● 淡い柑橘の香りが、穏やかに風に流れていく。 トタンとベニヤの海の家を思わせるバラックの店内には、青と白の星型ライトが所狭しと吊り下がっていた。 青い海と白い波、ひんやりとした色の光の海から外に出れば、灯るのは穏やかな色のアロマキャンドル。 目を奪うような色鮮やかな光ではないけれど、地面に落ちた星の海。 空を見上げれば、月が輝いている。 年に一度、雨の多いこの時期の晴れた日にだけ現れる小さなお店。 シンデレラ、シャーリーテンプルにサラトガクーラー、ローズソーダ……色鮮やかなノンアルコールのドリンクを片手にお喋りする場所。 『流れ星入りで』と頼めば星型のモールドに溶かし入れて作ったゼリーがドリンクに入れて運ばれてくる。 野菜スティックやドライフルーツ、小さな金魚鉢に入れたアイスを突きながら長い夜を過ごせばいい。 今年の新商品は、カラータピオカと様々なシロップを使ったセルフバー。 グラスにカラータピオカをレードルで一掬い。 ブラッドオレンジやライチ、レモンにアマレット、お好みのシロップを注いで、傍らにある炭酸水か水で割ればきらきら輝く自分だけのドリンクが完成する。 自分の好きなドリンクを作って夜に浸るも良し、誰かの為に考えて作るも良し。 月と星に溢れた夜を、始めよう。 ● 「ね、皆さん。ちょっと夜のお出掛け、しませんか」 薄っすら笑った『スピーカー内臓』断頭台・ギロチン(nBNE000215)が告げたそんな一言。 「去年も来たんですけどね、リベリスタの方がやってる出張店舗みたいな感じで、この時期だけ三高平市の郊外に開くんです。ノンアルコール中心のメニューなので、未成年の方も安心ですよ」 暗くなってから、星の明かりの中に開く店。 防虫を兼ねたアロマランプを道標に、辿り着くのは星の海。 「お客さんは普段は女性客やカップルが多いみたいですけど、男同士や一人も歓迎だそうで。店内にも屋外にも小さなテーブルは沢山用意してあるらしいですから、ちょっとゆっくりしたい方も是非」 そしてよければぼくを構ってください、とギロチンは笑う。 「大声で騒がなければ、普通にお喋りしても大丈夫ですよ。なので友達同士お誘い合わせの上でも楽しんでください。一晩だけ、アーク名義で貸切にして貰ったので遠慮なく」 出したのは、名刺サイズの地図とメニュー。 誰かを誘うならば、これを見せて予定を聞いてみればいい。 「……楽な状況の時、っていうのはあまりないものですから。とは言っても張り詰めてばかりでは持ちませんし、――良ければ一晩だけでいいので、少しだけ、息を吐きませんか」 ほんの少し、笑みを変えてギロチンは首を傾げ――地図を差し出した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:黒歌鳥 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月28日(日)23:53 |
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● 風に合わせて、アロマキャンドルの炎が微かに揺れる。 時にゆらりゆらりと動く光は、まるで本物の波の様。 「わぁ……」 青と白の星が浮かぶ。波間の光が淡く降り注ぐバラックは、そこだけ幻想の世界を切り取ったかのようだ。成程、これは……女性客やカップルが多い、というのも理解できるというもの。 リセリアは納得し、傍らの猛へと視線を移す。彼は面白そうに星のランプへと手を伸ばしたりしていたが、顔を向けて一つ笑った。 実はノンアルコールカクテルはよく解らない、という猛に、リセリアも同じく首を傾げる。 「折角だから、このセルフバーってのを体験してみるか……リセリアもどうだ?」 「セルフバー? 自分で選んで作る……面白そうですね。私もそれにしてみます」 透明硝子の中に入ったパステルカラーのタピオカをグラスに零して、シロップを注ぐ。後は炭酸水でなみなみと満たせば、泡にそれぞれのシロップの香りが弾けた。猛は鮮やかな赤い色、リセリアは仄かなレモンイエロー。濃縮された甘味が割られてぱちりと弾ける味わいは、舌にも嬉しく美味しいもの。 「そうだ、リセリアのも一口くれないか?」 「え? ――じゃあ、猛さんのも一口ください」 顔を見合わせて、笑ってグラスを交換する。この良い夜の、記憶に残るように。 消えぬ流れ星に、願いを。 「フツ、お疲れ様。