● 「お兄さんの太くて熱いのすーっごい!」 真っ赤、真っ赤、真っ赤、真っ赤。 ペチャペチャペチャペチャ音が鳴る。周囲は砂利に混じった赤色が広がっていく。 「それですーっごく長くて、あはっ、好きになっちゃいそう、ふんふん、ここはこう繋がっているのね……!!!」 この色彩、この味、この香り!! 「素敵だよね、お兄さん身体! これは何かな……あ、なんか臭い! あ、でこれはなんだろう、ちょっと硬いね、あは、あはっ、あははははははははは―――!!!」 ● 「皆さんこんにちは、今回のお相手はアザーバイドです」 『未来日記』牧野 杏理(nBNE000211)は淡々と喋りだす。相手のアザーバイドの識別名は『標本家』。あらゆるチャンネルを飛び越えては、知識を探求する類の上位の人物だ。しかしその収集している情報とは生き物の仕組みについてだ。実際に解体して中身を調べる時もあれば、生活の仕方や食事、子孫繁栄、その他諸々までを知りたいアザーバイドだ。 「ま、まあ、その実際に解体……とか非常に困りますし、神秘である存在のアザーバイドが一般人に手を出して良い事はありません。何かが起こる前に、アザーバイドを討伐、または帰還させて下さい」 標本家は夜中の0時丁度に、とある公園の中から現れる。何も無ければそのまま公園に居るカップルを襲っていく様だ。そうなる前に対策は必要だろう。幸運にも標本家が来るまではまだ時間は沢山ある。 「できれば、穏便な対処を。上位の方ですし、その上位チャンネルといざこざを起こしたくはありませんので。では、よろしくお願いします」 杏理は深々と頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月23日(火)22:59 |
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■メイン参加者 7人■ | |||||
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● 空間が欠けて、ぽっかい空いた穴。その奥から手が伸び、裂け目を掴んで、ぬっと出て来たのはどこにでもいる少女。 「最下層! なんて汚い場所なのかしら!」 「汚い場所で悪かったわねっ」 『ヴァイオレット・クラウン』烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)が穴から上半身だけを出す少女に、むっと顔をしかめたのは一瞬で。 「なんか居る。なんか言ったかな?」 「何も言ってないです♪ ウェルカムですよ、標本家さん☆」 すぐに表情をにっこりとしたものに変えた烏頭森。 「貴方たちは何者なの!」 「貴女の来訪に気付いた者です」 前に出た『残念な』山田・珍粘(BNE002078)は、標本家の顔を食い入るように見つめた。何処の国にも無いような整った顔の部品に、ピンク色をした髪が綺麗に乗っかっていた。 ふむふむ、これは合格点をあげてもいいくらいだ。珍粘は己の趣向が満たされ、にやりと満面の笑みを浮かべた。釣られて標本家も訳も解らず、珍粘を見ながら笑って見せる。 「来訪に気づける、それ即ち予知の力! さあ、その力の出所を――」 「お待ちを」 『無何有』ジョン・ドー(BNE002836)は珍粘と標本家の間に割って入った。いくら標本家と言えど、万華鏡の力に興味を持たれては困るのだ。最悪それを寄越せだの、見せろだの言われて、おいそれと望みを叶える訳にはいかない。できる事と言えば、違う話をして予知の事を紛らす事。 「まずは、穴から出ては如何でしょう? 手をお貸し致します」 ジョンの紳士的な態度に標本家はうっとりとした顔をした。ジョンの差し出した手に標本家の手が乗り、よいしょと身体を持ち上げて地面に足が着いた。 『刹那の刻』浅葱 琥珀(BNE004276)は優しい笑顔を灯したまま標本家に近づいた。 