● 寄ってらっしゃい、見てらっしゃい? 本日は休日で人通りも多い。自然公園に面した道に、夏で暑いというのに長袖シャツに黒いベストを着た男が、公園の柵の上に立ってナイフでジャグリング。その隣では、七色の服を着た奇抜なピエロが大きなボールの上で逆立ちしていた。二人とも顔には仮面をしていて素顔は見えないが、華やかな金髪が目に残る。 二人とも、人を笑わせる事が心の底から好きなのだろう。芸には何一つ手抜きは無く、それでいて客を笑わすトークや、人間離れしたスキルには『本気』というものが感じられて目が捕らわれてしまう。 一つの芸が終わってポーズを決めれば拍手喝采。また一つ芸が終われば歓声が上がった。それを何十回と繰り返した後、ボールの上に乗っていたピエロは跳躍し、黒ベストの男の隣、つまり柵の上に着地したのだ。そして再びの拍手喝采。 「兄さん……そろそろ」 「えっ、もう終わり? 早かったな……もうちょっとやってたかったんだが」 芸を始めて一時間ぐらい経った頃だ。黒ベストの男は投げていたナイフを全て受け止め、マジシャンバックから一つの宝石を取り出した。それは大人の拳大程度の大きさがあり、赤黒く煌めいている。 「本日のショーはこれで終演。ですが、ご通行中にも関わらず、足を止めて頂いた皆々様に感謝の気持ちを込めて、ボクから贈り物を。なんとこの宝石、人を幸せにする力があるんだとか無いんだとか。あー無いかな? いや、あるある! だって今ボクが幸せだからさ、皆さんと巡り合えて……はは」 おどけた男のトークに、小さな笑いが咲いていく。 「そんなこんなで、皆さん、良いですか? この宝石をよ~~~~~~っく見て下さい………では」 ――午前零時。×××××××に来い―― ● 「皆さんこんにちは、今日も依頼を一つお願いします」 『未来日記』牧野 杏理(nBNE000211)は集まったリベリスタ達へ切り出した。 「今回はとあるアーティファクトを回収、または破壊して下さい」 アーティファクトの名前は『豪傑たる瞳』。拳大の大きさの、綺麗な球の形をしたものだ。それの能力は魔眼よりも強い洗脳であり、一定時間見つめる事によって発動すると言う。 「持ち主は三尋木所属のフィクサードで、サーカスという一派の人達です。 赤神・朱螺(あかがみ・しゅら)と、赤神・朱里(あかがみ・しゅり)の兄妹。芸によって人を集め、洗脳し、とある場所に一般人を集めて回収しています。回収された一般人がどうなるかなんて考えたくありませんが……まあ、人の身体って良いお金になりますしね……」 なんとも恐ろしい話だ。 「場所は埠頭近くの大きな倉庫の中です。入口はひとつで、その中に一般人と三尋木が居ます。ですが……一般人もナイフを持たされ、朱螺の命令を聞くように洗脳されている様です。一般人は傷つけても良いですが、なるべく……殺さないようにしてくださいね」 最近の杏理、注文が多い気がする。大丈夫、リベリスタならなんとかしてくれる! 「彼方はフィクサードであっても、穏健派三尋木。それを念頭に置いて対処すれば無難かもしれませんね。それでは宜しくお願いします」 杏理は深々と頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年08月03日(土)22:39 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● ガシャンと、開いた入口から八人のリベリスタは一斉に倉庫内へと入って行った。 天高くには月明かりがあるものの、この倉庫内には一切入らない。そんな暗い暗い、長方形の箱の中。 小さな明りが暗闇を辿る。『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)がいち早く目的の姿を探しているのだ。あっちへこっちへ明りで探り、見えるのは虚ろな一般人の顔ばかり――そして、見つけた。 「アーク! な、なんでいつもバレちゃうかなぁっ」 地団駄を踏んだ赤神朱里の姿だ。そこへ飛び込む亘。