● 「あぁ、綺麗だ、美人だよ。カグラ」 粘っこく、うっとりとした声が青年の口から洩れる。 言葉こそ恋人に囁く甘い睦言のようで、その実じくじくとした腐れた果実の様な狂気に満ちている。 「大きな瞳も、ぷるんとした唇も、柔らかい頬も、小さな手も、赤く染まった髪もドレスも」 小さな天使の微笑みに柔らかに緩んだ笑顔で返す。 「人を殺しているカグラは誰よりも素敵だよ」 褒め言葉を投げれば誰よりも何よりも愛する『実の妹』からの『おねだり』。 これは叶えなければ駄目だろう。――しかし、どうしようか、これ以上妹が可愛くなったら押し倒してしまいそうだ。 「もうちょっとかな?」 区民ホールから少し離れた広場に、青年――スルガの姿があった。 そこここに転がっている『化粧道具』は数こそあれど質がイマイチ。 世界一愛らしく世界一可愛い妹を彩る為の赤いソレは例え引き立て役の小道具であってもそれなりの質が求められるのだ。 「要らないモノは処分しないとね」 上がる悲鳴を無視して頭の上に足を置いてちょっとずつ力を込めればプチュンと潰れたゼリーの出来上がり。 地面に割いた真紅の華の上で此処にいない愛しの妹に思いを馳せる。 「あぁ、待っててねぇカァグラァ、今にぃにがカグラの為にお化粧道具を持って行くからね」 腕を切り落とすカグラ、足を刻んでいくカグラ、首を落として噴水のように溢れる血を浴びるカグラ。 想像するだけで『処分』では得た以上の快感が脊髄を貫いていく。 そうして青年は友人を伴って町を闊歩する。 青年は『裏野部』。榛スルガ。人を殺して煌めく世界一のアイドルに魅せられた一人の男。 ● 「こんにちは、諸君。早速だが至急現場に向かってほしい。 事件は二件が同時に起きているがもう片方の事件は世恋の担当になったので諸君らはこちらに対応してくれ」 言いながら衣更月・央 (nBNE000263)は資料をモニターに展開する。確かに二件分のデータが表示されるがもう一件は担当が月鍵・世恋(nBNE000234)になっている。 「事件を起こしているのは裏野部の兄妹だ。諸君らに任せるのは兄の方で名前は榛・スルガ。 ジーニアスのレイザータクトで黒髪に紅い目をした男なんだが」 そこで、一度言葉を切る。 「カグラという名前の妹を愛していて特に人を殺している妹が最も美しいと考えている所謂シスコンという奴だ そんな兄の人を殺している姿が美しいという言葉を信じた妹がまた兄の為に人を殺して兄はそんな妹の為にまた人を提供する。ふざけたループだ」 度し難い、と央が呟く。無論、裏野部の狂気を理解出来るような者などこの場にはいないが。 「スルガは愛する妹が最も美しくなる瞬間、つまりは殺人の瞬間を演出するため妹の傍を一時的に離れて人狩りをしている。 勿論、スルガという青年の性格を考えれば愛する妹を一人にするわけなどないが、それでも二手に分かれた今がチャンスだ。 「そこで、諸君らは人狩りをするスルガとその友人達を止めてくれ」 モニターにあらわされるのはとある広場の航空写真。 「ここは殺戮が行われている区民ホール近くの広場だ。 詳細な資料は後で渡すが、東西南北の内二方向が森に、残りが道路に面している。 此処に、攫ってきた人を集めているのだが、スルガは妹を彩る血は引き立て役であってもそれなりの美しさが必要と考えているのか、美男美女のみを選別して縄に繋いで、それ以外の一般人は友人達と適当に殺している。 縄に繋がれているのが10人、それ以外が20人。計30人のうち半数以上を救出して欲しい」 もう一度央は言葉を切って溜息をつく。 「兄妹愛とはもっと美しい意味合いで使うことばだと思っていたんだがね。どうしてこうなってしまっているのやら。 