●白馬に乗った王子様 「きゃああああ! いい、いい男がいる!! ぜったい捕まえなくちゃ。もう年齢的にも後がないわ。この辺りで一発逆転いい男を手にいれるわよっ!!」 伊藤蘭子(28)は独身彼なしのベテランのBL漫画家である。今日は都内の某所で最近流行っている街コンなるイベントに参加していた。むろんただの街コンではない。 場所はBL同人即売会の会場。同人即売会と兼ねた合コンパーティだった。ただでさえ腐女子は結婚市場で人気がない。しかも蘭子の場合はプロのBL漫画家だ。 新しく知り合った男には自己紹介の時に容赦なくピンはねされてしまう。これまで自分の職業に誇りを持ってきた蘭子にとってそれは最大の屈辱だった。 今回の同人即売会の合コンパーティに賭けていた。ここに集まる男子は最初から相手が腐女子だということに抵抗がない者ばかりだ。もしかしたら優良の物件が見つかるかもしれないと期待しながら出かけたのである。 だが、集まったのは案の定キモヲタばかりだった。 同じくデブでモテないヲタクたちが腐女子なら相手をしてくれるだろうと大挙してきていたのである。蘭子は大いに失望して帰ろうしていた時だった。 「ハハハッハ、私の名はムスカ王子。さあ、約束しよう。金なら幾らでもある。今なら君たちをまとめて国王の妾にしてやろう。どうだ、君たち私の王国にやってこないか」 同人即売会の会場に突然として白馬に乗った王子たちがやってきた。真夏の盛りだというのに王子たちは豪奢な紅いマントを着てなぜか地味な眼鏡を持っている。 「俺と一緒にレッツ――メガネパニッシュ☆しょうぜ!!」 「私たちはドッチもイケる。どうだ、興味はないか?」 「きゃあ、その眼鏡素敵! 私と結婚してえ!」 腐女子たちが色めきたった。なにかのコスプレだと思ったらしい。ホモとその見た目の美しさ――眼鏡に惑わされた腐女子がムスカたちに黄色い歓声を送った。 ●眼鏡をかけると鬼畜 「今回の合コン相手は――金持ちのイケメン王子たちだ。どこかよくわからない王国からやってきたアザーバイドだがな。奴らは合コン会場に紛れ込んでいる。このまま放っておくと哀れなモテないアラサー達が騙されてD・ホールの中へ連れ込まれてしまう」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が手短に説明した。一刻を争う状況に話を聞いていたリベリスタたちも唾を飲み込む。 アザーバイドの王子たちはその端正な眼鏡顔で女性を魅了して虜にする。彼の住んでいる国は女性が慢性的に不足していた。このままでは国が滅んでしまうと危機感を抱いていた。 「お前たちには腐女子たちが奴らに誘われる前に囮になってほしい。つまり、彼らにメロメロになったフリをして奴らの注意を他の一般人女性から遠ざけるんだ。さいわい場所は合コン会場だからそういった行動も人目にはつかないだろう」 だが、一つだけ気を付けなければならないことがあった。奴らは『眼鏡』を装着するとまるで性格が変わって残忍になる。 「眼鏡をかけた奴らは攻撃力や防御力が増幅している。おまけに奴らの中には普段女に接する機会がない為にとくに男に対して執着心を持っているのもいる。今回も油断は禁物だ。すでにリベリスタの伊藤蘭子が囚われの身になっている。くれぐれも鬼畜眼鏡の餌食にならないように気をつけて行ってきてくれ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月29日(月)00:12 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●異様な熱気に包まれて BL同人即売会と合コン会場を兼ねている体育館はすでに異様な熱気に包まれていた。マッチョの男が濃厚に絡むポスターが会場の至る所に貼られている。 「まさかの腐女子会場始めて来たでござぁ……。さっきから何やら視線をひしひし感じるでござる。腐女子たちの熱い眼差しが――」 伊達眼鏡を装着した『家族想いの破壊者』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)が、背筋を震わせながら狭い人ごみの中を入って行く。