無事に帰ってきてくれて……ありがとう」 「オレの方こそありがとな」 優しく目を細めて、心の底から告げるあひるにフツは穏やかに微笑んだ。危ない場所に出掛ける時は、いつも心の中で行ってきます、の言葉を彼女にかけている。それは、彼女がいなければできない事だ。さんきゅー、と重ねる言葉はいつも通りだけれど、心からの感謝を込めて。 世の中は沢山の痛みと辛い事に溢れてはいるけれど、この時ばかりは、共に穏やかな時間を。 フツにはノンアルコールのモヒート、あひるにはシンデレラ。お任せで出されたドリンクには、互いのそれと同じ色――オレンジの星と、ライチの透明な星が浮かんでいた。 「明日も、フツと笑顔で過ごせるように、流れ星にお願いして、飲み干そう……!」 「なるほど、これならすぐ消えないからイイネ。オレも、あひると笑顔で過ごせるようにお願いしとこう」 「フツの瞳に、乾杯……!」 「ウム、乾杯!」 ちょっとはにかみながら告げたあひるの言葉に、フツも少しだけくすぐったそうに笑って。こくり、喉を通せば爽やかな甘味が広がった。 「体の中を星が流れてるってことは、オレ達は夜空を泳ぐ魚にでもなったってことかね」 「……もう」 悪戯っぽく笑って、お返しと口にしたフツの一言に微笑み合って。もう一度、グラスを触れ合わせた。 夜は多少涼しいが、時期は夏。そんな時期に見合ったイベントに出かけるのも、鏡花と出かけるのも初めてだ。麗が目線を動かせば、黒地の浴衣に咲いた花が、人工の星の光に淡く浮かんでいた。鏡花の前には、ライムの浮かぶサマー・ディライト。麗の前には、涼やかな青のチャイナブルー。 「綺麗な色だ。流石、緋桐はセンスがいい」 「そちらこそ。――"夏の喜び"か」 触れるか触れないかでグラスを合わせ、窓から見える星へと視線を。 「夜空を眺めるのは、嫌いじゃない」 「あぁ。星は良いな。手が届きそうで届かない、そんなもどかしさも全て……」 左右違う色の目を細め、麗は思考を空から傍らへと戻した。麗にとって、鏡花は店の常連客。そんな彼女と別の場所に一緒に出かける事があるなんて思いもしなかった。 けれどそれは、鏡花も同じ。いつもの店でいつもの会話が自然だったのに。でも、この見知らぬ店でも、まるで平素のように穏やかに心が満たされている。 その理由は、店ではなく、もしかしたら――。隣の彼に視線を動かせば、そっと唇が動いた。 「……悪くない気分だ」 二人揃って空に逸らした視線。心だけは、少し近付いて。 ひととせ。重ねた年月は、確かに息衝いている。 そっとシエルから伸ばされた手を、光介が取った。去年の夏に二人で訪れた時は、仄かな親近感を覚えていたが――今は、それよりもっと強い絆で繋がっている。 綺麗な星空ですね。微笑むシエルに、光介も笑った。 「ここが……ボクらの始まりでしたね」 仲睦まじく手を繋いで訪れるなんて、あの時は想像してもいなかったけれど。思えば確かに、あの時が『初デート』であったのだ。光介はブルーキュラソーを割った上に丁寧にタピオカを散らし、クラッシュアイスの煌きと共にシエルの前に差し出した。いつだって見守っていてくれて、包み込んでくれる彼女は、そう。 「シエルさんは、ボクにとっての『星空』ですから」 少し擽ったそうに笑ったシエルが差し出したのは、スターフルーツを飾りシークヮーサーを割った南国風のソーダ。グラスの底には、白のタピオカが眠っている。 「お星様と羊さんって絵とかでよく見ます……だから」 自分が星だと言うならば、いつも、その傍に。 声に出さなかったそれも、きっと分かってくれると信じている。 「来年も、また」 「ご一緒できれば……嬉しゅうございます」 かちり。夜空と羊が、額を合わせた。 「どうぞ、レディ」 椅子を引いて案内する竜一に、雷音は少し笑う。星の光に照らされた、階段を登るシンデレラのエスコートを。爽やかな香りの紅茶のサングリアとティーソーダのオーダーは去年と同じ。けれど、その味が同じとは限らない。舌に感じる、微かな苦味。一年は長いようで短い。あっという間に過ぎて行った。 共に過ごした人が、一年経過した同じ日にいない。零れて行った命、大事な人。共に味わった、二度の喪失。それは彼らの覚悟や生き様でもあったのだろうから、竜一がそれに関して何を言えるでもない。けれど。グラスから口を離して、目の前の少女を見る。 「ね、らいよん。君は誰かに守られていると感じているだろうが、俺は君に救われている」 新緑の瞳が瞬いた。