● 春風に乗って、ふわふわり。 ふわふわ飛んで、落ちた先。 此処が僕の、おうちで墓標でそれが運命。 背の高いヒマワリさんはいつも言っていた。 “ライオンと呼ばれるのなら、私の方がずっと似合ってる”って。 知ってるさそんな事。僕はどうせ、ちっぽけなものですから。 でもねヒマワリさん、今日の僕を見てよ。 こんなに大きくて強くて、ライオンと呼ばれるのに丁度いいでしょう? そう言って私は、ヒマワリさんを踏みつぶした。なんだ、小さいなあ。 ● 「キク科タンポポ属、学名はTaraxacum Cass、日本名はタンポポ、英名は……」 リベリスタが部屋に入るなり、分厚い図鑑を広げ『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は喋り始める。 花がお好きなお年頃、ということだろうか。幾らか楽しそうに読み上げるイヴの姿に、リベリスタ達は暫し和まされる事となった。 「――今回皆に任せたいのは、出現したエリューションの討伐だよ」 長い長い説明の後、ひとつ息を置いてイヴはきりりと目元を締めて、手元の基盤を操作する。 軽い電子音。モニターに映し出されたのは、一見普通な、一匹の雄ライオンだった。ただ普通でないのは、その毛の色合いと、異常な大きさ。 毛並は肌色よりか濃い黄色、その体格は映像で見るに人間の背丈の数倍はある。 「元々は、道端に自生していたセイヨウタンポポみたいだね。革醒した理由は解らないけど、放って置けば人を襲う事になるから、対応をお願い」 えらく強面になりましたなぁ、と零すリベリスタの言葉に、イヴは“それ”と指をひとつ立てて。 「見た目だけじゃないの。元々が植物なんてことは、忘れて良い思う。 このエリューションは、フェーズ2の典型的なパワータイプ。 体躯は相当強化されてるし、速度も結構あるね。そして何より、この子が持つ鬣が厄介でね」 配布された資料の一項を示し、イヴは休まず続ける。 「タンポポの花の部分にあたるのかしら、ライオンのあらゆる行動の度にこの鬣は抜け落ちていくの。 禿げるだけなら良いんだけど、抜けた花弁はどれもエリューションになるわ。弱いんだけど、凄い量だから気を付けて」 お任せあれ、といつもの調子で部屋を後にするリベリスタの背に、もう一つだけ、と声が響いて。 「雄ライオンより、雌ライオンの方が強いんだってね」 そう言って、イヴは彼らを見送るのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ぐれん | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月30日(火)23:22 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 燦々と輝く太陽、騒ぐセミ達。日本の夏はやってきた。 じりじりと焼く様な日差しの中、ぞろぞろと移動する影が八つ。 「うう、暑いよお……っ!」 その先頭で、ふわり。スカートの裾を揺らしながら歩くのは『雪風と共に舞う花』ルア・ホワイト(BNE001372)。 彼女の故郷はは地中海沿岸、イタリアのつま先にあるマルタ共和国。一年中暖かな潮風が訪れる島で育った彼女でさえも、梅雨明けのじめっとした日本の暑さには耐えきれぬご様子。 こうも気温が極端と、向こうじゃ蜃気楼のパーティだろうなぁ。そんな事を考えながらぱたぱたと仰ぐ小さな手だけが、彼女にそよ風を送っていた。 怠そうにぺたぺた歩くルアの傍を汗一つ流さず駆けるのは、お隣のイタリア出身、『レディースメイド』リコル・ツァーネ(BNE004260)。 それもその筈。多少の暑さなど、メイド道を極めんとするリコルには思考の邪魔には成り得なかった。 