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鴉天狗の力比べ

●真剣勝負と立ち合いを望む
「い、命ばかりはお助けを~」
「何だその情けない態度は!」
 リックサックを背負ったまま腰を抜かしたように座り込んでいる2人に向かって怒っているのは、不思議な格好をした生き物だった。
 格好そのものは、修験者、山伏……等と呼ばれるもののような感じだろうか?
 頭に多角形の小さな帽子のようなものを付け、袈裟と篠懸をまとい、手には錫杖を持っている。
 その恰好だけならば、2人もそこまで驚きはしなかった事だろう。
 登山者たちが一番驚いたのは、全身に黒い羽毛を生やし、鴉のような頭をしていたことだった。
 しかも、そんな者たちが複数いて、全員が2人を見ているのである。
 ふたりは唯々、謝罪と助命を繰り返した。
「これ以上は無駄だろう」
 後ろの1体が、がっかりした様子で口にする。
 声を掛けられた1体は何とも不満げではあったものの、仕方なしという様子で頷いた。
「……分かった、もういい! 面倒をかけた!!」
「あ、ありがとうございます」
 気が変わらぬうちにと2人は必死の表情で慌てて立ち上がった。
 急いで離れようと、覚束ない足つきで走り出そうとする。
 それが、良くなかった。
 恐怖が抜けきらずに身体が強張ったせいか、2人は足を滑らし道を踏み外す。
 悲鳴を上げながら斜面を転がっていった2人から視線を外すと、修験者のような格好をした者たちは呟いた。
「まったく、こんな山にわざわざ登る以上、修練の為だろうに……」


●妖怪紀行
「みなさんは鴉天狗って御存知ですか?」
 マルガレーテ・マクスウェル(nBNE000216)はそう切り出した。
 ブリーフィングルームのスクリーンには、鴉のような外見で背に翼を生やし、山伏のような衣装をまとった姿の何かが表示されている。
「アザーバイドらしいのですが、とある山の登山道近くに姿を現して、登山者たちに 立ち合いを挑んでくるみたいなんです」
 ちなみに近くには、そのアザーバイドたちがやってきたD・ホールらしきものが開いているらしい。
「ホールが閉じる前に彼らは帰っていくらしいんですが、その閉じるまでの間、登山道を通る者たちと立ち合おうとするみたいです」
 場所は、登山道の途中にある開けた平地となる。
 ある程度の広さはあり、戦うのに不都合なところはないようだ。
「鴉天狗たちは無理矢理勝負したり相手をいきなり襲ったりという事はしないみたいですが、幾人か驚いて事故を起こす人が出ることになりますので、放っておく訳にはいきません」
 タワー・オブ・バベルに似た力を持っているのか言葉は通じるらしいのだが、勝負したくて仕方ないという感じで説得等には応じなさそうらしい。
「ですので皆さんには、鴉天狗たちとの立ち合いをお願いしたいんです」

 マルガレーテはそう言って、アザーバイドたちについて詳しく説明し始めた。
 鴉天狗たちの数は、全員で8体。
 真正面から全力を尽くすという性格のようで、戦いの上での手段はいろいろ考えるものの、策などはあまり弄さないようだ。
「錫杖を棍のように振るって物理的な攻撃を行ってくるほか、覇界闘士のスキルに似た能力も使いこなすみたいです」
 潔くはあるようで、打ち負かされれば素直に負けを認めるらしい。
 また、彼らの生きている処がそうなのかは分からないが、殺されても勝負の上での事ならば仕方ないという割り切りもあるようだ。
「相手にはそういうのを認めていますが、自分たちが勝っても残酷な行為などは行わないみたいですね」
 とはいえリベリスタならば兎も角一般人が相手となると、はずみで死んでしまうという事も無いとは言い切れない。
 やはりリベリスタの方で対処し、帰還してもらった方が良いだろう。

「あと、今回は同行希望の子がいるんです」
 少女の言葉に応じるように、皆の足元で真白な一頭のわんこが、クーンと鳴いた。
「ホーリーメイガスのシロ、と言います。未熟ですが、同行させてほしい……みたいに言っているっぽいです」
 動物会話のできるリベリスタさんが通訳してくれましたとフォーチュナの少女は説明した。
 会話等はスキルが無ければできないが、ある程度何となく、リベリスタたちの言動は察してくれる。
 難しくて理解できなかった場合でも、とにかく邪魔はしないように、望まれれば癒しの力を使ってくれることだろう。
「ですので、会話が出来なくとも何とかなると思います」
 マルガレーテはそう言ってから頑張ってねとシロの頭を撫でて、リベリスタたちに向き直った。
「それでは、宜しくお願いします」



