●アーティファクト建造物『黒木屋』 この物語は、とある建造物五階のフロアだけなんかアーティファクト化したことから始まるものでございます。 その名は『黒木屋』。入店した客に元気よくラッシャーセーと言いければいつの間にやら注文を取りにけり、驚くべき速さで注文した酒や料理を持ってくることいとおかし。 そのカクテルは薄く料理も雑で唐揚げは適当に丸揚げされておる始末。しかしながら料理のクオリティに文句を言う空気読まずはおらぬもの。空の青さや雲の白さに文句をつけるようなものだと受け流してこそ現代人にございます。 さてかようなアーティファクト黒木屋がなぜ放っておけぬのかと申しますれば、はじめはフロアの奥の宴会用座敷席だけであったところが徐々に浸食し今やエレベーター下りてすぐのレジ前までアーティファクトに飲み込まれる事態にあり、このままではビルごと呑まれてしまい兼ねぬという事態。 この世の悪を滅ぼすため、この世の歪みを正すため、リベリスタたちは夜五時から深夜三時に至るまで飲み尽くし食べ尽くし、しまいには会計に出てきたEフォース支店長約一名を一行で瞬殺して帰るのでございます。 しかし営業時間ギリギリいっぱいの長期戦。いつまでもマイペースにしていては気持ちも空気も持たぬもの。最後まで場の空気を持たせるべく、時に盛り上げ時に笑い時にはしゃぎ時に吐く気概が求められまする。 気高き勇敢なるリベリスタのみなみなさま。 どうか悲しきアーティファクトを沈めてくださいますようお頼み申す。 「ってことで予約いれといたんで、4649!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 11人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月23日(火)23:13 |
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■メイン参加者 11人■ | |||||
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●相談期間に入ったと思ったら既に依頼が始まっていたでござるの巻 これまでのあらすじ! 突如として始まった『ドキッ☆リベリスタだらけの黒木屋飲み会』は神か酔っ払いの悪戯により10人で予約した店に11人で押しかけるという暴挙から始まったがどうせコース頼んだわけでもないし座敷に押し込めば11人くらいいけるんじゃねえのという雑な発想で開始と相成ったわけだがまさかの合コン男女比に『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)が動揺しはじめ『ヴァルプルギスナハト』海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)と『名状しがたい突撃レポーター』葉月・綾乃(BNE003850)はアラサー女子の宿命を体現するかの如く二十歳にサバを読み壮絶なチキンレースをはじめるのだがよく考えたらこの場のフリー男子ってSHOGOがSINSHI-styleかぽっちゃり紳士くらいなモンなのでどう見ても誰も幸せにならない結末しか見えなかったが当の『ウルトラ紳士』アルバロン・ヴァルハラウ・ブラッドルシファ(BNE003552)は『ヒュー!』しか言わないしリアルに21歳の『レッツゴー!インヤンマスター』九曜 計都(BNE003026)も悪のりして『ヒュー!』しか言わなくなるし既に女とくっついてその辺がっつかなくなった二十代中盤の『神速』司馬 鷲祐(BNE000288)と『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)は(あらゆるいみで)いつものように普通飲みをし始めるからもうわけがわからないよ状態で『三高平の紳士』巴崎・M・木市(BNE003867)と篠ヶ瀬 杏香(BNE004601)がまあかろうじて場の空気を維持してくれていて『息抜きの合間に人生を』文珠四郎 寿々貴(BNE003936)に至ってはもう私は隅っこの隅ちゃんでいいですよとばかりに壁際で一人のみをしだす始末でトドメとばかりに日夜サラリーマンの間で行なわれる先輩ヨイショで『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)がアラサー女子たちを煽るもんだからいつの間にか脱ぐの脱がないのという泥沼のような飲み会へと発展したのだった! 