憂う様に溜め息を零し、目線は遥か遠く蒼い空へ。幼少の頃から誰もが知る小さく強い花に、思いを馳せる。 旧き人々も、春先の畦道に咲き誇る小さな黄色に、ああ、そんな季節かと安らぎを覚えたのだろうか。 「タンポポは、毎年変わらず春を告げてくれる慎ましくも逞しい花……」 そんな花だからこそ、こんな形で誰かに牙を剥く獣であって欲しくはない。あの方の瞳の様な澄んだ色を、運命の悪戯のせいで染めて欲しくは無かった。 「……そして何より、健気で美しい花だと思いますよ」 リコルの小さな呟きに続け響く、爽やかな声。ええ、と振り返る先には『変態紳士-紳士=』廿楽 恭弥(BNE004565)。 何処で詰んだのだろうか、丁寧に“例の白い布”で切り口を包んだ一輪のタンポポをを口元へ運び、続ける。 「親元を離れ、綿毛が一粒で空を飛び旅をする。……素敵じゃないですか、僕はヒマワリの様な堂々とした女性も好きですが、慎ましく健気な女性も好きですよ」 花も女も、夜空を彩る星々も全て。それぞれ違った魅力があるから面白い、美しいんですよね。 誰が為に紡いだか。中空に囁くその顔は爽やかで涼やかであったが、その恰好も相まって尋常じゃない汗が額を流れ落ちる。 雨の日も風の日も、湿って暑い今日も、恭也はあくまで紳士、否、“つづらん”を貫くのであった。 「――ええと、あれですかね」 イヴの情報にあった地点に接近。リベリスタ達の視界の先でのっしのっしと闊歩するのは、討伐目標の獅子の姿。 颯爽と歩く強靭な体躯の周りを、小さな仔ライオンが随伴する。少々の縮尺を除けば、丁度家族の様で。 その姿を確認した『落ち零れ』赤禰 諭(BNE004571)は角袖の外套から両手を出すと、ふむ、と顎に手を添えて一つ。 「見てくれは上々、元々が植物な割に良く頑張っていますね……」 そんなことを零しながら、諭は異空間から幻想纏いを通じて巨砲をその手に掴む。がちゃり、重々しい金属音を立ててそれを構えて、続けた。 「しかし、及第点はあげられませんね、小学生の工作ですか。自由研究の課題なんですか?」 風に吹かれた程度で剥げて、剥けて。本当に下品ですね。運命の神に愛されたんでしょう、せめて完成形に生まれ変わって来てください等と呟く内に、戦闘準備は完了。 鬱陶しい雑草と一緒に灰塵と成すのが丁度良い結末でしょう、と添えて。 「凄い立派でほんとにホントにライオンだ、なんて微塵にも思ったりしません」 でかすぎちゃってどうしよう、とは言わないが不機嫌そうに零したのは、『アカイエカ』鰻川 萵苣(BNE004539)。 強くなりたい、そう思うところまでは共感する点があって。それでも彼女は許せなかった。突然勝手に与えられて、強くなった力をただ行使する汚さが。 獅子の威を狩るたんぽぽ、なんて言えた物ではないけれど、それで強くなったつもりの貴方を、認める訳にはいかない。 ふう、と一息零すと手元のタブレットと子気味良く叩いて起動。文明の利器たる電子魔道具をその手に。きりりと目元を尖らせて。 最弱には最弱なりの、ウツボじゃなくて鰻でも。にゅるにゅる成りに出来る事があるのだと証明してみせると、気合を入れた。 「……アレレ、タンポポかと思ったらビースト風情デスか」 各々に得物を構えるリベリスタの列を抜け、スタスタと歩き始めた『飛常識』歪崎 行方(BNE001422)。 茹だる暑さが相まって、普段から虚ろな彼女の瞳は光を失いかけていた。しかしその思考は、相変わらずで。零した溜め息には、隠す様子もない殺意が込められていて。 そして同時。行方が向けた殺気が届いたのか。獅子は此方に気付くと、まるで“僕は此処だ”と、自分の存在を示す様に、吼える。 「さあさあ切り倒すデスヨ。ばっさりすっぱり後腐れなく、あるいは朽ちて地に返すだけ」 あはッ、と漏れる乾いた笑み。