それを見詰めながら、竜一は言葉を続ける。 「いつもらいよんには、助けられているからね。――ありがとう」 あ。小さな唇が言葉を探すように震えた。喪失の記憶は竜一も同じだ。それに伴う悔しさや悲しみも彼は背負っているはずなのに、彼は強い。それが羨ましくも思えて、雷音は目を伏せた。 「ボ、ボクは……うん、ボクも竜一には救われている」 「じゃあ、ついでだ。一つだけ約束してくれるかな」 笑って口にする約束。また、来年も、一緒に。 「うん、また一緒に、同じ物を飲みたい」 顔を合わせて、笑い合って、同じ様に。笑って口にしたはずなのに、涙が零れる。嬉しいはずなのに、止まらない。ごめんなさい、謝る雷音に向けて、竜一は笑って首を振る。 「ありがとう」 優しさが、ゆっくりと暖かく、胸を締め付けた。 ● 星の光が降り注ぐ。青と白の、やわらかな光。ほしのうみは手を繋ぐ二人の少女を優しく包み込み、ゆらり輝く光から流れる風が微かに鼻を擽る。素敵ね、と微笑みあった糾華の前には、シロップを使ったヴァイオレット・フィズ。かつて恋の媚薬とも囁かれた花の香りは、本物のパルフェ・タムールには及ばないけれど――それでも鮮やかに漂った。深いスミレ色に、薄く切られたソーダ色の星が浮かんでいる。 リンシードが手にするのは、ベリーシロップを複数使ったサングリア風味のソーダ割り。黒く熟したラズベリー、ミルクの星が泡に揺れてぷかりふわりと浮かんでいた。 「もう、一年経つのね……早いものね」 「この一年……短いようで……とても、濃密で長く感じました……」 帰る場所を同じくして重ねた時は、一年。距離は少しずつ縮まって、一歩ずつ理解して、時にはぶつかって――変化自体は緩やかに、それでも関係性は大きく変わった。 「改めて……私、お姉様に会えて、良かったです」 甘酸っぱいベリーに面影を感じながら、リンシードは呟く。自分は単なる人形だと。そう思ってきたし、糾華がいなければ同じ様な一年を過ごしていただろう。いや、一年を終えられなかったかも知れない。変化を与えてくれたのは、『お姉様』がいたからだ。 「ねぇ、リンシード。貴女はこの日常を楽しんでる?」 そんな彼女の変化を心の内で喜ぶ糾華は、微笑んで尋ねた。 「私と一緒で、幸せかしら?」 「……モチロン、とっても幸せです……」 お姉様も、幸せですよね? 問いに糾華は、笑ってグラスを合わせる。聞くまでもなかったのだ。そんな事、知っていたけれど。勿論、勿論――幸せだ。 屋外の風は、ほんの少し汗の滲んだ体を心地良く冷やしてくれる。 「あ、シャーリーテンプルと……サラトガクーラーを赤い流れ星入りで」 「私はローズソーダを。それとオイルサーディンのパスタに……」 義衛郎のスーツは仕事用ではない黒のスーツ。向かいに座る嶺のドレスも黒。夜に溶け込むような二人は、互いの勝手を知っている様に自然に注文を済ませると、何を言うでもなくグラスを傾けた。赤い流れ星入りのサラトガクーラーに、義衛郎は手をつけない。嶺はその横にオリーブの浅漬けを置いた。 薄いイエローと炭酸水が層を作る上に浮かぶ赤い流れ星をぼんやりと眺めながら、義衛郎はその杯と自分のグラスを微かに合わせる。ありがとう。いない誰かに囁いて、目を閉じる。 そんな義衛郎に、嶺は何も言わない。ただ、夜空を見上げた。 「……今日は、星が綺麗に見えますね」 星は届かない。遠く、遠く。けれど――時に見上げたとして。立ち止まる訳には、いかないから。 間接照明の影に取り付けられたスピーカーから僅かに流れる音ではなく、生の声(うた)が風に運ばれてくる。口ずさむのは希望。絶望を払う言葉。セッツァーは一度口を閉じて、喉を潤した。 彼の故国は日本ではない。始めてこの地を踏んでから、果たしてどれだけ経過しただろう。 思うのは、自らは役に立っているかどうかという事。彼が望むのは、声(うた)で生きる希望を与える事だ。海を渡ったのは、傷付いた人々に、困難に打ち据えられ絶望した人々に、彼の力を与える為だ。 知らず強く握っていたグラスから手を離し、相好を崩す。 再びその唇から、うつくしい声の奏でる希望が流れ出した。 そんな声を耳にしながら、エリスはカラータピオカを掬った。グラスの中に零れていくタピオカ。ずらりと並ぶシロップの種類に、暫く悩んだけれど――ブラッドオレンジが泳ぐのは、レモンシロップのソーダ割り。 まだ、深夜と言うには早い時間で。空を見上げれば、満天の星。