「この世界について調べに来たんだろ?」 「貴方たちは教えてくれるのでしょうか!」 「できる限りの事は教える。皆、君を満足させるために集まったようなもんだしさ!」 手応えを感じた琥珀の後ろ、『Le Penseur』椎名 真昼(BNE004591)は花火を片手に標本家に近づいた。 「知ってるかな?」 「それが何か教えてくれるかな?」 花火の説明をする最中、真昼は目隠しの奥から標本家の興味津々に輝く瞳が見えていた。知識の探求、それこそ彼女の存在意義なのだろう。できる限り彼女の頭を満たしてやって、帰ってもらう事が真昼たちにできる最善の行動だ。 実際に花火に火をつけ、赤い炎が雫の様に落ちていく様を見て、一通り花火の説明を終えた時、標本家は拍手をしながらそれを手記に纏めていた。 なんだ普通の女の子じゃないか。真昼はほっと肩を落とし、標本家とは真逆に感情を全く見せない妹の事を考えた瞬間だった。 「!」 レディ ヘル(BNE004562)が何かに気づいてハッと顔を上げた。組み上げた術式、己の魔力を底上げる魔術。 笑顔の琥珀の頬スレスレを、何かが風を斬った。 「危ないよ、椎名ちゃん☆」 『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)が真昼の肩を掴んで後ろへと押す。その前方、突如大きな鉈の刃先が真昼の鼻の上、目隠し寸前を通過していく。 「あっれー、ちょっとだけ中身を見るだけだよ、何も恐くないよ?」 琥珀の頬がぱっくり切れて、血が流れている。そして真昼の背筋に、嫌な電撃が走った。まるで餌にされている。実験動物の様な! 「貴方たちから貰った知識は大切にするよ、でもね、でもね、標本家は、貴方の身体の仕組みも見せて欲しいなーなんて! 特に其処の白い奴の、肩についている白い物体!」 「オレの全財産!」 真昼の腕に絡んでいた蛇が何かを察して、彼の服の中へと消えていった。 「うふふ、やるならどうぞ、私を狙って下さいませ」 珍粘は鉈が向かうであろう先との間に立った。可愛い子に弄られるならそれは本望である。その為に此処に居ると言っても過言は無いくらいだ。同時に解放した神秘が己を包み込み、準備は万端。 ぶん、と投げられた鉈は珍粘の胸にざっくりと入った。だからといってその傷はすぐに再生していってしまうのだ。それでは標本家は満足できない。 「やだー皆楽しそうー!」 烏頭森も己の真紅のカードの束から一枚抜き。 「ジョーカー出ちゃった!」 そのカードの角を標本家の喉元に突き付けたのだ。 「戦闘行動は、ご遠慮願いたいのですが」 「これはあくまでも探求なのさ!」 ジョンは頭脳演算を組み上げ、気糸の出す指をこつん。標本家の側頭部をつついて静止を促す。葬識はそのまま、2本目の鉈を投げようとするやんちゃな腕を掴んだ。 「解らない。だから解体する。そうでしょ? 君も、標本家ちゃん」 「君も? 貴方も?」 葬識が抑えていた手は、よく解らない馬鹿力によって離され、鉈が真昼を狙う。 「なら邪魔しないで頂戴にゃぁぁぁあん!」 身構えた真昼、だが、間抜けな声が聞こえて一気に全身の力が抜けたのを感じた。 というのも、標本家が投げるモーションしていた最中、葬識が分厚い本の1ページを開き、そのページを標本家の顔に叩きつけたのだった。 内容は人体の彼是について。標本家にとってはこれとない逸品だ。現に、標本家は分厚本の中身に無我夢中に成っているではないか。 「これは……神の書物か!」 「いや普通の医学書だけどねー☆」 「いくらでこれを譲ってもらえるのでしょう!」 「タダでいいよ」 役にたててもらうなら幸い、と。 そんな一連の一部始終を見ながら琥珀は頭を掻いて苦笑いをした。 「好奇心旺盛なアザーバイドとは聞いていたが……此処までじゃじゃ馬たーなぁ、あ、悪いな」 こくりと頷いたヘル。