こんなあっつい場所に引っ張り出してくれやがって、対価はてめェの命でトントンDEATH。そんな声も聞こえそうで。 そして響く鬨の声。雄々しく上げた大声と、放つ火線が交差する。 ● 「さあいくよ……ッ!」 掛け声と共に、ルアは風となり疾駆する。少女の身体は、暑さにやられて未だローギアであったが、それは二秒前迄の話。 膝元からか指先からか、駆ける電流が身体中のギアに火を入れる。クランクシャフトが回転し、溜めた力に点火する様に。一歩一歩地を蹴る度に加速。周りの風景が遅延する程の速度に乗る。 一挙に突貫するルアを迎撃しようと迫るライオン達。だが。 「來來氷雨!」 「いかせて貰うぜ、かわい子ちゃんよォ!」 突如ごう、と響く風の音と共に仔ライオンの姿は大嵐に呑まれ、凍り、無残に散って。巻き上がる風の先、翼付きの影が、二つ。 丁度リベリスタの中衛。暗黒を纏う竜巻を起こしたのは、低空を保ち羽ばたく『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)だった。 手にした杖をくるりと回し、強気に目を輝かせて。その口元には、好戦的な彼女の気性故の笑みが浮かんでいた。 変わって後衛、とらの後ろでやや中空程度でふわりと羽ばたくのは、獅子は獅子でも、『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)。 華奢な身体に不釣り合いな魔導書を身体の正面で広げ、体現したのは氷の大雨。 「す、すごくかわいいのだ。天使なのだ……いやいや、今は任務が優先だ。 エリューションじゃなければ。一匹持って帰りたい愛らしさなのだ」 ぐぬぬ、と歯を食い縛った儘。今は、心を鬼にして、リベリスタとしての仕事を全うせねば。迷いを断ち切る様に雷音は、魔導書を持つ手に再び魔力を込めるのだった。 入れ違って、大嵐を裂いて飛び出すのは大獅子。雄叫びと共に近場のルアを狙う、が。 咄嗟に視界に入ったのはフリルを揺らし駆けるリコル。振り被る大爪に、短く止めた息。数倍もある体躯から繰り出される攻撃をがっちりと受け止め、巨体が後ずさる程の力で弾き返した。 聖骸闘衣。不沈艦とも称される護り手にのみ許された英霊の加護が、敵方の大爪を焼き焦がしていた。 そして苦しむ暇もなく、追い討ちの一閃。行方の振るう巨大な刃が、親玉を庇いに入る仔獅子をタダの肉塊と伏す。肉を斬り裂き、骨を断つ。肉体の枷を外した彼女の一撃は、取り巻きを屠るには十分過ぎた。 それでも数の暴力は恐ろしい。未だ両手では数え切れぬ数の仔獅子は四方から猛攻を繰り出していく。 「今日の僕は出し惜しみはしないのです」 咥えたストローをもごもご揺らして、皆からだいぶ下がった後衛の位置。萵苣は手にした機器を再度叩いて、画面へ出すのは癒しの奇跡。訪れる聖神の息吹が、前衛達の傷を確かに癒していく。 「ふわふわ愛らしいですね、断末魔はもっと愛らしいのでしょうね」 彼も同じく後衛の位置。大乱戦となる前線の雑魚の間引きをするのは、涼しく台詞を並べる諭。 敵も消えてひんやりすっきり、氷雨でさっぱりしますよ。と口の悪さは暑い中でも健在。弱らせた仔獅子を、雷音ととらの攻撃を重ねて、確かに数を減らし行った。 『ますたー、そこの! ぬけてくるよ!』 「良く気付きました、良い子です……よっ!」 一方で、同じく後衛の位置。言葉と共に、恭也は大きく左右に分かれ前衛を迂回する仔ライオンを補足、その群れを放つ瘴気で駆逐していく。 艦載機の如く数を成してやってくる仔ライオン。前衛のタフな連中を逃れ、後衛まで逃れてこられては危ないと恭也は上空へ飛ばした式神と感覚を共有し、索敵の効率を大きく上げていたのだ。 しかし、感じる暑さも二倍。彼が精神的にも肉体的にもゆで上がるのは、時間の問題だった。