とにかくこれ以上この兄妹の舞台を続けさせてはいけない、早急に幕を下ろして来てくれ」 頼むよ、と続けて央はリベリスタを送り出した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:吉都 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月22日(月)22:27 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 『コンサート会場』から少し離れたところにある広場。 其処には多数の人が裏野部のフィクサードによって思い思いに殺されようとしていた。 裏野部のフィクサードにとって、ここは所謂舞台裏。自らの愛すべきアイドルを着飾る為の道具を置いておく衣裳部屋程度の認識。 そして、アイドルを美しくするのに相応しくない物は廃棄処分するというのも、彼らの中で当たり前の共通認識。 「下衆が」 広場へ南側からやってきたリベリスタの心中を代表するように呟いた『殴りホリメ』霧島 俊介(BNE000082)が即座にジャッジメントレイを放つ。 聖なる光はまるで単なる一方的な虐殺の場であったこの広場を端から双方向の戦場に塗り替えていくようにすら見える。 射程の限界故に、奥の方にいるフィクサードには届かず、またスルガの持つ戒めの縄を精密に狙うことも出来なかったが注意を惹くには十分すぎる一撃。 放った場所が見晴らしの良い道路の方から故に、俊介達リベリスタの存在にすぐにスルガを始めとしたフィクサード達も気づく。 「今日は身内だけ呼んでるんだよね、部外者はお断りしてるんだけどなぁ」 スルガが縄を持っている手でそのまま頬を掻く。拘束された一般人が急に動いた縄の動きに付いていけず微かにうめき声を上げる。 「それに、僕らは早く要らないモノを処分してカグラのところに行きたいんだ。いいカンジに血も確保できたしさ」 「それならぁー、その要らないモノって貴方達が言う人は私達に引き渡してくれませんかぁ~?」 前衛として前に進み出る『ふらいんぐばっふぁろ~』柳生・麗香(BNE004588)は交渉の振りをしながら、フィクサード一人一人に視線をやる。エネミー・スキャンと直感で幾人かの能力値を把握する。 スキャンに成功した限りでは回復役はいないように麗華の目には見える、もしかしたらスルガは妹の方に回復役をつけたのかもしれない、と麗華は自分の中でアタリをつけた。 「それは出来ないよね、カグラを彩るのに相応しくないモノは処分しておかないと。ほら、後片付けはしっかりとっていうじゃないか」 スルガの手の中で弓が回る。放たれた矢が軽い風切り音を伴って飛翔し、一瞬で一般人の命を奪う。 「あ、カグラっていうのは僕の世界一可愛い妹のことなんだけどね?」 自分が今人一人を殺めたことに何の悪びれもなく、そのまま滔々と妹の魅力を語り始めたスルガの言葉を『風詠み』ファウナ・エイフェル(BNE004332)が火炎弾の雨を降らせることで遮る。 「妹さんの可愛さを語るのもいいですが、その前に私達の相手をしてもらいますよ」 着弾と同時に小規模の爆発を伴うそれはフィクサードを二人ほど、後ろへ吹き飛ばす。 「さっさと逃げろよ! 死にたくないんだろ!」 目の前で起こっている自体について行けず、呆然とする一般人に俊介が叫ぶ。 十人の一般人を拘束しているスルガを除いて裏野部のフィクサードは七人、対して『不良品』とされた一般人は二十人。 元より一般人の方が圧倒的に多い状況で、二人も後ろに押し込めば幾人かは逃げることが出来る余裕を作れるのは当然だ。 「させるわけねぇよぉ?」 俊介の言葉に自失の状態から戻り、走り出した一般人の中の一人にすぐさま追いつくフィクサード。 それを見たリベリスタが手を伸ばそうとするが、間に合わない。 元よりリベリスタ側に後衛を得意とする者が多かったこともあり、更にまず一般人とフィクサードを引き剥がすことに注力したこともあって、フィクサードの凶行を止めれるものはいない。 