●背中で感じる想い 俺とお前は二人で一つだった。俺の背中にはいつもお前がいた。小さい頃からずっと光と影のように一緒にいた。幼い頃から互いに気心が手にとるようにわかった。 初めて会ったのは孤児院だ。最初は気が合わなかった。俺とお前とでは性格がまるで違っていた。それでも二人はいつしか仲良くなった。 お互いに自分の心を打ち明けられない性格だった。その心のどこかに闇を抱えた部分にお互いが引き付けられたのかもしれない。 詰まらない濡れ衣を着せられて孤児院を追い出されたのはそれからすぐのことだ。二人は街かどで生きていくために喧嘩に強くならなければならなかった。 地元じゃ俺達は負け知らずだった。二人はずっと連勝していた。互いに息のあった連係プレーで自分たちより何倍も強い相手を倒すことができた。 いつしか俺達は正義のヒーローになることに憧れていた。二人ならどんなことだってやれる。これからは弱い者の為に力を振いたい。 ある事件で重傷を負った俺達は覚醒していた。そのときを境にして俺達はリベリスタになった。それ以来俺達はコンビとして各地で数々の栄光の武勲を制覇してきた。 お前がいると負ける気がしなかった。互いの背中で熱を感じていると、大勢の敵に囲まれていたとしてもまったく恐怖を感じなかった。 俺がたとえピンチになっても必ずお前が助けてくれる。そう信じることができたから俺は安心して背中をお前に預けることができた。 だから俺とお前が別々の依頼の戦いで重傷を負って、フェイトを失ってしまうとは考えてもみないことだった。俺たちはもうコンビで戦うことができない。 悔しかった。俺達は運命に見放されてしまった。これまでリベリスタとして活躍してきたのにいきなり討伐される側になってしまうなんて。 「相手はリベリスタだ。もちろん殺すつもりでやってくる。しかも昨日まで同じ味方同士でずっと一緒に戦ってきた仲間だ。そんな相手に俺は――」 俺はつい弱気になって親友に零した。だが、お前は力強く言った。 「俺とお前の最強コンビを今度の戦いで証明するんだ。もしかしたらこれが最期のコンビの戦いになるかもしれない。でも、大丈夫だ。俺にはお前の背中がついている。恐怖なんてとうの昔に捨てちまった。立ち向かってくるリベリスタ達に全力で戦って勝利してやろう。俺達最強のコンビの力をみせつけてやろうぜ」 ●正面からの真っ向勝負 「湾岸埠頭の倉庫跡の空き地でノーフェイスが現れた。彼らはこれまでリベリスタとして活躍してきた名コンビだ。すでに逃亡を止めて討伐にやってくるであろうリベリスタたちの到着を待っている。彼らは我々を堂々と迎え撃つつもりのようだ」 駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)が手短に説明した。感情をなるべく込めずに事実だけを淡々と述べようとしている。伸暁自身も二人のことはよく知っていた。それだけに今回の依頼を出すこと自体が苦しかったに違いない。それでも伸暁はそんな心の想いを一切口にせずに逆に機械的に話すことに集中した。 「今回の戦いには湾岸埠頭の地元のフィクサードたちが応援に駆けつけている。連中はリベリスタに恨みをもった奴らだ。この機会に彼ら二人と手を組むことで自分たちの敵であるリベリスタを倒すという目的を果たそうとしている。つまり二人以外の敵も決して弱くないから油断は大敵だ。今回の戦いは正面からの真っ向勝負になる。二人の決意に対してこちらも全力で敵を打ちのめしてきてほしい。それでは健闘を祈っている」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:凸一 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年07月17日(水)22:38 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●世界に抗う二人 港埠頭の倉庫跡地は雨が降っていた。海から吹いてくる雨風で視界が悪い。 東條慎一郎と雨宮鞍馬はすでに戦闘準備に入った。互いに目で頷きあって意思を確認し合う。覚悟は出来ていた。周りにいるフィクサード達も二人の前に躍り出る。 リベリスタ達は正面から戦場に突っ込んだ。敵の前衛と真っ向から対峙する。 