虎鐡は困惑していた。 頻繁に腐女子たちの熱いまなざしを受けていた。それは無理もない。横には狭い道を密着して一緒に通ろうとする『OME(おじさんマジ天使)』アーサー・レオンハート(BNE004077)がいた。彼女達は虎鐡とアーサーの関係を深く読み込んで脳内でパラダイス浄土を作り上げていたのである。 「うわー……お姉ちゃんのお仲間が一杯。お姉ちゃんもこうなっちゃうのかな……。そうなる前に止めないと、ってまずは事件解決だね……ね、お姉ちゃん?」 『魔法少女マジカル☆ふたば』羽柴 双葉(BNE003837)が回りをきょろきょろとしながら傍らに居る姉を心配して言った。 「腐女子ってだけで即ピンはねってどう言うことなのかな。腐ってても女の子なんだから!! いいか、わたしたちを即ピンはね扱いする男なんて、みんなホモにしてやるんだからな!」 『腐敗の王』羽柴 壱也(BNE002639)は怒っていた。双葉が傍にいるにも拘わらずまるで耳に入っていない。妹は姉の服の裾をひっぱって、何とか一般人男性に飛び込んで行かないように抑えつける。 「同人誌販売ってすごい興味あるんだけど、婚活と一緒のイベントって聞いて急激にやる気なくしたわ。趣味と婚活って、相反するとまでは言わないけど、一緒にするのは違う気がするの」 『魔性の腐女子』セレア・アレイン(BNE003170)も文句を言った。壱也とはまったく違う観点から、セレアもやる気で目ギラギラさせた。すでに心はアザーバイドの敵ではなくて限定版の同人誌のほうに飛んでいる。 「BL同人誌ですか……。どっちにして過激なのは買えないのですよね、18歳未満だと。それにアニメ見てるファンとしては目を伏せたくなるものですよね」 『アカイエカ』鰻川 萵苣(BNE004539)は溜め息を付いていた。仲間の状態を見てていささか不安になっていた。ちなみにネットの自分のハンドルネームは「レタス」である。あのBLのベーコンレタスとは関係はないはずだ。来る途中、壱也とセレアに突っ込まれてしまって萵苣は慌てた。 「そういえば……さっきからあの二人の姿が見当たりませんね」 萵苣はとりあえずあの二人のことは気にしないようにした。どうせ後からカビのように湧いて出てくるに違いない。ひとまず会場の周りを見渡した。会場の真ん中のほうですでに騒ぎが起きていた。白馬に乗ったムスカ王子たちが白い歯を零して、会場にいる腐女子たちに熱烈にアピールを始めている。 ●三分間だけ 「そこのイケてるおにーちゃん、あたしと面白いことしない?」 セレアはロペスに向かってナンパした。パンク系のド派手な衣装でロペスの気を引き付ける。ロペスは不良そうで見た目はイイ女のセレアに興味を持った。 「おれに付いてこいや」 ロペスはすぐにセレアの腕を掴みにかかる。 「ついて来いって? ま、面白そうだしいいわよ。でもちょっと待ってね」 「なんだもったいぶりやがって」 「あ、ごめん、ちょい先に行ってて。ダチからメール来たからサ」 ロペスはそう言うならと先にD・ホールに向かおうとしたが、その前で足を止めて振り向いた。 「そんな手に乗る奴がいるか! 力づくでも連れて行くぞ」 「やってみなさいよ、私がそう簡単に落ちるとでも」 セレアはまんまと引っ掛かったロペスに対して、ニヤリと笑みを浮かべた。 (俺の役目は、一般人の注意を引きつけること、その為に、一般人男性と……その……ゴニョゴニョするわけだが、相手はよく考えないとな) アーサーは周りを伺いながら慎重に一般人の男性を物色していた。背中に生えた大きな翼が皆からの注目になっている。だれもそれがコスプレだと思って、とくに疑問には持たないが、やはりいかついオッサンの天使姿は異様だ。 「俺でよければ相手をするが……どうだ?」 アーサーはついに心を決めた。さきほど虎鐡と自分のことを妖しい熱心な目で見つめていた男に声をかけて片隅に移動する。 「俺の名は凸蔵という。私も貴殿のことが!!」 「お、俺のことを……お前の好きにしてくれて構わない……ああっん!! ダ、ダメだそこ、そこだけは! お、お釈迦様がナンマイダァアアアアアア!!」 巧みな手さばきを下半身に仕掛ける漢にアーサーは痙攣しながら絶叫した。