星々の間に、自己流の星座を描き、明日を思い、時にタピオカをストローで浮かべ……エリスの夜は、少しずつ更けていく。 星の海に溶けてしまいそうな水色。テティスはマリーナを傍らに、夜天を見上げた。 鮮やかな真紅のローズソーダに、透明な流れ星がゆらゆら揺れる。舌をぴりりとさせる甘い刺激を少しずつ楽しみながら、テティスは肩に降りたマリーナと共に月を眺める。己の世界とは、違う月。 ――ああ。明日も、晴れそうだ。 青と赤が、夜に混じる。 誘ったのは自分だから奢る、と告げる鷲祐に海依音は掌を合わせて頬の横に置き、喜んで、と笑った。メニューをなぞっていた鷲祐は、シャンディガフにビーフジャーキー、オーダーを取る相手に顔を上げ――。 「ゲェー!? 新田快!?」 「はいはい、注文は以上でいい?」 「あら、新田君ここでもバイト?」 「……就活の一環、か?」 見知った顔に賑やかに、合わせるグラスの音は軽快に。琥珀に透ける夜空の色。深みを増したいろに目を細め、外見よりも年を重ねている『少女』はグラスを傾けた。 「夏はやっぱりピルスナーですわね。で、どんな風の吹き回しで?」 「……いや、大した事はないんだ。ただ、今年はかなりお前に世話になっているからな」 喉を滑り落ちる苦味を掲げた海依音に、鷲祐はグラスを置いて少し考えるように言葉を紡ぎ出す。 「……助かるよ、本当に」 思い返すのは、共に駆け抜けた戦場。鷲祐に出来るのは、前を見る事。誰よりも速く駆けて、敵を切り裂く事。最速を越えて神速とも称される鷲祐だが――それのみを突き詰める彼は、他の事が叶わない。そう首を振る鷲祐に、海依音は琥珀を通して星を夜空に浮かべた。 「何かを極めるのは、誰もができることじゃないわ。ワタシは器用貧乏なんですよ」 癒しに、攻撃に。多種多様に対応できるのは利点かも知れないが、それは鷲祐のように何かを突き詰めたものには、どうやっても届かない。 「貴方は一人で戦っているわけじゃないわ。適材適所ってあるのよ」 「適材適所、か……」 誇っていい、と告げる笑顔はいつも浮かべているものと少し違う気がして。相好を崩した鷲祐に、海依音は更ににこっ、と微笑んだ。 「また奢って下さいね」 そんな二人を横に、小柄な影がカウンターに並ぶ。店内にいるのは見知った顔ばかりで、そんな彼らが談笑し時には珍しい顔をしているのを――表情からは余り分からないが楽しみながら、ユーヌはストロベリーアイスを一匙掬って口に入れた。 「夜でも昼のように明るい、って感じよりはこういうのが好みね」 「落ち着くな。……ところで妙な名前のばかりだが、甘いのはどれだろう」 「そうね、最近あたしのお気に入りは薔薇とライチかしら」 でも。覗き込んだエレオノーラは、並ぶ名前から目線を外して、カウンターの奥にいる快へと笑ってみせた。薔薇色のジュレを流し込めば鮮やかな色が見目にも楽しく、ライチのシャーベットを浮かべれば夏らしい爽やかさが口に広がる。そんな想像は、するけれど。 「ね、バーテンさん。お好みで作って貰えるんでしょう?」 「任せてよ。エレオノーラさんはシャンディガフってイメージでもないしね」 「新田が作ってくれるのか。可愛らしい注文でも構わないか?」 「ユーヌさんの可愛いがどうだか分からないけど、努力はするよ?」 「ガッカリバーテンダーでない事を期待しよう」 今日もその舌鋒は絶好調。普通の顔でそんな事を告げるユーヌに快は笑い、差し出したのは鮮やかなオレンジのフレッシュ・フィズ。持ち込んだフルーツの香りはシロップよりも華やかに香った。 「……ふむ、飲みやすくて美味しいな」 「エレオノーラさんはバラライカとかどう?」 「あら、お酒じゃないの?」 「大丈夫、こっそり持ち込ん……あてっ」 後ろから快をお盆で軽く叩いた店長が、仕方がないなあとでも言うかのように口の前に指を立てて笑うのにエレオノーラも笑みを返す。 「ま、飲み物に罪はないけれど、ビールは恙無く親衛隊を追い出せたら飲む事にしましょう」 だから、お願いね? 指を立てる彼に、快も一つ頷いて、星の浮かぶ透明なグラスを滑らせた。 琥珀の色は、大人のいろ。リベリスタの実年齢は分かり難い。こっそりビールを頼んだ影時は、そわそわと周囲を見回していた。 「こーら。影時さんはまだ未成年でしょう。駄目ですよー、ほら、このジャスミン入りのジンジャーエールとか色似てるし美味しいですから」 「ギギギギギギギロチンさん」 びくん、と背筋を伸ばした影時の目的はビールそのものではなく、何だかんだその辺を見ているフォーチュナである。