音を立てて駆けて来たのは。 「死神タロちゃん久しぶりぃー。最近どう?」 「うん、タロじゃないなー、太郎だなー。タロだと犬になっちゃうな」 『ましゅまろぽっぷこーん』殖 ぐるぐ(BNE004311)だ。扉からダイビングして部屋に転がり込んだぐるぐは、そのまま立ち上がりながら深鴇の言葉を無視して部屋を一周見回す。ふむふむ、此処はなんて時代を感じる……。 「アンティークなトコ選んだねぇ。その子のお家?」 「今日までのね」 ぐるぐは自慢の耳をぴくぴく動かしながら、顔を斜めにこてん。そんな愛らしい姿に深鴇はくすりと笑った。此処まで凄い和やかな雰囲気であるが、これもう戦闘開始しているから。 ぞろりと集合したリベリスタを見てから深鴇の膝に座っていた少女は立ち上がった。背に深鴇を隠すかのように、護る壁になるかのように。 「友達とか言っておいて、結局は手駒じゃないの」 『メイガス』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)の眼光が鋭くなり深鴇を睨みつけた。視線の先で、深鴇はさも楽しそうに首を横に振って否定をする。 「違うよ。きちんとギブアンドテイクだよ」 「そんな、気まぐれ!!」 ウェスティアは奏でる、葬送の音色。自らの血を鎖とし、敵を貫く刃として。 「気まぐれでもね、泣いてる女の子に手を伸ばす事がいけない事とは僕は思わないよ」 「五月蠅いわ。寝言なら死んだ後に聞いてあげるわよ」 同じく『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)も葬送の鎖を編んだ。突き抜けていく二重の鎖。それは少女を射抜くが深鴇には届かない。 「あの子が一人きりで寂しい思いをしないよう。生きたまま一緒に埋葬されて貰えないかしら?」 「此の世界が恐怖をくれる限り死ねないなぁ……」 深鴇の長く伸びた指が『黄泉比良坂』逢坂 黄泉路(BNE003449)へと向いた。ハッと気づいた黄泉路は『祈花の導鴉』宇賀神・遥紀(BNE003750)を背に隠す。 「やぁ、黄泉比良坂君。今日は殺人鬼君はいないんだね」 「深鴇……!!」 黄泉路が彼の名前を呼んだ瞬間だった。眩い光が大広間を包んでいく。その光の中、浴衣の少女が叫ぶ。 「苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい!!」 声が響く、ぎちりと固まったウェスティア。だがそれだけで少女は止まらない。 「うああぁああぁぁああぁぁああ!!!」 響いた悲しみの怨嗟がフィールドを包む。 「……懲りないですね」 耳を塞いでいた『宵歌い』ロマネ・エレギナ(BNE002717)が半目で世界を見ていた。ふと気づいた深鴇がにっこり笑って手を振ってくれているが、それには無反応。 「人間が時に抱く生への妄執の方が、数段忌まわしい上に恐ろしいと思うのですが」 深鴇の癖は理解不能だ。理解しようとも思わない。指を伸ばして撃った気糸に拒絶の意を込めて、ロマネはただ死を謳う。 「まいったなぁ、なんでいつもこう数で攻めてくるのかなぁ」 黒いツナギのぽっけに両手を差し込みながら、周囲を見回す深鴇。 扉には数人のリベリスタ。窓を背にするリベリスタ。これはこれは、出口を塞いで逃走阻止といった所か。 「おいおい。僕の命日でも作りに来たのならお断りだけど?」 『クール&マイペース』月姫・彩香(BNE003815)が気糸を少女へ放った瞬間に深鴇と目が合った。「やっ」と小さく言いながら、友達でも見つけたかのように手をあげた深鴇に彩香は呆れた目で返した。 のん気な深鴇だが、目の前には少女をConvictioにて貫いている『銀騎士』ノエル・ファイニング(BNE003301)が居る。そういえば以前、外人墓地で色々あった。そう、色々。 「楽団? あん時は胸糞悪かったねー。いやあ、でも今リヒャルト来てるんでしょ? 大変だよね」 「あの時は成り行き上とはいえ協力して頂いた事は、今更ですがお礼を申しておきます」 一度だけ頭を下げたノエルだった。だがConvictioを握り直し、刃を向けた先には深鴇。 「それはさておきまして、貴方には死んでいただきましょう。今日、ここで」 「仁義とか全くないんだね君!! でもさ、宣言してできなかった時って恥ずかしくない? 威勢だけは買っておくよ」 ● そもそもの話だ。 「ほらぁ、泣いちゃった。可哀想じゃない?」 浴衣の少女は何故此処に留まっているのだろうか。深鴇の死神をは黄泉路を攻撃し、少女は苦しい、悲しいと叫ぶ。 「幼女のセフレはお父さんどうかと思う」 「まあまあ、なんでもするっていう比喩だよ」 遥紀の聖神が仲間たちを癒していく。