● 初夏の爽やかな風の中、白い毛を靡かせた動物が居る。 未だサマーヴァケーションには早い7月半ば。炎天下の中、思わず幻覚でも見たのではないかと思ってしまう、そんな自然公園での出来事だ。 じぃ、と見詰める少年が「ママー、あれなにー?」と聞くと、その母親は慌てて「見ちゃいけません」と子供の目を覆った。 蒸し暑さだけが支配する中、毛の長い動物は暑そうにだらけている。 流石の白い生物も、暑い太陽に攻め立てられて困り顔。毛を刈ってやれば涼しくなるのだろうか、いや、それよりもあいつ等はなんだろう? だが、其処に彼らよりも大きく、光り輝く存在が現れ―― パ→カァ↓…… 「マ、ママー。あれなにー?」 「シッ、見ちゃいけません……!」 慌てて逃げ往く親子の背中を見詰めて、白い毛のアルパカがパカと鳴く。 実際のアルパカがパカパカ鳴かなくても彼等は切なげな吐息までも残してパカパカと鳴くのであった。 キラキラ輝くアルパカは角を生やし、王冠を被り翼を生やして居る。 「――キュピーン! ママ! あれ、ゴッドアルパカだよ!」 「シッ、見ちゃいけません!!」 パ→カァ↓…… ――あれって何だろう……? ● というVTRを目にしながら『恋色エストント』月鍵・世恋(nBNE000234)は首を傾げていた。 「……というわけで、アルパカなんだけど。よ、よろしいかしら?」 戸惑わずには居られない。アルパカの声はそれはそれはとても素敵な低音ボイスだ。とっても素敵(はぁと)なネオン街では『やだー! アルパカちゃん素敵ー!』なんて言われちゃうようなお声なのだ。最早、どんな声なのだか世恋にも判らない。 「子供がゴッドアルパカと称した理由は翼が生えてたからね! 嫌、凄く強いの、とても強いの。やばいわ。だって、アルパカだもの!」 意味が分からないと思うけれど、強い奴だから仕方がないわ、と世恋。 もう、何がどうしてそうなっているのかすら分からない。 だが、ふざけた対象であっても、アルパカがもふもふであっても、強い事には違いないのだから―― 「キングアルパカと臣下アルパカには2種類。……アザーバイドよ」 「お、おう」 「強いわ。ゴッドアルパカはそれはそれは面倒よ。物理攻撃を半減させるわ」 面倒な、アルパカだった。 「彼等は何処から来たか判らないわ。帰り路は分かんないけど、倒せばきっと『あばよ』って言ってくれるわ。 ので、遠慮なくぶっ殺してきてほしいの! ホント、居てはいけないものだから!」 運命に愛されてないアルパカならば仕方ないでしょうと手を振り回す世恋にリベリスタは回れ右をしようとするが、24歳はにこりと微笑んで告げた。 「にがしませーん」 それでは、お願いします! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:椿しいな | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月19日(金)22:36 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 晴れ渡り、日差しが肌を刺し痛いとも思ってしまうその日。初夏っていうか真夏ですよね、と問い詰めたくなるその日。 「ふふ……遂に……遂に待ちに待った時が来たようです!」 瞳を輝かせ、果て無き理想(アルパカへのやぼう)を握りしめた『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)は燃えていた。普段なら何処か落ち着き払っていた彼女にその面影はない。キングアルパカに悔しい想いを感じたあの残暑をミリィは覚えている。 その言葉に頷いた『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)は何処からか感じる頭痛に頭を押さえていた。 「楽しい夏の矢先に忘れかけていた悪夢が……しかも、無駄にパワーアップして帰ってくるとは!」 「本当に面倒なもふもふさんです。やられて貰いましょう」 こく、と頷いた巴 とよ(BNE004221)は魔道書を結びつけてある紐をぎゅ、と握りしめる。