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年07月27日(土)23:14
オープニングを読んで頂きありがとうございます。
メロスと申します。
今回は鴉天狗たちとの真剣勝負となります。


■鴉天狗
鴉のような頭部を持ち、全身を羽で覆われた人間型の存在です。
山伏のような格好して、手には錫杖を持っています。
全員で8体。
タワー・オブ・バベルに似た能力を持つのか、言葉は通じます。
見かけた話の通じそうな相手に戦いを挑んできます。
立ち合い手段は拘らないので、望めば幾人か一対一等でも構いません。
真正面から挑む性質で、策などはあまり弄しません。
錫杖を棍のように振るって物理攻撃を行う他、覇界闘士のスキルに似た能力も使用します。
打ち負かされれば素直に負けを認めます。
また、殺されても勝負の上での事ならば仕方ないと割り切ります。
自分たちが勝った場合等でも残酷な行為などは行いません。
生き死に等についてはあまり拘らないサバサバした性格のようです。

尚、戦いに応じるという構えを見せれば、持っていたほら貝を加工した楽器を吹き鳴らします。
(結界に似たような効果を発揮するようです)


■出現場所
とある山の登山道の途中にある平地になります。
ある程度の広さはあり、戦いに不便なところはありません。
急いでいけば、登山者たちが現れる前に戦いを終わらせることも可能です。


■シロ
真っ白な毛の犬のホーリーメイガス。
以前エリューション事件でアークのリベリスタたちに助けられ、現在はアークに所属しています。
翼の加護、マナサイクル、天使の息、マジックアローが使用可能。
ただし攻撃力に関しては低めです。
言葉は通じませんが、頼みがある場合難しくなければ何となく雰囲気などで察してくれます。
一対一をしている人には手出しはせず応援のみに留めます。


戦いに勝利する事ができれば依頼成功となります。
それでは、興味を持って頂けましたら。
宜しくお願いします。

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
鬼蔭 虎鐵(BNE000034)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ナイトクリーク
風歌院 文音(BNE000683)
スターサジタリー
百舌鳥 九十九(BNE001407)
覇界闘士
祭雅・疾風(BNE001656)
クリミナルスタア
イスタルテ・セイジ(BNE002937)
覇界闘士
四辻 迷子(BNE003063)
プロアデプト
ヒルデガルド・クレセント・アークセント(BNE003356)

●鴉天狗の山
(分別の有る方達のようですし。穏便に済ませられると良かったんですが)
 そんな事を考えながら、『怪人Q』百舌鳥 九十九(BNE001407)は呟いた。
「立ち合いが希望とあっては仕方有りませんのう」
「手合わせするのはいいと思うんですけど……」
 彼の言葉に『メガメガネ』イスタルテ・セイジ(BNE002937)はそう続けながら、やーんな気分にさせられた。
(戦う能力が無い一般の方と戦おうとするのは、出来ればやめていただきたいですよう)
「まあ、神秘秘匿の為にも急いで山に向かいますか」
「で、あれば急いでいかなければでござるな」
 九十九の言葉に『家族想いの破壊者』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)が頷く。
(鴉天狗でござるか……面白いでござる)
「そこまで戦いたいというのであればその願い叶えるでござるよ」
「現場に急行し、鴉天狗殿達と手合わせ願おう」
「登山者を被害者にする訳にはいかないからね」
 虎鐵の言葉にヒルデガルド・クレセント・アークセント(BNE003356)が続け、『Brave Hero』祭雅・疾風(BNE001656)も相槌を打った。
 登山者達が来る前にと、一行は現場へと急ぐ。
(修練の為だろうが、鴉天狗殿達も時を間違えたな)
 ヒルデガルドは急ぎながら、そんな事を考えた。
 急いだ甲斐あったというべきか、かなり早めの時間にリベリスタたちは現地へと到着する。
 そこへ、待ち構えていたのではないかというくらいの感じで、鴉のような外見をした山伏風の者たちが姿を現した。
「いやーどうもどうも私、風歌院文音と申しますよー」
『アークの鴉天狗』風歌院 文音(BNE000683)はそう言ってアザーバイドらに挨拶した。
「あやややー私も鴉天狗といわれてる身で光栄ですねー」
 親しげに話しかける彼女に、鴉天狗たちはどこか不思議そうな視線を向ける。
「察しの通り、修行に来た身じゃ。丁度強くなれる分強くなっておきたい所でなあ」
『土俵合わせ』四辻 迷子(BNE003063)は、そこで一旦言葉を切った。
「……まあそれはついでで。戦いたいんじゃよ」
 彼女はこう、言葉を繋げた。
「思い切り、力比べをさせてもらおうかのう」