目の前の少年とも言える程に幼く見える青年を屈服、もとい、教育し直すべきと踏んだ彼。 「調教して差し上げよう、良い声で哭いてくれるかな?」 「そういうのは僕に攻撃が通ってから言ってほしいよ」 深鴇は『壁』が有る限りフリーなのだ。遥紀と同じように聖神を放ち、目の前の少女の傷を癒す。直後、ノエルの得物が死神を射抜く。 「厄介ですね、貴方の周りのもの全て」 死神を穿つノエルの腕はそのまま少女に狙いを変えていく。 「君は、花火で何がしたかったんだ?」 そのままノエルの攻撃の追撃として、彩香のピンポイントが少女を貫いた。痛い、痛いと騒ぐ少女だが花火という言葉に一瞬だけピクリと反応してみせたのだ。できる事なら知りたい、少女の事を。答えを待つ彩香だが……彼女の口は重く閉ざされていた。 「君は優しいね、そういうの好きだよクールちゃん」 「私の名前は、月姫彩香だ」 「覚えておこう」 瞬時、審判の光が彩香の目をいっぱいに染め上げた。そんな事も気にせずにぐるぐはマイペースで、それでいて真摯に少女と『遊び』を楽しんでいた。 「ハァイ、遊びましょ?」 はらり、長く、ピンクと白が入り混じった髪が少女の目を魅了する。にっこり笑ったぐるぐはそのまま、複数人へと増える増える増える。 「かーごめかごめ!」 まるで遊んでいる様。少女を中心にぐるぐの籠はくるくる回る。さあ、後ろの正面だーれ、で一斉に刃が少女をタッチしていった。 「動くな!」 ウェスティア、そして氷璃の葬送の曲が再び二重奏を奏でていた。流石のマグメイガスの攻撃だ、威力と命中共に申し分無い。死神、腐臭、少女を射抜く二つの攻撃だが、綺麗に深鴇の聖神が相殺していく。 「……なんか消耗戦だなぁ」 「逃がさないんだから」 ウェスティアの言葉に「はいはい」と顔を振る深鴇。 「毎日適当に生きているメイガスちゃんは、何処からその正義感がやってくるんだい?」 「いきなり、何を……」 「気まぐれで聞いただけ」 深鴇がにこっと笑ったその奥では氷璃が次の葬送曲を組み上げながら、問う。 「貴方のEXの此処に居るよって、誰に呼びかけているのかしら?」 「ああ……上位の、聖神と逆位置の神様みたいなものと契約してるだけ」 契約内容は守護。まるで捻くれている形で死神を呼び寄せる青年の手の聖痕が笑う。 「それにしても酷い臭いね。貴方はお風呂に――いえ、墓穴に放り込んで埋葬した方が良いかしら?」 「できるものなら、是非やってみて欲しいものだよ」 二度目の葬送が貫いていった。 再び召喚されて来た死神にノエルの慈悲も無い攻撃が死神を貫いた。その容赦ない攻撃の群は、壁を作りたい深鴇の戦法には面白く無く。 「うー……銀騎士ちゃん、ちょっとは手加減」 「しません」 「容赦」 「しません」 「あ……はい」 うんだよね、そうだよね、と頷いた深鴇の目の前。ノエルの、まさかの二回目の攻撃が死神の胴を貫いていた。その攻撃の威力は深鴇も知っている通り、いや、むしろそれよりも強く成っているのかもしれない。 「前回消したと思っていましたが。体臭に気を使わない人間には近付きたくないです」 「え、臭う!? やだーちゃんとパンツは変えたけど……って、じゃあ会いに来なきゃ良いんじゃないかな……!?」 むっと顔をしかめた深鴇。ロマネは気にもせずピンポイントで腐臭を貫いた。しかしこの戦場、浴衣の少女の泣き声ばかりが響く。寂しいと泣き、苦しいと誰かを縛り、少女の泣き声はまるで生前の苦しみ。 大凡、友達と花火をしたかった何か、無念の塊なのだろうと予想をつけたロマネ。だが今は深鴇の人形でもある。早々に葬送するしか手は無い……か。 考察していたロマネだがふと顔を上げた瞬間、死神の鎌が振り落された。 「なぁ、深鴇。これは単純な疑問なんだが……あんたは恐怖が好きなんだろ?」 「うん、そうだよ」 呪縛によって動けない黄泉路。だがその背では遥紀が聖神へと癒しを乞うていた。 「殺されるかもしれない恐怖。確かにその最たる対象の狂介の近くに居られるというのは、あんたにとって素敵な環境なんだろうが……狂介に敵対してみようと思ったことは無いのか?」 「あるよ。っていうか今もそうだよ。殺してよ? 黄泉比良坂君。あのあほくさいくらいに狂ってるあの人をさぁ」 さらり、と返された言葉。黄泉路は逆に驚いてしまった。本来ならば忠誠を誓っている首領に対して、敵対していると言えるものなのか。 いつでも寝首を掻けるように傍に居るというのだろうが、あの首領がそんな隙をまず見せる事は無いし、まず彼の狂気劇場のテリトリーに入れる勇気も無い。99%の諦めと、1%の希望が深鴇を黄泉ヶ辻に置いている理由なのだろう。 