無慈悲に振るわれた剣に、また一人が命を落とす。 「アヒャヒャヒャ」 剣を振るって血を払いながらフィクサードの男が嗤う。 「少し、黙るといい」 『黄昏の賢者』逢坂 彩音(BNE000675)が希望の輝きの弦を鳴らせば全身から飛び出す糸がフィクサードの喉を貫く。 彩音の意思が十全に反映された糸の動きは其れだけにとどまらず、スルガの持つ縄を断ち切り繋がれた人達の戒めを解く。 「あらあら、そんなんじゃ、妹ちゃんに嫌われちゃうよ?」 『迷い星』御経塚 しのぎ(BNE004600)はスルガに笑いかける。 「お前らを殺してまた捕まえに行けば済むことだ」 リベリスタに明確な殺意を向けるスルガに、しのぎは自分の機械の心臓がきしむように感じる。 普段のしのぎなら此処で2,3度は気絶しているところだが、しのぎの中に眠る彼女の記憶はそれを許さない。 「なら、さっさと殺しに来なよ。しのぎさんを」 ともすれば音を鳴らしそうになる歯の根を抑えて言葉を返す。 「とっとと逃げないとお前らにも当てちまうぜ」 自らに付与を付け終えた三影 久(BNE004524)が虚空に出現した数多の投擲剣に次々と手を添えて発射していく。 勿論それは彼が一般人を敵と認識しない限り、一般人に当たることはないのだが向こうからしてみればそんなことはわからない。 「ヒッ」 次々と向かってくる剣に悲鳴を上げて逃げる一般人に怯えさせたことを心の中で謝りながら久は攻撃の手をやめない。 自分が此処で人質に配慮するような動きを見せればフィクサードはそれを利用してくる。 そうならないようにするにはこうすることがベストなのだ、そう自分に言い聞かせながら。 南側で仲間が戦いを始めたころ、反対の北側の森の中で『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)が手筈通り、陣地作成を開始していた。 彼のバロックナイツの一人、塔の魔女の秘儀であるこの技術はかなりの難易度を誇るが、何度も使用している雷音だからこそ思考の余地が出来る、そして考えてしまう。 先程自分に『がんばれよ』とメールを送ってくれた。今は自分と同じようにあちらで戦っている筈の兄のことを。そして今自分の前の前で戦う女性のことを。そして自分を助けてくれた彼女のことを。 彼女は自分に、これからも誰かを助けるように、等と言ったわけではない。ただ、自分を助けたくて助けてくれた。 でも、いや、だからこそ彼女が誇れるような人にならなければならない。 「そろそろなのだ」 思考を振り払って、隣の『酔いどれ獣戦車』ディートリッヒ・ファーレンハイト(BNE002610)と頷き合い、タイミングを計って雷音は陣に最後の工程を終了させた。 ● しかして、構築された陣地はリベリスタ達の望む結果を出すことはなかった。 あくまで一般人を入れない陣地は逃げた一般人や範囲の境界線に居た一般人をフィクサードに追わせないことは出来て広場の中にいた者を弾き出すことはできない。 つまり、逃げ切れてなかったものは未だ、戦闘の余波を受ける形でフィクサードの手にかかっている。 歯噛みしながら陣地を白紙に戻す雷音の横をファーレンハイトが通り抜ける。 「ヌオオオオ!」 気合いの叫びと共に、大剣を上段から振り下ろす。 「面倒臭いことをしてくれるね」 挟撃の形を取られたことにスルガが舌打ちする。 不良品を処理すれば愛しい妹に会いに行けるはずだったのに、と言外に語っている。 「丁度いいじゃあないか、話題のアークを妹の為に倒したとなれば君の愛も完全に証明されるよ?」 彩音が再び弦を鳴らしながら攻撃の目を自分に向けようとする。 其処にやってくるのは先程剣で一般人を殺したフィクサード。 自分達の苦労の成果をひっくり返した彩音に苛立ったのはスルガだけではないようだ。 