●立ち合いの前
「さて、そちらの皆さんは立ち合いが希望とか。僭越ながら、私達がお相手したく思いますが如何ですかのう」
 元の世界に戻ってもらう為に。
 九十九に続くようにして、イスタルテも鴉天狗たちに話しかけた。
 戦いを受けて立つ旨を伝え、虎鐵と文音の2人が個別で、残った者同士で集団でと提案する。
 残った者同士が、シロを含めると7対6になるのでどうだろうかと九十九などは心配したものの、鴉天狗たちはその辺にはあまり拘らないようだった。
 無理ならシロに見学してもらおうと考えていた九十九は安心し、虎鐵と文音に声をかける。
「お二人とも、武運を祈っていますぞ」
 後はそれぞれの戦いだけだ。
「シロと会うのは久しぶりだな、元気だったか?」
 しゃがんでシロの頭を撫でながら疾風が声をかければ、シロは嬉しそうにしっぽを振りながらワンと答えた。
(同行を望むのだから何かしらあるんだろう)
 そんな事を考えながら『合縁奇縁』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)も、挨拶を終えたシロをもふもふしながら……考え込む。
(どうも最近、俺は自分が錆ついている気がする)
 何となくだが、竜一はそう感じていた。
 救えなかった命、依頼での失敗、仲間の死。
(それらが俺の心の刃に纏わりつき、切れ味を鈍らせているんだろうか?)
 ならば、丁度良いのかも知れなかった。
 かの牛若を鍛え上げたとされる伝説をほうふつとさせる存在。
「それに挑めば、俺はこの殻を破けるはず」
 高みを目指す必要はなかった。
 上の如く、下も然り。
 上と下に区別なく、天と地にも狭間はない。
(自由自在を望むが故に、俺は二刀を持つのさ)
 誰かに語り掛けるように、竜一は自分に語りかける。
 一方で文音は、変わらずそのまま鴉天狗達と話していた。
「近年に至り山登りとはスポーツ、趣味とか自然を味わう程度の感覚で登る人が増えたんですよ」
 修行と考える者が大きく減ったと彼女は、アザーバイドたちへと説明する。
「いやはや貴方がたの気持ちも分かりますが、コレが今の時代なんですよねー」
 昔では考えられない事が普通になり、昔普通だった事がありえない事になっていたりすると、彼女は彼らに語り続ける。
 そんな皆を一通り見回してから、九十九は傍らの白わんこに声をかけた。
「まあ何はともあれ。一緒に頑張りましょうな、シロ」
 彼の言葉に、シロは元気よくワンと応えた。

●ほら貝の響き
 話の流れで先ず個別の者たちをとなり、ヒルデガルドは腰を下ろすとシロの頭を撫でながら戦いを観戦する事にした。
 全ての決着がついたのち、双方残るもの全員による集団戦となる。
「もしかして昔、武人に稽古をつけてたのだろうか? 天狗が武術を教えた伝説も聞いた事あるし」
 疾風のそんな問いかけに鴉天狗たちは、そういった者たちもいたかも知れないと説明した。
 個々それぞれの者のそういった言動などについて、彼らはあまり気にはしないようである。
「もしかしたら、才があると見込んで技を教えた者などもいるかも知れぬ」
 一人がそう説明すれば、別の者は、その者が強くなったら立ち合ってみたいと考えていたのではと話し始めた。
 結局そういった方に彼らの話は向かうのかも知れない。
「修練目的の登山が皆無とまでは言わないが今となっては珍しくなっている、これも時代の流れだよ」
 そんな疾風の言葉に、鴉天狗たちは残念そうな表情を浮かべてみせる。
「今の普通の人達は鴉天狗なんて御伽噺だと思ってるんですよねー」
 なので自分たちのようなリベリスタやフィクサード以外の者は止めてあげて欲しいと文音は頼んでみた。
(きっと義経、牛若丸さんとかきっとフェイトをもった人間だったんじゃないですかねー)
 そんな事を話しながら考える間に立ち合い場所も決まり、鴉天狗たちがそれぞれに分かれる。
 ほら貝を口に当てた幾人かに合わせるようにして、イスタルテも結界を使用した。
 鴉天狗たちだけに配慮させるのは、何となく申し訳ない気がしたのである。
 ともあれこれで、本当に準備は整った。
 ほら貝の響きは、立ち合いの始まりも意味していたのである。

