●せやから東京もんは 「あんた、今何歳やと思ってるんや? うちかていつまで生きとれるかわからへんねん。遊んでばかりやのうてマジメに嫁はんみつけてきたらどないや!!」 大阪のオバチャンが息子の正史に向かっていきなり怒りを爆発させた。金色のパンチパーマが逆立って炎のオーラがバックに見えている。 拳に炎を纏わせた田丸富美江は電話越しで息子に迫った。 目がすでにイっている。無理もなかった。息子は大学卒業後東京の会社に就職していたが、この度会社が不況で潰れて無職になった。親に仕送りをしてもらいながら、いまだに仕事を真面目に探さずに日本橋のスーパーのレジでフリーター生活を送っている。中肉中背で容姿は普通。極度のめんどくさがりでネットのゲームが趣味のモテない男である。 「今からそっち行くで! 大阪に連れ戻したる!!」 そんなバカ息子を見るに耐えかねた富美江は電話を叩き切った。 だが、富美江だけではない。井戸端会議で富美江の愚痴を聞いた近所のオバチャン仲間たちも蜂起した。同じように日ごろから不満を持っていた近所の大阪のオバチャンたちが東京に住む自分たちの息子や嫁に対して一斉に怒りを爆発させたのである。 「あんなマズイみそ汁あるかいな! 味噌汁ゆうたら、白みそにきまっとるやろ。せやからうちは反対やったんや! 行くたんびにあんなの食わされたら死んでまう」 「東京の言葉は気色悪いで。なんであんな喋り方しとんねん。もう我慢ならへん」 「せやからもっとええ女をみつけやゆうたんや。うちみたいなべっぴんさんとかうちみたいなしっかりした大阪の女を探さんからこうゆうことになるんや」 「よし、こうなったらいっちょ東京に殴り込みに行ったろか。ちょうど息子にも言いたいことはようさんあるしな。みんなで美味しいもん食いながら観光兼ねていこか」 大阪のオバチャンたちは結託した。息子や嫁への不満からいつしか東京への不満や怒りに変わってしまっていた。興奮しすぎていてそこのところは誰も気がつかない。 大阪のオバチャンはこうやって東京に観光を兼ねて攻めることになった。もちろん、資金を節約するために夫のヘソクリをくすねて、夜行バスに団体で乗ってやってきたのは言うまでもない。 ●白みそはどこに置いたるんや 「大阪のオバチャン――フィクサードたちが、東京の日本橋にやってきた。彼女達はスーパーで大騒動を起こしている。このままでは他の買い物客や店員に被害が及ぶのは避けられない。何とかして大阪のオバチャンを東京から追い出してほしい」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が手短に説明した。あまりの状況に思わず説明を聞いていたリベリスタたちも溜め息をつく。 大阪のオバチャンたちはスーパーに白みそが売っていないことにいちゃもんを付けた。おまけに対応に当たった店員の言葉遣いが気持ち悪いと言って突っぱねた。その店員こそ富美江の息子の正史(35)であった。東京の悪口を言いながら他の客を襲い始めた。みんな自分のバカ息子や生意気な嫁にみえてしかたなかったのである。 「大阪のオバチャンを止めるには説得が必要だ。リーダーの言うことなら何でも聞くからまず富美江と話すのがいいだろう。その際はなるべく標準語を使わずに大阪弁で喋るのが望ましい。また、大阪のよいところを賛美するのも効果的だ。大阪を褒めて褒めちぎっていい気分にさせて穏便に大阪に帰ってもらう。もしそれでも言うことを聞かないようなら撃破するのもやむをえない。その判断はお前たちに任せる。くれぐれもこれ以上、大阪のオバチャンたちを怒らせて被害が出ないように気を付けて行ってきてくれ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月17日(水)22:39 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●にほんばし或いは、にっぽんばし 日本橋は日本橋といってもここは東京の日本橋。そんな日本橋の片隅にある小さなスーパーで大阪弁をまくし立てながら騒ぐオバチャン集団がいた。 「この溢れるパワー、流石大阪のオバチャンだね。