「よう、待たせたか? あんたらと『こう』なるとは思っちゃいなかったぜ。同情は要らんだろ? これが最後の真っ向勝負だ。存分に証を刻んでいけ、こっちも全力でぶち殺してやんよ!!」 『悪童』藤倉 隆明(BNE003933)が勇ましく二人に吠えた。 「最強コンビが聞いて呆れるデスネ。最強でなかったからこそ、今こうして運命の祝福を失ってるデスノニ。人でないならば容赦なく、誰彼の区別なく。切ってバラして撒き散らしてオシマイナノデス。さあ、粛々と刻むデスヨ」 『飛常識』歪崎 行方(BNE001422)が、二本の大振りの肉切り包丁を構えた。狙いはまず敵のホリメとタクトだ。隆明と行方が同時に特攻を仕掛ける。 「望むところだ。我々も全力で戦う。この戦いに勝って失ってしまった誇りと名誉を取り戻す。そのためには絶対に負けるわけにはいかない!」 慎一郎が剣を高々と上げて威嚇した。傍らにはいつものように鞍馬が武器を構えていた。慎一郎の言葉にただ黙って頷く。 隆明と行方が動いた瞬間に敵も動いていた。前にいるプロアデプト二人がまずピンポイントスペシャリティで狙い撃つ。 「元リベリスタのノーフェイス相手の依頼ですか。歴戦の勇士2人相手の戦いともなると苦しい戦いが予想されそうです。それでも私たちは彼らを倒さなければならないのです!!」 攻撃を回避しながら『非才を知る者』アルフォンソ・フェルナンテ(BNE003792)がシャイニングウィザードで敵を巻き込みにかかる。その横から雪白 桐(BNE000185)が前衛のデュランダルに向かって剣で斬りかかった。 「ぐふぁっ!! くそっ」 桐に斬られたデュランダルが乱戦から逃げ出そうとする。 「そうはさせない! お前らの相手はこの俺だ」 『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)が大声をあげて派手に立ちはだかった。激しい攻撃に義弘は飛ばされそうになるがぐっと堪える。 リーガルブレードで斬りかかった。義弘の横からの攻撃に反応できなかった敵はそのまま地面に崩れ落ちる。 だが、その隙に慎一郎が最後方にいる『贖いの仔羊』綿谷 光介(BNE003658)を狙って突進していた。 「お二人が世界に抗うというのなら、お付き合いしましょう。最後まで」 光介は千里眼と超直観をフルに利用してやってくる慎一郎の動きを味方に教えた。すんでのところで三影 久(BNE004524)が光介から射線を防ぐ。 だが、慎一郎の苛烈な攻撃の連続に久も耐えきれずに後退してしまった。 「……元リベリスタ、か……。面倒だな」 口の中の血を吐き捨てて久は呟いた。すぐに光介が回復を施して臨戦態勢を整えるが、すでに慎一郎が別の相手を求めて動いていた。 「ノーフェイスとなりはてた、かつてのなかま。かなしいですね。のぞんでなりはてたわけではないのに、こうしてたたかうしかないというのも」 『不倒の人』ルシュディー サハル アースィム(BNE004550)がやってきた慎一郎を足止めする。その隙に桐が慎一郎の抑えに回った。 「ノーフェイス化したリベリスタですか。何時か私達もなるかもしれないカタチ。ですから同情も悲しみもしませんよ。ただ戦いましょう。それがお二人に一番報いれる事だと思いますから」 「望むところだ。同情などされては困る。いざ尋常に勝負!」 桐と慎一郎が互いに剣を向けあった。 ●意地の張り合い 「まずはお前らからだ。俺は誰であっても容赦しねえぜ」 乱戦のさなかに敵のタクトが一人になったところを見計らい、隆明がただまっすぐ突っ込んでいった。姿勢を低くして体当たりするように拳を叩きつける。 「ぐはああああっ!!」 鳩尾に入った拳にタクトは堪らず血を吐いた。続けざまに隆明がもう一発背中に叩きこんでケリをつけにかかる。 「くそ、生意気な真似をしやがって」 タクトは堪らずフラッシュバンで抵抗を試みるが、隆明も攻撃を食らいながら必死になって食らいつく。タクトは執拗な隆明から逃げようと背を向けた。 「待ちやがれ! そう簡単に逃げれると思うなよ」 久が前に立ちはだかって1$シュートで脚を狙い撃った。まともに攻撃が命中したタクトはその場に崩れ落ちる。そこを隆明が間合いを詰めていた。 「悪く思うなよ」 顔面目がけて渾身のストレートを叩きつけた。その瞬間、タクトの壮絶な悲鳴が木魂して動かなくなった。 