花の香りが淡く弾けるグラスを差し出すギロチンに何か言おうとして、結局影時は赤くなった頬を隠す様に下を向いた。 グラスを置いたギロチンが、何やら挨拶をして離れるのに影時は顔を上げて――。 「あ、居たんだ」 「うん。さっきからずっと」 存在を忘却していた兄がアイスのスプーンを咥えているのに、そんな一言。兄……真昼としては二人でのんびり、いや、影時が遊んでいる白夜を入れて二人と一匹で過ごしたいだけなのだが。 カウンターの横に並ぶタピオカ、流れてくるライチの香りも気になるけど――無理だ。あの空間に突入するのが無理だ。なんだこのお洒落空気。見栄を張らずアイスを食べるのが一番だ。 金魚鉢に詰められたバニラ、ストロベリー、チョコレートのアイス。合間に紛れた金魚のゼリーを口にしながら、よちよち、と幼児言葉で白夜をあやす影時を見る。何だこの態度の差。 「うん、でも影時が楽しいなら良いかな」 空を仰いで、息を吐く。二人でいられる、会話ができる。楽しくて、幸せだ。こんな日が続けばいい。続ける為に守りたい。だから、頑張ろう。可愛い妹を見ながら、そう、思う。 「兄さん、ペットだけ寄越せし」 ……兄の想いは、若干すれ違い気味の様子ではあったが。 親の思いを子は知らず。兄や弟の思いも、また然り。 辛党の優希が頼んだインフェルノ・ペッパーポットのウォッカ抜きは最早唐辛子エキスのソーダ割りじゃないかという事はさて置き、琥珀も笑って甘いカクテルを宜しく! と頼む。 「あ、今日奢りね」 「一度任務を共にしただけで? 酔狂な振る舞いだな」 友好的に明るく話しかける琥珀に対し、優希は目も合わせずに肩を竦めた。元来から彼はそこまで友好的な性質ではないが、この態度には理由がある。ちらりと覗き見た琥珀。彼が、そっくりなのだ。優希の兄と。だが、彼はもう――思考を飛ばしていた隙に、目の前にその顔が現れて優希は椅子を引いた。 「焔君、大丈夫かー?」 重なる。顔が重なる。声が重なる。漏れた言葉。 「……望兄さん?」 「え? ――あー、そうオレオレ! 兄さんだけど五万GP貸して!」 覚えのない呼称に、一瞬にも満たない間琥珀は考え……けれどその表情が余りにも切羽詰っていたから、緊張を解そうと指でテレフォンサイン。 ひくりと引き攣った優希の頬と握られた拳に、慌てて手を振って宥める。 その様子に、優希は深く溜息を吐いた。仮に、兄ならば、この状況で他人のフリなどしないだろう。だとすれば、勘違いだ。よく似ている他人に過ぎない。そう結論付けて、透明なグラスを一気に煽った。首を傾げる琥珀に告げるのは、一言だけ。 「……死ぬなよ」 一瞬の間。そっちもな、という明るい言葉に首を振り消えていく背中に――琥珀も大きく息を吐いた。彼は、覚えていないのだ。過去など何も。だから否定も肯定も、適当な事は言えない。ただ。琥珀はただ。 「……笑わせたかったのになぁ」 笑顔を消して、傾けたグラスの炭酸は、少しだけ強かった。 吹き込む風が涼しい。仄かに香る柑橘が、爽やかな気分を増してくれる。 「……こういうものは、蒸し暑い夜も涼やかで良いですね」 「オレなんか本格的に熱くなってから、昼も夜も工房に隠ってばかりだよ」 淡いいろのタピオカが、会話をする存人とオリヱの持ったレードルからグラスへと零れた。目玉みたいで好きですが、言わない方が良いでしょうか。呟いた作り物の眼球嗜好の青年に、オリヱはひとつの目を細めて構わないんじゃないかな、と笑った。実際、少し似ている。淡い彼らは、注がれたいろを映すのだから。 鮮やかな青、ブルーキュラソー。弾ける黄色、レモンイエロー。 思い出すのは、遠い日の夏祭り。 「子どもの頃の方が、夏って輝いてた気がするんです」 「その頃の夏と言うのは特別だもの」 目は合わさないまま喋る存人に、オリヱは頷く。金盞花が細められ、昔日に飛んだ。 長い休みもあっという間の、特別な日々。 「俺は駆け回っていた思い出とかしかない訳ですが、オリヱは?」 「……元気に駆け回っている存人というのが想像しづらいんだけど、オレも似たようなものだったかな?」 自由工作が得意だった。彫金を生業とする彼の言葉に、その頃から器用だったんですね、と存人が笑った。重ねてきた日々は遥かに遠く、あたたかい光に満ちていたあの頃から、随分、随分と遠くに来てしまったけれど――未だ消えずに残っている。遠い、夏の日が。 