前衛は良いな、氷雨でひんやりしてそう。なんて考えていません。紳士ですから。 ――それから手番が幾つか周り。乱戦具合も落ち着いてくる。同時に、被害の集中度も露呈して。 「……ちぃっ!」 前衛を抜ける艦載機の火の粉を払うのは、とらの役割。前衛と入れ替わり大獅子の攻撃に晒されるのもあって、彼女の負担は大きかった。 しかし、傷の具合に反比例して上がる口元の角度。嗚呼、良いねぇなんて零しながら。 「そうそう、それで良いんだカワイ子ちゃん。 強い者が生き残る、実にシンプルなルールだろ?」 解るだろうが、と眼前に迫る蒲公英の化身へ告げて、差を見せつける様にを大嵐で再度凪ぐ。 耐える個体、力尽きる個体。それぞれ目線を投げてから、荒れる呼吸もその儘に、再び笑って。 強く成りたかったって気持ちは、すげー解る。見下されて言われる可愛いも小さいも、上から目線の“可愛がり”に過ぎない侮蔑にしか聞こえねえもんなぁ。 その気持ちが解る、だからこそ負けられない。強く成りたくて、此奴ここまででかくなってんだ。ちゃんと葬って遣らないと、化けて出られる。 肩口に食い付く一匹を、引き剥がしてからもう一言。 「それなら文句ないっしょ、とことん遣り合おうかっ!」 自らを鼓舞する様に放った一言に、リベリスタ達も勢いを増して。 雷音、恭也、諭が放つ面制圧のその先。行方とリコルが重い一撃を見舞う。火力が集中すればするほど、攻勢防御と此方の被害も減ってくる。 「たたみ掛けるよ!」 氷の雨と風が舞う中、再びルアは接敵。振り上げた二刀を手にくるりと回転し、二閃、三閃。袈裟懸けに逆袈裟に、真空の刃を叩き込んで。 右手に白金を、左手にはガーネットの真紅を。彼が願った想いと共に、ルアの道を切り拓くが如く真空の刃はエリューションへ深々と傷を見舞う。 堪らず眼前の敵を凪ぐ獅子であったが、須らく癒し手によって直ぐ様その傷は癒えてしまう。リベリスタの勝利は、確かに近付いていた。しかし。 後ろへはいかせまいと受け止めたリコルの目の前で、獅子の鬣の最後の一輪がひらりと落ちる。ぞくりと背筋を駆けた悪寒に、リコルは咄嗟に距離を開け、目の当たりにする。 雄々しい花はいつのまにか、雌の獅子へと姿を変えて。踏みしめた大地を抉る程に伸ばした爪は、何時しか高貴よりも獰猛な捕食者を連想させる。 「強いと威張るより、優しい色彩で微笑みを齎すわたくし達の百獣の王であって下さいまし……」 姿を変えても、せめて最期まで。その願いは花弁の様に儚く散り消え、リベリスタ達の目の前で禍々しい姿を成していた。 ――咆哮。 先程とは明確に違う覇気。轟々と高らかに放った叫びは、びりびりと辺りの空気を、大地を揺らす程に響き渡る。 まるで、何時しか自分を見下ろしていた向日葵に自慢をするように。自分の力を、誇示する様に。 「ンなッ……!?」 次の瞬間、獅子は一挙に加速。行方を攻撃範囲に捉えると、強靭な腕で薙ぎ払う。 反応が一瞬遅れた彼女の華奢な身体は、直撃を受け後方にぐらり、傾くが運命を燃やし何とか踏みとどまって。 「他人に噛みつく様なのは、花とは言えないンデスよ……ッ!!」 額を流れる血も其の儘に、御返しに一閃。既に傷付いた獅子の眉間を深々と抉り、巨体を吹き飛ばす。 花は咲き誇って種を残していくもの。もー少し違う物なのデスと、そう付け加えて。 「此れも食らって下さい。冥土の土産は如何ですか?」 後方へ吹き飛ぶ獅子へ、諭は巨砲より氷槍を放ち、追い打ちを掛ける。 「あと少し!」 再度体勢を崩す獅子へとルアはこの機を逃さんと突貫。額に確かに刻まれた傷へ重ねる様に攻撃を叩き込む。 それでも未だ、獅子の命には届かない。 未だ確りと地を踏み締めて耐える獅子は、雄々と吼えると、突如跳躍。後方に立つ癒し手の元まで一挙に飛び掛かり、牙を剥いた。 ぶしゅり、“何か”が裂かれる様な音がして、血飛沫が辺りへ降り注ぐ。