即席の激しいホモカップル見たさに、その周辺にいた一般人がアーサーたちに釣られて片隅の方へ移動する。 「おぬしいい男でござるな……せ、拙者の好みにド直球でござるよ」 虎鐡がおそるおそるムスカを誘った。眼鏡を装着していることと逞しい筋力を見せつける。虎鐡を凝視したムスカは電光石火のごとく白馬から降りてきて虎鐡の手を強く握りしめた。 (我慢我慢でござ……頑張るでござる拙者!) 虎鐡は心の中で必死に己と戦っていた。なるべく穏便に帰ってもらうためにはここでムスカの気を最大限に引き付けなければならない。一般人に被害がいかないようにするには自分の頑張りが大事だった。 「おお、貴様なんて逞しい身体つきをしているのだね。ああ、その顔や筋肉、脚のふともも、俺の銃でぐりぐり押しつけたい」 ムスカは早速眼鏡を装着してボルテージをあげた。虎鐡の身体を押し倒して地面に屈服させると拳銃をお尻に付き立てた。 「ああ、らいおん……い、いたいでござぁ! いや、気持ちいいでござる。拙者もっともっと激しくしてほしいでござる!」 (ああ、ここにいるのは愛しのらいおんでござる。ムスカではなくあの可憐でピュアで清純でひんぬうで怒ると鬼のように怖いあのらいおんなのでござる!) もはや自己催眠だった。ムスカを自分の恋人だと思って接する。これはもはや忍耐修行のひとつだった。 「おぬしのその理知的な佇まい。そしてその気品さ……こんな所でこんな事をするのは勿体無いぐらいでござる」 今やってる事はいけない事だと諭すが、ムスカはそんなことは気にせずに執拗にお釈迦様を攻めてくる。 「三分だけ、三分間だけだから!」 迫りくるらいおん――ではなくやっぱりムスカの唇に虎鐡は頭がパニックになった。必死に相手はらいおんだと言い聞かせるが、ふと、すんでのところでらいおんの涙目になった哀しむ姿が脳裏に浮かんだ。 「ぎゃあああああああ――三分も待てないでござぁああああああ!」 虎鐡はついに隠していたはずの尻尾を掴まれて身の毛が震えあがった。怒りのあまりムスカの首元を掴むと渾身のメガネクラッシュを叩きつけた。 「目が、目がああああああああああああああ―――――」 ムスカは眼鏡を割られてD・ホールの中へ白馬と堕ちて行った。 「らいおん、拙者はなんとか貞操を守ることができたでござるよ……」 体力ではなく極度の精神力を使い果たした虎鐡はその場に座り込んだ。 ●宿命の28歳対決~ラウンド2~ 「アラせん、いいわ。見て御覧なさい。このワタシのプロポーションを!」 『ヴァルプルギスナハト』海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)は、ついに本気を出した。上から見下して、宿命の同い年のライバルである『箱舟まぐみら水着部隊!』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)に胸を張って協調する。 赤いシスター服が身体に密着して、海依音の均整のとれた形の良いラインが浮き彫りになる。意外にもバランスの取れたスタイルにアラせんは元よりエドワード&虎鐡も釘づけになった。とくに虎鐡は突き出た胸を凝視して鼻の下を伸ばす。 「ふ、勝ったわ!」 海依音は宣言した。ライバルに自分の方がスタイルがよいことを見せつけてエドワードにもアピールする。 「素敵な方過ぎて、ワタシ目眩しちゃいそう」 海依音はあざとい演技の陰でソラにだけわかるようニヤリと笑った。エドワードのしつこい誘いを断り続けて海依音は切り札を出す。 「貴方と別れるのは本当に悲しいことなの。でも、違う世界でお互いを思い合えるなんて素敵じゃないですか? またここに来ることがあれば……約束をしましょう。次の逢瀬であなたと一緒になることを――だから今はお預け、ね?」 エドワードの唇に人差し指を触れさせて海依音は会心の勝利を確信した。誰もが海依音の勝利だと思ったその時だった。 スタイルの良さで圧倒的に負けたソラは諦めなかった。 なんとかして貧相な身体という不利を挽回しなければならない。 若くて……気の強い女で不良系女子を演じてメロメロになったフリ。気の強い女で不良系女子って……もしかしてツンデレ? ソラは思いついた。 