でも大阪にも有名な物、日本一の物が沢山あると思うし、上手く説得して気分をよくしてもらわないとね」 『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)が遠巻きに様子を見ながら呟いた。ゴシックに身を纏った超絶美少女に傍目からは見える。 「子供を心配するのはわかるんだけど、今回のはちょっとやりすぎだよね」 『◆』×『★』ヘーベル・バックハウス(BNE004424)もアンジェリカの意見に頷いた。帽子をくるくる可愛らしく回しながら作戦開始を待っている。 「なんだいなんだい! 大阪のババアの為に大阪弁で話せだなんて私はゴメンだよ! 東の美女は西のババアに屈すると思わない事だね! 大阪に東京が負けてるなんて思わないね」 『tyoubabaa』鮫島 ジョーズ子(BNE002625)はすでに興奮して飛び出して行きそうになっていた。大阪のオバチャンに負けず劣らず喚いている。 「大阪のおばちゃんなぁ……おかん思い出してもうたわ。ここまでひどなかったけどな」 『他力本願』御厨 麻奈(BNE003642)はなんとかジョーズ子を抑えていた。しんみりと思い出に浸る余裕がほしかったが、そうも言っていられない。 「オーサカ……一度オーサカに足を踏み入れて無事に帰ってきたものはいないという……」 そんな麻奈の苦労も知らず、キンバレイ・ハルゼー(BNE004455)の頭の中には独自のオーサカ像ができあがっていた。 世紀末モヒカンがヒャッハーしていて、火炎放射器で消毒されたり、愛とか言うと何故か死亡フラグが立ったりする恐ろしい街のイメージ。麻奈が聞いたら激しくツッコむに違いない。 「地球最強の生き物、それは恐らくオバチャン。特に大阪のオバチャンは……別格だよね……さあ、ちょっとだけ懺悔して貰わないと」 『ピジョンブラッド』ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963)はそう言いながらさりげなく登場したがその女装姿に誰もが度肝を抜かれた。 「ふんわりモテワンピに完璧なメイク、ヘリウムで声も変えて今回もいい仕上がりってか――なんでやねん」 『痛みを分かち合う者』街多米 生佐目(BNE004013)がロアンの胸を激しく叩いて突っ込んだ。「やめて、パットが崩れる……」と、ロアンは必死に恥じらってぶりぶりと身体をひねるが生佐目は容赦しない。 「ピッピッピー」 工事用ヘルメットに光棒を持った『研修中』渡辺 佳奈(BNE004470)が店の前で交通整理をしていた。結界と立ち入り禁止のロープを張る。作業服があまりに似合いすぎて仲間のリベリスタ達もそれが佳奈だとは気づかない。 ●正体不明のべっぴんさん 「ちょっと待ってやオバチャンら! 大阪はベネチアに匹敵する水の都、東京なんかメやないで! スカイタワーなんか通天閣に勝てる訳あらへんやん。ビリケン様の加護もあるんやで。最近日本一の高層ビル、ハルカスも出来たしな。それに日本一古い遊園地は花やしき言われてるけど一回取り壊されてるやんか。断絶してない遊園地では枚方パークが日本一古いんやで! それに岸和田のだんじり、あんなすごい祭り他に無いで!」 アンジェリカがいきなり大阪のオバちゃんの前に突入して行った。いきなり現れた美少女の大阪弁丸出しのマシンガントークに誰もが唖然とする。 「あんたら、だれやねん?」 富美江が疑わしい目でアンジェリカを見た。その可愛らしい日本人離れした容姿とは違ってなぜかバリバリの大阪弁を喋っている。いったいこの子はどこの出身なのだろうか。いずれにしてもタダものではないと警戒する。 「ちょっとええか? 怪しいもんやないで見ての通りウチは手ぶらやし、そもそも戦闘向きやあらへん。潰すんは簡単やし、話だけでも聞いてくれへん?」 堪らず麻奈が助け船を出して富美江たちの警戒を解きにかかる。やんわりと麻奈に制せられて富美江もまず話を聞く体勢になった。なんだかよくわからないが目の前に居る少女たちは少なくとも大阪のことをよくわかっている。 一方、キンバレイはお店で混乱している買い物客たちに歩み寄って、佳奈と避難誘導した。ちょうどそこにいた正史に、そのピチTシャツからはりだしているものを腕を使って強調してみせた。 