天井から吊り下がる星は、時に手の届く場所へと降りている。淡い青の星を掌に乗せたリリは、嬉しそうに微笑んだ。青に浮かぶ微笑を見ながら、風斗も軽く目を細める。 リリは修道女だが、一般的なそれではない――そうと知る風斗は、彼女に色々と経験をさせてやりたかったのだ。戦闘や研究、実利に基づく事ではなく、楽しい事や綺麗な事を。そうすれば、きっと良い刺激になるはずだ。それに。 「楠神さ……んは、色々な事をご存知なのですね」 こちらを向いたリリの喜ぶ顔を、見てみたかったのだ。笑う彼女をテーブルに案内し、『赤』を頼んだ風斗はそのグラスを差し出した。 「どうです、シュヴァイヤーさん。こんな風に色んな色の飲み物を作って貰えるんですよ」 一口いかがです、と問う風斗にリリは頷いて。ノンアルコールのブラッディ・ブルは、トマトが香り、レモンの爽やかさが後味を拭っていく。赤。リリは瞬いた。力強い色だ。強くて、優しい色。 「じゃあ、私もお返しに……」 「……えっ」 カラータピオカの砂浜に落ちるのは、レモン星のゼリー。乳酸菌飲料とブルーキュラソーで作った蒼海。リリの好きな青で作った、祈りを込めて作った一杯。 「……おいしいです、それに、なんというか……、い、いえ」 一転して、少し戸惑った様子で何でもない、と告げる風斗にリリは目を細めた。彼は優しい。優しいけれど、それが少し怖い。無償の愛を説いたとして、それを信じるのは少し違う。 どうして。彼女の呟きに首を傾げた風斗に、首を振る。 ただ、楽しんで貰えたなら幸いだと――笑う彼に、リリも笑みを返した。 天も地も、満たされるのは星々。月光に照らされて、淡く光る。 ノンアルコールながら微かな苦みを持った琥珀を舌に流し、うさぎは空を仰いだ。涼やかな風が、頬を撫でて行く。煌めく光は穏やかに美しく――けれど自然の齎す風情というよりは、お洒落な幻想の世界に思えて心が躍った。 一人も歓迎、とは言え楽しめるかどうか少し疑問だったけど、この雰囲気は悪くない。皆ゆるゆると、穏やかな時間を思い思いに過ごしているその表情は楽しそうで。その様子を見ているだけで、うさぎの心も同じように穏やかな気持ちに満たされていく。 差し出されたロシアンハート。ジンジャーエールの香りが舌先で弾けるのを感じながら、うさぎは静かに視線を回した。誰かのグラスに浮かぶ黄色い星を見て、次は流れ星を入れて貰おうかと思い、顔を上げ――。 「……ああ」 視線の先。見知った顔。はにかんだ様子で会話する姿。 「……本当、賑やかで和やかな……良い夜です」 遠くに一つ、呟いて。うさぎはグラス越しに、夜空を見上げた。 静かに輝く星々は、安らいだ光を降らせてくれている。苦味に混ざる甘みとジンジャーの爽快感。 「そういえばシャンディ・ガフってあんまり飲んだ事ないでござるな」 単品でビールを飲みはせど、ジンジャーエールと組み合わせるのは余りやらない。周囲の声はさざ波となって、虎鐵の耳を楽しませていた。オリーブと砂肝の和え物を口に運びながら、虎鐵は夜天に目を向ける。酒を飲んだとしても、嫌な事を完全に忘れる事はできないけれど……せめて、薄れればと思う。 可愛い娘と息子。過ごした歳月の内に、彼らの為に考える事は増えていくけれど。今は何より、自分の為に英気を養わねばならない。いつでもどこでも、自分が自分のままである為に。それが一番、彼らの為にもなるのであろう。 椅子に背を凭せ掛けた。瞬く星々で視界が満たされる。それに向けて大きな手を――伸ばしてみる。届かない。こんなにも鮮やかに映るのに遥かに遠い。奪われた命のように、遠く遠く。 だから、生きねばならないのだと――虎鐵は一つ、口の中で呟いた。 星の光は浮かべども、雲としてかかる紫煙はここにはない。なんだぁ、禁煙か。と残念そうに口にする御龍だが、駄目と言われて固持するほどに頑固ではない。夜の闇が深くなってくる今の頃合いは、普段なら高速道路を相棒と駆けている最中だろうか。が、今日は休みである。 テーブルの上にあるのは、琥珀と白い泡のコントラストが美しいシャンディガフに、緑の綺麗に出た枝豆。ニンニクチップを散らした牛肉のタリアータはつまみに丁度良い味の濃さだ。 「あ、御龍さん美味しそうですね」 「お。ギロチンさんもお酒飲むのかいぃ? 行ける口ぃ?」 グラス片手に覗き込んで来たフォーチュナに尋ねれば、好きですけどそんなに強くはないですね、と笑いが返った。 「御龍さんは強いですよね。見る度飲んでる気がしますけど」 「お酒なんて水みたいなもんだよぉ。