彼の指示を抜きにしてもフィクサードは集中的に彩音を狙っていた。 「何だい、『化粧品』を逃がされた位で躍起になって。 もしかして君らの言うカグラは血塗れにして顔を隠さないと見れた物ではない不細工だったりするのかい?」 サディストらしくクスクスと笑いながら皮肉を投げる。 「僕の妹を見たら、君は自分の不細工を恥じて自ら顔を焼くと思うよ」 美的感覚の頂点にカグラを置くスルガは最早そんな言葉には動じないが取り巻きは別だったようで、攻撃が彩音に殺到する。 あまりの集中砲火に彩音はたまらず膝をつくが、運命を燃やして立ち上がる。 「てめぇ達で持ち上げて、馬鹿にされたらすぐキレる。やってることはただの人形遊びだな」 フィクサードと一般人の間に割って入って、攻撃をその身に受けながら俊介が思い出すのは自らを兄と慕ってくれた女性の姿。 「愛する妹を馬鹿にされて怒らないほど僕も不感症じゃないんだよね」 ただ自分の言葉に従うだけでなかった、だけど可愛かった妹。 「そんで愛してるっていいながら妹に人殺しさせるんか? お前ら気持ち悪ぃよ」 妹との思い出を以て彼はスルガを否定する。 「本当に、悪趣味ですね」 一般人が少なくなってきた所に撃たれたエイフェルの氷弾がフィクサードを纏めて凍らせる。 その内一人、攻撃を集中されていた後衛の一人が倒れた。 「妹への妄執と共にくたばれ~」 陣地が構築されたときからスルガを狙いに走った麗華。 だがその代償は大きい。 他のメンバーが後衛を狙っている中一人突っ込むのだ、単体攻撃しか持たぬ彼女にとって分は良くない。 既に一度、運命による復活を使用している。 「愛を妄執といい変えるなんで、随分ひどいね」 振り下ろされる渾身の剣を避けるスルガ、反撃とばかりに弓を翻し、それに撃たれた麗華はここで倒れる。 「てめぇ、こいつがどうなってもいいのかよ!」 仲間が倒れたことにビビり始めたのか、フィクサードが手近に居た一般人を捕まえてチープな台詞を吐く。 ドラマや映画であれば、主人公は知恵を絞りこの人質を無傷で助け出せるのだろう。 だが、此処にいたのは久というリベリスタ。 投擲剣が一般人の脳天から生える。 「は?」 白目を向いて倒れる一般人を呆然とした眼で見つめるフィクサード。この場面だけ見れば善と悪がひっくり返ったようにすら見える。 「俺にとってさ、一般人助けるより裏野部倒す方が優先度高いんだよ。 人一人助けるってのはこれから先何十人殺すかも知れない裏野部を逃がす理由にはならねぇんだよ」 久とて本当はそんなことなど考えてはいない。しかし最初から決めていた悪党に弱みは見せないと。 今だって、人質を助けてフィクサードに攻撃出来る手段があるならそうしていた。 でも自分にはそれがないから、こうするしかないのだ。 決意と共に投剣を構える久にたじろぐフィクサード、そこへ雷音の放つ符が一枚。 それは空中で千切れ、その破片一枚一枚が無数の烏となる。 「烏よ集い給え」 無数の烏に呑み込まれたフィクサードもまた、そこで事切れる。 「本当だよね、獲物に構ってるよりも目的の狩人を狩った方が早いよ」 まるで、一般人なんて死んでもいい。そう考えているような言葉。 でも本当は分かってる、死にたくて死んだ人なんていない。しのぎの物でないしのぎの記憶がしのぎを苛む。 「此処にいる人達だって、貴女と同じこと、しのぎさんだって分かってるよ」 一度頭を叩いて脳裏に浮かんだ記憶を追い出す。 此処で記憶に負けて出来ることすらやらなかったら、それこそ彼女に怒られる。 「しのぎ……」 雷音の心配そうな台詞に軽く微笑む。 「大丈夫、大丈夫だから」 しのぎがスルガの方へ振り替える。 「で、君は本当にこんなことを続けていていいのかな?」 「……どういう意味だい?」 スルガの問い返しに答えるのは、ボロボロの体で未だ戦場に立つ彩音。 