「はづきあやのにじゅっさい! ぬぎまーす!」 「イエー! はい脱ーげっ、脱ーげっ!」 ワイシャツのボタンをおぼつかない手つきで外し始める綾乃。 快は顔を赤くして手拍子をし始めた。 男性陣の反応は大体似たようなものである。 だがそれをおもしろく思わない女がいた。SHOGOが『おふぉー!』とか鼻の下を伸ばした声をあげたところで、海依音がガターンと立ち上がった。 「いいの綾乃、そんなに崖っぷちにたたなくてもいいの! っていうか無理すんなBBA!」 「誰がBBAだBBA!」 「BBAって言ったほうがBBAなんですー!」 「それただの自爆ですーぅ!」 「だってアレでしょ、子供の頃やってた特撮ってRXでしょ!? 違うなら見てたライダー言ってみましょーよほらー」 「そっちだって猿岩石がコンビだった頃に学生やってたんでしょ?」 アラサー女子が違いを蹴落とし合うという逆チキンレースを開催しだした。 「まあまて」 と、二人を牽制するように両手を挙げて鷲祐は言った。 「お前たちは分かっていない。『脱げばよかろう』などという風習に振り回されてとにかく全裸になるのは3DTたちだけで十分なんだ。いいか? 脱ぐというのは変化なんだ。徐々に解き放たれる色気と、増え行く期待感なんだ。古きゲーセンで脱衣陣取りゲームにあそこまでコインが投入されたのは、じわじわとはがれてゆく服に興奮を高め、より高みへと上り詰めるためなんだ。しかも自分で脱ぐならなおのこと……!」 運ばれてきた串カツを豪快に食いちぎり、ろくに噛みもしないで飲み込むと机を拳で叩いた。 「『半脱ぎ』! これを厳守してもらいたい!」 「鷲祐くんステイ」 「……はい」 ワントーン低くなった海依音の呼びかけに、鷲祐は串カツ片手に正座した。っていうか座敷席だったのであぐらが正座に変わっただけである。 揚げプリッツみたいなやつを振り回し、こんこんと語る海依音。 「いい? 女の子は水着以外で肌を晒しちゃだめなの」 「はい」 「時代は着衣エロなの」 「はい」 「おっぱいだけに満足しちゃだめ。足やおしり、腰やにのうでをちゃんと見ないとだめでしょ、もうオトナなんだから」 「はい」 「その点たぢま作の水着祭りはよく分かって――」 おいおいこの場はツッコミ不在か? 誰も暴挙を止めちゃくれないのか? 一番場の空気を読んでくれそうな木市さんもさっきから焼き鳥のクシから肉を外す作業に没頭しているし、たまに視線をあげるかと思えば全員のグラスの減り具合を注視してばかりで、公然としたセクハラが行なわれようが黙ってスルーしちゃう構えだった。 っていうかブラック企業の社員が上司連中と飲みに行った時みたいな、完璧な存在感の消しっぷりだった。ゆえに台詞という台詞がない。 消しっぷりと言えば寿々貴さんもたいした物で、さっきからこんこんと着エロと半脱ぎの境界線はどこかについて討論する鷲祐海依音の二人にいつの間にか混ざり、『うんうん』『わかるー』を適度に挟み込むという都市迷彩みたいな紛れっぷりをみせていた。 が、そんな世隠れ上手な彼らとは違ってイマイチ自分を制御しきれない不器用な子がいた。誰かって、ベルカである。 ビールジョッキ片手にせわしなく周囲を観察するベルカ。 このリベリスタ業界に入ってからそう短くは無いが、この先長くアークでやっていくとなると仕事のできるできない以前に人付き合いにも気を配らねばならない。現場で一緒になったとき『うわっ、あいつかよー』とか思われたくない。できるだけ気持ちよく働きたい。それは人生の生きやすさにもつながるものだ。ほんとそれ無視するとロクな目に遭わんってさっき混ざってきた12人目が言ってた。 「しかし出来うることは限られている。アークの守護神こと新田快はトイレから帰ってこないし、有名どころもちらほらいるけど話を合わせづらいひとばかりだ。