タクトがやられて行方はリミットオフを使用する。目の前にいるホリメに向かって突進すると肉切り包丁で首元を狙った。 「手でガードなんてしても無意味デスヨ」 腕と手でガードするがそれすらも行方は容赦なく叩き斬った。ホリメは腕を引き裂かれて激痛に顔をしかめた。それでも最期まで戦う姿勢を崩さない。 「いいデスヨ。それではお望み通りにするまでデス」 行方は向かってくるホリメにまず一撃を食らわせたあと、身を引いて相手の反撃を交した。何もない所に突っ込んでくる敵に不敵の笑みを向ける。 すかさず敵の後頭部に肉切り包丁を振り下ろした。 「ぎゃああああ――――」 血しぶきとともにホリメは崩れた。ホリメとタクトがやられて敵の陣形は大いに乱れ始めた。だが、リベリスタ側がホリメとタクトを潰しに掛っている間に慎一郎と鞍馬も光介とアルフォンソを執拗に狙っていた。 「ノーフェイスになって強くなったらしいですね? 勝負を願いますよ、私達はここで倒れる気はありません、貴方達を踏み越え、強くなって先に進みます」 「仕方ない。奥の手を使うか」 慎一郎は桐と対峙し合った直後、すぐに分身を展開させた。その分身の大半を桐に割いて光介とアルフォンソのほうへ自身は向かう。 「そうはさせるかよ!」 久が歯を食いしばって身体で慎一郎の攻撃を受け止める。だが、度重なる疲労にこれ以上間が持たなくなっていた。 決死の形相で歯を食いしばる久に対して、慎一郎は容赦なく刀を振りかぶって攻撃した。久は胸に斬撃を受けて膝をつく。 その瞬間に慎一郎が目にもとまらぬ速さで光介に迫った。 「ぐふっ!」 突破された慎一郎に光介は瞬撃殺で切り裂かれた。乱戦で誰もがそれぞれの敵と戦っているため助けに行くことができない。 「光介、待ってろよ!」 隆明が堪らず反転してB-SSで慎一郎を狙い撃つ。背中を撃たれた慎一郎がその場に崩れた。その隙にルシュディーが光介の回復に向かう。 「だいじょうぶ? 光介君!」 「相手もホリメ狙いで来てるのは覚悟の上です。でもボクにできることといえばこれくらいしかない。ここで狙われるなら、それも役割のうちです!」 光介は気丈にも立ち上がった。まだ足元がふらついているが、まだまだ倒れるわけにはいかなかった。それに相手も覚悟を持って立ち向かってきている。 「もう一撃行くぞ!」 慎一郎は再び瞬撃殺を繰り出してきた。今度はルシュディーが間に入るが、敵のプロア達にピンポイントスペシャリティで狙い撃ちにされる。 光介は再び瞬撃殺を食らって倒れた。それでも血に歯を食いしばって意地でも堪えてみせる。気迫のこもった光介の表情に思わず慎一郎もたじろいだ。 「あの日、生きたくもなかった自分は生かされてしまった。ボクもこの世界の取捨選択が大嫌いだから――」 救いはない。信念もない。きっとここには意地しかない。光介は限界まで立ち続けて攻撃に堪えた。そのときようやく分身を倒した桐がやってきた。 「残念でしたね。下が濡れてますから重さのない足音は軽いですよ?」 分身の動きを見破って倒した桐はついに本体に飛びかかる。光介に対峙していた慎一郎は不意を突かれて切り裂かされた。 ●俺達の力 「慎一郎! 大丈夫か!?」 「……問題ねえ。それよりもお前は自分の心配をしろ!」 鞍馬は思わず慎一郎を助けに行こうとしたが、目の前にアルフォンソが現れたことで断念した。ここは親友の力を信じることに鞍馬はかけた。 「よそ見していたら倒されるのは貴方のほうですよ」 アルフォンソがフラッシュバンを叩きこむ。攻撃を食らった鞍馬が後ろに下がったところをアサシンズインサイトで追撃した。 「ぐああああああっ!」 今度は鞍馬が攻撃を受けて膝をつく。向こうで戦っている慎一郎も苦戦を強いられている。このままでは二人ともリベリスタにやられてしまう。 「こっちだ! 鞍馬!」 慎一郎は鞍馬に向かって呼びかけた。残り少ない分身を盾にしてその隙に鞍馬が慎一郎の元に合流することに成功する。 「ちっ、合流されちまったか。まあものは考えようだ。これでまとめてやれるからな。邪魔者は俺がまとめて掃除しといてやるよ」 隆明が暴れ大蛇で残りの分身を始末した。その間に慎一郎と鞍馬は満身創痍になりながらもやっとお互いの背を預け合うことができた。 だが、生き残ったプロアデプトがその場を逃げ出す。これ以上ここにいても勝ち目がないと判断したのだろう。