「こちらを止めに来たなら、あっちにもアークが行っているに決まってるじゃないか。今頃もう愛しの妹ちゃんは倒されちゃってるかもね」 「そうなのだ、君の妹の方へは僕の兄が向かっている。此処で一般人を狩るなんて悠長なことをしてていいのかな?」 雷音の駄目押しにスルガの顔色が変わる。敵の前で背を向けて走り出す。 「させねぇよ」 口から血を流す俊介の手がスルガを掴む。彼もまた一般人を避難させる中フェイトの使用を余儀なくされていたが敵意と戦意は満ち満ちている。 俊介の手から莫大な量の力が流れ込みスルガは進行方向とはあらぬ方向へ吹き飛ばされる。 「今まで自分が好き勝手しといて、自分の番になったら逃げるとか都合が良過ぎんよ」 「コイツらを足止めしろ! 僕はカグラの方へ行く!」 今までの様に言い返すこともせずスルガは指示を出して一目散に走りだす。 それをファーレンハイトや麗華の前衛組が止めようとするがスルガの指示に従ったフィクサード達が止める。 裏野部である彼らだが、カグラを可愛がるファンである以上スルガを逃がすのにある程度協力していた。 「其処を退いてもらいますよ」 エイフェルの炎が再びフィクサードを襲う。 爆炎を突き抜けるように飛び出してきた男の拳をファーレンハイトが受け止める。 それによって倒れそうになるがフェイトを代償に立ち上がり剣を薙ぐ。フェイトと引き換えにフィクサードが倒れる。 「私は君たちを此処から逃がすつもりはないんだ」 残り少ない魔力を込めた彩音の糸がフィクサードを串刺しにする。 途中、一人、また一人とフィクサードが倒れていく中俊介が投降を呼びかけるが、フィクサード達は止まらない。 「なら、あの世で詫びて来いよ」 閻魔の断罪の如く俊介の放つ断罪の光にまた、フィクサードが倒れる。 「これで終わりだな」 久の投げた十字手裏剣が最後のフィクサードの喉を掻っ切って舞台裏の裏には誰もいなくなる。 ● 走る、走る、走る。 革醒者の躰を持ってしても息が切れ、心臓が痛いほどの鼓動を刻む速度で。 蹴破るようにドアを開ければ、ステージの上には一人の少女。 「カグラ。よかった、無事だったんだね」 慈しむように名前を呼べば、いつも帰ってくるはずの呼びかけはない。 まさか、まさかまさかと思いながら、頭の中の嫌な予感を振りはらいながら近づく。一歩、二歩。 「あ、ぁあぁぁぁ!」 そして全てを理解したスルガが膝から崩れ落ちる。これも一つの舞台の終わり。悲劇の様な喜劇の幕切れ。 「大丈夫……僕がカグラを生き返らせてあげるから」 ――そして、幕が下りた舞台にアンコールの声が響きだす。 ● 「後は頼んだぜ」 久が言葉少なく広場を後にする。 自分で助けた一般人の安否を確認したいところであるが、自分は先程一般人の前で人を殺している。 近寄らない方がいいと思えた。 「ええ、任せてください」 急場の処置として仲間と傷ついた人たちに回復を施していたエイフェルが答える。 「私も失礼させてもらうよ」 傷を負っていた俊介と彩音はアークの処理班に抱えられて行く。 一般人も財閥下請の病院に運ばれるそうだ。 処理が一段落するのを見届けた雷音がメールを書き始める。 先に兄から応援のメールを貰ったから、こちらからお疲れ様のメールを送った。 其処で携帯を閉じずに、もう一通。 いつも自分に優しい兄や義父の姿と、妹に殺してもらうためと人を狩っていたスルガを脳内で比べる。 「どんな形でも、それは愛なのでしょうか?」 互いに互いを想い合うことが愛というならば、それはきっと愛なのだろう。 でも、雷音にはまだスルガのそれを理解することが出来はしなかった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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