短刀をチラつかせ、されど顔は笑顔のまま。 「ふふ、初めまして天風と申します。さて色々と話したい所ですが、少々失礼しま――ッ!?」 刃物と刃物が擦れ合う音が響いた。目の前、笑うピエロ面がずらされて覗いた瞳がにこっと笑う。 「妹に手を出すんなら、お兄ちゃんを通して欲しいかなーなんて、はは」 しかしこの展開、亘は彼等を試していたのだ。人形となって操られている一般人が朱里達を庇うか――の実験だが、結論から言えば亘の速度が速すぎるので、戦闘開始してから対応できるのは朱螺一人だけだ。なおかつ、彼等にとって一般人は商品だ。なるべく傷はつけたくないのだろう。 「ごめんね、結構痛いけど……我慢してね、必ず助けるから……!」 神聖たる光が倉庫内に溢れた。『なのなのお嬢様なの』ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)が放った力だ。ナイフを持っていた一般人が次々と倒れていく――その合間を縫って『刹那の刻』浅葱 琥珀(BNE004276)は駆ける。目指すは、朱里だ。 「君がクリムんとこのご令嬢、朱里ちゃんか。噂通り可愛いね!」 「何よ! あいつと一纏めにしないでよね!! 親の七光りなんて大嫌いなんだから!」 魔剣を振り翳す琥珀と、その目の前で校門を振り上げた朱里。 「その校門、愛用してるんだ? ワイルドだなー」 「案外持ちやすくて長持ちして、圧し折れれば攻撃力上がるんだから!!」 朱里の肌から血が流れた直後、琥珀の身体が飛ばされ、壁へとぶつかった。ぶつけた後頭部を擦る琥珀の目に、暗闇で光る朱里の赤い目が憤って見える。 琥珀はそのまま彼女がアーティファクトを持っていないか探した。服ならば、膨らんでいる所にあるはず――膨らんでいる所、膨らんでいる所……胸? 「何処みてんのよー!!」 「探してただけええ!!!」 校門が琥珀の頭を理不尽に直撃した。 「あっちね」 地面に足の着いていない状態の『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)が人差し指を朱螺へと向けた。彼女が探していたのは『豪傑たる瞳』の所在。拳大のものであれば隠せる場所は少ないだろうと踏んだ彼女は、どうにもこうにも朱螺の腰に着いているポーチが気になる。 「外したらお仕置きよ、龍治」 「……ああ」 上からの圧力を感じつつも『八咫烏』雑賀 龍治(BNE002797)の瞳が細くなっていく。そして響いた銃声、ハッとした朱螺が身体を捻って魔弾を見送ったもののポーチに傷がひとつ。 「ほう、避けるとはな」 「おっかねー、ボクに当てるとは。流石雑賀龍治」 お互いに特化に特化を重ねた点では打ち消し合うものか。龍治の口はにやりと裂けていく。 その頃、朱螺は気づいた。『銀狼のオクルス』草臥 木蓮(BNE002229)が、龍治と同じものを狙っている事に。ナイフで風を斬り、警戒した亘が一歩だけ朱螺から引いた。 「商品が傷つくのは避けたかったんだけどなぁ」 クイっと人差し指を引けば、まだ倒れていない一般人がふらりと朱螺を囲った。成程、肉壁というやつか。龍治は『彼』の姿に『アイツ』を重ねた。 「アイツに重なって見えるな」 「父親譲りだよ」 カチャカチャ、口に咥えたスプーンが鳴る。『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)が戦場と戦況を見つめていた。 「お父さん譲りのゲスさですかねー、ねぇルメ子さん」 「やり口はお父さんにソックリ……たぶんクリムさんの指示かな」 小梢の背中に護られている小さな光は、そっと顔を出しながら言う。確かに、親がアレであれば子はコレなのだろう。 その子である一人、朱里は顔を青ざめさせながら校門を力いっぱい握った。 「また会ったな朱里。今日はお前の相手はしてやれないが」 『鋼鉄の砦』ゲルト・フォン・ハルトマン(BNE001883)だ。朱里を一瞬見たが、その目線は朱螺へと移される。今日の役目は彼の抑えなのだ。