慎一郎と鞍馬を見捨てて逃げた。 「慎一郎――」 「ああ、わかってる。ここからが本番だ。俺達の力見せつけてやろうぜ」 血だらけになった剣を構えて慎一郎は微笑んだ。もうこの戦場には二人しか味方が生き残っていない。だがそれはチャンスだった。 二人だけの力で敵と戦う最後の機会になるかもしれない。 「逃げた奴らは放っておけ」 隆明は仲間に向かって叫んだ。まだまだ油断はできない。ここで一人でも欠けてしまうと苦戦をするかもしれないとの状況判断だった。 先に動いたのは鞍馬だった。義弘に向かってリーガルブレードを叩きこむ。 「ぐふっ!!」 義弘は強烈な一撃を食らって倒れ込んだ。その上から鞍馬がトドメを刺そうと上から大きく振りかぶって剣を叩きこんでくる。 義弘は盾でその剣を受け止めた。歯を食いしばりながら義弘は叫んだ。 「同じクロスイージスだ。やり方は、俺が知っている。たとえ今、彼がノーフェイスで、実力に差があるとしても。簡単には負けられないんだよ……! 侠気の盾を名乗るだけの働きはさせてもらう!」 義弘は気迫で相手の剣を弾き飛ばした。 「行方、今だ!」 「最強を証明も何も、アナタ達はすでに今までのアナタ達ではないのデス。それなのに最強の証明、もなにもないデスネ。滑稽デス、アハハハハ!」 後ろから行方が肉切り包丁で鞍馬の首を叩き斬った。 「ぐああああああああ――――」 「くらまあああああああ」 慎一郎が崩れ落ちる鞍馬をすんでのところで抱え込んだ。もう鞍馬は目をつぶったまま動こうとしない。慎一郎はそっと鞍馬を横にやった。 「俺にはお前しかいなかった。これまでずっと一緒にいたからこそわかる。俺とお前がいてはじめて一つなんだ。けれど――もう俺しかいない」 慎一郎は愛刀の菊一文字を再び振りかぶる。慎一郎は目にもとまらぬ速さでリベリスタたちに斬りかかった。 「なんどでもかべになってみせます。なかまをまもるために」 倒れた光介を庇って今度はルシュディーが壁に入る。攻撃を受けてルシュディーは堪らず血を吐いた。それでも光介への攻撃は意地でも通さない。 「お前らは運命に愛されていたからリベリスタをやっていた訳じゃない筈だ。お前らは、加護を得る以前から『正義のヒーロー』の『最強コンビ』だったんだろう?世界に害を与える『だけ』の存在になる事を決めたのは、お前ら自身だ」 久がその隙に1$シュートで足を狙い撃つ。慎一郎の顔に脂汗が浮かんだ。満足に足が動かせなくなる。それでも慎一郎は刀を杖に立ちあがる。 「貴方たちみたいな背を任せあえる絆は羨ましいですけどね。これで決着をつけさせてもらいましょう!」 桐が大きく跳躍した。一瞬、ミニスカートがひらりと舞う。思いっきり腕を振りかぶって剣を背中から振り下ろした。 「ああああああああああああ―――」 慎一郎は振り向きざまに桐の斬撃を受けてついに倒された。 ●正義のヒーロー 「強いなぁ……まったく。しかし、まあ、終わりだ。あんたらは俺らに刻んだ、証明はされたさ」 隆明は倒れて動かなくなった二人に呟いた。口元についた血を手の甲で拭いとりながらすでに帰る準備を始めている。 敵のフィクサードのプロアデプトは逃がしたが、無事にノーフェイスは倒すことができた。とはいっても味方にも多大なる傷が残った。 乱戦で激しい戦闘だった。がっぷり四つの戦いで真っ向からの戦いだった。 特に元リベリスタの二人の力は強かった。 「彼らはいつか私たちが成り得る可能性そのもの。戦いを終えた2人に冥福を――」 アルフォンソは二人に敬意を表して黙とうする。自分達ももしかしたらいつ二人のように運命を失うかわからない。 リベリスタである以上いつも死は隣り合わせにある。これからも二人の想いを胸に生きている限り戦いを続けて行くことを心に誓った。 「おつかれさまでした」 と、ルシュディーも冥福を祈る。彼等の憧れだったヒーローのように弱者を護るためこれからも戦い続けたい。 「……安心しろよ、二人で戦っていた時の正義のヒーローは確かに最強のコンビだった」 久は脳裏に思い出していた。 あの最後に見せた気迫は正しくヒーローの顔だったと。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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