アルバロンに至ってはヒューしか言わないしな」 「ヒュー!(俺は無口で美しき肉体を持つ紳士。こうしている間にも家の鍵をちゃんと閉めたかどうか気になっている、そんな葛藤と孤独を抱えた男だ)」 「いきなり脳内に直接話しかけないでください」 「ヒュー!(ファミチキください)」 「同志計都っ、こいつまで……!」 「おっと、焼き鳥の追加が来た来たーっと」 運ばれてきた焼き鳥の盛り合わせを手に取る計都。 ここは気配りの勉強になるかと思ってじっと観察していると。 「ばりむしゃあああああ!」 二本掴んで一気に食いちぎった。 「うめー! 焼き鳥ばりうめー!」 「と、取り分けないのか!?」 「串に刺さったモンをわざわざ取り分けるとか意味わかんないッス! そんなにバラしたきゃ青椒肉絲でも食ってろ! ヒャッハー、アルバロン呑んでるッスかー!?」 「ヒュー!(ぷっはぁ! ワインのボトル飲みまじうんまぁぁぁい!)」 「ヒュー!(よっしゃそんなアンタにビールと日本酒を割ったファンキー飲料を振る舞ってやるッスよ!)」 「ヒュー!(ゴチソウサマデェス!)」 「オソマツサマデェス!(ヒュー!)」 こいつらは参考にならん。 次にちらりと杏香に目を向けてみた。 今日がリベリスタとして初仕事という話だったが(よりにもよってなぜこの仕事を選んだのかという話でもあったが)、水商売やギャンブルで生計を立てていると聞くので、もしかしたら場の読み方はすごいのではないか。 現に杏香は流れるような手際で水割りを作ると、SHOGOのグラスが空になった直後に交換していた。SHOGOもSHOGOで水のようにがぶがぶ呑むもんだから酒の減りは順調だった。 「マジでー。15でキャバやってたのー? 大変だったでしょ」 「そーね。将来だの生活だの説教してくる嫌な客がいたもんよ。どーも日常的に見下されてる奴って、水商売やってる女を見下したがる癖があるんだよな。こんな所で働いてないでちゃんと仕事について稼げばいいとかそういう? お前の倍は稼いでるっつーの」 「へー、マジデジマー? でもSHOGO実はキャバクラとかあんまり経験ないんだよね。普通俺らの年代って金そんな使わないから、会社の上司に連れられてとかじゃないといかなくね?」 「まあキャバクラ自体がバブルの遺産だしな。でもまあ、嫌な客ほど気持ちよく搾り取れるって考えると楽よ。『そーゆー仕事』って割り切れるもん。逆に景気よく金だけ落として帰って行く人はつらいね、その金でもっとマシなことできるじゃんって思う」 「ふーん」 水割りをがぶ飲みしながらチラチラと鷲祐にアイコンタクトを送るSHOGO。 『シバちゃん、今日は必ず女の子テイクアウトして、ノンケ大臣返上しような!』 『それ返上したらゲイになるんだか』 『ノープロ☆』 「ねー杏香ちゃん、あいつとかどう? シバちゃん。クールでメガネくない?」 「ああ、ああいう奴はアタマんなかじゃヤることばっか考えてそうだよな」 「ひでえ! あ、ちょっと席離れるね!」 などと言いつつ一旦席を離れ、『ごめんちょっと詰めてねー』とか言いながら海依音を鷲祐にぐいぐい寄せていった。 鷲祐的にはファイナルファイトでアンドレ寄せられてるようなもんだが、深くは考えないことにした。というか考える脳がもう無かった。 身体を寄せつつぺしぺしテーブルを叩く海依音。 「じゃーもー鷲祐くんが脱いでくださいよ! 体現してくださいよ!」 「えー? しゃーねーなー」 と言ってシャツを徐々にめくっていく鷲祐。 トイレから戻ってきた快がまた『脱ーげ! 脱ーげ!』とコールを始めた。 はたと部屋の奥に設置されたテレビに気づく快。 「あ、そうだ。プロレス見ようプロレス」 「おー、好きなんだよアレ」 操作盤を探してスイッチオン。 すると。 『なんでもかんでもできると思うなよ!?』 リングの中心で白いスーツの男にバックドロップきめた赤スーツがカメラ目線で叫んでいた。 「あれー? 都さんの依頼見れると思ったのにー」 「ああ、こんなゴミみたいな依頼に入るくらいならプロレスの方が百倍おもしろいと思いますけどね」 「ゴミってあんた……所で飲んでるかい? 原稿なら明日書けばいいよ。今日書けるものは明日書ける!」 