ざわざわと聞こえる一般人の声は疎らではあるが、異質な存在が目の前に居るのだから足を止めてしまう。その上、見た目が何処か『変わった』面々に興味をそそられ視線を向けている。 ――しかもそこには、アルパカがいるのだ。 「いやはや、俺は動物好きだけどアルパカって見た事無いんだよねぇ。七面鳥に追いかけられる事はあったけど。 アルパカなあ。アルパカ。初めて見れるのは嬉しい事……って、な、何だありゃ」 「か、可愛い……」 リベリスタの中では一般人枠の外見を持つ『やる気のない男』上沢 翔太(BNE000943)は動物園に訪れたかの様な雰囲気で『異質な存在』に目を向けて瞬き一つ。 その外見はテレビや写真で見る『アルパカ』だ。二種類いる事は別にどうでも良い。羽が生えている。王冠を被っている。いやはやアレはどう見ても。 「アルパカの姿をしていても、フェイトを得てないアザーバイドには違いない」 ぐ、と拳を固める『ネメシスの熾火』高原 恵梨香(BNE000234)。任務を遂行する事を格好良く告げた筈なのに何処か格好付かないのはアルパカの所為か。夏の所為か。きっと後者だと言う事にしておこう。 「あれは……アルパカで、あってますよね? かわいい……けど、大きい」 じ、と見詰める『風詠み』ファウナ・エイフェル(BNE004332)は周辺に気遣って長耳を隠してはいたが、知識の方は異邦人そのものだ。ボトムの生き物であるアルパカを初めて目にしたと丸い瞳を向ける彼女に翼を授かってる系アルパカが切なげな吐息を漏らす。 (・´ェ`・)<そんなに見詰めんなよ、ハニー。 「あ、あいつ殺そう」 さらっと言って退けた『塵喰憎器』救慈 冥真(BNE002380)……あれ? 覆面を被った男が立っていた。ラマをイメージした面をつけ、普段なら身につけてる白衣を脱いだ不審人物は髪型まで変えて其処に立っていた。 「あ、暑そうなの……」 「大丈夫だ。水分は経口補水液がある。完璧!」 ラマ仮面に何処か驚きを隠せない『Wiegenlied』雛宮 ひより(BNE004270)は鈴を握りしめて、取り敢えずラマを見ないようにした。 「……ゴッド、な、なんて神々しくてふてぶてしいもふもふなの。かわいすぎるの」 中央の噴水広場で水が音を立てている。水浴びをするアルパカに暑そうと汗を拭った。 冬場だったら、直ぐにでも抱きついてもふもふして暖かぬくぬくするのに――! 「暑いの。でも、もふりたくなるこの魅力ッ! 触りたい進撃されたいぶら下がりたい。 あれ? わたし……むきゅー! どうしてわたし後衛なの!」 ――その日、雛宮ひよりは前線に飛び出したい気持ちを堪えるという戦士の経験をした。 ● 「人が多い場合は警察役の人もいるですね」 周囲を気にする様に告げるとよに頷きながらファウナが広める強結界。少しでも神秘の秘匿を行おうと言う彼女の気遣いであろう。 その中でも、色んな意味で神秘の秘匿を行っているラマが一匹立っていた。 「Hey! そこのラクダ科の恥晒しが! ツバの飛ばし方も知らないど素人に俺が前足取り後ろ足取り特訓してやるぜ! ラ→マァ↓……(うめき声)」 びしっ、と指差す冥真の背には「\撮影/」と書かれた看板があった。可笑しい。リベリスタの方がアルパカより可笑しい。彼は何だか夏の暑さに火照ってしまったのであろうか。 「ハハハ! 好! これで完璧だ! 俺の社会性なんて糞喰らえだ! ラ→マァ↓……」 (・´ェ`・)<お、おう。 ゴッドもキョドっていた。正に挙動不審である。ファウナの前に立った亘は身体に電気信号を流す。速さを身に纏い、空を駆ける彼は今は後衛の仲間を守る為に立っていた。 駆け寄ってくるキングアルパカが唇を近付ける。攻撃にイラッとしても顔に出さず常に笑顔を浮かべているのが亘クオリティだ。 平常心平常心。そうだ、落ちつけ。毛並みが良いアルパカだなあ。お嬢様に何かこれで作ろうかな。ハッ、お嬢様! お嬢様! 「いけない! 何かを解き放ってしまう。ふふっ、楽しくなってきましたよ――!」 普段は落ち着いている筈の少女も何かを解き放っていた。