「ちょっとお願いしてもいいですか?(たぷん)」 「は、はい! よろこんで」 テンプテーションを使用してあざとく正史に迫るとすぐさま彼は店のシャッターを閉めに一目散にかけて行った。その勢いで他の男性客を中心にキンバレイは店の中から客をつぎつぎに避難させていく。最後に立ち入り禁止の看板を店の前に掲げて満足げに笑った。身体を張って胸をたぷぷんと揺らせる。 「うちら今取り込む中なんや。用事があるんなら後にしてもらえへん? 馬鹿息子をひっぱ叩かんとあかん。このままにしとくと一生結婚できひんのや」 そう言いながら富美江は、シャッターを閉めて戻ってきた息子の正史に鋭い目線を送る。アンジェリカたちの登場で気をそらされてしまたったがようやく本来の目的を思い出した。正史に向かって鉄拳で殴りかかろうとする。 「待って、お義母さん! 私、正史さんの彼女です。彼、今はふらふらしてるけど、将来の事はちゃんと考えてくれてる。私もちゃんと引っ張っていくから!」 すんでのところでロアンが富美江に止めに入った。これには富美江も驚きで目を大きく広げた。後ろで暴れていた勝江もトモコも手を止める。 「彼女……正史に彼女がおったんか……?」 そんなはずあらへん、と富美江はロアンの顔をまじまじと凝視した。そこには紛れもなく見た目は大層な美女が立っている。背は高くてスタイルは抜群だった。いささか筋肉質で体格が良すぎるがそんなことまで富美江は気が回らない。 「正史、ほんまなん?」 だが、一番びっくりしているのは正史本人だった。自分にこんな美女の彼女がいるはずがない。どうなっているのかまったくわからなかった。 「ほら、正史さん。今日にもお義母さんに挨拶に行くはずだったでしょ。私たちちゃんと将来まで考えて付き合ってるって。いつまでも紹介しないからしびれを切らして私のほうから来ちゃったよ。ね、正史さん?」 「あ、ああ……そう? だったような……」 困惑しながら正史はロアンに向かって返答した。いずれにしろこのままでは母親に強制的に大阪に連れて帰られる恐れがあった。とつぜん現れた正体不明の美女の意図はまったくわからないがとありあえず話を合わせておくことにした。 「正史! あんたどこでこないな美女見つけたんや! うちあれだけ心配しよったのになんでいままで一言もゆうてくれへんかったん!」 言葉とは裏腹に盛大な笑顔を作った富美江は息子の背中をばしばしと叩いた。あまりのオーバーリアクションに正史もさすがに気味が悪くなった。 ●東京のうまいみそ汁 「ところで、あんた白みそ汁は作れるんやろうな?」 大阪のオバチャンが真顔になってロアンに問いかけた。その鋭い目つきにさすがのロアンも一瞬ギクリとする。 「っていうか! 白味噌以外まずいだって? ちょっと店員キッチン貸しな。うまい味噌汁ってもんを作ってやるよ」 先ほどからうずうずして我慢できなくなっていたジョーズ子がついにダッシュで飛び出してきた。そのままの勢いで店の台所に乱入する。 「ちょっと正史、何見てるんだい! 人妻の魅力にメロメロなんだね! いやらしいねえ! こう見えても昔は【渚のお嬢】と言われたモンさ、ジョーズ子だけに家庭料理もお手のもんだよ! 旦那もこうして私の大人の魅力にハマっておちていったもんさ。まずいとか言ったババアが居たら西へ送り返してやるよ!」 速攻でジョーズ子は包丁を電光石火のように操って瞬く間に食材を斬ったかと思うと強引にみそ汁を作り上げた。紛れもない関東の赤みそ汁である。 「こんなもん食えるか!」 大阪のオバチャンが怒鳴る。あくまで白みそ汁しか食べる気がないらしい。それでも傍でじっとやりとりを聞いていた生佐目が進言した。 「まあ、まあ一口だけでもどうですか? 意外とこれおいしいですよ」 生佐目の言葉にしぶしぶみそ汁に口を付けた大阪のオバチャンたちは、その瞬間あまりのおいしさに感動して言った。 「東京にもこんなうまいみそ汁あるなんて思いもよらんかったなあ」 大阪のオバチャンたちはジョーズ子を見直した。富美江だけは、それでもウチのみそ汁に比べたら百年早いけどな、と呟く。 「日本橋のスーパーに来てもしょうがないよ! 東京の観光をなめんじゃないわよ! 正史! 彼女と西のババア連れて準備しな! アキバの電気街行って雷門行ってそっから巣鴨行くよ!」 