「そう言って書けたことないですけどね」 「ふむ……」 一通り場を観察したベルカは、おもむろに立ち上がり。 「ロシア代表ベルカ! イッキいきまーす!」 「イエー!」 「ハーラショー!」 酔っ払いどもの空気に身を任せることにした。 さて。 終電も無くなって夜も更けた深夜二時頃。 六時間以上飲みまくった大人たちがどんな有様を晒すのかなど、オール飲みを経験したことが一度でもあるなら想像がつくというものだろう。 なので彼らの名誉のため、ここはサウンドオンリーでお届けしたい。 「あっ、唐揚げの野菜残ってる。もーらい。お皿下げてくださーい」 「おっとお嬢さんは二十歳を過ぎていたかな? いやなにあまりに見目麗しく内面から若さがあふれているからね。念のために年齢確認をしておかないと」 「それさっきも言いませんでした?」 「おやそうだったかな。失礼」 「あー、じゃー、寿々貴さん踊るよー。アイドルの歌と踊り覚えてるからー。最近のならなんでもいいよー」 「じゃあピンクレディー」 「おにゃんこ」 「人の話聞いてないよねー」 「そろそろサッパリしたもん食いたいねえ。お茶漬け頼んじゃうかい?」 「いいねいいねー。じゃあ俺シャケ」 「梅一択」 「そういやそろそろ閉店時間じゃね?」 「終電無いな……二次会どこいく」 「ファミレスでだらけます?」 「いや、カラオケだろ」 「そこの12人目もいくっしょ?」 「ピロウズしか歌わないですけど」 「何それうっざ!」 「ところで新田は?」 「トイレの守護神やってるよ」 「Operation TGN(Toire no Guardian Nitta kai)を発動する!」 「といれの守護神さまやでぇ……お、おぅえ……!」 「ベルカさん、トイレ行こっか」 「ヒュー!」 「ヒュー!」 「「ヒュー!」」 「あっそーだ。そろそろアレやろ! 楠神ゲーム!」 「説明しよう! 楠神ゲームとは全員で1から100までの数字と無茶ぶりを出し数字の平均値から一番遠かった人が楠神となり、全部の無茶ぶりを叶えるいじめのようなゲームだ!」 「みんな書けたかなー? それじゃあオープン! 楠神だーれだ!」 「俺1。『この飲み会についてどう思うか全力で答えろ』」 「ただいまー、俺28ね。『今すぐナビ子さんに電話して口説け』」 「「ヒュー!」」 「SHOGOは69! 『近い人にヒゲダンスで愛を語る』」 「AKの47ー! 『シベリア買ってこい!』」 「じゃあ俺は64かな。『左隣と抱き合う』で」 「70だな。『時村にコクれよ』」 「48。『逆立ちして鼻からビール飲んで』」 「99。『胡瓜でポッキーゲーム』」 「葉月綾乃、20歳です! 数字は0x100! きゃ、16進数! 10進数で256! 私が大様決定ですね! じゃあ独身で金持ちの男は今からホテルで既成事実……」 「綾乃さんこれ王様ゲームじゃない」 「えっ?」 「では今から、綾乃さんにはナビ子と時村にコクった挙げ句左隣のアルバロンと逆立ちで抱き合って鼻からビール注がれつつキュウリでポッキーゲームをしたあと髭ダンスで愛を語りながらシベリア買ってこい!」 「無理だあああああああああああああ!!」 『あっ、そろそろ閉店時間ですんでお会計のほう』 「死ねええええええええ!」 「――そう、速さこそが誇り」 「鉛玉で払ってやんよ!」 「ヒュー!」 「も、もうむり……オロロロロロロ」 「同じ過ちは繰り返さない、それが紳士だ」 「じゃあこの後カラオケね。シダックスでいい?」 「朝までやるならジョイがいいですね」 「うっざ!」 「ワタシ気づきました! この後カラオケでエッチな歌披露すれば男なんてちょろいって!」 「無理すんなBBA」 「黙れBBA」 「さーてそんじゃあ、次の店いくかね」 かくして11人のリベリスタとその他は、夜闇に暮れる町の中へと消えていったのだった。 この後流れ込んだカラオケボックスでいかなる狂乱が巻き起こったかについては、色んな権利がからみそうなのでご想像にお任せしたい。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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