そんな彼にムッとしながら朱里は再び地団駄を踏んだ。 「何よ! 今日こそけちょんけちょんにしてやるんだからね!」 「無理だからやめておけ」 「ムッキー!!」 ● 龍治の弾丸が朱螺を追うようにして抜けていく。 「ええい、しつこい!!」 狙いはポーチだ、どうみても其処にアーティファクトがあるのだろう、龍治の瞳に狂いは無いが、朱螺の回避能力も恐るべき点がある。何度も何度も弾丸はポーチを掠めた。 「ていうかこんな早く壊されたら面白くないでしょ!!」 つい朱螺の本音が出た。そして追撃が目の前から飛んでくる――。 「う、わ」 「こういう形ではなく」 ――亘の刃が朱螺の刃によってそらされ、朱螺の頬すれすれを刃が進んでいった。 「貴方とは純粋に戦ってみたかったですが……」 同じソードミラージュであり、同じく速度に特化している。つまり、似た者を目の間にした亘の瞳は輝いていた。その輝きは朱螺にとっては眩しすぎるもので、申し訳なさそうに。 「ボクは戦うの、あんまり好きじゃないんだよね」 と言葉を零していた。 傷つけてもすぐに傷を治してしまうホーリーメイガスが煙たい。亘を見る事無く、その先に居るルーメリアに視点を合わせた朱螺。その視線を感じてか、小梢は背中にルーメリアを隠した。瞬時。 「ルメ子さん危ない!」 小梢がルーメリアを押し、彼女の代わりに刃を受けた。見上げてみれば、亘やゲルトが抑えていたはずの朱螺が小梢の目の前に居るではないか。 「霧の亡霊、ジャック・ザ・リッパー気取りかしら?」 「成程、霧に乗せた分身……というところか」 「うわっ、しーっ! シーッ!!」 氷璃とゲルトへ朱螺は慌てたように首を振る。その瞬間、ゲルトの身体は後方へと吹っ飛きとんでいった。ゲルトが起き上った時には朱里が振り切った校門を持ち直している最中。抑えの琥珀も飛ばされて、ブロックを外されており、木蓮は速度が足りない。 「あんま舐めないでよね」 ふんっと胸を張った朱里だが、飛んできた魔力砲に直撃して其処を抑えた。奥歯を噛み、痛みに歪んだ顔で氷璃を見据えた。 「天使っぽい姿しておきながら、とんだ悪魔めぇぇっ」 「回避が疎かだと当て易くて良いわね?」 「ムキーッ!!」 怒り任せに氷璃へと朱里は走っていく。そんな元気な彼女の姿にゲルトはため息がひとつ出てきた。 豪傑たる瞳は終始、龍治と木蓮によって狙われていた。一般人を壁にして視界から遠ざけようにも、龍治のフラッシュバンやルーメリアの神気閃光によって使える手駒は消えていく。 木蓮が標準を合わせた時だった。朱螺の手は一般人の襟元を掴んで、前へ突き出した。「あっ」と声を出した木蓮の頬に一筋の汗が落ちていく。朱螺が倒れた一般人の喉元にナイフを当てているのだ。 トリガーを引きそうになった龍治と木蓮の手前に氷璃は出た。 「我が身可愛さで商品を潰す真似は止めなさい。何の利益にもならないし、私達も退けなくなるわ」 「そっちこそ。神気閃光にジャスティスキャノンを撃たれた時点で、商品に傷がついて売買的価値は下がったよ」 あくまでも氷璃の忠告には乗らない算段なのだろう。 「此処に居る全員が人質だ、リベリスタ諸君。頭の良い取引しよう」 朱螺の赤い瞳に睨まれた時、木蓮の首がズキンと痛んだ。此処にはいない彼を思い出して、木蓮は拳を握る。 「その、交渉ってなんだ?」 「うん。一般人は返すさ。そのかわりに、ボクたち二人を此処から見逃すって方向ね。豪傑たる瞳を壊されるのは勘弁して欲しいしね」 その交渉を聞いて、龍治は言い返す。 「つまり、また次の機会に豪傑たる瞳で一般人を集めると言いたいのか?」 今回は諦める。だがまた次を狙う。しかしそれではアークは納得できない。何より、依頼を失敗にする事はできないのだ。 木蓮は再び、朱螺へと銃口を向けた。 「決裂っぽいね」 「そうだ、悪いが俺達はその交渉では飲めない」 銃声が響いた――朱螺が盾にしようと前に出した一般人だったが、その目の前に青い翼が舞う。 腹部を抑えた亘が立っていた。じわりと血が滲む其処を抑える事もせずに亘は短刀を握る力を強めた。