「だから僕は君たちに期待してるんだよ。バロックナイツの一角を倒す君たちなら、七派の首領『くらい』どうとでもなるだろう?」 黄泉路は顔を上げた。葬送の鎖も、精密な気糸も無として、深鴇がすぐ眼前にまで歩いて来たのだ。黄泉路の顎をあげられ、吐息が混ざる程に近い位置で饒舌に喋る。尤も、深鴇は息はしていないが。遥紀が聖神の詠唱をしながらも、寄られた黄泉路の服を引っ張って後ろへと引かせた。 「何、するつもりだった?」 「いや別に、何も」 遥紀の目線が黄泉路に近づくな、と威嚇していた。それが解ってか、深鴇は両手をあげてそのテリトリーには入らないと首を振った。 そんな姿を彩香は凝視していた。彩香は何より、架枢深鴇という人物に興味があるのだ。特に変態度が増した彼に興味があるが……今日は見れる事は無さそうか。 「深鴇、お前は……」 「僕も元々は正義感溢れるリベリスタだったさ。だけどあほくさい力を見たら生きたくなっただけだよ、所詮負け犬さ。言ったろう? あの人のせいでおかしくなったって」 「他の組織に属し、何時、誰に殺されてもおかしくない立場になろうとしたことはないのか?」 「合わないんだよね。逆凪恐山三尋木は窮屈だし、剣林程力に執着してないし、六道は理解できないし、裏野部は論外」 そこまで言って深鴇は元の場所へと後退していく。 「喋るの好きなんだ。まあいい、君と話ができただけで今日は楽しかったよ」 ● 「スマイルスマーイル! 今度は鬼ごっこ! 捕まえられる?」 ぱちん、ぱちん、手を鳴らすぐるぐ。その音に、ふと泣き止んだ少女がぐるぐを見た。 彼女が笑ってくれるように、ぐるぐはいつでも笑顔を忘れない。例え悲しみが突き刺さっても、例え寂しさが伝わっても。 「遊んだら友達! そういえばお名前なんてーの?」 「え……、ともこ……」 「ともちゃん! 幽霊らからって特別扱いしないの。友達は名前で呼びたいでしょ!」 にぱーと笑うぐるぐの周囲には明るい色の花でも咲いたかのように明るい。そんな光景に深鴇はお腹を抱えて笑った。子供の純粋さは時に残酷であるが、今目の前のものはなんて愉快なのか。 「これ! 君の分らよ」 ぐるぐが手渡したのは一本の手持ち花火。 その時、深鴇は歩き出した。突き動かされたかの様に彩香が彼の足が向かう方向を通せんぼした。 「彩香って名前良いよね。改めて彩香ちゃん。僕、君の事が好きだから言うけど。今日は僕じゃなくて、僕が征したエリューションを倒すってのが重要じゃないかな?」 「それでも、貴方を逃がす訳にはいきません」 「でも穴っていうのは何処にでもできるものなんだよ」 深鴇の瞳がゆっくり動いた先、氷璃が居た。 「逃がしはしないわ。貴方は此処で死になさい」 「楽しかったケドさ、でもほら、引き際悪いと君たち僕の事食べちゃうでしょ?」 窓はリベリスタが護っている。扉は言わずともがな。その窓のひとつを護っているウェスティアが高速で葬送の音色を組み上げていく。 「ここで逃がしたら、また何か事件を起こすんでしょ」 できれば此処で討っておけば、ひとつの懸念というものが消える。だがその懸念は有り触れているものでもあって。そして、ウェスティアの血鎖は深鴇を――正確には深鴇のボディラインを綺麗に沿って貫いていく。 「あの子の事は任せなさい。あの子の願い? は叶えてあげてもいいわ」 「でも多分……そろそろさぁ」 そして重なる氷璃の葬送曲。二種類の鎖が伸びていて、その中から鎖を退けて出て来た深鴇。 「私達に遠慮しなくていいのよ。あの子が寂しく無い様に、一緒に死んであげなさいな」 「僕は一緒に居る選択はしたけど、殺そうとしているのは紛れも無くそっちだからね?」 ボッと点いた、花火の光。ともこはその光に魅入られたかの様に固まっていた。花火、花火、待ちわびた光。 そんな花火の音に混じって、黒き翼がツナギ服から伸びてきて天を仰いだ。 「深鴇、待ちなさい」 「じゃあね、宵歌い」 しかし楽しい時間とは束の間でもある。ノエルが退路を断つように位置し、浴衣の少女へ疾風を放った。瞬間、半分に切れて消えた花火の光。 「あ、あぁぁ――」 小さな時限爆弾が発動する。刹那――絶叫に似た音波が部屋中を染め上げた。 「残念だけど、君たちは僕の恐怖にはなれないようだね」 何処か期待が外れた様に顔を斜めにした深鴇。麻痺を免れた者は何人か居たが、特に庇われている者には麻痺は通らない。 「でもいつも氷璃ちゃんは容赦無いね。じゃあね」 氷璃の肩に手が置かれた。その隣で深鴇は黒い翼を広げた――。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|