リベリスタの誰もが、直ぐに救援へと走るが、身を案じる暇等ない。直ぐに助ける為には此奴を何とかしなければならないのだ。 「もう悔いはないよな、すげー頑張ったよな、ぽぽたん……!」 全身の魔力を、一点に。赤い月の盟約は須らく対象を呪い殺す。強くなりたい、その呪いよか強けりゃいいがな。ととらは捨て台詞を吐いて、一声。 その魔力を、大獅子のど底っ腹に叩き込んで。最期の抵抗か、立ち上がり振り向く獅子の顔面。その下方で、ふわりとメイドのフリルが揺れる。 「どうか、覚悟をッ……!」 爪が染まる程に込めた全力。その身に紅い蛮族の魂を宿らせて。リコルは携えた鉄扇を凪ぎ、大地を震わす程の威力で振るう。 一撃は確かに命へ届き、大獅子の呪いに終止符を打って、その身を地に伏した。 ● 「フフッ……私の背中に惚れても、全身余す所無く惚れても良いんですよ」 危うく死ぬ処でしたが、と血の海から弱々しく立ち上がったのは、折角のシャツを紅色に染めた恭也。萵苣の身を庇い、その身を貫かれていたのだ。 流石は紳士、そこに痺れて憧れている内に死にそうな自覚はあったのか、直ぐに萵苣によって手厚い治癒を受けたのだった。 「……さて、お開きにしましょうか」 意外に折れる仕事になったなと、諭は深いため息と共に幻想纏いに手を掛け、何やら皆に配り始めた。 差し出されたのはキンッキンッに冷えた飲料とタオル。即身仏になりたくば、断っても止めはしませんが。その言葉に皆は群がり、各々に気配りに肖った。 一息つく一同。輪から少し外れて、一人佇む萵苣の姿。 受け取った物か、摘んだ物か。時期から少し遅れて綿毛な儘の、一輪のタンポポを手にして呟く。 「僕は思うのです。弱くても小さくても、誇りに思える事さえあれば価値があるんじゃないでしょうか?」 そう、例えば一年中誰かに愛され、気ままに飛んでいく素敵な貴方の様に。だから、貴方は貴方の儘で良いと思います。 そう零しながら、口にしたストローでふう、と息を吹き付ける。こんな使い道もあったとは。天才か、なんて飛んでいく綿毛を目で追って。何処かで元気で、と見送る言葉を。 「……よし、今日の御仕事も終わったのだ」 後はアークの処理班にお任せして。雷音は歩き出す。丁度帰り道の方向へと飛んでいくから、ふわり飛ぶ綿毛を追い掛けながら、手元には携帯。 かちちと手早く文字盤を叩いて、それから何度か確認して、送信。 たんぽぽさんはとても可愛くて倒すのはちょっぴり心苦しかったのです。 アイスを買って帰ります。一緒に食べましょう。 ――今回は一緒じゃなかったから、家に帰ったらまた“怪我はないでござるか!!”などと凄まじく心配するだろうか。 そんなことを考えながら、視線を上へ。眩しい太陽は、幾らか傾き始めていた。 「今日はとても暑いから、帰ったらクーラーは効いているかな」 零す呟きも、幾らか願いが籠っていて。雷音は彼女の帰る場所へ、足を進めた。 「――いえ、でも動いていたら暑さにも慣れてきましたね。 さっきまであんなに汗だくだったのに、今は汗かいてないんですよ」 不思議でしょう、なんて零しながら。各々に帰路へと向かう最中、恭也は明後日の方向を向いて妖精さんと話し始める。 単なる水分不足か、既に熱中症に苛まれたか、はたまたガチか。 \ 紳士ですから / 恭也が下げたストラップが、ここぞとばかりに声を上げる。なんだ、紳士なら仕方ない。 どうかこの季節、水分補給と暑さ対策はしっかりと。 セミだ!水着だ!宿題だ! アツい日本の夏は、もう始まっているのだ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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