●虎鐵、対峙
「ふむ、では始めようでござるか。鬼蔭虎鐵……いざ参るでござる!」
 望んだ一対一の対決。
「これでも元は求道者でござるしな」
(強い奴と戦えるのはこちらとしても有意義でござる)
 構えを取った虎鐵は、対峙した鴉天狗を油断なく窺った。
 8体の中でも、かなりの実力者であることは間違いないだろう。
 錫杖を構えたまま鴉天狗は、守りにも攻めにも即座に移れるような攻防一体の構えを取る。
 対して虎鐵は距離を詰めながら、破壊神の如き闘気を身に纏わせた。
 天狗は力を計るように、羽団扇を振るってカマイタチを放つ。
 風の刃に耐えながら、虎鐵は更に踏み込んだ。
「こちらも手加減するほど器用ではないでござるしな」
 斬魔・獅子護兼久に闘気を篭め、一閃させる。
 機敏な動きで直撃を避けつつも、鴉天狗の顔には驚きの表情が浮かんでいた。
「なんと重い、余程の鍛錬を積んだ強者(つわもの)か」
「お互い満足のできる戦いができればいいでござるな」
「これほどの相手ならば、是非も無し」
 そう言って天狗は錫杖から不意に片手を離し、虎鐵に向かって掌打を繰り出す。
 鞘を利用し衝撃を減らそうとした瞬間、爆発的な気が虎鐵の内へと送り込まれた。
 もっとも、彼の纏った闘気が衝撃を和らげたことで虎鐵は動きを止める事なく次の斬撃を鴉天狗に放つ。
「拙者はまだまだ力不足ではござるが……それでもおぬしに勝たねばいけないのでござる」
 強くなるために。
 大切なものが、この手から零れないように。
 圧倒的な破壊の気を纏い刃を振るう虎鐵と、流れるような動きで気を篭めた掌打を放つ鴉天狗。
 対照的な攻防の決着となったのは、虎鐵の一撃だった。
「鴉天狗よ………この剣戟……おぬしに捧げるでござる!」
 闘気を雷へと変換させ刃へと纏わせた虎鐵が、捨て身の一撃を放つ。
 直撃でなくとも強烈な一撃を受け、天狗は呻くような声を発しながら崩れ落ちた。
 少しのざわめきの後、戦いの終わりを告げるように虎鐵を讃えるように、天狗たちの幾人かが、ほら貝を口に当て吹き鳴らした。

●リベリスタ、対峙
 虎鐵の戦いが終わる前に、もう一方の戦いは終わったらしかった。
 戦いにならなかったというのが正解かもしれない。
 がっかりした様子の鴉天狗が1名、6対7に加えてくれと申し入れたのである。
 文音は逃げの勝負を行おうとしたらしいのだが、説明などが無しに逃げた時点で鴉天狗の方は戦いを望んでいないと考えたらしかった。
 他の相手を探されるのも不味いし丁度7対7に為る事もあって、一行は申し入れを承諾する。
 こうして集団戦は開始される事となった。
 鴉天狗たちはそれぞれ全身に気を巡らせ、あるいは流れるような動きで攻防一体の構えを取る。
「いざ、尋常に勝負ッ! 全力を持って相手をする! 行くぞ、変身ッ!」
 疾風は幻想纏いを起動させ、一瞬で戦いの為の装備を身にまとった。
 イスタルテは前衛の一人として、他の前衛たちと共に後衛が接近されないように横並びに、壁を作るように位置を取る。
 彼女は事前の情報をもとに、相手の能力の一部を無効化する為のスキルも用意していた。
 先手は取られたものの、鴉天狗たちは自身を強化する為に力を使用している。
 イスタルテは掌に聖なる光を生み出すと、その輝きを相手に向けた。
 疾風は気を操る事で肉体の柔軟性を保ったまま強度をあげ、九十九は弓を持つとされる月の女神の加護を自身に施し、射撃能力を強化する。
「同じ目的を持ち共に戦うわしらは、既に友にも同じ……今更名乗りなどはいらんな」
 鴉天狗の一人と相対すると、迷子は自身の腕に炎を纏わせた。
 別に殺すのは目的ではないが、殺す気で……全力で、攻撃を仕掛ける。
「さあ、立ち合いだ! 貴様らの体で、技で、心で、俺を打ち直してもらうぞ!」
 竜一は前衛として敵の弩真ん中へと突っ込んだ。
 危険ではあるが、それで味方を巻き込まずに敵の複数を巻き込める位置を取る事ができる。
(真正面を是とする敵だ。)
「それなら俺も真正面からぶつかって、敵の心も打ち倒してみせる」
 高速で振るわれた打刀と剣によって生み出された烈風が、周囲の鴉天狗たちに襲い掛かる。
 仲間たちの動きを確認しながら、ヒルデガルドは全体を見渡せるようにと中衛、やや後衛よりに位置を取った。
 そのまま皆と声を掛け合いつつ、集中によって脳の伝達処理能力を向上させる。
 彼女の視線の先で、戦いは急速に激しさを増していった。