彼女が送った天使の息は、すっかり琥珀の頬を元通りに治していた。次治さなくてはいけないのは――。 「――あらら、なんだか丸く収まっちゃったんですねぇ」 己に刺さった鉈をずぶりと抜いた珍粘。真っ赤な血が滴るソレを、標本家へと丁寧に返した彼女は笑いながら言う。 「では、色々お教えしましょうね」 ● 「では、色々ありましたが、私から!」 珍粘が標本家の目の前に、ドサドサと積みあげたのは人間標本に恋愛小説。 「此方は私からの贈り物です。全て書物ですが……」 今更ながらだが、この標本家、最下層に来ても言葉は通じる。だが文字は大丈夫なのだろうか。疑問に思った珍粘は、恋愛小説を捲っていく標本家を再びまじまじと見れば、おそらく文字を理解している様に彼女の瞳は文字を謎っていた。 「不思議ですねぇ、読めるんですか?」 「ええ、勿論。色んな世界に行っているこのアタシが、対策を怠ると思っているですか!」 曰く、彼女の特殊能力なのだという説明を受けたのだが、何ひとつ理解できない。そういうものなのだ、という様に理解するしか無いものなのだ。コホン、とひとつ咳をしてから珍粘は説明を加える。 「この世界の人間を解体されては困るのです。代わりにこういった資料をお渡ししますので、それで我慢して頂けないでしょうか?」 「うーん……」 あまり良い方向では無いうめき声が聞こえる。 ならば! 「先程も言いましたが、私なら解体して下さっても構いませんよ!」 「うん!!!」 ……うん? ――しばらく音声のみでお楽しみください―― ガッ 「成程! 此処が此処に繋がって、あ、こっちはなんだろう、どくどく言ってる、凄いあったかぁい」 「ああん!」 くちゅぐちゅぶちゅ 「こっちは、そっか、凄い本の通りだ、何一つ間違ってない訳ね」 「んああ!!」 ぴちゃぴちゃ くちゅ 「これはなんだろう、ていうかさっきからこの赤い水が邪魔ね! もう、でも、ふんふん!!」 ――次に行こう。 其処此処に大量の血が流れているが、気にしてはいけない。それを流した当本人はベンチに寝ていて、びくんびくんと戦闘不能。 「では、次は私めが」 ジョンが用意したのは植物の彼是。生花から植物図鑑まである。今の時期のメジャーと言えば朝顔だろう。 「これは……」 「花、植物も立派な生物でございます。見たことはありませんか?」 異界にも勿論植物というものはある。例としてはフュリエ達が住む世界がそうだ。だが、朝顔を見たのは初めてだと彼女は言う。 「植物も種子を残し、子孫繁栄に務めるもの。興味がお有りでしたら実際に育ててみるのも良いと思いますよ」 標本家の手に渡されたのは朝顔の種だ。それを見て標本家はニヤリと笑う。 「解った! なら、凄く素敵なの育ててみるわね!!」 「一緒にレッツクッキングしませんか?」 植物に見とれていた標本家の腕を烏頭森は引っ張った。 いつの間にかに設置されていた調理セットに、料理器具。標本家が何をするのかと問えば。 「カレーを作るんですよ! 此方の世界では一般的な家庭の味というやつです!」 「かれー……?」 突如始まった、カレー作り。暇なリベリスタは働け働けと烏頭森は急かす。ジョンは手際良く野菜を切り、一緒に葬識が鋏で野菜を……ちょっと待った、その鋏、色んな意味で待て。真昼はお米を洗い、琥珀は鍋の番をして、ヘルと珍粘は休んでいてい下さい。 「カレーは平和の味なのですよー。フィクサードさんだって大好きで、一緒に机を囲んで食べる時だってあるくらい~」 「フィクサード?」 「ああ、フィクサードというのはですねぇ……」 まるで親子の様な形になってしまった二人。しばらくした後、食欲を突く香りが公園中に回った、夜中に。少し焦げてしまったのは愛嬌だ。まあ大丈夫、コゲもひとつのコクになるだろう。 「さあ、食べてくださいね! そしてカレーの使徒となって異世界に広めるが良い!!」 「お、おう……?」 不思議そうに見つめるカレー。