「王族だか何だか知らないけど、あなた達は私に釣り合うのかしら?」 ソラがエドワードたちにきつい言葉をかける。エドワードは急に方向転換してソラに向かった。おあずけを食らって海依音に不満を覚えたエドワードはソラの方が落としやすいとみた。横から熱い視線を送っていたアドルノも接近してくる。 セレアが陣地作成で離れてフリーになったロペスも釣られてきた。 「アラせんはどこかの妃なのかい? 俺にそんな口をきけるなんて、なかなか大した女……見た目は子供だけど」 エドワードは海依音からターゲットを変えた。おぼっちゃまで育ったエドワードはこれまで女にこけにされたことはなかったからだ。 「ふ、ふーん。及第点てところね。き、気に入ったわ」 ソラは子供扱いされたことにブチ切れそうになったが、なんとか我慢する。 「アラビッチ。ここは一時休戦して協力するべきじゃないかしら」 ソラは勝ったように宿命のライバルに余裕の笑みを浮かべ、握手を促した。海依音は手を突っぱねてロペスに向かった。 「アラせん、次は絶対に負けないわよ」と捨て台詞を遺して。 ソラは宿敵の海依音を退けると、ついでに不意を付いてエドワードにグラスフォッグで畳みかけた。これにはエドワードも堪らない。 「さっき子供だと言ったこと、後悔させてやるわ」 エドワードは黒龍を作りだして、ソラに反撃するがそれでも倒れない。ソラは怒りを込めた渾身の一撃をエドワードに食らわしてホールに叩き落した。 アドルノはエドワードがホールに帰っていくのを陰から見ていた。 幼い頃からひそかに好きだった。だけど、男の自分がどうして彼にアプローチをしていいかわからない。 「こんにちはアドルノさん。どこ見てるのかな」 壱也がアドルノに声をかけた。 「わたしのお相手はしてもらえないのかな? と言っても、興味持ってもらえなさそうだけど」 壱也はアドルノが考えていそうなことが手に取るようにわかった。男が男に恋をする気持ちを誰よりも理解しているのはほかならぬ壱也だ。 「辛い恋をしてるのね、わかるよ。かつてわたしにもそんなときがあった」 アドルノの恋を応援したいと言うアピールをする。 「この世界には女性はたくさんいる。応援してくれる人はいると思うけど、ライバルの方が多い。きっとアドルノさんがおもいを告げるべき場所はここではないと思う。幼なじみなら思い出の場所も大切なものも、ここではないよね?」 アドルノは壱也の言葉を噛み締めるように何度も頷いた。トドメを刺すように壱也はさらに言葉を畳みかける。 「わたしも思い出のあるこの世界を大事にしたいから。あなたにはあなたの世界があるよね。さあ勇気をだして!」 アドルノがD・ホールへ帰るのを壱也は優しい笑顔で見送った。 ●新しい友達 「あれ、お姉ちゃん? ……いない。こうなったら私一人がビスマルクを相手にしなくちゃいけない。でも合コンの経験なんてないしどうしたら」 双葉はビスマルクに話しかけようとして姉がいないことにようやく気がついた。すでに姉はアドルノの方へ話しかけに行ってしまっていた。 仕方なく覚悟を決めてビスマルクに声をかけた。大人しめの青いワンピースで気をひく。 だが、今日の双葉のワンピースの丈は結構短かった。おまけにスタイルが良くてイイ女の雰囲気が出ていた。双葉は自分では意識してはいないが、けっこうモテそうな外見をしていたのである。その点は姉とは大違いだった。 「俺はもっと苛められそうな……か弱い女が好きなんだ!」 外見だけで判断したビスマルクが双葉に向かって鞭を放ってくる。攻撃されてようやく双葉も本気を出すことができだ。AFから装備を出してくる。 「木漏れ日浴びて育つ清らかな新緑――魔法少女マジカル☆ふたば! 乙女への狼藉を止める為、参上!」 両手を胸の前で回転させてポーズを決めつける。 「えっと……ノリノリじゃないよ。恥ずかしいんだからね!」 双葉は土壇場で言い訳を試みるが、誰もあっけにとられて信じてはくれない。そんな双葉に対してビスマルクもなんて答えていいかわからなかった。 「我が血よ、黒き流れとなり疾く走れ……いけっ、戒めの鎖!」 双葉の葬操曲・黒にビスマルクは突然襲われて叫んだ。 その隙に、萵苣がファミリヤーのヒキコーモリを使ってようやく鞭に縛られていた伊藤蘭子を発見した。 