ジョーズ子は気を良くして無我夢中で店を爆走して出て行った。そんなパワフルな彼女に釣られるようにして大阪のオバチャン一行も観光に飛び出た。ジョーズ子のハイテンションさに呑まれながらも炎天下の中を一行は東京見物した。 「こんにちは、ようこそ函館へ!」 へーベルが帽子を取って元気よく大阪のオバチャンたちに挨拶する。 「なんでやねん、ここは浅草や!」 麻奈が堪らずツッコむ。 「まあまあ、そないおこらんと。なあお嬢ちゃん、あそこにあるせんべえ買ってあげるから一緒に食おうやないか」 「おおきに。いただきまーす」 へーベルは覚えたての大阪弁を使ってほほ笑んだ。すでにへーベルは大阪のオバちゃんたちと一杯喋って仲良くなっていた。 「食べ物もな、たこ焼きお好み焼き串カツは勿論やけど、ボクの一番は蓬莱の豚まん。あれ食べたらもう他の豚まん食べられへんわ。まさに『ある時』はハッピー、『無い時』はショボンやで」 アンジェリカはへーベルに大阪ネタを喋りまくる。それを横で聞いていた富美江も感嘆してアンジェリカに大きく頷いていた。 「ヘーベルは大阪にいった事ないけど、笑う人がいっぱいで。あと、ネタを振られたらボケなきゃって思ったり相手を笑わせようとするのが、当たり前みたいな気持ちは好きだよ。それ自体は面白く無かったとしてもそういう雰囲気やフォローのしあいで結局面白くなっちゃうしそう感じる」 「お嬢ちゃん、大阪興味あるんやね。一度来てみたらどないや? お嬢ちゃんならいつでも歓迎したるで。今度はたこ焼きいっぱい食わせたる――そっちのあんたもそう思うやろ?」 さっきから黙ったままの生佐目にむかって疑いの目を向ける。富美江はハイリーディングを使って生佐目の心の中を覗いてみた。 (たこ焼き、お好み焼き、たこ焼きお好み焼きサイコー) 「ふうん、あんたも大阪が大好きやったら素直にそうゆえばええのに」 (正直、大阪の食べ物って、消化器に負担が大きいんですよね。そうでなくてもドギツい文化風俗なんですから、引きこもっていただきたいものです。ご子息が大阪から離れるのも、推して知るべし。理解いただけたのなら、さっさと帰っていただきたい。ぶつぶつぶつ……) 生佐目はオバチャンが自分から離れたとたん、そう心で愚痴っていた。 ●誰もツッコまない 「なあ、アンタらホンマに付きおうとるんかい? 今日一日ずっと見てたけど、いつまでも喋らんし手も繋ぎよらん。ちょっとここらでキスしてみせてくれへんか? 付きおうとるんやったらそんくらいできるやろ?」 「そうはゆうたかって母ちゃん……」 正史が恥ずかしそうにもじもじとする。ロアンは冷や汗を掻いていた。相手が美女ならともかく正史は紛れもなく毛の薄い中年のオッサンだ。 「そないなことゆうてるからいつまでも進歩せんのやで! 男ならバシッといき! バシッと!」 富美江はロアンと正史を強引にくっ付けると、そのままキスさせようとした。ロアンの唇と正史の唇が距離を徐々に詰めて行く。 「あ、あ、あ」 正史のほうは緊張でぶるぶると唇をタコのように突き出してくる。目を開いたロアンはあまりの気持ち悪さに正史を突き飛ばしてしまった。 「あんた、うちの息子になんてことするんや!」 富美江は怒りの形相でロアンに迫る。大事な息子を他の奴に叩かれて我慢がブチ切れていた。自分が叩くのは構わないが他の奴は誰であろうと許せなかった。 「ぐはああああっ!!」 ロアンは思いっきり胸に鉄拳を食らった。立て続けに殴られて倒される。その瞬間、ロアンが装着していたパットが嫌な音を立てて潰れていた。 「あんた――まさか」 富美江たちの形相が一瞬にして変わった。 「よくもうちの正史を騙してくれよったな。もう許さへん!」 富美江が仲間に合図してリベリスタ達を包囲する。道の真ん中で突然おきた騒ぎに対して佳奈が冷静にホイッスルを吹いて一般人の安全を確保する。 「あんたら全員グルやったんか! 叩きつぶしたるで!」 激怒した富美江と勝江とトモコが倒れたロアンを蹴り飛ばして、他のリベリスタに突っ込んできた。堪らず生佐目がスケフィントンの娘で反撃に出る。さらに生佐目は富美江にハイテレパスを使用して、お好み焼きについて延々と、広島焼きとの差、ピザカットの是非、ソースの濃度、その他諸々を問い続けた。 