なんだかよく解らない色だと吐き捨てた標本家。だが、次の瞬間にはカレーの使徒になり、もう戻れない――。 また一人ファンを作ってしまったと、してやったりな顔をした烏頭森は満足気に首を振っていた。 「食べる、という事はするんだな」 「食べなくても生命活動上問題無いんだけど、食べたい時は食べるわね」 スプーンを加える標本家。その隣に琥珀は座った。さあ、何を教えようか。 「この世界は主に人間が文化を作って地球上で暮らしていて、歴史を紡いでるなー」 琥珀が彼女に教えるのはこの世界の大まかな所。同じように服を着て、毎日生きるために動いている。そして何より、子孫繁栄の事……。 「恋ってのは、異性を好きになって、胸がキューンとしたりする現象。愛ってのは、相手を慈しむ感情。恋愛ってのは、恋や愛を育む行動だなぁ」 「うんうん、さっきレンアイショウセツというものを見せてもらったよ。なかなかに探求しがいが有るものとみた!」 標本家はこれでも性別的には女と調べられていた。だからこそか、そこらへんの女子高生並みに恋愛沙汰には興味があるようだ。琥珀から見える標本家の目の輝きが凄い。 ふと、琥珀は人形を取り出した。それを抱きしめたり、口元にキスをしたり。見ている標本家が顔を真っ赤にした。 「誰にでもこういう行動をとったりしちゃだめだぞ? 君が好きだ!って思う相手が出来た時の為に、取っとくんだわあああ!!」 「私、お前が好きだわわわわわあ!!」 「嘘つけ!! 身体の震えが半端ない!! 試したいだけだろおお!!」 琥珀の膝に座り、顔が向き合う形。それでいて標本家の顔は琥珀の顔へと近づく――が、標本家がキスしたのは琥珀が持ち合わせた人形であった。 数分程格闘した末、二人はぜえぜえ息を吐きながら地面に転がっていた。琥珀は最後に書物をひとつ渡した。 「生殖行動については、すっごい教科書があるから特別にこれをあげよう! ただし、帰ってから見る事」 それには大きく保健体育と書いてあった。 「でさ、スーツ似合ってるね! 俺のストールどう? 好み?」 「なかなか素敵さ! 誉めてるのだよ、少年ッ!」 標本家は琥珀の胸に向かって、指で作った銃をバーンと撃った。 「何かを分解、解体しようという気持ち、全てを知りたいという気持ちは、愛に近いのかも知れないね」 愛の反対は無関心だと、いつか誰かが言っていた。愛があるからこそ、そのもの全てを知り尽くしたい。 葬識はカレー鍋をDホールへ突っ込ん出でる標本家へと話しかけた。 「知り尽くす、というのは私より更に上の上の上の住人でも無い限り無理だと承知しているのよね。でも知りたいの、有象無象。知る事こそ私の生命活動」 「俺様ちゃんは「心」というものが識りたい」 標本家は彼へ向き直った。 「標本家ちゃん、君の知識を聞かせて。今まで何を識ってきたの、アザーバイドにも心が宿るのかな? 「魂」と「存在」はどこから来てどこに帰るんだろうね」 それを識るために人を愛する。二つに別れた肉体の、どちらに魂や心が存在するのかと――圧縮された質問が標本家へ向けられた。 「私は知識を欲するがそれを外部へ漏らす事はけして無い。 ただ、独り言を言う事はあるよ! 在ると思えば全て有るもの。けれど、概念として創られたものを物理的に見ようとしても……あ、これ私の見解」 曰く、それが欲しい答えに成るとは思っていなければ、間違いを言っているとも思っていないという。ていうか独り言。 標本家は葬識の胸の鼓動に耳を当てた。 「試し尽くせば良いよ。でも他人の答えで満足なんていう近道は嫌い!」 こんなもんで如何? と標本家は葬識から離れて一礼した。ならば、最後に。 「チャンネルを渡る旅人の終わりは何処にあるのかな?」 「それは私が終わりが在ると思わない限り、無いものなのだ。君は全てを識った時、どうするのかな?」 聞かせてよ、葬識。 