ふるりと震えたのは、憤りか、それとも悲しみか。 「……洗脳されてても。死なないだけで自分達がこの人達を傷つけたんです」 朱螺が見上げた亘の姿。 「だったらその痛みと苦しみの引き換えに、自分は果てるまで彼らの命を守らなくちゃ割に合わないんですよ!」 雄々しく、それでいて気高さを失わない彼の姿に朱螺は笑った。 「へぇ、君の事もっと知りたいな」 「暴力が無ければ、穏健とでも思っているわけ?」 「あんまり目立って行動できないから苦労してるの!!」 氷璃が組み上げる魔法陣。だが神秘攻撃は嫌いだと朱里の顔はかえって青ざめていく。それが楽しいのか氷璃の業は冴えていった。 確かに三尋木兄妹の行っている事件は静かであり、手慣れているかのように無駄が無い。 「その手際とパフォーマンスだけは褒めて上げるけれど。それを覚えるまでにどれ程の飴と鞭を貰ったのかしらね」 「へ!?」 びくりと震えた朱里の手から校門が一瞬だけ手放された。だがすぐに持ち直し、そこで飛んできた琥珀の魔剣。 琥珀は朱里を抑えていたものの、氷璃へは攻撃は通ってしまう。魔剣で何度も身体から血を抜かれていく少女に彼は焦った。 「限界、無いのかよ!」 「有るよ! でもまだまだ倒れられないんだから!」 校門が琥珀の右腹に直撃し、入れ替わりの様に魔剣が朱里の喉元を裂いた。まだ倒れられないのは琥珀も同じであり、せめて彼女が戦闘不能になって『交渉材料』にしなければいけないのだから。 「朱里ちゃんはこういう事して楽しい訳じゃ、ないよね」 ルーメリアは癒しの光で仲間を護りながら、朱里を見た。此処に集められた人たちがこの後どうなるか、なんて三尋木の二人が一番よく知っているだろう。 「ルメは誰にも迷惑かけないで……みんなを楽しませる朱里ちゃんが見たいな」 ブリーフィングルームで見た、朱い兄妹の姿。輝いていた。きっとそっち方向の人間をしていた方が幸せなんだろうと、ルーメリアは小さな希望を彼女に伝えに来たのだ。 ふと、小梢の方へ朱里の目線がいった。 「前、そんなに睨んでましたかねぇ」 「え、ええ、いや……そう見えただけだから」 そういえば前回、朱里が裏野部から逃げる最中に小梢と目が合っていた。その時の事を小梢は気にしていたが、朱里のただの杞憂だったのかもしれない。 「仲、いいよね二人」 小梢と、小梢が護る少女を交互に見て、朱里はため息が出た。 「よう朱里、久しぶりだな。俺様のこと覚えてるか?」 「覚えてるよ」 木蓮がトリガーを引いて、また次の弾丸を込める合間に朱里の方を見た。 「お前の父親にはこないだも色々痛い目見せられたぜ、まだ痕がありやがる……今度は絶対こっちから噛み付いてやる! って、伝えておいてくれ」 「また何したのよあんの糞親父ぃぃ……!!」 何かとリベリスタが朱里に話しかけてきている事に朱里はなんだか違和感を覚えていた。何故、敵なのに友達のように接して来るのだろうと。 再び彼女の声が朱里の耳に入って来る。 「一緒に学校通ってさ、普通に楽しい日常を過ごす……魅力的じゃない?」 少し考えてからだったが、朱里は顔を横に振っていた。だが、其処に真意は無いのでしょう?とルーメリアは笑って返す。 「クリムさんが気になる……? なら、クリムさんも説得するの、娘さんをルメに下さいって!」 「え、そっち?」 ぱちくり、校門を振りながら朱里の目は大きく瞬きした。いたってルーメリアは本気なのだ。できればこんな戦闘で会いたくない、一緒に遊んで学校へ行って、そう、友達に――。 「お父さんも一緒じゃなきゃ嫌なら、頑張って改心させる! ……そこはちょと自信ないけど。期待して待ってて欲しいの。だから、それまでは……なんとか生きてね」 「あいつを? 改心? あはは、それはルーメリアちゃん、無理だよ……」 遠慮気味に笑ったルーメリアだった。直後、氷璃の魔力の砲撃が朱里を射抜いた――。 ● デュランダルであるからこそか。神秘の攻撃に脆い朱里は、氷璃の攻撃にしつこく貫かれ、ついに地面に膝をついた。 「隙みーっけた!!」 