「ありがとう。貴方もあの人たちの仲間?」 「大丈夫ですよ。安心してください。少なくとも僕だけは常識人ですから」 萵苣は蘭子の鞭を解いて身の安全を確保した。自分だけはあの仲間たちとは違うことを必死にアピールして誤解をほどく。 辺りにいる腐女子やヲタクたちを避難誘導する。萵苣はヒキコーモリで発煙筒を回収して会場を駆けた。 双葉とビスマルクが互いに攻撃を始めたのを見て、間に入って止める。 「待った!」 眼鏡を装着しようとしたビスマルクに叫ぶと、後ろからノックバクシードをインストしたタブレットで後頭部を叩きこんだ。 「ぎゃあああああ――」 ビスマルクは頭を割られてホールの中へと堕ちた。仲間の双葉ですらびっくりの奇襲攻撃に敵はなすすべもなかった。 「ああ、どうしてくれよう。どうしてくれるんですか。アラせんに負けたなんて、許せない。次回は絶対にリベンジしてやるんだ。こんちくしょー」 海依音がロペスに襲いかかった。怒りのジャッジメントレイを放って問答無用に攻撃する。陣地作成から戻って来たセレアが、チェインライトニングでロペスを巻き込んだ。 「腐女子アラサーの力を思い知らせてやるわ!」 ロペスが伸びたところをセレアが渾身の蹴りを食らわしてホールに叩き込む。 「アラせん、そこ邪魔。ブレイクゲートできないじゃない!」 「ブレイクゲートするのは私よ、アラビッチ! そのダサいシスター服、還暦をすぎたBBAが着る赤いちゃんちゃんこね」 「くっ! アラせんこそ、スク水やめたらいかがです? ロリ路線を狙っているのかもしれませんが、同い年のワタシから見たらキモすぎです」 「この負け犬BBA! 穴に一緒に突っ込むわよ」 醜い争いを繰り広げて、28歳コンビが結局仲良くブレイクゲートした。 「王子様達も国を助けるための死活問題だったわけですよね。少々可哀想な気もしますが、オタクイベントに来る人にこの世界に未練の無い人は居ないと思います。まあでも向こうでモテモテになるのなら行っても良かったかなぁ」 萵苣はやれやれと言った感じで肩の荷を下ろした。横に居た蘭子も自分もあっちの方へ行ったほうがよかったかしら、と呟く。 「虎鐡、飲みにいかないか? 嫌なことは飲んで忘れるに限る」 「ああそうでござるな。今夜はおぬしにとことん付き合うでござるよ」 アーサーと虎鐡は肩を組んで仲良く二人で一緒に帰っていった。いつの間にか仲良くなったオヤジ二人に、居合わせたリベリスタの誰もが疑いの視線を向けた。 「会場限定モノとかは確実にゲットしておかなきゃね。婚活も婚活で大事だけど、即売会も大事よ」 ソラはすでにセレアに先んじて限定版を買い占めていた。おまけにイケメン一般男性と話し込んでいる。あまりに抜け目のないライバルに海依音は溜め息をつく。即売会も合コンも存分に楽しんでいるアラせんに、今回だけは負けを認めるしかないわね、とつぶやく。 「あとはお姉ちゃんと帰るだけ……って見て帰るの?」 お姉ちゃんに文句を言いながらも、双葉はチラチラッと会場の同人誌の群れやポスターをさきほどから盗み見していた。 「さー終わったー。買い物してかーえろっ。あ、そーだ、蘭子さん、わたしと友達になろっ。あとアークにおいでよっ」 壱也は蘭子に向かって手を差し出した。無邪気に微笑みかける壱也に対して蘭子は驚いて目を丸くした。 「あのね、貴方は未来を見ることができるでしょう? そんな人がたくさんいる組織にワタシ達は属しているの。ほら、そのBLっていうの? そういうのが好きな子もセレア君とかたくさん居るわ。自由に好きなこともできますし、こんな怖いことがないようにワタシ達のところに来ませんか? ワタシもお友達になりたいわ」 海依音も同じ28歳の同級生の蘭子に声をかけた。蘭子は一瞬とまどったが、差し出された壱也と海依音の手に自分の手を添えた。 「ありがとう。すごくうれしい――ぜひアークに行かせて貰うわ」 涙目になりながら蘭子は友達になった二人の手をぎゅっと握りしめた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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