これには落ち着いていた恵梨香も大きな赤い目を瞬かせるしかない。アルパカは何と罪深いのか。色々と狂い始めてしまっている。 「これは撮影よ。そう、撮影……。ちょっと、其方の方。撮影中だから」 魔目を使用して、強制的に一般人シャットダウン。二つにしばり上げた髪を揺らし、びしり、と指差したゴッドアルパカが首を傾げて恵理香を見詰めた。 「アルパカの毛って上質な毛糸になるとか。毛を刈られて丸裸にされたくないなら元居た世界に帰る事ね!」 (・´ェ`・)<強気なお嬢さんだぜ。 「任務は倒す事だった。遂行しましょう」 恵梨香、真顔でチェインライトニング。彼女から落ちた雷にテヘペロとアルパカが舌を出す。唾を飛ばそうとでもしたのか、ペッと唇をゆがめるアルパカに翔太が仰け反る。 「偽パカ、汚ねぇ……! って、キッスは遠慮したいわ。いや、まじ。やめてください」 仰け反ったまま、ブロードソードが時を刻む。氷刃の霧がアルパカを包み込み、そのもふもふを刈り取っていく。翔太を狙うアルパカの唇から彼は避けるしかできなかった。 (皆、アルパカのもふもふ楽しみたいんだろ? 止めはしないぞ。折角の機会だからな……あれ?) 至近距離にアルパカの顔がある。唇が近付いて―― 「無理無理無理。ちょっとソレは遠慮する!」 思わず掌でその顔を止めた。配下アルパカ、ラマに怯えて一般人(こわくないひと)へと攻撃を強めているようだ。困った様に首を傾げたとよがハイ・グリモアールに繋がっていた紐をぎゅ、と握る。 「その鳴き声、止めるです。もふもふ」 ちり、とアルパカが痛みを感じる。配下がその場でじたじた。あ、だめ、それは――燃えた。 目の前で配下を押しとどめていた翔太ともども燃えた。りんりんと鈴を鳴らし、翔太を回復しながらチリチリの毛になってしまった可哀想なアルパカを見詰めているひよりが哀しげに眉を寄せた。 「そんな、毛まで……! 運命に愛されないアルパカだから、戦いを投げ出すわけにはいかないの。わかってる」 「ええ。逃す事は、できません。所でそちらは暑そうですね? ――これで涼しくなると思いますが如何でしょうか?」 ひゅ、とファウナの連れていたフィアキィがゴッドアルパカへと近付いた。氷精と化したフィアキィに色んな意味で冷やされるアルパカが気持ちよさそうな息漏らす。 (・´ェ`・)<いいな。これ。 「ええ。出来れば増えないでいただきたいと……」 そんな意志の下での行動ですとさらりと告げるファウナ。淡々と戦う彼女に「涼しいのいいなあ」と群がるキングアルパカ。庇う天風君がアルパカ塗れになっている。 「くっ……これでは、自分の真の力を示さねばならないではないですか……! あの日、忘れた筈なのに!」 「いいえ、それでも天風さんはまだ変身を何回か残して居ます!」 アルパカの毛を焦がしながらミリィが叫ぶように告げた。アルパカ大好きっこは「ゴッドの背に乗りたいなあ。もふ、もふもふ」等と夢想しているが頭を振る。何時か、人生を革命した時並みに己を解き放ってる気がしますが、大丈夫ですか、お嬢さん! 「だ、大丈夫です。何も問題はありません! 紳士パカさん、これは撮影ですよ! 一般の方へのお触りは厳禁です!」 (・´ェ`・)<独占欲ってやつ? 「任務遂行します」 「はい、直ぐに倒しましょう。さっさと倒しましょう」 さらり、と告げる恵梨香ととよ。ぽ、と頬を染めたミリィがそんな……と告げると同時、もふ、もふと手を動かすひよりは目を輝かせていた。落ち着いた目で素敵な毛並みだと見ているファウナの手がぴたり、と止まる。 「このリャマたる俺の前でその程度の唾飛ばしでパカ顔など! ン百年早いんですよコノヤロウ! 交流戦のマスコットに選ばれたからって景気よく鳴きやがって! ラ→マァ↓!」 ラマが怒っていた。後衛に立っているのに前衛に立っているかのようなラマが怒っていた。 じたじたと足を踏みしめるラマ――ではない冥真。羞恥心がそろそろ限界に達したのか、突如冷温停止。 「あ、すいません、もう帰っていいですか?」 「駄目ですよ?」 「ウッス」 さり気なく微笑みが何処か冷たく燃えるファウナに冥真(くラマ)は頷いた。