あたしは巫女だったから神事で欠かせなかったしねぇ」 あ、でも小さい頃から飲んでた訳じゃないよ、と首を振れば、安心したと手が上がった。そんな会話をしながらも――思い浮かべるのは『この先』だ。どんな事が待っているにせよ、不確定の未来は楽しみで――。 「暴れられりゃ、あたしは十分だよぅ」 くっ、と煽ったシャンディガフは、苦みとほんの僅かな高揚を御龍に与えてくれた。 酒の苦味も、招く酩酊も未体験の領域。 世界を、物事を知る事は悪くない。いや、得ておかねばならない。最近火車は、よくよくそう考える。 けれど知識と経験は別物だ。幾ら他人の体験談を聞いた所で、理解できない事もあった。 例えば車の運転。例えば酒の味。必要に迫られて運転まがいのことはした覚えがあるが、酒に関しては火車はまだ手を出せない年齢である。とは言えそれも、あと数日。酒の飲み方を知っていて損はあるまい――幸い今日は、花見の騒々しいまでの賑やかさに飲まれる事はないだろう。 が。まあ、メモしようと思っても、いまいち参考にならなさそうに思える相手もいる訳だ。テーブルの上には片付けが間に合わないグラスが群れとなり、その中でもくいっと水の様に煽っては空にしていくような相手が。軽く眉を寄せて、横を通ったフォーチュナを捕まえる。 「お、ギロチン。丁度イイわ。あれってどーなん? 飲み方として合ってんのか?」 「あ。駄目です。あれは強い人の中でもザルしか出来ない飲み方です」 即答だった。笑顔のままで、手だけはぱたぱたと全力で否定を示すギロチンに火車は眉を寄せた。 「……花見の時もそうだが、何で弱い奴も下手に飲むんだ? 中毒か何かか?」 「あはは。そうですねえ、後で辛いと分かってても、飲んでる最中は気持ちいいもんですから」 「はぁー……そーいうモンかねぇ……」 赤い髪をがしがしと掻く。大人、大人。もうすぐ成人の歳は近付いてくるが、まだ解らない事は多いらしい。 「こればっかは大人になんなきゃ解んねぇなぁ」 果たして、彼の『大人』デビューは平穏に過ぎるのか――それが判明するのは、もう少しだけ先の事であった。 ● ローテーブルの上に置いたアロマランプは、ゆらゆらと揺れてルアとスケキヨの目を楽しませた。 小柄な体を膝に乗せたスケキヨは、冷えないかい、と問うて自らのパーカーをその背にかける。そのまま長い手に抱き締められれば、ルアの心と肺は全て彼で満たされた。優しい力で自分を抱く腕の様に、胸が暖かい気持ちできゅう、と締め付けられる。 「これね、スケキヨさんをイメージしたのよ」 「ボクも、これはルアくんをイメージで」 差し出すグラスは、光を透かして美しい。スケキヨの前には、ブラッドオレンジとグレープをくるくる混ぜ合わせた場所に煌めくソーダと流れ星を零した一品。ルアの前には、桃色のタピオカが宝物のように沈んだブルーハワイとキウイシロップの鮮やかな二層。 「愛しい時と愛しい人に、乾杯を」 「乾杯、ね」 グラスを触れ合わせる音が、涼やかに響いた。口の中に広がる爽やかな甘みと、自分を満たす彼の香り。酔うはずなんてないのだけれど、星空の下に大好きな人と過ごせる幸せでルアは既に夢心地だ。温かさに誘われて、満たされた感情に瞼が重くなる。その瞳が閉じられたのを確認し――スケキヨは普段は外さない仮面を、静かに外した。 どうして見せてくれないの、とささやかなすれ違いの原因にもなったそれだけど、スケキヨにとって心の奥底まで曝け出すのは、まだ少し照れくさい。でも、この時間は自分には勿体無いと思う程幸せなのは間違いがなくて。 「大好きだよ」 心の底からの一言を呟いて、スケキヨは眠る愛しい人に唇を落とした。 淡い光に、白い浴衣が浮かぶ。健康的な肌に映える大振りな花柄の浴衣を纏ったレイチェルの唇は、薄くピンクに色付いていた。これだけの星と月が出ていれば、灯りなんて必要ないね。そう笑う夜鷹の顔も、実は暗闇を見通すレイチェルにははっきり見えていたのだけれど、それは言わずに手を引かれるに任せる。 甘いミルクセーキが青の透明なストローを流れていくのを見ながら、レイチェルはちらりと夜鷹の顔を見た。微妙な関係。踏み込めそうで踏み込めない、そんな距離。けれど雨の日のあの幻は、すぐ間近で見た瞳は、何のつもりだったのだろう。聞いてみたいけれど、うまく聞けない。 僅かの間黙ったのは、深いルビーの色をしたカシスグレープフルーツを口に運ぶ夜鷹も同じ。