「あああ、頭が混乱する。そんなのいまどうでもええやん!」 ついに富美江が頭を掻きむしって暴れ出した。それを横目で見ていた勝江やトモコたちがなんとかして助けに入ろうとする。 「何で判らへんの? アホンダラ!」 アンジェリカはバッドムーンで全体攻撃をしてオバチャン達を巻き込んだ。オバチャン達もなんとか反撃に出ようと前に出てくる。 「ピピピッピーピピ」 「あんたじゃまやでそこどき!」 佳奈はとっさにポケットティッシュ3つを大阪のオバチャンに向かって配った。あまりに突然のことに勝江たちも素直にそのティッシュを受け取ってしまう。 「あ、おおきに」 「ピピピッピーピピ」 佳奈はホイッスルを咥えたままどこかに行ってしまった。戦いの意欲を削がれてしまった勝江たちはもはやどうしていいかわからない。 「ウチかて大阪の女や。おかあはん達の言いたい事はようわかる。けど暴れたらあかんで大阪のイメージ下げるんは嫌やろ? ウチはな、誇りと自信がある。よそをけなさんでもウチらが一番やってな。その気持ちがあるんやったら、どっしり構えてたらええねん。それに郷に入れば郷に従えなんて言葉もあるしな。ま、あれや。怒ってるより笑ってる方が大阪女には似合うとる。東京もんに喧嘩売るよりボケの一つで笑いでも取れ、なんてウチのおかんは言うてたわ」 麻奈の言葉にアンジェリカも感極まった。 「そうやで。そんな素敵都市大阪のオバチャンらは、人情味たっぷりでボクの憧れなんや。飴ちゃんくれるしな。ボク両親おらんで、大阪のオバチャンらみたい人がオカンやったらええな思てたのに、こんな事して。ボクを幻滅させんといてや。お願いや!」 アンジェリカは涙を見せてまで富美江に向かって呼びかける。富美江ははっとしてようやく戦闘態勢を解いた。 「これは一本取られたな。座布団一枚もってきお嬢ちゃんたち」 富美江はようやく笑顔を見せた。 オバチャン達に大阪に帰ることを指示する。もうここに用はなかった。正史の元気な姿を見れたらそれで満足だった。 正史が帰って来ない寂しさでついこうやって押しかけてしまった。それももう親離れをするときなのかもしれない。 「此処でがんばる息子さんも応援してあげてほしいな。それでも心配ならヘーベルもたまに様子見に来てあげようか? 息子さんが不安なのは同じ気持ちだよ」 「へーベルちゃん、あんたらみたいな友達持てて正史は幸せもんや。これでやっと安心して大阪に帰れる。もし寄ることあれば遊びにきてや」 「おおきに。ほな、待っててやー」 へーベルがにこにこ笑顔でオバチャン達に握手した。 富美江が帰ろうとすると、佳奈が急いでやってきた。お土産に店の棚から堕ちていたひよこの形をした饅頭をすばやく手渡すと「ピーピピピ、ピッピピ」とホイッスルを吹きながら颯爽と去っていた。 「――ほな、正史。しっかりロアンはん支えるんやで。ロアンはんも、さっきはひどいことゆうてすまんかったな。せやけど、貧乳やからってパットで誤魔化さんでもええねんで。素の自分が一番大事や。これからも正史を支えていってな。それから結婚式にはちゃんと呼ぶんやで。ほな、元気でな」 大阪のオバチャン達は正史の車に乗って駅に戻っていった。リベリスタ達もひとまず仕事が無事に終わってほっと一息つく。 「色々あったけどね、実は私東京に住んだことないんだよ……ホントこれ一体どういうことなの?」 ジョーズ子の言葉にアンジェリカと麻奈がびっくりする。先頭で案内してはしゃいでいたのに実は何も知らなかったのかと呆れた。 「オバチャンがいかに暴れようと新世紀救世主ヤミーの力によりジャイアンツはタイガースを打倒するのですっ!」 キンバレイが胸をたぷんとさせて格好つける。 だが、胸の潰れたロアン一人だけが顔を真っ青にしていた。 「えっ、結婚式ってどういうこと? あれ、もしかしてまだバレてなかったの? それじゃ私これからどうしたら……」 ロアンの独り言に誰もツッコまなかったのは言うまでもない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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