逆らわない方がいい。 臣下アルパカを狙い続ける彼等にワカイヤとスリが焦りだす。後ろ足で蹴られたワカイヤがミリィに向かってダイレクトアタック! 「ふぎゅっ!」 痛い。けれど、もふもふしている。幸せを感じながらミリィの神気閃光が周囲のアルパカを消し炭とかした。 大人しいゴッドが増えるのを見た瞬間に亘の頭痛は少し厳しくなる。もふもふと段々呪いの様に呟くひよりの癒しのお陰か、一人の少年が新たな扉を開いた。 「フフッ……運命と闘争本能を燃やしてシュルァカゼ↑↑かーくーせーいーッ! ――からのrevolution time! さあ、行きますよ、只管に、倒してやります! パカァァ!」 くラマの背をすり抜けて前線に飛び込んでいく亘――修羅風。テンションはマックスだった。 真っ直ぐにゴッドアルパカの前に滑り込む。剣を構える翔太がキスを拒否してる其処に亘はAuraを握りしめて作った鉄拳(あい)を強かに打ち付けた。 「悪い(・´ェ`・)はメッしないと!」 「お、おう!」 時を切り刻む系男子呆気に取られる。大丈夫かと向ける翔太の視線に亘は優しげな瞳を細めて笑った。 「ふふっ、大丈夫。自分はアルパカだぁい好きですから!」 ――驚きの極上の笑みだった。 ゴッドが翼を揺らし神の威厳を示してくる。だが、亘にとってはソレも好機だ。倒れないなら殴れば良い! 「こ、こっちにこないでっ!」 すたすたと走ってくるとよの炎がアルパカと修羅を巻き込んだ。凄まじい顔でキスを強請るものだから、心が震えてしまうのも仕方がない乙女心―― 「違います!」 (・´ェ`・)<残念。 首を振って炎を呼び出すとよ。癒しを送ったひよりがふるふると首を振る。 「つばこわいの」 ――『つばき』って書いてた気がするけど、気にしない事にしたよ! 傘を翳して涎まみれを防止したひよりはアルパカ天国を夢見ながら哀しげな顔をして癒しを乞うた。癒しの風は一寸だけ涼しい。アタックを受けた人が余韻に浸ってしまうのだって全力阻止だ。 自分が、ソレに浸れないから! 「今日の癒しの風は大荒れなの。触りたい進撃されたいぶら下がりたい」 「とても気持ちよさそうな毛並みですけど……残念です。確実にもふって――いえ、懲らしめねば」 フィアキィがアルパカをもふもふしている。動きを止められたゴッドにミリィの何処か羨望が混ざった眼差しが向けられた。 「聞いて下さい。何時もなら戦場を奏でてるんですけども、今日だけはアルパ→カァ↓を奏でました!」 素敵でしょうとキラキラした瞳を向けるミリィに頷いて、雷を振らせ続けた恵梨香がぎょ、とする。 目を開いた瞬間に、ゴッドと目があった。イケメンアルパカが一つウィンクを飛ばす。 (・´ェ`・)<今晩どう? 「お帰り下さい。アピールされても困るし……」 華麗に却下された。哀しげなゴッドを慰める様に亘の拳が何度も何度も振るわれた。 「いやいや、それ、慰めになってないから!」 す、とその姿を消し、アルパカが瞬くうちに翔太が剣を振るう。驚きのパカボイスを漏らしたゴッドににぃ、と笑った翔太は剣を握りしめなおした。 皆が楽しめたならソレで良い。ソレで良いのだが、先ほどから執拗に気色の悪い動きで唇を歪めながら彼に向ってくるアルパカにはご勘弁を頂きたいところである。 「俺は無事に帰って本物のアルパカを見に行くんだ……!」 「死亡フラグっぽいですね!」 \シュラカゼ無双!/ 告げながら拳を当て続ける亘を見詰めていたラマは謎の鳴き真似を繰り返していた。遠巻きに見ていた子供が「ママー、あの人なにー?」と聞いているが聞こえないふりをしよう。 そう聞こえないふり。聞こえない……。 パ→カァ↓……。 「うおっ、近ェ! キッス? 愛? 舐めるなよそんなレロレロレロレロレロ! 大人しくしてろ!」 頭を掴んで直接放ったマジックアロー。三鈷の霊刀を握りしめる手が何故か震えた。 荒れ狂う雷の下、暴れ回るゴッドとキングが2体。其処には残っていた。色んな意味で消耗したリベリスタは色んな意味で消耗したアルパカを見詰めて深く息をつく。 「ああ、アルパカさん。