●集団戦
 鴉天狗たちは錫杖に炎や氷を纏わせ、あるいは羽団扇で生み出したカマイタチでリベリスタ達を狙う。
 一撃一撃は強力とまではいわないものの正確で早く、油断のできない力を持っていた。
 対してイスタルテと九十九は堅実に、相手に実力を発揮させないように攻撃を行ってゆく。
 イスタルテはカスタマイズによって解除の力を付与したフィンガーバレットで射撃を行い、九十九は魔力を付与し貫通力を増した銃弾で鴉天狗たちを狙い撃った。
「くっくっく、果たして避けれますかな?」
 月神の加護を受けて更に精度を上げた射撃は、鴉天狗たちの機敏な動きを物ともせず、精確に標的を撃ち抜いてゆく。
 直撃を受けた鴉天狗たちは体勢を崩し、あるいは自身に付与した力を解除された。
「複数も単体も、強化も全て撃ち抜くのが私の銃弾ですぞ」
 不敵に呟きつつ、九十九は攻撃を続けてゆく。
 イスタルテは相手の機敏さを考え、充分に狙いを付けての射撃を心掛けた。
 彼女の銃弾には氷結によって相手の動きを封じる力も込められていた為、鴉天狗たちは体勢を崩された上、動きも制限される事となったのである。
 加えて竜一の烈風陣も、体勢を崩し動きを封じる効果がある。
 鴉天狗たちは再度の構えは取らず、そのまま戦うことを選択した。
 そこへ疾風が距離を越える投げ技とPDRC[顎門]による射撃で牽制しつつ攻撃を仕掛ける。
 距離を詰めた彼は拳と蹴撃に雷を宿し、名に恥じぬ高速の打撃を鴉天狗たちへと繰り出すことで鴉天狗たちの前進を押さえこんだ。
 迷子も前線を支えるように、その腕に炎を宿す。
 真正面から来るというのは相応の自信があっての事なのだろう。
(ならばこそ、それに合わせよう)
「お主以上に真っ直ぐに! お主以上に真正面から! この身一つで迎え撃つ!」
 もっと強く、もっと速く!
「お主の全力以上のお主を見せてみろ」
 避けるように錫杖で受け止めた天狗に、迷子は言い放った。
「わしはそのお前を、越えていく!」
「ならばそれを、真っ向から打ち砕こう!」
 鴉天狗の言葉と同時に、錫杖を炎が包む。
「戦いってのは、心が折れた方が負けなのさ。だったら、鈍ってはいても折れちゃいない俺は、負けてないってこった!」
 突出し数人から攻撃を受けながらも、竜一は二刀を振るって嵐を巻き起こした。
 ヒルデガルドは全身から気の糸を放出し、攻撃可能な鴉天狗たちの中でもダメージが蓄積している様子の個体を重視して、伸ばした気の糸で狙い撃つ。
 攻撃しながら彼女は後衛が狙われないようにと、突出した竜一以外と戦っている者たちに気を配った。
 皆に翼の加護を施していたシロは、魔力を体内で循環させたのち、傷付いた者たちへと癒しの風を送り出す。