『この世界では、軍・警察よりも一般人の方が多くの武器を所持している』 ヘルが標本家の脳に直接話を振った。それにビクついたのか、標本家は誰だ!と言いながら周辺を見回している。そのうちヘルが私だ、と言う様にして手を振った。 「素晴らしいな、テレパシーというものなのだろうか。この世界、不思議すぎる」 穴が空くくらいに標本家はヘルを見ていた。ヘルはそれがむず痒そうに、小刻みに揺れながらも話の続きを送るのだ。 『勢力領域を得るために、一定の文化を持ち始めた頃から同族と争っている、一方で平和を結ぶこともある』 「愚かだね、何処の世界も戦いの上に平和が成り立っているよ。少なくとも、私が見て来た世界の話ではあるけどね」 どこにでもある話なのだろう。在り来たりな話なのだろう。それでも標本家はヘルの話を真摯に聞いていた。 『この世界で超常存在の伝承や神話は嘗ての覚醒者や外来のアザーバイドだとされている』 「それでこそ最下層ね。一番の不利益が被る場所とも言えよう。それはまるでパンケーキ、あ、なんでもないわ」 仮面の奥でヘルがどんな表情をしているのかなんて標本家には解らない。彼女が何を考えているのかが解らないと同じように。 だが標本家はヘルの仮面の奥を見つめた。細くした瞳で、聞く。 「その、覚醒者について詳しく聞かせてもらおうかしら」 とその時、ずずいと何かがヘルと標本家の間に入って来た。それはまだ火が点いていない花火で、それを持っていたのは真昼。 「息がつまりそうな話は終わりでいいかなって。興味、あるんでしょ?」 花火。 真昼から手渡された花火に火を点け、炎で遊ぶ。楽しむためには十分な風物詩だ。 「そこ覗いたら、危ないで――」 「あっつううう!!!!!」 「――すよ、って遅かったですね」 突然花火の先端を見ようと、炎を噴き出している部分を覗いた彼女が悶えていた。真昼はため息混じりに、大丈夫?と聞くが、流石上位の住人、次の瞬間には何も無かったように戻っていた。 「次は覗いたりしたら駄目だよ。はい、これ……線香花火」 落したら負けな、アレ。 不安定な紙を掴んで、標本家は険しい顔をしながら動かない様にしていた。そんな姿にクスクス笑う真昼。そして! 「それ受け止めたら駄目で――」 「あっつうううう!!!!!」 「――すよって、あ、うん、そうなる気がした」 学習しないのだろうか、標本家。真昼は苦笑いしながら、公園の蛇口へと彼女を連れていく。 蛇口から零れていく水に手を当て、冷やす――が、やはり次の瞬間には何も、痕さえ残らず怪我は消えていた。 真昼には人を解体してまで中を探ろうという彼女の行動は理解不能だった。だがいざ話してみれば、解り合える。きっと、そう信じて止まなかった彼。 だからこそ、今、一緒に花火で遊んでいる上位の人物という存在が、同じボトムの住人と遊んでいるかのような錯覚を感じていた。変わらないのだろう、何処の住人も。皆、必死に生きている。 「良かったら、またおいで。コレあげるから。また来るなら呼んで欲しい」 「んー?」 真昼が彼女に送ったのは通信機。それが世界と世界を繋ぐかはさておき。 「知りたいなら、人に迷惑かけちゃ駄目だよ」 次は、知りたいものを教えよう。もし次があるというのなら、最優先に教えるべきはこの世界の常識というものかもしれない。 「今度は突然斬ったり、迷惑かけないと誓おう」 時間的には早朝か。遠くの空は明るく成ってきている。 光が差す場所で、標本家はDホールへと足を突っ込んだ。空間の奥へと消えていく身体、だが振り返り。 「汚い世界と言ってしまったのは、訂正と詫びを」 けして崩壊させぬように。私の楽しみが無くなっちゃうからね。 頼んだよ、最下層の住人よ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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