すかさず、琥珀は朱里を締め上げていく。気糸に気糸を合わせて、繕って。 「あ、ちょっ、何すんのよ!!」 「大人しくしてろって!」 バタバタと暴れる朱里だが、その四肢はもはや力が籠らない程に疲労している。琥珀が抑えながら、魔剣を朱里の喉元に突き付けたのだ。「い!?」と声をあげた朱里、何故かゲルトの方へ視線を送っては助けを求めてしまった。 「朱螺、止まりなさい」 「朱螺さんストーップです!!」 氷璃の声に、亘の声が重なり、朱螺はピタリと止まる。見れば、妹が捕えられていたのだ。頬から汗が流れ、動きが慎重になるようにしてカクカク動いている。 「朱螺、豪傑たる瞳を差し出してくれ。そうすれば妹は殺さないで返す」 琥珀は左手を伸ばした。だが朱螺は困った表情をしながら頭を掻いていた。 「は、ぁ、ぁぁぁぅ……!!」 静まり返った倉庫内で、朱里の脅える声だけが響いていた。催促するように琥珀の剣が朱里の首に少しだけ食い込んだ。 「朱螺」 もう一度、琥珀は問う。琥珀自信も人質として交渉材料にされた経験を持つ身だ。今、朱里の不甲斐なさと恐怖心はよく理解しているつもりなのだろう。 「あー……はいはい、そうなったら降参、これ以上何もしません、瞳も渡せばいんだろう? だから妹から剣をどけてね」 その言葉は信用できるのだろう、朱螺は持っていたナイフを地面に落した。それを見てほっとした亘はそのまま己の武器を仕舞う。 ポーチから出した、傷ついてヒビが入っている豪傑たる瞳。即座に龍治が破壊せんと弾丸を一つ放ったが、空中に投げられ弾丸を回避、直後再び朱螺の手に瞳は着地した。 「因みにコレ、壊さない方が良いよ。君たち、彼等に攻撃していたね?」 曰く、殺さずとも神気閃光やジャスティスキャノンで攻撃し、傷ついた一般人たちが一斉に理性を取り戻したらどうなるか、と朱螺は説明を加えた。そうだ、亘が周囲を見回した。神気などの攻撃の痛みは自分たちが一番よく知っている点だ。 「邪魔だから、どかそう。死なない攻撃ならオッケーってのはボクはどうかと思うけどね。 せめて然るべき処置を行った後に、夢から醒まさせてあげるべきだ。まあボクが言えた義理では無いけど」 目の前に居た亘に瞳を渡し、その光景を見た琥珀は朱里から刃引いて、拘束を解いた――瞬間に朱里は走り出した。 「うあああああん! 兄さあああ、ごわがったあああ!!!」 「よしよし……お前、仮にも七派のフィクサードなんだから、そんな弱音言わないでおくれよ」 兄の腕の中でわんわん泣く妹。そっと二人にルーメリアは近づいた。 「さっき話、お兄さんはどうかな?」 「ああ、父さんを改心させて……って話だったかな」 うんうんと首を振るルーメリア。それを見ながら朱螺は然程関心が無いように言った。 「やってみるだけやってみても良いんじゃないかな」 もはや此処に居る意味は無い。それよりアークの処理班が来るより先に撤退しなければならない三尋木。 そんなこんなで、そそくさと帰ろうとする朱里の首根っこをゲルトは掴んだ。 「ま、まだ何か……」 「朱里、お前その校門いつまで使ってるんだ? もう少しマトモな武器をクリムか朱螺に用意して貰ったらどうだ」 ゲルトは彼女が引きずっている校門を指差した。ゲルトと武器を交互に見た朱里は、段々と顔が赤くなっていく。 「別に良いじゃない何が武器だろうとーーーーッ!! 生意気よ、生意気生意気生意気生意気!!」 「じゃれるな、じゃれるな」 ゲルトは朱里の頭を掴んでしまえば、彼女の腕のリーチはゲルトに届かない。そして当たらないパンチを出し続ける朱里。 「それと、この前は言いそびれたがクリムにお前のことを聞いた」 ピクリと止まった朱里は顔をあげた。 「お前の事を愛していると言っていた」 ボンッ!と顔を爆発させた朱里は、そのままゲルトへ回し蹴りを放った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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