「それぞれが異なる力を合わせるのがお前たちの力か……ならば!」
 リベリスタ達の連携を崩そうとするかのように、鴉天狗たちは攻撃を絞り始めた。
 消耗を気にしてか多用しなかった土砕掌に似た気を操る技も使い始める。
 イスタルテを庇うように立ちながら、迷子は拳を振り上げた。
 撤退も後退もしない。
 ただ愛すべき目の前の敵に拳を叩きつける。
(これが全て、ただ戦いだけがこの魂を熱くさせる!)
「楽しいなぁ、戦いは!」
 その身を限界に近付けることで力を振り絞り、それでも不足となれば運命の加護を手繰り寄せ、迷子は拳を振るい続けた。
 庇われたイスタルテは仲間たちの傷や異常を回復させるために福音を響かせ、浄化の光を放ち続ける。
 彼女自身は無効化の力によって動きを封じられはしなかったが、他の者たちは鴉天狗たちの技によって動きを封じられる事が幾度もあったのだ。
 シロと声を掛け合いはしても、途中からはほぼ追い付かない状態だった。
 攻撃に耐え切れずにフェイトを使用する事になったのも、不幸中の幸いと言えるかも知れない。
 尽きかけた力を無理やりに引き出す事で、イスタルテは仲間たちを癒し続けた。
 疾風は特殊な呼吸法で自身を回復させながら戦い続け、九十九は嵐のような銃撃で鴉天狗たちを薙ぎ払う。
 ヒルデガルドはヴァンパイアとしての力を使用して消耗した力を補給するや、直ちに全身から気の糸を放出した。
 シロを狙おうとする鴉天狗を妨害するように位置を取り、攻撃を運命の加護で耐え凌ぎながら敵の動きを分析し、攻撃を繰り出す。
 九十九も突破を阻止すべく立ち塞がり、身軽な動きで直撃を許さず攻撃を避け、耐え続けた。
 突出したことで集中攻撃を受けた竜一は、限界を迎えかけた身体を無理矢理に動かすと、二刀を振りかぶった。
「ふがいない俺を打ち倒してくれるのは有り難い。が、ここまでだ!」
 巻き起こされた烈風を受け、2人の鴉天狗が身を痺れさせながら膝をつく。
 結果として、攻撃がある程度分散した形になっていたという事だろう。
 そこから決着までは、早かった。
 九十九の銃撃で、疾風の打撃で、迷子の拳で、ヒルデガルドの気の糸で、鴉天狗たちは次々と倒れ、一分と経たずに全ての鴉天狗たちが地面に膝を付いたのである。
 こうして戦いは幕を閉じた。

●立ち合いの後
「今回の俺は殺すために来たのではない」
「こちらとしても殺したとなれば後味が悪いでござるしな」
 竜一の言葉に虎鐵が続ける。
「無益な殺生は好まない」
 疾風もそう頷いた。
「まさかこれほどの強者と立ち会えるとは思わなかった。礼を言う」
 一人の言葉に続くように、鴉天狗たちは次々と感謝の言葉を述べる。
「満足出来る立ち合いでしたら幸いですな」
 戦った甲斐も有ったと言うものですと、九十九が仮面の奥から声を響かせた。
「……ところでお主ら別の世界に来ていることには気付いておるのか?」
「うむ。我々は少ないが、この世界に詳しい者たちも同族には幾人もな」
「まあ、わしとしては何度来てもらっても……いや、叱られるからよしておくか」
「また来られるなら……一般の方は巻き込まないで下さいね」
 迷子と話す鴉天狗たちに、イスタルテはそうお願いした。
 真面目な顔をして皆が、気を付けようと頷いて見せる。
 幾つか言葉を交わすと、鴉天狗たちは門へと足を向けた。
 竜一は感謝と共に彼らを見送った。

 天狗たちの姿がD・ホールの彼方に消え、それを確認した迷子と竜一が力を解放する。
「まあ自然に閉じるのを待っても良いんですけどな」
 そう呟きつつ九十九も仲間たちと共に、ブレイクゲートの力を発動させた。


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
依頼の方、お疲れさまでした。
個別の戦いは勿論として、集団戦の方もかなり激しい戦いとなりましたが、勝利する事に成功しました。
結果として集団戦は同数対決となりましたが、シロの力不足もあってかなり苦戦する事となりました。
ただ、気を配って下さった方々のお陰でシロの方は大事には至らなかったようです。
感謝しつつ、皆のようにもっと強くならねばとシロは考えたようでした。

御参加、どうもありがとうございました。
それではまた、御縁ありましたら。