夜に輝く星は、とても美しくて――己が逆に醜いと照らし出してくる。夜鷹。星になりたかった、翼持つ者と同じ名前。大きな切望は、例え叶えたとしても身を滅ぼすのだ。何よりも大事な存在のレイチェル。だからこそ、踏み込むのが怖い。 曖昧な関係。けれど、心の奥底はきっと同じだった。 「……ねぇ、キスして良い?」 沈黙を破ったのは、黒猫が先。想いに突き動かされるようにして口にした言葉に、夜鷹が瞬いた。互いの距離の近いテーブルを挟んだ彼が、身を乗り出す。 唇が、優しく触れた。柔らかな桃色に。 見目に楽しい、星々の光の波間。 「……素敵な雰囲気。良いですね、こういうのも」 悠月が目を細めて呟いた。月下に輝く星の光。作られたものだと分かってはいても、『幻想』の星夜は彼女の心にも美しく映った。先を行く拓真と共に席について、顔を合わせる。 「今思えば、こういった店に来る事はそう多くはなかったな」 「縁がないと、ですね。私は……初めて、かな」 酒の提供は少ないとはいえ、夜の店。密やかな雰囲気に満たされた、穏やかな場所。シャーリーテンプルの泡に上下する青の流れ星と、ココナッツ香るヴァージン・ピニャ・コラーダに浮かぶ赤の流れ星。礼を告げながらグラスを合わせ、こくりと喉に流し込めば、涼やかな風と合わさって爽やかな気分を与えてくれた。 「……美味しい。流石はギロチンさんお勧めのお店」 「うむ。やはり、上手い食事は活力に繋がるな。普段は、悠月の料理だけで満足しているが」 感謝している。そう告げる拓真が相好を崩すのに、悠月も微笑んだ。作ったものに満足して貰えるのは嬉しい。けれど新しい味を知れば、もっともっとと思うのだ。それは悠月の探求心に基づく欲求だけではなく、大事な人に美味しいものを食べて貰いたいと言う想い。 「良い機会だ。……今後は、偶には足を伸ばしてみるのも悪くはないかもしれないな」 そんな拓真の言葉も、大事な人への気遣い。手伝いはするが、たまには休んで欲しい。満足しているからこそ、自らも別の形で応えたい。くすりと笑った悠月が、改めてグラスの縁を触れ合わせた。 アロマランプの光は、やわらかくカルナと悠里の顔を照らし出す。 思い出すのは昨年の記憶。同じ店で過ごした一年前。天と地に輝く星の海は変わりなく、二人を映してくれていた。ミントシロップを使いプーススタイルにしたカクテルが、光を通して白いテーブルに淡い緑の光を投げかけている。何気ない会話をしながら、そんな光景に目を落とした悠里は逡巡した。今回のデートには、目的があるのだ。愛しい彼女の誕生日。初めての経験ではないから、今更気負う事ではないと頭では分かっていても――喜んで貰えるかな、そんな不安が言葉を止めようと囁くのだ。が、ここまで来ておどおどしていても仕方ない。心中で己に活を入れた悠里は、微笑んで言葉を舌に乗せた。 「カルナ、誕生日おめでとう」 「……誕生日?」 言葉と共に差し出された箱に、カルナは一つ首を傾げてみせる。続けた、忙しくて忘れていた、という言葉は完全な真実ではないけれど。覚えていてくれて嬉しい、なんて感情を分かりやすく出すのは、どうにも少し気恥ずかしい。そんな表情をしても、彼は喜んでくれるだろうけど。 「ふふ、ありがとうございます、悠里」 箱の中から出て来たのは、翠地に細緻な蔦と葉が描かれたスティックの口紅。 「えーっと、お化粧とか苦手かなって思ったんだけど、これぐらいの色なら大丈夫かなって……」 決して強くはない色合い。翠のカバーを開ければ咲く薄赤の花。その気遣いに目を細め、カルナは手鏡を片手にそっと紅を滑らせた。白い肌に灯る、あかのいろ。 「どうでしょうか……似合いますか……?」 「うん、思った通り可愛いよ」 悠里が思ったままを口にすれば、唇だけではなく頬がほんの微かな赤を刷いた。 それを見れば、言葉がなくとも嬉しいなんて事は心に伝わってくる。口紅なんて、ちょっと気障かと思ったけれど……この顔を見れば、そんな悩みも何処へやら。 良かった、と呟く悠里のグラスとカルナのグラスが、かちりと鳴った。 愛しい君と、ひととせを。もうひととせを。重ねていける、喜びを。 月と星の海は、穏やかに煌めいている。 下で輝く人々を、ただただ優しく包み込みながら。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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