今回はなんとも一粒で二度おいしい……いいえ、三粒とも言えるアルパカ三連星を楽しませてくれて有難うございます!」 もふ。もふもふ。ミリィの手は止まらない。後ろで羨ましいとひよりが地面をげしげしと蹴っていた。 あのふてぶてしさはブサ猫に通じる。可愛すぎる。ああ、汗が伝って気持ち悪いし、掛かった唾も気持ち悪いけれど、触りたい。哀しい。悲しみに包まれながら、ひよりは手を翳した。 「もふもふするの!」 矢がひゅん、と飛んでゴッドアルパカの首へと突き刺さる。 (・´ェ`・)<ハッ……やるじゃねぇか。 「ゴッド……」 何故か切なげに息を漏らしたファウナではあるが、彼女がアルパカに対して変な知識を持たないでくれればと切に祈る。――『謎知識』を得たとすれば全ての責任はきっとあの月鍵ナントカにあるのだ。 ● 「ほら、パ→カァ↓奏者とか幸せの青いアルパカに倒されたくないなら飛び込みなさい」 恵梨香が指差した先にはアルパカが帰るべき場所(ゲート)があった。咄嗟に飛び込む一匹のキングアルパカ。後ろ足で蹴られたキングその2が蹴ったキングに抗議のパカァを申し立てるが華麗なるスルー。じたじたとするその尻を押した時、その手触りに恵梨香が目を開いた。 (……やっぱり、上質な毛糸になるってだけあるわね……) ――も、もしもし、恵梨香さん? 「アルパカの毛糸が手に入ったなら、今から世恋ちゃ……こほん、世恋さんや室長にセーターでも編み始めれば、十分冬には間に合いそうだけど……って、ええと、何? キング、何の用事?」 王冠を被った世界が嫉妬するほどの毛並みを持つキングアルパカが小さく鳴いて恵梨香に己の毛を差し出した。え、と声を漏らすエリカの前でキング(その2)は小さく頷く。 (・´ェ`・)<ほらよ、お嬢さん。 「あ、有難う……」 少しだけイケメンアルパカをアピールするキングにミリィが憎めない、と期待の眼差しを向ける。少女も毛が欲しかった。もふもふで作った編み物とか最高だと思う。キラキラと輝く瞳を向けるトムソン隊長にキングアルパカがやれやれと息を漏らし――実際はパカァだったのだが――差し出してくる。 「い、いいのですか?」 (・´ェ`・)<アルパカに二言はねぇ。 亘がそれでは、とキングアルパカに向き直る。どうやら、キングは自分の手では返るつもりはないようだ。 「ふふふ……言いましたよね? 悪い(・´ェ`・)はメッしないと、って。 ――キングアルパ→カァ↓……! 良いアルパ→カァ↑に生まれ変わって出直して来いやぁ!」 地面を蹴ってAuraを手に亘はキングへと飛び込んだ。 感動の一騎打ち状態に社会的フェイトを失ったラマが「ラ→マァ↓……(感嘆)」と息を漏らす。あ、間違えました。ラマじゃないです。冥真さんです。 「おい、コラァァア! ち、違う。ラ→マァアアアア↑」 冥真から上がる勝利の雄たけびに、アルパカが亘を見詰める。円らな瞳が細められ「アバヨ」と小さく零される言葉に亘がフッ、と笑った。 「あばよなの……」 何処か哀しげなひよりは出来る事ならばアルパカ天国を実現したかった。もふもふして、背に乗って優雅に草原を駆けてみたかったがその野望は叶わない。 ――初夏のアルパカの幕が閉じた。 小さく息を吐いたとよがあからさまな疲労を浮かべて、周囲の一般人へと手をひらひらと揺らす。 「はーい、撮影は終わりましたー解散でーす」 ――何かの撮影だと偽装していた事をすっかり忘れてはいたのだが、『\超平和的感動大作/』……などと嘘に嘘を重ねる様な冥真の用意した看板をじ、と見詰めている周囲の観客。 シアターで此れを流せば観客動員過去最高。全三高平住民も涙する筈なのだ! 「ママー。あの覆面のおにいさん……じゃなくてラマなにー?」 「シッ、みちゃいけません!」 がくり、と膝をつく冥真がハハッと小さく笑い声を漏らす。 「もうどうにでもなーれ☆」 お後が宜しい様で! |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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